説明

ノンコアドリル及びノンコアドリルを用いた研削方法

【課題】軸回転とともに偏心運動を与えて研削作業を行うノンコアドリルにおいて、硬脆材料の研削効率を向上させることができるノンコアドリルを提供する。
【解決手段】回転軸として作用するシャンク3の先端にダイヤモンド砥石部2を備え、このダイヤモンド砥石部2をシャンク3の軸心αを中心として軸回転させるとともに、ダイヤモンド砥石部2と研削対象となる硬脆材料16との間に偏心運動を与えて研削を行うためのノンコアドリル1であって、ダイヤモンド砥石部2の先端面13における少なくとも回転軸の軸心部αに凹部14が形成され、この凹部14を除くダイヤモンド砥石部2の先端面13が、硬脆材料16を研削する先端砥面となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス等の硬脆材料に孔開け加工を施すためのダイヤモンドドリルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、硬脆材料に孔を開ける工具としては、鋼製のシャンクの先端に取り付けたダイヤモンド砥石部を回転させながら硬脆材料に接触させることで孔を開けるダイヤモンドドリルがあり、この種のドリルには、軸心貫通孔が形成されているコアドリルや、軸心貫通孔が形成されていないノンコアドリルなどがある。また、このようなドリルを用いて研削作業をする際に、ダイヤモンド砥石部をシャンクの軸心を中心として軸回転させながら硬脆材料に接触させるとともに、ダイヤモンド砥石部と硬脆材料との間に偏心運動を与えることで穿孔を行うようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2005−199619号公報(5頁及び7頁、図1及び図18)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のノンコアドリルにあっては、ダイヤモンド砥石部をシャンクの軸心を中心として軸回転させた際に、ダイヤモンド砥石部の先端面における外周部は速い周速度となっているが、ダイヤモンド砥石部の先端面における軸心部は軸回転による周速度は殆ど無くなっている。この状態でダイヤモンド砥石部と研削対象となる硬脆材料との間に偏心運動を与えて研削を行った場合には、ダイヤモンド砥石部の先端面の外周部は、軸回転による周速度に加えて偏心運動による速度が加わった摩擦速度で硬脆材料を研削できるが、ダイヤモンド砥石部の先端面の軸心部は、軸回転による周速度が殆ど無い状態で偏心運動が与えられるため、偏心運動による摩擦速度のみで硬脆材料を研削するようになり、ダイヤモンド砥石部の先端面の軸心部により研削される硬脆材料の部位が残存し易くなり、その硬脆材料の残存部位が、ダイヤモンド砥石部の先端面の軸心部に接触されることによって、ダイヤモンド砥石部の先端面の外周部が、硬脆材料に接触し難くなり、ノンコアドリルによる硬脆材料の研削効率が低下してしまう問題がある。
【0005】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、軸回転とともに偏心運動を与えて研削作業を行うノンコアドリルにおいて、硬脆材料の研削効率を向上させることができるノンコアドリルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明の請求項1に記載のノンコアドリルは、
回転軸として作用するシャンクの先端にダイヤモンド砥石部を備え、該ダイヤモンド砥石部を前記シャンクの軸心を中心として軸回転させるとともに、前記ダイヤモンド砥石部と研削対象となる硬脆材料との間に偏心運動を与えて研削を行うためのノンコアドリルであって、
前記ダイヤモンド砥石部の先端面における少なくとも回転軸の軸心部に凹部が形成され、該凹部を除く前記ダイヤモンド砥石部の先端面が、前記硬脆材料を研削する先端砥面となっていることを特徴としている。
