説明

ハニカム構造体

【課題】 セルを封止するための封止材ペーストの充填が容易であり、製造効率の良く、かつ、PM燃焼効率の良好なハニカム構造体を提供すること。
【解決手段】 多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設されたハニカム焼成体を含むハニカムブロックからなるハニカム構造体であって、セルは、ハニカム焼成体の外周壁に接する外周セルと、外周セルより内側に位置し、かつ、基本形成パターンに基づいて形成された基本セルとからなり、外周セルは、基本セルのセル断面積より大きいセル断面積を有する異形セルを含むことを特徴とするハニカム構造体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
バス、トラック等の車両や建設機械等の内燃機関から排出される排ガス中に含有されるスス等のパティキュレート(以下、PMともいう)やその他の有害成分が環境及び人体に害を及ぼすことが最近問題となっている。そこで、排ガス中のPMを捕集して排ガスを浄化するハニカムフィルタとして、また、その内部に排ガスを通過させることにより排ガス中の有害成分を浄化する触媒担体として、多孔質セラミックからなるハニカム構造体が種々提案されている。
【0003】
このようなハニカム構造体として、従来、多数のセルを有するハニカム焼成体が複数個組み合わさったハニカムブロックからなるハニカム構造体が知られている。従来のハニカム構造体を製造する際に用いられるハニカム焼成体のうち、ハニカム構造体の最外周に位置するハニカム焼成体の例を、図10(a)及び(b)に模式的に示す(特許文献1)。図10(a)及び(b)に示すハニカム焼成体1410、1420では、ハニカムブロックの外周面を構成する曲面に最も近いセル1411、1421の形状は、それらより内側のセルの形状から変形された形状である略三角形状又は略台形状となっており、セル1411、1421の一辺が上記曲面に沿って形成されている。
【0004】
ハニカム焼成体を用いて製造したハニカム構造体を排ガス浄化フィルタとして使用するためには、ハニカム焼成体のセルのいずれか一方を封止材によって封止する必要がある。ハニカム焼成体1410、1420の最外周部に位置するセル1411、1421を封止する際には、セルの開口面積が小さいことから、封止材ペーストをセルに充填しにくかったり、封止材のセルからの漏れやはみ出しが生じやすかったりし、これによりセルの封止が不充分となる。
【0005】
そして、セルの封止が不充分であるハニカム焼成体を用いて製造したハニカム構造体を排ガス浄化フィルタとして使用すると、ハニカム構造体に流入した排ガスがセル壁を通過せずに同一のセルから流出してしまいフィルタとしての機能を果たさないという問題がある。
【0006】
他方、ハニカム焼成体のセルにおいて、最外周部に位置するセルと最外周部以外に位置するセルの形状を同一とし、封止材ペーストのセルへの充填を容易にしたハニカム構造体が提案されている(特許文献2)。図11(a)及び(b)に、最外周部に位置するセルと最外周部以外に位置するセルの形状を同一とした従来のハニカム焼成体の例をそれぞれ示す。ハニカム焼成体1110、1120のセル1111、1121のその長手方向に垂直な断面形状は全て実質的に正方形状であり、セル1111、1121が等間隔に並ぶようにセル1111、1121の位置が設計されている。そして、最外周部に位置するセルと最外周部以外に位置するセルの形状を同一にするために、外周壁1116、1126には最外周に位置するセル1111、1121の位置に対応した段差が設けられている。
【0007】
このような従来のハニカム構造体によると、従来では開口面積が小さくなって封止材ペーストのセルへの充填が困難であった最外周部のセルも、最外周部のセル以外のセルの開口面積と同じ開口面積を有するので、封止材ペーストのセルへの充填が容易となり、ハニカム構造体の製造効率もある程度向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−154718号公報
【特許文献2】国際公開第2008/126335号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここで、ハニカム構造体の排ガスの漏れの防止や外観を整えることを目的として、ハニカムブロックの外周にコート層を形成することがある。コート層の形成の際には、コ−ト材ペーストをハニカムブロックの外周に塗布し、塗布したコ−ト材ペーストを均して全体的に均一な厚さとした後に、コ−ト材ペーストを乾燥、固化させるという手順を経る。
【0010】
特許文献2に記載された従来のハニカム構造体においても上記手順に則ってコート層を形成することができるものの、ハニカム焼成体の外周壁には段差が設けられていることから、段差を埋めるのに必要な分だけコ−ト材ペーストの使用量が増加することになる。また、ハニカム焼成体の外周壁の段差に沿って隙間なくコ−ト材ペーストを塗布するために、注意深くコ−ト材ペーストを塗布する必要があり、これにより製造効率の低下を招く。
【0011】
さらに、特許文献2に記載の従来のハニカム構造体では、端面方向から見たときには、ハニカム焼成体の外周壁に段差がない場合の従来のハニカム構造体と比較して、ハニカム焼成体の外周壁に段差を設けている分だけハニカム構造体の外周壁の長さ(又は量)が増加する。ハニカム焼成体の外周壁の増加量に応じてハニカム焼成体を構成するのに必要な原料も増加するので、ハニカム焼成体の外周壁に段差のないハニカム焼成体を用いたハニカム構造体の場合よりも不経済となる。
【0012】
加えて、ハニカム焼成体の重量の増加はハニカム構造体全体の重量の増加につながる。ハニカム構造体の重量が増加すると熱容量が上昇し、PM燃焼時においてハニカム構造体の温度が上昇しにくくなってPMの燃焼効率が低下する。
また、特許文献2に記載の従来のハニカム構造体は、ハニカム焼成体のセルの数が少なくなるので、フィルタとして機能するろ過面積が減少する。
【0013】
本発明は、これらの問題を解決するためになされたものであり、セルを封止するための封止材ペーストのセルへの充填が容易であり、製造効率の良く、ろ過面積が減少せず、かつ、PM燃焼効率の良好なハニカム構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために請求項1に記載のハニカム構造体は、多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設されたハニカム焼成体を含むハニカムブロックからなるハニカム構造体であって、上記セルは、上記ハニカム焼成体の外周壁に接する外周セルと、上記外周セルより内側に位置する基本セルとからなり、上記外周セルは、上記基本セルのセル断面積より大きいセル断面積を有する異形セルを含むことを特徴とする。
【0015】
請求項1に記載の発明によると、外周セルは、基本セルのセル断面積より大きいセル断面積を有する異形セルを含む。従来のハニカム構造体であれば、より内側のセルの断面形状から変形してしまったセル断面積が小さいセル(以下、変形セルともいう)は、ハニカム構造体の製造工程で残存し、セルの封止工程の効率を低下させていた。しかし、本発明のハニカム構造体は、変形セルが形成されることが予想される場合に、変形セルと基本セルとを隔てるセル壁を取り除くことで異形セルとすることができる。これにより、ハニカム構造体の外周セルのセル断面積を広げることができ、封止材ペーストのセルへの充填も容易に行うことができる。
【0016】
また、ハニカム構造体の外周壁に接する変形セルが存在しないようにするためにハニカム焼成体の外周壁に段差を設けた特許文献2の従来のハニカム構造体の場合とは異なり、ハニカム焼成体の外周壁には何ら処理を施すことなく、異形セルを設けることによりセル断面積を増加させていることから、ハニカム焼成体からなるハニカムブロックの外周に効率良くコート層を形成することができる。
【0017】
このように異形セルを設けることでハニカム構造体全体としての開口率を増加させることができるので、PM捕集時のハニカム構造体の圧力損失の増大を抑制することができる。
また、基本セルのセル断面積より小さなセル断面積を有するセルをなくすために段差を設けると、ろ過面積が減少することになるが、本発明では基本セルのセル断面積より大きいセル断面積を有するセルとしているため、ろ過面積は減少しない。
なお、本明細書において開口率とは、ハニカム構造体の端面の外周により規定される当該端面の面積(A)に対する当該断面において開口したセルのセル断面積の合計(B)の比(B/A)のことをいう。
【0018】
加えて、変形セルが形成されて外周セルのセル断面積が小さくなってしまうと予想される場合は、変形セルと基本セルとを隔てていたセル壁を取り除くことにより異形セルを設けてやればよい。これにより、外周セルのセル断面積を充分に確保することができるとともに、両者を隔てるセル壁を構成するのに必要であった原料分だけハニカム構造体の製造に必要な原料を削減することができ、低コスト化を図ることができる。さらに、両者を隔てるセル壁を取り除いた分だけハニカム構造体の重量が減少する。ハニカム構造体の重量の減少は熱容量の減少をもたらすことから、PM燃焼時にハニカム構造体の温度も上昇しやすくなり、ハニカム構造体のPMの燃焼効率を向上させることができる。
【0019】
ところで、従来のハニカム構造体を排ガス流路に設置した場合、一般的に排ガスはハニカム構造体の外周部より中央部を流れようとする傾向にあり、ハニカム構造体の中央部にPMがたまりやすくなる。そのため、ハニカム構造体へのPMの蓄積の度合いが外周部と中央部とで異なることがある。しかし、本発明のハニカム構造体によると、異形セルを設けることにより、特に外周部でのセル断面積を高めることができるので、排ガスはハニカム構造体の外周部に流れ込みやすくなり、ハニカム構造体の外周部にPMがたまりやすくなる。そのため、ハニカム構造体の外周部と中央部とのPMの蓄積の度合いを従来のハニカム構造体に比して平均化(均一化)することができる。
【0020】
請求項2に記載のハニカム構造体では、上記ハニカムブロックは、一のハニカム焼成体からなる。
【0021】
請求項3に記載のハニカム構造体では、ハニカムブロックは、複数のハニカム焼成体が接着剤層を介して結束されてなり、少なくとも1つの上記ハニカム焼成体において、上記外周セルは、上記基本セルのセル断面積より大きいセル断面積を有する異形セルを含む。
