説明

ネットワークプリンタ装置およびネットワークプリンタシステム

【課題】 オペレータがプリンタの識別名を知らなくても印刷するプリンタ装置を特定することができるネットワークプリンタシステムを提供すること。
【解決手段】 オペレータは自分を特定させる情報キーを設定し(S1)、プリンタ特定手段205は、ネットワークから印刷するプリンタ装置の位置情報の受信を試みる(S2)。プリンタ装置側でオペレータは、印刷するプリンタ装置の位置情報の送信処理を実行し(S5)、先ほど入力したものと同じキーを入力する(S6)。この位置情報および先ほど入力した情報キーを含んだ一連のデータが作成され、ネットワーク全体に1回だけ送信される(S7)。プリンタ特定手段205は、受け取った一連のデータの情報キーが保管しているものと一致すれば、(S3;Y)、印刷条件データとして設定し(S4)、制御を印刷条件設定処理部203に渡す。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ネットワークプリンタ装置およびネットワークプリンタシステムに係り、特に複数のコンピュータおよび複数のプリンタ装置が接続されているネットワーク環境でのプリンタ印刷処理を制御するネットワークプリンタシステムに関する。
【0002】
【従来の技術】近年、複数のコンピュータと複数のプリンタ装置をネットワーク接続して効率的に各種事務処理を行うシステムが普及してきている。このようなネットワーク上に複数台のプリンタ装置が配置されているプリンタ制御システムでは、コンピュータ側の印刷制御部が印刷情報を送信するプリンタ装置の位置を特定する場合、ネットワーク上のそれぞれのプリンタ装置に指定されている識別子群からオペレータが印刷するプリンタ装置を選択することにより行っていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述のようなオペレータが選択する方式ではプリンタ装置を特定するために使用する識別子が抽象的かつ曖昧であるため、オペレータの認識と一致しないプリンタ装置が選択されるというようなことが頻繁に発生していた。また、印刷に利用するプリンタ装置の特定作業を印刷処理を行う前に実施しておく必要があったため、一度特定していたプリンタ装置の名称が変更されたり、特定しているプリンタ装置が使用状態になっていない場合、若しくは設置位置がオペレータから遠い位置に移動してしまった場合は、再度別のプリンタ装置を再指定する必要があった。
【0004】さらに、オペレータが一度印刷処理を実行してしまった後にプリンタ装置の位置移動などが判明した場合、印刷プリンタ装置の再指定および印刷処理の再実行を行なわなければならなかった。このような状況が発生した場合、そのたびに助長性の高い識別子を再選択する作業が発生し、オペレータに対する時間的、精神的負担が大きかった。
【0005】そこで、本発明の第1の目的は、オペレータが印刷を行いたいプリンタ装置を特定する際に、そのプリンタ装置の操作パネルから容易に位置情報をネットワーク上に送信することができるネットワークプリンタ装置を提供することである。また、本発明の第2の目的は、オペレータが印刷を行いたいプリンタ装置を特定する際に、プリンタ装置の識別名を知らなくても印刷するプリンタ装置を特定し、使用することができるネットワークプリンタシステムを提供することである。本発明の第3の目的は、印刷処理の実行後でも印刷するプリンタ装置を指定することができるネットワークプリンタシステムを提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明では、ネットワークプリンタ装置が、ネットワーク上の位置情報、印刷データの設定を行う操作手段と、ネットワーク環境での印刷処理を行うため、単数または複数のワークステーションと接続し、この接続したワークステーションと印刷データの送受信をする送受信手段と、この送受信手段が受信した印刷データを出力する出力手段と、を備え、前記送受信手段は、前記操作手段で設定したネットワーク上の位置情報をネットワーク環境のワークステーションに送信することにより、前記第1の目的を達成する。
【0007】請求項2記載の発明では、請求項1記載のネットワークプリンタ装置と、このネットワークプリンタ装置とネットワークを介して接続されている単数または複数のワークステーションとからなるネットワークプリンタシステムにおいて、前記ワークステーションは、オペレータが選択した印刷する前記ネットワークプリンタ装置を特定する情報キーを設定し、前記ネットワークプリンタ装置の前記送受信手段から位置情報を受け取るプリンタ特定手段を備え、前記プリンタ特定手段が前記ネットワークプリンタ装置の前記送受信手段から受け取った位置情報が既に設定してある前記情報キーに含まれる位置情報と一致した場合、受け取った前記位置情報を印刷条件データとして印刷データを前記ネットワークプリンタ装置へ送信することにより、前記第2の目的を達成する。
