説明

ハイブリッド型建設機械

【課題】エアコン用コンデンサに対する冷却効果の向上が図られた冷却構造を有する。
【解決手段】リフティングマグネット車両では、エンジン11により回転するファン62の回転により形成される冷却風流路において、上流から下流に向って、流路の上側にあっては、ハイブリッド用ラジエタ77、燃料クーラ75、インタークーラ73、エンジン用冷却器71の上側部分の順に並び、流路の下側にあっては、エアコン用コンデンサ79、エンジン用冷却器71の下側部分の順に並ぶ。このように、流路の下側に対して流路の上側に多くの冷却器が並び、流路の下側の方が冷却風の流れを妨げる抵抗が小さいため、省エネ等の理由によってエンジン11の回転数が減少しファン62の回転数が減少した場合であっても、ハウス部4bの側壁49によって上流側が閉塞された下側の流路において冷却風の風量が増加し、エアコン用コンデンサ79に対する冷却効果が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド型建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ショベル、リフティングマグネット、クレーンといった建設機械において、エンジンの駆動により回転する冷却ファンを利用して吸気した外気を冷却風として、運転室のエアコンディショナ用熱交換器(エアコン用コンデンサ)、作動油を冷却するオイルクーラとエンジン用ラジエタとからなるエンジン用冷却器の順に通過させることによって、これらを空冷する構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−291601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、バッテリ及び交流電動機を備え、交流電動機の力行動作によりエンジンの駆動を補助する所謂ハイブリッドシステムを備えるハイブリッド型建設機械が開発されている。このハイブリッド型建設機械では、ハイブリッドシステムに用いられるインバータ等を冷却するためのラジエタ(ハイブリッド用ラジエタ)をエンジン用ラジエタとは別に設ける必要があり、ハイブリッド用ラジエタを冷却ファンによる冷却風流路に配置して冷却する必要がある。
【0005】
また、ハイブリッド型建設機械では、省エネ等のためにエンジンの回転数を減少させることがある。ここで、エンジンの回転数の減少に対応して冷却ファンの回転数も減少し、ハイブリッド用ラジエタ及びエンジン用冷却器に対する冷却能力が低下するが、エンジン回転数も低下しているため、問題はない。しかしながら、運転室を冷却するエアコン用コンデンサの冷却効果が低減してしまうことになり、問題となる。
【0006】
本発明は上記を鑑みてなされたものであり、エアコン用コンデンサに対する冷却効果の向上が図られた冷却構造を有するハイブリッド型建設機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係るハイブリッド型建設機械は、エンジンと、エンジンの駆動により発電を行う発電手段と、発電手段により発電された電力を蓄電する蓄電手段と、蓄電手段からの電力により駆動する電動駆動手段とを備えたハイブリッド型建設機械であって、エンジンの駆動により回転し、ボディに設けられた通気口から外気を吸気することでボディ内に冷却風流路を形成するファンと、冷却風流路においてファンの上流側に配置されたエンジン用冷却器と、エンジン用冷却器の上流側で上側に配置されたインタークーラと、インタークーラの上流側で上側に配置されたハイブリッド用ラジエタと、エンジン用冷却器の上流側で下側に配置されたエアコン用コンデンサと、を備え、ハイブリッド用ラジエタの上流側に通気口が設けられると共にエアコン用コンデンサの上流側には壁が設けられることを特徴とする。
【0008】
上記のハイブリッド型建設機械においては、ファンの駆動により形成される冷却風流路において、上流から下流に向って、流路の上側にあっては、ハイブリッド用ラジエタ、インタークーラ、エンジン用冷却器の上側部分の順に並び、流路の下側にあっては、エアコン用コンデンサ、エンジン用冷却器の下側部分の順に並び、このように、流路の下側に対して流路の上側に多くの冷却器が並び、流路の下側の方が冷却風の流れを妨げる抵抗が小さいため、エンジンの回転数が減少しファンの回転数が減少した場合であっても、壁によって上流側が閉塞された下側の流路において冷却風の風量が増加し、エアコン用コンデンサに対する冷却効果が向上する。
【0009】
ここで、ハイブリッド用ラジエタは、電動駆動手段よりも高い位置にエア抜き孔を備える態様とすることが好ましい。
【0010】
