説明

ノボラック型フェノール樹脂およびこれを含むフォトレジスト組成物

【課題】半導体やLCDを製造する際のリソグラフィーに使用されるフォトレジスト用として、高耐熱、高感度、高残膜率、高解像度なフォトレジストの製造を可能にするノボラック型フェノール樹脂を提供すること。
【解決手段】m−クレゾール及び/又はp−クレゾールを含有する1価フェノール成分(a)と、2価フェノール類び/又は3価フェノールを含有する多価フェノール成分(b)と、アルデヒド成分(c)とを反応して得られるノボラック型フェノール樹脂であって、1価フェノール成分(a)と多価フェノール成分(b)の質量割合(a)/(b)が99/1〜50/50であり、アルデヒド成分(c)が、ポリアルデヒド(c1)及びホルムアルデヒド(c2)を含有し、アルデヒド成分(c)における、ポリアルデヒド(c1)とホルムアルデヒド(c2)とのモル比(c1)/(c2)が5/95〜95/5であることを特徴とするノボラック型フェノール樹脂。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体やLCDを製造する際のリソグラフィーに使用されるフォトレジスト用として、高耐熱、高感度、高残膜率及び高解像度を有するフォトレジストの製造を可能にするノボラック型フェノール樹脂に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般にポジ型フォトレジストはナフトキノンジアジド化合物等のキノンジアジド基を有する感光剤とアルカリ可溶性樹脂(例えば、ノボラック型フェノール樹脂)が用いられる。このような組成からなるポジ型フォトレジストはアルカリ溶液による現像によって高い解像力を示し、IC、LSI等の半導体製造、LCDなどの回路基材の製造に利用されている。またノボラック型フェノール樹脂は露光後のドライエッチングに対し、芳香環を多く持つ構造に起因する高い耐熱性も有しており、これまでノボラック型フェノール樹脂とナフトキノンジアジド系感光剤とを含有する数多くのポジ型フォトレジストが開発、実用化されている。
【0003】
上記のポジ型フォトレジスト用のノボラック型フェノール樹脂は、m−、p−またはo−クレゾールとホルムアルデヒドとを酸触媒の存在下で反応させて得られる樹脂であり、フォトレジストの特性を調整または向上させるために、m−、p−またはo−クレゾールの比率や樹脂の分子量などの検討がなされている。特に、半導体製造用のフォトレジストでは、高耐熱、高感度、高残膜率、高解像度をバランスよく保つフェノール樹脂が重要視されている。
【0004】
耐熱性を向上させる方法としては、フェノール類として、キシレノール、トリメチルフェノールなどのアルキルフェノール類を用いて検討された例があるが、この方法では耐熱性が若干向上する程度であり、目的にかなうフォトレジスト製造用のノボラック型フェノール樹脂としては不十分である。
【0005】
また、他に耐熱性向上の方法として、フェノール樹脂として、フェノール類(フェノール、m−/p−クレゾール)、ホルムアルデヒド及びモノヒドロキシ芳香族アルデヒド類を併用する方法が開示されている。(特許文献1、特許文献2)
【0006】
しかし、LCD等の分野においても、TFT、STNなどの技術の進展に伴い画像の線幅が細くなり、ますます微細化の傾向が強まっている。最近では、高精細なTFT表示素子では、設計寸法が数μmレベルまで向上している。かかる用途においては、特に高い解像度、高耐熱性、高感度及び高残膜率を有するフォトレジストが要求され、従来の上記のポジ型フォトレジストでは対応できないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公平7−76254号公報
【特許文献2】特開2002−107925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、高耐熱性・高解像度・高感度・高残膜率のすべてを満たすフォトレジスト用ノボラック型フェノール樹脂、及びそれを含有するフォトレジスト組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
(1)m−クレゾール及び/又はp−クレゾールを含有する1価フェノール成分(a)と、2価フェノール及び/又は3価フェノールを含有する多価フェノール成分(b)と、アルデヒド成分(c)とを縮重合反応して得られるノボラック型フェノール樹脂であって、1価フェノール成分(a)と多価フェノール成分(b)の質量割合(a)/(b)が99/1〜50/50であり、アルデヒド成分(c)が、ポリアルデヒド(c1)及びホルムアルデヒド(c2)を含有し、アルデヒド成分(c)における、ポリアルデヒド(c1)とホルムアルデヒド(c2)とのモル比(c1)/(c2)が5/95〜95/5であることを特徴とするノボラック型フェノール樹脂;
(2)上記ノボラック型フェノール樹脂を含有することを特徴とするフォトレジスト組成物;及び
(3)m−クレゾール及び/又はp−クレゾールを含有する1価フェノール成分(a)と、2価フェノール及び/又は3価フェノールを含有する多価フェノール成分(b)とアルデヒド成分(c)とを縮重合反応させる工程を含むノボラック型フェノール樹脂の製造方法であって、1価フェノール成分(a)と多価フェノール成分(b)の質量割合(a)/(b)が99/1〜50/50であり、アルデヒド成分(c)が、ポリアルデヒド(c1)及びホルムアルデヒド(c2)を含有し、アルデヒド成分(c)における、ポリアルデヒド(c1)とホルムアルデヒド(c2)とのモル比(c1)/(c2)が5/95〜95/5であるアルデヒド成分(c)とを重縮合させることを特徴とするノボラック型フェノール樹脂の製造方法
に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のノボラック型フェノール樹脂を使用したフォトレジストは、高耐熱性・高解像度・高感度・高残膜率の全てを満たしており、高集積半導体を製造する際のリソグラフィーや液晶用の薄膜フィルムトランジスター(TFT)材料に使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<ノボラック型フェノール樹脂(A)>
