ハニカム構造体及び電気加熱式触媒装置
【課題】搭載性に優れ、ハニカム体を均一に昇温させることができるハニカム構造体及びそれを用いた電気加熱式触媒装置を提供すること。
【解決手段】ハニカム構造体1は、セル形成部21とセル形成部21の周囲を覆う円筒形状の外皮部22と有するハニカム体2と、ハニカム体2の外皮部22の外周面221において径方向に対向配置された一対の電極3、4とを備えている。各電極3、4は、その周方向中央部に電極端子30、40が設けられていると共に、周方向中央部から周方向外側へ行くに従って厚みが小さくなる。
【解決手段】ハニカム構造体1は、セル形成部21とセル形成部21の周囲を覆う円筒形状の外皮部22と有するハニカム体2と、ハニカム体2の外皮部22の外周面221において径方向に対向配置された一対の電極3、4とを備えている。各電極3、4は、その周方向中央部に電極端子30、40が設けられていると共に、周方向中央部から周方向外側へ行くに従って厚みが小さくなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の排ガスを浄化するための電気加熱式触媒装置(EHC)等に用いられるハニカム構造体及びそれを用いた電気加熱式触媒装置(EHC)に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両の排気管内には、排ガスを浄化するための触媒装置が設けられる。この触媒装置としては、例えばPt、Pd、Rh等の触媒が担持されたハニカム体等が用いられる。
ところで、触媒の活性化には、例えば400℃程度の加熱が必要になる。そのため、ハニカム体等の表面に一対の電極を形成し、その一対の電極間に通電を行ってハニカム体等を加熱する電気加熱式触媒装置(EHC)が開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、円柱形状のハニカム体の表面に一対の電極を設けた発熱体が開示されている。
このような円柱形状(軸方向に直交する断面が円形状)のハニカム体の場合、電極間の距離が一定でなく、場所によって異なる。そのため、電極間の距離が長い部分(電極の中央部分)は、電極間の距離が短い部分(電極の外側部分)に比べて、電気抵抗の関係で電流が流れ難くなる。これにより、ハニカム体の昇温が不均一となり、温度ばらつきが生じる。
【0004】
そこで、特許文献2には、ハニカム体を均一に昇温させるため、円柱形状のハニカム体にスリットを設け、ハニカム体内の電気抵抗を調整した電極一体型ハニカムヒータが開示されている。
また、特許文献3には、同じくハニカム体を均一に昇温させるため、軸方向に直交する断面が四角形状やレーストラック形状のハニカム体を用い、電極間の距離を一定としたハニカムモノリスヒータが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−106735号公報
【特許文献2】特開平4−67588号公報
【特許文献3】特開平4−280086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献2の電極一体型ハニカムヒータは、電気抵抗調整用のスリットを設けたことにより、ハニカム体内の電流経路が長くなるため、早期に昇温させることが困難となる。また、ハニカム体にスリットを設けるため、強度や排ガス浄化性能が低下するおそれがある。
また、上記特許文献3のハニカムモノリスヒータは、ハニカム体の軸方向に直交する断面が四角形状やレーストラック形状であるため、例えば、車両の排気管内に設けられた収容部への収容(ケーシング)が容易ではなく、搭載性に問題がある。
【0007】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたもので、搭載性に優れ、ハニカム体を均一に昇温させることができるハニカム構造体及びそれを用いた電気加熱式触媒装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、セル形成部と該セル形成部の周囲を覆う円筒形状の外皮部と有するハニカム体と、該ハニカム体の上記外皮部の外周面において径方向に対向配置された一対の電極とを備えたハニカム構造体であって、
上記各電極は、その周方向中央部に電極端子が設けられていると共に、該周方向中央部から周方向外側へ行くに従って厚みが小さくなることを特徴とするハニカム構造体にある(請求項1)。
【0009】
第2の発明は、上記第1の発明のハニカム構造体と、該ハニカム構造体の上記ハニカム体に担持された触媒と、上記ハニカム構造体の上記一対の電極間に通電を行う通電手段とを備えた電気加熱式触媒装置にある(請求項8)。
【発明の効果】
【0010】
上記第1の発明の上記ハニカム構造体において、ハニカム体は、セル形成部を円筒形状の外皮部で覆うようにして構成されており、軸方向に直交する断面が円形状である。したがって、ハニカム体の外皮部の外周面に沿って設けられた一対の電極は、該一対の電極の対向方向における電極間の距離が場所によって異なる。具体的には、各電極の周方向の中央部から外側へ行くほど電極間の距離が短くなる。そのため、各電極の周方向の中央部から外側へ行くほど電極間に電流が流れ易い。
【0011】
そこで、電気抵抗値が導体の断面積に反比例することを利用し、各電極の厚みを周方向の中央部から外側へ行くに従って小さくなるように構成している。そして、各電極について、電極間の距離が長い中央部の周方向における単位長さ当たりの電気抵抗値を小さくし、その中央部から外側へ行くに従って、すなわち電極間の距離が短くなるに従って周方向における単位長さ当たりの電気抵抗値が大きくなるように構成している。
【0012】
上記のごとく、各電極の厚みを調整し、電極間の距離に基づいて電気抵抗値を制御することで、ハニカム体に流れる電流の経路によって一対の電極端子間の電気抵抗値が偏ることを抑制し、ハニカム体に流れる電流の均一化を図ることができる。これにより、軸方向に直交する断面が円形状のハニカム体であっても均一に昇温させることができ、該ハニカム体内の温度ばらつきを抑制することができる。また、これによって、ハニカム体内に生じる熱応力を抑制・緩和することができ、該ハニカム体の割れ等の発生を防止することができる。
【0013】
また、上記ハニカム体は、軸方向に直交する断面が円形状であり、全体として円柱形状を呈している。そのため、ハニカム構造体の取扱いが非常に容易になる。例えば、ハニカム構造体を車両の排気管内へ収容する作業が容易になる。また、ハニカム構造体を外周から均一な力で保持した状態で収容することができ、振動や応力等に起因するハニカム構造体の割れ等の発生を抑制することができる。これにより、ハニカム構造体の搭載性を十分に確保することができる。
【0014】
上記第2の発明の電気加熱式触媒装置は、上記第1の発明のハニカム構造体を備えている。そのため、上記通電手段によって上記ハニカム構造体の上記一対の電極間に通電を行うことにより、上記ハニカム体を均一に昇温させることができる。これにより、該ハニカム体に担持された触媒を全体的に効率よく活性化させることができ、排ガス浄化性能を早期に発揮することができる。
【0015】
このように、上記第1及び第2の発明によれば、搭載性に優れ、ハニカム体を均一に昇温させることができるハニカム構造体及びそれを用いた電気加熱式触媒装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例1における、ハニカム構造体を示す説明図。
【図2】実施例1における、ハニカム構造体の軸方向に直交する断面を示す説明図。
【図3】実施例1における、各電極の厚みの構成を変更した例を示す説明図。
【図4】実施例2における、ハニカム構造体の軸方向に直交する断面を示す説明図。
【図5】実施例2における、プラス側の電極周辺を拡大して示す説明図。
【図6】実施例2における、各電極の構成を変更した例を示す説明図。
【図7】実施例3における、ハニカム構造体の軸方向に直交する断面を示す説明図。
【図8】実施例3における、ハニカム構造体をプラス側の電極側から見た説明図。
【図9】実施例4における、プラス側の電極周辺を拡大して示す説明図。
【図10】図9におけるB−B線矢視断面説明図。
【図11】図9におけるB−B線矢視断面説明図。
【図12】実施例5における、ハニカム構造体の軸方向に直交する断面において温度測定位置を示す説明図。
【図13】ハニカム構造体における電気抵抗値を測定する方法を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
上記第1及び第2の発明において、上記ハニカム体の上記セル形成部は、例えば、格子状に配された多孔質の隔壁と、該隔壁に囲まれて軸方向に伸びる複数のセルとにより構成することができる。
また、上記ハニカム構造体を電気加熱式触媒装置(EHC)として用いる場合には、上記ハニカム体の上記セル形成部の隔壁等に、上記触媒としてのPt、Pd、Rh等からなる三元触媒等を担持させることができる。
【0018】
上記第1の発明において、上記各電極は、その周方向中央部から周方向外側へ行くに従って厚みが小さくなる。上記各電極の厚みは、その周方向中央部から周方向外側へ行くに従って徐々に小さくなるようにしてもよいし、段階的に小さくなるようにしてもよい。
【0019】
また、上記各電極の厚みは、0.1〜5mmの範囲内で調整することが好ましい。
この場合には、上記ハニカム体の上記外皮部の外周面に上記各電極を容易かつ確実に形成することができると共に、上記ハニカム構造体の搭載性を十分に確保することができる。
【0020】
例えば、上記各電極の厚みが0.1mm未満の場合には、上記ハニカム体の上記外皮部の外周面に上記各電極を形成することが困難となるおそれがある。
一方、上記各電極の厚みが5mmを超える場合には、上記電極が形成されていない部分との間に大きな外径差が生じ、例えば車両の排気管内への収容時に上記ハニカム構造体を外周から均一な力で保持することが困難となり、搭載性が低下するおそれがある。
【0021】
また、上記各電極は、電極間の距離に基づいて厚みを調整することにより、電気抵抗値が制御されている。ここで、導体の電気抵抗値は、一般的に、R=ρ×(L/A)(R:電気抵抗値(Ω)、ρ:電気抵抗率(Ω・cm)、L:長さ(cm)、A:断面積(cm2))の式で表される。
したがって、各電極(導体)を同じ材料で構成した場合、つまり同じ電気抵抗率とした場合、電極の厚みが小さくなるほど、電極の厚み方向に直交する方向(周方向)における単位長さ当たりの電気抵抗値が大きくなる。
【0022】
また、上記各電極は、その周方向中央部に配置されていると共に上記電極端子が設けられた基準電極部と、該基準電極部の周方向両側にそれぞれ1又は複数配置された外側電極部とからなり、上記一対の電極における上記基準電極部同士及び上記外側電極部同士は、上記一対の電極の対向方向において互いに対となるように配置されており、上記各電極において、上記基準電極部の厚みが上記外側電極部の厚みよりも大きいことが好ましい(請求項2)。
この場合には、各電極を周方向に分割して構成し、それぞれの厚みを調整して電気抵抗値を制御することにより、上記ハニカム体を均一に昇温させるという効果を十分かつ確実に得ることができる。
【0023】
また、上記各電極は、上記基準電極部の周方向両側にそれぞれ複数の上記外側電極部が配置されており、該複数の外側電極部は、周方向外側へ行くに従って厚みが小さくなることが好ましい(請求項3)。
