説明

ノズル及び塗布膜形成方法

【課題】 塗布膜と塗布面との間に気泡が形成されることなく、しかも略均一な膜厚の塗布膜を形成することができるノズルを提供すること。
【解決手段】 複数の吐出口14、・・・から塗布材を吐出しながら、複数の吐出口14、・・・を塗布面に対して相対的に所定方向に移動させることによって、塗布面上に帯状の塗布膜を形成することができるノズル11において、複数のそれぞれの吐出口14、・・・は、第1吐出領域40と第2吐出領域41とを有し、第1吐出領域40は、塗布膜における塗布面に接触する側の内側表面を形成する塗布材が通る領域であり、第2吐出領域41は、塗布膜の外側表面を形成する塗布材が通る領域であり、各吐出口14、・・・は、第1吐出領域40から第2吐出領域41に向かうに従って、塗布膜の横幅と同方向の横幅が狭くなる台形孔に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば複数の吐出口から接着材、シール材又は補強材等の塗布材を吐出しながら、これら複数の吐出口を、自動車の車体部品、各種部品又は製品等の塗布面に対して相対的に移動させることによって、その塗布面上に帯状の塗布膜を形成することができるノズル、及び塗布膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のノズルの一例を、図9〜図11を参照して説明する。このノズル1は、図9に示すように、例えば自動車の車体部品2の所定の塗布面2aに接着材等の塗布材3を塗布して、帯状の塗布膜4を形成することができるものである。このノズル1は、図11(a)、(b)、(c)に示すように、平面形状が略矩形の板状体であり、後部に塗布材3の流入口5が形成され、前部に塗布材3の吐出口6が形成されている。この吐出口6は、図11(c)の拡大正面図に示すように、細長い横長のスリット状に形成されている。
【0003】
このノズル1によって接着材等を使用して塗布膜4を形成するときは、図9に示すように、まず、ノズル1のスリット状の吐出口6を、例えば水平に配置された車体部品2の塗布面2aに対して、所定間隔を隔てて平行となるように対向させる。そして、この状態で、吐出口6から接着材等の塗布材3を連続して吐出しながら、ノズル1をその吐出口6の長さ方向と直交し、かつ塗布面2aと平行する方向7に移動させる。これによって、塗布面2a上に帯状の塗布膜4を形成することができる。このようにして塗布面2a上の所定の範囲に塗布膜4を形成し、しかる後に、この塗布膜4に対して図示しない別の部品等を押し付ける。このようにして、車体部品2に別の部品等を、接着材3を介して接着することができる。
【0004】
このようなスリット形状の吐出口を有するノズルの他の例として、大型ガラス基板等の塗布面に塗布材を塗布するためのものが開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−51763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の単純平型ノズル1では、図10(a)に示すように、スリット形状の吐出口6から吐出される塗布材3の流速Vは、吐出口6の中央部に近づくに従って速くなる。流速Vがこのように分布するのは、吐出口6の中央部に近づくに従って、吐出口6の左右の各側面の抵抗による影響が小さくなるからである。
【0007】
従って、図9に示すノズル1で塗布膜4を形成すると、図10(b)に示す塗布膜4の縦断面図に示すように、中央部が両端部よりも盛り上がった形状となる。そして、このように塗布膜4の中央部が盛り上がった形状となると、塗布膜4の膜厚を、S1に形成しようとする場合、中央部の膜厚がS2(>S1)となる部分が多くなり、この中央部の盛り上がった部分の塗布材3が余分に塗布されることとなり、非経済的である。また、塗布膜4の膜厚S2が大きくなると、車体部品2に別の部品等を押し付けて接着したときに、塗布膜4が車体部品2の表面に沿って広がり、その余分に広がった塗布膜を拭き取る作業が必要となる場合がある。
【0008】
また、図9に示すように、スリット状の吐出口6から帯状の塗布材3が吐出されるので、この帯状の塗布材3が塗布面2aに当接して塗布されるまでの間に、この帯状の塗布材3と塗布面2aとの間に空気が入り込んで気泡8が形成されることがある。このように、気泡8が形成されると、その部分の塗布膜4が塗布面2aに密着しない状態となり、塗布材3が接着材である場合は、その気泡8部分の接着強度の低下により、全体としての接着強度が低下するし、塗布材3が補強材である場合は、気泡8部分の補強強度がそれ以外の部分よりも低下し、更に、補強される部分が変形を起こす原因となる。
【0009】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、塗布膜と塗布面との接触面間に気泡が形成されることなく、しかも略均一な膜厚の塗布膜を形成することができるノズル、及び塗布膜形成方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明に係るノズルは、複数の吐出口から塗布材を吐出しながら、前記複数の吐出口を塗布面に対して相対的に所定方向に移動させることによって、前記塗布面上に帯状の塗布膜を形成することができるノズルにおいて、前記複数のそれぞれの吐出口は、第1吐出領域と第2吐出領域とを有し、前記第1吐出領域は、前記塗布膜における前記塗布面に接触する側の内側表面を形成する塗布材が通る領域であり、前記第2吐出領域は、前記塗布膜の外側表面を形成する塗布材が通る領域であり、前記各吐出口は、前記第1吐出領域から前記第2吐出領域に向かうに従って、前記塗布膜の横幅と同方向の横幅が狭くなるように形成されていることを特徴とするものである。