本発明のハニカム構造体としては、請求項2に記載のハニカム構造体のように、ハニカムブロックが一のハニカム焼成体により構成されていてもよく(以下、一のハニカム焼成体からなるハニカム構造体を一体型ハニカム構造体ともいう)、上記の請求項3に記載のハニカム構造体のように、ハニカムブロックが接着剤層を介して複数結束されたハニカム焼成体により構成されていてもよい(以下、複数のハニカム焼成体からなるハニカム構造体を集合型ハニカム構造体ともいう)。
【0022】
請求項4に記載のハニカム構造体では、上記異形セルは、上記ハニカム焼成体の外周壁のうち、上記ハニカムブロックの外周を構成する外周壁に接する位置に形成されている。特にハニカムブロックが曲面状の外周面を有する場合、変形セルは、ハニカムブロックの曲線状の外周を構成する外周壁に接する位置に存在する場合が多くなる。そのような場合であっても、変形セルと基本セルとを隔てるセル壁を取り除いて異形セルを設けることで外周セルの開口面積を増加させることができ、封止材ペーストの外周セルへの充填を容易に行うことができる。
【0023】
請求項5に記載のハニカム構造体によると、上記異形セルは、上記ハニカム焼成体の外周壁のうち、上記接着剤層に対向する外周壁に接する位置に形成されている。本発明の異形セルが、接着剤層に対向する外周壁に接する位置に設けられていることにより、ハニカム構造体の開口率が高くなり、PM蓄積時のハニカム構造体の圧力損失の増大を抑制することができる。
【0024】
ここで、複数のハニカム焼成体からなるハニカムブロックでは、ハニカム焼成体間に接着剤層が存在することから、ハニカム構造体の寸法(直径)を一定とした場合には、接着剤層の分だけ開口率が低下することになる。しかし、異形セルを、上記接着剤層に対向する外周壁に接する位置に設けることで、ハニカム構造体の開口率を高めることができるので、接着剤層の分だけ減少した開口率を補うことができる。
【0025】
請求項6に記載のハニカム構造体では、上記基本セルは、第1の基本形成パターンを有する第1基本セルと第2の基本形成パターンを有する第2基本セルとからなり、上記第1基本セルのセル断面積は上記第2基本セルのセル断面積より大きい。第1基本セルを排ガスの流入側セルとすることにより、ハニカム構造体の排ガス流入側の開口率を排ガス流出側と比べて大きくすることができ、PMが蓄積したときのハニカム構造体の圧力損失の上昇幅を低減させることができる。
【0026】
請求項7に記載のハニカム構造体によると、上記異形セルは、上記第1基本セルのセル断面積より大きいセル断面積を有し、かつ、上記第2基本セルと隣接する。ハニカム構造体が第1基本セルと第2基本セルとを基本セルとして有する場合は、異形セルは、第1基本セル及び第2基本セルのいずれとも隣接する場合が生じる。しかし、主に流出側セルとして用いられる第2基本セルに隣接するように異形セルを設け、この異形セルを流入側セルとして用いることによりハニカム構造体の開口率をより大きくすることができ、その結果、PM蓄積時のハニカム構造体の圧力損失の上昇幅を低減させることができる。
【0027】
請求項8に記載のハニカム構造体のように、上記異形セルは、上記第2基本セルのセル断面積より大きいセル断面積を有し、かつ、上記第1基本セルと隣接していてもよい。このような異形セルであっても、第2基本セルのセル断面積より大きいセル断面積を有しているので、封止材ペーストの充填を容易に行うことができる。なお、この場合の異形セルは、通常、排ガスの流出側セルとなるが、排ガスの流入側セルとして使用してもよい。
【0028】
請求項9に記載のハニカム構造体では、上記基本セル及び上記外周セルのそれぞれの一方の端部は交互に封止されている。セルのいずれか一方の端部が交互に封止されているので、ハニカム構造体をフィルタとして好適に使用することができる。
【0029】
請求項10に記載のハニカム構造体では、上記ハニカムブロックは、上記ハニカムブロックの外周を構成する外方ハニカム焼成体と、上記外周ハニカム焼成体より内側に位置する内方ハニカム焼成体とが接着材層を介して結束されてなり、少なくとも1つの上記外方ハニカム焼成体において、上記セルは、上記外方ハニカム焼成体の外周壁に接する外方外周セルと、上記外方外周セルより内側に位置し、かつ、基本形成パターンに基づいて形成された外方基本セルとからなり、上記外方外周セルは、上記外方基本セルのセル断面積より大きいセル断面積を有する外方異形セルを含む。
【0030】
請求項10に記載のハニカム構造体では、少なくとも1つの外方ハニカム焼成体が、外方異形セルを有することから、封止材ペーストのセルへの充填及びハニカムブロックの外周部のコート層形成の容易性やPM蓄積時のハニカム構造体の圧力損失上昇の抑制、ハニカム構造体のPMの燃焼効率の向上、ハニカム構造体の外周部及び中央部におけるPMの蓄積の平均化の作用効果を奏することができる。
【0031】
請求項11に記載のハニカム構造体によると、上記外方異形セルは、上記外方ハニカム焼成体の外周壁のうち、上記ハニカムブロックの外周を構成する外周壁に接する位置に形成されている。特にハニカムブロックが曲面状の外周面を有する場合、変形セルは、ハニカムブロックの曲線状の外周を構成する外周壁に接する位置に存在する場合が多くなる。そのような場合であっても、変形セルと外方基本セルとを隔てるセル壁を取り除いて外方異形セルを設けることで外方外周セルの開口面積を増加させることができ、封止材ペーストの外方外周セルへの充填を容易に行うことができる。
【0032】
請求項12に記載のハニカム構造体では、上記外方異形セルは、上記外方ハニカム焼成体の外周壁のうち、上記接着剤層に対向する外周壁に接する位置に形成されている。本発明の外方異形セルが、接着剤層に対向する外周壁に接する位置に設けられていることにより、ハニカム構造体の開口率が高くなり、PM蓄積時のハニカム構造体の圧力損失の上昇を抑制することができる。
【0033】
請求項13に記載のハニカム構造体によると、上記外方基本セルは、第1の基本形成パターンを有する第1外方基本セルと第2の基本形成パターンを有する第2外方基本セルとからなり、上記第1外方基本セルのセル断面積は上記第2外方基本セルのセル断面積より大きくなっている。第1外方基本セルを排ガスの流入側セルとすることにより、ハニカム構造体の排ガス流入側の開口率を排ガス流出側と比べて大きくすることができ、PMが蓄積したときのハニカム構造体の圧力損失の上昇幅を低減させることができる。
【0034】
請求項14に記載のハニカム構造体では、上記外方異形セルは、上記第1外方基本セルのセル断面積より大きいセル断面積を有し、かつ、上記第2外方基本セルと隣接している。ハニカム構造体が第1外方基本セルと第2外方基本セルとを基本セルとして有する場合は、外方異形セルは、第1外方基本セル及び第2外方基本セルのいずれとも隣接する場合が生じる。しかし、主に排ガスの流出側セルとして用いられる第2外方基本セルに隣接するように異形セルを設け、この外方異形セルを排ガスの流入側セルとして用いることによりハニカム構造体の開口率をより大きくすることができ、その結果、PM蓄積時のハニカム構造体の圧力損失の上昇幅を低減させることができる。
【0035】
請求項15に記載のハニカム構造体のように、上記外方異形セルは、上記第2外方基本セルのセル断面積より大きいセル断面積を有し、かつ、上記第1外方基本セルと隣接していてもよい。このような異形セルであっても、第2外方基本セルのセル断面積より大きいセル断面積を有しているので、封止材ペーストのセルへの充填を容易に行うことができる。なお、この場合の外方異形セルは、通常、排ガスの流出側セルとなるが、排ガスの流入側セルとして使用してもよい。
【0036】
請求項16に記載のハニカム構造体によると、少なくとも1つの上記内方ハニカム焼成体において、上記セルは、上記内方ハニカム焼成体の外周壁に接する内方外周セルと、上記内方外周セルより内側に位置し、かつ、基本形成パターンに基づいて形成された内方基本セルとからなり、上記内方外周セルは、上記内方基本セルのセル断面積より大きいセル断面積を有する内方異形セルを含む。
外方ハニカム焼成体及び内方ハニカム焼成体のそれぞれの外周セルに外方異形セル及び内方異形セルが存在することから、一方のハニカム焼成体にのみ異形セルが存在する場合よりハニカム構造体の開口率を高めることができ、PM捕集時のハニカム構造体の圧力損失の上昇をより効率的に抑制することができる。さらに、変形セルと基本セルとを隔てるセル壁を取り除いた分だけハニカム構造体の重量が減少するところ、外方ハニカム焼成体においてだけでなく内方ハニカム焼成体においてもセル壁を取り除いているので、ハニカム構造体の重量をより減少させることができる。これにより、ハニカム構造体の熱容量のさらなる減少につながり、PM燃焼時にハニカム構造体の温度も上昇しやすくなることから、ハニカム構造体のPMの燃焼効率を向上させることができる。
【0037】
請求項17に記載のハニカム構造体は、上記ハニカムブロックは、上記ハニカムブロックの外周を構成する外方ハニカム焼成体と、上記外周ハニカム焼成体より内側に位置する内方ハニカム焼成体とが接着材層を介して結束されてなり、少なくとも1つの上記内方ハニカム焼成体において、上記セルは、上記内方ハニカム焼成体の外周壁に接する内方外周セルと、上記内方外周セルより内側に位置し、かつ、基本形成パターンに基づいて形成された内方基本セルとからなり、上記内方外周セルは、上記内方基本セルのセル断面積より大きいセル断面積を有する内方異形セルを含む。
【0038】
請求項17に記載のハニカム構造体のように、内方ハニカム焼成体に内方異形セルが存在していると、ハニカム構造体の開口率は向上するので、PM捕集時のハニカム構造体の圧力損失増大の傾向を抑制することができる。また、内方ハニカム焼成体であっても、例えば、ハニカム焼成体の長手方向に垂直な断面の形状の一部が曲線により形成されたり、三角形や台形等の形状をとる場合等、形状によっては変形セルが生じることがある。そうした場合には、変形セルと内方基本セルとを隔てるセル壁を取り除くことにより、好適に内方異形セルを設けることができ、封止材ペーストの充填を容易にすることができる。さらに、取り除いたセル壁の分だけハニカム構造体の重量が減少することから、ハニカム構造体の熱容量を低下させることができる。そうすると、PM燃焼時にはハニカム構造体の温度が容易に上昇することになるから、ハニカム構造体のPMの燃焼効率を向上させることができる。
【0039】