この場合には、電極間の距離が短くなるにつれて上記電極の厚みを段階的に小さく、つまり電気抵抗値を段階的に小さくすることにより、上記一対の電極端子間の電流経路による電気抵抗値の偏りをさらに抑制し、上記ハニカム体をより一層均一に昇温させることができる。
【0024】
また、上記一対の電極における上記基準電極部及び上記外側電極部の厚みの調整は、様々な方法を用いて行うことができる。例えば、上記基準電極部及び上記外側電極部をそれぞれ所望の厚みの1枚の電極材で構成することもできるし、予め所定の厚みの電極材を用意しておき、その電極材を得ようとする厚みに応じて複数枚積層して構成することもできる。
【0025】
また、上記一対の電極の上記対向方向における電極間の距離のうち、最も長い距離をL1、最も短い距離をL2とし、電極間の距離がL1となる場所における電極間の電気抵抗値をR1、電極間の距離がL2となる場所における電極間の電気抵抗値をR2とした場合、A=((L1−L2)/L1)/((R1−R2)/R1)の関係式で示されるA値が0.1〜10であることが好ましい(請求項4)。
この場合には、上記ハニカム体に流れる電流の偏りを抑制して均一化を図り、上記ハニカム体を均一に昇温させることができる。
【0026】
また、上記A値が0.8〜1.2であることが好ましい(請求項5)。
この場合には、上記ハニカム体に流れる電流の偏りを抑制して均一化を図り、上記ハニカム体を均一に昇温させるという上述の効果をより一層発揮することができる。
【0027】
ここで、上記A値について、後述する実施例1のハニカム構造体(図1、図2参照)と同様の構造のハニカム構造体を例に説明する。
図13に示すごとく、一対の電極3、4の対向方向Xにおける電極間の距離のうち、最も長い距離をL1、最も短い距離をL2とする。同図の例では、最も長い距離L1は、基準電極部31、41の中央部の位置(電極3、4の中央部の位置)である。また、最も短い距離L2は、外側電極部32a、32b、42a、42bの最も外側の位置(電極3、4の最も外側の位置)である。
【0028】
次に、電極間の距離がL1となる場所における電極間の電気抵抗値を測定し、これをR1とする。また、電極間の距離がL2となる場所における電極間の電気抵抗値を測定し、これをR2とする。それぞれの電気抵抗値R1、R2は、電極端子30、40間に1Aの電流を流し、電極3、4間(その電極3、4部分も含む)にマルチメータ8のテストリード81を当てて電圧を測定し、その電圧から電気抵抗率R1、R2を求める。テストリード81を当てる位置は、電気抵抗値R1を測定する場合にはM11とM12、電機抵抗値R2を測定する場合にはM21、M22である。
【0029】
一般的に、電気抵抗率と断面積が一定であれば、電気抵抗値は距離に比例する。基本的に、電流が流れるハニカム体2の電気抵抗率と断面積は一定とみなすことができるため、電気抵抗値R1、R2は距離L1、L2に比例する。電気抵抗値R1、R2が距離L1、L2に比例し、電極3、4間において中央部と外側とで同様に電流が流れる(これを理想状態という)とすれば、ハニカム体2を均一に昇温させることができる。したがって、このような理想状態では、A=((L1−L2)/L1)/((R1−R2)/R1)の関係式で示される上記A値が1となるはずである。しかしながら、実際には、電極3、4間において中央部の電流値と外側の電流値とは必ずしも一致するわけではなく、その差が大きくなればなるほど、上記A値が1からずれてしまう。
【0030】
具体的には、電極3、4間において外側に電流が流れ易い場合、例えば、電極3、4の電気抵抗値が小さい場合には、電気抵抗値R1とR2との差が小さくなるため、上記A値が1よりも大きくなる。逆に、電極3、4間において中央部に電流が流れ易い場合、例えば、電極3、4の電気抵抗値が大きく場合には、上記A値が1よりも小さくなる。
【0031】
そこで、上記A値が上気特定の範囲内となるように、すなわち上気A値ができるだけ1に近づくように、電極3、4の厚み(電気抵抗値)を調整することで、ハニカム体2に流れる電流の偏りを抑制して均一化を図り、ハニカム体2を均一に昇温させることができる。また、どのようなサイズのハニカム体2であっても、上記A値が上記特定の範囲内となるようにすることで、上記の効果を容易に得ることができる。
【0032】
また、上記各電極は、上記基準電極部と該基準電極部の周方向両側に隣接する上記外側電極部との間に隙間が設けられていることが好ましい(請求項6)。
この場合には、例えば、上記ハニカム構造体を車両の排気管内へ収容する際に加わる応力、車両の振動、使用時に生じる熱応力等を上記隙間によって抑制・緩和することができる。これにより、上記各電極における割れの発生を防止することができる。
【0033】
また、上記各電極について、上記基準電極部の周方向両側にそれぞれ複数の上記外側電極部が配置されている場合には、さらに上記外側電極部同士の間に隙間を設けてもよい。これにより、上記各電極における割れの発生をさらに防止することができる。
【0034】
また、上記外側電極部と上記ハニカム体との間には、隙間が設けられている構成とすることもできる(請求項7)。
この場合には、上記隙間を設けることによって上記電極の外側部分(外側電極部等)における電気抵抗値を調整することができる。具体的には、上記電極の外側部分の電気抵抗値を大きくして外側に電流が流れにくくなるようにすることができる。これにより、上記ハニカム体に流れる電流の偏りを抑制する効果を高めることができる。
【0035】
また、上記各電極を構成する材料としては、例えば、SiCやSiCにSi(金属シリコン)を含浸させたSiC−Si等のセラミックス、Cr、Fe、Ni、Mo、Mn、Si、Ti、Nb、Al又はこれらの合金等の金属を用いることができる。
ただし、上記各電極を構成する材料として金属を用いた場合には、セラミックスに比べて電気抵抗率が非常に小さいため、上記各電極の厚みによる電気抵抗値の調整がセラミックスに比べて困難である。よって、電気抵抗値の調整という観点から、セラミックスを用いることが好ましい。
【実施例】
【0036】
(実施例1)
上記第1及び第2の発明の実施例にかかるハニカム構造体及びそれを用いた電気加熱式触媒装置(EHC)について、図を用いて説明する。
本例のハニカム構造体1は、図1、図2に示すごとく、セル形成部21とセル形成部21の周囲を覆う円筒形状の外皮部22と有するハニカム体2と、ハニカム体2の外皮部22の外周面221において径方向に対向配置された一対の電極3、4とを備えている。
各電極3、4は、その周方向中央部に電極端子30、40が設けられていると共に、周方向中央部から周方向外側へ行くに従って厚みが小さくなる。
以下、これを詳説する。
【0037】
図1に示すごとく、ハニカム構造体1において、ハニカム体2は、セル形成部21と、セル形成部21の周囲を覆う円筒形状の外皮部22と有し、全体として円柱形状を呈している。また、ハニカム体2は、SiCを主成分とする多孔質セラミックスからなる。また、ハニカム体2の電気抵抗率は、後述する各電極3、4の電気抵抗率よりも大きい。
セル形成部21は、四角形格子状に配された多孔質の隔壁211と、その隔壁211に囲まれて軸方向に伸びる多数のセル212とにより構成されている。
【0038】
図1、図2に示すごとく、ハニカム体2において、外皮部22の外周面221には、一対の電極3、4がハニカム体2を挟持するように径方向に対向して設けられている。
各電極3、4は、それぞれ外皮部22の外周面221に沿って周方向に形成されている。また、各電極3、4は、SiC−Siの複合材を主成分とする導電性セラミックスからなる。
【0039】
図2に示すごとく、プラス側の電極3は、周方向中央部から周方向外側へ行くに従って徐々に厚みが小さくなっている。電極3の厚み(t)は、最も大きいところで2mm、最も小さいところで0.5mmである。また、電極3には、プラス側の電極端子30が設けられている。電極端子30は、電極3の周方向中央部であって軸方向中央部に設けられている。
【0040】
一方、マイナス側の電極4は、プラス側の電極3と同様に、周方向中央部から周方向外側へ行くに従って徐々に厚みが小さくなっている。電極4は、プラス側の電極3と同一の形状、同一の厚みで形成されている。また、電極4には、マイナス側の電極端子40が設けられている。電極端子40は、電極4の周方向中央部であって軸方向中央部に設けられている。
【0041】
図1に示すごとく、ハニカム構造体1において、各電極3、4の電極端子30、40には、外部電源81を備えた通電手段80が接続されている。また、ハニカム体2におけるセル形成部21の隔壁211の表面には、触媒が担持されている。本例では、触媒として貴金属であるPt、Pd、Rh等の三元触媒を用いた。
そして、ハニカム構造体1は、通電手段80によって一対の電極3、4間に通電を行うことにより、ハニカム体2を加熱することができる。これにより、ハニカム構造体1は、電気加熱式触媒装置(EHC)8として用いられる。
【0042】
次に、本例のハニカム構造体1の製造方法について簡単に説明する。
まず、SiCを主成分とする多孔質セラミックスからなるハニカム体2を成形する。また、各電極3、4となるシート状の電極材をそれぞれ所望の形状に成形する。電極材は、SiC−Siの複合材を主成分とする焼成体よりなる。
【0043】
次いで、ハニカム体2の外皮部22の外周面221に、SiC−Siの複合材、カーボン、バインダ等を含有するペースト状の接着剤を介して、それぞれの電極材を配置する。そして、外皮部22の外周面221に電極材を配置したハニカム体2を所定の温度(約1600℃)、所定の雰囲気条件(Ar雰囲気、常圧)で加熱・焼成する。
これにより、ハニカム体2の外皮部22の外周面221に一対の電極3、4を設けたハニカム構造体1が得られる。
【0044】
次に、本例のハニカム構造体1及びそれを用いた電気加熱式触媒装置(EHC)8における作用効果について説明する。
本例のハニカム構造体1において、ハニカム体2は、セル形成部21が円筒形状の外皮部22に覆われて構成されており、軸方向に直交する断面が円形状である。したがって、ハニカム体2の外皮部22の外周面221に沿って設けられた一対の電極3、4は、その一対の電極3、4の対向方向X(図1、図2参照)における電極間の距離が場所によって異なる。具体的には、各電極3、4の周方向の中央部から外側へ行くほど電極間の距離が短くなる。そのため、各電極3、4の周方向の中央部から外側へ行くほど電極間に電流が流れ易い。
【0045】
そこで、電気抵抗値が導体の断面積に反比例することを利用し、各電極3、4の厚みを周方向の中央部から外側へ行くに従って小さくなるように構成している。そして、各電極3、4について、電極間の距離が長い中央部の周方向における単位長さ当たりの電気抵抗値を小さくし、その中央部から外側へ行くに従って、すなわち電極間の距離が短くなるに従って周方向における単位長さ当たりの電気抵抗値が大きくなるように構成している。
【0046】
上記のごとく、各電極3、4の厚みを調整し、電極間の距離に基づいて電気抵抗値を制御することで、ハニカム体2に流れる電流の経路によって一対の電極端子30、40間の電気抵抗値が偏ることを抑制し、ハニカム体2に流れる電流の均一化を図ることができる。これにより、軸方向に直交する断面が円形状のハニカム体2であっても均一に昇温させることができ、ハニカム体2内の温度ばらつきを抑制することができる。また、これによって、ハニカム体2内に生じる熱応力を抑制・緩和することができ、ハニカム体2の割れ等の発生を防止することができる。