【0011】
第1の発明に係るノズルを使用して塗布面に帯状の塗布膜を形成するときは、ノズルの複数の吐出口から塗布材を吐出しながら、複数の吐出口を塗布面に対して相対的に所定方向に移動させる。そして、これら各吐出口から吐出された塗布材は、それぞれが互いに間隔を隔てた状態で各吐出口から線状の吐出流となって吐出される。そして、これら複数の吐出流は、塗布面に到達するまでに、又は塗布面に塗布されたときに隣合うものどうしが、塗布面に接触する側の部分から繋がり、塗布面上に帯状の塗布膜を形成することができる。
【0012】
そして、複数の吐出口は、帯状の塗布膜の横幅方向と対応する方向に沿って設けてあり、各吐出口の横幅方向の寸法を比較的小さくしてある。これによって、各吐出口内におけるその横幅方向の各位置における流速分布のばらつきを小さくすることができる。そして、例えば各吐出口の大きさ及び形状を揃えることによって、各吐出口の流路抵抗、即ち各吐出口における流量が互いに略等しくなるようにすることができる。その結果、帯状に形成される塗布膜の横幅方向の各位置における膜厚を略均一にすることができる。
【0013】
また、塗布材の複数の吐出流は、複数の吐出口から吐出された直後は、互いに隣合うものどうしの間には隙間が形成されているので、複数の吐出流と塗布面との間に存在する例えば空気は、吐出流どうしの間の隙間から外側に逃がすことができる。よって、塗布膜と塗布面との接触面間に気泡が形成されないようにすることができる。
【0014】
そして、各吐出口は、第1吐出領域から第2吐出領域に向かうに従って、塗布膜の横幅と同方向の横幅が狭くなるように形成されているので、各吐出口から吐出されていく塗布材の各吐出流の断面形状は、塗布面に接触する側の内側表面からこれと反対側の外側表面に向かうに従って横幅が狭くなる形状となる。そして、このように形成された複数の吐出流が塗布面に接触すると共に、隣合う吐出流どうしが互いに接触したときは、その隣合う吐出流どうしの間にその吐出流の方向に沿って溝が形成され、その溝は、外側表面で開口し、その断面形状は、溝底から塗布膜の外側表面に向かうに従って溝幅が広くなる形状である。そして、これら複数の吐出流が塗布面に塗布されると、外側表面に形成されている複数の溝は、塗布材の粘性によって、時間が経過するに従って殆ど消失し、塗布膜の外側表面が平坦な形状となる。これによって、複数の各溝内に存在する空気は、塗布膜と塗布面との接触面間に進入することがなく塗布膜の外側に排出され、その接触面間に気泡が残留しないようにすることができる。
【0015】
第2の発明に係るノズルは、第1の発明において、前記複数のそれぞれの吐出口は、台形孔、略台形孔、内側面が外側に膨らむ形状の略台形孔、略半円形孔、又は略三角形孔であることを特徴とするものである。
【0016】
第2の発明に係るノズルによると、吐出口の形状は、この吐出口から吐出される塗布材の性状や、このノズルが使用される周囲の温度、湿度、吐出流量、吐出速度、塗布膜の膜厚、塗布材の用途等に応じて適切な上記台形孔等の形状を選択して使用することができる。
【0017】
また、吐出口を台形孔、略台形孔、又は内側面が外側に膨らむ形状の略台形孔(以下、「台形孔等」と言う。)とした場合は、略半円形孔、又は略三角形孔(以下、「略半円形孔等」と言う。)とした場合と比較して、それぞれの吐出口の縦横の各寸法を同一としたときに、台形孔等の開口面積が略半円形孔等の開口面積よりも大きいので、同じ膜厚の塗布膜を形成するときは、台形孔等とした方が略半円形孔等とするよりも、吐出口での圧力損失を小さくすることができる。よって、吐出エネルギの省力化を図ることができる。
【0018】
更に、吐出口を台形孔等とすることによって、複数の吐出口から吐出された塗布材の互いに隣合う2つの吐出流が、塗布面上で互いに繋がり合ったときに、その繋がり部分をそれ以外の部分と略同一の膜厚にすることが容易となる。
【0019】
そして、吐出口を台形孔等とするよりも、略半円形孔等とした方が、塗布膜の外側表面に形成されている複数の溝の開口度を大きくすることができる。よって、これらの溝内に存在する空気が、塗布膜と塗布面との接触面間に進入して気泡を形成する可能性を更に小さくすることができ、従って、その接触面間に気泡が残留しないようにすることができる。
【0020】
第3の発明に係るノズルは、第1又は第2の発明において、前記複数のそれぞれの吐出口は、互いに同一の形状及び大きさであって、所定の直線に沿って1列に配置され、互いに隣合って配置されている吐出口は、隔壁によって仕切られていることを特徴とするものである。
【0021】
第3の発明に係るノズルによると、各吐出口の形状及び大きさを揃えることによって、各吐出口の流路抵抗、即ち各吐出口における流量が互いに略等しくなるようにすることができる。その結果、帯状に形成される塗布膜の横幅方向の各位置における膜厚を略均一にすることができる。
【0022】
また、互いに隣合う各吐出口は、隔壁によって仕切られているので、各吐出口から吐出される吐出流どうしの間に、確実に隙間を形成することができる。これによって、複数の吐出流と塗布面との間に存在する例えば空気は、吐出流どうしの間の隙間から外側に逃がすことができる。よって、塗布膜と塗布面との間に気泡が形成されないようにすることができる。
【0023】
更に、複数の吐出口を所定の直線に沿って1列に配置したことによって、各吐出口から吐出されていく塗布材の各吐出流が、略同時に塗布面に接触して塗布されていくので、吐出流どうしが塗布面上で重なり合ってブリッジを形成して、塗布膜と塗布面との間に空気層を形成することを確実に防止することができる。