上記のように、ハイブリッド用ラジエタのエア抜き孔が電動駆動手段よりも高い位置に設けられることにより、ハイブリッド用ラジエタの内部を流れ電動駆動手段を冷却している冷却水に混入するエアを好適に除去することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、エアコン用コンデンサに対する冷却効果の向上が図られた冷却構造を有するハイブリッド型建設機械が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る建設機械の外観を示す斜視図である。
【図2】図1に示す建設機械の電気系統や油圧系統等の内部構成を示すブロック図である。
【図3】図2中の蓄電手段の内部構成を示す回路図である。
【図4】図1中の旋回体のハウス部を示す斜視図である。
【図5】ハウス部内に蓄電手段のキャパシタボックスを設置した状態を示す断面図である。
【図6】ハウス部内の各冷却器の配置を示す図である。
【図7】ハウス部内の各冷却器の配置を通気口側から見た図である。
【図8】ハイブリッドシステム用の冷却液循環システムについて説明するためのブロック図である。
【図9】さらに他の実施形態に係る建設機械の電気系統や油圧系統等の内部構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明による建設機械の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る建設機械の外観を示す斜視図である。この実施形態の建設機械は、所謂ハイブリッド型建設機械であり、その一例としてのリフティングマグネット車両を示すものである。
【0015】
図1に示すように、リフティングマグネット車両1は、無限軌道を含む走行機構2と、走行機構2の上部に旋回機構3を介して回動自在に搭載された旋回体4とを備えている。旋回体4には、ブーム5と、ブーム5の先端にリンク接続されたアーム6と、アーム6の先端にリンク接続されたリフティングマグネット7とが取り付けられている。このリフティングマグネット7は、鋼材などの吊荷Gを磁力により吸着して捕獲するための設備である。ブーム5、アーム6及びリフティングマグネット7は、各々ブームシリンダ8、アームシリンダ9及びバケットシリンダ10によって油圧駆動される。
【0016】
また、旋回体4には、リフティングマグネット7の位置や励磁動作及び釈放動作を操作する操作者を収容するための運転室4aや、油圧を発生するための動力源であるエンジン11(図2参照)といった動力源等を収容したハウス部(ボディ)4bが設けられている。エンジン11は、例えばディーゼルエンジンで構成される。
【0017】
図2は、図1に示す建設機械の電気系統や油圧系統等の内部構成を示すブロック図であり、構成は所謂パラレル方式と称されるものである。なお、図2では、機械的に動力を伝達する系統を二重線で、油圧系統を太い実線で、操縦系統を破線で、電気系統を細い実線でそれぞれ示している。また、図3は、図2中の蓄電手段120の内部構成を示す図である。
【0018】
図2に示すように、リフティングマグネット車両1は電動発電機(発電手段)12及び変速機13を備えており、エンジン11及び電動発電機12の回転軸は、共に変速機13の入力軸に接続されることにより互いに連結されている。エンジン11の負荷が大きいときには、電動発電機12がこのエンジン11を作業要素として駆動することによりエンジン11の駆動力を補助(アシスト)し、電動発電機12の駆動力が変速機13の出力軸を経てメインポンプ14に伝達される。一方、エンジン11の負荷が小さいときには、エンジン11の駆動力が変速機13を経て電動発電機12に伝達されることにより、電動発電機12が発電を行う。
【0019】
電動発電機12は、例えば、磁石がロータ内部に埋め込まれたIPM(Interior Permanent Magnetic)モータによって構成される。電動発電機12の駆動と発電との切り替えは、リフティングマグネット車両1における電気系統の駆動制御を行うコントローラ30により、エンジン11の負荷等に応じて行われる。
【0020】
変速機13の出力軸にはメインポンプ14及びパイロットポンプ15が接続されており、メインポンプ14には高圧油圧ライン16を介してコントロールバルブ17が接続されている。コントロールバルブ17は、リフティングマグネット車両1における油圧系の制御を行う装置である。このコントロールバルブ17には、図1に示した走行機構2を駆動するための左右の油圧モータ2a,2bの他、ブームシリンダ8、アームシリンダ9及びバケットシリンダ10が高圧油圧ラインを介して接続されており、コントロールバルブ17は、これらに供給する油圧を運転者の操作入力に応じて制御する。