請求項18に記載のハニカム構造体では、上記内方基本セルは、第1の基本形成パターンを有する第1内方基本セルと第2の基本形成パターンを有する第2内方基本セルとからなり、上記第1内方基本セルのセル断面積は上記第2内方基本セルのセル断面積より大きくなっている。第1内方基本セルを排ガスの流入側セルとすることにより、排ガス流入側のハニカム構造体の開口率を排ガス流出側と比べて大きくすることができ、PMが蓄積したときのハニカム構造体の圧力損失の上昇幅を低減させることができる。
【0040】
請求項19に記載のハニカム構造体によると、上記内方異形セルは、上記第1内方基本セルのセル断面積より大きいセル断面積を有し、かつ、上記第2内方基本セルと隣接している。ハニカム構造体が第1内方基本セルと第2内方基本セルとを基本セルとして有する場合は、内方異形セルは、第1内方基本セル及び第2内方基本セルのいずれとも隣接する場合が生じる。しかし、主に排ガスの流出側セルとして用いられる第2内方基本セルに隣接するように内方異形セルを設け、この内方異形セルを排ガスの流入側セルとして用いることによりハニカム構造体の開口率をより大きくすることができ、その結果、PM蓄積時のハニカム構造体の圧力損失の上昇幅を低減させることができる。
【0041】
請求項20に記載のハニカム構造体のように、上記内方異形セルは、上記第2内方基本セルのセル断面積より大きいセル断面積を有し、かつ、上記第1内方基本セルと隣接していてもよい。このような内方異形セルであっても、第2内方基本セルのセル断面積より大きいセル断面積を有しているので、封止材ペーストのセルへの充填を容易に行うことができる。なお、この場合の内方異形セルは、通常、排ガスの流出側セルとなるが、排ガスの流入側セルとして使用してもよい。
【0042】
請求項21に記載のハニカム構造体のように、少なくとも1つの上記外方ハニカム焼成体において、上記セルは、上記外方ハニカム焼成体の外周壁に接する外方外周セルと、上記外方外周セルより内側に位置し、かつ、基本形成パターンに基づいて形成された外方基本セルとからなり、上記外方外周セルは、上記外方基本セルのセル断面積より大きいセル断面積を有する外方異形セルを含んでいてもよい。この場合、外方ハニカム焼成体及び内方ハニカム焼成体のそれぞれの外周セルに外方異形セル及び内方異形セルが存在することから、一方のハニカム焼成体にのみ異形セルが存在する場合よりハニカム構造体の開口率を高めることができ、PM捕集時のハニカム構造体の圧力損失の上昇をより効率的に抑制することができる。さらに、変形セルと基本セルとを隔てるセル壁を取り除いた分だけハニカム構造体の重量が減少するところ、内方ハニカム焼成体においてだけでなく外方ハニカム焼成体においてもセル壁を取り除いているので、ハニカム構造体の重量をより減少させることができる。これにより、ハニカム構造体の熱容量のさらなる減少につながり、PM燃焼時にハニカム構造体の温度も上昇しやすくなることから、ハニカム構造体のPMの燃焼効率を向上させることができる。
【0043】
請求項22に記載のハニカム構造体では、上記外方ハニカム焼成体及び上記内方ハニカム焼成体のセルのそれぞれの一方の端部は交互に封止されている。セルのいずれか一方の端部が交互に封止されているので、ハニカム構造体をフィルタとして好適に使用することができる。
【0044】
なお、本明細書において、外方ハニカム焼成体及び内方ハニカム焼成体にそれぞれ存在し得る外方異形セル及び内方異形セル、外方外周セル及び内方外周セル、並びに、外方基本セル及び内方基本セルを互いに区別する必要がない場合は、単に異形セル、外周セル及び基本セルということがある。さらに、異形セル、外周セル及び基本セルの区別を要しない場合は、単にセルということもある。
【0045】
上記ハニカム構造体において、基本セルとは、ハニカム焼成体を構成するセルを長手方向に垂直な断面で観察した際、1種類の形状のセル、又は、複数個の異なる形状の組み合わせからなるセルが、上下左右に一定の繰り返しで形成されている最小単位のセルをいう。例えば、図3に示すハニカム焼成体120では、ハニカム焼成体の長手方向に垂直な断面において、正方形の図形が繰り返されているとき、正方形のセルを基本セルという。これらのセルは、上述のように、例えば、セル断面積の異なる2種類のセルを組み合わせて最小単位としたときの繰り返しであってよく、この場合、セル断面積の異なる2種類のセルの両方を合わせて基本セルという。ただし、便宜的に上記2種類のセルのうち、一方のセルを基本セルという場合もある。明細書中に記載の基本形成パターンとは、上記基本セルの形状をいう。
【0046】
異形セルとは、ハニカムブロックを構成するハニカム焼成体の外周壁に接する外周セルの1種であって、上記ハニカム焼成体を構成するセルを長手方向に垂直な断面で観察した際、上記基本セルのセル断面積より大きいセル断面積を有するセルをいう。基本セルが1種類の形状のセルである場合には、上記基本セルよりも大きい面積を有するセルを異形セルという。また、基本セルがセル断面積の異なる2種類以上のセルを組み合わせたパターンの繰り返しとなっているハニカム焼成体においては、例えば、相対的にセル断面積の大きい形状のセルよりも大きいセル断面積を有するセル、又は、相対的にセル断面積の小さい形状のセルより大きい断面積を有するセルを異形セルという。異形セルは、例えば、変形セルと該変形セルに隣接する基本セルとを隔てるセル壁や変形セルと該変形セルに隣接する他の変形セルとを隔てるセル壁を取り除くことにより形成することができる。
変形セルとは、セルのうちで異形セルを除く、基本セルよりも断面積の小さい断面積を有するセルのことをいう。また、「断面積」はハニカム焼成体の長手方向に垂直な断面の面積をいうこととする。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の第一実施形態のハニカム構造体を模式的に示す斜視図である。
【図2】(a)は、本発明の第一実施形態のハニカム構造体における内方ハニカム焼成体を模式的に示した斜視図であり、(b)は、(a)に示す内方ハニカム焼成体のB−B線断面図である。
【図3】(a)は、本発明の第一実施形態のハニカム構造体における外方ハニカム焼成体を模式的に示す斜視図であり、(b)は、(a)に示す外方ハニカム焼成体の部分拡大図である。
【図4】図1のA−A線断面図である。
【図5】圧力損失測定装置の概要図である。
【図6】本発明の第二実施形態のハニカム構造体を模式的に示す斜視図である。
【図7】(a)は、本発明の第三実施形態のハニカム構造体を模式的に示す斜視図であり、(b)は、(a)に示すハニカム構造体を構成するハニカム焼成体を模式的に示した斜視図である。
【図8】本発明の第四実施形態のハニカム構造体を模式的に示す斜視図である。
【図9】(a)は、本発明の第五実施形態のハニカム構造体を模式的に示す斜視図であり、(b)は、(a)に示すハニカム構造体を構成するハニカム焼成体を模式的に示した斜視図である。
【図10】(a)は、従来のハニカム構造体を製造する際に用いられるハニカム焼成体のうち、従来のハニカム構造体の最外周に位置するハニカム焼成体の一例を示す斜視図であり、(b)は、従来のハニカム構造体の最外周に位置するハニカム焼成体の別の一例を示す斜視図である。
【図11】(a)は、従来のハニカム構造体の最外周部に位置するセルと最外周部以外に位置するセルの形状を同一としたハニカム焼成体の一例を示す正面図であり、(b)は、従来のハニカム構造体の最外周部に位置するセルと最外周部以外に位置するセルの形状を同一としたハニカム焼成体の別の一例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
(第一実施形態)
以下、本発明のハニカム構造体の第一実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0049】
本実施形態のハニカム構造体は、多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設されたハニカム焼成体を含むハニカムブロックからなるハニカム構造体であって、上記ハニカム焼成体は、上記ハニカムブロックの外周を構成する外方ハニカム焼成体と、上記外周ハニカム焼成体より内側に位置する内方ハニカム焼成体とからなり、少なくとも1つの上記外方ハニカム焼成体において、上記セルは、上記外方ハニカム焼成体の外周壁に接する外方外周セルと、上記外方外周セルより内側に位置し、かつ、基本形成パターンに基づいて形成された外方基本セルとからなり、上記外方外周セルは、上記外方基本セルのセル断面積より大きいセル断面積を有する外方異形セルを含むことを特徴とする。
【0050】
上記ハニカム構造体において、少なくとも1つの上記外方ハニカム焼成体において、上記セルは、外方異形セルを含むが、全ての外方ハニカム焼成体のセルが上記した外方異形セルを含むことが望ましい。本発明の効果をより確実に発揮することが出来るからである。
また、上記ハニカム構造体において、上記外方外周セルは、外方異形セルを少なくとも1つ含むことが基本的な条件であるが、ハニカムブロックの外周全体に渡って外方異形セルを含んでいることが望ましい。本発明の効果をより確実に発揮することが出来るからである。
【0051】
図1は、本発明の第一実施形態のハニカム構造体を模式的に示す斜視図であり、図2(a)は、本発明の第一実施形態のハニカム構造体における内方ハニカム焼成体を模式的に示した斜視図であり、図2(b)は、図2(a)に示す内方ハニカム焼成体のB−B線断面図である。図3(a)は、本発明の第一実施形態のハニカム構造体における外方ハニカム焼成体を模式的に示す斜視図であり、(b)は、その部分拡大図である。図4は、図1に示す外方ハニカム焼成体のA−A線断面図である。
【0052】
図1及び図4に示すハニカム構造体100では、図2(a)、(b)に示すような形状の内方ハニカム焼成体110と、図3に示すような形状の外方ハニカム焼成体120とが複数個ずつ接着剤層101(101A〜101D)を介して結束されてハニカムブロック103を構成し、さらに、このハニカムブロック103の外周にコート層102が形成されている。ハニカム焼成体110、120は、多孔質炭化ケイ素焼結体からなる。
【0053】
ハニカム構造体100では、図1及び図4に示すように、8個の外方ハニカム焼成体120がハニカムブロックの外周を構成する位置にあり、4個の内方ハニカム焼成体110が外方ハニカム焼成体120の内側に位置し、合計12個のハニカム焼成体が、ハニカム構造体100(ハニカムブロック103)の断面が略円形となるように、接着剤層101を介して結束されている。