【0024】
第4の発明に係るノズルは、第1又は第2の発明において、前記複数の吐出口が少なくとも2列に設けられ、一方の列の互いに隣合う2つの前記吐出口の間の位置に、他方の列の前記吐出口が設けられていることを特徴とするものである。
【0025】
第4の発明に係るノズルによると、複数の吐出口を2列以上にして設け、一方の列の互いに隣合う2つの吐出口の間の位置に他方の列の吐出口を設けることによって、一方の列の吐出口と、他方の列の吐出口との、列の長さ方向の間隔を小さくすることができる。なぜなら、一方の吐出口の列と、他方の吐出口の列との間隔を確保することができるので、吐出口から吐出される吐出流どうしが、吐出される当初においては繋がらず、隙間が形成されるようにすることができるからである。そして、このように吐出流どうしの間に隙間を形成できると、塗布膜と塗布面との間に空気が残留して気泡が形成されないようにすることができる。そして、上記のように、吐出口どうしの間隔を小さくできるので、塗布面に塗布された帯状の塗布膜の横幅方向の各位置における膜厚のばらつきを更に小さくすることができる。
【0026】
第5の発明に係るノズルは、第4の発明において、前記一方の列の互いに隣合う2つの前記吐出口の略中間位置に前記他方の列の前記吐出口が設けられ、前記一方の列の互いに隣合う2つの前記吐出口を仕切る隔壁の最も薄い部分の厚み寸法が、前記略中間位置に設けられている前記他方の列の前記吐出口における、前記厚みと同方向の最も広い部分の内側寸法と一致又は略一致することを特徴とするものである。
【0027】
第5の発明に係るノズルによると、一方の列の互いに隣合う2つの吐出口から吐出される塗布材の2つの第1吐出流の間に形成される第1隙間に、他方の列の吐出口から吐出される塗布材の1つの第2吐出流が存在することとなり、この第1隙間と第2吐出流における、塗布膜の横幅方向のそれぞれの寸法が一致又は略一致している。これによって、これら2つの第1吐出流、及びその間に吐出される1つの第2吐出流が塗布面に塗布されたときに、互いに隣合う第1吐出流と、その間に塗布される第2吐出流とが互いに確実に繋がるようにすることができる。これによって、帯状の塗布膜の横幅方向の各位置における膜厚のばらつきを小さくすることができる。
【0028】
第6の発明に係る塗布膜形成方法は、複数の吐出口から塗布材を吐出しながら、前記複数の吐出口を塗布面に対して相対的に所定方向に移動させることによって、前記塗布面上に帯状の塗布膜を形成することができるノズルであって、前記複数のそれぞれの吐出口は、第1吐出領域と第2吐出領域とを有し、前記第1吐出領域は、前記塗布膜が前記塗布面に接触する側の内側表面を形成する塗布材が通る領域であり、前記第2吐出領域は、前記塗布膜の外側表面を形成する塗布材が通る領域であり、前記各吐出口は、前記第1吐出領域から前記第2吐出領域に向かうに従って、前記塗布膜の横幅と同方向の横幅が狭くなるように形成されているノズルを使用して、前記塗布面上に帯状の前記塗布膜を形成することを特徴とするものである。
【0029】
第6の発明に係る塗布膜形成方法によると、第1の発明のノズルを使用して上記と同様に塗布面に帯状の塗布膜を形成することができる。
【発明の効果】
【0030】
第1の発明に係るノズル、及び第6の発明に係る塗布膜形成方法によると、帯状の塗布膜を形成するために、その塗布膜の横幅方向と対応する方向に複数の吐出口を配置する構成とすることによって、帯状の塗布膜の横幅方向の各位置における膜厚を、例えば略均一にすることができる。よって、例えば規定された膜厚を超える部分が形成され難くすることができるので、塗布材を経済的に使用できる。また、塗布材が接着材である場合は、例えば部品に別の部品等を押し付けて接着したときに、塗布膜が部品の表面に沿って許容される範囲内で広がることがあっても、余分な範囲にまで広がることがないので、塗布膜を拭き取るような作業が不要となる。
【0031】
そして、塗布材の複数の吐出流と、塗布面との間に存在する例えば空気は、吐出流どうしの間の隙間から外側に逃がすことができる構成としたので、塗布膜と塗布面との間に気泡が形成されないようにすることができる。よって、例えば塗布材が接着材である場合は、塗布膜の各部分における接着力を略均一にすることができるし、塗布材が補強材である場合は、塗布膜の各部分における補強強度を略均一にすることができる。そして、塗布材がシール材である場合は、塗布膜の各部分におけるシール強度(密封性の破れ難くさ)を略均一にすることができる。
【0032】
また、ノズルの各吐出口は、第1吐出領域から第2吐出領域に向かうに従って、横幅が狭くなるように形成され、このような各吐出口から塗布材を塗布面に吐出すると、塗布面に塗布された複数の吐出流は、外側表面に複数の溝が形成された塗布膜となる。そして、これらの複数の溝は、塗布膜の外側表面で開口しているので、これらの溝内に存在する空気が、塗布膜と塗布面との接触面間に進入して気泡を形成することがなく、従って、その接触面間に気泡が残留しないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】この発明の第1実施形態に係るノズルを使用して塗布膜を塗布面に形成している状態を示す斜視図である。
【図2】(a)は同第1実施形態に係るノズルの各吐出口から吐出される塗布材の流速を示す図、(b)は同第1実施形態に係るノズルから吐出された複数の吐出流によって塗布膜が形成されていく状態を示す拡大縦断面図、(c)は同第1実施形態に係るノズルから吐出された塗布材によって形成された塗布膜を示す縦断面図である。
【図3】同第1実施形態に係るノズルを示す斜視図である。