【0021】
電動発電機12の電気的な端子には、インバータ回路18Aの出力端が接続されている。インバータ回路18Aの入力端には、蓄電手段120が接続されている。蓄電手段120は、図3に示すように、直流母線であるDCバス110、昇降圧コンバータ100及びキャパシタ19を備えている。すなわち、インバータ回路18Aの入力端は、DCバス110を介して昇降圧コンバータ100の入力端に接続されている。昇降圧コンバータ100の出力端には、キャパシタ19が接続されている。キャパシタ19は、ここでは、多数のセルを有する構成とされている。なお、キャパシタに代えてバッテリを用いることもできる。
【0022】
図2に戻って、インバータ回路18Aは、コントローラ30からの指令に基づき、電動発電機12の運転制御を行う。すなわち、インバータ回路18Aが電動発電機12を電動(アシスト)運転させる際には、必要な電力をキャパシタ19と昇降圧コンバータ100からDCバス110を介して電動発電機12に供給する。また、電動発電機12を発電運転させる際には、電動発電機12により発電された電力をDCバス110及び昇降圧コンバータ100を介してキャパシタ19に充電する。なお、昇降圧コンバータ100の昇圧動作と降圧動作の切替制御は、DCバス電圧値、キャパシタ電圧値及びキャパシタ電流値に基づき、コントローラ30によって行われる。これにより、DCバス110を、予め定められた一定電圧値に蓄電された状態に維持することができる。
【0023】
また、蓄電手段120のDCバス110には、インバータ回路20Bを介して図1に示したリフティングマグネット7が接続されている。リフティングマグネット7は、金属物を磁気的に吸着させるための磁力を発生する電磁石を含んでおり、インバータ回路20Bを介してDCバス110から電力が供給される。インバータ回路20Bは、コントローラ30からの指令に基づき、電磁石をオンにする際には、リフティングマグネット7へ要求された電力をDCバス110より供給する。また、電磁石をオフにする場合には、回生された電力をDCバス110に供給する。
【0024】
さらに、蓄電手段120には、インバータ回路20Aが接続されている。インバータ回路20Aの一端には作業用電動機としての旋回用電動機(交流電動機;電動駆動手段)21が接続されており、インバータ回路20Aの他端は蓄電手段120のDCバス110に接続されている。旋回用電動機21は、旋回体4を旋回させる図1に示した旋回機構3の動力源である。旋回用電動機21の回転軸21Aには、レゾルバ22、メカニカルブレーキ23及び旋回減速機24が接続される。
【0025】
旋回用電動機21が力行運転を行う際には、旋回用電動機21の回転駆動力の回転力が旋回減速機24にて増幅され、旋回体4が加減速制御され回転運動を行う。また、旋回体4の慣性回転により、旋回減速機24にて回転数が増加されて旋回用電動機21に伝達され、回生電力を発生させる。旋回用電動機21は、PWM(Pulse Width Modulation)制御信号によりインバータ回路20Aによって交流駆動される。旋回用電動機21としては、例えば、磁石埋込型のIPMモータが好適である。
【0026】
レゾルバ22は、旋回用電動機21の回転軸21Aの回転位置及び回転角度を検出するセンサであり、旋回用電動機21と機械的に連結することで回転軸21Aの回転角度及び回転方向を検出する。レゾルバ22が回転軸21Aの回転角度を検出することにより、旋回機構3の回転角度及び回転方向が導出される。メカニカルブレーキ23は、機械的な制動力を発生させる制動装置であり、コントローラ30からの指令によって、旋回用電動機21の回転軸21Aを機械的に停止させる。旋回減速機24は、旋回用電動機21の回転軸21Aの回転速度を減速して旋回機構3に機械的に伝達する減速機である。
【0027】
なお、DCバス110には、インバータ回路18A,20A,20Bを介して、電動発電機12、旋回用電動機21及びリフティングマグネット7が接続されているため、電動発電機12で発電された電力がリフティングマグネット7又は旋回用電動機21に直接的に供給される場合もあり、リフティングマグネット7で回生された電力が電動発電機12又は旋回用電動機21に供給される場合もあり、さらに、旋回用電動機21で回生された電力が電動発電機12又はリフティングマグネット7に供給される場合もある。
【0028】