【0047】
また、ハニカム体2は、軸方向に直交する断面が円形状であり、全体として円柱形状を呈している。そのため、ハニカム構造体1の取扱いが非常に容易になる。例えば、ハニカム構造体1を車両の排気管内へ収容する作業が容易になる。また、ハニカム構造体1を外周から均一な力で保持した状態で収容することができ、振動や応力等に起因するハニカム構造体1の割れ等の発生を抑制することができる。これにより、ハニカム構造体1の搭載性を十分に確保することができる。
【0048】
また、ハニカム体2の電気抵抗率は、各電極3、4の電気抵抗率よりも大きい。そのため、各電極3、4の全体を電流が良好に流れることになり、ハニカム体2を介して一対の電極3、4間全体において電流が良好に流れるようにすることができる。これにより、ハニカム体2を均一に昇温させるという効果を確実に得ることができる。
【0049】
本例の電気加熱式触媒装置8は、上述したハニカム構造体1を備えている。そのため、通電手段によってハニカム構造体1の一対の電極3、4間に通電を行うことにより、ハニカム体2を均一に昇温させることができる。これにより、ハニカム体2に担持された触媒を全体的に効率よく活性化させることができ、排ガス浄化性能を早期に発揮することができる。
【0050】
このように、本例によれば、搭載性に優れ、ハニカム体2を均一に昇温させることができるハニカム構造体1及びそれを用いた電気加熱式触媒装置8を提供することができる。
【0051】
また、本例では、図1、図2に示すごとく、各電極3、4は、周方向中央部から周方向外側へ行くに従って徐々に厚みが小さくなるように構成したが、例えば、図3に示すごとく、周方向中央部から周方向外側へ行くに従って段階的に厚みが小さくなるように構成することもできる。
【0052】
(実施例2)
本例は、図4に示すごとく、各電極の構成を変更した例である。
本例では、同図に示すごとく、各電極3、4は、その周方向中央部に配置されていると共に電極端子30、40が設けられた基準電極部31、41と、基準電極部31、41の周方向両側にそれぞれ配置された外側電極部32a、32b、42a、42bとからなる。一対の電極3、4における基準電極部31、41同士及び外側電極部32a、42a(32b、42b)同士は、一対の電極3、4の対向方向Xにおいて互いに対となるように配置されている。各電極3(4)において、基準電極部31(41)の厚みは、外側電極部32a、32b(42a、42b)の厚みよりも大きい。
以下、これを詳説する。
【0053】
図4に示すごとく、プラス側の電極3は、その周方向中央部に配置された基準電極部31と、基準電極部31の周方向両側にそれぞれ配置された外側電極部32a、32bとからなる。すなわち、プラス側の電極3は、1つの基準電極部31とその両側の2つの外側電極部32a、32bとにより構成されている。基準電極部31及び外側電極部32a、32bは、SiC−Siの複合材を主成分とする導電性セラミックスからなる。
また、基準電極部31には、プラス側の電極端子30が設けられている。電極端子30は、基準電極部31の周方向中央部であって軸方向中央部に設けられている。
【0054】
一方、マイナス側の電極4は、その周方向中央部に配置された基準電極部41と、基準電極部41の周方向両側にそれぞれ配置された外側電極部42a、42bとからなる。すなわち、マイナス側の電極4は、1つの基準電極部41とその両側の2つの外側電極部42a、42bとにより構成されている。基準電極部41及び外側電極部42a、42bは、SiC−Siの複合材を主成分とする導電性セラミックスからなる。
また、基準電極部41には、マイナス側の電極端子40が設けられている。電極端子40は、基準電極部41の周方向中央部であって軸方向中央部に設けられている。
【0055】
そして、プラス側の電極3の基準電極部31とマイナス側の電極4の基準電極部41とは、一対の電極3、4の対向方向Xにおいて対となるように、すなわち対向方向Xにおいて対称となる位置に設けられている。また、プラス側の電極3の外側電極部32a、32bとマイナス側の電極4の外側電極部42a、42bとは、一対の電極3、4の対向方向Xにおいてそれぞれ対となるように、すなわち対向方向Xにおいてそれぞれ対称となる位置に設けられている。
【0056】
図5に示すごとく、プラス側の電極3において、隣接する基準電極部31と外側電極部32a、32bとは、両者の間に配設された導電性の接着剤51を介して接合されている。接着剤51は、電極3を構成するSiC−Siの複合材、カーボン、バインダ等を含有するペーストである。
また、基準電極部31及び外側電極部32a、32bは、ハニカム体2の外皮部22の外周面221との間に配設された導電性の接着剤51を介して、ハニカム体2の外皮部22の外周面221に接合されている。
また、電極端子30は、基準電極部31との間に配設された導電性の接着剤51を介して、基準電極部31に接合されている。
【0057】
一方、図示を省略したが、プラス側の電極3と同様に、マイナス側の電極4において、隣接する基準電極部41と外側電極部42a、42bとは、両者の間に配設された導電性の接着剤51を介して接合されている。
また、基準電極部41及び外側電極部42a、42bは、ハニカム体2の外皮部22の外周面221との間に配設された導電性の接着剤51を介して、ハニカム体2の外皮部22の外周面221に接合されている。
また、電極端子40は、基準電極部41との間に配設された導電性の接着剤51を介して、基準電極部41に接合されている。
【0058】
図4に示すごとく、プラス側の電極3において、基準電極部31の厚みは、その基準電極部31の周方向両側に隣接する外側電極部32a、32bの厚みよりも大きい。
また、マイナス側の電極4において、基準電極部41の厚みは、その基準電極部41の周方向両側に隣接する外側電極部42a、42bの厚みよりも大きい。
【0059】
また、各電極3、4において、基準電極部31、41は、どちらも同じ厚みであり、その厚み(t1)は2mmである。また、外側電極部32a、32b、42a、42bは、いずれも同じ厚みであり、その厚み(t2)は0.5mmである。
また、ハニカム体2の電気抵抗率は、各電極3、4における基準電極31、41及び外側電極部32a、32b、42a、42bの電気抵抗率よりも大きい。
その他は、実施例1と同様の構成である。
【0060】
本例の場合には、各電極3、4を周方向に分割して構成し、電極間の距離が短くなるにつれて厚みを段階的に小さく、つまり電気抵抗値を段階的に小さくすることにより、一対の電極端子30、40間の電流経路による電気抵抗値の偏りをさらに抑制し、ハニカム体2を均一に昇温させるという効果を十分かつ確実に得ることができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0061】
また、本例では、図4に示すごとく、各電極3、4において、基準電極部31、41の周方向両側にそれぞれ1つずつの外側電極部32a、32b、42a、42bが配置されている構成としたが、例えば、図6に示すごとく、基準電極部31、41の周方向両側にそれぞれ2つ以上の外側電極部32a〜32d、42a〜42dが配置されており、これらの外側電極部32a〜32d、42a〜42dが周方向外側へ行くに従って厚みが小さくなる構成とすることもできる。この場合には、ハニカム体2をより一層均一に昇温させることができる。
【0062】
(実施例3)
本例は、図7、図8に示すごとく、各電極3、4の構成を変更した例である。
本例では、同図に示すごとく、各電極3(4)は、基準電極部31(41)とその基準電極部31(41)の周方向両側に隣接する外側電極部32a、32b(42a、42b)との間に隙間50が設けられている。
【0063】
具体的には、同図に示すごとく、プラス側の電極3において、隣接する基準電極部31と外側電極部32a、32bとは、両者の間に配設された導電性の接着剤51を介して接合されている。ただし、両者の間には、断続的に接着剤51を塗布しない部分が形成されており、その部分に隙間50が設けられている。
【0064】
一方、図示を省略したが、プラス側の電極と同様に、マイナス側の電極4において、隣接する基準電極部41と外側電極部42a、42bとは、両者の間に配設された導電性の接着剤51を介して接合されている。ただし、両者の間には、断続的に接着剤51を塗布しない部分が形成されており、その部分に隙間50が設けられている。
その他は、実施例2と同様の構成である。
【0065】
本例の場合には、例えば、ハニカム構造体1を車両の排気管内へ収容する際に加わる応力、車両の振動、使用時に生じる熱応力等を隙間50によって抑制・緩和することができる。これにより、各電極3、4における割れの発生を防止することができる。
その他、実施例2と同様の作用効果を有する。
【0066】
また、上述の実施例2の図6に示すように、各電極3、4において、基準電極部31、41の周方向両側にそれぞれ複数の外側電極部32a〜32d、42a〜42dが配置されている構成の場合には、さらに外側電極部同士の間(例えば、外側電極32a、32c同士の間)に隙間50を設けることもできる。これにより、各電極3、4における割れの発生をさらに防止することができる。
【0067】
(実施例4)
本例は、図9、図10に示すごとく、各電極3、4の構成を変更した例である。
本例では、同図に示すごとく、各電極3(4)において、外側電極部32a、32b(42a、42b)とハニカム体2との間には、隙間59が設けられている。
【0068】
具体的には、同図に示すごとく、プラス側の電極3において、外側電極部32a、32bは、ハニカム体2の外皮部22の外周面221との間に配設された導電性の接着剤51を介して、ハニカム体2の外皮部22の外周面221に接合されている。そして、両者の間には、接着剤51を塗布しない部分が形成されており、その部分に隙間59が設けられている。
【0069】
一方、図示を省略したが、プラス側の電極3と同様に、マイナス側の電極4において、外側電極部42a、42bは、ハニカム体2の外皮部22の外周面221との間に配設された導電性の接着剤51を介して、ハニカム体2の外皮部22の外周面221に接合されている。そして、両者の間には、接着剤51を塗布しない部分が形成されており、その部分に隙間59が設けられている。
【0070】
この隙間59は、図10に示すごとく、ハニカム体2の軸方向に貫通するように形成されていてもよいが、隙間59が貫通するように形成されていると、隙間59に排ガスが侵入し、排ガス浄化性能の低下を招いたり、電極3、4とハニカム体2との接合強度が低下して剥離したりするおそれが生じる。そのため、例えば、図11に示すごとく、隙間59の軸方向の両端に接着剤51を塗布して蓋をする構成とすることもできる。
その他は、実施例2と同様の構成である。
【0071】
本例の場合には、隙間59を設けることによって電極3、4の外側部分(外側電極部32a、32b、42a、42b等)における電気抵抗値を調整することができる。具体的には、電極3、4の外側部分の電気抵抗値を大きくして外側に電流が流れにくくなるようにすることができる。これにより、ハニカム体2に流れる電流の偏りを抑制する効果を高めることができる。