この特徴によれば、ダイヤモンド砥石部をシャンクの軸心を中心として軸回転させた際に、ダイヤモンド砥石部の先端面における軸心部を硬脆材料に接触させずに研削を行うことができ、摩擦速度が速いダイヤモンド砥石部の先端面の外周部である先端砥面のみで硬脆材料を研削できるため、ノンコアドリルの研削効率を向上させることができる。
【0007】
本発明の請求項2に記載のノンコアドリルは、請求項1に記載のノンコアドリルであって、
前記凹部が、前記硬脆材料が研削されることで発生する切粉を収容できるようになっていることを特徴としている。
この特徴によれば、硬脆材料が研削されることで発生する切粉を凹部内に収容して、切粉がダイヤモンド砥石部の先端砥面と硬脆材料との間に介在することで生じるノンコアドリルの研削効率の低下を防止できる。
【0008】
本発明の請求項3に記載のノンコアドリルは、請求項1または2に記載のノンコアドリルであって、
前記凹部が、前記ダイヤモンド砥石部の先端面の軸心部から放射状に延びる少なくとも1条の凹溝条となっていることを特徴としている。
この特徴によれば、凹溝条を介して硬脆材料が研削されることで発生する切粉をダイヤモンド砥石部の側部まで排出できる。
【0009】
本発明の請求項4に記載のノンコアドリルは、請求項1または2に記載のノンコアドリルであって、
前記ダイヤモンド砥石部には、前記凹部の内空間から前記ダイヤモンド砥石部の側周外部まで貫通する貫通孔が形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、凹部の内空間に収容された切粉を貫通孔からダイヤモンド砥石部の側周外部まで排出できるようになる。
【0010】
本発明の請求項5に記載のノンコアドリルを用いた研削方法は、
回転軸として作用するシャンクの先端にダイヤモンド砥石部を備えたノンコアドリルを用いて略円形状の穿孔部を研削対象となる硬脆材料に形成する研削方法であって、
前記ダイヤモンド砥石部の先端面における少なくとも回転軸の軸心部に凹部が形成され、該凹部を除く前記ダイヤモンド砥石部の先端面が、前記硬脆材料を研削する先端砥面となっており、
前記ダイヤモンド砥石部を前記シャンクの軸心を中心として軸回転させるとともに、少なくとも前記穿孔部の中心点を前記先端砥面が通過することを条件に、前記ダイヤモンド砥石部と前記硬脆材料との間に偏心運動を与えて該硬脆材料の研削を行うことを特徴としている。
この特徴によれば、ダイヤモンド砥石部をシャンクの軸心を中心として軸回転させた際に、ダイヤモンド砥石部の先端面における軸心部を硬脆材料に接触させずに研削を行うことができ、摩擦速度が速いダイヤモンド砥石部の先端面の外周部である先端砥面のみで硬脆材料を研削できるため、ノンコアドリルの研削効率を向上させることができるようになり、かつ円形状をなす穿孔部の中心点を先端砥面が通過することを条件に、ダイヤモンド砥石部と硬脆材料との間に偏心運動を与えることで、ダイヤモンド砥石部が軸回転されたときに、凹部に対応した位置に生じる硬脆材料の残存部位を、偏心運動されるダイヤモンド砥石部の先端砥面によって研削して無くすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明に係るノンコアドリルを実施するための最良の形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例1】
【0012】
本発明の実施例を図面に基づいて説明すると、先ず図1は、実施例1におけるノンコアドリルを示す斜視図であり、図2は、ノンコアドリルを示す正面図であり、図3は、ノンコアドリルを示す側面図であり、図4は、ノンコアドリルを示す縦断側面図であり、図5は、ノンコアドリルが板ガラスを研削している状態の断面図であり、図6は、図5におけるノンコアドリルを示すA−A断面図であり、図7は、ダイヤモンド砥石部が穿孔部を面取りしている状態の一部断面図である。以下、図1の紙面左下方側をノンコアドリルの正面側とし、図3及び図4の紙面左側をノンコアドリルの正面側とし、図5及び図7の紙面下方側をノンコアドリルの正面側として説明する。