本発明のノボラック型フェノール樹脂(A)は、1価フェノール成分(a)と多価フェノール成分(b)とアルデヒド成分(c)を縮重合反応に付して得られる。
【0012】
<1価フェノール成分(a)>
本発明における1価フェノール成分(a)は、m−クレゾール及び/又はp−クレゾールを含有する。すなわち、1価フェノール成分(a)は、m−クレゾール若しくはp−クレゾール又はm−クレゾールとp−クレゾールの混合物であることが必須であるが、その他の1価フェノール類を含有してもよい。その他の使用できる1価フェノール類としては、具体的には、フェノール、o−クレゾール、キシレノール、トリメチルフェノールが挙げられる。キシレノールは、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノールの各構造異性体が使用でき、トリメチルフェノールにおいても、2,3,5−トリメチルフェノール、2,3,6−トリメチルフェノール等の各異性体が使用できる。これらのその他の1価フェノール類は、単独でも2種以上を混合使用してもよい。
【0013】
本発明における1価フェノール成分(a)において、m−クレゾールとp−クレゾールの合計の含有量は、1価フェノール成分(a)100質量%中に対して、好ましくは50質量%以上、より好ましくは75質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、最も好ましくは100質量%である。前記フェノール成分(a)中において、m−クレゾールとp−クレゾールの合計の含有量が少なすぎると、耐熱性が劣るために好ましくない。
【0014】
1価フェノール成分(a)におけるm−クレゾールとp−クレゾールの質量割合は、好ましくは20/80〜90/10、より好ましくは40/60〜80/20である。m−クレゾールの割合が少なすぎると感度が高くなりすぎる場合がある。
【0015】
1価フェノール成分(a)は、m−クレゾール及びp−クレゾールの両方を含有することが好ましい。m−クレゾールとp−クレゾールの質量割合を調整することで、感度を調整することが出来る。
【0016】
<多価フェノール成分(b)>
本発明における多価フェノール成分(b)は、2価フェノール及び/又は3価フェノールを含有し、2価フェノール及び3価フェノール以外の多価フェノールを含むことが出来る。本発明における多価フェノール成分(b)中の2価フェノール及び3価フェノールの含有量は、多価フェノール成分(b)100質量%中20質量%以上、さらに70質量%以上であることが好ましい。
【0017】
本発明において使用することのできる2価フェノールとしては、例えば、カテコール、レゾルシン、ハイドロキノン、3−メチルカテコール、4−メチルカテコール、2−メチルレゾルシノール、4−メチルレゾルシノール、メチルハイドロキノン、3−エチルカテコール、4−エチルカテコール、2−エチルレゾルシノール、4−エチルレゾルシノール、エチルハイドロキノン、n−プロピルハイドロキノン、イソプロピルハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、4−n−ヘキシルレゾルシノール、4−ヘキサノイルレゾルシノール、3,5−ジメチルカテコール、2,5−ジメチルレゾルシノール、2,3−ジエチルハイドロキノン、2,5−ジメチルハイドロキノン、3,5−ジエチルカテコール、2,5−ジエチルレゾルシノール、2,5−ジエチルハイドロキノン、3,5−ジイソプロピルカテコール、2,5−ジイソプロピルレゾルシノール、2,3−ジイソプロピルハイドロキノン、2,5−ジイソプロピルハイドロキノン、3,5−ジ−t−ブチルカテコール、2,5−ジ−t−ブチルレゾルシノール、2,3−ジ−t−ブチルハイドロキノン、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン等の(ポリ)アルキル置換2価フェノールが挙げられる。
【0018】
本発明において使用することのできる3価フェノールとしては、例えば、ピロガロール、フロログルシノール、1,2,4−ベンゼントリオール等が挙げられる。
【0019】
これら2価又は3価フェノールのうち、特に望ましくはレゾルシンである。これらの2価又は3価フェノールは、単独で又は2種以上混合して使用することができる。
2価フェノールと3価フェノールとの質量割合は、特に目的に応じて適宜選択すればよく、例えば、2価フェノールと3価フェノールとの質量割合は0/100〜100/0であり得る。
【0020】
本発明における多価フェノール成分(b)は、2価フェノール及び3価フェノール以外の多価フェノール、例えば、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等のノボラック類;フェノール類とグリオキザール、グルタルアルデヒド、ブタンジオン、ヘキサンジオン等のジカルボニル化合物とを縮合反応させて得られるテトラキス(ヒドロキシフェニル)アルカン類;フェノール類と、ジビニルベンゼン、ジプロペニルベンゼン等のジアルケニルベンゼン類とを付加反応させて得られるフェノール類アラルキル樹脂;フェノール類とジシクロペンタジエン、テルペン類、等のジエン類とを付加反応させて得られるフェノール類アルキル樹脂;ポリビニルフェノール、ポリイソプロペニルフェノール等のビニル重合型多価フェノール類等を含むことができる。
【0021】
本発明において、1価フェノール成分(a)と多価フェノール成分(b)の質量割合(a)/(b)は、99/1〜50/50、好ましくは95/5〜50/50である。前記1価フェノール成分(a)の含有量に対して、多価フェノール成分(b)の含有量が少なすぎると、耐熱性が劣る。また、逆に、1価フェノール成分(a)に対して、多価フェノール成分(b)の含有量が多すぎると、感度が高くなり過ぎることがあり、また、エッチング液耐性が劣る場合がある
【0022】
<アルデヒド成分(c)>
本発明におけるアルデヒド成分(c)は、ポリアルデヒド(c1)及びホルムアルデヒド(c2)を含有する。アルデヒド成分(c)における、ポリアルデヒド(c1)とホルムアルデヒド(c2)とのモル比(c1)/(c2)は、5/95〜95/5であり、好ましくは10/90〜90/10、より好ましくは20/80〜50/50である。ポリアルデヒド(c1)の含有モル量がホルムアルデヒド(c2)の含有モル量に対して、上記範囲を超えると感光剤の析出等の不具合を生じ、上記範囲を下回ると耐熱性が劣る場合がある。
