説明

ハイブリッド車両

【課題】低SOC時に強制充電が必要な時の、適切な触媒暖気制御の提供。
【解決手段】ハイブリッド車両10は、触媒27を排気通路に備える内燃機関20と、第1発電電動機MG1と、第2発電電動機MG2と、バッテリ(蓄電装置)63と、動力伝達機構(30、50)と、を含む。機関の冷却水温が所定温度相関閾値以下である場合、機関が始動され、点火時期を所定の遅角量だけ遅角する触媒暖機運転が実行される。バッテリの残容量が所定残容量相関閾値以下である場合、機関が始動され、第1発電電動機を駆動してバッテリを充電する強制充電運転が実行される。強制充電運転中、バッテリの残容量に応じて機関に要求される負荷が変更される。強制充電運転中に触媒暖機運転を行う場合、触媒の暖機促進用の前記遅角量は機関の負荷が大きくなるほど小さくなるように制限される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化用の触媒を排気通路に有する内燃機関、電動機、発電機及び蓄電装置を備えるハイブリッド車両に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド車両は、車両を走行させる駆動力を発生する駆動源として、内燃機関(以下、単に「機関」と称呼する。)と電動機とを搭載している。即ち、ハイブリッド車両は、機関及び電動機の少なくとも一方が発生するトルクを車両の駆動輪に接続された駆動軸に伝達することによって走行する。
【0003】
一方、ハイブリッド車両においても、通常の機関のみを駆動源として搭載した車両と同様、機関の排気通路に排気浄化用の触媒が配設される。排気浄化用の触媒は、例えば、三元触媒であり、以下において単に「触媒」と称呼される。一般に、触媒は、その温度(触媒床温)が所定の活性温度以上であるときに高い排気浄化性能を発揮する。従って、ハイブリッド車両の運転開始時(即ち、システム起動時)等において触媒の温度が低い場合には、機関を始動するとともに点火時期を「通常の点火時期」よりも遅角することにより排気温度を上昇させ、以て、触媒の温度を早期に上昇させる「触媒暖機運転」が実行される。なお、「通常の点火時期」は「基準点火時期、最適点火時期及び基本点火時期等」と称呼される点火時期であり、燃焼状態が良好であって機関の効率が高くなるような点火時期に設定されている。
【0004】
一方、ハイブリッド車両が備える蓄電装置はハイブリッド車両の運転中に回生エネルギー及び機関の出力により適宜充電される。従って、蓄電装置の残容量は適切な値に維持される。蓄電装置の残容量は、例えば、SOC(State Of Charge)と称呼される充電状態を示すパラメータにより示される。
【0005】
ところが、例えば、ハイブリッド車両が長期間に亘って運転されず、それにより蓄電装置が自己放電した場合、或いは、車両がシステム起動後においてニュートラルポジションにて長時間放置された場合等において、蓄電装置の残容量が著しく低下することがある。係る場合、ハイブリッド車両は機関を始動して発電機を駆動し、それにより蓄電装置を充電する。このような充電を行う運転は「強制充電運転」とも称呼される(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−238965号公報
【発明の概要】
【0007】
ところで、強制充電運転においては、蓄電装置の残容量が小さいほど迅速に充電を行う必要があることなどから、残容量が小さいほど機関の動力を増大させることにより発電機による発電量を増大することが望ましい。この結果、強制充電運転中においては、蓄電装置の残容量が小さいほど機関の負荷が増大する。
【0008】
一方、触媒温度が低く且つ蓄電装置の残容量が非常に小さい場合にシステム起動がなされた場合、触媒暖機運転と強制充電運転との双方が実行されることが望ましい。しかしながら、これら二つの運転を単に同時に実行すると、特に強制充電運転によって機関の負荷が増大した場合に機関の点火時期が遅角されていることに起因して機関のトルク変動が大きくなり、そのトルク変動によって動力伝達系にねじり共振が発生して機関回転速度がハンチングし、動力伝達機構内の歯車同士が衝突し合うことによって大きな音(歯打ち音)が発生する場合があることが判明した。
【0009】
本発明のハイブリッド車両は上述の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、強制充電運転中に触媒暖機運転を行う場合において、大きな歯打ち音が発生することのないハイブリッド車両を提供することにある。
【0010】
本発明のハイブリッド車両は、
排ガス浄化用の触媒を排気通路に備える内燃機関と、
電動機と、
前記電動機を駆動する電力を同電動機に供給可能な蓄電装置と、
前記蓄電装置を充電する電力を前記内燃機関の動力を用いて発生可能な発電機と、
車両の駆動軸と前記内燃機関とをトルク伝達可能に連結するとともに同駆動軸と前記電動機とをトルク伝達可能に連結する動力伝達機構と、
前記駆動軸に要求されるトルクを少なくとも前記内燃機関と前記電動機とのそれぞれが発生するトルクを制御することにより発生するとともに、前記発電機の発生する電力を前記内燃機関の発生する動力を制御することにより変更する制御装置と、
を含むシステムを有する。
【0011】
前記動力伝達機構は、前記車両の駆動軸、前記内燃機関、前記電動機及び前記発電機を互いにトルク伝達可能に連結する機構であってもよく、前記制御装置は、前記駆動軸に要求されるトルク及び前記発電機の発生する電力を、前記内燃機関と前記電動機と前記発電機とのそれぞれが発生するトルクを制御することにより制御する装置であってもよい。
【0012】
更に、本発明において、前記制御手段は、触媒暖機運転実行手段と強制充電運転実行手段とを含む。
【0013】
前記触媒暖機運転実行手段は、「前記触媒の温度に相関を有するパラメータである触媒温度パラメータ」が所定温度相関閾値以下である場合に「前記内燃機関を始動させるとともに同内燃機関の点火時期を基準点火時期よりも所定の遅角量だけ遅角させる触媒暖機運転」を実行する。例えば、前記触媒暖機運転実行手段は、前記システムの起動時に前記触媒温度パラメータの一つである機関の冷却水温が前記所定温度相関閾値以下である場合に前記触媒暖機運転を開始するように構成され得る。
【0014】
前記強制充電運転実行手段は、「前記蓄電装置の残容量に相関を有するパラメータである残容量パラメータ」が所定残容量相関閾値以下である場合に「前記内燃機関を始動させることにより前記発電機に発電させて前記蓄電装置を充電する強制充電運転」を実行する。例えば、前記強制充電運転実行手段は、前記システムの起動時に前記残容量パラメータが前記所定残容量相関閾値以下である場合に前記強制充電運転を開始するように構成され得る。
【0015】
加えて、
前記強制充電運転実行手段は、
前記残容量パラメータに応じて前記内燃機関に要求する負荷を変更して前記内燃機関を運転するように構成され、
前記触媒暖機運転実行手段は、
前記強制充電運転と前記触媒暖機運転との両方が同時に実行される場合には前記遅角量を前記内燃機関の負荷が大きくなるほど減少させるように構成されている。
【0016】
これによれば、蓄電装置の残容量が小さい場合、その残容量に応じて発電機による発電量を変更するように、機関に要求される負荷(実際には機関要求出力)が変更される。即ち、強制充電運転が実行される。このとき、触媒の暖機が必要であれば、強制充電実行運転が実行されていない場合と同様、点火時期が基準点火時期から遅角させられる。但し、このときの遅角量は内燃機関の負荷が大きいほど減少させられる。従って、強制充電運転によって内燃機関の負荷が大きくなったとしても、触媒暖機のための点火時期の遅角に起因する機関の出力トルク変動が大きくならないようにすることができる。その結果、大きな歯打ち音が発生することを回避しながら、蓄電装置の充電と触媒の暖機促進とを両立することができる。
【0017】
本発明の一態様において、前記触媒暖機運転実行手段は、
前記強制充電運転と前記触媒暖機運転との両方が同時に実行される場合の前記遅角量を、前記強制充電運転が行われず前記触媒暖機運転が行われる場合の前記遅角量の最大値以下の値にするように構成される。
【0018】
これによれば、前記強制充電運転と前記触媒暖機運転との両方が同時に実行される場合の前記遅角量が「歯打ち音を引き起こすエンジンの大きなトルク変動を招くことのない値」に設定される。その結果、大きな歯打ち音が発生することを回避しながら、蓄電装置の充電と触媒の暖機促進とを両立することができる。
【0019】
更に、本発明の一態様において、前記触媒暖機運転実行手段は、
前記内燃機関の負荷と前記触媒温度パラメータとに基づいて基準遅角量を決定するとともに、
(1)前記強制充電運転が行われず前記触媒暖機運転が行われる場合には前記決定された基準遅角量を前記所定の遅角量として用い、
