ノッチフィルタ
【課題】位相反転用のインダクタからなる直列腕と減衰域に対応する周波数で直列共振を起こす素子部からなる並列腕とを備えたノッチフィルタにおいて、これら直列腕及び並列腕を基板上に実装した場合であっても、減衰域における特性の劣化を抑えること。
【解決手段】内部領域に導電路34の形成されたパッケージ基板5上にインダクタ11及びSAW共振子12(圧電基板4)を配置して、この導電路34を介してSAW共振子12を接地する。そして、前記SAW共振子12と前記接地ポート3との間に、前記減衰域に対応する周波数において前記導電路34のインダクタ成分と直列共振が起こるように容量値の設定された容量成分37を接続して直列共振回路21を構成する。
【解決手段】内部領域に導電路34の形成されたパッケージ基板5上にインダクタ11及びSAW共振子12(圧電基板4)を配置して、この導電路34を介してSAW共振子12を接地する。そして、前記SAW共振子12と前記接地ポート3との間に、前記減衰域に対応する周波数において前記導電路34のインダクタ成分と直列共振が起こるように容量値の設定された容量成分37を接続して直列共振回路21を構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばSAW(surface acoustic wave:弾性表面波)を利用したノッチフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
SAW(surface acoustic wave:弾性表面波)などを利用したフィルタの一つとして、図24に示すように、一部の周波数帯域(減衰域)を減衰させると共に、当該減衰域よりも高域側及び低域側に各々通過域を形成するノッチフィルタ(バンドエリミネーションフィルタ)が知られている。このフィルタは、図25に示すように、複数例えば3つのインダクタ101を互いに直列に配置して、これらインダクタ101、101間にSAW共振子102を各々並列に接続して構成される。そして、これらSAW共振子102の直列共振周波数(共振点)を前記減衰域において互いにずらすことにより、減衰域がなるべく広い帯域に亘って形成されるように、また当該帯域に亘って大きな減衰量が得られるようにしている。各々のSAW共振子102は接地されている。図25中110は入力ポート、111は出力ポートである。
【0003】
各々のSAW共振子102は、図26に示すように、例えばタンタル酸リチウム(LiTaO3)などの圧電基板103上にパターニングされた状態でアルミナ(Al2O3)などの基板104上に配置される。また、インダクタ101は、例えば外付けのコイルとしてこの基板104上に配置される。そして、各々のSAW共振子102は、基板104上に引き回された電極106を介して既述の図25のように接続されると共に、基板104を上下に貫通する貫通孔107内に埋め込まれた電極を介して接地電極112に接地される。図26中108はSAW共振子102と貫通孔107の電極とを接続するバンプ、109は基板104上を覆うケース体である。
【0004】
ここで、SAW共振子102のパターニングされた既述の圧電基板103とインダクタ101とを基板104上に実装して周波数特性を評価すると、基板104上に配置せずに評価した場合と比べて、減衰域における減衰量が劣化してしまう。即ち、各々のSAW共振子102が接地されるまでの導電路例えば貫通孔107内の電極がインダクタンスなどの分布定数成分120を持つので、既述の図24の下側に示すように、各々のSAW共振子102の共振点同士が例えば互いにカップリングしてしまい、減衰量が劣化して(減衰量が小さくなって)しまう。
特許文献1には、弾性波共振子Pとグラウンド電位との間にインダクタンスLaが生じることや、弾性波共振子P14を通過帯域において容量性にすることについて記載されているが、既述の課題には触れられていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開WO2007/015331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、位相反転用のインダクタからなる直列腕と減衰域に対応する周波数で直列共振を起こす素子部からなる並列腕とを備えたノッチフィルタにおいて、並列腕を基板上に実装した場合であっても、減衰域における特性の劣化を抑えることのできるフィルタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のノッチフィルタは、
低域側及び高域側に各々形成された通過域の間に減衰域を設けるためのノッチフィルタにおいて、
入力ポートと出力ポートとの間に直列腕として互いに直列に接続された複数の位相反転用のインダクタと、
絶縁板と、
この絶縁板の一面側及び他面側に夫々形成された第1の電極部及び接地ポートをなす第2の電極部と、
これら第1の電極部及び第2の電極部を互いに接続するために前記絶縁板の内部に形成された導電路と、
互いに隣接する前記直列腕の間に各々の一端側が接続されると共に前記第1の電極部に各々の他端側が接続された、前記減衰域に対応する周波数で直列共振を起こす並列腕である複数の素子部と、
前記素子部と前記第2の電極部との間に介在して設けられ、前記減衰域に対応する周波数において前記導電路のインダクタ成分と直列共振が起こるように容量値が設定された容量成分と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
前記絶縁板の一面側及び他面側に夫々前記第1の電極部及び前記第2の電極部に隣接して設けられ、第1の補助電極部及び補助接地ポートをなす第2の補助電極部と、
これら第1の補助電極部及び第2の補助電極部を互いに接続するために前記絶縁板の内部に形成された補助導電路と、
前記素子部の前記他端側及び前記第1の補助電極部を互いに接続するための並列信号路と、を備え、
前記容量成分は、前記素子部と前記第2の電極部との間に介在して設けられ、前記減衰域に対応する周波数において前記導電路のインダクタ成分と直列共振が起こるように容量値が設定されていることに代えて、前記素子部と前記第2の補助電極部との間に介設して設けられ、前記減衰域から外れた周波数において前記導電路のインダクタ成分と並列共振が起こるように容量値が設定されていても良い。
【0009】
前記導電路と前記補助導電路との間の離間距離は、600μm以下であっても良い。
前記容量成分は、2枚の金属層の間に誘電体層が介設された積層膜であり、これら金属層の一方が前記素子部側に接続されていても良いし、その場合には前記素子部は、圧電基板上に形成されたSAW共振子であり、前記容量成分は、この圧電基板上に配置されていても良い。
【0010】
前記直列腕は、位相反転用のインダクタに代えて、前記減衰域に対応する周波数において並列共振を起こす素子部であり、
前記並列腕は、前記減衰域に対応する周波数において直列共振を起こす素子部に代えて、位相反転用のインダクタであっても良い。
前記容量成分は、前記導電路のインダクタ成分と直列共振が起こるように容量値が設定されていることに代えて、前記素子部と前記第2の電極部との間におけるインダクタ成分と直列共振が起こるように容量値が設定されていても良い。
前記容量成分は、前記導電路のインダクタ成分と並列共振が起こるように容量値が設定されていることに代えて、前記素子部と前記第2の電極部との間におけるインダクタ成分と並列共振が起こるように容量値が設定されていても良い。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、位相反転用のインダクタからなる直列腕と減衰域に対応する周波数で直列共振を起こす素子部からなる並列腕とを備えたノッチフィルタにおいて、内部領域に導電路の形成された絶縁板上に並列腕を配置して、この導電路を介して並列腕を接地ポートに接地している。そして、接地ポートと並列腕との間に、前記減衰域に対応する周波数において前記導電路のインダクタ成分と直列共振が起こるように容量値の設定された容量成分を介設している。そのため、並列腕を絶縁板上に実装した場合であっても、導電路のインダクタ成分が減衰域において見かけ上小さく抑えられるので、あるいはインダクタ成分の影響がなくなるので、各々の並列腕によって形成される共振点の極同士のカップリングを抑えることができ、従って減衰域における減衰量及び減衰幅の良好なノッチフィルタを得ることができる。また、別の発明は、導電路に隣接するように絶縁板に補助導電路を形成し、前記補助導電路の補助接地ポートと当該補助接地ポートに接続される前記並列腕との間に、前記減衰域から外れた周波数帯域において前記導電路のインダクタ成分と並列共振が起こるように容量値の設定された容量成分を接続しているので、減衰域における減衰量及び減衰幅の良好なノッチフィルタを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施の形態におけるノッチフィルタを示す回路図である。
【図2】前記フィルタの概観を示す斜視図である。
【図3】前記フィルタに積載される圧電基板を示す平面図である。
【図4】前記フィルタを示す縦断面図である。
【図5】前記フィルタの一部を拡大して示す縦断面図である。
【図6】前記フィルタいおける圧電基板を一部拡大して示す斜視図である。
【図7】従来のフィルタについてシミュレーションにより得られた特性を示す特性図である。
【図8】本発明のフィルタについてシミュレーションにより得られた特性を示す特性図である。
【図9】本発明のフィルタについてシミュレーションにより得られた特性を示す特性図である。
【図10】前記フィルタの他の例を示す一部拡大縦断面図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態におけるノッチフィルタを示す回路図である。
【図12】前記フィルタに積載される圧電基板を示す平面図である。
【図13】前記フィルタを示す縦断面図である。
【図14】前記フィルタの一部を拡大して示す縦断面図である。
【図15】本発明のノッチフィルタについてシミュレーションを行った結果を示す特性図である。
【図16】従来のノッチフィルタについてシミュレーションを行った結果を示す特性図である。
【図17】ノッチフィルタについてシミュレーションを行った結果を示す特性図である。
【図18】ノッチフィルタについてシミュレーションを行った結果を示す特性図である。