【0023】
アルデヒド成分(c)は、ノボラック型フェノール樹脂を構成する1価フェノール成分(a)及び多価フェノール成分(b)を縮合反応させる作用を有する成分であり、ポリアルデヒド(c1)及びホルムアルデヒド(c2)の他に、このような作用を有する周知のアルデヒド及び/又はケトン、例えば、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、フルフラール等のアルデヒド類、及び、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類などを含有することができる。
【0024】
アルデヒド成分(c)中のポリアルデヒド類(c1)及びホルムアルデヒド(c2)の合計量は、アルデヒド成分(c)100質量%に対して、好ましくは50質量%以上、より好ましくは90質量%以上であり、最も好ましくは100質量%である。
【0025】
前記アルデヒド成分(c)は、水溶液として反応系中に添加することもできる。
【0026】
<ポリアルデヒド(c1)>
本発明で使用されるポリアルデヒド(c1)は、分子中に2個以上のアルデヒド基を有する化合物であれば特に限定されない。ポリアルデヒド(c1)は、例えば、ジアルデヒド、トリアルデヒド等である。
【0027】
ジアルデヒドとしては、例えば、グリオキザール、マロンアルデヒド、スクシンアルデヒド、グルタルアルデヒド又はアドプアルデヒド等の脂肪族ジアルデヒド化合物や、フタルアルデヒド、イソフタルアルデヒド又はテレフタルアルデヒド等の芳香族ジアルデヒドが挙げられる。
【0028】
トリアルデヒドとして、トリホルミルメタン、ベンゼントリアルデヒド等が挙げられる。
【0029】
ポリアルデヒド(c1)としては、入手の容易さからグリオキザール、グルタルアルデヒドが好ましい。これらのポリアルデヒドは、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0030】
<ホルムアルデヒド(c2)>
本発明で使用されるホルムアルデヒド(c2)は、形態としては特に制限はないが、ホルムアルデヒド水溶液、及びパラホルムアルデヒド、トリオキサンなど酸存在下で分解してホルムアルデヒドとなる重合物を用いることも出来る。
【0031】
好ましくは、取り扱いの容易なホルムアルデヒド水溶液であり、市販品の42%ホルムアルデヒド水溶液をそのまま使用することも出来る。
【0032】
<1価フェノール成分(a)及び多価フェノール成分(b)の合計量とアルデヒド成分(c)の量、好ましくはポリアルデヒド(c1)及びホルムアルデヒド(c2)の合計量とのモル比((c)/((a)+(b))、好ましくは((c1)+(c2))/((a)+(b)))>
本発明において、1価フェノール成分(a)及び多価フェノール成分(b)とアルデヒド成分(c)を反応する際には、1価フェノール成分(a)及び多価フェノール成分(b)の合計1モルに対して、アルデヒド成分(c)を、好ましくはポリアルデヒド(c1)及びホルムアルデヒド(c2)の合計を、好ましくは0.1〜1.0モル、より好ましくは0.3〜0.5モルとする。
【0033】
<ノボラック型フェノール樹脂(A)>
本発明のノボラック型フェノール樹脂(A)の重量平均分子量は、特に限定されないが、フォトレジスト組成物の性能や製造上のハンドリング性から、4000〜50000が好ましく、5000〜30000がより好ましく、7000〜20000がさらに好ましい。重量平均分子量が5000より小さい場合は、感度が高すぎて耐熱性に劣る場合があり、50000より大きい場合は感度が低い場合がある。
【0034】
本発明のノボラック型フェノール樹脂(A)の軟化点は、耐熱性から140℃以上が好ましく、さらに好ましくは150℃以上、もっとも好ましくは160℃以上である。軟化点が140℃より低いと、フォトレジスト用として使用する場合に、耐熱性に劣り、好ましくない。
【0035】
[ノボラック型フェノール樹脂(A)の製造]
本発明のノボラック型フェノール樹脂(A)の製造方法は、m−クレゾール及び/又はp−クレゾールを含有する1価フェノール成分(a)と、2価フェノール及び/又は3価フェノールを含有する多価フェノール成分(b)とアルデヒド成分(c)とを縮重合反応する工程を含み、1価フェノール成分(a)と多価フェノール成分(b)の質量割合(a)/(b)が99/1〜50/50であり、アルデヒド成分(c)が、ポリアルデヒド(c1)及びホルムアルデヒド(c2)を含有し、アルデヒド成分(c)における、ポリアルデヒド(c1)とホルムアルデヒド(c2)とのモル比(c1/c2)が5/95〜95/5であることを特徴とする。
【0036】
<1段法>
本発明のノボラック型フェノール樹脂(A)は、例えば、酸触媒の存在下、一定量の1価フェノール成分(a)及び多価フェノール成分(b)に対して、ポリアルデヒド(c1)及びホルムアルデヒド(c2)を含有するアルデヒド成分(c)を添加して1段の重縮合反応で製造することができる。この1段反応の場合は、1価フェノール成分(a)及び多価フェノール成分(b)の合計1モルに対して、ポリアルデヒド(c1)及びホルムアルデヒド(c2)の合計を0.1〜1.0モル、好ましくは0.3〜0.5モルの範囲で使用すると共に、低温の反応温度(一例として100℃前後)にて、まず1価フェノール成分(a)及び多価フェノール成分(b)とホルムアルデヒド(c2)の反応を優先的に行ない、主として低分子量の重縮合物のフェノール樹脂を形成させ、次いで昇温または触媒を増量して該低分子量の重縮合物のフェノール樹脂、ジアルデヒド(c1)及び1価フェノール成分(a)を反応させる方式を採用するのが好ましい。
【0037】
<2段法>