(2)前記強制充電運転と前記触媒暖機運転との両方が同時に実行される場合には前記決定された基準遅角量を前記内燃機関の負荷が大きくなるほど小さくなる遅角制限値により制限することにより得られる制限後遅角量を前記所定の遅角量として用いる、
ように構成される。
【0020】
これによれば、前記強制充電運転が行われず前記触媒暖機運転が行われる通常の触媒暖機運転実行時において触媒の暖機を効果的に行うことができる。更に、前記強制充電運転と前記触媒暖機運転との両方が同時に実行される場合には、歯打ち音を招かない範囲で遅角量を大きくすることができるので触媒の暖機を促進することができる。
【0021】
本発明の一態様において、前記動力伝達機構は、前記内燃機関と前記駆動軸とを複数の歯車のみを介して連結してなる。このような動力伝達機構は、内燃機関の出力トルクの変動を吸収する部分を持たないので、歯打ち音が発生する可能性が高い。よって、本発明は、係る動力伝達機構を有するハイブリッド車両において特に有効に作用する。
【0022】
本発明の他の目的、他の特徴及び付随する利点は、以下の図面を参照しつつ記述される本発明の各実施形態についての説明から容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係るハイブリッド車両の概略図である。
【図2】図2は、触媒暖機運転中における機関の出力トルクの変動の様子を示した図である。
【図3】図3は、図1に示したエンジンECUのCPUがシステム起動時に実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図4】図4は、図1に示したエンジンECUのCPUがシステム起動時に実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図5】図5の(A)は触媒暖機運転中における遊星歯車装置の共線図であり、図5の(B)は強制充電運転中における遊星歯車装置の共線図である。
【図6】図6は、図1に示したエンジンECUのCPUが実行する点火時期制御ルーチンを示したフローチャートである。
【図7】図7は、図1に示したエンジンECUのCPUが参照する遅角量制限値のルックアップテーブルである。
【図8】図8は、最適機関動作ラインを示したグラフである。
【図9】図9は、通常走行中における遊星歯車装置の共線図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態に係るハイブリッド車両について図面を参照しながら説明する。
【0025】
(構成)
図1に示したように、本発明の実施形態に係るハイブリッド車両10は、発電電動機MG1、発電電動機MG2、内燃機関20、動力分配機構30、駆動力伝達機構50、第1インバータ61、第2インバータ62、バッテリ63、パワーマネジメントECU70、バッテリECU71、モータECU72及びエンジンECU73を備えている。なお、ECUは、エレクトリックコントロールユニットの略称であり、CPU、ROM、RAM及びインターフェース等を含むマイクロコンピュータを主要構成部品として有する電子制御回路である。
【0026】
発電電動機(モータジェネレータ)MG1は、発電機及び電動機の何れとしても機能することができる同期発電電動機である。発電電動機MG1は、便宜上、第1発電電動機MG1とも称呼される。第1発電電動機MG1は本例において主として発電機としての機能を発揮する。第1発電電動機MG1は、出力軸(以下、「第1シャフト」とも称呼する。)41を備えている。
【0027】
発電電動機(モータジェネレータ)MG2は、第1発電電動機MG1と同様、発電機及び電動機の何れとしても機能することができる同期発電電動機である。発電電動機MG2は、便宜上、第2発電電動機MG2とも称呼される。第2発電電動機MG2は本例において主として電動機としての機能を発揮する。第2発電電動機MG2は、出力軸(以下、「第2シャフト」とも称呼する。)42を備えている。
【0028】
機関20は、4サイクル・火花点火式・多気筒・内燃機関である。機関20は、吸気管及びインテークマニホールドを含む吸気通路部21、スロットル弁22、スロットル弁アクチュエータ22a、複数の燃料噴射弁23、点火プラグを含む複数の点火装置24、機関20の出力軸であるクランクシャフト25、エキゾーストマニホールド及び排気管を含む排気通路部26、及び、三元触媒27を含んでいる。
【0029】
スロットル弁22は吸気通路部21に回転可能に支持されている。
スロットル弁アクチュエータ22aはエンジンECU73からの指示信号に応答してスロットル弁22を回転し、吸気通路部21の通路断面積を変更できるようになっている。
燃料噴射弁23のそれぞれは、各気筒に対応するように各気筒のインテークポートに配設され、エンジンECU73からの指示信号に応答して燃料噴射量を変更できるようになっている。
【0030】
点火プラグを含む点火装置24のそれぞれは、エンジンECU73からの指示信号に応答して点火用火花を各気筒の燃焼室内において所定のタイミングにて発生するようになっている。
三元触媒(触媒)27は、排気浄化用触媒であり、エキゾーストマニホールドの排気集合部に配設されている。即ち、触媒27は機関20の排気通路部26に設けられ、機関20から排出される未燃物(HC,CO等)及びNOxを浄化するようになっている。
なお、機関20は図示しない可変吸気弁制御装置(VVT)を備えていてもよい。
【0031】
機関20は、燃料噴射量を変更すること、及び、スロットル弁アクチュエータ22aによりスロットル弁22の開度を変更することによって吸入空気量を変更すること等により、機関20の発生するトルク及び機関回転速度(従って、機関出力)を変更することができる。更に、機関20は、点火時期を基準点火時期に対して遅角することにより、機関20から排出される排気温度を上昇することができる。
【0032】
動力分配機構30は周知の遊星歯車装置31を備えている。遊星歯車装置31はサンギア32と、複数のプラネタリギア33と、リングギア34と、を含んでいる。
【0033】
サンギア32は第1発電電動機MG1の第1シャフト41に接続されている。従って、第1発電電動機MG1はサンギア32にトルクを出力することができる。更に、第1発電電動機MG1は、サンギア32から第1発電電動機MG1(第1シャフト41)に入力されるトルクによって回転駆動され得る。第1発電電動機MG1は、サンギア32から第1発電電動機MG1に入力されるトルクによって回転駆動されることにより発電することができる。
【0034】
複数のプラネタリギア33のそれぞれは、サンギア32と噛合するとともにリングギア34と噛合している。プラネタリギア33の回転軸(自転軸)はプラネタリキャリア35に設けられている。プラネタリキャリア35はサンギア32と同軸に回転可能となるように保持されている。従って、プラネタリギア33は、サンギア32の外周を自転しながら公転することができる。プラネタリキャリア35は機関20のクランクシャフト25に接続されている。よって、プラネタリギア33は、クランクシャフト25からプラネタリキャリア35に入力されるトルクによって回転駆動され得る。
【0035】
リングギア34は、サンギア32と同軸に回転可能となるように保持されている。
【0036】
上述したように、プラネタリギア33はサンギア32及びリングギア34と噛合している。従って、プラネタリギア33からサンギア32にトルクが入力されたときには、そのトルクによってサンギア32が回転駆動される。プラネタリギア33からリングギア34にトルクが入力されたときには、そのトルクによってリングギア34が回転駆動される。逆に、サンギア32からプラネタリギア33にトルクが入力されたときには、そのトルクによってプラネタリギア33が回転駆動される。リングギア34からプラネタリギア33にトルクが入力されたときには、そのトルクによってプラネタリギア33が回転駆動される。
【0037】
リングギア34はリングギアキャリア36を介して第2発電電動機MG2の第2シャフト42に接続されている。従って、第2発電電動機MG2はリングギア34にトルクを出力することができる。更に、第2発電電動機MG2は、リングギア34から第2発電電動機MG2(第2シャフト42)に入力されるトルクによって回転駆動され得る。第2発電電動機MG2は、リングギア34から第2発電電動機MG2に入力されるトルクによって回転駆動されることにより、発電することができる。
【0038】
更に、リングギア34はリングギアキャリア36を介して出力ギア37に接続されている。従って、出力ギア37は、リングギア34から出力ギア37に入力されるトルクによって回転駆動され得る。リングギア34は、出力ギア37からリングギア34に入力されるトルクによって回転駆動され得る。
【0039】
駆動力伝達機構50は、ギア列51、ディファレンシャルギア52及び駆動軸(ドライブシャフト)53を含んでいる。