【0054】
そして、ハニカム構造体100は、その断面において、外方ハニカム焼成体を結束する接着剤層101C、101Dのうち、一つの内方ハニカム焼成体の角部からハニカム構造体100の外周側面に向かう方向に形成されている接着剤層101Cと、二つの内方ハニカム焼成体の間からハニカム構造体100の外周側面に向かう方向に形成されている接着剤層101Dとが所定の角度(例えば、45°)をなしている。
【0055】
図2(a)、(b)に示す内方ハニカム焼成体110の断面の形状は略正方形である。内方ハニカム焼成体110には、多数のセル111がセル壁113を隔てて長手方向(図2(a)中、矢印aの方向)に並設されており、セル111のいずれかの端部が封止材(封止材ペースト)112で封止されている。従って、一方の端面が開口したセル111に流入した排ガスG(図2(b)中、矢印参照)は、必ずセル111を隔てるセル壁113を通過した後、他方の端面が開口した他のセル111から流出するようになっている。排ガスGがセル壁113を通過する際に排ガス中のPM等が捕集され、排ガスGはろ過される。これにより、ハニカム構造体のセル壁113がPM等を捕集するためのフィルタとして機能する。
【0056】
一方、図3(a)に示す外方ハニカム焼成体120の断面の形状は、3つの線分120a、120b、120cと1つの円弧120dとで囲まれた形状である。この3つの線分のうちの2つの線分よりなる2つの角(線分120bと線分120cとが成す角、及び、線分120aと線分120bとが成す角)はそれぞれ90°と135°である。外方ハニカム焼成体120にも、内方ハニカム焼成体110と同様、多数のセル124がセル壁123を隔てて長手方向に並設されており、セル124のいずれかの端部が封止材122で封止されている。従って、一方の端面が開口したセル124に流入した排ガスは、必ずセル124を隔てるセル壁123を通過した後、他方の端面が開口した他のセル124から流出するようになっている。すなわち、外方ハニカム焼成体120は、外観形状が内方ハニカム焼成体110と異なるものの、そのフィルタ機能は内方ハニカム焼成体110と共通する。
【0057】
外方ハニカム焼成体120において、セルは、外方ハニカム焼成体120の外周壁121(121a〜121d)に接する外方外周セル125と、外方外周セル125より内側に位置し、かつ、基本形成パターンに基づいて形成された外方基本セル124とからなる。このとき外方外周セル125は、外方基本セル125のセル断面積より大きいセル断面積を有する外方異形セル126(126a、126d)を含んでいる。
【0058】
外方基本セル124は、基本形成パターンとして格子状に形成されており、それぞれの外方基本セル124の断面形状は正方形か又は実質的に正方形と同視し得る形状であるとともに、互いに等しいセル断面積を有している。外周壁121b、121cに接する外周セル125b、125cは、外方基本セル124と同じセル断面形状を有している。言い換えると、外方基本セル124がその基本形成パターンを維持したまま外周壁121b、121cに接することで、外方基本セル124がそのまま外方外周セル125b、125cになったと考えることもできる。
【0059】
外方異形セル126a、126dは、外周壁121a〜121dのうち、外周壁121a、121dに接するように設けられている。外方ハニカム焼成体120の外周壁121dは、ハニカムブロック103の外周を構成することにもなるので(図4参照)、外方異形セル126dは、ハニカム焼成体の外周壁のうち、ハニカムブロック103の外周を構成する外周壁に接する位置に形成されていることになる。
【0060】
同様に、外方異形セル126aは、外周壁121aに接するように設けられている。外方ハニカム焼成体120の外周壁121aは、接着剤層101Cに対向することになるので(図4参照)、外方異形セル126aは、接着剤層101Cに対向する外周壁121aに接する位置に形成されていることになる。
【0061】
外方異形セル126a、126dは、外方基本セル124のセル断面積より大きいセル断面積を有している。図3(a)に示されるように、特に、外周壁121a、121dのように外周壁が曲面状等である場合は、外方基本セル124のセル断面積より小さいセル断面積を有する外方外周セル(すなわち、変形セル)が複数形成される傾向にある。そのような場合であっても、変形セルとこの変形セルに隣接する基本セルとを隔てるセル壁を取り除いて外方異形セルを設けることにより外周セルが形成され、外方ハニカム焼成体の開口率が増加するので、封止材ペーストのセルへの充填を容易に行うことができ、また、ハニカム構造体のPM捕集時の圧力損失の上昇幅を低減させることができる。
【0062】
外周セルは少なくとも1つの外方異形セルを含んでいればよく、全ての外周セルが外方異形セルとして存在している必要はない。外方異形セルは、ハニカム焼成体の外周壁の形状及び外周壁により規定される外周セルの形状を考慮して設ければよい。外方ハニカム焼成体において外方異形セルを設ける際の考え方について、図面を参照しつつ以下に説明する。
【0063】
図3(b)は、本発明の第一実施形態の外方異形セルを設ける際の考え方を説明するための模式図であり、本実施形態のハニカム構造体における外方ハニカム焼成体の部分拡大図である。基本形成パターンに従って外方基本セル124が外方に広がるようにパターン形成されているところ、ハニカム焼成体の外周壁121dによってそのパターン形成が終了すると考える。この考えに基づくと、例えば、図3(a)中のハニカム焼成体の外周壁121b及び外周壁121cによって外方基本セル124のパターン形成が終了する場合、上述したように、外方基本セル124の有する基本形成パターンは外周壁121b、121cによって崩されることはなく、その基本形成パターンを維持したまま、ハニカム焼成体の外周壁に接することにより外方外周セル(125b、125c)が形成されてパターン形成が終了する。
【0064】
ところが、ハニカム焼成体の外周壁121aや外周壁121dによって外方基本セル124のパターン形成が終了する場合には、外周壁121aと基本形成パターンを規定するセル壁とが斜めに交差したり、外周壁121dが曲面状であったりすることから、外方基本セル124の基本形成パターンが崩れて変形してしまい、外周セルとして外方基本セル124のセル断面積より小さいセル断面積を有する変形セルが形成されてしまう(図3(b)の符号125vで表される仮の変形セルに相当)。このような変形セルが形成されると、セルを交互に目封じするのにかなりの困難が伴い、ハニカム構造体の製造効率の低下をきたす。
【0065】
本発明では、ハニカム焼成体の外周壁が、外周壁121dのように曲面状であったり、外周壁121aのように基本形成パターンを規定するセル壁と斜めに交差したりして、上記のような変形セル125vが形成されると仮に予測される場合に、予測に従って形成されれば存在したであろう、仮の変形セル125vと仮の外方基本セル124vとを隔てる仮のセル壁123vを取り除くことにより、外方基本セル124のセル断面積より大きなセル断面積を有する外方異形セル126dを形成している。言い換えると、仮の変形セル126dと仮の外方基本セル124vとが一体となって外方異形セル126dが形成されている。また、図3(b)に示したように、仮の変形セル125vと仮の外方基本セル124vとが一体化してもよく、仮の変形セル125vとこの仮の変形セル125vに隣接する外方外周セル125とが一体化してもよい。このようにして外方異形セルを設けることにより、封止材ペーストの充填が困難であったセル断面積の小さい変形セルを排除することができるとともに、外方ハニカム焼成体の開口率を向上させることができる。
【0066】
なお、形成が予測される全ての変形セルを外方基本セルと一体化させて外方異形セルとする必要はなく、交互目封じのパターンに従うと封止されることになる変形セルが封止材ペーストの充填に充分でないセル断面積を有することになると予測される場合に、当該変形セルに隣接する外方基本セルとを一体化させればよい。もちろん、基本形成パターンを設計変更して、全ての外周セルが外方異形セルとなるようにしてもよい。
【0067】
変形セルのセル断面積によってはそれ自体が封止材ペーストの充填に充分なセル断面積を有し、外方基本セルと一体化させなくてもよい場合が生じる。封止されるべき変形セルと外方基本セルとを一体化して外方異形セルを設ける場合の変形セルのセル断面積としては特に限定されないが、外方基本セルのセル断面積の80%以下が好ましく、70%以下がより好ましく、60%以下がさらに好ましく、50%以下がなおより好ましい。変形セルが外方基本セルのセル断面積の80%を超えるセル断面積を有していれば、封止材ペーストの充填が容易であるので、特に外方異形セルを設けることを省略することができる。ただし、このように変形セルのセル断面積が比較的大きい場合でも、所望により外方異形セルを設けてもよい。
【0068】
本実施形態のハニカム構造体では、8つの外方ハニカム焼成体のそれぞれに図3(a)に示したような外方異形セルが形成されているのに対し、4つの内方ハニカム焼成体には異形セルを形成しなくてもよい。内方ハニカム焼成体に異形セル(存在する場合は、内方異形セルと称する)が形成されていなくても、本実施形態のハニカム構造体は、上述した異形セルによる効果を充分に奏することができる。もちろん、内方ハニカム焼成体に内方異形セルが形成されていてもよい。内方ハニカム焼成体に内方異形セルが形成されている場合には、PM捕集時のハニカム構造体の圧力損失増加の抑制に加え、ハニカム構造体の重量の減少によるコスト削減やハニカム構造体のPMの燃焼効率の向上の効果をハニカム構造体全体として相乗的に増大させることができる。
【0069】
次に、本実施形態のハニカム構造体の製造方法について説明する。
本実施形態のハニカム構造体の製造方法は、
多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設されたハニカム焼成体を含むハニカムブロックからなり、上記ハニカム焼成体は、上記ハニカムブロックの外周を構成する外方ハニカム焼成体と、上記外周ハニカム焼成体より内側に位置する内方ハニカム焼成体とからなり、少なくとも1つの上記外方ハニカム焼成体において、上記セルは、上記外方ハニカム焼成体の外周壁に接する外方外周セルと、上記外方外周セルより内側に位置し、かつ、基本形成パターンに基づいて形成された外方基本セルとからなり、上記外方外周セルは、上記外方基本セルのセル断面積より大きいセル断面積を有する外方異形セルを含むハニカム構造体を製造するハニカム構造体の製造方法であって、
