説明

ハイブリッド過給機

【課題】エンジン上に2台のハイブリッド過給機を並列に搭載する場合、装置全体のコンパクト化や低コスト化を可能にしたハイブリッド過給機を提供する。
【解決手段】内燃機関の排熱で駆動される排気タービン31とロータ軸32で連結されたコンプレッサ33を駆動し、コンプレッサ33で圧縮された空気を内燃機関に供給するとともに、排気タービン31が排気系統と並列に接続されている2台の過給機30と、過給機30により駆動されて発電する1台の発電機40とを備え、過給機30は、互いのロータ軸32,32間を連結軸50により接続して2台が直列に配置され、発電機40は、連結軸50に接続されて2台の過給機30により駆動される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶用ディーゼルエンジン等の過給機に発電機を内蔵させたハイブリッド過給機に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド過給機は、たとえば舶用ディーゼルエンジン等の内燃機関から排出されるエンジン排熱を過給機のコンプレッサ駆動力として利用するだけでなく、発電機を駆動する動力としても利用して電力を供給する装置である。
図3に示す従来のハイブリッド過給機10は、排気タービン11のロータ軸12がコンプレッサ13と連結された構成とされ、1台のハイブリッド過給機10に対して1台の発電機14を取り付ける必要がある。この場合、発電機14は、コンプレッサ13に内蔵されてロータ軸12と連結されている。
なお、図中の符号1は排気ガスレシーバ、2は掃気トランク、3は排気管、4は電力送電線、5は母線、6は周波数変換装置である。
【0003】
また、下記の特許文献1には、排気系統に直列に接続された複数段の排気タービンの回転軸にそれぞれ電動発電機を設けた過給機の制御装置が開示されている。この場合の制御装置は、それぞれの電動発電機が電動機駆動されているとき、その電源をバッテリに依存しないようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2−30924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した従来のハイブリッド過給機10は、エンジン上に2台のハイブリッド過給機10が並列に搭載された場合、各ハイブリッド過給機10に発電機14及びコンバータインバータ等の周波数変換装置6が必要となる。このようなハイブリッド過給機10は、船内の限られたスペースに設置するため、設置スペース確保やコスト等の問題が予想される。
また、過給機2台の発電出力のバランスをとるために必要となる制御プログラムなど多くの技術課題を解決する必要がある。具体的には、二台の過給機でばらばらに発電した場合、発電出力が異なると過給機回転数つまりコンプレッサ出口圧力が異なることとなる。この状況(過給機回転数のアンバランス)になると、コンプレッサのエンジン作動点が2台の過給機で異なる点となり、過給機がサージングするなどの問題が発生する。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、エンジン上に2台のハイブリッド過給機を並列に搭載する場合、装置全体のコンパクト化や低コスト化を可能にしたハイブリッド過給機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するため、下記の手段を採用した。
本発明に係るハイブリッド過給機は、内燃機関の排熱で駆動される排気タービンとロータ軸で連結されたコンプレッサを駆動し、該コンプレッサで圧縮された空気を前記内燃機関に供給するとともに、前記排気タービンが排気系統と並列に接続されている2台の過給機と、前記過給機により駆動されて発電する1台の発電機とを備え、前記過給機は、互いのロータ軸間を連結軸により接続して2台が直列に配置され、前記発電機は、前記連結軸に接続されて前記2台の過給機により駆動されることを特徴とするものである。
【0007】
このような本発明のハイブリッド過給機によれば、排気タービンが排気系統と並列に接続された2台の過給機は、互いのロータ軸間を連結軸により接続して2台が直列に配置され、1台の発電機は、連結軸に接続されて2台の過給機により駆動されて発電するので、過給機2台分の出力で発電可能な発電機1台により発電することが可能となり、ハイブリッド過給機全体の小型化が図れる。また、発電機を1台にすることにより、発電した電力の周波数変換装置も1台ですむため、低コスト化も実現できる。
【0008】
すなわち、2台の過給機及び1台の発電機は、コンプレッサ、排気タービン、発電機、コンプレッサ及び排気タービンの順に配列され、ロータ軸及び連結軸により直列に連結された構成となる。そして、1台の発電機は、2台の過給機が各々発電機を駆動して発電する場合の合計発電量と同等の発電量を1台で発電できる能力を備えたものを使用でき、従って、排気系統に並列に接続された過給機の能力が同じであると、1台の発電機で2台分の発電量を発電することができる。
【0009】
また、この場合、前記発電機は、一方の過給機内に収容され、前記一方の過給機のロータ軸と前記連結軸とに接続していることが望ましい。
【0010】
このような本発明のハイブリッド過給機によれば、発電機を一方の過給機内に収容することで、装置全体の小型化を図ることができる。