【0040】
ギア列51は、出力ギア37とディファレンシャルギア52とを動力伝達可能に歯車機構により接続している。ディファレンシャルギア52は駆動軸53に取り付けられている。駆動軸53の両端には駆動輪54が取り付けられている。従って、出力ギア37からのトルクはギア列51、ディファレンシャルギア52、及び、駆動軸53を介して駆動輪54に伝達される。この駆動輪54に伝達されたトルクによりハイブリッド車両10は走行することができる。
【0041】
第1インバータ61は、第1発電電動機MG1及びバッテリ63に電気的に接続されている。従って、第1発電電動機MG1が発電しているとき、第1発電電動機MG1が発生した電力は第1インバータ61を介してバッテリ63に供給される。逆に、第1発電電動機MG1は第1インバータ61を介してバッテリ63から供給される電力によって回転駆動させられる。
【0042】
第2インバータ62は、第2発電電動機MG2及びバッテリ63に電気的に接続されている。従って、第2発電電動機MG2は第2インバータ62を介してバッテリ63から供給される電力によって回転駆動させられる。逆に、第2発電電動機MG2が発電しているとき、第2発電電動機MG2が発生した電力は第2インバータ62を介してバッテリ63に供給される。
【0043】
なお、第1発電電動機MG1の発生する電力は第2発電電動機MG2に直接供給可能であり、且つ、第2発電電動機MG2の発生する電力は第1発電電動機MG1に直接供給可能である。
【0044】
バッテリ63は、本例においてニッケル水素バッテリである。但し、バッテリ63は放電及び充電が可能な蓄電装置であればよく、リチウムイオン電池及び他の二次電池であってもよい。
【0045】
パワーマネジメントECU70(以下、「PMECU70」と表記する。)は、バッテリECU71、モータECU72及びエンジンECU73と通信により情報交換可能に接続されている。
【0046】
PMECU70は、パワースイッチ81、シフトポジションセンサ82、アクセル操作量センサ83、ブレーキスイッチ84及び車速センサ85等と接続され、これらのセンサ類が発生する出力信号を入力するようになっている。
【0047】
パワースイッチ81はハイブリッド車両10のシステム起動用スイッチである。PMECU70は、何れも図示しない車両キーがキースロットに挿入され且つブレーキペダルが踏み込まれているときにパワースイッチ81が操作されると、システムを起動する(Ready−On状態となる)ように構成されている。
【0048】
シフトポジションセンサ82は、ハイブリッド車両10の運転席近傍に運転者により操作可能に設けられた図示しないシフトレバーによって選択されているシフトポジションを表す信号を発生するようになっている。シフトポジションは、P(パーキングポジション)、R(後進ポジション)、N(ニュートラルポジション)及びD(走行ポジション)を含む。
【0049】
アクセル操作量センサ83は、運転者により操作可能に設けられた図示しないアクセルペダルの操作量(アクセル操作量AP)を表す出力信号を発生するようになっている。
ブレーキスイッチ84は、運転者により操作可能に設けられた図示しないブレーキペダルが操作されたときに、ブレーキペダルが操作された状態にあることを示す出力信号を発生するようになっている。
車速センサ85は、車速SPDを表す出力信号を発生するようになっている。
【0050】
PMECU70は、バッテリECU71により算出されるバッテリ63の残容量SOC(State Of Charge)を入力するようになっている。この残容量SOCはバッテリ63の残容量に相関を有するパラメータであるので、残容量パラメータとも称呼される。残容量SOCは、バッテリ63に流出入する電流の積算値等に基づいて周知の手法により算出される。
【0051】
PMECU70は、モータECU72を介して、第1発電電動機MG1の回転速度(以下、「MG1回転速度Nm1」と称呼する。)を表す信号及び第2発電電動機MG2の回転速度(以下、「MG2回転速度Nm2」と称呼する。)を表す信号を入力するようになっている。
【0052】
なお、MG1回転速度Nm1は、モータECU72によって「第1発電電動機MG1に設けられ且つ第1発電電動機MG1のロータの回転角度に対応する出力値を出力するレゾルバ97の出力値」に基づいて算出されている。同様に、MG2回転速度Nm2は、モータECU72によって「第2発電電動機MG2に設けられ且つ第2発電電動機MG2のロータの回転角度に対応する出力値を出力するレゾルバ98の出力値」に基づいて算出されている。
【0053】
PMECU70は、エンジンECU73を介して、エンジン状態を表す種々の出力信号を入力するようになっている。このエンジン状態を表す出力信号には、機関回転速度Ne、スロットル弁開度TA及び機関の冷却水温THW等が含まれている。
【0054】
モータECU72は、第1インバータ61及び第2インバータ62に接続され、PMECU70からの指令に基づいて、これらに指示信号を送出するようになっている。これにより、モータECU72は、第1インバータ61を用いて第1発電電動機MG1を制御し、且つ、第2インバータ62を用いて第2発電電動機MG2を制御するようになっている。
【0055】
エンジンECU73は、エンジンアクチュエータである「スロットル弁アクチュエータ22a、燃料噴射弁23及び点火装置24等」と接続されていて、これらに指示信号を送出するようになっている。更に、エンジンECU73は、エアフローメータ91、スロットル弁開度センサ92、冷却水温センサ93及び機関回転速度センサ94等と接続されていて、これらの発生する出力信号を取得するようになっている。
【0056】
エアフローメータ91は、機関20に吸入される単位時間あたりの空気量を計測し、その空気量(吸入空気流量)Gaを表す信号を出力するようになっている。
スロットル弁開度センサ92は、スロットル弁22の開度(スロットル弁開度)を検出し、その検出したスロットル弁開度TAを表す信号を出力するようになっている。
冷却水温センサ93は、機関20の冷却水の温度を検出し、その検出した冷却水温THWを表す信号を出力するようになっている。この冷却水温THWは、触媒27の温度に強い相関を有するパラメータであり、触媒温度パラメータとも称呼される。
機関回転速度センサ94は、機関20のクランクシャフト25が所定角度だけ回転する毎にパルス信号を発生するようになっている。エンジンECU73は、このパルス信号に基づいて機関回転速度Neを取得するようになっている。
【0057】
エンジンECU73は、これらのセンサ等から取得される信号及びPMECU70からの指令に基づいて「スロットル弁アクチュエータ22a、燃料噴射弁23及び点火装置24(更には、図示しない可変吸気弁制御装置)」に指示信号を送出することにより、機関20を制御するようになっている。なお、機関20には図示しないカムポジションセンサが設けられている。エンジンECU73は、機関回転速度センサ94及びカムポジションセンサからの信号に基いて、特定の気筒の吸気上死点を基準とした機関20のクランク角度(絶対クランク角)を取得するようになっている。
【0058】
(作動の概要)
このように構成されたハイブリッド車両10において、PMECU70は、パワースイッチ81が操作されることによってシステム起動状態となったとき、触媒暖機運転及び強制充電運転を行う必要があるか否かを判定し、その判定結果に応じて触媒暖機運転及び/又は強制充電運転を実行する。
【0059】
触媒暖機運転は、触媒温度パラメータである冷却水温THWが所定温度相関閾値THWth(例えば、冷却水温70℃)以下である場合に触媒27の温度(触媒床温)を速やかに上昇させ、それにより触媒27を迅速に活性化させるための制御である。より具体的には、PMECU70は機関20を始動して機関20を「触媒27の暖機に適した運転状態」にて運転させるとともに、点火時期を基準点火時期よりも所定遅角量だけ遅角させる。「触媒27の暖機に適した運転状態」とは、機関20の目標機関回転速度Ne*がアイドル運転時における回転速度よりも僅かに高い回転速度(例えば、1200〜1300rpm)に設定され、機関20の目標機関発生トルクTe*が「実質的に「0」に近しいTset(例えば、Ne=Ne*であるときの機関最大トルクの数%)」に設定された場合の運転状態である。
【0060】
基準点火時期は、機関20の負荷及び機関回転速度Neに応じて機関20が効率よく運転されるように予め定められる点火時期(即ち、最適点火時期)である。触媒暖機運転において点火時期が基準点火時期から遅角されることにより燃焼が緩慢になるので、機関20から高いエネルギーを有する排ガス(即ち、高温の排ガス)が排出され、それにより触媒27の温度が速やかに上昇する。
【0061】