【0008】請求項3記載の発明では、請求項2記載のネットワークプリンタシステムにおいて、前記プリンタ特定手段は、ネットワーク環境上の前記ネットワークプリンタ装置の前記送受信手段から位置情報を受け取るまで、前記ネットワークプリンタ装置への印刷データの送信を停止することにより、前記第3の目的を達成する。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明の好適な実施の形態を図1ないし図5を参照して詳細に説明する。ここでは、一例として複数のワークステーションとプリンタ装置で構成されているネットワークシステムに適用した場合の実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態におけるプリンタ装置の構成を示したブロック図である。このプリンタ装置は、操作パネル部101、プリンタ・コントローラ部102、ネットワーク・コントローラ部104およびプリンタ・エンジン105を備えている。
【0010】操作パネル部101は、プリンタ装置の制御、各種の設定を行う。ネットワーク・コントローラ部104は、ネットワークに接続されワークステーションと通信データの送受信を行う。プリンタ・エンジン105は、受信した印刷データの作像・印刷を行う。プリンタ・コントローラ部102は、操作パネル部101、ネットワーク・コントローラ部104およびプリンタ・エンジン105の3つのモジュールを制御する。また、プリンタ・コントローラ部102は、位置情報送信手段103を備えている。
【0011】位置情報送信手段103は、操作パネル部101からのオペレータの指示によって起動される。この位置情報送信手段103が起動されると、プリンタ装置のネットワーク上の位置情報[ネットワーク上の識別名、若しくはアドレス・コード(MACアドレス)]およびオペレータ固有の識別コードを含んだ一連のデータが作成される。そして、プリンタ・コントローラ部102は、ネットワーク・コントローラ部104に対してこの作成されたデータをネットワーク全体に1回だけ送信(ブロード・キャスト)する要求を出す。このプリンタ・コントローラ部102からデータ送信の要求を受け取ったネットワーク・コントローラ部104は、ネットワーク上の任意のワークステーションに対して指定されたデータを送信する。
【0012】図2は、本実施の形態におけるワークステーションの構成を示したブロック図である。このワークステーションは、印刷処理制御部202およびアプリケーション部201を備えている。印刷処理制御部202は、印刷条件設定処理部203および印刷処理部204を備えている。印刷処理制御部202は、アプリケーション部201で印刷データが生成される際に必要な印刷処理を制御する。印刷条件設定処理部203は、用紙サイズ、印刷するプリンタ装置等の条件を設定する。印刷処理部204は、アプリケーション部201が生成した印刷データを印刷条件設定処理部203で設定した印刷条件に従ってプリンタ装置へ送信する。また、印刷条件設定処理部203はプリンタ特定手段205を、印刷処理部204は印刷制御手段206を備えている。
【0013】プリンタ特定手段205は、アプリケーション部201からの印刷条件設定要求が出された時、および印刷制御手段206からのプリンタ特定要求の時に実行される。このプリンタ特定手段205は、ワークステーションに接続されているネットワークから期待されているオペレータ固有の識別コードを含んだプリンタ装置の位置情報を受信するまで次以降の処理を停止し、印刷するプリンタ装置の位置情報を受信すると、停止した処理を再開する。
【0014】印刷制御手段206は、アプリケーション部201からの印刷要求が出された時に実行される。アプリケーション部201から出された印刷要求は、印刷処理制御部202から印刷処理部204に送られ印刷制御手段206に到達する。印刷制御手段206は、印刷要求の制御を印刷処理部204に渡す前に、印刷条件設定処理部203のプリンタ特定手段205を呼び出す。呼び出されたプリンタ特定手段205は、ネットワークから印刷するプリンタ装置の位置情報を受信するまで処理を停止させる。プリンタ特定手段205により処理が再開された場合、すなわち印刷するプリンタ装置が特定(選択)された状態ということになるので、印刷制御手段206はこの特定されたプリンタ装置を出力先として設定し、印刷処理部204に制御を渡す。
【0015】図3は、本実施の形態におけるネットワークシステムの構成を示したブロック図である。図3は、図1のプリンタ装置および図2のワークステーションがプリンタ装置304〜307とワークステーション301〜303としてバスで接続されて組み込まれたネットワークシステムである。通常、このようなネットワークシステムにおいてワークステーション301〜303の各アプリケーション部201からネットワーク上の特定のプリンタ装置304〜307に対して印刷を行う場合、まず最初にワークステーションからの印刷データをどのプリンタ装置304〜307に印刷させるかを指定しておく必要がある。