セラミック粉末とバインダとを含む湿潤混合物を押出成形することによって、外方ハニカム焼成体又は内方ハニカム焼成体となるハニカム成形体を作製する成形工程と、
上記ハニカム成形体の所定のセルに封止材となる封止材ペーストを充填して上記セルを目封じする封止工程と、
上記ハニカム成形体を加熱し、上記ハニカム成形体に含まれる有機物を分解、除去する脱脂工程と、
上記脱脂処理後のハニカム成形体を加熱して内方ハニカム焼成体と外方ハニカム焼成体とを製造する焼成工程と、
製造された内方ハニカム焼成体と外方ハニカム焼成体の側面に、接着剤ペーストを塗布して接着剤ペースト層を形成し、接着剤ペースト層を介して複数のハニカム焼成体が結束されたハニカムブロックを作製する結束工程とからなることを特徴とする。
本実施形態のハニカム構造体の製造方法では、この後、得られたハニカムブロックの外周にコート材ペーストを塗布し、乾燥、固化してコート層を形成するコート層形成工程を行ってもよい。
【0070】
(1)本実施形態のハニカム構造体の製造方法では、まず、セラミック粉末とバインダとを含む湿潤混合物を押出成形することによってハニカム成形体を作製する成形工程を行う。具体的には、まず、セラミック粉末として平均粒子径の異なる炭化ケイ素粉末と、有機バインダと液状の可塑剤と潤滑剤と水とを混合することにより、ハニカム成形体製造用の湿潤混合物を調製する。続いて、上記湿潤混合物を押出成形機に投入し、押出成形することにより所定の形状のハニカム成形体を作製する。
【0071】
ここで、断面が略正方形のハニカム成形体や、断面が3つの線分と1つの円弧とで囲まれ、この3つの線分のうちの2つの線分よりなる2つの角がそれぞれ90°と135°である形状のハニカム成形体を作製するためには、それぞれの形状に応じた押出成形用金型を使用する。
【0072】
(2)次に、ハニカム成形体を所定の長さに切断し、マイクロ波乾燥機、熱風乾燥機、誘電乾燥機、減圧乾燥機、真空乾燥機、凍結乾燥機等を用いて乾燥させた後、所定のセルに封止材となる封止材ペーストを充填して上記セルを目封じする封止工程を行う。切断工程、乾燥工程、封止工程の条件は、従来からハニカム焼成体を作製する際に用いられている条件を適用することができる。
【0073】
(3)その後、ハニカム成形体中の有機物を脱脂炉中で加熱する脱脂工程を行い、焼成炉に搬送し、焼成工程を行ってハニカム焼成体を作製する。脱脂工程及び焼成工程の条件としては、従来からハニカム焼成体を作製する際に用いられている条件を適用することができる。以上の工程によって、内方ハニカム焼成体と外方ハニカム焼成体とを製造することができる。
【0074】
(4)続いて、各セルの所定の端部が封止された内方ハニカム焼成体及び外方ハニカム焼成体のそれぞれの所定の側面に、接着剤ペーストを塗布して接着剤ペースト層を形成し、この接着剤ペースト層の上に、順次他のハニカム焼成体を積層する工程を繰り返して所定数のハニカム焼成体を結束し、接着材ペーストを乾燥、固化してハニカムブロックを作製する結束工程を行う。
ここで接着剤ペーストとしては、例えば、無機バインダと有機バインダと無機粒子とからなるものを使用する。また、上記接着剤ペーストはさらに無機繊維及び/又はウィスカを含んでいてもよい。
【0075】
(5)最後に、略円柱状としたハニカムブロックの外周に、コート材ペーストを塗布し、乾燥、固化してコート層を形成するコート層形成工程を行う。コート材ペーストとしては、上記接着剤ペーストと同様の又は異なるペーストを使用する。なお、コート層は必ずしも設ける必要はなく、必要に応じて設ければよい。コート層を形成する場合には、接着材ペーストとコート材ペーストとの乾燥、固化を同時に行ってもよい。以上の工程によって、本実施形態のハニカム構造体を製造することができる。
【0076】
以下、本実施形態のハニカム構造体の作用効果について列挙する。
(1)本実施形態のハニカム構造体は、外方基本セルのセル断面積より大きいセル断面積を有する外方異形セルを少なくとも1つ含むので、封止材ペーストのセルへの充填及びハニカムブロックの外周部のコート層形成の容易であり、PM蓄積時のハニカム構造体の圧力損失上昇の抑制、ハニカム構造体のPMの燃焼効率の向上、ハニカム構造体の外周部及び中央部におけるPMの蓄積の平均化(均一化)できるという作用効果を奏することができる。
【0077】
(2)本実施形態のハニカム構造体では、上記外方異形セルは、上記外方ハニカム焼成体の外周壁のうち、少なくとも上記ハニカムブロックの外周を構成する外周壁に接する位置に形成されている。特に、ハニカムブロックが曲面状の外周面を有する場合、変形セルは、ハニカムブロックの曲線状の外周を構成する外周壁に接する位置に存在する場合が多くなる。そのような場合であっても、変形セルと基本セルとを隔てるセル壁を取り除いて異形セルを設けることで外周セルの開口面積を増加させることができ、封止材ペーストの外周セルへの充填を容易に行うことができる。
【0078】
(3)本実施形態のハニカム構造体によると、外方異形セルは、外方ハニカム焼成体の外周壁のうち、接着剤層に対向する外周壁に接する位置にも形成されている。外方異形セルが、接着剤層に対向する外周壁に接する位置に設けられていることにより、ハニカム構造体の開口率が高くなり、PM蓄積時のハニカム構造体の圧力損失の増大を抑制することができる。
【0079】
(4)本実施形態のハニカム構造体では、上記基本セル及び上記外周セルのそれぞれの一方の端部は交互に封止されている。セルのいずれか一方の端部が交互に封止されているので、ハニカム構造体をフィルタとして好適に使用することができる。
【0080】
(実施例1)
以下、本発明の第一実施形態をより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0081】
(1)平均粒子径22μmを有する炭化ケイ素の粗粉末52.8重量%と、平均粒子径0.5μmの炭化ケイ素の微粉末22.6重量%とを混合し、得られた混合物に対して、アクリル樹脂2.1重量%、有機バインダ(メチルセルロース)4.6重量%、潤滑剤(日油社製 ユニルーブ)2.8重量%、グリセリン1.3重量%、及び、水13.8重量%を加えて混練して湿潤混合物を得た後、押出成形する成形工程を行った。本工程では、図2(a)、(b)に示した内方ハニカム焼成体110と略同様の形状であって、セルの目封じをしていない生のハニカム成形体と、図3(a)に示した外方ハニカム焼成体120と略同様の形状であって、セルの目封じをしていない生のハニカム成形体とを作製した。外方ハニカム焼成体となるべきハニカム成形体の外周セルには、外方基本セルのセル断面積よりセル断面積の大きい外方異形セルを設けた。
【0082】
(2)次いで、マイクロ波乾燥機を用いて上記生のハニカム成形体を乾燥させ、ハニカム成形体の乾燥体とした後、上記湿潤混合物と同様の組成の封止材ペーストを所定のセルに充填し、再び乾燥機を用いて乾燥させた。
【0083】
(3)乾燥させたハニカム成形体を400℃で脱脂する脱脂工程を行い、さらに、常圧のアルゴン雰囲気下2200℃、3時間の条件で焼成工程を行った。
これにより、気孔率が45%、平均気孔径が15μm、大きさが34.5mm×34.5mm×150mm、セルの数(セル密度)が300個/inch、セル壁の厚さが0.25mm(10mil)の多孔質炭化ケイ素焼結体からなる内方ハニカム焼成体110と、気孔率、平均気孔径、セルの数(セル密度)及びセル壁の厚さが内方ハニカム焼成体110と同一で、断面が3つの線分と1つの円弧とで囲まれ、この3つの線分のうちの2つの線分よりなる2つの角がそれぞれ90°と135°である形状(線分120a=20.8mm、線分120b=35.0mm、線分120c=35.7mm)の外方ハニカム焼成体120とを製造した。
【0084】
(4)内方ハニカム焼成体110、及び、外方ハニカム焼成体120の所定の側面に接着剤ペーストを塗布し、この接着剤ペーストを介して内方ハニカム焼成体110を4個と、外方ハニカム焼成体120を8個とを図1に示した配置になるように接着させ、さらに、180℃、20分で接着剤ペーストを乾燥、固化させることにより、接着剤層の厚さが1mmで円柱状のハニカムブロック103を作製した。ここで、接着剤ペーストとしては、平均粒径0.6μmの炭化ケイ素粒子30.0重量%、シリカゾル(固形分30重量%)21.4重量%、カルボキシメチルセルロース8.0重量%、及び、水40.6重量%からなる接着剤ペーストを使用した。
【0085】
(5)上記(4)の工程で使用した接着剤ペーストと同じ組成のコート材ペーストを用いて、ハニカムブロック103の外周部にコート材ペースト層を形成した。その後、このコート材ペースト層を120℃で乾燥、固化して、外周にコート層102が形成された直径143.8mm×長さ150mmの円柱状のハニカム構造体100を製造した。
【0086】
(比較例1)
外方ハニカム焼成体として、最外周に位置するセルの位置に対応した段差を外周壁に設け、最外周部に位置するセルと最外周部以外に位置するセルの形状を同一にしたハニカム焼成体(図11(a)、(b)参照)を用いたこと以外は、実施例1と同様の手順にてハニカム構造体を製造した。
【0087】
(比較例2)
外方ハニカム焼成体として、外方異形セルを設けずに変形セルが存在したままの従来品と同形状のハニカム焼成体(図10(a)、(b)参照)を用いたこと以外は、実施例1と同様の手順にてハニカム構造体を製造した。
【0088】
実施例1及び比較例1、2で製造したハニカム構造体を用いて、重量測定、圧力損失測定及び再生率測定を行った。
【0089】
(重量測定)
実施例1及び比較例1,2で製造したハニカム構造体のそれぞれについて、電子式重量計を用いて重量(g)を測定した。また、重量測定の結果に基づき、比較例2のハニカム構造体の重量を1として、実施例1及び比較例1のハニカム構造体の重量の比を求めた。
ハニカム構造体の重量は、それぞれ実施例1で1521g(重量比0.994)、比較例1で1567g(重量比1.024)、比較例2で1530g(重量比1)であった。
【0090】
(圧力損失測定)