触媒暖機運転時における点火時期の遅角量(触媒暖機遅角量、基準遅角量)は、機関20の負荷(実際には、負荷率(空気充填率)KL)と冷却水温THWとに基づいて決定される。触媒暖機遅角量は、冷却水温THWが所定温度であるときに最大となり、冷却水温THWがその所定温度から遠ざかる(即ち、所定温度よりも低い領域において低くなるか、又は、所定温度よりも高い領域において高くなる)ほど小さくなる。更に、触媒暖機遅角量は負荷率KLが所定負荷閾値以上になると実質的に「0」になる。
【0062】
強制充電運転は、バッテリ63の残容量SOCが所定残容量相関閾値SOCth(例えば、30%乃至35%程度)以下である場合に残容量SOCを速やかに上昇させるための制御である。より具体的には、PMECU70は機関20を始動し、機関20が「残容量SOCが小さくなるほど大きくなる出力(充電用要求出力)」を発生するように機関20を運転させる。
【0063】
この場合、機関20は充電用要求出力を発生するために最も効率が良い最適機関作動点にて運転される。換言すると、機関20の目標機関回転速度Ne*はその最適機関作動点における機関回転速度Neに設定され、目標機関発生トルクTe*はその最適機関作動点における機関発生トルクTeに設定される。なお、充電要求出力は最大でも5〜6kW程度であり、この場合の最適機関作動点における機関回転速度Neは機関20の運転が維持できる最低機関回転速度(例えば、1000rpm)程度となる。この結果、機関20の負荷は残容量SOCが低いほど大きくなる。また、目標機関発生トルクTe*は僅かではあるが「0」よりも大きいので、機関20の発生トルクがリングギア34にも作用する。従って、第2発電電動機MG2はその機関20の発生するトルクを打ち消すトルクを発生するように制御される。
【0064】
更に、第1発電電動機MG1は機関回転速度Neを目標機関回転速度Ne*に維持するように回転制御させられる。この機関回転速度Neを目標機関回転速度Ne*に抑え込む力により第1発電電動機MG1は発電を行う。従って、残容量SOCが低いほど第1発電電動機MG1の発電量は増加する。この結果、バッテリ63は速やかに充電されるので、残容量SOCが適正値に向かって迅速に増大する。
【0065】
ところで、ハイブリッド車両10がシステム起動状態となったとき、冷却水温THWが所定温度相関閾値THWth以下であり(即ち、触媒暖機運転が必要であり)、且つ、残容量SOCが所定残容量相関閾値SOCth以下である場合(即ち、強制充電運転が必要である場合)、機関20を強制充電運転に従って制御するとともに触媒27の暖機を促進するために点火時期を遅角すると、動力分配機構30及び駆動力伝達機構50からなる動力伝達機構から異音が発生する場合があることが判明した。
【0066】
この異音は動力伝達機構の歯車同士が衝突することに起因して発生する「歯打ち音」である。以下、この歯打ち音が発生する理由について説明する。点火時期を基準点火時期から遅角すると燃焼が緩慢になるため機関発生トルクの変動は大きくなる。しかも、例えば、図2の曲線C1及び曲線C2に示したように、遅角量が同一であったとしても、機関発生トルクは機関の負荷(即ち、機関発生トルク)が大きくなるほど大きく変動する。更に、機関発生トルクは、曲線C3に示したように、機関発生トルクが大きく且つ点火時期の遅角量が大きくなると非常に大きく変動する。この機関発生トルクの変動は動力伝達機構の歯車に伝達されるので、互いに噛合している歯車の一方が他方に対して相対的に前後する。この結果、歯打ち音が発生するのである。以上の説明から理解されるように、歯打ち音は機関の負荷が大きくなるほど発生し易く、且つ、点火時期の遅角量が大きいほど発生し易い。
【0067】
そこで、本実施形態に係るハイブリッド車両10においては、機関20の強制充電運転中に触媒暖機運転も合わせて行う場合、その触媒暖機運転における点火時期の遅角量を、強制充電運転を行っていない場合の触媒暖機運転における点火時期の遅角量以下の値に制限するとともに機関20の負荷が大きいほど減少する値に設定・修正する。より具体的には、通常の触媒暖機運転における点火時期の遅角量である基準遅角量を、機関20の負荷が大きくなるほど小さくなる遅角量制限値Amax以下の値に制限する。この結果、強制充電運転中に大きな歯打ち音を発生させないようにしながら触媒27の暖機促進を行うことができる。
【0068】
(実際の作動)
次に、ハイブリッド車両10の実際の作動について説明する。なお、以下に述べる処理はエンジンECU73のCPU及びPMECU70のCPUにより実行される。但し、以下においては、記載を簡素化するためにエンジンECU73のCPUを「EG」と表記し、PMECU70のCPUを「PM」と表記する。
【0069】
EGは、「システム起動時(Ready On時)」に図3にフローチャートにより示した「システム起動時処理ルーチン」実行するようになっている。従って、パワースイッチ81が操作されてシステムが起動されると、EGは図3のステップ300から処理を開始してステップ305に進み、冷却水温THWが所定温度相関閾値THWth以下であるか否かを判定する。即ち、EGはステップ305にて触媒暖機運転が必要であるか否かを判定する。
【0070】
(ケース1)
いま、冷却水温THWが所定温度相関閾値THWth以下であって触媒暖機運転が必要であり、且つ、残容量SOCが所定残容量相関閾値SOCthよりも大きいために強制充電運転は必要がないと仮定する。
【0071】
この場合、EGはステップ305にて「Yes」と判定してステップ310に進み、エンジンECU73からPMECU70へ「触媒暖機要求信号」を送信する。次いで、CPUはステップ315に進み、触媒暖機促進遅角フラグXdankiの値を「1」に設定する。触媒暖機促進遅角フラグXdankiの値はシステム起動直後に実施される図示しないイニシャルルーチンによりEGにより「0」に設定されている。次いで、EGはステップ320に進み、PMECU70から送信される通常触媒暖機運転許可信号が「1」であるか否かを判定する。
【0072】
一方、PMは「システム起動時(Ready On時)」に図4にフローチャートにより示した「システム起動時処理ルーチン」実行するようになっている。従って、システムが起動されると、PMは図4のステップ400から処理を開始してステップ410に進み、バッテリ63の残容量SOCが所定残容量相関閾値SOCth以下であるか否かを判定する。即ち、PMはステップ410にて強制充電運転が必要か否かを判定する。
【0073】
前述した仮定によれば、残容量SOCは所定残容量相関閾値SOCthよりも大きいため、強制充電運転は必要がない。従って、PMはステップ410にて「No」と判定してステップ420に進み、強制充電実行フラグXkyoseiの値を「0」に設定するとともにエンジンECU73に強制充電実行フラグXkyoseiの値を送信する。なお、強制充電実行フラグXkyoseiの値はシステム起動直後に実施される図示しないイニシャルルーチンによりPMにより「0」に設定されるようになっている。次いで、PMはステップ430にて通常触媒暖機運転許可信号の値を「1」としてエンジンECU73に送信する。その後、PMはステップ495に進み図4のルーチンを一旦終了する。
【0074】
EGは、この通常触媒暖機運転許可信号を受け取ると、図3のステップ320にてその通常触媒暖機運転許可信号の値が「1」であるか否かを判定する。この場合、通常触媒暖機運転許可信号の値は「1」であるから、EGはステップ320にて「Yes」と判定してステップ325に進み、点火遅角量制限フラグXseigenの値を「0」に設定する。次に、EGはステップ330に進み、機関20を始動させ触媒暖機運転を開始する。このとき、PMも触媒暖機運転に応じて第1発電電動機MG1及び第2発電電動機MG2を制御する。
【0075】
即ち、EGは、目標機関回転速度Ne*を触媒暖機運転に適したNset(例えば、1300rpm)に設定するとともに、目標機関発生トルクTe*を機関20が自立運転をする場合の機関発生トルクTset(即ち、実質的に「0」)に設定する。
【0076】
ところで、この場合の遊星歯車装置31における各ギアの回転速度の関係は図5の(A)に示した周知の共線図により表される。共線図に示される直線は動作共線Lと称呼される。これによれば、サンギア32の回転速度Nsは下記の(1)式により求めることができる。(1)式において「ρ」は、リングギア34の歯数に対するサンギア32の歯数(ρ=サンギア32の歯数/リングギア34の歯数)である。なお、(1)式は、動作共線Lから理解されるように、サンギア32の回転速度Nsとリングギア34の回転速度Nrとの差(Ns−Nr)に対する機関回転速度Neとリングギア34の回転速度Nrとの差(Ne−Nr)の比(=(Ne−Nr)/(Ns−Nr))は、値(1+ρ)に対するρの比(=ρ/(1+ρ))に等しいという比例関係に基づいて導かれる。

Ns=Nr−(Nr−Ne)・(1+ρ)/ρ …(1)

【0077】