本発明のノボラック型フェノール樹脂(A)は、例えば、酸触媒の存在下、ポリアルデヒド(c1)の添加時期とホルムアルデヒド(c2)の添加時期をずらす2段法によって製造することもできる。2段法には、(I)ホルムアルデヒド(c2)を含むアルデヒド成分(c)の一部を最初に加えて1価フェノール成分(a)及び多価フェノール成分(b)と反応させ、次いで、ポリアルデヒド(c1)を含むアルデヒド成分(c)の残部を加えて更に反応させる方式と、(II)ポリアルデヒド(c1)を含むアルデヒド成分(c)の一部を最初に加えて1価フェノール成分(a)及び多価フェノール成分(b)と反応させ、次いで、ホルムアルデヒド(c2)を含むアルデヒド成分(c)の残部を添加して更に反応させる方式があり、(I)及び(II)の何れの方式も採用できる。2段法において、1価フェノール成分(a)及び多価フェノール成分(b)の合計1モルに対して、ポリアルデヒド(c1)及びホルムアルデヒド(c2)の合計を0.1〜1.0モル、好ましくは0.3〜0.5モルの範囲で使用する。
【0038】
ノボラック型フェノール樹脂(A)は、2段法で製造するのがより好ましい。その理由は、2段法によれば、ポリアルデヒドで重縮合されたフェノール樹脂の重合単位及びホルムアルデヒドで重縮合されたフェノール樹脂の重合単位の重合度の分布が狭くなり、分子量のコントロールが容易となり、所望の重合体が得やすいからである。
2段法の重縮合反応は、1段法の重縮合反応の条件に準じて実施することができる。
【0039】
<酸触媒>
本発明のノボラック型フェノール樹脂(A)の製造方法においては、酸触媒を使用することができる。酸触媒としては、フェノール成分とアルデヒド又はケトンとを反応させる能力のあるものであれば、特に限定されることなく使用可能であり、例えば、シュウ酸、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸などの有機スルホン酸、塩酸、硫酸などの無機酸などを使用できる。触媒の使用量は、1価フェノール成分(a)に対して、0.01質量%〜5質量%であるが、フォトレジスト用組成物の特性の向上のためには、極力少ない方が好ましい。樹脂中に酸触媒が残存するとフォトレジストの特性に弊害を及ぼすため、アミン類または無機アルカリを使用して酸触媒を中和することが好ましい。
【0040】
前記1段反応及び2段反応における酸触媒の使用量は、その種類によっても異なるが、シュウ酸の場合は、1価フェノール成分(a)に対して、0.3〜1.0質量%程度、硫酸の場合は0.05〜0.1質量%程度、またパラトルエンスルホン酸の場合は0.1〜0.5質量%程度使用するのがよい。硫酸又はパラトルエンスルホン酸を使用することが好ましい。
【0041】
<反応温度>
前記1段法及び2段法における反応温度は、とくに限定されないが、好ましくは60〜160℃、より好ましくは80〜140℃である。50℃より低いと重合が進まず、200℃より高いと反応の制御が難しくなる場合があり、目的のノボラック型フェノール樹脂(A)を安定的に得ることが困難となる場合があるので好ましくない。
【0042】
<反応溶媒>
本発明の製造方法には、必要によって反応溶媒を使用することができる。
反応溶媒としては、1価フェノール成分(a)、多価フェノール成分(b)、アルデヒド成分(c)、特にポリアルデヒド(c1)及びホルムアルデヒド(c2)を溶解する水が好適であるが、場合によっては、反応に影響を及ぼさない有機溶媒を使用することもできる。
【0043】
このような有機溶媒としては、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン等のエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル類等が挙げられる。
【0044】
これらの反応溶媒の使用量は、通常、反応原料100質量部当り、20〜1000質量部である。
【0045】
<反応時間、反応圧力>
本発明における反応時間は、反応温度にもよるが、通常は20時間以内である。
本発明における反応圧力は、通常は常圧下で行われるが、若干の加圧ないし減圧下でも行うことができる。
【0046】
<後処理>
本発明における重縮合反応終了後、後処理として、塩基を添加して酸触媒を中和し、続いて酸触媒を除去するために水を加えて水洗を実施することが好ましい。
【0047】
酸触媒の中和のための塩基としては、特に限定されることはなく、酸触媒を中和し、水に可溶となる塩を形成するものであれば使用可能である。塩基としては、例えば、金属水酸化物や金属炭酸塩などの無機塩基ならびにアミン及び有機アミンなどの有機塩基が挙げられる。無機塩基としては、具体的には水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムや炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウムが挙げられる。アミンあるいは有機アミンの具体例としては、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルアミン、トリブチルアミンなどが挙げられる。好ましくは有機アミンが使用される。塩基の使用量は、酸触媒を中和し、反応系内のpHを4〜8の範囲にする量で使用することが好ましい。
【0048】
水洗における水洗水の量と水洗の回数は、特に限定されない。酸触媒をレジスト用組成物としての実使用に影響ない程度の量まで除去するには、水洗回数としては1〜5回程度が必要である。
【0049】
水洗温度は、特に限定されないが、触媒除去の効率と作業性の観点から40〜95℃で行うのが好ましい。水洗中、樹脂と水洗水の分離が悪い場合は、樹脂の粘度を低下させる溶媒の添加や水洗温度を上昇させることが効果的である。このような溶媒としては、フェノール樹脂を溶解し、粘度を低下させるものであれば特に限定されることなく使用することができる。
【0050】
酸性触媒を中和及び水洗により除去した後、例えば、反応系の温度を130℃〜230℃に上げて、20〜50toorの減圧下で、反応系内に存在する未反応原料、有機溶媒等の揮発分を留去して、本発明のノボラック型フェノール樹脂(A)を得ることができる。
【0051】
〔用途〕
本発明のノボラック型フェノール樹脂(A)は、フォトレジストに利用することができる。このフォトレジストは、高集積半導体を製造する際のリソグラフィーや液晶用の薄膜フィルムトランジスター(TFT)材料に使用できる。
【0052】
[フォトレジスト組成物]