【0013】
図1の符号1は、本発明の適用された実施例1におけるノンコアドリルであり、このノンコアドリル1は、ダイヤモンド砥粒を着装したダイヤモンド砥石部2と、回転軸として作用する鋼製のシャンク3とで構成されている。尚、ダイヤモンド砥石部2は、ダイヤモンド砥粒を用いてメタルボンド砥石あるいは電着砥石として製作される。
【0014】
図3に示すように、ダイヤモンド砥石部2は、先端側に形成された小径をなす先端砥石部4と、中間部に形成されて先端砥石部4よりも大径をなす中間砥石部5と、基端側に形成されて中間砥石部5よりも大径をなす基端砥石部6とで構成されている。
【0015】
先端砥石部4には、粒径が大きな粗いダイヤモンド砥粒が付着されるとともに、中間砥石部5及び基端砥石部6には、先端砥石部4に付着されたダイヤモンド砥粒よりも粒径が小さい細かいダイヤモンド砥粒が付着されている。
【0016】
基端砥石部6は略円筒形状をなし、基端砥石部6の側周には、円筒面9が形成されるとともに、基端砥石部6の先端側には、中間砥石部5に向かって直径が小さくなるように形成された円錐面12が形成されている。
【0017】
また、中間砥石部5も略円筒形状をなし、中間砥石部5の側周には、円筒面8が形成されるとともに、中間砥石部5の先端側には、先端砥石部4に向かって直径が小さくなるように形成された円錐面11が形成されている。
【0018】
更に、先端砥石部4も略円筒形状をなし、先端砥石部4の側周には、円筒面7が形成されるとともに、先端砥石部4の先端側には、先端に向かって直径が小さくなるように形成された円錐面10が形成されている。尚、図1の部分拡大斜視図に示すように、先端砥石部4の先端部には、円錐面10によって形成される円錐体の先端が切り欠かれて平坦面に形成された本実施例における先端砥面としての先端面13が設けられ、先端砥石部4の先端部の形状が切頭円錐形状となっている。
【0019】
先端砥石部4の先端面13の中央部(軸心部)には、略半球形状に刳り貫かれて形成された微小な凹部14が形成されている。また、図2に示すように、先端砥石部4の先端面13は、ノンコアドリル1の正面視において略円形状をなすとともに、先端面13に形成された凹部14は、先端面13の同心円として形成されている。更に、図4の部分拡大縦断側面図に示すように、凹部14の直径iは、先端面13の直径dの略3分の1以下の寸法になっている。
【0020】
尚、凹部14は、その奥部に行く従って狭くなる形状となっており、先端面13と凹部14の内面とが、縦断側面視において直角よりも大きい角度θで交わるようになっている。尚、本実施例1では、先端面13と凹部14の内面とが交わる角度θが略135度となっている。更に、凹部14の奥部は、所定の曲率でラウンドされたラウンド面15となっている。
【0021】
ノンコアドリル1を用いて硬脆材料としての板ガラス16が研削される工程について図5から図7を用いて詳述する。図5に示すように、ノンコアドリル1を用いて硬脆材料である板ガラス16を研削する際には、先ずノンコアドリル1をシャンク3の軸心αを中心に軸回転させつつ、先端砥石部4の先端面13を板ガラス16の表面に当接させる。このとき先端砥石部4の先端が切頭円錐形状をなしていることで、押圧力が先端面13に集中するようになり、板ガラス16が研削され易くなっている。
【0022】
また、図6に示すように、ノンコアドリル1のダイヤモンド砥石部2が、シャンク3の軸心αを中心に軸回転しつつ、ダイヤモンド砥石部2と板ガラス16との間に相対的な偏心運動が与えられるようになっている。
【0023】
ノンコアドリル1の偏心運動について詳述すると、図6に示すように、ノンコアドリル1の先端砥石部4の円筒面7を、板ガラス16に形成された略円形状の穿孔部17の内周面に当接させ、ノンコアドリル1を図6中のa方向に軸回転させながら、先端砥石部4の円筒面7が穿孔部17の内周面の全周に渡って当接するように、ノンコアドリル1の軸回転の軸心αを偏心軸βのまわりに回転させるように、図6中のb方向に回転させ、ノンコアドリル1を偏心軸βを中心として遊星回転運動させればよい。尚、偏心軸βが円形状をなす穿孔部17の中心点となっている。