【図4】同第1実施形態に係るノズルを示す部分断面底面図である。
【図5】同第1実施形態に係るノズルの吐出口を示す部分拡大正面図である。
【図6】同発明の第2実施形態に係るノズルの吐出口を示す部分拡大正面図である。
【図7】同発明の第3実施形態に係るノズルの吐出口を示す部分拡大正面図である。
【図8】同発明の第4実施形態に係るノズルの吐出口を示す部分拡大正面図である。
【図9】従来のノズルを使用して塗布膜を塗布面に形成している状態を示す斜視図である。
【図10】(a)は同従来のノズルの吐出口から吐出される塗布材の流速を示す図、(b)は同従来のノズルから吐出された塗布材によって形成された塗布膜を示す拡大縦断面図である。
【図11】同従来のノズルを示し、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明に係るノズル、及びこのノズルを使用する塗布膜形成方法の第1実施形態を、図1〜図5を参照して説明する。このノズル11は、図1に示すように、例えば自動車の車体部品2の所定の塗布面2aに接着材等の塗布材3を塗布して、帯状の塗布膜12を形成することができるものである。この塗布材3は、例えば液体、又は他の流動性を有するものである。
【0035】
また、本発明に係るノズル11は、塗布材3が特に粘土のように流動性が非常に低いものや、ボンドのように、流動性が高く、かつ、粘着力が非常に大きいものを塗布する場合に特に優れた効果を発揮することができる。
【0036】
つまり、図11に示す従来のノズル1では、粘土のように流動性が非常に低い塗布材3を帯状の膜として吐出すると、塗布膜4と塗布面2aとの間に気泡8が形成された場合、その気泡8は、塗布膜4内を浮上して大気中に放出されず、そのまま残ってしまうこととなる。
【0037】
そして、従来のノズル1では、ボンドのように、流動性が高く、かつ、粘着力が非常に大きい塗布材3を帯状の膜として吐出すると、この帯状の膜が波状に屈曲して、塗布膜4と塗布面2aとの間に気泡8が形成され易く、そして、この気泡8は、上記と同様に塗布膜4内を浮上して大気中に放出されず、そのまま残ってしまうこととなる。
【0038】
これに対して、本発明に係るノズル11では、以下に説明するように、塗布膜12と塗布面2aとの間に気泡8が形成されないように塗布材3を塗布して、帯状の塗布膜12を形成することができる。
【0039】
ノズル11は、図3〜図5に示すように、平面形状が略矩形の板状体であり、上面部に塗布材3の流入口13が形成され、前面部に塗布材3の複数の吐出口14が形成されている。そして、ノズル11の内部には、図4に示すように、塗布材3の貯留部15が形成され、この貯留部15は、複数の各吐出口14及び流入口13と連通している。そして、ノズル11は、その厚みを約1/2に分割する第1部材16と、第2部材17とを備えており、この第1部材16と第2部材17とは、複数本のボルト18で締結されている。
【0040】
複数の吐出口14は、図3〜図5に示すように、ノズル11の前面部にその前面部の長さ方向に沿って横1列に設けられている。そして、図5の部分拡大正面図に示すように、横1列の複数の各吐出口14は、それぞれ同一形状及び寸法(例えば上底W1が約2mm、下底W2が約3.5mm、高さH1が約1.3mm)の台形孔であり、同一の向きに形成されている。そして、それぞれの吐出口14、・・・の列方向(横幅方向)の間隔(ピッチ)W3は、下底W2と同一寸法に形成されている。また、吐出口14の左右の内側面19、19の交差角度θは、約60°である。なお、この台形孔とは、吐出口14の孔の断面形状が台形ということである。
【0041】
ただし、吐出口14の上底W1、下底W2、高さH1、及び交差角度θは、塗布材3の性状や、このノズル11が使用される周囲の温度、湿度、吐出流量、吐出速度、塗布膜の膜厚、塗布材の用途等に応じて、これ以外の寸法及び角度に設定することができる。
【0042】
そして、図5に示すように、台形孔として形成されている各吐出口14は、吐出口14の下底側の下部を形成する第1吐出領域40と、吐出口14の上底側の上部を形成する第2吐出領域41とを有している。
【0043】
第1吐出領域40は、図2(b)に示す塗布膜12における塗布面2aに接触する側の内側表面12aを形成する塗布材3が通る領域であり、第2吐出領域41は、塗布膜12の外側表面12bを形成する塗布材3が通る領域である。そして、各吐出口14は、第1吐出領域40から第2吐出領域41に向かうに従って、塗布膜12の横幅と同方向の横幅が狭くなるように、台形孔として形成されている。
【0044】
また、図5に示すように、互いに隣合って配置されている吐出口14、14は、隔壁42によって仕切られている。この隔壁42は、正面形状が略逆三角形であり、ノズル部20に形成されている。このノズル部20の下面には、複数の台形溝が形成され、これらの複数の台形溝が吐出口14を構成している。そして、このノズル部20は、第1部材16の前壁部と、第2部材17の前壁部の間に挟み込まれて取り付けられている。この第1及び第2部材16、17は、ノズル本体21を構成している。
【0045】
上記のように構成されたノズル11を使用して塗布面2aに帯状の塗布膜12を形成するときは、図1に示すように、まず、ノズル11の複数の吐出口14を、例えば水平に配置された車体部品2の塗布面2aに対して、所定間隔を隔てて平行となるように対向させる。そして、この状態で、複数の各吐出口14から塗布材3を連続して吐出しながら、ノズル11をその吐出口14、・・・の整列方向と直交し、かつ塗布面2aと平行する方向22に移動させる。これによって、塗布面2a上に帯状の塗布膜12を形成することができる。