パイロットポンプ15には、パイロットライン25を介して操作装置26が接続されている。操作装置26は、旋回用電動機21、走行機構2、ブーム5、アーム6及びリフティングマグネット7を操作するための操作装置であり、操作者によって操作される。操作装置26には、油圧ライン27を介してコントロールバルブ17が接続され、また、油圧ライン28を介して圧力センサ29が接続される。操作装置26は、パイロットライン25を通じて供給される油圧(1次側の油圧)を操作者の操作量に応じた油圧(2次側の油圧)に変換して出力する。操作装置26から出力される2次側の油圧は、油圧ライン27を通じてコントロールバルブ17に供給されると共に、圧力センサ29によって検出される。
【0029】
圧力センサ29は、操作装置26に対して旋回機構3を旋回させるための操作が入力されると、この操作量を油圧ライン28内の油圧の変化として検出する。圧力センサ29は、油圧ライン28内の油圧を表す電気信号を出力する。この電気信号は、コントローラ30に入力され、旋回用電動機21の駆動制御に用いられる。
【0030】
コントローラ30は、本実施形態における制御回路を構成する。コントローラ30は、CPU及び内部メモリを含む演算処理装置によって構成され、内部メモリに格納された駆動制御用のプログラムをCPUが実行することにより実現される。また、コントローラ30の電源は、キャパシタ19とは別のバッテリ(例えば24V車載バッテリ)である。コントローラ30は、圧力センサ29から入力される信号のうち、旋回機構3を旋回させるための操作量を表す信号を速度指令に変換し、旋回用電動機21の駆動制御を行う。また、コントローラ30は、電動発電機12の運転制御(アシスト運転及び発電運転の切り替え)、リフティングマグネット7の駆動制御(励磁と消磁の切り替え)、並びに、昇降圧コンバータ100を駆動制御することによるキャパシタ19の充放電制御を行う。
【0031】
ここで、本実施形態における昇降圧コンバータ100について詳細に説明する。図3に示すように、昇降圧コンバータ100は、昇降圧型のスイッチング制御方式を備えており、リアクトル101、トランジスタ100B,100Cを有する。トランジスタ100Bは昇圧用のスイッチング素子であり、トランジスタ100Cは降圧用のスイッチング素子である。トランジスタ100B,100Cは、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)によって構成され、互いに直列に接続されている。
【0032】
具体的には、トランジスタ100Bのコレクタとトランジスタ100Cのエミッタとが相互に接続され、トランジスタ100Bのエミッタはキャパシタ19の負側端子およびDCバス110の負側配線に接続され、トランジスタ100CのコレクタはDCバス110の正側配線に接続されている。そして、リアクトル101は、その一端がトランジスタ100Bのコレクタ及びトランジスタ100Cのエミッタに接続されると共に、他端がキャパシタ19の正側端子に接続されている。トランジスタ100B,100Cのゲートには、コントローラ30からPWM電圧が印加される。
【0033】
なお、トランジスタ100Bのコレクタとエミッタとの間には、整流素子であるダイオード100bが逆方向に並列接続されている。同様に、トランジスタ100Cのコレクタとエミッタとの間には、ダイオード100cが逆方向に並列接続されている。トランジスタ100Cのコレクタとトランジスタ100Bのエミッタとの間(すなわち、DCバス110の正側配線と負側配線との間)には、DCバス110において平滑用のコンデンサ110aが接続される。コンデンサ110aは、昇降圧コンバータ100からの出力電圧、電動発電機12からの発電電圧や旋回用電動機21からの回生電圧を平滑化する。
【0034】
このような構成を備える昇降圧コンバータ100において、直流電力をキャパシタ19からDCバス110へ供給する際には、コントローラ30からの指令によってトランジスタ100BのゲートにPWM電圧が印加される。そして、トランジスタ100Bのオン/オフに伴ってリアクトル101に発生する誘導起電力がダイオード100cを介して伝達され、この電力がコンデンサ110aにより平滑化される。また、直流電力をDCバス110からキャパシタ19へ供給する際には、コントローラ30からの指令によってトランジスタ100CのゲートにPWM電圧が印加されると共に、トランジスタ100Cから出力される電流がリアクトル101により平滑化される。
【0035】
続いて、旋回体4について説明する。図4は、旋回体4のハウス部(ボディ)4bを示す斜視図である。以下、ハウス部4bの構成の説明においては、特に断らない限り、前後左右はリフティングマグネット車両1を基準としている。図4に示すように、ハウス部4bは、平面視において略コの字状を成すように構成され、コの字を構成する開放部が前方を向くように配置されている。ここで、ハウス部4bにおいて、車両における右前部分(図4の図示左手前部分)を右前部Rf、右後ろ部分(図4の図示左奥部分)を右後部Rr、左前部分(図4の図示右手前部分)を左前部Lf、左後ろ部分(図4の図示右奥部分)を左後部Lr、及び右前部Rfと左前部Lfとの間の部分を中央部Cと呼ぶ。