【0024】
ノンコアドリル1と板ガラス16との間に相対的な偏心運動を与える手段としては、板ガラス16を静止させた状態とし、ノンコアドリル1を軸心αを中心に軸回転させる第1モータ(図示略)を設けるとともに、ノンコアドリル1及び第1モータ(図示略)を穿孔部17の中心(偏心軸β)を軸として回転させるための第2モータ(図示略)を設け、これら第1及び第2モータ(図示略)の両方を駆動させることで、ノンコアドリル1と板ガラス16との間に相対的な偏心運動を与える方法がある。
【0025】
ノンコアドリル1を偏心運動させながら研削することで、先端砥石部4の円筒面7と穿孔部17の内面との間に所定間隔の間隙sが形成される。この間隙sが形成されることで、先端砥石部4の円筒面7と穿孔部17の内周面との間に発生する摩擦抵抗を減らすことができるのでスムーズにノンコアドリル1を回転させることができる。尚、このようにノンコアドリル1を偏心運動させながら研削することで、穿孔部17の内周面にクラック等を生じさせることなく孔開け加工を施すことができる。
【0026】
また、ノンコアドリル1に偏心運動を与えることによって、板ガラス16に形成される穿孔部17の直径は、先端砥石部4の直径よりも若干大きくなるように形成される。尚、穿孔部17の直径は、ノンコアドリル1の回転軸の軸心αと偏心運動の偏心軸βとの離間距離eによって変化するようになっており、軸心αと偏心軸βとの離間距離eが大きければ穿孔部17の直径が大きく形成される。
【0027】
また、軸心αと偏心軸βとの離間距離eが、軸心αから最も近い凹部14の内縁部までの距離(本実施例では、凹部14の半径)よりも大きくなるように、ノンコアドリル1に偏心運動が与えられる。そのためダイヤモンド砥石部2が軸回転されたときに、凹部14に対応した穿孔部17の底面位置に生じる板ガラス16の残存部位を、ダイヤモンド砥石部2の先端面13によって研削して無くすことができる。
【0028】
また、軸心αと偏心軸βとの離間距離eが、軸心αから最も遠いダイヤモンド砥石部2の先端面13の外縁部(本実施例では、先端面13の半径)までの距離よりも小さくなるように、ノンコアドリル1に偏心運動が与えられる。そのためダイヤモンド砥石部2が偏心運動されたときに、その偏心軸βに対応した位置の板ガラス16をダイヤモンド砥石部2の先端面13が研削するようになり、偏心軸βに対応した位置に板ガラス16の残存部位が形成されずに済むようになる。
【0029】
つまり、本実施例におけるノンコアドリル1では、ダイヤモンド砥石部2をシャンク3の軸心αを中心として軸回転させるとともに、少なくとも穿孔部17の中心点(偏心軸β)を先端面13が通過することを条件に、ダイヤモンド砥石部2と板ガラス16との間に偏心運動を与えて板ガラス16の研削を行うようになっている。そのためダイヤモンド砥石部2が軸回転されたときに、凹部14に対応した位置や穿孔部17の中心点(偏心軸β)に生じる板ガラス16の残存部位を、偏心運動されるダイヤモンド砥石部2の先端面13によって研削して無くすことができる。
【0030】
また、先端砥石部4の先端面13における軸心αに対応する位置に、凹部14が形成されているため、ノンコアドリル1を軸心αを中心として軸回転させたときの周速度が殆ど無い先端砥石部4の先端面13の軸心部(凹部14)を板ガラス16に接触させずに、研削することができる。そのため摩擦速度が速い先端砥石部4の先端面13における外周部、すなわち先端砥部13のみで板ガラス16を研削できるようになり、ノンコアドリル1の研削効率を向上させることができる。
【0031】