その他、実施例2と同様の作用効果を有する。
【0072】
(実施例5)
本例は、表1、表2に示すごとく、ハニカム構造体におけるハニカム体の昇温性について調べたものである。
本例では、9種類のハニカム構造体(試験体1〜9)を準備し、そのハニカム体に電流を流して昇温させた場合の温度ばらつきを調べた。
【0073】
まず、ハニカム構造体(試験体1〜9)の構成について説明する。
試験体1、2のハニカム構造体は、一対の電極をハニカム体の外周面に設け、各電極が厚みの同じ基準電極部及びその両側に配置された外側電極部からなるものである。
試験体3〜9のハニカム構造体は、実施例2、4のハニカム構造体(図4、図5、図9、図10参照)と同様の構成である。すなわち、一対の電極をハニカム体の外周面に設け、各電極が厚みの異なる基準電極部及びその両側に配置された外側電極部からなるものである。
【0074】
また、ハニカム構造体を構成するハニカム体としては、導電性を有するSiC材料からなるハニカム体を用いた。
ハニカム体の外径は93mm、長さは100mmである。また、ハニカム体において、セル数は400cpsi、隔壁の厚みは6milである。また、ハニカム体の電気抵抗値は12Ωである。
【0075】
また、ハニカム体の電気抵抗値は、様々な方法で求めることができる。一般的な方法として、電気抵抗値の低いメッシュ状、板状の金属や電気抵抗率に低いAgペースト等を電極とし、その電極間に一定の電流(例えば、1A)を流したときの電圧をマルチメータ等で測定する。そして、測定した電圧から電気抵抗値を求める。
なお、ハニカム体の電気抵抗値は、ハニカム体のサイズや供給する電流等によって調整することができる。
【0076】
また、ハニカム体の中心と各電極の両端とが成す電極角度α(図13参照)は78°に設定した。各電極の基準電極部及び2つの外側電極部は、すべて同じ周方向長さとしており、その周方向長さは21.1mmである。
なお、電極角度αは、大きすぎても小さすぎても好ましくない。電極角度αは、78±10°の範囲であることが好ましい。大きすぎると(88°を超えると)、外側の電極間の距離が短くなるため、外側の電極間に電流が流れ易くなってしまう。また、小さすぎると(68°未満であると)、電極が配置されていない部分(電極よりも外側の部分)に電流が流れず、温度が低くなってしまう。
【0077】
また、一対の電極の対向方向における電極間の距離のうち、最も長い距離L1(図13参照)は、基準電極部の中央の位置であり、その値が93mmである。また、最も短い距離L2(図13参照)は、外側電極部の最も外側の位置であり、その値が72.3mmである。また、(L1−L2)/L1の値は0.22である。
【0078】
次に、ハニカム構造体(試験体1〜9)の製造方法について説明する。
まず、導電性を有するSiC材料からなるハニカム体を成形した。
【0079】
また、各電極における基準電極部及び外側電極部を構成する電極材を作製した。
具体的には、SiC粉末とカーボン(C)粉末とを所定の配合比(62(質量%):38(質量%))で混合し、そこへバインダ、水、潤滑油等を加えて粘土化し、押出成形にて成形した後、乾燥機にて乾燥した。これにより、成形体を得た。成形体は、内径93mm、厚さ5mm、長さ120mmの円筒管形状とした。
【0080】
次いで、この成形体を所定のサイズに加工した後、金属シリコン(Si)粉、水、アルコール溶媒、粘土調整用バインダ等を混合してスラリー状にしたものを成形体の表面に塗布した。塗布量に規定はなく、表面が目視レベルでコートされていることが確認できればよい。その後、アルゴンガス雰囲気にて1700℃、2時間の条件で焼成した。これにより、電極材を作製した。
【0081】
作製した電極材の電気抵抗率は、0.05Ω・cmである。電極材の電気抵抗率は、上述したハニカム体の電気抵抗値と同様の方法で電極材の電気抵抗値を求めた後、電極材の長さ(厚さ)、断面積を求めた。そして、R=ρ×(L/A)(R:電気抵抗値(Ω)、ρ:電気抵抗率(Ω・cm)、L:長さ(cm)、A:断面積(cm2))の関係式から、電気抵抗率を求めた。
【0082】
また、各電極における基準電極部及び外側電極部をハニカム体に接着するためのペースト状の接着剤を作製した。
具体的には、ペースト状の接着剤としては、基本的に接着する電極材と同じ材料を用いた。接着剤には、電極材と同じ配合比のSiC粉末及びカーボン(C)粉末、さらに金属シリコン(Si)粉末、粘度調整用バインダ、水を混合して作製した。
【0083】
なお、金属シリコン粉末(Si)は、SiC+Cを100質量%とした場合に、(15×SiC(質量%)/85)+(C(質量%)×2.34)質量%添加した。また、粘度調整用バインダは、SiC+C+Siを100質量%とした場合に8質量%を添加した。また、水は、SiC+C+Siを100質量%とした場合に、45質量%添加した。また、粘度調整用バインダとしては、メチルセルロースを用いた。
【0084】
そして、ハニカム体の外周面に、接着剤を介して一対の電極を配置した後、アルゴンガス雰囲気にて、1600℃、2時間の条件で焼成した。
なお、試験体1〜9の各電極における基準電極部及び外側電極部の厚みは、表1に示すとおりである。また、試験体7〜9では、実施例4と同様に、外側電極部とハニカム体との間の一部に隙間を設けた(図9、図10参照)。隙間は、それぞれ外側電極部の周方向長さの1/4(試験体7)、2/4(試験体8)、3/4(試験体9)とした。また、隙間の体積は、それぞれ0.3、0.5、0.8cm3である。
【0085】
また、作製した試験体1〜9のハニカム構造体において、接着剤の厚みは、0.5mm程度である。また、試験体5〜9は、外側電極部の厚みが小さいため、焼成した電極材を作製することが困難であるため、ペースト状の電極材を塗布して焼成することにより、外側電極部を形成した。なお、ペースト状の接着剤は、同様に0.5mmの厚みで塗布した。また、電極端子は、直径12mm、長さ15mmである。また、電極端子は、電極材と同様の材料からなる。なお、電極端子及びその電極端子を設ける基準電極部は、ともに電気抵抗率が低い電極材を用いている。これは、電極端子間がスポット的に発熱することを防止するためである。
【0086】
【表1】
【0087】
次に、ハニカム構造体(試験体1〜9)の評価方法について説明する。
まず、電極端子間に1Aの電流を流し、電極間の距離が最も長いL1となる場所における電極間の電気抵抗値R1、電極間の距離が最も短いL2となる場所における電極間の電気抵抗値R2をマルチメータで測定した(図13参照)。そして、(R1−R2)/R1の値を求めた。さらに、A=((L1−L2)/L1)/((R1−R2)/R1)の関係式で示されるA値を求めた。なお、(L1−L2)/L1の値は、上述したとおり0.22である。
【0088】
次いで、ハニカム構造体の電極端子間に2KWの一定電力を投入し、60秒後の各部位の温度を測定した。温度測定箇所Tは、図12に示すごとく、全部で17箇所である。温度測定方法は、熱電対を挿入して測定する方法やサーモビュアによって測定する方法等、様々な方法で測定することができる。本例では、サーモビュアによって測定した。
そして、測定した17箇所の温度のうち、最も高い温度と最も低い温度との差を温度差ΔTとして求め、均一に発熱しているかどうかを評価した。
【0089】
【表2】
【0090】
次に、評価結果を表2に示す。
同表から、電極を同じ厚みの基準電極部及び外側電極部で構成したハニカム構造体である試験体1、2は、A値が13.6、17.1であり、温度差ΔTが225℃、234℃であった。
一方、電極を基準電極部及び外側電極部で構成し、基準電極部の厚みを外側電極部の厚みよりも大きくしたハニカム構造体である試験体3〜9は、A値が0.1〜10の範囲となり、温度差ΔTが200℃以下となった。特に、試験体6〜9は、A値が0.8〜1.2であり、温度差ΔTが100℃以下と非常に良好な結果となった。なお、A値が1よりも小さくなると、外側電極部の外側における電気抵抗値が高くなり、電流が流れ難くなるため、温度差ΔTが大きくなる。
【0091】
また、同表から、試験体7〜9は、外側電極部とハニカム体との間に隙間を設けたことにより、隙間を設けていない試験体6に比べてA値が1に近づき、温度差ΔTが同等又は小さくなった。
【0092】
以上の結果から、各電極の厚みを調整し、電極間の距離に基づいて電気抵抗値を制御することで、ハニカム体に流れる電流の経路によって一対の電極端子間の電気抵抗値が偏ることを抑制し、ハニカム体に流れる電流の均一化を図ることができることがわかった。
【符号の説明】
【0093】
1 ハニカム構造体
2 ハニカム体
21 セル形成部
22 外皮部
221 外周面(外皮部の外周面)
3、4 電極
30、40 電極端子
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の排ガスを浄化するための電気加熱式触媒装置(EHC)等に用いられるハニカム構造体及びそれを用いた電気加熱式触媒装置(EHC)に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両の排気管内には、排ガスを浄化するための触媒装置が設けられる。この触媒装置としては、例えばPt、Pd、Rh等の触媒が担持されたハニカム体等が用いられる。
ところで、触媒の活性化には、例えば400℃程度の加熱が必要になる。そのため、ハニカム体等の表面に一対の電極を形成し、その一対の電極間に通電を行ってハニカム体等を加熱する電気加熱式触媒装置(EHC)が開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、円柱形状のハニカム体の表面に一対の電極を設けた発熱体が開示されている。
このような円柱形状(軸方向に直交する断面が円形状)のハニカム体の場合、電極間の距離が一定でなく、場所によって異なる。そのため、電極間の距離が長い部分(電極の中央部分)は、電極間の距離が短い部分(電極の外側部分)に比べて、電気抵抗の関係で電流が流れ難くなる。これにより、ハニカム体の昇温が不均一となり、温度ばらつきが生じる。
【0004】
そこで、特許文献2には、ハニカム体を均一に昇温させるため、円柱形状のハニカム体にスリットを設け、ハニカム体内の電気抵抗を調整した電極一体型ハニカムヒータが開示されている。
また、特許文献3には、同じくハニカム体を均一に昇温させるため、軸方向に直交する断面が四角形状やレーストラック形状のハニカム体を用い、電極間の距離を一定としたハニカムモノリスヒータが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−106735号公報
【特許文献2】特開平4−67588号公報
【特許文献3】特開平4−280086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献2の電極一体型ハニカムヒータは、電気抵抗調整用のスリットを設けたことにより、ハニカム体内の電流経路が長くなるため、早期に昇温させることが困難となる。また、ハニカム体にスリットを設けるため、強度や排ガス浄化性能が低下するおそれがある。
また、上記特許文献3のハニカムモノリスヒータは、ハニカム体の軸方向に直交する断面が四角形状やレーストラック形状であるため、例えば、車両の排気管内に設けられた収容部への収容(ケーシング)が容易ではなく、搭載性に問題がある。