【0046】
そして、このようにして塗布面2a上の所定の範囲に塗布膜12を形成し、しかる後に、この塗布膜12に対して図示しない別の部品等を押し付ける。これによって、車体部品2に別の部品等を、塗布膜(接着材)12を介して接着することができる。
【0047】
ただし、この例では、車体部品2を移動させずに、ノズル11を移動させて塗布膜12を形成したが、これに代えて、ノズル11を移動させずに、車体部品2を移動させて塗布膜12を形成してもよいし、両方を互いに逆方向に移動させて塗布膜12を形成してもよい。
【0048】
次に、この実施形態のノズル11の特徴について説明する。図1に示すように、このノズル11によると、複数の各吐出口14、・・・から吐出される塗布材3は、それぞれが互いに間隔を隔てた状態で各吐出口14、・・・から線状の吐出流23、・・・となって吐出される。そして、これら複数の吐出流23、・・・は、塗布面2aに到達するまでに、又は塗布面2aに塗布されたときに隣合うものどうしが、塗布面に接触する側の部分から繋がり、塗布面2a上に帯状の塗布膜12を形成することができる。
【0049】
図2(b)では、隣合う吐出流23、23どうしの間には、溝43が形成されているが、この溝43の底部は、複数の吐出流23、・・・が各吐出口14、・・・から吐出される当初においては繋がっておらず隙間が形成されており、これら複数の吐出流23、・・・が、塗布面2aに到達するまでに、又は塗布面2aに塗布されたときに隣合うものどうしが繋がるようになっている。
【0050】
そして、複数の吐出口14、・・・は、図1〜図5等に示すように、帯状の塗布膜12の横幅方向と対応する方向に沿って設けてあり、各吐出口14、・・・の横幅方向の上底W1及び下底W2の各寸法を比較的小さく形成してある。これによって、各吐出口14、・・・内におけるその横幅方向の各位置における流速分布のばらつきを小さくすることができる。そして、各吐出口14の大きさ及び形状を揃えることによって、各吐出口14の流路抵抗を互いに略等しくなるようにすることができる。
【0051】
また、上記の構成によって、このノズル11では、図2(a)に示すように、複数のそれぞれの吐出口14から吐出される塗布材3の流速Vは、略一定となっているし、各吐出口14内の横幅方向の各位置における流速Vも略一定となっている。その結果、図2(c)に示すように、帯状に形成される塗布膜12の横幅方向の各位置における膜厚S3を略均一にすることができる。よって、例えば規定された膜厚S3を超える部分が形成され難くすることができるので、塗布材3を経済的に使用できる。
【0052】
また、図5に示すように、互いに隣合って配置されている吐出口14、14は、隔壁42によって仕切られているので、複数の吐出口14、・・・から吐出される塗布材3の複数の吐出流23は、複数の吐出口14、・・・から吐出された直後は、互いに隣合うものどうしの間には、略逆三角形の隙間が形成されるようになっている。これによって、複数の吐出流23と塗布面2aとの間に存在する例えば空気は、吐出流23どうしの間の隙間から外側に逃がすことができる。勿論、複数の吐出流23と塗布面2aとの間に存在する空気は、ノズル11の移動方向の前方に形成される、複数の吐出流23と塗布面2aとの間の前方の隙間(空間)や、横側の隙間(空間)からも外側に逃がすことができる。
【0053】
なお、図2(b)では、隣合う吐出流23、23どうしの間が繋がっているように記載されているが、実際には、隙間が形成されている。
【0054】
よって、塗布膜12と塗布面2aとの間に空気が残留して気泡8が形成されないようにすることができる。その結果、例えば塗布材3が接着材である場合は、塗布膜12の各部分における接着力を略均一にすることができるし、塗布材3が補強材である場合は、塗布膜12の各部分における補強強度を略均一にすることができる。そして、塗布材3がシール材である場合は、塗布膜12の各部分におけるシール強度(密封性の破れ難くさ)を略均一にすることができる。
【0055】
更に、図5に示すように、台形孔として形成された各吐出口14は、その下底側の第1吐出領域40から上底側の第2吐出領域41に向かうに従って、塗布膜12の横幅と同方向の横幅が狭くなるように形成されているので、各吐出口14から吐出されていく塗布材3の各吐出流23の断面形状は、塗布面2aに接触する側の内側表面12aからこれと反対側の外側表面12bに向かうに従って横幅が狭くなる形状となる。
【0056】
そして、図2(b)に示すように、このように形成された複数の吐出流23が塗布面2aに接触すると共に、隣合う吐出流23、23どうしが互いに接触したときは、その隣合う吐出流23、23どうしの間にその吐出流23の方向に沿って溝43が形成され、その溝43は、外側表面12bで開口し、その断面形状は、溝底から外側表面12bに向かうに従って溝幅が広くなる形状である。
【0057】
そして、図2(b)、(c)に示すように、これら複数の吐出流23が塗布面2aに塗布されると、塗布膜12の外側表面12bに形成されている複数の溝43は、塗布材3の粘性によって、時間が経過するに従って殆ど消失し、塗布膜12の外側表面12bが平坦な形状となる。これによって、複数の各溝43内に存在する空気は、塗布膜12と塗布面2aとの接触面間に進入することがなく塗布膜12の外側に排出され、その接触面間に気泡8が残留しないようにすることができる。
【0058】
また、図5等に示すノズル11では、吐出口14の形状を台形孔としているが、これに代えて、図には示さないが、例えば4つの内角部の断面が円弧状に形成されている略台形孔、内側面が外側に膨らむ形状の略台形孔、略半円形孔(例えば略半楕円孔)、又は略三角形孔とすることができる。