図5に示したような圧力損失測定装置150を用いて実施例1及び比較例1、2の各ハニカム構造体の圧力損失を測定した。この圧力損失測定装置150は、送風機151と連結した排気ガス管152に、ハニカム構造体100を金属ケーシング153内に固定して配置し、ハニカム構造体100の前後の圧力を検出可能になるように圧力計154が取り付けられている。そして、送風機151を排気ガスの流通量が400m/hになるように運転し、運転開始から5分後の差圧(圧力損失)(kPa)を測定した。
その結果、実施例1の圧力損失は、5.05K・Pa、比較例1の圧力損失は、5.08K・Pa、比較例2の圧力損失は、5.09K・Paであった。
【0091】
重量測定の結果、上記したように、実施例1のハニカム構造体の重量が最も小さい値となっていた。これは、ハニカム構造体において外方異形セルを設けることにより、ハニカム焼成体の外周壁に接する外周セルのうち、基本セルのセル断面形状から変形してしまうか、又はセル断面積が小さくなることになる変形セルと、この変形セルに隣接する基本セルとを隔てるセル壁が取り除かれることになって、その結果、当該セル壁が存在するハニカム構造体と比較して重量が減少したためと考えられる。
【0092】
なお、比較例1のハニカム構造体の重量が比較例2のハニカム構造体の重量より大きくなっているのは、ハニカム焼成体の外周壁に段差を設けたことにより、外周壁の長さが長くなったこと及びコート層の量が多くなったことが原因であると考えられる。
【0093】
圧力損失測定の結果についても、実施例1のハニカム構造体が最も小さい値を示し、ハニカム構造体の圧力損失上昇の抑制効果が良好であった。これは、基本セルのセル断面積より大きいセル断面積を有する外方異形セルを外方ハニカム焼成体に設けているので、ハニカム構造体全体の開口率が向上し、これによりPM堆積時のPMの層の厚さが低減されて排ガスの流通抵抗が小さくなったことによると考えられる。
【0094】
さらに、ハニカム構造体の特性の一つである再生率について考えてみる。
ハニカム構造体の再生率とは、所定の条件でハニカム構造体に堆積したPMのうち、再生処理で除去されたPMの割合(通常は、百分率で表す)を再生率という。具体的な測定方法としては、予め、パティキュレートを未堆積の状態でハニカム構造体の重量を測定しておき、次に、所定の条件でエンジンを所定時間運転し、所定重量のPMをハニカム構造体に堆積させる。その後、ポストインジェクション方式等を用いてエンジンを所定時間運転することにより、ハニカム構造体に再生処理を施し、再生処理後のハニカム構造体の重量を測定する。そして、減少したPM重量から下記式(1)を用いて算出することにより再生率(%)が求められる。
再生率(%)=(再生前PM重量−再生後PM重量)/再生前PM重量・・・(1)
【0095】
上記した再生率に関し、実施例1に係るハニカム構造体が最も高い再生率の値を示すことが予測され、良好な再生効率を有することが予測される。実施例1に係るハニカム構造体では、変形セルとこれに隣接する基本セルとを隔てるセル壁の除去されていることから、比較例1、2に比べてハニカム構造体の重量が減少している。これにより実施例1のハニカム構造体の熱容量も比較例1、2に比べて減少し、再生処理の際にハニカム構造体の温度も上昇しやすくなることから、PMの燃焼が促進され、再生率の向上につながると考えられる。
【0096】
(第二実施形態)
以下、本発明の一実施形態である第二実施形態について説明する。本発明の第一実施形態ではハニカムブロックが複数のハニカム焼成体により構成されているのに対し、本実施形態ではハニカムブロックが一のハニカム焼成体からなる点で、本実施形態は、本発明の第一実施形態とは異なる。
【0097】
本発明の第二実施形態に係るハニカム構造体は、多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設されたハニカム焼成体を含むハニカムブロックからなるハニカム構造体であって、
上記ハニカムブロックは、一のハニカム焼成体からなり、
前記セルは、前記ハニカム焼成体の外周壁に接する外周セルと、前記外周セルより内側に位置する基本セルとからなり、
前記外周セルは、前記基本セルのセル断面積より大きいセル断面積を有する異形セルを含む。
【0098】
上記ハニカム構造体において、上記外周セルは、異形セルを少なくとも1つ含むことが基本的な条件であるが、外周全体に渡って異形セルを含んでいることが望ましい。本発明の効果をより確実に発揮することが出来るからである。
【0099】
図6は、本発明の第二実施形態のハニカム構造体を模式的に示す斜視図である。図6に示すハニカム構造体200は、多数のセル224、225がセル壁223を隔てて長手方向に並設された柱状の1つのハニカム焼成体220からなり、ハニカム焼成体220の周囲にコート層202が形成されている。本発明の第二実施形態では、ハニカム焼成体220が第一実施形態のハニカムブロックに相当する。なお、コート層は、必要に応じて形成されていればよい。
【0100】
ハニカム構造体200には、格子状の基本形成パターンを有する基本セル224と外周壁221に接する外周セル225とが存在しており、基本セル224及び外周セル225のそれぞれの端部の一方が交互に目封じされている。外周セル225は、基本セル224のセル断面積より大きいセル断面積を有する異形セル226を含んでいる。ハニカム構造体200を構成するハニカム焼成体220は略円柱状であり、外周壁221全体が曲線状となっていることから、外周セル225として変形セルが生じやすくなっている。従って、異形セル226も外周壁221の特定の一部に沿うように偏在して設けられているわけではなく、外周壁221の全体に沿って散在するように設けられている。
【0101】
本実施形態のハニカム構造体の製造方法においては、押出成形に用いるダイスの形状を変更して、略円柱状のハニカム成形体を作製する他は本発明の第一実施形態と同様にしてハニカム焼成体を作製する。このハニカム焼成体は、結束工程を経ることなくハニカムブロックとして扱うことができる。そして、ハニカムブロックとしてのハニカム焼成体の外周面にコート材ペーストを塗布してコート材ペースト層を形成し、コート材ペースト層を乾燥、固化することで本実施形態のハニカム構造体としてもよい。
【0102】
本実施形態のハニカム焼成体の形状は略円柱状に限定されず、略楕円柱状、略角柱状、断面が略長円の柱状等、任意の形状とすることができる。
【0103】
本実施形態においても、本発明の第一実施形態において説明した作用効果(1)〜(4)を発揮することができる。
【0104】
(第三実施形態)
以下、本発明の一実施形態である第三実施形態について説明する。本発明の第一実施形態ではハニカムブロックを構成するハニカム焼成体が、外方ハニカム焼成体と内方ハニカム焼成体のように外側と内側とに分かれて構成されているのに対し、本実施形態ではハニカム焼成体に外側と内側という概念はなく全てのハニカム焼成体がハニカムブロックの外周の一部を構成する点で、本実施形態は本発明の第一実施形態とは異なる。
【0105】
本発明の第三実施形態に係るハニカム構造体は、多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設されたハニカム焼成体を含むハニカムブロックからなるハニカム構造体であって、
前記ハニカムブロックは、複数のハニカム焼成体が接着剤層を介して結束されてなり、
少なくとも1つの前記ハニカム焼成体の外周セルは、前記基本セルのセル断面積より大きいセル断面積を有する異形セルを含む。
【0106】
上記ハニカム構造体において、少なくとも1つの上記外方ハニカム焼成体のセルは、上記した外方異形セルを含むが、全ての上記外方ハニカム焼成体のセルが上記した異形セルを含むことが望ましい。本発明の効果をより確実に発揮することが出来るからである。
また、上記ハニカム構造体において、上記外周セルは、異形セルを少なくとも1つ含むことが基本的な条件であるが、外周全体に渡って異形セルを含んでいることが望ましい。本発明の効果をより確実に発揮することが出来るからである。
【0107】
図7(a)は、本発明の第三実施形態のハニカム構造体を模式的に示す斜視図であり、図7(b)は、図7(a)のハニカム構造体を構成するハニカム焼成体を模式的に示した斜視図である。図7(a)に示すハニカム構造体300では、4個のハニカム焼成体320が接着剤層301を介して結束されてハニカムブロック303を構成し、さらに、このハニカムブロック303の外周にコート層302が形成されている。
【0108】
図7(b)に示すハニカム焼成体320の断面の形状は中心角90°の扇形である。ハニカム焼成体320には、多数のセル324、325がセル壁323を隔てて長手方向に並設されており、セル324、325のいずれかの端部が封止材で交互に封止されている。
【0109】
ハニカム焼成体320において、セルは、ハニカム焼成体320の外周壁321に接する外周セル325と、外周セル325より内側に位置し、かつ、基本形成パターンとして格子状に形成された基本セル324とからなる。外周セル325は、基本セル324のセル断面積より大きいセル断面積を有する異形セル326を含んでいる。
【0110】
本実施形態のハニカム構造体の製造方法においては、押出成形に用いるダイスの形状を変更して、断面が扇形のハニカム成形体を作製する他は本発明の第一実施形態と同様にしてハニカム構造体を作製することができる。なお、ハニカム成形体の断面の扇形の中心角は90°に限定されず、例えば30°、45°、60°及び120°等、任意の角度とすることができる。
【0111】
本実施形態においても、本発明の第一実施形態において説明した作用効果(1)〜(4)を発揮することができる。
【0112】
(第四実施形態)
以下、本発明の一実施形態である第四実施形態について説明する。本発明の第一実施形態ではハニカムブロックが複数のハニカム焼成体により構成され、各基本セルが実質的に同一のセル断面積を有しているのに対し、本実施形態ではハニカムブロックが一のハニカム焼成体からなる点、及び、基本セルの基本形成パターンとしてセル断面積に大小関係がある点で、本実施形態は本発明の第一実施形態とは異なる。本実施形態は、本発明の第二実施形態のハニカム構造体の基本セルとしてセル断面積に大小関係のある基本セルとした形態であるともいえる。
【0113】
図8は、本発明の第四実施形態のハニカム構造体を模式的に示す斜視図である。図8に示すハニカム構造体400は、多数のセル424、425がセル壁423を隔てて長手方向に並設された柱状の1つのハニカム焼成体420からなり、ハニカム焼成体420の周囲にコート層402が形成されている。なお、コート層は、必要に応じて形成されていればよい。