また、凹部14が、板ガラス16が研削されることで発生する切粉を一時的に収容できるようになっている。そのため切粉がダイヤモンド砥石部2の先端面13と板ガラス16との間に介在することで生じるノンコアドリル1の研削効率の低下を防止できる。尚、ノンコアドリル1を用いた研削の際に、穿孔部17と先端砥石部4との間隙sに水を流し込むこともでき、研削によって生じた切粉等を水で洗い流しながら研削できるようになっている。
【0032】
また、図4及び図5の部分拡大縦断側面図に示すように、先端砥石部4には、粗いダイヤモンド砥粒が付着されているため、研削によって形成された穿孔部17の表面に微小の凹凸が形成されるようになっているが、先端面13と凹部14の内面とが、直角よりも大きい角度θで交わるように形成されていることで、板ガラス16の研削の際に、凹部14の内側に位置する穿孔部17の表面に多少の凸凹があっても、その穿孔部17の表面を、凹部14の内面の傾きによってスムーズに先端砥石部4の先端面13に案内できるばかりか、凹部14周縁の欠けや磨耗を防止できる。
【0033】
また、凹部14は、その奥部に行く従って狭くなる形状となっていることで、板ガラス16の研削の際に発生する切粉等が凹部14内から排除され易くなり、切粉等が凹部14内に詰まり難くなるため、使用後のノンコアドリル1の手入れが容易になる。
【0034】
また、凹部14の直径iが先端面13の直径dの略3分の1以下の寸法になっていることで、板ガラス16に接触して研削を行う先端砥石部4の先端面13の接触面積を充分に確保してノンコアドリル1の研削効率を維持したまま、板ガラス16に接触しない凹部14を形成できるようになる。
【0035】
先端砥石部4が板ガラス16を貫通した後、ノンコアドリル1の軸回転の軸心αと偏心運動の偏心軸βとの離間距離eを徐々に大きくすることで、先端砥石部4の円筒面7により穿孔部17の内周面を研削して穿孔部17の直径が大きくなるように穿孔部17を拡大させる。
【0036】
そして、穿孔部17の直径が所定の大きさに形成された後、ダイヤモンド砥石部2を穿孔部17に更に挿入させ、中間砥石部5の円筒面8を穿孔部17の内周面に当接させる。そして、ノンコアドリル1を軸心αを中心として軸回転させつつ、中間砥石部5の円筒面8が穿孔部17の内周面の全周に及ぶように、ノンコアドリル1を偏心軸βを中心として偏心運動させる。
【0037】
中間砥石部5には、先端砥石部4に付着されたダイヤモンド砥粒よりも細かいダイヤモンド砥粒が付着されているため、中間砥石部5によって穿孔部17の内周面の面取りができるようになっている。尚、中間砥石部5の円錐面11や基端砥石部6の円錐面12を用いて穿孔部17周縁の面取りを行うこともできる。
【0038】
このように、始めに粗いダイヤモンド砥粒が付着された先端砥石部4を用いて板ガラス16を貫通させて穿孔部17を形成した後、細かいダイヤモンド砥粒が付着された中間砥石部5により穿孔部17の面取りを行うことで、板ガラス16に穿孔部17を形成する研削時間を短縮できるばかりか、貫通用のドリル1とその他の面取り用の器具の交換作業が必要なくなり、穿孔部17形成のための作業時間を短縮できるようになっている。
【実施例2】
【0039】
次に、実施例2に係るノンコアドリル1aにつき、図8を参照して説明する。尚、前記実施例1に示される構成部分と同一構成部分に付いては同一符号を付して重複する説明を省略する。図8は、実施例2におけるノンコアドリル1aを示す縦断側面図である。
【0040】
図8に示すように、実施例2におけるノンコアドリル1aに形成された凹部14aは、先端砥石部4の先端面13(先端砥面)の中央部(軸心部)が、略円錐形状に刳り貫かれて形成されている。また、前述した実施例1におけるノンコアドリル1aと同様に、先端砥石部4の先端面13は、ノンコアドリル1aの正面視において略円形状をなすとともに、先端面13に形成された凹部14aは、先端面13の同心円として形成されている。
【0041】