従って、上記(1)式に実際のリングギア34の回転速度Nrである「0」と、目標機関回転速度Ne*とを代入することにより、サンギア32の目標回転速度Ns*を算出することができる。サンギア32が目標回転速度Ns*にて回転すれば、機関回転速度Neは目標機関回転速度Ne*に一致する。サンギア32の回転速度Nsは第1発電電動機MG1の回転速度Nm1と等しい。そこで、ステップ330の触媒暖機運転中において、PMは第1発電電動機MG1の回転速度Nm1の目標値であるMG1目標回転速度Nm1*をNe*(1+ρ)/ρに設定し、回転速度Nm1がMG1目標回転速度Nm1*=Ne*(1+ρ)/ρにて回転するように第1発電電動機MG1を制御する。なお、目標機関発生トルクTe*が実質的に「0」であるTsetであるので、第1発電電動機MG1及び第2発電電動機MG2はトルクを発生しなくても動作共線Lの力の釣り合いは維持される。そして、EGは機関発生トルクTeが値Tsetとなるようにスロットル弁アクチュエータ22aを制御するとともに、それに応じて変化する吸入空気量Gaに対応した燃料噴射量を燃料噴射弁23から噴射する。
【0078】
更に、EGは、機関20の運転中において図6にフローチャートにより示した点火時期制御ルーチンを所定時間が経過する毎に実行するようになっている。従って、所定のタイミングになると、EGは図6のステップ600から処理を開始してステップ605に進み、機関20の負荷KL及び機関回転速度Neと、基本点火時期(基準点火時期、最適点火時期)Abと、の関係を規定するテーブルMapAb(KL、Ne)に実際の負荷KL及び機関回転速度Neを適用することによって基本点火時期Abを算出する。なお、負荷KLは「KL=(Mc/(ρair・L/4))・100%)により求められる。Mcは吸入空気量Ga、スロットル弁開度TA及び機関回転速度Ne等に基づいて算出される1気筒・1吸気行程あたりの筒内吸入空気量(単位は(g))であり、ρairは空気密度(単位は(g/l))、Lは機関20の排気量(単位は(l))、「4」は機関20の気筒数である。また、本明細書において、点火時期は圧縮上死点から進角するほど正の値であって絶対値が大きくなるように規定されている。
【0079】
次に、EGはステップ610に進み、触媒暖機促進遅角フラグXdankiの値が「1」であるか否かを判定する。現時点では、触媒暖機促進遅角フラグXdankiの値は図3のステップ315にて「1」に設定されているので、EGはステップ610にて「Yes」と判定してステップ615に進んで負荷KL及び機関回転速度Neに基づいて「触媒暖機遅角量Adanki」を算出・決定する。このステップ610にて得られる触媒暖機遅角量Adankiは、便宜上、「基準遅角量」とも称呼される。
【0080】
より具体的に述べると、EGは、機関20の負荷KL及び冷却水温THWと、触媒暖機遅角量Adankiと、の関係を規定するテーブルMapAdanki(KL、THW)に実際の負荷KL及び冷却水温THWを適用することによって触媒暖機遅角量Adankiを算出する。
【0081】
このテーブルMapAdanki(KL、THW)によれば、触媒暖機遅角量Adankiは、冷却水温THWが所定温度(例えば、冷却水温25℃)のとき最も大きい値となり、冷却水温THWが前記所定温度から遠ざかるにつれて小さくなる値として取得される。更に、テーブルMapAdanki(KL、THW)によれば、負荷KLが「車両10が走行状態であるときに機関20の運転が必要となり、且つ、その場合に機関20の負荷が到達する所定負荷以上である」とき「0」に設定される。即ち、車両10の走行中において機関20の負荷が所定負荷以上となった場合、触媒暖機を促進するための点火時期の遅角は行われない。
【0082】
次に、EGはステップ620に進み、点火時期の他の遅角量Ataを決定する。例えば、他の遅角量Ataは吸入空気量Gaの増減に伴って変化する補正量である。次いで、EGはステップ625に進み、触媒暖機遅角量Adankiと他の遅角量Ataとを加えることにより点火遅角量Artdを算出する。
【0083】
次に、EGはステップ630に進み、点火遅角量制限フラグXseigenの値が「1」であるか否かを判定する。この場合、図3のステップ325にて点火遅角量制限フラグXseigenの値は「0」に設定されている。従って、EGはステップ630にて「No」と判定してステップ650へと直接進み、ステップ605にて算出した基本点火時期Abからステップ625にて算出した点火遅角量Artdを減じることによって最終的な点火時期Aopeを算出する。そして、EGはこの最終点火時期Aopeにて点火を実行する。以上により、点火時期の遅角量が制限されることなく触媒暖機運転が実行される。この場合、機関20の負荷KLは小さいので(換言すると、機関20の出力トルクは小さいので)、機関20のトルク変動も小さい。よって、大きな歯打ち音は発生しない。
【0084】
(ケース2)
次に、システム起動時において、冷却水温THWが所定温度相関閾値THWth以下であって触媒暖機運転が必要であり、且つ、残容量SOCが所定残容量相関閾値SOCthよりも小さいために強制充電運転も必要である場合について説明する。
【0085】
この場合、PMは図4のステップ410にて「Yes」と判定してステップ440に進み、強制充電実行フラグXkyoseiの値を「1」に設定するとともにエンジンECU73に強制充電実行フラグXkyoseiの値を送信する。更に、PMはステップ450にて通常触媒暖機運転許可信号の値を「0」としてエンジンECU73に送信する。その後、PMはステップ495に進み図4のルーチンを一旦終了する。
【0086】
従って、EGは図3のステップ305乃至ステップ315を経てステップ320に進んだとき、そのステップ320にて「No」と判定してステップ335に進む。そして、EGはステップ335にて点火遅角量制限フラグXseigenの値を「1」に設定する。次に、EGはステップ340に進み、機関20を始動させ「触媒暖機制御を伴う強制充電運転」を開始する。
【0087】
この場合、PMは残容量SOCが低いほど機関要求出力Pe*が大きくなるように機関要求出力(充電用要求出力)Pe*を設定する。更に、PMは、その機関要求出力Pe*が満たされる最適機関動作点を決定し、その最適機関動作点の機関発生トルクTe及び機関回転速度Neを目標機関発生トルクTe*及び目標機関回転速度Ne*としてそれぞれ設定する。なお、この場合の機関要求出力Pe*は最高でも5乃至6kw程度であるので、一般には、機関最適動作点の機関回転速度は機関20が運転され得る最低回転数近傍の回転速度(例えば、1000rmp程度)になる。この結果、内燃機関20に要求される負荷KLは残容量SOCが低いほど大きくなる。
【0088】
この場合の遊星歯車装置31における各ギアの回転速度の関係は図5の(B)に示した共線図により表される。この場合、目標機関発生トルクTe*が比較的大きい値となるので、機関発生トルクTeがサンギア32の回転軸に下記(2)式により表されるトルクTesとなって作用し、リングギア34の回転軸に下記(3)式により表されるトルクTerとなって作用する。

Tes=Te*・(ρ/(1+ρ)) …(2)

Ter=Te*・(1/(1+ρ)) …(3)

【0089】
このため、PMは、サンギア32の回転軸に上記(2)式により求められるトルクTesと大きさが同じで向きが反対のトルクTm1を作用させ、且つ、リングギア34の回転軸には上記(3)式により求められるトルクTerと大きさが同じで向きが反対のトルクTm2を作用させる。これにより、リングギア34の回転速度は「0」に維持される。更に、機関回転速度Neを目標機関回転速度Ne*に一致させるため、PMは第1発電電動機MG1の回転速度Nm1の目標値であるMG1目標回転速度Nm1*を「上記(1)式により求められるNe*(1+ρ)/ρ」に設定し、そのMG1目標回転速度Nm1*と第1発電電動機MG1の回転速度Nm1との差に応じたフィードバック量PID(Nm1*−Nm1)をトルクTm1に加えたトルクを求め、そのトルクを第1発電電動機MG1に発生させる。この結果、第1発電電動機MG1は、機関要求出力(充電用要求出力)Pe*(即ち、残容量SOC)に応じた発電を行うので、バッテリ63が迅速に充電される。
【0090】
更に、EGは、図6のステップ600から処理を開始してステップ605に進み、基本点火時期Abを算出する。現時点では、触媒暖機促進遅角フラグXdankiの値は図3のステップ315にて「1」に設定されているので、EGはステップ610にて「Yes」と判定してステップ615に進み、負荷KL及び機関回転速度Neに基づいて「触媒暖機遅角量(基準遅角量)Adanki」を決定する。
【0091】
次いで、EGはステップ620及びステップ625によって他の遅角量Ata及び点火遅角量Artdを算出する。現時点において、図3のステップ335にて点火遅角量制限フラグXseigenの値は「1」に設定されている。よって、EGはステップ630にて「Yes」と判定してステップ635に進む。EGはステップ635にて、点火時期の遅角量制限値(遅角上限値)Amaxを負荷KL及び冷却水温THWに基づいて算出する。