【図19】ノッチフィルタについてシミュレーションを行った結果を示す特性図である。
【図20】ノッチフィルタについてシミュレーションを行った結果を示す特性図である。
【図21】ノッチフィルタについてシミュレーションを行った結果を示す特性図である。
【図22】ノッチフィルタについてシミュレーションを行った結果を示す特性図である。
【図23】前記フィルタの他の例を示す回路図である。
【図24】従来のフィルタの周波数特性を示す模式図である。
【図25】従来のフィルタを示す回路図である。
【図26】従来のフィルタの概観を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1の実施の形態:直列共振]
本発明の第1の実施の形態のノッチフィルタの一例について、図1〜図6を参照して説明する。このノッチフィルタは、一部の周波数帯域この例では800MHz〜880MHz帯を減衰域にすると共に、当該減衰域よりも低域側及び高域側に通過域を配置したフィルタであり、図1に示すように、直列腕である位相反転用のインダクタ11と、並列腕である素子部この例ではSAW共振子12とがラダー型に接続された回路構成となっている。即ち、複数例えば3つのインダクタ11が入力ポート1と出力ポート2との間に互いに直列に接続され、互いに隣接するインダクタ11、11間及びインダクタ11とポート1、2との間にSAW共振子12の一端側が各々並列に接続されている。これらSAW共振子12の他端側は、並列信号路12aを介して互いに並列に接続されると共に、接地ポート3に接続されている。この例では、接地ポート3は、並列信号路12aに互いに並列に2つ設けられている。各々の接地ポート3と並列信号路12aとの間には、後で詳述するように、既述の減衰域に対応する周波数にて直列共振を起こす直列共振回路21が介設されている。即ち、この直列共振回路21では、直列共振周波数(共振点)が減衰域内の周波数例えば840MHzとなるように設定されている。
【0014】
続いて、ノッチフィルタの概観について、図2を参照して説明する。このノッチフィルタは、例えばアルミナ(Al2O3)などからなる共通の絶縁板であるパッケージ基板5上に配置されており、例えばコイルなどの部品として設けられた既述のインダクタ11と、裏面側(パッケージ基板5側)に4つのSAW共振子12のパターニングされた例えばタンタル酸リチウム(LiTaO3)などの圧電基板4と、を備えている。このパッケージ基板5上には、これらインダクタ11及び圧電基板4を上方側から覆うように、下方側が開口する概略箱型の蓋体6が設けられている。尚、図2ではこの蓋体6については輪郭を一点鎖線で示しており、また圧電基板4の一部を切り欠いて描画している。また、パッケージ基板5上には、これらインダクタ11とSAW共振子12(圧電基板4)とを接続する導電線路31が形成されているが、この導電線路31について図2では一部を省略しており、これらインダクタ11及び導電線路31の配置レイアウトについては模式的に示している。
【0015】
次いで、圧電基板4上におけるSAW共振子12の配置レイアウトについて説明すると、圧電基板4上には、図3に示すように、弾性波の伝搬方向に対して直交する方向(図3中左右方向)に4つのSAW共振子12が互いに離間して配置されている。そして、これらSAW共振子12よりも弾性波の伝搬方向(図3中前後方向)における手前側及び奥側には、既述の図1に示した電気回路となるようにこれらSAW共振子12とインダクタ11及び各ポート1、2、3とを互いに接続するために、概略矩形に形成された金属膜13が各々複数箇所例えば4箇所ずつ配置されている。
【0016】
即ち、圧電基板4の手前側には、左側から右側に向かって入力ポート1に接続される金属膜13、入力ポート1側から1つ目のインダクタ11と入力ポート1側から2つ目のインダクタ11とを接続する金属膜13及び接地ポート3に接続される2つの金属膜13、13がこの順番で配置されている。接地ポート3に接続される金属膜13、13は、内部構造については後で詳述するが、平面的に見ると2つの金属膜13、13が横並びに配置され、これら金属膜13、13が側方領域を介してSAW共振子12と接地ポート3との間において互いに直列に接続されている。接地ポート3に接続されるこれら2つの金属膜13、13について、接地ポート3側の金属膜13に「13a」、SAW共振子12側の金属膜13に「13b」の符号を付すと、金属膜13aは圧電基板4の端部領域に配置され、金属膜13bは当該金属膜13aよりも入力ポート1側に寄った位置に配置されている。
【0017】
圧電基板4の奥側には、左側から右側に向かって、接地ポート3に接続される金属膜13a、13b、出力ポート2側から1つ目のインダクタ11と出力ポート2側から2つ目のインダクタ11とを互いに接続する金属膜13及び出力ポート2に接続される金属膜13がこの順番で配置されている。図3中14は、互いに櫛歯状に交差するように配置された複数本の電極指14aと、これら電極指14aの一端側を接続すると共に互いに平行に配置された一対のバスバー14bとを備えたIDT(Inter Digital Transducer)電極である。また、15は弾性波の伝搬方向においてIDT電極14の両側に配置された反射器である。尚、図3は、既述の図2における圧電基板4を裏面側(パッケージ基板5側)から見た様子を示している。
【0018】
そして、引き回し電極16を介して、これらSAW共振子12と金属膜13とが既述の図1に示す回路となるように接続されている。即ち、図3の4つのSAW共振子12について、左側から右側に向かって「第1のSAW共振子12」、「第2のSAW共振子12」、「第3のSAW共振子12」及び「第4のSAW共振子12」と呼ぶと共に、IDT電極14の一対のバスバー14b、14bのうち左側を第1のバスバー14b、右側を第2のバスバー14bと呼ぶと、図3中手前側の左端の領域において入力ポート1に接続される金属膜13から伸びる引き回し電極16は、第1のSAW共振子12における第2のバスバー14bに接続されている。この第1のSAW共振子12における第1のバスバー14bは、引き回し電極16を介して、当該第1のSAW共振子12の側方領域を圧電基板4の奥側に回り込んで金属膜13bに接続されている。
【0019】
第2のSAW共振子12の第1のバスバー14bは、圧電基板4の手前側において、入力ポート1側から1つ目のインダクタ11と入力ポート1側から2つ目のインダクタ11とを接続する金属膜13に引き回し電極16を介して接続されている。この第2のSAW共振子12における第2のバスバー14bは、引き回し電極16を介して、第3のSAW共振子12における第1のバスバー14bに接続されると共に、圧電基板4の奥側及び手前側において金属膜13b、13bに各々接続されている。第3のSAW共振子12における第2のバスバー14bは、引き回し電極16を介して、圧電基板4の奥側において出力ポート側から1つ目のインダクタ11と出力ポート2側から2つ目のインダクタ11との間の金属膜13に接続されている。第4のSAW共振子12は、引き回し電極16を介して、圧電基板4の奥側の領域において第1のバスバー14bが出力ポート2に向かう金属膜13に接続されると共に、第2のバスバー14bが圧電基板4の手前側において金属膜13bに接続されている。尚、図3では、これらSAW共振子12、金属膜13及び引き回し電極16について、圧電基板4上の領域と区別するためにハッチングを付しており、インダクタ11について模式的に示している。
【0020】
そして、図4に示すように、圧電基板4におけるこれらSAW共振子12や金属膜13の形成された面をパッケージ基板5側に当接させると共に、既述の図2に示すように、当該パッケージ基板5に形成された導電線路31と各々の金属膜13、13aとを直径寸法が例えば200μm程度のバンプ32を介して接続する。この導電線路31により、パッケージ基板5上においてインダクタ11とSAW共振子12とが既述のように接続される。また、このパッケージ基板5には、金属膜13aに接続されるバンプ32から側方側に離れた位置に、上下に貫通する貫通口(ビアホール)33が形成されている。この貫通口33内には、例えば銅(Cu)などの金属体が導電路34として埋め込まれており、この導電路34の上端側である第1の電極部が導電線路31及びバンプ32を介して金属膜13aに接続されると共に、下端側が既述の接地ポート(第2の電極部)3をなしている。導電路34は、直径寸法(幅寸法)及び高さ寸法が夫々例えば150μm及び100μmとなっており、従って既述の図1に示すように、インダクタ成分や抵抗成分などを含む分布定数成分38を持っている。接地ポート3と、当該接地ポート3に接続されるSAW共振子12と、の間におけるバンプ32、引き回し電極16及び金属膜13a、13bは、既述の並列信号路12aに相当する。尚、図4では、金属膜13aについて模式的に示している。また、パッケージ基板5の下面側に、導電路34の下方側を覆うように金属膜からなる接地ポート3を形成したが、当該金属膜を設けない場合には、導電路34の下端部が接地ポート3をなす。
【0021】
続いて、金属膜13a、13b及び金属膜13aとバンプ32との接続部分について詳述する。図5は、金属膜13aとバンプ32との接続部分を拡大して示したものであり、金属膜13bと圧電基板4との間には、例えばSiO2(二酸化珪素)などからなる誘電体層35と金属層36とが当該金属膜13b側から圧電基板4側に向かってこの順番で積層されている。そして、この誘電体層35は、金属膜13a側における側壁部が金属層36の側面を覆うように圧電基板4側に向かって直角に屈曲しており、これら金属膜13a、13bと金属層36とが誘電体層35を介して接続されるように、即ち金属膜13a、13bと金属層36とが直接接触しないように配置されている。従って、これら金属膜13b、誘電体層35及び金属層36は、コンデンサからなる容量成分37をなしており、並列信号路12aと金属膜13aとの間に介設されている。この容量成分37は、容量値が450pF〜50000pF例えば850pF程度となるように、誘電体層35の膜厚、表面積及び比誘電率(当該誘電体層35の材質)が設定されている。この例では、これら誘電体層35の膜厚、表面積及び比誘電率(当該誘電体層35の材質)は、夫々50nm、490000μm2(700μm×700μm)及びεr=10となっている。
【0022】