更に、前記実施例1と同様に、図8の部分拡大縦断側面図に示す凹部14aの直径iは、先端面13の直径dの略3分の1以下の寸法になっている。凹部14aは、その奥部に行く従って狭くなる形状となっており、先端面13と凹部14aの内面とが、縦断側面視において直角よりも大きい角度θで交わるようになっている。尚、前記実施例1と同様に、先端面13と凹部14aの内面とが交わる角度θが略135度となっている。このように凹部14aの内空間が、略円錐形状をなしていても、前記実施例1と同様に、ノンコアドリル1aの研削効率を向上させることができる。
【実施例3】
【0042】
次に、実施例3に係るノンコアドリル1bにつき、図9及び図10を参照して説明する。尚、前記実施例1に示される構成部分と同一構成部分に付いては同一符号を付して重複する説明を省略する。図9は、実施例3におけるノンコアドリル1bを示す斜視図であり、図10は、実施例3におけるノンコアドリル1bの研削状態を示す概念平面図である。
【0043】
図9の部分拡大斜視図に示すように、切頭円錐形状をなす先端砥石部4の先端部には、円錐面10によって形成される円錐体の先端が切り欠かれて平坦面に形成された先端面13(先端砥面)が設けられ、この先端面13には、先端面13におけるノンコアドリル1bの軸回転の軸心α(図10参照)に対応する位置、すなわち先端面13の中央部(軸心部)を通って、先端面13を先端面13の中央部から放射状に延びて先端面13を横切るように、1条の凹溝条14b(凹部)が形成されている。
【0044】
凹溝条14bは、板ガラス16が研削されることで発生する切粉を一時的に収容できるようになっている。また、凹溝条14b内に収容された切粉は、ノンコアドリル1bが軸回転されるとともに、ダイヤモンド砥石部2の側部まで排出されて、先端砥石部4の円筒面7と穿孔部17の内面との間に形成される間隙s(図6参照)から板ガラス16の外部にまで排出されるようになっており、切粉が先端面13と板ガラス16との間に介在することで生じるノンコアドリル1bの研削効率の低下を防止できる。
【0045】
また、図10に示すように、ノンコアドリル1bが軸心αを中心として軸回転されると、凹溝条14bの存在によって先端面13が接触しない円形状の部位rが生じるようになり、この部位rに対応した板ガラス16に残存部位rが生じる。しかしながら、ノンコアドリル1bが偏心軸βを中心として偏心運動されることで、先端面13が残存部位rを通過するようになり、残存部位rが先端面13によって研削されて無くなるようになっている。更に、穿孔部17の中心点(偏心軸β)を先端面13が通過することを条件に、ノンコアドリル1bと板ガラス16との間に偏心運動が与えられるため、穿孔部17の中心点(偏心軸β)に生じる板ガラス16の残存部位も研削されて無くなるようになっている。
【実施例4】
【0046】
次に、実施例4に係るノンコアドリル1cにつき、図11及び図12を参照して説明する。尚、前記実施例1に示される構成部分と同一構成部分に付いては同一符号を付して重複する説明を省略する。図11は、実施例4におけるノンコアドリル1cを示す斜視図であり、図12は、実施例4におけるノンコアドリル1cの研削状態を示す概念平面図である。
【0047】
図11の部分拡大斜視図に示すように、切頭円錐形状をなす先端砥石部4の先端部には、円錐面10によって形成される円錐体の先端が切り欠かれて平坦面に形成された先端面13(先端砥面)が設けられ、この先端面13には、先端面13におけるノンコアドリル1cの軸回転の軸心α(図12参照)に対応する位置、すなわち先端面13の中央部(軸心部)を通って、先端面13を先端面13の中央部から放射状に延びて略十字形状をなすように、凹溝条14c(凹部)が形成されている。
【0048】
凹溝条14cは、板ガラス16が研削されることで発生する切粉を一時的に収容できるようになっている。また、凹溝条14c内に収容された切粉は、ノンコアドリル1cが軸回転されるとともに、ダイヤモンド砥石部2の側部まで排出されて、先端砥石部4の円筒面7と穿孔部17の内面との間に形成される間隙s(図6参照)から板ガラス16の外部にまで排出されるようになっており、切粉が先端面13と板ガラス16との間に介在することで生じるノンコアドリル1cの研削効率の低下を防止できる。