【0007】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたもので、搭載性に優れ、ハニカム体を均一に昇温させることができるハニカム構造体及びそれを用いた電気加熱式触媒装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、セル形成部と該セル形成部の周囲を覆う円筒形状の外皮部と有するハニカム体と、該ハニカム体の上記外皮部の外周面において径方向に対向配置された一対の電極とを備えたハニカム構造体であって、
上記各電極は、その周方向中央部に電極端子が設けられていると共に、該周方向中央部から周方向外側へ行くに従って厚みが小さくなることを特徴とするハニカム構造体にある(請求項1)。
【0009】
第2の発明は、上記第1の発明のハニカム構造体と、該ハニカム構造体の上記ハニカム体に担持された触媒と、上記ハニカム構造体の上記一対の電極間に通電を行う通電手段とを備えた電気加熱式触媒装置にある(請求項8)。
【発明の効果】
【0010】
上記第1の発明の上記ハニカム構造体において、ハニカム体は、セル形成部を円筒形状の外皮部で覆うようにして構成されており、軸方向に直交する断面が円形状である。したがって、ハニカム体の外皮部の外周面に沿って設けられた一対の電極は、該一対の電極の対向方向における電極間の距離が場所によって異なる。具体的には、各電極の周方向の中央部から外側へ行くほど電極間の距離が短くなる。そのため、各電極の周方向の中央部から外側へ行くほど電極間に電流が流れ易い。
【0011】
そこで、電気抵抗値が導体の断面積に反比例することを利用し、各電極の厚みを周方向の中央部から外側へ行くに従って小さくなるように構成している。そして、各電極について、電極間の距離が長い中央部の周方向における単位長さ当たりの電気抵抗値を小さくし、その中央部から外側へ行くに従って、すなわち電極間の距離が短くなるに従って周方向における単位長さ当たりの電気抵抗値が大きくなるように構成している。
【0012】
上記のごとく、各電極の厚みを調整し、電極間の距離に基づいて電気抵抗値を制御することで、ハニカム体に流れる電流の経路によって一対の電極端子間の電気抵抗値が偏ることを抑制し、ハニカム体に流れる電流の均一化を図ることができる。これにより、軸方向に直交する断面が円形状のハニカム体であっても均一に昇温させることができ、該ハニカム体内の温度ばらつきを抑制することができる。また、これによって、ハニカム体内に生じる熱応力を抑制・緩和することができ、該ハニカム体の割れ等の発生を防止することができる。
【0013】
また、上記ハニカム体は、軸方向に直交する断面が円形状であり、全体として円柱形状を呈している。そのため、ハニカム構造体の取扱いが非常に容易になる。例えば、ハニカム構造体を車両の排気管内へ収容する作業が容易になる。また、ハニカム構造体を外周から均一な力で保持した状態で収容することができ、振動や応力等に起因するハニカム構造体の割れ等の発生を抑制することができる。これにより、ハニカム構造体の搭載性を十分に確保することができる。
【0014】
上記第2の発明の電気加熱式触媒装置は、上記第1の発明のハニカム構造体を備えている。そのため、上記通電手段によって上記ハニカム構造体の上記一対の電極間に通電を行うことにより、上記ハニカム体を均一に昇温させることができる。これにより、該ハニカム体に担持された触媒を全体的に効率よく活性化させることができ、排ガス浄化性能を早期に発揮することができる。
【0015】
このように、上記第1及び第2の発明によれば、搭載性に優れ、ハニカム体を均一に昇温させることができるハニカム構造体及びそれを用いた電気加熱式触媒装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例1における、ハニカム構造体を示す説明図。
【図2】実施例1における、ハニカム構造体の軸方向に直交する断面を示す説明図。
【図3】実施例1における、各電極の厚みの構成を変更した例を示す説明図。
【図4】実施例2における、ハニカム構造体の軸方向に直交する断面を示す説明図。
【図5】実施例2における、プラス側の電極周辺を拡大して示す説明図。
【図6】実施例2における、各電極の構成を変更した例を示す説明図。
【図7】実施例3における、ハニカム構造体の軸方向に直交する断面を示す説明図。
【図8】実施例3における、ハニカム構造体をプラス側の電極側から見た説明図。
【図9】実施例4における、プラス側の電極周辺を拡大して示す説明図。
【図10】図9におけるB−B線矢視断面説明図。
【図11】図9におけるB−B線矢視断面説明図。
【図12】実施例5における、ハニカム構造体の軸方向に直交する断面において温度測定位置を示す説明図。
【図13】ハニカム構造体における電気抵抗値を測定する方法を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
上記第1及び第2の発明において、上記ハニカム体の上記セル形成部は、例えば、格子状に配された多孔質の隔壁と、該隔壁に囲まれて軸方向に伸びる複数のセルとにより構成することができる。
また、上記ハニカム構造体を電気加熱式触媒装置(EHC)として用いる場合には、上記ハニカム体の上記セル形成部の隔壁等に、上記触媒としてのPt、Pd、Rh等からなる三元触媒等を担持させることができる。
【0018】
上記第1の発明において、上記各電極は、その周方向中央部から周方向外側へ行くに従って厚みが小さくなる。上記各電極の厚みは、その周方向中央部から周方向外側へ行くに従って徐々に小さくなるようにしてもよいし、段階的に小さくなるようにしてもよい。
【0019】
また、上記各電極の厚みは、0.1〜5mmの範囲内で調整することが好ましい。
この場合には、上記ハニカム体の上記外皮部の外周面に上記各電極を容易かつ確実に形成することができると共に、上記ハニカム構造体の搭載性を十分に確保することができる。
【0020】
例えば、上記各電極の厚みが0.1mm未満の場合には、上記ハニカム体の上記外皮部の外周面に上記各電極を形成することが困難となるおそれがある。
一方、上記各電極の厚みが5mmを超える場合には、上記電極が形成されていない部分との間に大きな外径差が生じ、例えば車両の排気管内への収容時に上記ハニカム構造体を外周から均一な力で保持することが困難となり、搭載性が低下するおそれがある。
【0021】
また、上記各電極は、電極間の距離に基づいて厚みを調整することにより、電気抵抗値が制御されている。ここで、導体の電気抵抗値は、一般的に、R=ρ×(L/A)(R:電気抵抗値(Ω)、ρ:電気抵抗率(Ω・cm)、L:長さ(cm)、A:断面積(cm2))の式で表される。
したがって、各電極(導体)を同じ材料で構成した場合、つまり同じ電気抵抗率とした場合、電極の厚みが小さくなるほど、電極の厚み方向に直交する方向(周方向)における単位長さ当たりの電気抵抗値が大きくなる。
【0022】
また、上記各電極は、その周方向中央部に配置されていると共に上記電極端子が設けられた基準電極部と、該基準電極部の周方向両側にそれぞれ1又は複数配置された外側電極部とからなり、上記一対の電極における上記基準電極部同士及び上記外側電極部同士は、上記一対の電極の対向方向において互いに対となるように配置されており、上記各電極において、上記基準電極部の厚みが上記外側電極部の厚みよりも大きいことが好ましい(請求項2)。
この場合には、各電極を周方向に分割して構成し、それぞれの厚みを調整して電気抵抗値を制御することにより、上記ハニカム体を均一に昇温させるという効果を十分かつ確実に得ることができる。
【0023】
また、上記各電極は、上記基準電極部の周方向両側にそれぞれ複数の上記外側電極部が配置されており、該複数の外側電極部は、周方向外側へ行くに従って厚みが小さくなることが好ましい(請求項3)。
この場合には、電極間の距離が短くなるにつれて上記電極の厚みを段階的に小さく、つまり電気抵抗値を段階的に小さくすることにより、上記一対の電極端子間の電流経路による電気抵抗値の偏りをさらに抑制し、上記ハニカム体をより一層均一に昇温させることができる。
【0024】
また、上記一対の電極における上記基準電極部及び上記外側電極部の厚みの調整は、様々な方法を用いて行うことができる。例えば、上記基準電極部及び上記外側電極部をそれぞれ所望の厚みの1枚の電極材で構成することもできるし、予め所定の厚みの電極材を用意しておき、その電極材を得ようとする厚みに応じて複数枚積層して構成することもできる。
【0025】
また、上記一対の電極の上記対向方向における電極間の距離のうち、最も長い距離をL1、最も短い距離をL2とし、電極間の距離がL1となる場所における電極間の電気抵抗値をR1、電極間の距離がL2となる場所における電極間の電気抵抗値をR2とした場合、A=((L1−L2)/L1)/((R1−R2)/R1)の関係式で示されるA値が0.1〜10であることが好ましい(請求項4)。
この場合には、上記ハニカム体に流れる電流の偏りを抑制して均一化を図り、上記ハニカム体を均一に昇温させることができる。
【0026】
また、上記A値が0.8〜1.2であることが好ましい(請求項5)。
この場合には、上記ハニカム体に流れる電流の偏りを抑制して均一化を図り、上記ハニカム体を均一に昇温させるという上述の効果をより一層発揮することができる。
【0027】
ここで、上記A値について、後述する実施例1のハニカム構造体(図1、図2参照)と同様の構造のハニカム構造体を例に説明する。
図13に示すごとく、一対の電極3、4の対向方向Xにおける電極間の距離のうち、最も長い距離をL1、最も短い距離をL2とする。同図の例では、最も長い距離L1は、基準電極部31、41の中央部の位置(電極3、4の中央部の位置)である。また、最も短い距離L2は、外側電極部32a、32b、42a、42bの最も外側の位置(電極3、4の最も外側の位置)である。
【0028】
次に、電極間の距離がL1となる場所における電極間の電気抵抗値を測定し、これをR1とする。また、電極間の距離がL2となる場所における電極間の電気抵抗値を測定し、これをR2とする。それぞれの電気抵抗値R1、R2は、電極端子30、40間に1Aの電流を流し、電極3、4間(その電極3、4部分も含む)にマルチメータ8のテストリード81を当てて電圧を測定し、その電圧から電気抵抗率R1、R2を求める。テストリード81を当てる位置は、電気抵抗値R1を測定する場合にはM11とM12、電機抵抗値R2を測定する場合にはM21、M22である。
【0029】
一般的に、電気抵抗率と断面積が一定であれば、電気抵抗値は距離に比例する。基本的に、電流が流れるハニカム体2の電気抵抗率と断面積は一定とみなすことができるため、電気抵抗値R1、R2は距離L1、L2に比例する。電気抵抗値R1、R2が距離L1、L2に比例し、電極3、4間において中央部と外側とで同様に電流が流れる(これを理想状態という)とすれば、ハニカム体2を均一に昇温させることができる。したがって、このような理想状態では、A=((L1−L2)/L1)/((R1−R2)/R1)の関係式で示される上記A値が1となるはずである。しかしながら、実際には、電極3、4間において中央部の電流値と外側の電流値とは必ずしも一致するわけではなく、その差が大きくなればなるほど、上記A値が1からずれてしまう。