ここで、容量成分37の形成方法の一例について、図6を参照して説明する。先ず、圧電基板4上にSAW共振子12、引き回し電極16及び金属層36をフォトレジスト法により形成する。次いで、図示しない誘電体からなる薄膜を圧電基板4上に積層し、同様にフォトレジスト法によって金属層36の上方側及び当該金属層36における金属膜13a側の側壁部以外の誘電体薄膜を取り除く。そして、フォトレジスト法によって金属膜13(金属膜13a、13b)を圧電基板4上に形成する。こうして既述の容量値となるように、容量成分37が形成される。尚、図6では容量成分37の厚み寸法を模式的に(実際よりも厚く)描画しているが、金属層36及び誘電体層35の膜厚が極めて薄いため、金属膜13a、13bは、これら金属層36及び誘電体層35を跨ぐように形成される。
【0023】
従って、接地ポート3と当該接地ポート3に接続されるSAW共振子12との間には、各々並列信号路12a及び導電路34が配置され、当該並列信号路12aには容量成分37が各々介設されている。そして、既述のように導電路34が分布定数成分38を持っていることから、この分布定数成分38のインダクタ成分と容量成分37とが直列共振回路21を構成している。この直列共振回路21は、分布定数成分38のインダクタ成分の大きさに応じて、具体的には導電路34の各寸法や材質に応じて、ノッチフィルタの減衰域に対応する周波数において直列共振が起こるように、既述の容量成分37における容量値が設定されている。
【0024】
そのため、入力ポート1と出力ポート2との間に電気信号が流れて、各々のSAW共振子12において直列共振が起こると、導電路34のインダクタ成分によってSAW共振子12と接地ポート3との間における電気信号の流れが阻害されようとする。しかし、減衰域に対応する周波数においてインダクタ成分と直列共振が起こるように当該インダクタ成分に容量成分37を接続して直列共振回路21を構成しているので、減衰域においてSAW共振子12と接地ポート3との間において電気信号が極めて容易に流れることになる。従って、導電路34のインダクタ成分による阻害が抑えられた状態で各々のSAW共振子12において直列共振の極が形成され、そのため減衰域において良好な(大きな)減衰量が得られる。
【0025】
ここで、図7は、パッケージ基板5上に各部品(インダクタ11及び圧電基板4)を搭載した状態のフィルタ特性と、パッケージ基板5にこれら部品を搭載せずにチップ状のフィルタ特性とをシミュレーションした結果を示しており、導電路34のインダクタ成分によって減衰域における減衰量が劣化していることが分かる。一方、図8に示すように、導電路34に容量成分37を直列に接続して直列共振回路21を形成することにより、チップ状で得られた特性とほぼ同程度の減衰量が得られている。
【0026】
上述の実施の形態によれば、インダクタ11からなる直列腕と減衰域に対応する周波数で直列共振を起こす素子部であるSAW共振子12からなる並列腕とを備えたノッチフィルタにおいて、内部領域に導電路34の形成されたパッケージ基板5上にインダクタ11及びSAW共振子12(圧電基板4)を配置して、この導電路34を介してSAW共振子12を接地している。そして、前記SAW共振子12と前記接地ポート3との間に、前記減衰域に対応する周波数において前記導電路34のインダクタ成分と直列共振が起こるように容量値の設定された容量成分37を接続している。そのため、SAW共振子12をパッケージ基板5上に実装した場合であっても、導電路34のインダクタ成分が減衰域において見かけ上抑えられるので、各々のSAW共振子12によって形成される共振点の極同士のカップリングを抑えることができ、従って減衰域における減衰量及び減衰幅の良好なノッチフィルタを得ることができる。
【0027】
また、導電路34毎に個別に容量成分37を配置しているので、いずれのSAW共振子12についても共振点の極を大きくできる。更に、誘電体層35が既述のように薄膜であり壊れやすいが、圧電基板4とパッケージ基板5とをバンプ32により接続するにあたり、当該誘電体層35から側方側に外れた領域にバンプ32を形成しているので、バンプ32の形成時において誘電体層35が破壊されることを抑えることができ、従って歩留まり高くフィルタを製造できる。
【0028】
ここで、容量成分37の容量値について計算したところ、容量成分37を設けない場合と比べて、図9に示すように、450pF〜50000pFの範囲において良好な減衰量の得られることが分かった。尚、この時の導電路34のインダクタ成分の大きさについては0.05nH(導電路34の幅寸法及び高さ寸法が夫々150μm及び100μm)として計算した。即ち、容量成分37の好ましい容量値は、導電路34のインダクタ成分の大きさ即ち導電路34の各寸法や材質によって様々であるが、インダクタ成分の大きさが既述の値であれば450pF〜50000pFとなる。
【0029】
以上の例では、容量成分37を圧電基板4に配置したが、接地ポート3と、当該接地ポート3に接続されるSAW共振子12との間に配置すれば良く、例えば図10に示すように、パッケージ基板5上において導電路34の上方側に配置しても良い。具体的には、導電路34の上位置に、既述の金属層36と誘電体層35とを下側(パッケージ基板5側)からこの順番で積層し、この誘電体層35の上方側を覆うように既述の導電線路31を形成しても良い。この場合においても、金属層36と導電線路31とが直接接続されないように、誘電体層35の側壁部がパッケージ基板5側に向かって例えば直角に形成される。また、この容量成分37について、パッケージ基板5の裏面側(接地ポート3側)において導電路34に下方側から接続されるように配置して、当該容量成分37の下端部を接地ポート3としても良い。
【0030】
[第2の実施の形態:並列共振]
既述の第1の実施の形態では、接地ポート3に接続されるSAW共振子12と当該接地ポート3との間における導電路34のインダクタ成分を抑えるにあたって、容量成分37を当該導電路34に直列に接続して直列共振回路21を構成したが、この導電路34に容量成分37を並列に接続し、並列共振回路22を構成しても良い。この場合には、並列共振回路22の反共振周波数(反共振点)は、減衰域に対応する周波数から大きく外れた領域この例では700MHzに設定される。従って、この場合においても、減衰域では、接地ポート3に接続されるSAW共振子12と当該接地ポート3との間における導電路34のインダクタ成分の影響が抑えられることになる。以下に、このような並列共振を用いた例について、第2の実施の形態として説明する。尚、既述の第1の実施の形態と同じ構成の部位については同じ符号を付して説明を省略する。
【0031】
この第2の実施の形態の容量成分37は、図11に示すように、既述の接地ポート3の接続された並列信号路12aに対して各々並列に接続されている。具体的には、図12に示すように、既述の金属膜13a、13bを互いに独立して配置する(これら金属膜13a、13bを互いに接触させないように配置する)。そして、図12中奥側において、これら金属膜13a、13bに対して第1のSAW共振子12の第1のバスバー14b及び第2のSAW共振子12の第2のバスバー14bから伸びる並列信号路12aを各々互いに並列に接続すると共に、図12中手前側において、第3のSAW共振子12の第1のバスバー14b及び第4のSAW共振子12の第2のバスバー14bから伸びる並列信号路12aを金属膜13a、13bに各々並列に接続している。これら金属膜13a、13b間の離間距離は、当該金属膜13a、13bが互いに絶縁される程度にできるだけ短い寸法この例では600μm程度に設定される。
【0032】
そして、図13に示すように、パッケージ基板5に形成された既述の導電路34を介して、金属膜13aを独立して(金属膜13bとは別個に)接地ポート3に接続すると共に、この導電路34に隣接するようにパッケージ基板5に例えば銅などの金属体の埋め込まれた補助導電路34aを形成している。また、バンプ32を介して、補助導電路34aの下面に形成された補助接地ポート(第2の補助電極部)3aに、金属膜13bを独立して(金属膜13aとは別個に)接続している。これら導電路34、34a間の離間距離は、例えば30μm程度に設定される。この補助導電路34aの上端部は、第1の補助電極部をなす。尚、図13では、金属膜13a、13bの周辺の領域については簡略化して示している。
【0033】
ここで、図14に示すように、金属膜13bの圧電基板4側には、圧電基板4側から当該金属膜13bに向かって金属層36と誘電体層35とが積層されており、これら金属層36、誘電体層35及び金属膜13bによって既述の容量成分37が構成されている。従って、接地ポート3に接続された導電路34に対して、容量成分37が並列に接続されて並列共振回路22をなしている。この場合には、容量成分37の容量値は、並列共振回路22の反共振点が既述の周波数に設定されるように、誘電体層35の厚み寸法、表面積及び比誘電率(材質)が設定される。尚、既述の図11に示すように、補助導電路34aについても、インダクタ成分などを含む分布定数成分38aを持つこととなる。また、図14において、これら金属層36、誘電体層35及び金属膜13bの厚み寸法を模式的に示している。
【0034】
そのため、このフィルタにおいて入力ポート1と出力ポート2との間に電気信号が流れると、並列共振回路22では減衰域から外れた周波数において反共振点が形成されるので、当該減衰域では、接地ポート3に接続される導電路34のインダクタ成分の影響が小さくなるように(あるいはなくなるように)SAW共振子12と接地ポート3との間において電気信号が流れることになる。従って、この第2の実施の形態でも、各々のSAW共振子12の直列共振の極が形成され、良好な減衰量の減衰域となる。
【0035】
この第2の実施の形態においても、容量成分37をパッケージ基板5側(パッケージ基板5の表面における圧電基板4側あるいはパッケージ基板5と補助接地ポート3aとの間)に配置しても良い。
また、第2の実施の形態では、並列共振回路22の反共振点について既述のように設定したが、この反共振点は減衰域に対応する周波数から外れた領域に設定すれば良く、具体的には600〜800MHzあるいは850〜1000MHzに設定しても良い。更に、導電路34、34a間の離間距離としては、並列共振回路22を構成するためにできるだけ近接させることが好ましいが、これら導電路34、34a同士が互いに電気的に接続されないようにする必要がある。従って、前記離間距離としては、導電路34、34a間で絶縁を取りつつ並列共振回路22が構成される寸法、具体的には1μm〜600μm程度であることが好ましい。