【0049】
また、図12に示すように、ノンコアドリル1cが軸心αを中心として軸回転されると、凹溝条14cの存在によって先端面13が接触しない円形状の部位rが生じるようになり、この部位rに対応した板ガラス16に残存部位rが生じる。しかしながら、ノンコアドリル1cが偏心軸βを中心として偏心運動されることで、先端面13が残存部位rを通過するようになり、残存部位rが先端面13によって研削されて無くなるようになっている。更に、穿孔部17の中心点(偏心軸β)を先端面13が通過することを条件に、ノンコアドリル1cと板ガラス16との間に偏心運動が与えられるため、穿孔部17の中心点(偏心軸β)に生じる板ガラス16の残存部位も研削されて無くなるようになっている。
【実施例5】
【0050】
次に、実施例5に係るノンコアドリル1dにつき、図9を参照して説明する。尚、前記実施例1に示される構成部分と同一構成部分に付いては同一符号を付して重複する説明を省略する。図13は、実施例5におけるノンコアドリル1dが板ガラス16を研削している状態の断面図である。
【0051】
図13の部分拡大縦断側面図に示すように、切頭円錐形状をなす先端砥石部4の先端部には、円錐面10によって形成される円錐体の先端が切り欠かれて平坦面に形成された先端面13(先端砥面)が設けられ、この先端面13の中央部(軸心部)には、略半球形状に刳り貫かれて形成された微小な凹部14dが形成されている。
【0052】
また、先端砥石部4には、凹部14dの内空間から先端砥石部4の円錐面10、すなわちダイヤモンド砥石部2の側周外部まで貫通する貫通孔18が形成されている。凹部14dは、板ガラス16が研削されることで発生する切粉を一時的に収容できるようになっている。
【0053】
また、凹部14内に収容された切粉は、ノンコアドリル1が軸回転されるとともに、貫通孔18を通過して、ダイヤモンド砥石部2の側周外部まで排出されて、先端砥石部4の円筒面7と穿孔部17の内面との間に形成される間隙s(図6参照)から板ガラス16の外部にまで排出されるようになっており、切粉が先端面13と板ガラス16との間に介在することで生じるノンコアドリル1の研削効率の低下を防止できる。
【0054】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0055】
例えば、前記実施例では、先端砥石部4の先端面13が平坦面として形成されているが、先端面13は必ずしも平坦面である必要はなく、研削効率を向上させるために、先端砥石部4の先端面13に多少の凹凸が形成されていてもよく、少なくとも先端面13における軸心αに対応した位置(軸心部)に突出された凸部が形成されていなければ、前記凹部14が形成された先端面13と同様な効果を得ることができる。
【0056】
また、前記実施例では、先端砥石部4の先端部が切頭円錐形状に形成されているが、先端砥石部4の先端部の形状は切頭円錐形状に限ることなく、円筒形状であってもよいし、半球形状であってもよく、先端砥石部4の先端部における軸回転の軸心αに対応する位置に、微小な凹部14が形成されていれば、前記実施例1と同様な効果を得ることができる。
【0057】
また、前記実施例1では、凹部14がノンコアドリル1の正面視において円形状をなすように形成されていたが、凹部14は正面視において円形である必要はなく、略三角形状や略四角形状や楕円形状をなしていてもよい。尚、前記実施例1では、軸心αと偏心軸βとの離間距離eを凹部14の半径よりも大きくなるようにノンコアドリル1を偏心運動させているが、凹部14が略三角形状や略四角形状や楕円形状をなしている場合には、軸心αから最も近い凹部14の内縁部までの距離よりも大きくなるように軸心αと偏心軸βとの離間距離eを決定すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】実施例1におけるノンコアドリルを示す斜視図である。