本発明のフォトレジスト組成物は、ノボラック型フェノール樹脂(A)を含有し、これを好ましくは5〜40質量%、より好ましくは10〜25質量%含有する。
【0053】
本発明のフォトレジスト組成物は、さらに感光剤(B)を含有することが好ましい。感光剤(B)としては、ノボラック型フェノール樹脂を含むフォトレジストの感光剤として公知のものを使用できる。感光剤(B)としては、キノンジアジド基を有するキノンジアジド化合物が好ましく、特に1,2−キノンジアジド化合物又はその誘導体が好ましい。
【0054】
キノンジアジド化合物を用いることで、露光した部分は溶解促進効果によりアルカリ溶解速度が大きくなり、逆に露光しない部分は溶解抑制効果によりアルカリ溶解速度が小さくなり、この露光部と未露光部の溶解速度の差によって、コントラストの高い、シャープなレジストパターンを得ることが出来る。
【0055】
キノンジアジド化合物としては、従来、キノンジアジド−ノボラック系レジストで用いられている公知の化合物を用いることができる。このようなキノンジアジド基を含む化合物としては、ナフトキノンジアジドスルホン酸クロライドやベンゾキノンジアジドスルホン酸クロライド等と、これらの酸クロライドと縮合反応可能な官能基を有する化合物とを反応させることによって得られた化合物が好ましい。ここで酸クロライドと縮合可能な官能基としては水酸基、アミノ基等があげられるが、特に水酸基が好適である。酸クロライドと縮合可能な水酸基を有する化合物としては、例えばハイドロキノン、レゾルシン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,6−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,4’−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,3,4,6’−ペンタヒドロキシベンゾフェノン等のヒドロキシベンゾフェノン類、ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)プロパン等のヒドロキシフェニルアルカン類、4,4’,3”,4”−テトラヒドロキシ−3,5,3’,5’−テトラメチルトリフェニルメタン、4,4’,2”,3”,4”−ペンタヒドロキシ−3,5,3’,5’−テトラメチルトリフェニルメタン等のヒドロキシトリフェニルメタン類などを挙げることができる。これらは単独で用いてもよいし、また2種以上を組合せて用いてもよい。
【0056】
酸クロライドであるナフトキノンジアジドスルホン酸クロライドやベンゾキノンジアジドスルホン酸クロライドの具体例としては、例えば、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルフォニルクロライド、1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルフォニルクロライドなどが好ましいものとして挙げられる。
【0057】
感光剤(B)の配合量は、ノボラック型フェノール樹脂(A)100質量部に対して、5〜50質量部が好ましく、より好ましくは10〜40質量部である。感光剤(B)の配合量が5質量部よりも少なくと、感光性樹組成物として十分な感度が得られないことがあり、また、50質量部よりも多いと成分の析出の問題が起こることがあるので好ましくない。
【0058】
本発明のレジスト組成物は、上記のノボラック型フェノール樹脂(A)及び感光剤(B)の他に、レジスト組成物の慣用成分である、酸化防止剤等の安定剤、可塑剤、界面活性剤、密着性向上剤、溶解促進剤、溶解阻害剤などを含有することができる。
【実施例】
【0059】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0060】
また、成分の含有量および樹脂の物性値等の分析方法は以下の通りである。
(1)重量平均分子量(GPC測定方法)
型式 :HLC−8220 東ソー(株)製
カラム :TSK−GEL Hタイプ G2000H×L 4本
G3000H×L 1本
G4000H×L 1本
測定条件:カラム圧力 13.5MPa
溶離液 :テトラヒドロフラン(THF)フローレート 1ml/min
温度 :40℃
検出器 : スペクトロフォトメーター(UV−8020)RANGE 2.56
WAVE LENGTH:254nm、 及びRI
インジェクション量 : 100μmL
試料濃度 : 5mg/mL
【0061】
(2)軟化点(環球法)
JIS K−7234に準じた方法で測定した。
【0062】
(3)アルカリ溶解速度の評価方法
ノボラック型フェノール樹脂3gをPGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)9gに溶解し、樹脂溶液を調合した。これらを0.2ミクロンメンブレンフィルターで濾過した。これを4インチシリコンウェハー上に乾燥後の厚みが約1.5μmの厚みになるようにスピンコーターで塗布し、110℃で60秒間ホットプレート上で乾燥させた。次いで現像液(2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロオキサイド水溶液)を用い、完全に膜が消失するまでの時間を計測した。初期膜厚を溶解するまでの時間で割った値を溶解速度とした。
膜厚の測定方法に関して、ホットプレートで乾燥後、光学式膜厚系(VM−1000;大日本スクリーン製造製)を用いて、ウェハーの5箇所について測定後、測定値の平均値を膜厚とする。
【0063】
(4)プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート(PGMEA)溶解性の評価方法
ノボラック型フェノール樹脂25gにPGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)75gを加えた。この溶液を室温下、振盪機を用いて、ノボラック型フェノール樹脂のPGMEA溶液への溶解性を観察し、下記基準で評価した。
○:1〜3日で完全に溶解
×:4日以上で完全に溶解、又は不溶
【0064】
(5)感光剤溶解性の評価方法