【0036】
ここで、第2の実施の形態のフィルタについて行ったシミュレーション結果について説明する。図15に示すように、導電路34に対して並列に容量成分37を接続することにより、835MHz付近において−64dBもの大きな減衰量が得られている。一方、容量成分37を配置しない場合(従来のノッチフィルタ)には、図16に示すように、835MHz付近において−57dB程度の大きさの減衰量しか得られていない。
【0037】
続いて、容量成分37や分布定数成分38に含まれる抵抗成分によってノッチフィルタの周波数特性(減衰特性)がどのように変化するかシミュレーションした結果を示す。先ず、容量成分37を配置しない場合に、導電路34に分布定数成分38としてインダクタ成分だけが設けられる時の特性を図17に示す。そして、分布定数成分38に0.3Ωの抵抗成分が各々含まれる場合の特性を図18に示す。
【0038】
図19は、分布定数成分38の抵抗成分が各々0.1Ωの場合に、容量値が1000pFの容量成分37を当該抵抗成分に各々並列に設けた場合の特性を示しており、図20は、2つの分布定数成分38の各々に12Ωの抵抗成分を配置し、これら抵抗成分の一方及び他方に各々1000pFの容量成分37を各々並列に接続した特性を示している。また、図21は、2つの分布定数成分38の各々に6Ωの抵抗成分を配置すると共に、これら抵抗成分の一方及び他方に各々1000pFの容量成分37を各々並列に接続した特性を示している。これらの結果から、インダクタ成分及び容量値を変えることにより、減衰特性が変化することが分かる。尚、図19、図20及び図21では、抵抗成分に容量成分37を並列に接続するにあたり、接地ポート3とSAW共振子12との間における並列信号路12aにおいて抵抗成分よりもSAW共振子12側及び接地ポート3側から各々伸びる2本の導電路を形成し、これら導電路に容量成分37の一端側及び他端側を接続した場合(各々の容量成分37が接地ポート3に接続される場合)についてシミュレーションしている。
【0039】
図22は、2つの分布定数成分38の各々に0.3Ωの抵抗成分を配置すると共に、これら抵抗成分に対して1000pFの容量成分37を各々並列に接続すると共に、これら容量成分37を接地ポート3ではなく補助接地ポート3aに接続した場合の特性を示している。この図22では、以上の図17〜図20の例と比べて、減衰量の大きな特性が得られていることが分かる。
【0040】
[その他の例]
以上の例では、インダクタ11及びSAW共振子12を夫々3つ及び4つ配置したが、これらインダクタ11及びSAW共振子12を複数ずつ例えば4つ及び5つ配置しても良い。
【0041】
また、接地ポート3と当該接地ポート3に接続されるSAW共振子12との間における導電路34、バンプ32及び引き回し電極16からなる並列信号路12aについて、導電路34の寸法に比べてバンプ32などの寸法が小さいため、導電路34のインダクタ成分よりもバンプ32などのインダクタ成分が小さい。そのため、直列共振回路21及び並列共振回路22では導電路34のインダクタ成分と共振を起こすように容量成分37の容量値を設定したが、容量成分37として、導電路34のインダクタ成分と共振を起こすことに代えて、接地ポート3と当該接地ポート3に接続されるSAW共振子12との間の並列信号路12a及び導電路34のインダクタ成分と共振を起こすように容量値を設定しても良い。その場合には、更に減衰特性の良好なフィルタが得られる。
【0042】
また、インダクタ11及びSAW共振子12を共通のパッケージ基板5に搭載したが、インダクタ11については当該パッケージ基板5と別の基板に配置して、図示しない電極を介してこれらインダクタ11とSAW共振子12とを互いに接続しても良い。更に、複数例えば2つの接地ポート3を設けて、各々の接地ポート3に接続される導電路34に直列共振回路21あるいは並列共振回路22を配置したが、これら導電路34のうち少なくとも1つに直列共振回路21や並列共振回路22を配置しても良い。更に、複数のSAW共振子12について、導電路34及び接地ポート3を個別に設けて、各々の導電路34に直列共振回路21や並列共振回路22を接続しても良い。
【0043】
更に、以上の各例では、直列腕及び並列腕として夫々インダクタ11及びSAW共振子12を用いたが、図23に示すように、直列腕及び並列腕として夫々SAW共振子12及びインダクタ11を配置しても良い。この場合においても、SAW共振子12が圧電基板4に配置されると共に、インダクタ11及び圧電基板4がパッケージ基板5上に配置され、直列共振回路21あるいは並列共振回路22が構成されるようにインダクタ11と接地ポート3と間のインダクタ成分に対して容量成分37が直列または並列に接続される。この図23では、直列共振回路21を設けた例を示している。更に、この図23において、インダクタ11に代えて、減衰域から外れた周波数において並列共振を起こす素子例えばSAW共振子12を並列腕として配置しても良い。
【0044】
以上において、SAW共振子12は、弾性表面波を利用した共振子に代えて、圧電基板4の内部を伝播する弾性波を利用した共振子であっても良い。
更に、直列共振や並列共振を起こす素子部としては、SAW共振子12に代えて、水晶共振子、圧電薄膜共振子、MEMS共振子、誘電体を用いても良い。圧電薄膜共振子としては、例えばFBAR(Film Bulk Acoustic Resonator)やSMR(Solid Mounted Resonator)などが挙げられる。誘電体を素子部として用いる場合には、マイクロストリップラインの両側に誘電体を設けた構成となる。更に前記素子部としては、コイルとコンデンサとを並列に接続した共振回路(LC共振回路)も含まれる。
【0045】
また、容量成分37としては、金属膜13b、誘電体層35及び金属層36を積層した構成以外にも、互いに隣接する電極指14a、14a間において容量成分が各々形成される既述のIDT電極14であっても良い。このIDT電極14を容量成分37として用いる場合には、当該容量成分37は圧電基板4上またはパッケージ基板5上にパターニングされる。尚、圧電基板4上にIDT電極14からなる容量成分37を設ける場合には、当該容量成分37にて発生する弾性波が他のSAW共振子12に影響を及ぼさないように、当該容量成分37における弾性波の伝搬方向両側に反射器や吸収体が配置される。更に、容量成分37としては、外付けのコンデンサなどの部品としてパッケージ基板5上に配置しても良い。
また、本発明のフィルタが適用される電子部品としては、例えばSAWBEFや、当該フィルタを用いてデジタル地上波TVチューナモジュールなどが挙げられる。
【符号の説明】
【0046】
1 入力ポート
2 出力ポート
3 接地ポート
3a 補助接地ポート
5 パッケージ基板
12 SAW共振子
12a 並列信号路
21 直列共振回路
22 並列共振回路
34 導電路
34a 補助導電路
37 容量成分
38 分布定数成分
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばSAW(surface acoustic wave:弾性表面波)を利用したノッチフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
SAW(surface acoustic wave:弾性表面波)などを利用したフィルタの一つとして、図24に示すように、一部の周波数帯域(減衰域)を減衰させると共に、当該減衰域よりも高域側及び低域側に各々通過域を形成するノッチフィルタ(バンドエリミネーションフィルタ)が知られている。このフィルタは、図25に示すように、複数例えば3つのインダクタ101を互いに直列に配置して、これらインダクタ101、101間にSAW共振子102を各々並列に接続して構成される。そして、これらSAW共振子102の直列共振周波数(共振点)を前記減衰域において互いにずらすことにより、減衰域がなるべく広い帯域に亘って形成されるように、また当該帯域に亘って大きな減衰量が得られるようにしている。各々のSAW共振子102は接地されている。図25中110は入力ポート、111は出力ポートである。
【0003】
各々のSAW共振子102は、図26に示すように、例えばタンタル酸リチウム(LiTaO3)などの圧電基板103上にパターニングされた状態でアルミナ(Al2O3)などの基板104上に配置される。また、インダクタ101は、例えば外付けのコイルとしてこの基板104上に配置される。そして、各々のSAW共振子102は、基板104上に引き回された電極106を介して既述の図25のように接続されると共に、基板104を上下に貫通する貫通孔107内に埋め込まれた電極を介して接地電極112に接地される。図26中108はSAW共振子102と貫通孔107の電極とを接続するバンプ、109は基板104上を覆うケース体である。
【0004】
ここで、SAW共振子102のパターニングされた既述の圧電基板103とインダクタ101とを基板104上に実装して周波数特性を評価すると、基板104上に配置せずに評価した場合と比べて、減衰域における減衰量が劣化してしまう。即ち、各々のSAW共振子102が接地されるまでの導電路例えば貫通孔107内の電極がインダクタンスなどの分布定数成分120を持つので、既述の図24の下側に示すように、各々のSAW共振子102の共振点同士が例えば互いにカップリングしてしまい、減衰量が劣化して(減衰量が小さくなって)しまう。
特許文献1には、弾性波共振子Pとグラウンド電位との間にインダクタンスLaが生じることや、弾性波共振子P14を通過帯域において容量性にすることについて記載されているが、既述の課題には触れられていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開WO2007/015331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、位相反転用のインダクタからなる直列腕と減衰域に対応する周波数で直列共振を起こす素子部からなる並列腕とを備えたノッチフィルタにおいて、並列腕を基板上に実装した場合であっても、減衰域における特性の劣化を抑えることのできるフィルタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のノッチフィルタは、