【0092】
より具体的に述べると、EGは図7に例示した「負荷KL及び冷却水温THWと、遅角量制限値Amaxと、の関係を規定するテーブルMapAmax(KL,THW)」をROM内に記憶している。EGは、このテーブルMapAmax(KL,THW)に実際の負荷KL及び冷却水温THWを適用することにより遅角量制限値Amaxを取得する。この遅角量制限値Amaxは、前述したステップ615にて決定される「基準遅角量としての触媒暖機遅角量Adanki」の最大値以下の値である。換言すると、この遅角量制限値Amaxは、負荷KL及び冷却水温THWが同じである場合に前述したステップ615にて決定される「基準遅角量としての触媒暖機遅角量Adanki」以下の値である。
【0093】
このテーブルMapAmax(KL,THW)によれば、負荷KLが大きいほど遅角量制限値Amax(遅角量制限値Amaxの絶対値)が小さくなるように遅角量制限値Amaxが取得される。更に、このテーブルMapAmax(KL,THW)によれば、冷却水温THWが所定範囲(例えば20℃〜35℃)において遅角量制限値Amaxは最も大きくなり、冷却水温THWが前記所定範囲を超えて大きくなるほど遅角量制限値Amaxは次第に小さくなるように遅角量制限値Amaxが取得される。更に、このテーブルMapAmax(KL,THW)によれば、冷却水温THWが前記所定範囲の下限値以下の範囲において小さくなるほど遅角量制限値Amaxは急激に小さくなり、且つ、冷却水温THWが所定冷却水温THWLo以下になると遅角量制限値Amaxは最小値(この場合「0」)となるように遅角量制限値Amaxが取得される。
【0094】
次に、EGはステップ640に進み、ステップ625にて求めた点火遅角量Artdがステップ635にて求めた遅角量制限値Amax以上であるか否かを判定する。そして、点火遅角量Artdが遅角量制限値Amax以上である場合、EGはステップ640にて「Yes」と判定してステップ645に進み、点火遅角量Artdに遅角量制限値Amaxを格納する。その後、EGはステップ650に進む。これに対し、点火遅角量Artdが遅角量制限値Amax未満である場合、EGはステップ640にて「No」と判定し、ステップ650に直接進む。
【0095】
即ち、ステップ640及びステップ645の処理により、点火遅角量Artdが遅角量制限値Amaxによって制限される。換言すると、点火遅角量Artdが遅角量制限値Amax以下となるように修正される。上述したように、遅角量制限値Amaxは機関20の負荷KLが大きいほど小さくなる。よって、触媒暖機運転中の点火時期の遅角量は負荷KLが大きいほど小さくなるように修正される(制限される)と言うこともできる。これにより、強制充電運転中に点火時期を遅角して触媒27の暖機を促進する場合に、機関要求出力(充電用要求出力)が大きくなって機関20の負荷が大きくなったとしても機関発生トルクの変動を小さくすることができるので、大きな歯打ち音が発生する事態を回避することができる。
【0096】
(ケース3)
次に、システム起動時において、冷却水温THWが所定温度相関閾値THWthよりも高く触媒暖機運転は不要であるが、残容量SOCが所定残容量相関閾値SOCthよりも小さいために強制充電運転は必要である場合について説明する。
【0097】
この場合、図4のステップ440にて強制充電実行フラグXkyoseiの値が「1」に設定されてエンジンECU73に送信され、ステップ450にて「0」に設定された通常触媒暖機運転許可信号がエンジンECU73に送信される。
【0098】
一方、EGは図3のステップ305にて「No」と判定し、ステップ345にて触媒暖機促進遅角フラグXdankiの値を「0」に設定し、ステップ350にて強制充電実行フラグXkyoseiを取得し、ステップ355にて点火遅角量制限フラグXseigenの値を「0」に設定する。次いで、EGはステップ360にて強制充電実行フラグXkyoseiの値が「1」であるか否かを判定する。この場合、強制充電実行フラグXkyoseiの値は「1」である。従って、EGはステップ360にて「Yes」と判定してステップ365に進み、機関20を始動させ「強制充電運転」を開始する。この強制充電運転は、点火時期が触媒暖機遅角量Adankiによって遅角されない点を除き、基本的にステップ340にて行われる運転と同様である。その後、CPUはステップ395に進み、本ルーチンを一旦終了する。
【0099】
この場合においてもEGは、図6のステップ600から処理を開始してステップ605に進み、基本点火時期Abを算出する。現時点では、触媒暖機促進遅角フラグXdankiの値は図3のステップ345にて「0」に設定されているので、EGはステップ610にて「No」と判定してステップ660に進み、触媒暖機遅角量Adankiを「0」に設定する。
【0100】
次いで、EGはステップ620及びステップ625によって他の遅角量Ata及び点火遅角量Artdを算出する。この時点において、点火遅角量制限フラグXseigenの値は先のステップ355にて「0」に設定されている。従って、EGはステップ630にて「No」と判定してステップ650に直接進む。この結果、触媒暖機遅角量Adankiは「0」であるが、他の遅角量Ataが「0」でなければ、点火時期は基本点火時期Abから他の遅角量Ataだけ遅角される。この場合、他の遅角量Ataは触媒暖機遅角量Adankiに比べて大きくないので、大きな歯打ち音は発生しない。
【0101】
(ケース4)
最後に、システム起動時において、冷却水温THWが所定温度相関閾値THWthよりも高く触媒暖機運転が不要であり、且つ、残容量SOCが所定残容量相関閾値SOCthよりも大きく強制充電運転も不要である場合について説明する。
【0102】
この場合、図4のステップ420にて強制充電実行フラグXkyoseiの値は「0」に設定されてエンジンECU73に送信され、ステップ430にて「1」に設定された通常触媒暖機運転許可信号がエンジンECU73に送信される。
【0103】
一方、EGは図3のステップ305にて「No」と判定し、ステップ345乃至ステップ355の処理を行ってからステップ360に進む。この場合、強制充電実行フラグXkyoseiの値は「0」に設定されている。従って、EGはステップ360にて「No」と判定してステップ395に直接進む。この結果、機関20は始動されない。
【0104】
次に、ハイブリッド車両10の通常の走行時における「第1発電電動機MG1、第2発電電動機MG2及び機関20」の駆動制御について図8及び図9を参照しながら簡単に説明する。なお、これらの駆動制御の詳細は、例えば、特開2009−126450号公報(米国公開特許番号 US2010/0241297)、及び、特開平9−308012号公報(米国出願日1997年3月10日の米国特許第6,131,680号)等に詳細に記載されている。これらは、参照することにより本願明細書に組み込まれる。
【0105】
PMは、シフトポジションが走行ポジション等にある場合、アクセル操作量APと車速SPDとに基づいて「車両10の駆動軸53に要求されるトルクであるユーザ要求トルクTreq」に対応する「リングギア34の回転軸に発生するべきトルク(以下、単に「リングギア要求トルクTr*」と称呼する。)」を決定する。リングギア要求トルクTr*はアクセル操作量APが大きいほど大きくなるように、車速SPDが高いほど小さくなるように、設定される。
【0106】
駆動軸53に要求されている出力(パワー)は、ユーザ要求トルクTreqと実際の車速SPDとの積(Treq・SPD)に比例する値であり、この値はリングギア要求トルクTr*とリングギア34の回転速度Nrとの積(Tr*・Nr)と等しい。以下、この積Tr*・Nrを「ユーザ要求出力(要求パワー)Pr*」と称呼する。なお、本例においては、リングギア34は減速機を介することなく第2発電電動機MG2の第2シャフト42に接続されている。従って、リングギア34の回転速度NrはMG2回転速度Nm2と等しい。仮に、リングギア34が減速ギアを介して第2シャフト42に接続されているならば、リングギア34の回転速度NrはMG2回転速度Nm2をその減速ギアのギア比Grにて除した値(Nm2/Gr)と等しい。
【0107】
PMは、下記(4)式に示したように、ユーザ要求出力Pr*とバッテリ63を充電するために必要とされる出力(バッテリ充電用出力)Pb*との和(更に、実際には損失Plossを加えた値)を機関20に要求する出力(機関要求出力)Pe*として決定する。バッテリ充電用出力Pb*は残容量SOCが小さいほど大きくなり、残容量が所定値(例えば、60%)以上になると「0」になる。

Pe*=Pr*+Pb*+Ploss …(4)

【0108】