【0114】
ハニカム構造体400には、所定の基本形成パターンを有する基本セル424(424a、424b)と外周壁421に接する外周セル425とが存在しており、基本セル424及び外周セル425のそれぞれの端部の一方が交互に目封じされている。
【0115】
基本セル424は、第1の基本形成パターンを有する第1基本セル424aと第2の基本形成パターンを有する第2基本セル424bとからなり、第1基本セル424aのセル断面積は第2基本セル424bのセル断面積より大きくなっている。第1の基本形成パターンは、セル断面形状を略八角形として第1基本セルを形成する形成パターンであり、第2の基本形成パターンは、セル断面積を略四角形として第2基本セルを形成する形成パターンである。
【0116】
第1の基本形成パターン及び第2の基本形成パターンは、第1基本セルのセル断面積が第2基本セルのセル断面積より大きくなっていれば、それぞれセル断面形状が略八角形及び略四角形となる形成パターンに限定されず、任意の形成パターンとすることができる。例えば、第1の基本形成パターン及び第2の基本形成パターンともにセル断面形状が略正方形であり、第1基本セルと第2基本セルとのセル断面積のみが異なる形成パターンであってもよい。
【0117】
ハニカム構造体400には、外周セル425として、第1基本セル424aのセル断面積より大きいセル断面積を有する異形セル426が複数設けられている。また、異形セル426は、第2基本セル424bと隣接するように設けられている。これは、本実施形態のハニカム構造体400を排ガス浄化フィルタとして機能させる場合、第1基本セル424a及び異形セル426を排ガス流入側セルとし、第2基本セル424bを排ガス流出側セルとすることで、ハニカム構造体全体の開口率を向上させることができるからである。しかし、異形セルが設けられる位置によっては、第2基本セル424bのセル断面積より大きいセル断面積を有し、かつ、第1基本セル424aと隣接するように異形セルを設けてもよい。
【0118】
本実施形態のハニカム構造体の製造方法においては、押出成形に用いるダイスの形状を変更して、ハニカム成形体を略円柱状とし、基本セルのセル断面積に大小関係を付与して作製する他は本発明の第一実施形態と同様にしてハニカム構造体を製造することができる。なお、ハニカム成形体の形状は略円柱状に限定されず、略楕円柱状、略角柱状、断面が略長円の柱状等、任意の形状とすることができる。
【0119】
本実施形態においても、本発明の第一実施形態において説明した作用効果(1)〜(4)に加え、以下の作用効果を発揮することができる。
【0120】
(5)本実施形態のハニカム構造体では、基本セルとして、第1の基本形成パターンを有する第1基本セルと第2の基本形成パターンを有する第2基本セルとを設け、第1基本セルのセル断面積を第2基本セルのセル断面積より大きくしている。第1基本セルを排ガスの流入側セルとすることにより、排ガス流入側のハニカム構造体の開口率を排ガス流出側と比べて大きくすることができ、PMが蓄積したときのハニカム構造体の圧力損失の上昇幅を低減させることができる。
【0121】
(6)本実施形態のハニカム構造体においては、異形セルは、第1基本セルのセル断面積より大きいセル断面積を有し、かつ、第2基本セルと隣接している。ハニカム構造体が第1基本セルと第2基本セルとを基本セルとして有する場合は、異形セルは、第1基本セル及び第2基本セルのいずれとも隣接する場合が生じる。しかし、本実施形態のように、主に排ガスの流出側セルとして用いられる第2基本セルに隣接するように異形セルを設け、この異形セルを排ガスの流入側セルとして用いることによりハニカム構造体の開口率をより大きくすることができ、その結果、PM蓄積時のハニカム構造体の圧力損失の上昇幅を低減させることができる。
【0122】
(第五実施形態)
以下、本発明の一実施形態である第五実施形態について説明する。本発明の第一実施形態ではハニカム焼成体として外方ハニカム焼成体と内方ハニカム焼成体とし、基本セルの各セル断面積が実質的に同一であるのに対し、本実施形態ではハニカム焼成体に外側と内側という概念はなく全てのハニカム焼成体がハニカムブロックの外周を構成する点、及び、基本セルの基本形成パターンとしてセル断面積に大小関係がある点で、本実施形態は本発明の第一実施形態とは異なる。本実施形態は、本発明の第三実施形態のハニカム構造体の基本セルとしてセル断面積に大小関係のある基本セルとした形態であるともいえる。
【0123】
図9(a)は、本発明の第五実施形態のハニカム構造体を模式的に示す斜視図であり、図9(b)は、図9(a)に示すハニカム構造体を構成するハニカム焼成体を模式的に示した斜視図である。図9(a)に示すハニカム構造体500では、4個のハニカム焼成体520が接着剤層501を介して結束されてハニカムブロック503を構成し、さらに、このハニカムブロック503の外周にコート層502が形成されている。
【0124】
図9(b)に示すハニカム焼成体520の断面の形状は中心角90°の略扇形である。ハニカム焼成体520には、多数のセル524、525がセル壁523を隔てて長手方向に並設されており、セル524、525のいずれかの端部が封止材で封止されている。ハニカム焼成体520には、セルとして、所定の基本形成パターンを有する基本セル524(524a、524b)と外周壁521に接する外周セル525とが存在している。
【0125】
基本セル524は、第1の基本形成パターンを有する第1基本セル524aと第2の基本形成パターンを有する第2基本セル524bとからなり、第1基本セル524aのセル断面積は第2基本セル524bのセル断面積より大きくなっている。第1の基本形成パターンは、セル断面形状を略八角形として第1基本セルを形成する形成パターンであり、第2の基本形成パターンは、セル断面積を略四角形として第2基本セルを形成する形成パターンである。
【0126】
第1の基本形成パターン及び第2の基本形成パターンは、第1基本セルのセル断面積が第2基本セルのセル断面積より大きくなっていれば、それぞれセル断面形状が略八角形及び略四角形となる形成パターンに限定されず、任意の形成パターンとすることができる。例えば、第1の基本形成パターン及び第2の基本形成パターンともにセル断面形状が略正方形であり、第1基本セルと第2基本セルとのセル断面積のみが異なる形成パターンであってもよい。
【0127】
ハニカム焼成体の断面の略扇形を形成する2本の線分に該当する外周壁に第1基本セル及び第2基本セルとが接して外周セルとなる場合、第2基本セルは第2基本形成パターンを維持したままセル断面形状が略四角形の外周セルとなるのに対し、第1基本セルのセル断面形状は変形して略六角形となっている。また、略扇形の2本の線分に該当する外周壁の交点部分に第2基本セルが接する場合はそのままセル断面形状が略四角形の外周セルとなるものの、第1基本セルが当該交点部分に接する場合はセル断面形状が略五角形の外周セルとなる。
【0128】
ハニカム構造体500には、外周セル525として、第1基本セル524aのセル断面積より大きいセル断面積を有する異形セル526が複数設けられている。また、異形セル526は、第2基本セル524bと隣接するように設けられている。これは、本実施形態のハニカム構造体500を排ガス浄化フィルタとして機能させる場合、第1基本セル524a及び異形セル526を排ガス流入側セルとし、第2基本セル524bを排ガス流出側セルとすることで、ハニカム構造体全体の開口率を向上させることができるからである。しかし、異形セルが設けられる位置によっては、第2基本セル524bのセル断面積より大きいセル断面積を有し、かつ、第1基本セル524aと隣接するように異形セルを設けてもよい。
【0129】
本実施形態のハニカム構造体の製造方法においては、押出成形に用いるダイスの形状を変更して、ハニカム成形体の断面を略扇形とし、基本セルのセル断面積に大小関係を付与して作製する他は本発明の第一実施形態と同様にしてハニカム構造体を製造することができる。なお、ハニカム成形体の断面の扇形の中心角は90°に限定されず、例えば30°、45°、60°及び120°等、任意の角度とすることができる。
【0130】
本実施形態においても、本発明の第四実施形態において説明した作用効果(1)〜(6)を発揮することができる。
【0131】
(その他の実施形態)
本発明のハニカム構造体を構成するハニカム焼成体の気孔率は特に限定されないが、35〜60%であることが望ましい。
ハニカム焼成体の気孔率が35%未満であると、本発明のハニカム構造体がすぐに目詰まりを起こすことがあり、一方、ハニカム焼成体の気孔率が60%を超えると、ハニカム焼成体の強度が低下して容易に破壊されることがあるからである。
【0132】
上記ハニカム焼成体の平均気孔径は5〜30μmであることが望ましい。
ハニカム焼成体の平均気孔径が5μm未満であると、パティキュレートが容易に目詰まりを起こすことがあり、一方、ハニカム焼成体の平均気孔径が30μmを超えると、パティキュレートが気孔を通り抜けてしまい、該パティキュレートを捕集することができず、ハニカム構造体がフィルタとして機能することができないことがあるからである。
【0133】
なお、上記ハニカム焼成体の気孔率及び平均気孔径は、従来公知の水銀圧入法により測定することができる。
【0134】
本発明のハニカム焼成体のセル壁の厚さは、特に限定されないが、0.1〜0.4mmが望ましい。
ハニカム焼成体のセル壁の厚さが0.1mm未満であると、ハニカム構造を支持するセル壁の厚さが薄くなり、ハニカム焼成体の強度を保つことができなくなるおそれがあり、一方、ハニカム焼成体のセル壁の厚さが0.4mmを超えると、ハニカム構造体の圧力損失の上昇を引き起こす場合があるからである。
【0135】
また、本発明のハニカム構造体を構成するハニカム焼成体が有する外壁(外周壁)の厚さは、特に限定されるものではないが、ハニカム焼成体のセル壁の厚さと同様に0.1〜0.4mmであることが望ましい。
【0136】
また、ハニカム焼成体の長手方向に垂直な断面におけるセル密度は特に限定されないが、望ましい下限は、31.0個/cm(200個/in)、望ましい上限は、93.0個/cm(600個/in)、より望ましい下限は、38.8個/cm(250個/in)、より望ましい上限は、77.5個/cm(500個/in)である。