【発明の効果】
【0011】
上述した本発明のハイブリッド過給機によれば、2台の過給機が搭載されるエンジンにハイブリッド過給機を適用した場合には、2台分の発電機及び周波数変換装置の設置スペース確保や、過給機2台の発電出力のバランスをとるために必要となる制御プログラムなど多くの技術課題を解決する必要がある。しかし、2台の過給機に1台の発電機を搭載する本願発明の構成では、設置スペースをコンパクトにでき、かつ、制御を従来と同様とすることができるため、装置の信頼性が向上するという顕著な効果が得られる。
すなわち、エンジン上に2台のハイブリッド過給機を並列に搭載する場合、発電機を1台にすることにより周波数変換装置も1台ですむため、装置全体のコンパクト化や低コスト化が可能になり、船舶の限られたスペースへの設置が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係るハイブリッド過給機の一実施形態を示す概略構成図である。
【図2】本発明に係るハイブリッド過給機の内部構成例を示す断面図である。
【図3】ハイブリッド過給機の従来例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係るハイブリッド過給機の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示す実施形態のハイブリッド過給機20は、2台の過給機30と1台の発電機40とを備えており、内燃機関から排出される排熱を利用することにより、内燃機関の燃焼用空気として圧縮空気を供給するとともに、発電機を駆動して電力を得る装置である。
過給機30は、内燃機関である船舶のディーゼルエンジン(不図示)から排出される排気ガスの排熱で駆動される排気タービン31がロータ軸32で連結されたコンプレッサ33を駆動し、コンプレッサ33に外気を吸入して圧縮した空気(圧縮空気)を燃焼用空気として内燃機関に供給する装置である。
【0014】
本実施形態のハイブリッド過給機20では、2台の過給機30を構成する排気タービン31が各々排気系統の排気ガスレシーバ1と並列に接続されている。
排気タービン31で仕事をした排気ガスは、排気管3を通って集められ、必要な処理を施した後に煙突から大気へ放出される。一方、過給機30で圧縮された空気は、一般的に舶用内燃機関が2サイクルのディーゼルエンジンであるため掃気として使用されることとなり、従って、掃気トランク2を通って内燃機関の燃焼室内に供給される。
【0015】
また、2台の過給機30及び1台の発電機40は、一対のロータ軸32間が連結軸50を介して連結され、過給機30、発電機40及び過給機30の順に、直列に連結されている。具体的には、図1の紙面右側から順に、排気タービン31、ロータ軸32、コンプレッサ33、発電機40、連結軸50、排気タービン31、ロータ軸32及びコンプレッサ33が直列に配置され、ロータ軸32及び連結軸50を介して一体に連結されている。
【0016】
このように、ハイブリッド過給機20は、2台の過給機30により駆動されて発電する1台の発電機40を備えている。そして、2台の過給機30は、互いのロータ軸32,32間を連結軸50により接続することで2台が直列に配置され、一端がロータ軸32に接続され、かつ、他端が連結軸50に接続された発電機40は、2台の過給機30により駆動されて発電する。
このため、発電機40で発電した電力は、電力送電線4を通って電源供給系統の母線5に供給されるが、発電機40が1台であるため、周波数変換装置6も1台ですむ。この周波数変換装置6は、高速回転の過給機30により駆動される発電機40が周波数の高い電力を発電するので、船内常用電力の電圧及び周波数(たとえば480V/60Hz)を有する交流電源に変換するためのコンバータインバータ等により構成される。
【0017】
このように、2台の過給機30が直列に接続されて1台の発電機40を駆動するハイブリッド過給機20は、1台の発電機40がロータ軸32及び連結軸50に接続され、2台の過給機30により駆動されて発電する。このため、本実施形態のハイブリッド過給機20は、2台の過給機30より得られる合計出力分で発電可能な発電機40を1台設置して発電することが可能になる。
すなわち、排気タービン31が排気ガスレシーバ1と並列に接続された2台の過給機30は、互いのロータ軸32,32間を連結軸50により接続して2台が直列に配置されており、そして、1台の発電機40は、連結軸50に接続されて2台の過給機30により駆動されて発電するので、2台の過給機30より得られる合計出力分で発電可能な発電機40を1台設置して発電することが可能になる。
【0018】
従って、1台の発電機40で従来と同様の電力を発電できるため、ハイブリッド過給機20の全体を小型化でき、しかも、発電した電力の周波数変換装置6も1台だけ設置すればよいため、限られた船内に設置スペースを確保することが容易になる。さらに、発電機40や周波数変換装置6の台数低減は、ハイブリッド過給機20の製造コスト低減にも有利である。
また、発電機40及び周波数変換装置6が1台ですむことは、従来のハイブリッド過給機10を2台設置する場合に必要なバランスをとるための制御プログラム等も不要になるため、実績があるため高い信頼性を有する発電機1台の従来制御を使用可能となる。
【0019】