そして、PMは、その機関要求出力Pe*と等しい出力が機関20から出力され、且つ、機関20の運転効率が最良となるように機関20を運転する。より具体的に述べると、ある出力をクランクシャフト25から出力させたとき機関の運転効率(燃費)が最良となる機関動作点が各出力毎に最適機関動作点として実験等により予め求められている。これらの最適機関動作点を、機関発生トルクTeと機関回転速度Neとによって規定されるグラフ上にプロットし、更に、これらのプロットを結ぶことによって形成されるラインが最適機関動作ラインとして求められる。このようにして求められる最適機関動作ラインが図8に実線Loptにより示されている。なお、図8において、破線により示されている複数のラインC1〜C5のそれぞれは、同じ出力をクランクシャフト25から出力させることができる機関動作点を結んだライン(等出力ライン)である。
【0109】
PMは、機関要求出力Pe*と等しい出力が得られる最適機関動作点を検索し、その検索された最適動作点に対応する「機関発生トルクTe及び機関回転速度Ne」を「目標機関発生トルクTe*及び目標機関回転速度Ne*」のそれぞれとして決定する。例えば、機関要求出力Pe*が図8のラインC2に対応する出力と等しい場合、ラインC2と実線Loptとの交点P1に対する機関発生トルクTe1が目標機関発生トルクTe*として決定され、交点P1に対する機関回転速度Neが目標機関回転速度Ne*として決定される。
【0110】
そこで、PMは、上記(1)式に、実際のリングギア34の回転速度Nrと等しいMG2回転速度Nm2と、目標機関回転速度Ne*と、を代入することにより、サンギア32の目標回転速度Ns*、即ち、MG1目標回転速度Nm1*を決定する。サンギア32が目標回転速度Ns*=Nm1*にて回転すれば、機関回転速度Neは目標機関回転速度Ne*に一致する。
【0111】
更に、クランクシャフト25に目標機関発生トルクTe*と等しいトルクが発生させられている場合(即ち、機関発生トルクがTe*である場合)、この機関発生トルクTe*は遊星歯車装置31によりトルク変換され、サンギア32の回転軸に上記(2)式により表されるトルクTesとなって作用し、リングギア34の回転軸に上記(3)式により表されるトルクTerとなって作用する。
【0112】
動作共線が安定であるためには動作共線の力の釣り合いをとればよいので、サンギア32の回転軸には上記(2)式により求められるトルクTesと大きさが同じで向きが反対のトルクTm1を作用させ、且つ、リングギア34の回転軸にはリングギア要求トルクTr*に対する上記(3)式により求められるトルクTerの不足分に相当するトルクTm2(下記(5)式により表されるトルクTm2)を作用させればよい。

Tm2=Tr*−Ter …(5)

【0113】
PMは、上記トルクTm1を第1発電電動機MG1のMG1指令トルクTm1*として採用し、上記トルクTm2を第2発電電動機MG2の指令トルクであるMG2指令トルクTm2*として採用する。更に、PMは、「MG1目標回転速度Nm1*=サンギア32の目標回転速度Ns*」と「サンギア32の実際の回転速度Ns=第1発電電動機MG1の回転速度Nm1」との差に応じたフィードバック量PID(Nm1*−Nm1)を上記MG1指令トルクTm1*に加え、その値を第1発電電動機MG1の最終的な指令トルクであるMG1指令トルクTm1*として用いる。そして、PMはこれらの指令値に基づいて第1インバータ61及び第2インバータ62を制御して第1発電電動機MG1及び第2発電電動機MG2を制御し、且つ、機関20の機関発生トルクが目標機関発生トルクTe*に一致するように機関20を制御する。
【0114】
なお、バッテリ充電用出力Pb*が正の値である場合、トルクTerはバッテリ充電用出力Pb*に応じて相対的に大きくなる。従って、上記(5)式から理解されるように、トルクTm2は小さくてよいのでMG2指令トルクTm2*も小さくなる。この結果、第1発電電動機MG1にて発電される電力のうち第2発電電動機MG2に供給する必要がある電力の量が小さくなるので、その分だけバッテリ63が充電される。
【0115】
なお、PMは、例えば、車両の発進時、比較的低速での定常運転時及び比較的低速からの緩やかな加速時等のように、要求出力Pr*が所定出力Prthよりも小さく、そのために機関20を最適機関動作点にて運転できない場合、触媒暖機運転中を除き機関20の運転を行わず、ユーザ要求出力Pr*の総てを第2発電電動機MG2から発生させるように第2発電電動機MG2を制御する。加えて、機関20が最適機関動作点にて運転できる場合であっても、リングギア要求トルクTr*の変化に伴って目標機関発生トルクTe*が変化した際には、機関20の運転状態は直ちには変化しないので、機関発生トルクは目標機関発生トルクTe*よりも小さくなる場合がある。このような場合、PMECU80は、機関20が最適動作点にて運転されるまで、リングギア要求トルクTr*に対して不足するトルク分を補償するように第2発電電動機MG2を制御する。
【0116】
このように、ハイブリッド車両10は、駆動軸53に要求されるトルクを、内燃機関20と、電動機でもある第2発電電動機MG2と、発電機でもある第1発電電動機MG1と、のそれぞれが発生するトルクを制御することにより発生する。更に、ハイブリッド車両10は、発電機でもある第1発電電動機MG1が発電する電力を内燃機関20の発生する動力(機関20の出力、上記トルクTesを参照。)を調整・制御することによりにより制御する。
【0117】
なお、システム起動時において触媒暖機運転のために機関20が始動された場合、ハイブリッド車両10の走行中も機関の運転が継続され、冷却水温THWが所定温度相関閾値THWth又はそれ以上の所定値に到達した時点で触媒暖機運転のための機関20の運転は停止される。また、システム起動時において強制充電制御が開始された場合、ハイブリッド車両10の走行中は上記バッテリ充電用出力Pb*に基づいてバッテリ63の充電が行われ、その後、シフトポジションがパーキングポジション(及び/又はニュートラルポジション)変更された時点で残容量SOCが残容量相関閾値SOCth以下であれば上述した強制充電制御が継続される。
【0118】
以上、説明したように、本発明の実施形態に係るハイブリッド車両10は、触媒暖機運転実行手段と、強制充電運転実行手段と、を備える制御装置を有する(PMECU70、バッテリECU71、モータECU72及びエンジンECU73を参照。)。
【0119】
触媒暖機運転実行手段は、触媒27の温度に相関を有するパラメータである触媒温度パラメータ(冷却水温THW)が所定温度相関閾値(THWth)以下である場合に前記内燃機関20を始動させるとともに、内燃機関20の点火時期を基準点火時期(Ab)よりも所定の遅角量(Adanki又はArtd)だけ遅角させる触媒暖機運転を実行する(図3のステップ330、ステップ340、図6のステップ615乃至ステップ625、及び、ステップ650等を参照。)。
【0120】
強制充電運転実行手段は、蓄電装置(バッテリ63)の残容量に相関を有するパラメータである残容量パラメータ(残容量SOC)が所定残容量相関閾値(SOCth)以下である場合に前記内燃機関20を始動させることにより発電機(第1発電電動機MG1)に発電させて前記蓄電装置を充電する強制充電運転を実行する(図3のステップ340及びステップ365等を参照。)。
【0121】
更に、前記強制充電運転実行手段は、
前記残容量パラメータ(残容量SOC)に応じて内燃機関20に要求する負荷を変更して前記内燃機関を運転するように構成され(図3のステップ340及びステップ365を参照。)、
前記触媒暖機運転実行手段は、
前記強制充電運転と前記触媒暖機運転の両方が同時に実行される場合(図3のステップ305での「Yes」との判定及びステップ320での「No」との判定、図4のステップ410での「Yes」との判定、及び、ステップ450を参照。)、点火時期の遅角量を、前記強制充電運転が行われず前記触媒暖機運転が行われる場合の遅角量(Artd, Ata=0の場合にはAdanki)の最大値以下であって前記内燃機関の負荷(KL)が大きくなるほど小さくなる遅角量に設定(制限)するように構成されている(図3のステップ335、図6のステップ630乃至ステップ645、及び、図7を参照。)。
【0122】
従って、強制充電運転中において機関20の負荷が高くなっても、点火時期の遅角量が抑え込まれるので、機関20の発生トルクの変動が大きくならないようにすることができる。その結果、動力伝達機構において大きな歯打ち音が発生することを防止することができる。
【0123】
更に、図6のステップ620にて求められる他の遅角量Ataが「0」である場合、
前記触媒暖機運転実行手段は、