低域側及び高域側に各々形成された通過域の間に減衰域を設けるためのノッチフィルタにおいて、
入力ポートと出力ポートとの間に直列腕として互いに直列に接続された複数の位相反転用のインダクタと、
絶縁板と、
この絶縁板の一面側及び他面側に夫々形成された第1の電極部及び接地ポートをなす第2の電極部と、
これら第1の電極部及び第2の電極部を互いに接続するために前記絶縁板の内部に形成された導電路と、
互いに隣接する前記直列腕の間に各々の一端側が接続されると共に前記第1の電極部に各々の他端側が接続された、前記減衰域に対応する周波数で直列共振を起こす並列腕である複数の素子部と、
前記素子部と前記第2の電極部との間に介在して設けられ、前記減衰域に対応する周波数において前記導電路のインダクタ成分と直列共振が起こるように容量値が設定された容量成分と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
前記絶縁板の一面側及び他面側に夫々前記第1の電極部及び前記第2の電極部に隣接して設けられ、第1の補助電極部及び補助接地ポートをなす第2の補助電極部と、
これら第1の補助電極部及び第2の補助電極部を互いに接続するために前記絶縁板の内部に形成された補助導電路と、
前記素子部の前記他端側及び前記第1の補助電極部を互いに接続するための並列信号路と、を備え、
前記容量成分は、前記素子部と前記第2の電極部との間に介在して設けられ、前記減衰域に対応する周波数において前記導電路のインダクタ成分と直列共振が起こるように容量値が設定されていることに代えて、前記素子部と前記第2の補助電極部との間に介設して設けられ、前記減衰域から外れた周波数において前記導電路のインダクタ成分と並列共振が起こるように容量値が設定されていても良い。
【0009】
前記導電路と前記補助導電路との間の離間距離は、600μm以下であっても良い。
前記容量成分は、2枚の金属層の間に誘電体層が介設された積層膜であり、これら金属層の一方が前記素子部側に接続されていても良いし、その場合には前記素子部は、圧電基板上に形成されたSAW共振子であり、前記容量成分は、この圧電基板上に配置されていても良い。
【0010】
前記直列腕は、位相反転用のインダクタに代えて、前記減衰域に対応する周波数において並列共振を起こす素子部であり、
前記並列腕は、前記減衰域に対応する周波数において直列共振を起こす素子部に代えて、位相反転用のインダクタであっても良い。
前記容量成分は、前記導電路のインダクタ成分と直列共振が起こるように容量値が設定されていることに代えて、前記素子部と前記第2の電極部との間におけるインダクタ成分と直列共振が起こるように容量値が設定されていても良い。
前記容量成分は、前記導電路のインダクタ成分と並列共振が起こるように容量値が設定されていることに代えて、前記素子部と前記第2の電極部との間におけるインダクタ成分と並列共振が起こるように容量値が設定されていても良い。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、位相反転用のインダクタからなる直列腕と減衰域に対応する周波数で直列共振を起こす素子部からなる並列腕とを備えたノッチフィルタにおいて、内部領域に導電路の形成された絶縁板上に並列腕を配置して、この導電路を介して並列腕を接地ポートに接地している。そして、接地ポートと並列腕との間に、前記減衰域に対応する周波数において前記導電路のインダクタ成分と直列共振が起こるように容量値の設定された容量成分を介設している。そのため、並列腕を絶縁板上に実装した場合であっても、導電路のインダクタ成分が減衰域において見かけ上小さく抑えられるので、あるいはインダクタ成分の影響がなくなるので、各々の並列腕によって形成される共振点の極同士のカップリングを抑えることができ、従って減衰域における減衰量及び減衰幅の良好なノッチフィルタを得ることができる。また、別の発明は、導電路に隣接するように絶縁板に補助導電路を形成し、前記補助導電路の補助接地ポートと当該補助接地ポートに接続される前記並列腕との間に、前記減衰域から外れた周波数帯域において前記導電路のインダクタ成分と並列共振が起こるように容量値の設定された容量成分を接続しているので、減衰域における減衰量及び減衰幅の良好なノッチフィルタを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施の形態におけるノッチフィルタを示す回路図である。
【図2】前記フィルタの概観を示す斜視図である。
【図3】前記フィルタに積載される圧電基板を示す平面図である。
【図4】前記フィルタを示す縦断面図である。
【図5】前記フィルタの一部を拡大して示す縦断面図である。
【図6】前記フィルタいおける圧電基板を一部拡大して示す斜視図である。
【図7】従来のフィルタについてシミュレーションにより得られた特性を示す特性図である。
【図8】本発明のフィルタについてシミュレーションにより得られた特性を示す特性図である。
【図9】本発明のフィルタについてシミュレーションにより得られた特性を示す特性図である。
【図10】前記フィルタの他の例を示す一部拡大縦断面図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態におけるノッチフィルタを示す回路図である。
【図12】前記フィルタに積載される圧電基板を示す平面図である。
【図13】前記フィルタを示す縦断面図である。
【図14】前記フィルタの一部を拡大して示す縦断面図である。
【図15】本発明のノッチフィルタについてシミュレーションを行った結果を示す特性図である。
【図16】従来のノッチフィルタについてシミュレーションを行った結果を示す特性図である。
【図17】ノッチフィルタについてシミュレーションを行った結果を示す特性図である。
【図18】ノッチフィルタについてシミュレーションを行った結果を示す特性図である。
【図19】ノッチフィルタについてシミュレーションを行った結果を示す特性図である。
【図20】ノッチフィルタについてシミュレーションを行った結果を示す特性図である。
【図21】ノッチフィルタについてシミュレーションを行った結果を示す特性図である。
【図22】ノッチフィルタについてシミュレーションを行った結果を示す特性図である。
【図23】前記フィルタの他の例を示す回路図である。
【図24】従来のフィルタの周波数特性を示す模式図である。
【図25】従来のフィルタを示す回路図である。
【図26】従来のフィルタの概観を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1の実施の形態:直列共振]
本発明の第1の実施の形態のノッチフィルタの一例について、図1〜図6を参照して説明する。このノッチフィルタは、一部の周波数帯域この例では800MHz〜880MHz帯を減衰域にすると共に、当該減衰域よりも低域側及び高域側に通過域を配置したフィルタであり、図1に示すように、直列腕である位相反転用のインダクタ11と、並列腕である素子部この例ではSAW共振子12とがラダー型に接続された回路構成となっている。即ち、複数例えば3つのインダクタ11が入力ポート1と出力ポート2との間に互いに直列に接続され、互いに隣接するインダクタ11、11間及びインダクタ11とポート1、2との間にSAW共振子12の一端側が各々並列に接続されている。これらSAW共振子12の他端側は、並列信号路12aを介して互いに並列に接続されると共に、接地ポート3に接続されている。この例では、接地ポート3は、並列信号路12aに互いに並列に2つ設けられている。各々の接地ポート3と並列信号路12aとの間には、後で詳述するように、既述の減衰域に対応する周波数にて直列共振を起こす直列共振回路21が介設されている。即ち、この直列共振回路21では、直列共振周波数(共振点)が減衰域内の周波数例えば840MHzとなるように設定されている。
【0014】
続いて、ノッチフィルタの概観について、図2を参照して説明する。このノッチフィルタは、例えばアルミナ(Al2O3)などからなる共通の絶縁板であるパッケージ基板5上に配置されており、例えばコイルなどの部品として設けられた既述のインダクタ11と、裏面側(パッケージ基板5側)に4つのSAW共振子12のパターニングされた例えばタンタル酸リチウム(LiTaO3)などの圧電基板4と、を備えている。このパッケージ基板5上には、これらインダクタ11及び圧電基板4を上方側から覆うように、下方側が開口する概略箱型の蓋体6が設けられている。尚、図2ではこの蓋体6については輪郭を一点鎖線で示しており、また圧電基板4の一部を切り欠いて描画している。また、パッケージ基板5上には、これらインダクタ11とSAW共振子12(圧電基板4)とを接続する導電線路31が形成されているが、この導電線路31について図2では一部を省略しており、これらインダクタ11及び導電線路31の配置レイアウトについては模式的に示している。
【0015】
次いで、圧電基板4上におけるSAW共振子12の配置レイアウトについて説明すると、圧電基板4上には、図3に示すように、弾性波の伝搬方向に対して直交する方向(図3中左右方向)に4つのSAW共振子12が互いに離間して配置されている。そして、これらSAW共振子12よりも弾性波の伝搬方向(図3中前後方向)における手前側及び奥側には、既述の図1に示した電気回路となるようにこれらSAW共振子12とインダクタ11及び各ポート1、2、3とを互いに接続するために、概略矩形に形成された金属膜13が各々複数箇所例えば4箇所ずつ配置されている。
【0016】
即ち、圧電基板4の手前側には、左側から右側に向かって入力ポート1に接続される金属膜13、入力ポート1側から1つ目のインダクタ11と入力ポート1側から2つ目のインダクタ11とを接続する金属膜13及び接地ポート3に接続される2つの金属膜13、13がこの順番で配置されている。接地ポート3に接続される金属膜13、13は、内部構造については後で詳述するが、平面的に見ると2つの金属膜13、13が横並びに配置され、これら金属膜13、13が側方領域を介してSAW共振子12と接地ポート3との間において互いに直列に接続されている。接地ポート3に接続されるこれら2つの金属膜13、13について、接地ポート3側の金属膜13に「13a」、SAW共振子12側の金属膜13に「13b」の符号を付すと、金属膜13aは圧電基板4の端部領域に配置され、金属膜13bは当該金属膜13aよりも入力ポート1側に寄った位置に配置されている。
【0017】