【0036】
このようなハウス部4bの左前部Lfに対応して、図1に示す運転室4aが設けられ、中央部Cには、ブーム5の基端が上下動可能に取り付けられる。そして、ハウス部4bは、中央部Cの下部に設けられた旋回用電動機21(図2参照)により上下方向の軸心回りに回転し、すなわち、旋回方向Dに沿って左右に旋回する。右前部Rfには、メンテナンス作業用のステップ31及び手摺り32が設けられている。
【0037】
右前部Rf内には、図2に示した蓄電手段120、インバータ回路18A,20A,20B、及びコントローラ30が設置されている。右前部Rfの左右面下部には各々開口部が形成されており、右面の開口部34(図5参照)と左面の開口部33との間には、蓄電手段120のキャパシタ19が設置されている。すなわち、左右面の開口部34,33は、キャパシタ19を冷却するための空気を左右方向に通す通気口として形成されている。
【0038】
図5は、右前部Rfの下部に設置されたキャパシタ19等を前方から見た断面図である。図5には、ハウス部4bの底部を形成する骨格部材である底部フレームBaと、底部フレームBaの周縁(図5では左側)において立設された外周フレームBbと、から構成されるベースフレームBが示されている。
【0039】
図5に示すように、右前部Rfにおいて、右面の開口部34及び左面の開口部33の内側には、ルーバー36,35が各々設けられている。そして、ルーバー35,36の間には、キャパシタ19を含むキャパシタボックス80が、台座155及び防振ゴム156を介して底部フレームBa上に設置されている。キャパシタ19は、上段及び下段に各々多数のセル41を並設し纏めたもので、上段のセル41の集合体により上段モジュール45が、下段のセル41の集合体により下段モジュール45が各々構成され、これらのモジュール45,45を、左右方向に通気可能に外枠で囲い補強したものがキャパシタボックス80である。
【0040】
キャパシタボックス80の右側(図5では左側)には、吸気ダクト40が接続されると共に、吸気ダクト40内の上流側の端部には、ルーバー36に対向してルーバー38が設けられている。また、キャパシタボックス80の左側(図5では右側)端部には、上下段のセル41,41のそれぞれに対応して、冷却風を図示左から右へと流すためのファン43,43が設けられ、さらに左側(図5では右側)には、排気ダクト39が接続されると共に、排気ダクト39内の下流側の端部には、ルーバー35に対向してルーバー37が設けられている。
【0041】
吸気側のルーバー36は、図示左から右へと流れる冷却風の流れ方向に対して下方に傾斜し、これより下流の吸気ダクト40内のルーバー38は、ルーバー36とは反対に上方に傾斜している。さらに、排気ダクト39内のルーバー37は、冷却風の流れ方向に対して下方に傾斜し、これより下流の排気側のルーバー35は、ルーバー37とは反対に上方に傾斜している。このようなルーバーの構成により、キャパシタボックス80内に対する防水が図られている。
【0042】
また、上記のように、キャパシタボックス80は底部フレームBa上に設置されているため、その設置位置は、右面の開口部34及び左面の開口部33に対して低くなっている。このため、吸気ダクト40及び排気ダクト39は、上下非対称な形状をなしている。すなわち、吸気ダクト40及び排気ダクト39は、両側のルーバー38,37からキャパシタボックス80に向かうにつれて、下方に広がる形状とされている。
【0043】
さらに、吸気ダクト40内には、上段モジュール45と下段モジュール45との間の上流側端部と、ルーバー38の下流側端部とを連結し、吸気ダクト40内を上下に仕切る仕切壁44が設けられている。この仕切壁44は、上下に並設されたルーバー38に対して正対せずに下方にずれて配置された下段のモジュール45に対しても、上段のモジュール45と同量の冷却風を分配するためのものであり、上側の入口(ルーバー38の出口)での流量より下側の入口での流量が大きくなるように、水平では無く冷却風の流れ方向に対して下方に傾斜する構成とされている。
【0044】
なお、ここでは、キャパシタボックス80、吸気ダクト40、排気ダクト39、開口部34、開口部33等は右前部Rfに設置されることとしたが、左前部Lfにおいて運転室4aの下方に設置されていてもよい。
【0045】