ノボラック型フェノール樹脂20gとナフトキノン1,2−ジアジド−5−スルホン酸の2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンエステル5gとをPGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)75gに溶解し、レジスト液とした。このレジスト液を室温25℃に保ち、2日間かけて振盪機を用いて溶解させ、下記基準で評価した。
○:感光剤の完全溶解(透明)
×:感光剤の不溶部あり(濁りあり)
【0065】
実施例1 ノボラック型フェノール樹脂の合成
温度計、仕込み・留出口および攪拌機を備えたガラス製三口フラスコに、m−クレゾール70g(0.64モル)、p−クレゾール104g(0.97モル)、レゾルシン20g(0.18モル)、42%ホルマリン水溶液44.21g(0.63モル)及びp−トルエンスルホン酸0.2gを入れ、96℃で4時間反応させた。その後、50%グルタルアルデヒド水溶液35.35g(0.18モル)を入れ、120℃で4時間反応させた。反応終了後、90℃まで冷却してトリエチルアミン0.5gを添加し、イオン交換水200gを添加して攪拌、静置した。静置することにより分離した水層のpHを5.5〜7.0となるように調整し、分離水を除去した。この操作を2回行った。その後、185℃まで昇温して脱水した後、30torrで2時間減圧蒸留を行い、ノボラック型フェノール樹脂130gを得た。
【0066】
実施例2 ノボラック型フェノール樹脂の合成
温度計、仕込み・留出口および攪拌機を備えたガラス製三口フラスコに、m−クレゾール70g(0.64モル)、p−クレゾール104g(0.97モル)、レゾルシン20g(0.18モル)、42%ホルマリン水溶液31.57g(0.45モル)及びp−トルエンスルホン酸0.2gを入れ、96℃で4時間反応させた。その後、50%グルタルアルデヒド水溶液47.72g(0.24モル)を入れ、120℃で4時間反応させた。反応終了後、90℃まで冷却してトリエチルアミン0.5gを添加し、イオン交換水200gを添加して攪拌、静置した。静置することにより分離した水層のpHを5.5〜7.0となるように調整し、分離水を除去した。この操作を2回行った。その後、185℃まで昇温して脱水した後、30torrで2時間減圧蒸留を行い、ノボラック型フェノール樹脂140gを得た。
【0067】
実施例3 ノボラック型フェノール樹脂の合成
温度計、仕込み・留出口および攪拌機を備えたガラス製三口フラスコに、m−クレゾール70g(0.64モル)、p−クレゾール104g(0.97モル)、レゾルシン20g(0.18モル)、42%ホルマリン水溶液31.61g(0.45モル)及びp−トルエンスルホン酸0.2gを入れ、96℃で4時間反応させた。その後、50%グルタルアルデヒド水溶液53.02g(0.27モル)を入れ、120℃で4時間反応させた。反応終了後、90℃まで冷却してトリエチルアミン0.5gを添加し、イオン交換水200gを添加して攪拌、静置した。静置することにより分離した水層のpHを5.5〜7.0となるように調整し、分離水を除去した。この操作を2回行った。その後、185℃まで昇温して脱水した後、30torrで2時間減圧蒸留を行い、ノボラック型フェノール樹脂135gを得た。
【0068】
実施例4 ノボラック型フェノール樹脂の合成
温度計、仕込み・留出口および攪拌機を備えたガラス製三口フラスコに、m−クレゾール70g(0.64モル)、p−クレゾール104g(0.97モル)、レゾルシン9.3g(0.08モル)、42%ホルマリン水溶液29.91g(0.42モル)及びp−トルエンスルホン酸0.2gを入れ、96℃で4時間反応させた。その後、50%グルタルアルデヒド水溶液50.23g(0.25モル)を入れ、120℃で4時間反応させた。反応終了後、90℃まで冷却してトリエチルアミン0.5gを添加し、イオン交換水200gを添加して攪拌、静置した。静置することにより分離した水層のpHを5.5〜7.0となるように調整し、分離水を除去した。この操作を2回行った。その後、185℃まで昇温して脱水した後、30torrで2時間減圧蒸留を行い、ノボラック型フェノール樹脂134gを得た。
【0069】
実施例5 ノボラック型フェノール樹脂の合成
温度計、仕込み・留出口および攪拌機を備えたガラス製三口フラスコに、m−クレゾール70g(0.64モル)、p−クレゾール104g(0.97モル)、レゾルシン9.3g(0.08モル)、42%ホルマリン水溶液29.91g(0.42モル)及びp−トルエンスルホン酸0.2gを入れ、96℃で4時間反応させた。その後、50%グルタルアルデヒド水溶液56.93g(0.29モル)を入れ、120℃で4時間反応させた。反応終了後、90℃まで冷却してトリエチルアミン0.5gを添加し、イオン交換水200gを添加して攪拌、静置した。静置することにより分離した水層のpHを5.5〜7.0となるように調整し、分離水を除去した。この操作を2回行った。その後、185℃まで昇温して脱水した後、30torrで2時間減圧蒸留を行い、ノボラック型フェノール樹脂140gを得た。
【0070】
比較例1 ノボラック型フェノール樹脂の合成
温度計、仕込み・留出口および攪拌機を備えたガラス製三口フラスコに、m−クレゾール80g(0.74モル)、p−クレゾール120g(1.11モル)、42%ホルマリン81.3g(1.14モル)及び蓚酸0.8gを三つ口フラスコに入れ、100℃で10時間反応させた後、180℃まで昇温して脱水した後、30torrで2時間減圧蒸留を行い、ノボラック型フェノール樹脂150gを得た。
【0071】
比較例2 ノボラック型フェノール樹脂の合成
温度計、仕込み・留出口および攪拌機を備えたガラス製三口フラスコに、m−クレゾール100g(0.93モル)、p−クレゾール100g(0.93モル)、50%グルタルアルデヒド74.2g(0.37モル)、p−トルエンスルホン酸0.4gを三つ口フラスコに入れ、100℃で10時間反応させた後、80℃まで冷却してトリエチルアミン0.3g添加し、イオン交換水110gを添加して攪拌、静置した。静置することにより分離した分離水のpHを5.5〜7.0となるように調整し、分離水を除去した。この操作を2回行った。その後、180℃まで昇温して脱水した後、30torrで2時間減圧蒸留を行い、ノボラック型フェノール樹脂158gを得た。