圧電基板4の奥側には、左側から右側に向かって、接地ポート3に接続される金属膜13a、13b、出力ポート2側から1つ目のインダクタ11と出力ポート2側から2つ目のインダクタ11とを互いに接続する金属膜13及び出力ポート2に接続される金属膜13がこの順番で配置されている。図3中14は、互いに櫛歯状に交差するように配置された複数本の電極指14aと、これら電極指14aの一端側を接続すると共に互いに平行に配置された一対のバスバー14bとを備えたIDT(Inter Digital Transducer)電極である。また、15は弾性波の伝搬方向においてIDT電極14の両側に配置された反射器である。尚、図3は、既述の図2における圧電基板4を裏面側(パッケージ基板5側)から見た様子を示している。
【0018】
そして、引き回し電極16を介して、これらSAW共振子12と金属膜13とが既述の図1に示す回路となるように接続されている。即ち、図3の4つのSAW共振子12について、左側から右側に向かって「第1のSAW共振子12」、「第2のSAW共振子12」、「第3のSAW共振子12」及び「第4のSAW共振子12」と呼ぶと共に、IDT電極14の一対のバスバー14b、14bのうち左側を第1のバスバー14b、右側を第2のバスバー14bと呼ぶと、図3中手前側の左端の領域において入力ポート1に接続される金属膜13から伸びる引き回し電極16は、第1のSAW共振子12における第2のバスバー14bに接続されている。この第1のSAW共振子12における第1のバスバー14bは、引き回し電極16を介して、当該第1のSAW共振子12の側方領域を圧電基板4の奥側に回り込んで金属膜13bに接続されている。
【0019】
第2のSAW共振子12の第1のバスバー14bは、圧電基板4の手前側において、入力ポート1側から1つ目のインダクタ11と入力ポート1側から2つ目のインダクタ11とを接続する金属膜13に引き回し電極16を介して接続されている。この第2のSAW共振子12における第2のバスバー14bは、引き回し電極16を介して、第3のSAW共振子12における第1のバスバー14bに接続されると共に、圧電基板4の奥側及び手前側において金属膜13b、13bに各々接続されている。第3のSAW共振子12における第2のバスバー14bは、引き回し電極16を介して、圧電基板4の奥側において出力ポート側から1つ目のインダクタ11と出力ポート2側から2つ目のインダクタ11との間の金属膜13に接続されている。第4のSAW共振子12は、引き回し電極16を介して、圧電基板4の奥側の領域において第1のバスバー14bが出力ポート2に向かう金属膜13に接続されると共に、第2のバスバー14bが圧電基板4の手前側において金属膜13bに接続されている。尚、図3では、これらSAW共振子12、金属膜13及び引き回し電極16について、圧電基板4上の領域と区別するためにハッチングを付しており、インダクタ11について模式的に示している。
【0020】
そして、図4に示すように、圧電基板4におけるこれらSAW共振子12や金属膜13の形成された面をパッケージ基板5側に当接させると共に、既述の図2に示すように、当該パッケージ基板5に形成された導電線路31と各々の金属膜13、13aとを直径寸法が例えば200μm程度のバンプ32を介して接続する。この導電線路31により、パッケージ基板5上においてインダクタ11とSAW共振子12とが既述のように接続される。また、このパッケージ基板5には、金属膜13aに接続されるバンプ32から側方側に離れた位置に、上下に貫通する貫通口(ビアホール)33が形成されている。この貫通口33内には、例えば銅(Cu)などの金属体が導電路34として埋め込まれており、この導電路34の上端側である第1の電極部が導電線路31及びバンプ32を介して金属膜13aに接続されると共に、下端側が既述の接地ポート(第2の電極部)3をなしている。導電路34は、直径寸法(幅寸法)及び高さ寸法が夫々例えば150μm及び100μmとなっており、従って既述の図1に示すように、インダクタ成分や抵抗成分などを含む分布定数成分38を持っている。接地ポート3と、当該接地ポート3に接続されるSAW共振子12と、の間におけるバンプ32、引き回し電極16及び金属膜13a、13bは、既述の並列信号路12aに相当する。尚、図4では、金属膜13aについて模式的に示している。また、パッケージ基板5の下面側に、導電路34の下方側を覆うように金属膜からなる接地ポート3を形成したが、当該金属膜を設けない場合には、導電路34の下端部が接地ポート3をなす。
【0021】
続いて、金属膜13a、13b及び金属膜13aとバンプ32との接続部分について詳述する。図5は、金属膜13aとバンプ32との接続部分を拡大して示したものであり、金属膜13bと圧電基板4との間には、例えばSiO2(二酸化珪素)などからなる誘電体層35と金属層36とが当該金属膜13b側から圧電基板4側に向かってこの順番で積層されている。そして、この誘電体層35は、金属膜13a側における側壁部が金属層36の側面を覆うように圧電基板4側に向かって直角に屈曲しており、これら金属膜13a、13bと金属層36とが誘電体層35を介して接続されるように、即ち金属膜13a、13bと金属層36とが直接接触しないように配置されている。従って、これら金属膜13b、誘電体層35及び金属層36は、コンデンサからなる容量成分37をなしており、並列信号路12aと金属膜13aとの間に介設されている。この容量成分37は、容量値が450pF〜50000pF例えば850pF程度となるように、誘電体層35の膜厚、表面積及び比誘電率(当該誘電体層35の材質)が設定されている。この例では、これら誘電体層35の膜厚、表面積及び比誘電率(当該誘電体層35の材質)は、夫々50nm、490000μm2(700μm×700μm)及びεr=10となっている。
【0022】
ここで、容量成分37の形成方法の一例について、図6を参照して説明する。先ず、圧電基板4上にSAW共振子12、引き回し電極16及び金属層36をフォトレジスト法により形成する。次いで、図示しない誘電体からなる薄膜を圧電基板4上に積層し、同様にフォトレジスト法によって金属層36の上方側及び当該金属層36における金属膜13a側の側壁部以外の誘電体薄膜を取り除く。そして、フォトレジスト法によって金属膜13(金属膜13a、13b)を圧電基板4上に形成する。こうして既述の容量値となるように、容量成分37が形成される。尚、図6では容量成分37の厚み寸法を模式的に(実際よりも厚く)描画しているが、金属層36及び誘電体層35の膜厚が極めて薄いため、金属膜13a、13bは、これら金属層36及び誘電体層35を跨ぐように形成される。
【0023】
従って、接地ポート3と当該接地ポート3に接続されるSAW共振子12との間には、各々並列信号路12a及び導電路34が配置され、当該並列信号路12aには容量成分37が各々介設されている。そして、既述のように導電路34が分布定数成分38を持っていることから、この分布定数成分38のインダクタ成分と容量成分37とが直列共振回路21を構成している。この直列共振回路21は、分布定数成分38のインダクタ成分の大きさに応じて、具体的には導電路34の各寸法や材質に応じて、ノッチフィルタの減衰域に対応する周波数において直列共振が起こるように、既述の容量成分37における容量値が設定されている。
【0024】
そのため、入力ポート1と出力ポート2との間に電気信号が流れて、各々のSAW共振子12において直列共振が起こると、導電路34のインダクタ成分によってSAW共振子12と接地ポート3との間における電気信号の流れが阻害されようとする。しかし、減衰域に対応する周波数においてインダクタ成分と直列共振が起こるように当該インダクタ成分に容量成分37を接続して直列共振回路21を構成しているので、減衰域においてSAW共振子12と接地ポート3との間において電気信号が極めて容易に流れることになる。従って、導電路34のインダクタ成分による阻害が抑えられた状態で各々のSAW共振子12において直列共振の極が形成され、そのため減衰域において良好な(大きな)減衰量が得られる。
【0025】
ここで、図7は、パッケージ基板5上に各部品(インダクタ11及び圧電基板4)を搭載した状態のフィルタ特性と、パッケージ基板5にこれら部品を搭載せずにチップ状のフィルタ特性とをシミュレーションした結果を示しており、導電路34のインダクタ成分によって減衰域における減衰量が劣化していることが分かる。一方、図8に示すように、導電路34に容量成分37を直列に接続して直列共振回路21を形成することにより、チップ状で得られた特性とほぼ同程度の減衰量が得られている。
【0026】
上述の実施の形態によれば、インダクタ11からなる直列腕と減衰域に対応する周波数で直列共振を起こす素子部であるSAW共振子12からなる並列腕とを備えたノッチフィルタにおいて、内部領域に導電路34の形成されたパッケージ基板5上にインダクタ11及びSAW共振子12(圧電基板4)を配置して、この導電路34を介してSAW共振子12を接地している。そして、前記SAW共振子12と前記接地ポート3との間に、前記減衰域に対応する周波数において前記導電路34のインダクタ成分と直列共振が起こるように容量値の設定された容量成分37を接続している。そのため、SAW共振子12をパッケージ基板5上に実装した場合であっても、導電路34のインダクタ成分が減衰域において見かけ上抑えられるので、各々のSAW共振子12によって形成される共振点の極同士のカップリングを抑えることができ、従って減衰域における減衰量及び減衰幅の良好なノッチフィルタを得ることができる。
【0027】
また、導電路34毎に個別に容量成分37を配置しているので、いずれのSAW共振子12についても共振点の極を大きくできる。更に、誘電体層35が既述のように薄膜であり壊れやすいが、圧電基板4とパッケージ基板5とをバンプ32により接続するにあたり、当該誘電体層35から側方側に外れた領域にバンプ32を形成しているので、バンプ32の形成時において誘電体層35が破壊されることを抑えることができ、従って歩留まり高くフィルタを製造できる。
【0028】
ここで、容量成分37の容量値について計算したところ、容量成分37を設けない場合と比べて、図9に示すように、450pF〜50000pFの範囲において良好な減衰量の得られることが分かった。尚、この時の導電路34のインダクタ成分の大きさについては0.05nH(導電路34の幅寸法及び高さ寸法が夫々150μm及び100μm)として計算した。即ち、容量成分37の好ましい容量値は、導電路34のインダクタ成分の大きさ即ち導電路34の各寸法や材質によって様々であるが、インダクタ成分の大きさが既述の値であれば450pF〜50000pFとなる。