また、図4の左後部Lr内には、エンジン用ラジエタ、オイルクーラ、インタークーラ、燃料クーラ、ハイブリッドシステム用ラジエタ(ハイブリッド用ラジエタ)、運転室4aのエアコンディショナ用熱交換器(エアコン用コンデンサ)、といった冷却器が設置されている(図6参照;詳しくは後述)。
【0046】
さらに、左後部Lrから右後部Rrにかけて、すなわち天板を構成するエンジンフードHの下方には、図2に示したエンジン11、変速機13、電動発電機12、及びメインポンプ14等が設置されている。エンジン11にはファン(図6参照)が接続されており、エンジンの回転に伴いファンが回転することにより、左前部Lfの左側面に設けられた通気口46から左後部Lr内に向けて空気が流れ、左後部Lr内に設置された上記の各冷却器が冷却される(詳しくは後述)。また、右後部Rr内には、上記の電動発電機12及びメインポンプ14を収容するポンプ室(図示せず)が形成されている。
【0047】
中央部Cには、ブーム5を上下動可能に挟むようにして支持する枠体である所謂Aフレーム47、及びブームシリンダ8の基端が取り付けられる枠体であるブームシリンダフレーム48が設けられている。Aフレーム47の後方近傍には、旋回用電動機21(図2参照)が配置されている。
【0048】
次に、図4の左後部Lr内における各冷却器の配置を図6及び図7を参照しながら説明する。図6は、ハウス部4bの左後部Lr内を車両後方側から見た図である。また、図7は、ハウス部4bの左後部Lr内に配置された各冷却器を通気口46側(車両の左側面側)から見た図である。
【0049】
図6に示すように、ハウス部4bの左後部Lr内のうち右後部Rr側にエンジン11が配置され、このエンジン11に回転軸61が接続されてエンジン11の駆動により回転するファン62が設けられる。そして、ファン62が回転し、ハウス部4bの左側面の上側に設けられた通気口46から外気を吸気することにより、ハウス部4bの左後部Lr内に冷却風流路が形成される。上記のファン62により形成される冷却風流路には、エンジン用冷却器71、インタークーラ73、燃料クーラ75、ハイブリッド用ラジエタ(ハイブリッドシステム用ラジエタ)77及びエアコン用コンデンサ(エアコンディショナ用熱交換器)79が配置される。また、通気口46の下側は、ハウス部4bの側壁49によって塞がれている。
【0050】
エンジン用冷却器71は、エンジン冷却水を冷却するエンジン用ラジエタ71Aと作動油を冷却するオイルクーラ71Bとを含んで構成され、エンジン用ラジエタ71Aとオイルクーラ71Bがファン62に対してそれぞれ並列となるように(車両の前後方向(図6の紙面垂直方向)に並ぶように)一体化されたものであり、ファン62に正対しファン62の上流側を全て覆うように配置される。
【0051】
エンジン用冷却器71の上流側で上側には、インタークーラ73が配置される。また、インタークーラ73の上流側で上側(インタークーラ73の前)には、燃料クーラ75が配置され、さらに、燃料クーラ75の上流側で上側(燃料クーラ75の前)には、ハイブリッド用ラジエタ77が配置される。一方、エンジン用冷却器71の上流側で下側には、エアコン用コンデンサ79が配置される。このエアコン用コンデンサ79は、インタークーラ73の下方に配置されている。
【0052】
なお、上記の各冷却器のうち、インタークーラ73は、ターボチャージャの過給効率を上げることを目的として過給気を冷却するためのものである。また、燃料クーラ75は燃料を冷却するためのものである。また、ハイブリッド用ラジエタ77は、ハイブリッドシステムを構成するインバータ等を冷却するためのラジエタであって、具体的には、昇降圧コンバータ100、インバータ回路18A,20A,20B、コントローラ30、旋回用電動機21、電動発電機12、変速機13等に設けられた配管内を循環する冷却水を冷却するための熱交換器である。このハイブリッド用ラジエタ77には冷媒中に混入するエアを除去するためのエア抜き孔(図示せず)が旋回用電動機21よりも高い位置に設けられる。
【0053】
ここで、ハイブリッド用ラジエタ77を含んで構成されるハイブリッドシステム用の冷却液循環システムについて説明する。図8は、この冷却液循環システムについて説明するためのブロック図である。図8に示すように、ハイブリッドシステム用の冷却循環システムは、ハイブリッド用ラジエタ77と、ポンプモータ91によって駆動されるポンプ93と、サーボ制御用ユニット60とを含んでいる。そして、ハイブリッド用ラジエタ77により放熱された冷却液は、ポンプ93によって循環され、サーボ制御ユニット60へ送られる。サーボ制御ユニット60は、図2に示したコントローラ30を収容するユニットであり、電気信号の送信等によりポンプモータ91、旋回用電動機21及び電動発電機12の動作を制御する機能を有する。