【0059】
このように、吐出口14の形状は、この吐出口14から吐出される塗布材3の性状や、このノズル11が使用される周囲の温度、湿度、粘度、吐出流量、吐出速度、吐出圧力、塗布膜12の膜厚、塗布材3の用途等に応じて適切な台形孔等の形状を選択して使用することができる。
【0060】
また、吐出口14を図5等に示す台形孔、略台形孔、又は内側面が外側に膨らむ形状の略台形孔(以下、「台形孔等」と言う。)とした場合は、略半円形孔、又は略三角形孔(以下、「略半円形孔等」と言う。)とした場合と比較して、それぞれの吐出口14の縦横の各寸法を同一としたときに、台形孔等の開口面積が略半円形孔等の開口面積よりも大きいので、同じ膜厚S3の塗布膜12を形成するときは、台形孔等とした方が略半円形孔等とするよりも、吐出口14での圧力損失を小さくすることができる。よって、吐出エネルギの省力化を図ることができる。
【0061】
更に、吐出口14を略半円形孔等とするよりも、図5に示す台形孔等とすることによって、複数の吐出口14から吐出された塗布材3の互いに隣合う2つの吐出流23、23が、塗布面2a上で互いに繋がり合ったときに、その繋がり部分をそれ以外の部分と略同一の膜厚S3にすることが容易となる。
【0062】
そして、吐出口14を図5に示す台形孔等とするよりも、略半円形孔等とした方が、塗布膜12の外側表面12bに形成されている複数の溝43の開口度を大きくすることができる。よって、これらの溝43内に存在する空気が、塗布膜12と塗布面2aとの接触面間に進入して気泡8を形成する可能性を更に小さくすることができ、従って、その接触面間に気泡8が残留しないようにすることができる。
【0063】
そして、図3及び図5に示すように、このノズル11によると、各吐出口14を台形孔として形状及び大きさを揃えることによって、各吐出口14の流路抵抗、即ち各吐出口14における流量が互いに略等しくなるようにすることができる。その結果、帯状に形成される塗布膜12の横幅方向の各位置における膜厚を略均一にすることができる。
【0064】
また、互いに隣合う各吐出口14は、正面形状が逆三角形の隔壁42によって仕切られているので、各吐出口14から吐出される吐出流23、23どうしの間に、確実に隙間を形成することができる。これによって、複数の吐出流23と塗布面2aとの間に存在する例えば空気は、吐出流23、23どうしの間の隙間から外側に逃がすことができる。よって、塗布膜12と塗布面2aとの間に気泡8が形成されないようにすることができる。
【0065】
更に、図3及び図5に示すように、複数の吐出口14を所定の直線に沿って1列に配置したことによって、各吐出口14から吐出されていく塗布材3の各吐出流23が、略同時に塗布面2aに接触して塗布されていくので、吐出流23どうしが塗布面2a上で重なり合ってブリッジを形成して、塗布膜12と塗布面2aとの間に空気層を形成することを確実に防止することができる。
【0066】
更に、図3及び図4に示すように、複数の吐出口14が形成されているノズル部20は、ノズル本体21の先端部21aに装着され、このノズル本体21の先端部21aは、先細り形状に形成され、図3に示す上面、下面、及び左右の各側面が傾斜面として形成されている。これによって、例えば図1に示す塗布作業において、ノズル11の塗布面2aに対する角度を変更したときに、ノズル本体21の先端部21aの上面(正面)、下面(背面)、及び左右の各側面が塗布面2aと接触する可能性を低くすることができる。また、作業者が目視によって吐出口14を塗布面2aの所定位置に配置しようとするときに、吐出口14の位置決めをし易くすることができる。
【0067】
このように、この実施形態に係る塗布膜形成方法によると、図1に示すように、ノズル11を使用して、上記のようにして塗布面2a上に帯状の塗布膜12を形成することができる。
【0068】
次に、本発明に係るノズルの第2実施形態を、図6を参照して説明する。図6は、第2実施形態のノズル25に設けられている複数の吐出口14を示す部分拡大正面図である。この図6に示す第2実施形態に係るノズル25と、図5に示す第1実施形態に係るノズル11とが相違するところは、吐出口14の配置の仕方である。これ以外は、第1実施形態と同等であり、同等部分を同一の図面符号で示し、それらの詳細な説明を省略する。
【0069】
この第2実施形態のノズル25は、図6に示すように、互いに隣合って配置されている吐出口14、14が隔壁44によって仕切られている。この隔壁44は、正面形状が略逆台形であり、ノズル部20に形成されている。この略逆台形の隔壁44の上底(短いほうの辺)の寸法がW4である。つまり、図6に示す第2実施形態のノズル25に設けられている吐出口14の互いに隣合うものどうしの間隔は、図5に示す第1実施形態のノズル11に設けられている吐出口14の互いに隣合うものどうしの間隔よりもW4だけ広くなっている。
【0070】
このように、吐出口14の互いに隣合うものどうしの間隔を、第1実施形態よりもW4だけ広くするのは、例えば各吐出口14から吐出される塗布材3の粘度が比較的小さく流動性が高いために、各吐出口14から吐出される吐出流23の互いに隣合うものどうしが、吐出された時点で互いに繋がり易い場合に、その互いに隣合う吐出流23、23どうしの間に隙間を確実に形成できるようにして、互いに繋がらないようにするためである。
【0071】
これによって、複数の吐出流23と塗布面2aとの間に存在する例えば空気は、吐出流23、23どうしの間の隙間、及び吐出流の横側や前方の隙間から外側に確実に逃がすことができ、塗布膜12と塗布面2aとの間に空気が残留して気泡8が形成されないようにすることができる。