【図2】ノンコアドリルを示す正面図である。
【図3】ノンコアドリルを示す側面図である。
【図4】ノンコアドリルを示す縦断側面図である。
【図5】ノンコアドリルが板ガラスを研削している状態の断面図である。
【図6】図5におけるノンコアドリルを示すA−A断面図である。
【図7】ダイヤモンド砥石部が穿孔部を面取りしている状態の一部断面図である。
【図8】実施例2におけるノンコアドリルを示す縦断側面図である。
【図9】実施例3におけるノンコアドリルを示す斜視図である。
【図10】実施例3におけるノンコアドリルの研削状態を示す概念平面図である。
【図11】実施例4におけるノンコアドリルを示す斜視図である。
【図12】実施例4におけるノンコアドリルの研削状態を示す概念平面図である。
【図13】実施例5におけるノンコアドリルが板ガラスを研削している状態の断面図である。
【符号の説明】
【0059】
1,1a ノンコアドリル
2 ダイヤモンド砥石部
3 シャンク
4 先端砥石部
5 中間砥石部
6 基端砥石部
7,8,9 円筒面
10,11,12 円錐面
13 先端面(先端砥面)
14,14a 凹部
14b,14c 凹溝条(凹部)
14d 凹部
15 ラウンド面
16 板ガラス(硬脆材料)
17 穿孔部
18 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸として作用するシャンクの先端にダイヤモンド砥石部を備え、該ダイヤモンド砥石部を前記シャンクの軸心を中心として軸回転させるとともに、前記ダイヤモンド砥石部と研削対象となる硬脆材料との間に偏心運動を与えて研削を行うためのノンコアドリルであって、
前記ダイヤモンド砥石部の先端面における少なくとも回転軸の軸心部に凹部が形成され、該凹部を除く前記ダイヤモンド砥石部の先端面が、前記硬脆材料を研削する先端砥面となっていることを特徴とするノンコアドリル。
【請求項2】
前記凹部が、前記硬脆材料が研削されることで発生する切粉を収容できるようになっていることを特徴とする請求項1に記載のノンコアドリル。
【請求項3】
前記凹部が、前記ダイヤモンド砥石部の先端面の軸心部から放射状に延びる少なくとも1条の凹溝条となっていることを特徴とする請求項1または2に記載のノンコアドリル。
【請求項4】
前記ダイヤモンド砥石部には、前記凹部の内空間から前記ダイヤモンド砥石部の側周外部まで貫通する貫通孔が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のノンコアドリル。
【請求項5】
回転軸として作用するシャンクの先端にダイヤモンド砥石部を備えたノンコアドリルを用いて略円形状の穿孔部を研削対象となる硬脆材料に形成する研削方法であって、
前記ダイヤモンド砥石部の先端面における少なくとも回転軸の軸心部に凹部が形成され、該凹部を除く前記ダイヤモンド砥石部の先端面が、前記硬脆材料を研削する先端砥面となっており、
前記ダイヤモンド砥石部を前記シャンクの軸心を中心として軸回転させるとともに、少なくとも前記穿孔部の中心点を前記先端砥面が通過することを条件に、前記ダイヤモンド砥石部と前記硬脆材料との間に偏心運動を与えて該硬脆材料の研削を行うことを特徴とするノンコアドリルを用いた研削方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−155310(P2008−155310A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−345563(P2006−345563)
【出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【出願人】(390001535)旭栄研磨加工株式会社 (9)
【Fターム(参考)】