前記内燃機関の負荷(KL)と前記触媒温度パラメータ(冷却水温THW)とに基づいて基準遅角量を決定するとともに(図6のステップ615を参照。)、前記強制充電運転が行われず前記触媒暖機運転が行われる場合に前記決定された基準遅角量を前記所定の遅角量として用い(図6のステップ625、ステップ630での「No」との判定及びステップ650を参照。)、
前記強制充電運転と前記触媒暖機運転との両方が同時に実行される場合には前記決定された基準遅角量を前記内燃機関の負荷が大きくなるほど小さくなる遅角制限値(Amax)により制限することにより得られる制限後遅角量(Amaxにより制限された遅角量)を前記所定の遅角量として用いるように構成されている(図6のステップ630乃至ステップ650を参照。)と言うこともできる。
【0124】
本発明は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、上記実施形態において、強制充電運転中に触媒暖機運転(制御)を実行する際、他の遅角量Ataと触媒暖機遅角量Adankiとの和Artdが遅角量制限値Amax以下に制限されていたが、触媒暖機遅角量Adankiのみが遅角量制限値Amax以下に制限されてもよい。また、他の遅角量Ataは常に「0」でもよい。更に、触媒暖機遅角量Adankiは、システム起動時の冷却水温THWに基づいて初期値が決定され、その後、時間の経過とともに又は機関20が回転するとともに所定量ずつ減衰されてもよい。この場合、減衰の結果として触媒暖機遅角量Adankiが遅角量制限値Amax以下となれば、その触媒暖機遅角量Adankiを用いて点火時期を遅角すればよい。
【0125】
更に、上記実施形態においては、強制充電運転中に触媒暖機制御を実行する際に点火時期の遅角量を遅角量制限値Amax以下に制限していたが、強制充電運転中でない場合の触媒暖機遅角量Adankiを求めるテーブルMapAdanki(KL、THW)(図6のステップ615を参照。)と、強制充電運転中である場合の触媒暖機遅角量Adankiを求めるテーブルMapAdankiJ(KL、THW)と、を別のテーブルとしてROMに記憶しておき、強制充電運転中である場合の触媒暖機遅角量AdankiをテーブルMapAdankiJ(KL、THW)により求めてもよい。この場合、テーブルMapAdankiJ(KL、THW)は、強制充電運転中である場合の触媒暖機遅角量Adankiが「強制充電運転中でない場合の触媒暖機遅角量Adanki以下であって且つ負荷KLが大きくなるにつれて小さくなる遅角量」となるように予め定めておけばよい。
【0126】
また、上記遅角量制限値Amaxによる点火時期の遅角量の制限は、ハイブリッド車両10が実質的に停止していると判断できる車両停止判定閾値車速(例えば、3km/h)以下であるときのみ実行されてもよい。これは、ハイブリッド車両10が走行している場合、それが加速中であるか減速中であるかに依らず、動力伝達機構には一方向に大きいトルクが加わるので歯打ち音が発生し難いからである。
【0127】
上記実施形態において、触媒温度パラメータとして冷却水温THWが使用されていたが、触媒27が触媒床温センサを備える場合にはその触媒床温センサの検出温度を触媒温度パラメータとして使用してもよい。更に、上記実施形態において、残容量SOCが残容量パラメータとして使用されていたが、バッテリ63の瞬時出力可能電力が残容量パラメータとして使用されてもよい。
【0128】
更に、上記実施形態においては、システム起動時に触媒暖機運転及び/又は強制充電運転が開始されたが、例えば、シフトポジションが、パーキングポジション及び/又はニュートラルポジションにあって、車速SPDが車両停止判定閾値車速以下であるときにこれらの運転を開始してもよい。
【0129】
更に、ハイブリッド車両は、機関20が強制充電運転によって運転されている場合に機関20の動力を用いて発電機を駆動し得るとともに、それと同時に機関20の動力が駆動軸に伝達され得る構成(特に、歯車機構を介して伝達される構成)を有すれば、上記実施形態のハイブリッド車両10に限定されることはない。即ち、本発明は、内燃機関と、蓄電装置に電力を供給するように内燃機関の発生する動力により駆動されて発電する発電機と、電動機と、を備え、内燃機関と車両の駆動軸とをトルク伝達可能に連結するとともに電動機と車両の駆動軸とをトルク伝達可能に連結する動力伝達機構と、を備えるハイブリッド車両に適用することができる。
【符号の説明】
【0130】
10…ハイブリッド車両、20…内燃機関、22…スロットル弁、22a…スロットル弁アクチュエータ、23…燃料噴射弁、24…点火装置、25…クランクシャフト、26…排気通路部、27…三元触媒、30…動力分配機構、31…遊星歯車装置、32…サンギア、33…プラネタリギア、34…リングギア、37…出力ギア、50…駆動力伝達機構、51…ギア列、52…ディファレンシャルギア、53…駆動軸、63…バッテリ(蓄電装置)、81…パワースイッチ、93…冷却水温センサ、94…機関回転速度センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガス浄化用の触媒を排気通路に備える内燃機関と、
電動機と、
前記電動機を駆動する電力を同電動機に供給可能な蓄電装置と、
前記蓄電装置を充電する電力を前記内燃機関の動力を用いて発生可能な発電機と、
車両の駆動軸と前記内燃機関とをトルク伝達可能に連結するとともに同駆動軸と前記電動機とをトルク伝達可能に連結する動力伝達機構と、
前記駆動軸に要求されるトルクを少なくとも前記内燃機関と前記電動機とのそれぞれが発生するトルクを制御することにより発生するとともに、前記発電機の発生する電力を前記内燃機関の発生する動力を制御することにより変更する制御装置と、
を含むシステムを有するハイブリッド車両において、
前記制御装置は、
前記触媒の温度に相関を有するパラメータである触媒温度パラメータが所定温度相関閾値以下である場合に前記内燃機関を始動させるとともに同内燃機関の点火時期を基準点火時期よりも所定の遅角量だけ遅角させる触媒暖機運転を実行する触媒暖機運転実行手段と、
前記蓄電装置の残容量に相関を有するパラメータである残容量パラメータが所定残容量相関閾値以下である場合に前記内燃機関を始動させることにより前記発電機に発電させて前記蓄電装置を充電する強制充電運転を実行する強制充電運転実行手段と、
を含み、
前記強制充電運転実行手段は、
前記残容量パラメータに応じて前記内燃機関に要求する負荷を変更して前記内燃機関を運転するように構成され、
前記触媒暖機運転実行手段は、
前記強制充電運転と前記触媒暖機運転との両方が同時に実行される場合には前記遅角量を前記内燃機関の負荷が大きくなるほど減少させるように構成された、
ハイブリッド車両。
【請求項2】
請求項1に記載のハイブリッド車両において、
前記触媒暖機運転実行手段は、
前記強制充電運転と前記触媒暖機運転との両方が同時に実行される場合の前記所定の遅角量を、前記強制充電運転が行われず前記触媒暖機運転が行われる場合の前記所定の遅角量の最大値以下の値にするように構成されたハイブリッド車両。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のハイブリッド車両において、
前記触媒暖機運転実行手段は、
前記内燃機関の負荷と前記触媒温度パラメータとに基づいて基準遅角量を決定するとともに、前記強制充電運転が行われず前記触媒暖機運転が行われる場合には前記決定された基準遅角量を前記所定の遅角量として用い、前記強制充電運転と前記触媒暖機運転との両方が同時に実行される場合には前記決定された基準遅角量を前記内燃機関の負荷が大きくなるほど小さくなる遅角制限値により制限することにより得られる制限後遅角量を前記所定の遅角量として用いるように構成されたハイブリッド車両。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載のハイブリッド車両において、
前記触媒暖機運転実行手段は前記システムの起動時に前記触媒温度パラメータが前記所定温度相関閾値以下である場合に前記触媒暖機運転を開始するように構成され、
前記強制充電運転実行手段は前記システムの起動時に前記残容量パラメータが前記所定残容量相関閾値以下である場合に前記強制充電運転を開始するように構成された、
ハイブリッド車両。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載のハイブリッド車両において、
前記動力伝達機構は、前記内燃機関と前記駆動軸とを複数の歯車のみを介して連結してなるハイブリッド車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−112033(P2013−112033A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257367(P2011−257367)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】