【0072】
次に、本発明に係るノズルの第3実施形態を、図7を参照して説明する。図7は、第3実施形態のノズル45に設けられている複数の吐出口14を示す部分拡大正面図である。この図7に示す第3実施形態に係るノズル45と、図5に示す第1実施形態に係るノズル11とが相違するところは、吐出口14の配置の仕方である。これ以外は、第1実施形態と同等であり、同等部分を同一の図面符号で示し、それらの詳細な説明を省略する。
【0073】
この第3実施形態のノズル45では、図7に示すように、複数の吐出口14(14a、14b)が、ノズル45の前面部にその前面部の長さ方向に沿って2列に設けられている。そして、上下2列の複数の吐出口14(14a、14b)は、第1実施形態の吐出口14と同一形状及び寸法の台形孔であり、同一の向きに形成されている。ただし、上側の第1列、及び下側の第2列のそれぞれの吐出口14a、・・・、14b、・・・の列方向(横幅方向)の間隔(ピッチ)は、2×W2である。そして、各吐出口14(14a、14b)の下底の寸法W2は、当該間隔2×W2の1/2の寸法である。
【0074】
そして、図7に示すように、上側の第1列の互いに隣合う2つの吐出口14a、14aの中間位置に、下側の第2列の1つの吐出口14bが設けられている。この上側の第1列の吐出口14aと、下側の第2列の吐出口14bの列方向の間隔は、「0」である。つまり、上側の第1列の互いに隣合う2つの吐出口14a、14aを仕切る略逆台形の隔壁47の最も薄い部分(上底)の厚み寸法W2が、上側の2つの吐出口14a、14aの略中間位置に設けられている下側の第2列の吐出口14bにおける、当該厚みと同方向の最も広い部分(下底)の内側寸法W2と一致している。
【0075】
また、図7に示すように、これら上側の第1列の複数の吐出口14a、・・・は、上側の第1ノズル部20の下面に複数形成された台形溝によって構成され、下側の第2列の複数の吐出口14b、・・・は、下側の第2ノズル部46の下面に複数形成された台形溝によって構成されている。そして、これら第1及び第2列の複数の吐出口14(14a、14b)が形成されている第1及び第2ノズル部20、46は、第1部材16の前壁部と、第2部材17の前壁部の間に挟み込まれて取り付けられている。
【0076】
この図7に示すノズル45によると、複数の吐出口14(14a、14b)を上下の2列にして設け、上側の第1列の互いに隣合う2つの吐出口14a、14aの間の位置に、下側の第2列の吐出口14bを設けることによって、上側の第1列の吐出口14aと、下側の第2列の吐出口14bとの、列の長さ方向の間隔を小さくすることができる。なぜなら、上側の第1列の吐出口14aと、下側の第2列の吐出口14bとの間隔U1を確保することができるので、吐出口14a、14bから吐出される吐出流23、23どうしが、吐出される当初においては繋がらず、隙間が形成されるようにすることができるからである。そして、このように吐出流23、23どうしの間に隙間を形成できると、塗布膜12と塗布面2aとの間に空気が残留して気泡8が形成されないようにすることができる。そして、上記のように、吐出口14a、14bどうしの間隔を小さくできるので、塗布面2aに塗布された帯状の塗布膜12の横幅方向の各位置における膜厚S3のばらつきを更に小さくすることができる。
【0077】
更に、図7に示すノズル45によると、上側の第1列の互いに隣合う2つの吐出口14a、14aから吐出される塗布材3の2つの第1吐出流23、23の間に形成される第1隙間に、下側の第2列の吐出口14bから吐出される塗布材3の1つの第2吐出流23が存在することとなり、この第1隙間と第2吐出流23における、塗布膜12の横幅方向のそれぞれの寸法が一致又は略一致している。これによって、これら2つの第1吐出流23、23、及びその間に吐出される1つの第2吐出流23が塗布面2aに塗布されたときに、互いに隣合う第1吐出流23、23と、その間に塗布される第2吐出流23とが互いに確実に繋がるようにすることができる。これによって、帯状の塗布膜12の横幅方向の各位置における膜厚S3のばらつきを小さくすることができる。
【0078】
次に、本発明に係るノズルの第4実施形態を、図8を参照して説明する。図8は、第4実施形態のノズル48に設けられている複数の吐出口14(14a、14b)を示す部分拡大正面図である。この図8に示す第4実施形態に係るノズル48と、図7に示す第3実施形態に係るノズル45とが相違するところは、吐出口14(14a、14b)の配置の仕方である。これ以外は、第3実施形態と同等であり、同等部分を同一の図面符号で示し、それらの詳細な説明を省略する。
【0079】
この第4実施形態のノズル48は、図8に示すように、上側の第1列の吐出口14aと、下側の第2列の吐出口14bの列方向(横幅方向)の間隔は、W4である。つまり、上側の第1列の互いに隣合う2つの吐出口14a、14aを仕切る略逆台形の隔壁49の最も薄い部分(上底)の厚み寸法(W2+2×W4)が、その2つの吐出口14a、14aの略中間位置に設けられている下側の第2列の吐出口14bにおける、当該厚みと同方向の最も広い部分(下底)の内側寸法W2よりも2×W4だけ大きく形成されている。
【0080】
このように、図8に示す上側の第1列の吐出口14aと、下側の第2列の吐出口14bの列方向(横幅方向)の間隔を、図7に示すものよりもW4だけ広くするのは、図6に示す第2実施形態と同様に、例えば各吐出口14から吐出される吐出流23の互いに隣合うものどうしが、吐出された時点で確実に隙間を形成できるようにして、互いに繋がらないようにするためである。これによって、塗布膜12と塗布面2aとの間に空気が残留して気泡8が形成されないようにすることができる。なお、上下の第1及び第2列の各吐出口14a、14bのピッチは、W5である。