【0030】
具体的には、電極3、4間において外側に電流が流れ易い場合、例えば、電極3、4の電気抵抗値が小さい場合には、電気抵抗値R1とR2との差が小さくなるため、上記A値が1よりも大きくなる。逆に、電極3、4間において中央部に電流が流れ易い場合、例えば、電極3、4の電気抵抗値が大きく場合には、上記A値が1よりも小さくなる。
【0031】
そこで、上記A値が上気特定の範囲内となるように、すなわち上気A値ができるだけ1に近づくように、電極3、4の厚み(電気抵抗値)を調整することで、ハニカム体2に流れる電流の偏りを抑制して均一化を図り、ハニカム体2を均一に昇温させることができる。また、どのようなサイズのハニカム体2であっても、上記A値が上記特定の範囲内となるようにすることで、上記の効果を容易に得ることができる。
【0032】
また、上記各電極は、上記基準電極部と該基準電極部の周方向両側に隣接する上記外側電極部との間に隙間が設けられていることが好ましい(請求項6)。
この場合には、例えば、上記ハニカム構造体を車両の排気管内へ収容する際に加わる応力、車両の振動、使用時に生じる熱応力等を上記隙間によって抑制・緩和することができる。これにより、上記各電極における割れの発生を防止することができる。
【0033】
また、上記各電極について、上記基準電極部の周方向両側にそれぞれ複数の上記外側電極部が配置されている場合には、さらに上記外側電極部同士の間に隙間を設けてもよい。これにより、上記各電極における割れの発生をさらに防止することができる。
【0034】
また、上記外側電極部と上記ハニカム体との間には、隙間が設けられている構成とすることもできる(請求項7)。
この場合には、上記隙間を設けることによって上記電極の外側部分(外側電極部等)における電気抵抗値を調整することができる。具体的には、上記電極の外側部分の電気抵抗値を大きくして外側に電流が流れにくくなるようにすることができる。これにより、上記ハニカム体に流れる電流の偏りを抑制する効果を高めることができる。
【0035】
また、上記各電極を構成する材料としては、例えば、SiCやSiCにSi(金属シリコン)を含浸させたSiC−Si等のセラミックス、Cr、Fe、Ni、Mo、Mn、Si、Ti、Nb、Al又はこれらの合金等の金属を用いることができる。
ただし、上記各電極を構成する材料として金属を用いた場合には、セラミックスに比べて電気抵抗率が非常に小さいため、上記各電極の厚みによる電気抵抗値の調整がセラミックスに比べて困難である。よって、電気抵抗値の調整という観点から、セラミックスを用いることが好ましい。
【実施例】
【0036】
(実施例1)
上記第1及び第2の発明の実施例にかかるハニカム構造体及びそれを用いた電気加熱式触媒装置(EHC)について、図を用いて説明する。
本例のハニカム構造体1は、図1、図2に示すごとく、セル形成部21とセル形成部21の周囲を覆う円筒形状の外皮部22と有するハニカム体2と、ハニカム体2の外皮部22の外周面221において径方向に対向配置された一対の電極3、4とを備えている。
各電極3、4は、その周方向中央部に電極端子30、40が設けられていると共に、周方向中央部から周方向外側へ行くに従って厚みが小さくなる。
以下、これを詳説する。
【0037】
図1に示すごとく、ハニカム構造体1において、ハニカム体2は、セル形成部21と、セル形成部21の周囲を覆う円筒形状の外皮部22と有し、全体として円柱形状を呈している。また、ハニカム体2は、SiCを主成分とする多孔質セラミックスからなる。また、ハニカム体2の電気抵抗率は、後述する各電極3、4の電気抵抗率よりも大きい。
セル形成部21は、四角形格子状に配された多孔質の隔壁211と、その隔壁211に囲まれて軸方向に伸びる多数のセル212とにより構成されている。
【0038】
図1、図2に示すごとく、ハニカム体2において、外皮部22の外周面221には、一対の電極3、4がハニカム体2を挟持するように径方向に対向して設けられている。
各電極3、4は、それぞれ外皮部22の外周面221に沿って周方向に形成されている。また、各電極3、4は、SiC−Siの複合材を主成分とする導電性セラミックスからなる。
【0039】
図2に示すごとく、プラス側の電極3は、周方向中央部から周方向外側へ行くに従って徐々に厚みが小さくなっている。電極3の厚み(t)は、最も大きいところで2mm、最も小さいところで0.5mmである。また、電極3には、プラス側の電極端子30が設けられている。電極端子30は、電極3の周方向中央部であって軸方向中央部に設けられている。
【0040】
一方、マイナス側の電極4は、プラス側の電極3と同様に、周方向中央部から周方向外側へ行くに従って徐々に厚みが小さくなっている。電極4は、プラス側の電極3と同一の形状、同一の厚みで形成されている。また、電極4には、マイナス側の電極端子40が設けられている。電極端子40は、電極4の周方向中央部であって軸方向中央部に設けられている。
【0041】
図1に示すごとく、ハニカム構造体1において、各電極3、4の電極端子30、40には、外部電源81を備えた通電手段80が接続されている。また、ハニカム体2におけるセル形成部21の隔壁211の表面には、触媒が担持されている。本例では、触媒として貴金属であるPt、Pd、Rh等の三元触媒を用いた。
そして、ハニカム構造体1は、通電手段80によって一対の電極3、4間に通電を行うことにより、ハニカム体2を加熱することができる。これにより、ハニカム構造体1は、電気加熱式触媒装置(EHC)8として用いられる。
【0042】
次に、本例のハニカム構造体1の製造方法について簡単に説明する。
まず、SiCを主成分とする多孔質セラミックスからなるハニカム体2を成形する。また、各電極3、4となるシート状の電極材をそれぞれ所望の形状に成形する。電極材は、SiC−Siの複合材を主成分とする焼成体よりなる。
【0043】
次いで、ハニカム体2の外皮部22の外周面221に、SiC−Siの複合材、カーボン、バインダ等を含有するペースト状の接着剤を介して、それぞれの電極材を配置する。そして、外皮部22の外周面221に電極材を配置したハニカム体2を所定の温度(約1600℃)、所定の雰囲気条件(Ar雰囲気、常圧)で加熱・焼成する。
これにより、ハニカム体2の外皮部22の外周面221に一対の電極3、4を設けたハニカム構造体1が得られる。
【0044】
次に、本例のハニカム構造体1及びそれを用いた電気加熱式触媒装置(EHC)8における作用効果について説明する。
本例のハニカム構造体1において、ハニカム体2は、セル形成部21が円筒形状の外皮部22に覆われて構成されており、軸方向に直交する断面が円形状である。したがって、ハニカム体2の外皮部22の外周面221に沿って設けられた一対の電極3、4は、その一対の電極3、4の対向方向X(図1、図2参照)における電極間の距離が場所によって異なる。具体的には、各電極3、4の周方向の中央部から外側へ行くほど電極間の距離が短くなる。そのため、各電極3、4の周方向の中央部から外側へ行くほど電極間に電流が流れ易い。
【0045】
そこで、電気抵抗値が導体の断面積に反比例することを利用し、各電極3、4の厚みを周方向の中央部から外側へ行くに従って小さくなるように構成している。そして、各電極3、4について、電極間の距離が長い中央部の周方向における単位長さ当たりの電気抵抗値を小さくし、その中央部から外側へ行くに従って、すなわち電極間の距離が短くなるに従って周方向における単位長さ当たりの電気抵抗値が大きくなるように構成している。
【0046】
上記のごとく、各電極3、4の厚みを調整し、電極間の距離に基づいて電気抵抗値を制御することで、ハニカム体2に流れる電流の経路によって一対の電極端子30、40間の電気抵抗値が偏ることを抑制し、ハニカム体2に流れる電流の均一化を図ることができる。これにより、軸方向に直交する断面が円形状のハニカム体2であっても均一に昇温させることができ、ハニカム体2内の温度ばらつきを抑制することができる。また、これによって、ハニカム体2内に生じる熱応力を抑制・緩和することができ、ハニカム体2の割れ等の発生を防止することができる。
【0047】
また、ハニカム体2は、軸方向に直交する断面が円形状であり、全体として円柱形状を呈している。そのため、ハニカム構造体1の取扱いが非常に容易になる。例えば、ハニカム構造体1を車両の排気管内へ収容する作業が容易になる。また、ハニカム構造体1を外周から均一な力で保持した状態で収容することができ、振動や応力等に起因するハニカム構造体1の割れ等の発生を抑制することができる。これにより、ハニカム構造体1の搭載性を十分に確保することができる。
【0048】
また、ハニカム体2の電気抵抗率は、各電極3、4の電気抵抗率よりも大きい。そのため、各電極3、4の全体を電流が良好に流れることになり、ハニカム体2を介して一対の電極3、4間全体において電流が良好に流れるようにすることができる。これにより、ハニカム体2を均一に昇温させるという効果を確実に得ることができる。
【0049】
本例の電気加熱式触媒装置8は、上述したハニカム構造体1を備えている。そのため、通電手段によってハニカム構造体1の一対の電極3、4間に通電を行うことにより、ハニカム体2を均一に昇温させることができる。これにより、ハニカム体2に担持された触媒を全体的に効率よく活性化させることができ、排ガス浄化性能を早期に発揮することができる。
【0050】
このように、本例によれば、搭載性に優れ、ハニカム体2を均一に昇温させることができるハニカム構造体1及びそれを用いた電気加熱式触媒装置8を提供することができる。
【0051】
また、本例では、図1、図2に示すごとく、各電極3、4は、周方向中央部から周方向外側へ行くに従って徐々に厚みが小さくなるように構成したが、例えば、図3に示すごとく、周方向中央部から周方向外側へ行くに従って段階的に厚みが小さくなるように構成することもできる。
【0052】
(実施例2)
本例は、図4に示すごとく、各電極の構成を変更した例である。
本例では、同図に示すごとく、各電極3、4は、その周方向中央部に配置されていると共に電極端子30、40が設けられた基準電極部31、41と、基準電極部31、41の周方向両側にそれぞれ配置された外側電極部32a、32b、42a、42bとからなる。一対の電極3、4における基準電極部31、41同士及び外側電極部32a、42a(32b、42b)同士は、一対の電極3、4の対向方向Xにおいて互いに対となるように配置されている。各電極3(4)において、基準電極部31(41)の厚みは、外側電極部32a、32b(42a、42b)の厚みよりも大きい。
以下、これを詳説する。
【0053】
図4に示すごとく、プラス側の電極3は、その周方向中央部に配置された基準電極部31と、基準電極部31の周方向両側にそれぞれ配置された外側電極部32a、32bとからなる。すなわち、プラス側の電極3は、1つの基準電極部31とその両側の2つの外側電極部32a、32bとにより構成されている。基準電極部31及び外側電極部32a、32bは、SiC−Siの複合材を主成分とする導電性セラミックスからなる。
また、基準電極部31には、プラス側の電極端子30が設けられている。電極端子30は、基準電極部31の周方向中央部であって軸方向中央部に設けられている。
【0054】