【0016】図4は、ワークステーションからネットワーク上の特定のプリンタ装置に対して印刷を行う場合の処理手順を示したフローチャートである。まず、ワークステーションで実行されているアプリケーション部201から印刷処理制御部202に対して印刷条件設定の要求を出す。印刷処理制御部202は印刷条件設定処理部203にこの印刷条件設定の要求を伝える。印刷条件設定処理部203はこの印刷条件を設定するための画面表示を行い、オペレータの設定を許可する。ここで、オペレータは、印刷するプリンタ装置の選択処理を選ぶ。
【0017】オペレータが印刷するプリンタ装置を選択すると、印刷条件設定処理部203はプリンタ特定手段205を呼び出す。このプリンタ特定手段205は、オペレータを特定するための情報キーの設定を促す画面を表示させ、オペレータが自分を特定させる情報キーを設定する(ステップ1)。この情報キーは、プリンタ装置からの位置情報送信の際にも使用され、ワークステーション上のプリンタ特定手段205が受け取った位置情報について自分のために送信されたものであるかどうかを確認するために使用されるものである。
【0018】情報キーの設定が終わり、オペレータがプリンタ装置から位置情報を送信して欲しい旨のメッセージを表示した後、プリンタ特定手段205は、ネットワークから印刷するプリンタ装置の位置情報の受信を試みる(ステップ2)。印刷するプリンタ装置の位置情報の取得に失敗した場合(ステップ3;N)、再度取得を試みる(ステップ2)が、このときオペレータからはここで処理が停止しているように見える。
【0019】次に、プリンタ装置側でオペレータは、自分が出力したいプリンタ装置に移動し、プリンタ装置の操作パネルから印刷するプリンタ装置の位置情報の送信処理を実行する(ステップ5)。操作パネルからの実行要求は、プリンタ・コントローラ部102に送られ、位置情報送信手段103が呼び出される。位置情報送信手段103は、ステップ1の時と同じ要領でオペレータを特定する情報キーの入力を求めるパネル表示を行う。ここで、オペレータは先ほど入力したものと同じキーを入力する(ステップ6)。自分のネットワーク上の位置情報[ネットワーク上の識別名、若しくはアドレス・コード(MACアドレス)]および先ほど入力した情報キーを含んだ一連のデータが作成され、ネットワーク全体に1回だけ送信(ブロード・キャスト)される(ステップ7)。
【0020】ワークステーション側では、先ほどプリンタ装置の位置情報の取得待ちで処理を停止させていたプリンタ特定手段205が、プリンタ装置から送信された位置情報を受け取る。その際、プリンタ特定手段205は、受け取った位置情報に含まれる情報キーが既に保管しているものと異なれば、その位置情報は自分の待っている情報ではないと判断して、再びネットワークに送信する。プリンタ特定手段205は、情報キーが保管しているものと一致すれば、期待した位置情報を受信したと判断して、次の処理に進む(ステップ3)。次の処理では、受け取ったプリンタ装置の位置情報を印刷条件データとして設定し(ステップ4)、制御を印刷条件設定処理部203に渡す。
【0021】図5は、ワークステーションのアプリケーション部で印刷データを生成した場合の処理手順を示したフローチャートである。ここで、図5の処理手順におけるステップ5〜7は、図4に示した処理手順と同様な処理手順である。ワークステーション上のアプリケーション部201は、プリンタ装置への印刷を行うためにプリンタ装置再選択などのオプション設定と共に、印刷処理制御部202に印刷実行要求を出す。印刷処理制御部202は、この要求を印刷処理部204に渡す。
【0022】印刷処理部204は、印刷処理を開始する前に印刷制御手段206を呼び出す。印刷制御手段206は、最初にオペレータからプリンタ装置再選択のオプションを指定されるか、印刷条件設定処理部203で印刷するプリンタ装置が指定されていないかを判断する(ステップ11)。ここで、印刷するプリンタ装置の再選択が必要ない場合(ステップ11;N)、印刷処理処理部204により印刷を実行する(ステップ13)。プリンタ装置の再選択が必要な場合(ステップ11;Y)、オペレータにメッセージを表示し、プリンタ特定手段205を呼び出して(ステップ12)、印刷するプリンタが特定(選択)できるまで処理を停止する。