【0029】
以上の例では、容量成分37を圧電基板4に配置したが、接地ポート3と、当該接地ポート3に接続されるSAW共振子12との間に配置すれば良く、例えば図10に示すように、パッケージ基板5上において導電路34の上方側に配置しても良い。具体的には、導電路34の上位置に、既述の金属層36と誘電体層35とを下側(パッケージ基板5側)からこの順番で積層し、この誘電体層35の上方側を覆うように既述の導電線路31を形成しても良い。この場合においても、金属層36と導電線路31とが直接接続されないように、誘電体層35の側壁部がパッケージ基板5側に向かって例えば直角に形成される。また、この容量成分37について、パッケージ基板5の裏面側(接地ポート3側)において導電路34に下方側から接続されるように配置して、当該容量成分37の下端部を接地ポート3としても良い。
【0030】
[第2の実施の形態:並列共振]
既述の第1の実施の形態では、接地ポート3に接続されるSAW共振子12と当該接地ポート3との間における導電路34のインダクタ成分を抑えるにあたって、容量成分37を当該導電路34に直列に接続して直列共振回路21を構成したが、この導電路34に容量成分37を並列に接続し、並列共振回路22を構成しても良い。この場合には、並列共振回路22の反共振周波数(反共振点)は、減衰域に対応する周波数から大きく外れた領域この例では700MHzに設定される。従って、この場合においても、減衰域では、接地ポート3に接続されるSAW共振子12と当該接地ポート3との間における導電路34のインダクタ成分の影響が抑えられることになる。以下に、このような並列共振を用いた例について、第2の実施の形態として説明する。尚、既述の第1の実施の形態と同じ構成の部位については同じ符号を付して説明を省略する。
【0031】
この第2の実施の形態の容量成分37は、図11に示すように、既述の接地ポート3の接続された並列信号路12aに対して各々並列に接続されている。具体的には、図12に示すように、既述の金属膜13a、13bを互いに独立して配置する(これら金属膜13a、13bを互いに接触させないように配置する)。そして、図12中奥側において、これら金属膜13a、13bに対して第1のSAW共振子12の第1のバスバー14b及び第2のSAW共振子12の第2のバスバー14bから伸びる並列信号路12aを各々互いに並列に接続すると共に、図12中手前側において、第3のSAW共振子12の第1のバスバー14b及び第4のSAW共振子12の第2のバスバー14bから伸びる並列信号路12aを金属膜13a、13bに各々並列に接続している。これら金属膜13a、13b間の離間距離は、当該金属膜13a、13bが互いに絶縁される程度にできるだけ短い寸法この例では600μm程度に設定される。
【0032】
そして、図13に示すように、パッケージ基板5に形成された既述の導電路34を介して、金属膜13aを独立して(金属膜13bとは別個に)接地ポート3に接続すると共に、この導電路34に隣接するようにパッケージ基板5に例えば銅などの金属体の埋め込まれた補助導電路34aを形成している。また、バンプ32を介して、補助導電路34aの下面に形成された補助接地ポート(第2の補助電極部)3aに、金属膜13bを独立して(金属膜13aとは別個に)接続している。これら導電路34、34a間の離間距離は、例えば30μm程度に設定される。この補助導電路34aの上端部は、第1の補助電極部をなす。尚、図13では、金属膜13a、13bの周辺の領域については簡略化して示している。
【0033】
ここで、図14に示すように、金属膜13bの圧電基板4側には、圧電基板4側から当該金属膜13bに向かって金属層36と誘電体層35とが積層されており、これら金属層36、誘電体層35及び金属膜13bによって既述の容量成分37が構成されている。従って、接地ポート3に接続された導電路34に対して、容量成分37が並列に接続されて並列共振回路22をなしている。この場合には、容量成分37の容量値は、並列共振回路22の反共振点が既述の周波数に設定されるように、誘電体層35の厚み寸法、表面積及び比誘電率(材質)が設定される。尚、既述の図11に示すように、補助導電路34aについても、インダクタ成分などを含む分布定数成分38aを持つこととなる。また、図14において、これら金属層36、誘電体層35及び金属膜13bの厚み寸法を模式的に示している。
【0034】
そのため、このフィルタにおいて入力ポート1と出力ポート2との間に電気信号が流れると、並列共振回路22では減衰域から外れた周波数において反共振点が形成されるので、当該減衰域では、接地ポート3に接続される導電路34のインダクタ成分の影響が小さくなるように(あるいはなくなるように)SAW共振子12と接地ポート3との間において電気信号が流れることになる。従って、この第2の実施の形態でも、各々のSAW共振子12の直列共振の極が形成され、良好な減衰量の減衰域となる。
【0035】
この第2の実施の形態においても、容量成分37をパッケージ基板5側(パッケージ基板5の表面における圧電基板4側あるいはパッケージ基板5と補助接地ポート3aとの間)に配置しても良い。
また、第2の実施の形態では、並列共振回路22の反共振点について既述のように設定したが、この反共振点は減衰域に対応する周波数から外れた領域に設定すれば良く、具体的には600〜800MHzあるいは850〜1000MHzに設定しても良い。更に、導電路34、34a間の離間距離としては、並列共振回路22を構成するためにできるだけ近接させることが好ましいが、これら導電路34、34a同士が互いに電気的に接続されないようにする必要がある。従って、前記離間距離としては、導電路34、34a間で絶縁を取りつつ並列共振回路22が構成される寸法、具体的には1μm〜600μm程度であることが好ましい。
【0036】
ここで、第2の実施の形態のフィルタについて行ったシミュレーション結果について説明する。図15に示すように、導電路34に対して並列に容量成分37を接続することにより、835MHz付近において−64dBもの大きな減衰量が得られている。一方、容量成分37を配置しない場合(従来のノッチフィルタ)には、図16に示すように、835MHz付近において−57dB程度の大きさの減衰量しか得られていない。
【0037】
続いて、容量成分37や分布定数成分38に含まれる抵抗成分によってノッチフィルタの周波数特性(減衰特性)がどのように変化するかシミュレーションした結果を示す。先ず、容量成分37を配置しない場合に、導電路34に分布定数成分38としてインダクタ成分だけが設けられる時の特性を図17に示す。そして、分布定数成分38に0.3Ωの抵抗成分が各々含まれる場合の特性を図18に示す。
【0038】
図19は、分布定数成分38の抵抗成分が各々0.1Ωの場合に、容量値が1000pFの容量成分37を当該抵抗成分に各々並列に設けた場合の特性を示しており、図20は、2つの分布定数成分38の各々に12Ωの抵抗成分を配置し、これら抵抗成分の一方及び他方に各々1000pFの容量成分37を各々並列に接続した特性を示している。また、図21は、2つの分布定数成分38の各々に6Ωの抵抗成分を配置すると共に、これら抵抗成分の一方及び他方に各々1000pFの容量成分37を各々並列に接続した特性を示している。これらの結果から、インダクタ成分及び容量値を変えることにより、減衰特性が変化することが分かる。尚、図19、図20及び図21では、抵抗成分に容量成分37を並列に接続するにあたり、接地ポート3とSAW共振子12との間における並列信号路12aにおいて抵抗成分よりもSAW共振子12側及び接地ポート3側から各々伸びる2本の導電路を形成し、これら導電路に容量成分37の一端側及び他端側を接続した場合(各々の容量成分37が接地ポート3に接続される場合)についてシミュレーションしている。
【0039】
図22は、2つの分布定数成分38の各々に0.3Ωの抵抗成分を配置すると共に、これら抵抗成分に対して1000pFの容量成分37を各々並列に接続すると共に、これら容量成分37を接地ポート3ではなく補助接地ポート3aに接続した場合の特性を示している。この図22では、以上の図17〜図20の例と比べて、減衰量の大きな特性が得られていることが分かる。
【0040】
[その他の例]
以上の例では、インダクタ11及びSAW共振子12を夫々3つ及び4つ配置したが、これらインダクタ11及びSAW共振子12を複数ずつ例えば4つ及び5つ配置しても良い。
【0041】
また、接地ポート3と当該接地ポート3に接続されるSAW共振子12との間における導電路34、バンプ32及び引き回し電極16からなる並列信号路12aについて、導電路34の寸法に比べてバンプ32などの寸法が小さいため、導電路34のインダクタ成分よりもバンプ32などのインダクタ成分が小さい。そのため、直列共振回路21及び並列共振回路22では導電路34のインダクタ成分と共振を起こすように容量成分37の容量値を設定したが、容量成分37として、導電路34のインダクタ成分と共振を起こすことに代えて、接地ポート3と当該接地ポート3に接続されるSAW共振子12との間の並列信号路12a及び導電路34のインダクタ成分と共振を起こすように容量値を設定しても良い。その場合には、更に減衰特性の良好なフィルタが得られる。
【0042】
また、インダクタ11及びSAW共振子12を共通のパッケージ基板5に搭載したが、インダクタ11については当該パッケージ基板5と別の基板に配置して、図示しない電極を介してこれらインダクタ11とSAW共振子12とを互いに接続しても良い。更に、複数例えば2つの接地ポート3を設けて、各々の接地ポート3に接続される導電路34に直列共振回路21あるいは並列共振回路22を配置したが、これら導電路34のうち少なくとも1つに直列共振回路21や並列共振回路22を配置しても良い。更に、複数のSAW共振子12について、導電路34及び接地ポート3を個別に設けて、各々の導電路34に直列共振回路21や並列共振回路22を接続しても良い。
【0043】