【0072】
比較例3 ノボラック型フェノール樹脂の合成
温度計、仕込み・留出口および攪拌機を備えたガラス製三口フラスコに、m−クレゾール70g(0.64モル)、p−クレゾール104g(0.97モル)、42%ホルマリン水溶液39.79g(0.56モル)及びp−トルエンスルホン酸0.2gを入れ、96℃で4時間反応させた。その後、50%グルタルアルデヒド水溶液31.81g(0.16モル)を入れ、120℃で4時間反応させた。反応終了後、90℃まで冷却してトリエチルアミン0.5gを添加し、イオン交換水200gを添加して攪拌、静置した。静置することにより分離した水層のpHを5.5〜7.0となるように調整し、分離水を除去した。この操作を2回行った。その後、185℃まで昇温して脱水した後、30torrで2時間減圧蒸留を行い、ノボラック型フェノール樹脂125gを得た。
【0073】
比較例4 ノボラック型フェノール樹脂の合成
温度計、仕込み・留出口および攪拌機を備えたガラス製三口フラスコに、m−クレゾール100g(0.93モル)、p−クレゾール60g(0.56モル)、2,3,5−トリメチルフェノール40g(0.29モル)、サリチルアルデヒド18g(0.15モル)、p−トルエンスルホン酸2gを三つ口フラスコに入れ、90℃で5時間反応を行った後、エチルセロソルブ80gを添加して内温60℃まで冷却させ、次いで37%ホルマリン97g(1.2モル)を60℃で1.5時間かけて逐次添加し、さらに30分反応させた。その後、段階的に昇温させ、最終的に還流温度(97〜103℃)で3時間反応させた。反応終了後、90℃まで冷却してトリエチルアミン1.3gを添加し、さらにアセトン20g、イオン交換水80gを添加して約70℃で攪拌・静置した。静置することにより分離した分離水のpHを5.5〜7.0となるように調整し、分離水を除去した。アセトン20g、イオン交換水80gを使用して、この水洗操作をもう一度繰り返した後、常圧下で内温140℃まで脱水し、さらに80torrで195℃まで減圧下で脱水・脱モノマーを行い、ノボラック型フェノール樹脂150gを得た。
【0074】
試験例1 ノボラック型フェノール樹脂の評価
実施例1〜5及び比較例1〜4のそれぞれのノボラック型フェノール樹脂の重量平均分子量(Mw)、軟化点、アルカリ溶解速度、PGMEA溶解性及び感光剤溶解性を測定した。測定結果を表1に示した。
表1に示すとおり、実施例1〜5のノボラック型フェノール樹脂は、軟化点、アルカリ溶解速度、PGMEA溶解性及び感光剤溶解性に優れていた。
表1に示すとおり、比較例2のノボラック型フェノール樹脂は、感光剤への溶解速度が遅すぎ、比較例4のノボラック型フェノール樹脂は、PGMEAへの溶解性が劣ることが分かった。
【0075】
【表1】

【0076】
実施例6 レジスト組成物の調製
実施例1〜5及び比較例1〜4のそれぞれのノボラック型フェノール樹脂を用い、以下の方法でレジスト組成物を調製した。ノボラック型フェノール樹脂20質量部と、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルフォニルクロライド5質量部とを、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)75質量部に溶解し、レジスト溶液を調合した。これらを0.2ミクロンメンブレンフィルターで濾過し、レジスト組成物とした。
【0077】
試験例2 フォトレジスト組成物の感度・残膜率・解像度の評価方法
フォトレジスト組成物を4インチシリコンウェハー上に約1.5μの厚みになるようにスピンコーターで塗布し、110℃、60秒間ホットプレート上で乾燥させた。その後、縮小投影露光装置を用い、露光時間を段階的に変えて露光した。次いで現像液(2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロオキサイド水溶液)を用い、60秒間現像し、リンス、乾燥を行なった。
【0078】
感度は、走査型電子顕微鏡により、得たれたパターンのパターン形状を観察することにより、以下の基準で評価を行なった。
AA:3mJ/cm未満で画像が形成出来る。
A:5mJ/cm未満で画像が形成出来る。
B:5〜60mJ/cmで画像が形成出来る。
未露光部の残膜厚から残膜率を求めた。残膜率とは、現像後の感光性樹脂の膜厚と現像前の感光性樹脂の膜厚の比であり、下記式により表される値である。
残膜率(%)=(現像後の感光性樹脂の膜厚/現像前の感光性樹脂の膜厚)×100
また、解像度は、テストチャートマスクを用い、下記基準で評価した。
◎:1.5μライン&スペースが解像できる。
○:2.0μライン&スペースが解像できる。
×:2.0μライン&スペースが解像できない。
【0079】
試験例3 耐熱性の評価方法
フォトレジスト組成物を4インチシリコンウェハー上に約15000Åの厚みになるようにスピンコーターで塗布し、110℃、60秒間ホットプレート上で乾燥させた。その後、縮小投影露光装置を用い、露光時間を段階的に変えて露光した。次いで現像液(1.71%テトラメチルアンモニウムヒドロオキサイド水溶液)を用い、60秒間現像した。得られたシリコンウエハーを各温度のホットプレート上で2分間放置し、シリコウエハー上のレジストパターンの形状を走査型電子顕微鏡で観察し、耐熱性を下記基準により評価した。
◎:140℃でパターン形状を維持できる。
○:135℃でパターン形状を維持できる。
×:1350℃でパターン形状を維持できない。
【0080】
〔レジスト組成物の評価〕
実施例1〜5及び比較例1〜4で得られたノボラック型フェノール樹脂を用いて調製したフォトレジスト組成物のフォトレジストとしての評価の測定を上記の方法に基づいて行い、その結果を表2に示した。
【0081】
【表2】

【0082】
表2から、実施例1〜5で得られたノボラック型フェノール樹脂を用いて調製したフォトレジスト組成物は、比較例1〜4で得られたノボラック型フェノール樹脂を用いて調製したフォトレジスト組成物に比べ、感度、残膜率、解像度及び耐熱性のすべての性能をバランスよく満足した。実施例1及び実施例2で得られたノボラック型フェノール樹脂を用いて調製したフォトレジスト組成物については、感度が特に良好である