図2は、上述したハイブリッド過給機20の内部構成例を示す断面図であり、左右一対の過給機30が発電機40及び連結軸50を介して直列に連結されている。図示の構成例では、紙面右側の過給機30に、発電機40が収容されている。
【0020】
具体的には、コンプレッサ33の上流側には、内燃機関の吸気系統に接続された消音器(サイレンサ)が隣接配置されており、この消音器の中央部に、その内部に凹所を有するシェルハウジングが設けられており、その凹所内に、発電機40が収容されている。よって、発電機40は紙面右側の過給機30のロータ軸32と、紙面左側の過給機30に接続された連結軸50とに接続されている。
一方、紙面左側の過給機30は、コンプレッサ33に外気を導入する吸入経路34内が空間となり、発電機40の設置はない。
なお、このような発電機40は、軸方向長さや径を適宜調整することにより、その発電能力を変更することが可能である。
【0021】
図示の排気タービン31は、コンプレッサ33を回転させて外気を高密度に圧縮するため、導入した内燃機関の排気ガスが膨張して得られる軸出力により、ロータ軸32を介して同軸に連結されたコンプレッサ33を駆動する軸流式のタービンである。この排気タービン31は、ロータディスク311を収納するとともに、排気ガス流路312を形成するように構成されたケーシング313を備えている。なお、ケーシング313の外周面は、必要に応じて断熱材314により被覆されている。
【0022】
ロータディスク311はロータ軸32に固定され、その周縁部には周方向に配列した多数のタービン動翼315が取り付けられている。
排気ガス流路312は、排気ガス入口316からタービンノズル317を経由して排ガス出口318に至る流路である。従って、排気ガス入口316から排気ガス流路312内に導入された高温の排気ガスは、タービンノズル317から噴出してタービン動翼315を通過する際に膨張し、ロータディスク311及びロータ軸32を回転させた後に排気ガス出口318から流出する。なお、排気ガス出口318から流出した排気ガスは、必要な排ガス処理を施した後、煙突から大気に放出される。
【0023】
コンプレッサ33は、ロータ軸32を介して同軸に連結された排気タービン31を駆動源とし、吸入した外気を圧縮して内燃機関に供給する遠心圧縮機である。このコンプレッサ33は、羽根車331を収納するとともに空気流路332を形成するケーシング333を備えている。なお、ケーシング333の外周面は、必要に応じて断熱材334により被覆されている。
【0024】
空気流路332は、空気入口335から羽根車331を経由して空気出口336に至る流路である。従って、羽根車331の回転により外気が空気入口335から空気流路332内に導入され、大気圧の外気は、羽根車331を通過する際に圧縮されて圧縮空気となり、空気出口336から掃気トランク2へ流出する。
この場合、左右の過給機30は、発電機40の有無以外は実質的に同じ構造となり、従って、図中に同じ符号を付して詳細な説明は省略する。
【0025】
このように、上述した本実施形態のハイブリッド過給機20は、2台の過給機30が搭載される内燃機関に適用した場合、2台分の発電機40及び周波数変換装置6の設置スペース確保や、従来構造のハイブリッド過給機10を2台バランスさせて運転するために必要となる複雑な制御プログラムも不要となる。従って、2台の過給機30に1台の発電機40を搭載する本実施形態の構成は、装置の設置スペースをコンパクトにすることが可能になり、しかも、従来構造のハイブリッド過給機10に適用されて実績のある従来制御をそのまま利用できるため、信頼性の高い装置となる。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、その要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0026】
1 排気ガスレシーバ
2 掃気トランク
3 排気管
4 電力送電線
5 母線
6 周波数変換装置
20 ハイブリッド過給機
30 過給機
31 排気タービン
32 ロータ軸
33 コンプレッサ
40 発電機
50 連結軸


【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排熱で駆動される排気タービンとロータ軸で連結されたコンプレッサを駆動し、該コンプレッサで圧縮された空気を前記内燃機関に供給するとともに、前記排気タービンが排気系統と並列に接続されている2台の過給機と、前記過給機により駆動されて発電する1台の発電機とを備え、
前記過給機は、互いのロータ軸間を連結軸により接続して2台が直列に配置され、
前記発電機は、前記連結軸に接続されて前記2台の過給機により駆動されることを特徴とするハイブリッド過給機。
【請求項2】
前記発電機は、一方の過給機内に収容され、前記一方の過給機のロータ軸と前記連結軸とに接続していることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド過給機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−177330(P2012−177330A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−40581(P2011−40581)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】