一方、マイナス側の電極4は、その周方向中央部に配置された基準電極部41と、基準電極部41の周方向両側にそれぞれ配置された外側電極部42a、42bとからなる。すなわち、マイナス側の電極4は、1つの基準電極部41とその両側の2つの外側電極部42a、42bとにより構成されている。基準電極部41及び外側電極部42a、42bは、SiC−Siの複合材を主成分とする導電性セラミックスからなる。
また、基準電極部41には、マイナス側の電極端子40が設けられている。電極端子40は、基準電極部41の周方向中央部であって軸方向中央部に設けられている。
【0055】
そして、プラス側の電極3の基準電極部31とマイナス側の電極4の基準電極部41とは、一対の電極3、4の対向方向Xにおいて対となるように、すなわち対向方向Xにおいて対称となる位置に設けられている。また、プラス側の電極3の外側電極部32a、32bとマイナス側の電極4の外側電極部42a、42bとは、一対の電極3、4の対向方向Xにおいてそれぞれ対となるように、すなわち対向方向Xにおいてそれぞれ対称となる位置に設けられている。
【0056】
図5に示すごとく、プラス側の電極3において、隣接する基準電極部31と外側電極部32a、32bとは、両者の間に配設された導電性の接着剤51を介して接合されている。接着剤51は、電極3を構成するSiC−Siの複合材、カーボン、バインダ等を含有するペーストである。
また、基準電極部31及び外側電極部32a、32bは、ハニカム体2の外皮部22の外周面221との間に配設された導電性の接着剤51を介して、ハニカム体2の外皮部22の外周面221に接合されている。
また、電極端子30は、基準電極部31との間に配設された導電性の接着剤51を介して、基準電極部31に接合されている。
【0057】
一方、図示を省略したが、プラス側の電極3と同様に、マイナス側の電極4において、隣接する基準電極部41と外側電極部42a、42bとは、両者の間に配設された導電性の接着剤51を介して接合されている。
また、基準電極部41及び外側電極部42a、42bは、ハニカム体2の外皮部22の外周面221との間に配設された導電性の接着剤51を介して、ハニカム体2の外皮部22の外周面221に接合されている。
また、電極端子40は、基準電極部41との間に配設された導電性の接着剤51を介して、基準電極部41に接合されている。
【0058】
図4に示すごとく、プラス側の電極3において、基準電極部31の厚みは、その基準電極部31の周方向両側に隣接する外側電極部32a、32bの厚みよりも大きい。
また、マイナス側の電極4において、基準電極部41の厚みは、その基準電極部41の周方向両側に隣接する外側電極部42a、42bの厚みよりも大きい。
【0059】
また、各電極3、4において、基準電極部31、41は、どちらも同じ厚みであり、その厚み(t1)は2mmである。また、外側電極部32a、32b、42a、42bは、いずれも同じ厚みであり、その厚み(t2)は0.5mmである。
また、ハニカム体2の電気抵抗率は、各電極3、4における基準電極31、41及び外側電極部32a、32b、42a、42bの電気抵抗率よりも大きい。
その他は、実施例1と同様の構成である。
【0060】
本例の場合には、各電極3、4を周方向に分割して構成し、電極間の距離が短くなるにつれて厚みを段階的に小さく、つまり電気抵抗値を段階的に小さくすることにより、一対の電極端子30、40間の電流経路による電気抵抗値の偏りをさらに抑制し、ハニカム体2を均一に昇温させるという効果を十分かつ確実に得ることができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0061】
また、本例では、図4に示すごとく、各電極3、4において、基準電極部31、41の周方向両側にそれぞれ1つずつの外側電極部32a、32b、42a、42bが配置されている構成としたが、例えば、図6に示すごとく、基準電極部31、41の周方向両側にそれぞれ2つ以上の外側電極部32a〜32d、42a〜42dが配置されており、これらの外側電極部32a〜32d、42a〜42dが周方向外側へ行くに従って厚みが小さくなる構成とすることもできる。この場合には、ハニカム体2をより一層均一に昇温させることができる。
【0062】
(実施例3)
本例は、図7、図8に示すごとく、各電極3、4の構成を変更した例である。
本例では、同図に示すごとく、各電極3(4)は、基準電極部31(41)とその基準電極部31(41)の周方向両側に隣接する外側電極部32a、32b(42a、42b)との間に隙間50が設けられている。
【0063】
具体的には、同図に示すごとく、プラス側の電極3において、隣接する基準電極部31と外側電極部32a、32bとは、両者の間に配設された導電性の接着剤51を介して接合されている。ただし、両者の間には、断続的に接着剤51を塗布しない部分が形成されており、その部分に隙間50が設けられている。
【0064】
一方、図示を省略したが、プラス側の電極と同様に、マイナス側の電極4において、隣接する基準電極部41と外側電極部42a、42bとは、両者の間に配設された導電性の接着剤51を介して接合されている。ただし、両者の間には、断続的に接着剤51を塗布しない部分が形成されており、その部分に隙間50が設けられている。
その他は、実施例2と同様の構成である。
【0065】
本例の場合には、例えば、ハニカム構造体1を車両の排気管内へ収容する際に加わる応力、車両の振動、使用時に生じる熱応力等を隙間50によって抑制・緩和することができる。これにより、各電極3、4における割れの発生を防止することができる。
その他、実施例2と同様の作用効果を有する。
【0066】
また、上述の実施例2の図6に示すように、各電極3、4において、基準電極部31、41の周方向両側にそれぞれ複数の外側電極部32a〜32d、42a〜42dが配置されている構成の場合には、さらに外側電極部同士の間(例えば、外側電極32a、32c同士の間)に隙間50を設けることもできる。これにより、各電極3、4における割れの発生をさらに防止することができる。
【0067】
(実施例4)
本例は、図9、図10に示すごとく、各電極3、4の構成を変更した例である。
本例では、同図に示すごとく、各電極3(4)において、外側電極部32a、32b(42a、42b)とハニカム体2との間には、隙間59が設けられている。
【0068】
具体的には、同図に示すごとく、プラス側の電極3において、外側電極部32a、32bは、ハニカム体2の外皮部22の外周面221との間に配設された導電性の接着剤51を介して、ハニカム体2の外皮部22の外周面221に接合されている。そして、両者の間には、接着剤51を塗布しない部分が形成されており、その部分に隙間59が設けられている。
【0069】
一方、図示を省略したが、プラス側の電極3と同様に、マイナス側の電極4において、外側電極部42a、42bは、ハニカム体2の外皮部22の外周面221との間に配設された導電性の接着剤51を介して、ハニカム体2の外皮部22の外周面221に接合されている。そして、両者の間には、接着剤51を塗布しない部分が形成されており、その部分に隙間59が設けられている。
【0070】
この隙間59は、図10に示すごとく、ハニカム体2の軸方向に貫通するように形成されていてもよいが、隙間59が貫通するように形成されていると、隙間59に排ガスが侵入し、排ガス浄化性能の低下を招いたり、電極3、4とハニカム体2との接合強度が低下して剥離したりするおそれが生じる。そのため、例えば、図11に示すごとく、隙間59の軸方向の両端に接着剤51を塗布して蓋をする構成とすることもできる。
その他は、実施例2と同様の構成である。
【0071】
本例の場合には、隙間59を設けることによって電極3、4の外側部分(外側電極部32a、32b、42a、42b等)における電気抵抗値を調整することができる。具体的には、電極3、4の外側部分の電気抵抗値を大きくして外側に電流が流れにくくなるようにすることができる。これにより、ハニカム体2に流れる電流の偏りを抑制する効果を高めることができる。
その他、実施例2と同様の作用効果を有する。
【0072】
(実施例5)
本例は、表1、表2に示すごとく、ハニカム構造体におけるハニカム体の昇温性について調べたものである。
本例では、9種類のハニカム構造体(試験体1〜9)を準備し、そのハニカム体に電流を流して昇温させた場合の温度ばらつきを調べた。
【0073】
まず、ハニカム構造体(試験体1〜9)の構成について説明する。
試験体1、2のハニカム構造体は、一対の電極をハニカム体の外周面に設け、各電極が厚みの同じ基準電極部及びその両側に配置された外側電極部からなるものである。
試験体3〜9のハニカム構造体は、実施例2、4のハニカム構造体(図4、図5、図9、図10参照)と同様の構成である。すなわち、一対の電極をハニカム体の外周面に設け、各電極が厚みの異なる基準電極部及びその両側に配置された外側電極部からなるものである。
【0074】
また、ハニカム構造体を構成するハニカム体としては、導電性を有するSiC材料からなるハニカム体を用いた。
ハニカム体の外径は93mm、長さは100mmである。また、ハニカム体において、セル数は400cpsi、隔壁の厚みは6milである。また、ハニカム体の電気抵抗値は12Ωである。
【0075】
また、ハニカム体の電気抵抗値は、様々な方法で求めることができる。一般的な方法として、電気抵抗値の低いメッシュ状、板状の金属や電気抵抗率に低いAgペースト等を電極とし、その電極間に一定の電流(例えば、1A)を流したときの電圧をマルチメータ等で測定する。そして、測定した電圧から電気抵抗値を求める。
なお、ハニカム体の電気抵抗値は、ハニカム体のサイズや供給する電流等によって調整することができる。
【0076】
また、ハニカム体の中心と各電極の両端とが成す電極角度α(図13参照)は78°に設定した。各電極の基準電極部及び2つの外側電極部は、すべて同じ周方向長さとしており、その周方向長さは21.1mmである。
なお、電極角度αは、大きすぎても小さすぎても好ましくない。電極角度αは、78±10°の範囲であることが好ましい。大きすぎると(88°を超えると)、外側の電極間の距離が短くなるため、外側の電極間に電流が流れ易くなってしまう。また、小さすぎると(68°未満であると)、電極が配置されていない部分(電極よりも外側の部分)に電流が流れず、温度が低くなってしまう。
【0077】
また、一対の電極の対向方向における電極間の距離のうち、最も長い距離L1(図13参照)は、基準電極部の中央の位置であり、その値が93mmである。また、最も短い距離L2(図13参照)は、外側電極部の最も外側の位置であり、その値が72.3mmである。また、(L1−L2)/L1の値は0.22である。
【0078】
次に、ハニカム構造体(試験体1〜9)の製造方法について説明する。
まず、導電性を有するSiC材料からなるハニカム体を成形した。
【0079】
また、各電極における基準電極部及び外側電極部を構成する電極材を作製した。
具体的には、SiC粉末とカーボン(C)粉末とを所定の配合比(62(質量%):38(質量%))で混合し、そこへバインダ、水、潤滑油等を加えて粘土化し、押出成形にて成形した後、乾燥機にて乾燥した。これにより、成形体を得た。成形体は、内径93mm、厚さ5mm、長さ120mmの円筒管形状とした。
【0080】