【0023】ここでオペレータは、自分が出力したいプリンタ装置に移動し、プリンタ装置の操作パネルからプリンタ装置の位置情報の送信処理を実行する(ステップ5)。操作パネルからの実行要求は、プリンタ・コントローラ部102に送られ、位置情報送信手段103が呼び出される。位置情報送信手段103は、オペレータを特定する情報キーの入力を求めるパネル表示を行う。ここで、オペレータはワークステーション側で指定したキーを入力する(ステップ6)。自分のネットワーク上の位置情報[ネットワーク上の識別名、若しくはアドレス・コード(MACアドレス)]および先ほど入力した情報キーを含んだ一連のデータが作成され、ネットワーク全体に1回だけ送信(ブロード・キャスト)される(ステップ7)。ワークステーション側では、受け取ったデータの中からプリンタ装置の位置情報を取りだし、印刷するプリンタ装置として設定する(ステップ12)。そして、制御をプリンタ装置側の印刷処理部204に渡して印刷を実行する(ステップ14)。
【0024】
【発明の効果】請求項1記載の発明では、送受信手段は、位置情報送信手段からの位置情報をネットワーク環境のワークステーションに送信するので、オペレータはプリンタの識別名を調べる必要なくプリンタ装置を特定することができる。
【0025】請求項2記載の発明では、プリンタ特定手段は、ネットワークプリンタ装置の位置情報送信手段から受け取った位置情報が、情報キーに含まれる位置情報と一致した場合、受け取った位置情報を印刷条件データとして印刷処理手段からネットワークプリンタへ送信するので、オペレータはプリンタの識別名を知らなくてもこれを使用することができる。
【0026】請求項3記載の発明では、プリンタ特定手段は、ネットワーク上のネットワークプリンタ装置の位置情報送信手段から位置情報を受け取るまで印刷処理手段からネットワークプリンタへ送信する印刷データを停止するので、印刷処理の実行後でも印刷するプリンタを特定できるため、オペレータが印刷したいプリンタを印刷実行後に再指定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態におけるネットワークプリンタ装置の構成を示したブロック図である。
【図2】本実施の形態におけるワークステーションの構成を示したブロック図である。
【図3】本実施の形態におけるネットワークシステムの構成を示したブロック図である。
【図4】ワークステーションからネットワーク上の特定のプリンタに対して印刷を行う場合の処理手順のフローチャートである。
【図5】ワークステーションのアプリケーション部で印刷データを生成した場合の処理手順のフローチャートである。
【符号の説明】
101 操作パネル部
102 プリンタ・コントローラ部
103 位置情報送信手段
104 ネットワーク・コントローラ部
105 プリンタ・エンジン
201 アプリケーション部
202 印刷処理制御部
203 印刷条件設定処理部
204 印刷処理部
205 プリンタ特定手段
206 印刷制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ネットワーク上の位置情報、印刷データの設定を行う操作手段と、ネットワーク環境での印刷処理を行うため、単数または複数のワークステーションと接続し、この接続したワークステーションと印刷データの送受信をする送受信手段と、この送受信手段が受信した印刷データを出力する出力手段と、を備え、前記送受信手段は、前記操作手段で設定したネットワーク上の位置情報をネットワーク環境のワークステーションに送信することを特徴とするネットワークプリンタ装置。
【請求項2】 請求項1記載のネットワークプリンタ装置と、このネットワークプリンタ装置とネットワークを介して接続されている単数または複数のワークステーションとからなるネットワークプリンタシステムにおいて、前記ワークステーションは、オペレータが選択した印刷する前記ネットワークプリンタ装置を特定する情報キーを設定し、前記ネットワークプリンタ装置の前記送受信手段から位置情報を受け取るプリンタ特定手段を備え、前記プリンタ特定手段が前記ネットワークプリンタ装置の前記送受信手段から受け取った位置情報が既に設定してある前記情報キーに含まれる位置情報と一致した場合、受け取った前記位置情報を印刷条件データとして印刷データを前記ネットワークプリンタ装置へ送信することを特徴とするネットワークプリンタシステム。
【請求項3】 前記プリンタ特定手段は、ネットワーク環境上の前記ネットワークプリンタ装置の前記送受信手段から位置情報を受け取るまで、前記ネットワークプリンタ装置への印刷データの送信を停止することを特徴とする請求項2記載のネットワークプリンタシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2001−154822(P2001−154822A)
【公開日】平成13年6月8日(2001.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−335026
【出願日】平成11年11月25日(1999.11.25)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】