このサーボ制御ユニット60は、昇降圧コンバータ100、インバータ回路18A,20A及び20B、並びにレバーの操作量を各電動機への指令値へと変換するCPUを備えるコントローラ30を冷却するための配管を有しており、冷却液はこの配管内を循環する。特に、耐熱温度が低いCPUを備えるコントローラ30は、ハイブリッドラジエタ77により冷却された冷却液によって最初に冷却されるように配管されている。サーボ制御ユニット60の配管を通過した冷却液は、旋回用電動機21、電動発電機12、及び変速機13をこの順に冷却したのち、ハイブリッド用ラジエタ77へ戻される。なお、サーボ制御ユニット60の入口には、冷却液の温度を検出するための温度センサ95が設けられることが好ましい。更に、検出した温度を表示する表示装置を備えるとなお良い。これにより、ハイブリッド用ラジエタ77が詰まり冷却性能が低下した場合には、温度検出値に基づいて旋回用電動機21及び電動発電機12(または、これらのうち一方)の出力を制限することができる。その結果、連続的な運転を可能とすることができ、ハイブリッド型建設機械1を停止させることなく継続的な作業が可能となる。
【0054】
各冷却器が図6及び図7に示すように配置された上記の構成によれば、ファン62が回転することによって通気口46からハウス部4bの内部に吸気された冷却風のうち冷却風流路の上側を流れる風は、上流(通気口46)から下流(ファン62)に向って、ハイブリッド用ラジエタ77、燃料クーラ75、インタークーラ73、エンジン用冷却器71の順に通過する。これにより、ハイブリッド用ラジエタ77、燃料クーラ75、インタークーラ73、エンジン用冷却器71(上側部分)の各冷却器が空冷される。特に、ハイブリッド用ラジエタ77は、最上流に位置するため、十分に冷却され、ハイブリッドシステムの電気性能の低下を防止できる。
【0055】
一方、ファン62が回転することによって通気口46からハウス部4bの内部に吸気された冷却風のうち冷却風流路の下側を流れる風は、上流(通気口46)から下流(ファン62)に向って、エアコン用コンデンサ79、エンジン用冷却器71の順に通過する。これにより、エアコン用コンデンサ79、エンジン用冷却器71(下側部分)の各冷却器が空冷される。
【0056】
ここで、リフティングマグネット車両1はハイブリッド型建設機械であるため、省エネ等のためにエンジン11の回転数を減少させる場合がある。このとき、エンジン11の回転数の減少に対応してファン62の回転も減少するため、ファン62による吸気能力が低下し冷却能力が低下する。しかしながら、冷却風流路の上側に配置されるハイブリッド用ラジエタ77、燃料クーラ75、インタークーラ73及びエンジン用冷却器71のうち、特に燃料クーラ75、インタークーラ73及びエンジン用冷却器71については、エンジン11の回転数が減少するため冷却効率の低下を特に問題としない。また、ハイブリッド用ラジエタ77については、他の冷却器よりも流路の上流側に配置されて他の冷却器よりも冷却能力の低下が抑制されるため、エンジン11の回転数の減少による問題は発生せず、また、ハイブリッド用ラジエタ77中の冷却液は、ポンプモータ93により駆動されるポンプ91によってハイブリッドシステムの各機器を冷却するため、仮にエンジン11が停止した場合であってもハイブリッドシステムに含まれる各機器を適切に冷却することができる。このように、ハイブリッド用ラジエタ77に関しては良好な冷却がなされるが、エアコン用コンデンサ79に対する冷却効率が低下した場合には、運転室4aのエアコンの機能に支障を及ぼす可能性がある。
【0057】
これに対して、本実施形態に係るリフティングマグネット車両1では、前述したように、ファン62の駆動により形成される冷却風流路において、上流から下流に向って、流路の上側にあっては、ハイブリッド用ラジエタ77、燃料クーラ75、インタークーラ73、エンジン用冷却器71の上側部分の順に並び、流路の下側にあっては、エアコン用コンデンサ79、エンジン用冷却器71の下側部分の順に並び、このように、流路の下側に対して流路の上側に多くの冷却器が並び、流路の下側の方が冷却風の流れを妨げる抵抗が小さいため、省エネ等の理由によってエンジン62の回転数が減少し、対応するファン62の回転数が減少した場合であっても、ハウス部4bの側壁49によって上流側が閉塞された下側の流路において冷却風の風量が増加し、エアコン用コンデンサ79に対する冷却効果が向上する。
【0058】
また、本実施形態に係るリフティングマグネット車両1では、ハイブリッド用ラジエタ77のエア抜き孔が旋回用電動機21よりも高い位置に設けられるため、ハイブリッド用ラジエタ77の内部を流れ旋回用電動機21を冷却している冷却水に混入するエアを好適に除去することができる。