更に、以上の各例では、直列腕及び並列腕として夫々インダクタ11及びSAW共振子12を用いたが、図23に示すように、直列腕及び並列腕として夫々SAW共振子12及びインダクタ11を配置しても良い。この場合においても、SAW共振子12が圧電基板4に配置されると共に、インダクタ11及び圧電基板4がパッケージ基板5上に配置され、直列共振回路21あるいは並列共振回路22が構成されるようにインダクタ11と接地ポート3と間のインダクタ成分に対して容量成分37が直列または並列に接続される。この図23では、直列共振回路21を設けた例を示している。更に、この図23において、インダクタ11に代えて、減衰域から外れた周波数において並列共振を起こす素子例えばSAW共振子12を並列腕として配置しても良い。
【0044】
以上において、SAW共振子12は、弾性表面波を利用した共振子に代えて、圧電基板4の内部を伝播する弾性波を利用した共振子であっても良い。
更に、直列共振や並列共振を起こす素子部としては、SAW共振子12に代えて、水晶共振子、圧電薄膜共振子、MEMS共振子、誘電体を用いても良い。圧電薄膜共振子としては、例えばFBAR(Film Bulk Acoustic Resonator)やSMR(Solid Mounted Resonator)などが挙げられる。誘電体を素子部として用いる場合には、マイクロストリップラインの両側に誘電体を設けた構成となる。更に前記素子部としては、コイルとコンデンサとを並列に接続した共振回路(LC共振回路)も含まれる。
【0045】
また、容量成分37としては、金属膜13b、誘電体層35及び金属層36を積層した構成以外にも、互いに隣接する電極指14a、14a間において容量成分が各々形成される既述のIDT電極14であっても良い。このIDT電極14を容量成分37として用いる場合には、当該容量成分37は圧電基板4上またはパッケージ基板5上にパターニングされる。尚、圧電基板4上にIDT電極14からなる容量成分37を設ける場合には、当該容量成分37にて発生する弾性波が他のSAW共振子12に影響を及ぼさないように、当該容量成分37における弾性波の伝搬方向両側に反射器や吸収体が配置される。更に、容量成分37としては、外付けのコンデンサなどの部品としてパッケージ基板5上に配置しても良い。
また、本発明のフィルタが適用される電子部品としては、例えばSAWBEFや、当該フィルタを用いてデジタル地上波TVチューナモジュールなどが挙げられる。
【符号の説明】
【0046】
1 入力ポート
2 出力ポート
3 接地ポート
3a 補助接地ポート
5 パッケージ基板
12 SAW共振子
12a 並列信号路
21 直列共振回路
22 並列共振回路
34 導電路
34a 補助導電路
37 容量成分
38 分布定数成分
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低域側及び高域側に各々形成された通過域の間に減衰域を設けるためのノッチフィルタにおいて、
入力ポートと出力ポートとの間に直列腕として互いに直列に接続された複数の位相反転用のインダクタと、
絶縁板と、
この絶縁板の一面側及び他面側に夫々形成された第1の電極部及び接地ポートをなす第2の電極部と、
これら第1の電極部及び第2の電極部を互いに接続するために前記絶縁板の内部に形成された導電路と、
互いに隣接する前記直列腕の間に各々の一端側が接続されると共に前記第1の電極部に各々の他端側が接続された、前記減衰域に対応する周波数で直列共振を起こす並列腕である複数の素子部と、
前記素子部と前記第2の電極部との間に介在して設けられ、前記減衰域に対応する周波数において前記導電路のインダクタ成分と直列共振が起こるように容量値が設定された容量成分と、を備えたことを特徴とするノッチフィルタ。
【請求項2】
前記絶縁板の一面側及び他面側に夫々前記第1の電極部及び前記第2の電極部に隣接して設けられ、第1の補助電極部及び補助接地ポートをなす第2の補助電極部と、
これら第1の補助電極部及び第2の補助電極部を互いに接続するために前記絶縁板の内部に形成された補助導電路と、
前記素子部の前記他端側及び前記第1の補助電極部を互いに接続するための並列信号路と、を備え、
前記容量成分は、前記素子部と前記第2の電極部との間に介在して設けられ、前記減衰域に対応する周波数において前記導電路のインダクタ成分と直列共振が起こるように容量値が設定されていることに代えて、前記素子部と前記第2の補助電極部との間に介設して設けられ、前記減衰域から外れた周波数において前記導電路のインダクタ成分と並列共振が起こるように容量値が設定されていることを特徴とする請求項1に記載のノッチフィルタ。
【請求項3】
前記導電路と前記補助導電路との間の離間距離は、600μm以下であることを特徴とする請求項2に記載のノッチフィルタ。
【請求項4】
前記容量成分は、2枚の金属層の間に誘電体層が介設された積層膜であり、これら金属層の一方が前記素子部側に接続されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一つに記載のノッチフィルタ。
【請求項5】
前記素子部は、圧電基板上に形成されたSAW共振子であり、
前記容量成分は、この圧電基板上に配置されていることを特徴とする請求項4に記載のノッチフィルタ。
【請求項6】
前記直列腕は、位相反転用のインダクタに代えて、前記減衰域に対応する周波数において並列共振を起こす素子部であり、
前記並列腕は、前記減衰域に対応する周波数において直列共振を起こす素子部に代えて、位相反転用のインダクタであることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一つに記載のノッチフィルタ。
【請求項7】
前記容量成分は、前記導電路のインダクタ成分と直列共振が起こるように容量値が設定されていることに代えて、前記素子部と前記第2の電極部との間におけるインダクタ成分と直列共振が起こるように容量値が設定されていることを特徴とする請求項1に記載のノッチフィルタ。
【請求項8】
前記容量成分は、前記導電路のインダクタ成分と並列共振が起こるように容量値が設定されていることに代えて、前記素子部と前記第2の電極部との間におけるインダクタ成分と並列共振が起こるように容量値が設定されていることを特徴とする請求項2に記載のノッチフィルタ。
【請求項1】
低域側及び高域側に各々形成された通過域の間に減衰域を設けるためのノッチフィルタにおいて、
入力ポートと出力ポートとの間に直列腕として互いに直列に接続された複数の位相反転用のインダクタと、
絶縁板と、
この絶縁板の一面側及び他面側に夫々形成された第1の電極部及び接地ポートをなす第2の電極部と、
これら第1の電極部及び第2の電極部を互いに接続するために前記絶縁板の内部に形成された導電路と、
互いに隣接する前記直列腕の間に各々の一端側が接続されると共に前記第1の電極部に各々の他端側が接続された、前記減衰域に対応する周波数で直列共振を起こす並列腕である複数の素子部と、
前記素子部と前記第2の電極部との間に介在して設けられ、前記減衰域に対応する周波数において前記導電路のインダクタ成分と直列共振が起こるように容量値が設定された容量成分と、を備えたことを特徴とするノッチフィルタ。
【請求項2】
前記絶縁板の一面側及び他面側に夫々前記第1の電極部及び前記第2の電極部に隣接して設けられ、第1の補助電極部及び補助接地ポートをなす第2の補助電極部と、
これら第1の補助電極部及び第2の補助電極部を互いに接続するために前記絶縁板の内部に形成された補助導電路と、
前記素子部の前記他端側及び前記第1の補助電極部を互いに接続するための並列信号路と、を備え、
前記容量成分は、前記素子部と前記第2の電極部との間に介在して設けられ、前記減衰域に対応する周波数において前記導電路のインダクタ成分と直列共振が起こるように容量値が設定されていることに代えて、前記素子部と前記第2の補助電極部との間に介設して設けられ、前記減衰域から外れた周波数において前記導電路のインダクタ成分と並列共振が起こるように容量値が設定されていることを特徴とする請求項1に記載のノッチフィルタ。
【請求項3】
前記導電路と前記補助導電路との間の離間距離は、600μm以下であることを特徴とする請求項2に記載のノッチフィルタ。
【請求項4】
前記容量成分は、2枚の金属層の間に誘電体層が介設された積層膜であり、これら金属層の一方が前記素子部側に接続されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一つに記載のノッチフィルタ。
【請求項5】
前記素子部は、圧電基板上に形成されたSAW共振子であり、
前記容量成分は、この圧電基板上に配置されていることを特徴とする請求項4に記載のノッチフィルタ。
【請求項6】
前記直列腕は、位相反転用のインダクタに代えて、前記減衰域に対応する周波数において並列共振を起こす素子部であり、
前記並列腕は、前記減衰域に対応する周波数において直列共振を起こす素子部に代えて、位相反転用のインダクタであることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一つに記載のノッチフィルタ。
【請求項7】
前記容量成分は、前記導電路のインダクタ成分と直列共振が起こるように容量値が設定されていることに代えて、前記素子部と前記第2の電極部との間におけるインダクタ成分と直列共振が起こるように容量値が設定されていることを特徴とする請求項1に記載のノッチフィルタ。
【請求項8】
前記容量成分は、前記導電路のインダクタ成分と並列共振が起こるように容量値が設定されていることに代えて、前記素子部と前記第2の電極部との間におけるインダクタ成分と並列共振が起こるように容量値が設定されていることを特徴とする請求項2に記載のノッチフィルタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図2】
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【図15】
【図16】
【図17】
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【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公開番号】特開2012−175438(P2012−175438A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−36015(P2011−36015)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】
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