【0081】
ただし、上記第1〜第4実施形態では、塗布材3として接着材を塗布面2aに塗布する例を示したが、接着材以外に、例えば補強材やシール材を塗布面2aに塗布することができる。
【0082】
そして、上記第1〜第4実施形態では、自動車の車体部品2の塗布面2aに対して塗布材3を塗布する例を示したが、自動車の車体部品2以外の各種部品又は製品等の塗布面に対して塗布材3を帯状に塗布することができる。
【0083】
また、図5〜図8に示す第1〜第4実施形態のノズル11等では、吐出口14等を1列又は2列にして設けたが、形成しようとする塗布膜12の膜厚S3や塗布材3の性状等に応じて、吐出口14等を3列以上としてもよい。そして、このように吐出口14等を3列以上とするときは、各列の吐出口14等から吐出された吐出流23が塗布面2aに塗布されたときに、互いに隣合う吐出流23どうしが互いに重なり合わないように、又は互いに重なり合う部分が少なくなるように設けるとよい。このように、互いに隣合う吐出流23どうしが重なり合うと、この重なり合った部分に気泡8が形成される可能性があるからである。
【0084】
そして、形成しようとする塗布膜12の膜厚S3を均一にしようとする場合や、塗布膜12の横幅方向の各位置における膜厚を均一にせずに、所定寸法となるようにする場合に応じて、吐出口14等の個数や配置を設定したり、それぞれの吐出口14等の形状や大きさを変えるようにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
以上のように、本発明に係るノズル、及び塗布膜形成方法は、塗布膜と塗布面との間に気泡が形成されることなく、しかも例えば略均一な膜厚の塗布膜を形成することができる優れた効果を有し、このようなノズル、及び塗布膜形成方法に適用するのに適している。
【符号の説明】
【0086】
2 車体部品
2a 塗布面
3 塗布材
8 気泡
11、25、45、48 ノズル
12 塗布膜
12a 内側表面
12b 外側表面
13 流入口
14、14a、14b 吐出口
15 貯留部
16 第1部材
17 第2部材
18 ボルト
19 吐出口の内側面
20 ノズル部(第1ノズル部)
21 ノズル本体
21a 先端部
22 移動方向
23 吐出流
40 第1領域
41 第2領域
42、44、47、49 隔壁
43 溝
46 第2ノズル部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の吐出口から塗布材を吐出しながら、前記複数の吐出口を塗布面に対して相対的に所定方向に移動させることによって、前記塗布面上に帯状の塗布膜を形成することができるノズルにおいて、
前記複数のそれぞれの吐出口は、第1吐出領域と第2吐出領域とを有し、
前記第1吐出領域は、前記塗布膜における前記塗布面に接触する側の内側表面を形成する塗布材が通る領域であり、
前記第2吐出領域は、前記塗布膜の外側表面を形成する塗布材が通る領域であり、
前記各吐出口は、前記第1吐出領域から前記第2吐出領域に向かうに従って、前記塗布膜の横幅と同方向の横幅が狭くなるように形成されていることを特徴とするノズル。
【請求項2】
前記複数のそれぞれの吐出口は、台形孔、略台形孔、内側面が外側に膨らむ形状の略台形孔、略半円形孔、又は略三角形孔であることを特徴とする請求項1記載のノズル。
【請求項3】
前記複数のそれぞれの吐出口は、互いに同一の形状及び大きさであって、所定の直線に沿って1列に配置され、互いに隣合って配置されている吐出口は、隔壁によって仕切られていることを特徴とする請求項1又は2記載のノズル。
【請求項4】
前記複数の吐出口が少なくとも2列に設けられ、一方の列の互いに隣合う2つの前記吐出口の間の位置に、他方の列の前記吐出口が設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載のノズル。
【請求項5】
前記一方の列の互いに隣合う2つの前記吐出口の略中間位置に前記他方の列の前記吐出口が設けられ、前記一方の列の互いに隣合う2つの前記吐出口を仕切る隔壁の最も薄い部分の厚み寸法が、前記略中間位置に設けられている前記他方の列の前記吐出口における、前記厚み寸法と同方向の最も広い部分の内側寸法と一致又は略一致することを特徴とする請求項4記載のノズル。
【請求項6】
複数の吐出口から塗布材を吐出しながら、前記複数の吐出口を塗布面に対して相対的に所定方向に移動させることによって、前記塗布面上に帯状の塗布膜を形成することができるノズルであって、
前記複数のそれぞれの吐出口は、第1吐出領域と第2吐出領域とを有し、
前記第1吐出領域は、前記塗布膜が前記塗布面に接触する側の内側表面を形成する塗布材が通る領域であり、
前記第2吐出領域は、前記塗布膜の外側表面を形成する塗布材が通る領域であり、
前記各吐出口は、前記第1吐出領域から前記第2吐出領域に向かうに従って、前記塗布膜の横幅と同方向の横幅が狭くなるように形成されているノズルを使用して、
前記塗布面上に帯状の前記塗布膜を形成することを特徴とする塗布膜形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−269219(P2010−269219A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−121338(P2009−121338)
【出願日】平成21年5月19日(2009.5.19)
【出願人】(000239758)兵神装備株式会社 (76)
【Fターム(参考)】