次いで、この成形体を所定のサイズに加工した後、金属シリコン(Si)粉、水、アルコール溶媒、粘土調整用バインダ等を混合してスラリー状にしたものを成形体の表面に塗布した。塗布量に規定はなく、表面が目視レベルでコートされていることが確認できればよい。その後、アルゴンガス雰囲気にて1700℃、2時間の条件で焼成した。これにより、電極材を作製した。
【0081】
作製した電極材の電気抵抗率は、0.05Ω・cmである。電極材の電気抵抗率は、上述したハニカム体の電気抵抗値と同様の方法で電極材の電気抵抗値を求めた後、電極材の長さ(厚さ)、断面積を求めた。そして、R=ρ×(L/A)(R:電気抵抗値(Ω)、ρ:電気抵抗率(Ω・cm)、L:長さ(cm)、A:断面積(cm2))の関係式から、電気抵抗率を求めた。
【0082】
また、各電極における基準電極部及び外側電極部をハニカム体に接着するためのペースト状の接着剤を作製した。
具体的には、ペースト状の接着剤としては、基本的に接着する電極材と同じ材料を用いた。接着剤には、電極材と同じ配合比のSiC粉末及びカーボン(C)粉末、さらに金属シリコン(Si)粉末、粘度調整用バインダ、水を混合して作製した。
【0083】
なお、金属シリコン粉末(Si)は、SiC+Cを100質量%とした場合に、(15×SiC(質量%)/85)+(C(質量%)×2.34)質量%添加した。また、粘度調整用バインダは、SiC+C+Siを100質量%とした場合に8質量%を添加した。また、水は、SiC+C+Siを100質量%とした場合に、45質量%添加した。また、粘度調整用バインダとしては、メチルセルロースを用いた。
【0084】
そして、ハニカム体の外周面に、接着剤を介して一対の電極を配置した後、アルゴンガス雰囲気にて、1600℃、2時間の条件で焼成した。
なお、試験体1〜9の各電極における基準電極部及び外側電極部の厚みは、表1に示すとおりである。また、試験体7〜9では、実施例4と同様に、外側電極部とハニカム体との間の一部に隙間を設けた(図9、図10参照)。隙間は、それぞれ外側電極部の周方向長さの1/4(試験体7)、2/4(試験体8)、3/4(試験体9)とした。また、隙間の体積は、それぞれ0.3、0.5、0.8cm3である。
【0085】
また、作製した試験体1〜9のハニカム構造体において、接着剤の厚みは、0.5mm程度である。また、試験体5〜9は、外側電極部の厚みが小さいため、焼成した電極材を作製することが困難であるため、ペースト状の電極材を塗布して焼成することにより、外側電極部を形成した。なお、ペースト状の接着剤は、同様に0.5mmの厚みで塗布した。また、電極端子は、直径12mm、長さ15mmである。また、電極端子は、電極材と同様の材料からなる。なお、電極端子及びその電極端子を設ける基準電極部は、ともに電気抵抗率が低い電極材を用いている。これは、電極端子間がスポット的に発熱することを防止するためである。
【0086】
【表1】
【0087】
次に、ハニカム構造体(試験体1〜9)の評価方法について説明する。
まず、電極端子間に1Aの電流を流し、電極間の距離が最も長いL1となる場所における電極間の電気抵抗値R1、電極間の距離が最も短いL2となる場所における電極間の電気抵抗値R2をマルチメータで測定した(図13参照)。そして、(R1−R2)/R1の値を求めた。さらに、A=((L1−L2)/L1)/((R1−R2)/R1)の関係式で示されるA値を求めた。なお、(L1−L2)/L1の値は、上述したとおり0.22である。
【0088】
次いで、ハニカム構造体の電極端子間に2KWの一定電力を投入し、60秒後の各部位の温度を測定した。温度測定箇所Tは、図12に示すごとく、全部で17箇所である。温度測定方法は、熱電対を挿入して測定する方法やサーモビュアによって測定する方法等、様々な方法で測定することができる。本例では、サーモビュアによって測定した。
そして、測定した17箇所の温度のうち、最も高い温度と最も低い温度との差を温度差ΔTとして求め、均一に発熱しているかどうかを評価した。
【0089】
【表2】
【0090】
次に、評価結果を表2に示す。
同表から、電極を同じ厚みの基準電極部及び外側電極部で構成したハニカム構造体である試験体1、2は、A値が13.6、17.1であり、温度差ΔTが225℃、234℃であった。
一方、電極を基準電極部及び外側電極部で構成し、基準電極部の厚みを外側電極部の厚みよりも大きくしたハニカム構造体である試験体3〜9は、A値が0.1〜10の範囲となり、温度差ΔTが200℃以下となった。特に、試験体6〜9は、A値が0.8〜1.2であり、温度差ΔTが100℃以下と非常に良好な結果となった。なお、A値が1よりも小さくなると、外側電極部の外側における電気抵抗値が高くなり、電流が流れ難くなるため、温度差ΔTが大きくなる。
【0091】
また、同表から、試験体7〜9は、外側電極部とハニカム体との間に隙間を設けたことにより、隙間を設けていない試験体6に比べてA値が1に近づき、温度差ΔTが同等又は小さくなった。
【0092】
以上の結果から、各電極の厚みを調整し、電極間の距離に基づいて電気抵抗値を制御することで、ハニカム体に流れる電流の経路によって一対の電極端子間の電気抵抗値が偏ることを抑制し、ハニカム体に流れる電流の均一化を図ることができることがわかった。
【符号の説明】
【0093】
1 ハニカム構造体
2 ハニカム体
21 セル形成部
22 外皮部
221 外周面(外皮部の外周面)
3、4 電極
30、40 電極端子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セル形成部と該セル形成部の周囲を覆う円筒形状の外皮部と有するハニカム体と、該ハニカム体の上記外皮部の外周面において径方向に対向配置された一対の電極とを備えたハニカム構造体であって、
上記各電極は、その周方向中央部に電極端子が設けられていると共に、該周方向中央部から周方向外側へ行くに従って厚みが小さくなることを特徴とするハニカム構造体。
【請求項2】
請求項1に記載のハニカム構造体において、上記各電極は、その周方向中央部に配置されていると共に上記電極端子が設けられた基準電極部と、該基準電極部の周方向両側にそれぞれ1又は複数配置された外側電極部とからなり、上記一対の電極における上記基準電極部同士及び上記外側電極部同士は、上記一対の電極の対向方向において互いに対となるように配置されており、上記各電極において、上記基準電極部の厚みが上記外側電極部の厚みよりも大きいことを特徴とするハニカム構造体。
【請求項3】
請求項2に記載のハニカム構造体において、上記各電極は、上記基準電極部の周方向両側にそれぞれ複数の上記外側電極部が配置されており、該複数の外側電極部は、周方向外側へ行くに従って厚みが小さくなることを特徴とするハニカム構造体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のハニカム構造体において、上記一対の電極の上記対向方向における電極間の距離のうち、最も長い距離をL1、最も短い距離をL2とし、電極間の距離がL1となる場所における電極間の電気抵抗値をR1、電極間の距離がL2となる場所における電極間の電気抵抗値をR2とした場合、A=((L1−L2)/L1)/((R1−R2)/R1)の関係式で示されるA値が0.1〜10であることを特徴とするハニカム構造体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のハニカム構造体において、上記A値が0.8〜1.2であることを特徴とするハニカム構造体。
【請求項6】
請求項2〜5のいずれか1項に記載のハニカム構造体において、上記各電極は、上記基準電極部と該基準電極部の周方向両側に隣接する上記外側電極部との間に隙間が設けられていることを特徴とするハニカム構造体。
【請求項7】
請求項2〜6のいずれか1項に記載のハニカム構造体において、上記外側電極部と上記ハニカム体との間には、隙間が設けられていることを特徴とするハニカム構造体。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のハニカム構造体と、該ハニカム構造体の上記ハニカム体に担持された触媒と、上記ハニカム構造体の上記一対の電極間に通電を行う通電手段とを備えた電気加熱式触媒装置。
【請求項1】
セル形成部と該セル形成部の周囲を覆う円筒形状の外皮部と有するハニカム体と、該ハニカム体の上記外皮部の外周面において径方向に対向配置された一対の電極とを備えたハニカム構造体であって、
上記各電極は、その周方向中央部に電極端子が設けられていると共に、該周方向中央部から周方向外側へ行くに従って厚みが小さくなることを特徴とするハニカム構造体。
【請求項2】
請求項1に記載のハニカム構造体において、上記各電極は、その周方向中央部に配置されていると共に上記電極端子が設けられた基準電極部と、該基準電極部の周方向両側にそれぞれ1又は複数配置された外側電極部とからなり、上記一対の電極における上記基準電極部同士及び上記外側電極部同士は、上記一対の電極の対向方向において互いに対となるように配置されており、上記各電極において、上記基準電極部の厚みが上記外側電極部の厚みよりも大きいことを特徴とするハニカム構造体。
【請求項3】
請求項2に記載のハニカム構造体において、上記各電極は、上記基準電極部の周方向両側にそれぞれ複数の上記外側電極部が配置されており、該複数の外側電極部は、周方向外側へ行くに従って厚みが小さくなることを特徴とするハニカム構造体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のハニカム構造体において、上記一対の電極の上記対向方向における電極間の距離のうち、最も長い距離をL1、最も短い距離をL2とし、電極間の距離がL1となる場所における電極間の電気抵抗値をR1、電極間の距離がL2となる場所における電極間の電気抵抗値をR2とした場合、A=((L1−L2)/L1)/((R1−R2)/R1)の関係式で示されるA値が0.1〜10であることを特徴とするハニカム構造体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のハニカム構造体において、上記A値が0.8〜1.2であることを特徴とするハニカム構造体。
【請求項6】
請求項2〜5のいずれか1項に記載のハニカム構造体において、上記各電極は、上記基準電極部と該基準電極部の周方向両側に隣接する上記外側電極部との間に隙間が設けられていることを特徴とするハニカム構造体。
【請求項7】
請求項2〜6のいずれか1項に記載のハニカム構造体において、上記外側電極部と上記ハニカム体との間には、隙間が設けられていることを特徴とするハニカム構造体。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のハニカム構造体と、該ハニカム構造体の上記ハニカム体に担持された触媒と、上記ハニカム構造体の上記一対の電極間に通電を行う通電手段とを備えた電気加熱式触媒装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−92821(P2012−92821A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120958(P2011−120958)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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