【0059】
図9は、さらに他の実施形態に係る建設機械の電気系統や油圧系統等の内部構成を示すブロック図である。
【0060】
図9に示す構成は、所謂シリーズ方式と称されるもので、図2に示すパラレル方式の構成において、変速機13とメインポンプ14とを連結する構成に代えて、ポンプ用電動機140及びインバータ18Dを別途設け、エンジン11の全ての動力を一旦電気エネルギに変換して、各種の駆動要素を駆動するものである。
【0061】
具体的には、インバータ18Dは、蓄電手段120のDCバス110(図3参照)と電気的に接続されると共に、コントローラ30により制御される。また、インバータ18Dの出力端は、ポンプ用電動機140に接続されており、ポンプ用電動機140は、インバータ18Dにより駆動制御される。また、ポンプ用電動機140においてメインポンプ14により発電された電力は、回生エネルギとしてインバータ18Dを経て蓄電手段120に供給される。
【0062】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、上記実施形態においては、特に好適であるとして、リフティングマグネットタイプのハイブリッド型建設機械に対する適用を述べているが、ショベルやホイルローダ、クレーン等の他の建設機械に対しても適用可能である。
【0063】
また、上記実施形態では、冷却風流路において、インタークーラ73とハイブリッド用ラジエタ77との間に燃料クーラ75が設けられている構成について述べているが、燃料クーラ75はこの位置に配置されていなくてもよい。すなわち、上記実施形態に係るリフティングマグネット車両1では、流路の下側に配置される冷却器の数が流路の上側に配置される冷却器の数よりも少ないことで、下側の流路において冷却風の風量が増加し、下側に配置されるエアコン用コンデンサ79に対する冷却効果が向上するため、この関係が維持されていれば、各冷却器の配置の変更を行うことができる。したがって、例えば、上記実施形態では、エンジン用ラジエタ71Aとエンジン用冷却器71Bとが冷却風流路において並列となるように一体化されたエンジン用冷却器71について説明したが、エンジン用ラジエタ71Aとエンジン用冷却器71Bとが冷却風流路において直列となるように配置してもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、冷却風流路の上流の下側の方がハウス部4bの側壁49により閉塞されている構成について述べているが、流路の上流の下側が他の部材によって閉塞されている場合についても適用可能である。
【符号の説明】
【0065】
1…リフティングマグネット車両、4…旋回体、4b…ハウス部、11…エンジン、12…電動発電機(発電手段)、21…旋回用電動機(電動駆動手段)、46…通気口、62…ファン、71…エンジン用冷却器、73…インタークーラ、75…燃料クーラ、77…ハイブリッド用ラジエタ、79…エアコン用コンデンサ、120…蓄電手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、前記エンジンの駆動により発電を行う発電手段と、前記発電手段により発電された電力を蓄電する蓄電手段と、前記蓄電手段からの電力により駆動する電動駆動手段とを備えたハイブリッド型建設機械であって、
前記エンジンの駆動により回転し、ボディに設けられた通気口から外気を吸気することでボディ内に冷却風流路を形成するファンと、
前記冷却風流路において前記ファンの上流側に配置されたエンジン用冷却器と、
前記エンジン用冷却器の上流側で上側に配置されたインタークーラと、
前記インタークーラの上流側で上側に配置されたハイブリッド用ラジエタと、
前記エンジン用冷却器の上流側で下側に配置されたエアコン用コンデンサと、
を備え、
前記ハイブリッド用ラジエタの上流側に前記通気口が設けられると共に前記エアコン用コンデンサの上流側には壁が設けられる
ことを特徴とするハイブリッド型建設機械。
【請求項2】
前記ハイブリッド用ラジエタは、前記電動駆動手段よりも高い位置にエア抜き孔を備える
ことを特徴とする請求項1記載のハイブリッド型建設機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−21431(P2011−21431A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−169260(P2009−169260)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(502246528)住友建機株式会社 (346)
【Fターム(参考)】