【0083】
実施例3で得られたノボラック型フェノール樹脂を用いて調製したフォトレジスト組成物については、解像度・耐熱性が特に優れている。
【0084】
実施例4で得られたノボラック型フェノール樹脂を用いて調製したフォトレジスト組成物については、残膜率が特に良好である。
【0085】
実施例5で得られたノボラック型フェノール樹脂を用いて調製したフォトレジスト組成物については、感度・残膜率・解像度・耐熱性全てにおいて良好である。
【0086】
実施例の中では、実施例5で得られたノボラック型フェノール樹脂が最も特性がよく、優れていると考えられる。
【0087】
比較例1は、感度及び耐熱性が劣り、比較例2は、感度が劣り、比較例3は、感度、解像度及び耐熱性が劣り、比較例4は、感度及び残膜率が劣る。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明のノボラック型フェノール樹脂を使用したフォトレジストは、高集積半導体を製造する際のリソグラフィーや液晶用の薄膜フィルムトランジスター(TFT)材料に使用でき、半導体や液晶製品の歩留まりの向上および高集積化に極めて貢献できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
m−クレゾール及び/又はp−クレゾールを含有する1価フェノール成分(a)と、2価フェノール及び/又は3価フェノールを含有する多価フェノール成分(b)と、アルデヒド成分(c)とを縮重合反応して得られるノボラック型フェノール樹脂であって、1価フェノール成分(a)と多価フェノール成分(b)の質量割合(a)/(b)が99/1〜50/50であり、アルデヒド成分(c)が、ポリアルデヒド(c1)及びホルムアルデヒド(c2)を含有し、アルデヒド成分(c)における、ポリアルデヒド(c1)とホルムアルデヒド(c2)とのモル比(c1)/(c2)が5/95〜95/5であることを特徴とするノボラック型フェノール樹脂。
【請求項2】
1価フェノール成分(a)及び多価フェノール成分(b)の合計1モルに対して、アルデヒド成分(c)中のポリアルデヒド(c1)及びホルムアルデヒド(c2)の合計が、0.1〜1.0モルであることを特徴とする請求項1に記載のノボラック型フェノール樹脂。
【請求項3】
1価フェノール成分(a)中のm−クレゾール及び/又はp−クレゾールの量が50質量%以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のノボラック型フェノール樹脂。
【請求項4】
ポリアルデヒド(c1)及びホルムアルデヒド(c2)の合計量がアルデヒド成分(c)に対して50質量%以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のノボラック型フェノール樹脂。
【請求項5】
重量平均分子量が4000〜50000であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のノボラック型フェノール樹脂。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のノボラック型フェノール樹脂を含有することを特徴とするフォトレジスト組成物。
【請求項7】
さらに感光剤を含有することを特徴とする請求項6に記載のフォトレジスト組成物。
【請求項8】
感光剤がキノンジアジド基を含む化合物であることを特徴とする請求項7に記載のフォトレジスト組成物。
【請求項9】
m−クレゾール及び/又はp−クレゾールを含有する1価フェノール成分(a)と、2価フェノール及び/又は3価フェノールを含有する多価フェノール成分(b)と、アルデヒド成分(c)とを縮重合反応させる工程を含むノボラック型フェノール樹脂の製造方法であって、1価フェノール成分(a)と多価フェノール成分(b)の質量割合(a)/(b)が99/1〜50/50であり、アルデヒド成分(c)が、ポリアルデヒド(c1)及びホルムアルデヒド(c2)を含有し、アルデヒド成分(c)における、ポリアルデヒド(c1)とホルムアルデヒド(c2)とのモル比(c1/c2)が5/95〜95/5であることを特徴とするノボラック型フェノール樹脂の製造方法。
【請求項10】
重縮合反応させる工程が、m−クレゾール及び/又はp−クレゾールを含有する1価フェノール成分(a)と、2価フェノール及び/又は3価フェノールを含有する多価フェノール成分(b)と、ホルムアルデヒド(c2)を含むアルデヒド成分(c)の一部とを反応させ、次いで、ポリアルデヒド(c1)を含むアルデヒド成分(c)の残部を加えて更に反応させることを含む請求項9に記載のノボラック型フェノール樹脂の製造方法。
【請求項11】
重縮合反応させる工程が、m−クレゾール及び/又はp−クレゾールを含有する1価フェノール成分(a)と、2価フェノール及び/又は3価フェノールを含有する多価フェノール成分(b)と、ポリアルデヒド(c1)を含むアルデヒド成分(c)の一部とを反応させ、次いで、ホルムアルデヒド(c2)を含むアルデヒド成分(c)の残部を加えて更に反応させることを含む請求項9に記載のノボラック型フェノール樹脂の製造方法。
【請求項12】
1価フェノール成分(a)及び多価フェノール成分(b)の合計1モルに対して、アルデヒド成分(c)中のポリアルデヒド(c1)及びホルムアルデヒド(c2)の合計が0.1〜1.0モルの範囲内で反応させることを特徴とする請求項9〜11のいずれか1項に記載のノボラック型フェノール樹脂の製造方法。
【請求項13】
m−クレゾール及び/又はp−クレゾールの合計量が1価フェノール成分(a)に対して50質量%以上であることを特徴とする請求項9〜12のいずれか1項に記載のノボラック型フェノール樹脂の製造方法。

【公開番号】特開2012−87247(P2012−87247A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−236474(P2010−236474)
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(591018707)明和化成株式会社 (12)
【Fターム(参考)】