【0137】
ハニカム焼成体の構成材料の主成分は、炭化ケイ素に限定されるわけではなく、他のセラミック原料として、例えば、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化チタン等の窒化物セラミック、炭化ジルコニウム、炭化チタン、炭化タンタル、炭化タングステン等の炭化物セラミック、アルミナ、ジルコニア、コージェライト、ムライト、チタン酸アルミニウム等の酸化物セラミック等のセラミック粉末が挙げられる。これらのなかでは、非酸化物セラミックが好ましく、炭化ケイ素が特に好ましい。耐熱性、機械強度、熱伝導率等に優れるからである。なお、上述したセラミックに金属ケイ素を配合したケイ素含有セラミック、ケイ素やケイ酸塩化合物で結合されたセラミック等のセラミック原料も構成材料として挙げられ、これらのなかでは、炭化ケイ素に金属ケイ素が配合されたもの(ケイ素含有炭化ケイ素)が望ましい。特に、炭化ケイ素を60wt%以上含むケイ素含有炭化ケイ素質セラミックが望ましい。
【0138】
また、セラミック粉末の粒径は特に限定されないが、後の焼成工程で収縮の少ないものが好ましく、例えば、1.0〜50μmの平均粒径を有する粉末100重量部と0.1〜1.0μmの平均粒径を有する粉末5〜65重量部とを組み合わせたものが好ましい。ハニカム焼成体の気孔径等を調節するためには、焼成温度を調節する必要があるが、セラミック粉末の粒径を調節することにより、気孔径を調節することができる。
【0139】
湿潤混合物における有機バインダとしては特に限定されず、例えば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレングリコール等が挙げられる。これらのなかでは、メチルセルロースが望ましい。有機バインダの配合量は、通常、セラミック粉末100重量部に対して、1〜10重量部が望ましい。
【0140】
湿潤混合物における可塑剤は、特に限定されず、例えば、グリセリン等が挙げられる。また、潤滑剤は特に限定されず、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル等のポリオキシアルキレン系化合物等が挙げられる。潤滑剤の具体例としては、例えば、ポリオキシエチレンモノブチルエーテル、ポリオキシプロピレンモノブチルエーテル等が挙げられる。
なお、可塑剤、潤滑剤は、場合によっては、湿潤混合物に含まれていなくてもよい。
【0141】
また、湿潤混合物を調製する際には、分散媒液を使用してもよく、分散媒液としては、例えば、水、ベンゼン等の有機溶媒、メタノール等のアルコール等が挙げられる。さらに、湿潤混合物中には、成形助剤が添加されていてもよい。成形助剤としては特に限定されず、例えば、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等が挙げられる。
【0142】
さらに、湿潤混合物には、必要に応じて酸化物系セラミックを成分とする微小中空球体であるバルーンや、球状アクリル粒子、グラファイト等の造孔剤を添加してもよい。バルーンとしては特に限定されず、例えば、アルミナバルーン、ガラスマイクロバルーン、シラスバルーン、フライアッシュバルーン(FAバルーン)、ムライトバルーン等が挙げられる。これらのなかでは、アルミナバルーンが望ましい。
【0143】
セルを封止する封止材ペーストとしては特に限定されないが、後工程を経て製造される封止材の気孔率が30〜75%となるものが望ましく、例えば、湿潤混合物と同様のものを用いることができる。
【0144】
接着剤ペースト及びコ−ト材ペーストにおける無機バインダとしては、例えば、シリカゾル、アルミナゾル等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。無機バインダのなかでは、シリカゾルが望ましい。
【0145】
接着剤ペースト及びコ−ト材ペーストにおける有機バインダとしては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。有機バインダのなかでは、カルボキシメチルセルロースが望ましい。
【0146】
接着剤ペースト及びコ−ト材ペーストにおける無機繊維としては、例えば、シリカ−アルミナ、ムライト、アルミナ、シリカ等のセラミックファイバー等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。無機繊維のなかでは、アルミナファイバが望ましい。
【0147】
接着剤ペースト及びコ−ト材ペーストにおける無機粒子としては、例えば、炭化物、窒化物等が挙げられる。具体的には、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素からなる無機粉末等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。無機粒子のなかでは、熱伝導性に優れる炭化ケイ素が望ましい。
【0148】
さらに、接着剤ペースト及びコ−ト材ペーストには、必要に応じて酸化物系セラミックを成分とする微小中空球体であるバルーン、球状アクリル粒子、グラファイト等の造孔剤を添加してもよい。バルーンとしては特に限定されず、例えば、アルミナバルーン、ガラスマイクロバルーン、シラスバルーン、フライアッシュバルーン(FAバルーン)、ムライトバルーン等が挙げられる。これらのなかでは、アルミナバルーンが望ましい。
【0149】
また、本発明のハニカム構造体には、触媒が担持されていてもよい。
本発明のハニカム構造体では、CO、HC及びNOx等の排ガス中の有害なガス成分を浄化することが可能となる触媒を担持させることにより、触媒反応により排ガス中の有害なガス成分を充分に浄化することが可能となる。また、PMの燃焼を助ける触媒を担持させることにより、PMをより容易に燃焼除去することが可能となる。
【符号の説明】
【0150】
100、200、300、400、500 ハニカム構造体
101、301、501 接着剤層
102、202、302、402、502 コート層
103、303、503 ハニカムブロック
110 内方ハニカム焼成体
111 内方基本セル
113、123、223、323、423、523 セル壁
115 内方外周セル
120 外方ハニカム焼成体
121、221、321、421、521 外周壁
124 外方基本セル
125 外方外周セル
126 外方異形セル
220、320、420、520 ハニカム焼成体
224、324、424、524 基本セル
225、325、425、525 外周セル
226、326、426、526 異形セル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設されたハニカム焼成体を含むハニカムブロックからなるハニカム構造体であって、
前記セルは、前記ハニカム焼成体の外周壁に接する外周セルと、前記外周セルより内側に位置する基本セルとからなり、
前記外周セルは、前記基本セルのセル断面積より大きいセル断面積を有する異形セルを含むことを特徴とするハニカム構造体。
【請求項2】
前記ハニカムブロックは、一のハニカム焼成体からなる請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項3】
前記ハニカムブロックは、複数のハニカム焼成体が接着剤層を介して結束されてなり、
少なくとも1つの前記ハニカム焼成体において、前記外周セルは、前記基本セルのセル断面積より大きいセル断面積を有する異形セルを含む請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項4】
前記異形セルは、前記ハニカム焼成体の外周壁のうち、前記ハニカムブロックの外周を構成する外周壁に接する位置に形成されている請求項3に記載のハニカム構造体。
【請求項5】
前記異形セルは、前記ハニカム焼成体の外周壁のうち、前記接着剤層に対向する外周壁に接する位置に形成されている請求項3又は4に記載のハニカム構造体。
【請求項6】
前記基本セルは、第1基本セルと第2基本セルとからなり、前記第1基本セルのセル断面積は前記第2基本セルのセル断面積より大きい請求項1〜5のいずれかに記載のハニカム構造体。
【請求項7】
前記異形セルは、前記第1基本セルのセル断面積より大きいセル断面積を有し、かつ、前記第2基本セルと隣接する請求項6に記載のハニカム構造体。
【請求項8】
前記異形セルは、前記第2基本セルのセル断面積より大きいセル断面積を有し、かつ、前記第1基本セルと隣接する請求項6に記載のハニカム構造体。
【請求項9】
前記基本セル及び前記外周セルのそれぞれの一方の端部は交互に封止されている請求項1〜8のいずれかに記載のハニカム構造体。
【請求項10】
前記ハニカムブロックは、前記ハニカムブロックの外周を構成する外方ハニカム焼成体と、
前記外周ハニカム焼成体より内側に位置する内方ハニカム焼成体とが接着材層を介して結束されてなり、
少なくとも1つの前記外方ハニカム焼成体において、前記セルは、前記外方ハニカム焼成体の外周壁に接する外方外周セルと、前記外方外周セルより内側に位置する外方基本セルとからなり、
前記外方外周セルは、前記外方基本セルのセル断面積より大きいセル断面積を有する外方異形セルを含む請求項3に記載のハニカム構造体。
【請求項11】
前記外方異形セルは、前記外方ハニカム焼成体の外周壁のうち、前記ハニカムブロックの外周を構成する外周壁に接する位置に形成されている請求項10に記載のハニカム構造体。
【請求項12】
前記外方異形セルは、前記外方ハニカム焼成体の外周壁のうち、前記接着剤層に対向する外周壁に接する位置に形成されている請求項10又は11に記載のハニカム構造体。
【請求項13】
前記外方基本セルは、第1外方基本セルと第2外方基本セルとからなり、前記第1外方基本セルのセル断面積は前記第2外方基本セルのセル断面積より大きい請求項10〜12のいずれかに記載のハニカム構造体。
【請求項14】
前記外方異形セルは、前記第1外方基本セルのセル断面積より大きいセル断面積を有し、かつ、前記第2外方基本セルと隣接する請求項13に記載のハニカム構造体。
【請求項15】
前記外方異形セルは、前記第2外方基本セルのセル断面積より大きいセル断面積を有し、かつ、前記第1外方基本セルと隣接する請求項13に記載のハニカム構造体。
【請求項16】
少なくとも1つの前記内方ハニカム焼成体において、前記セルは、前記内方ハニカム焼成体の外周壁に接する内方外周セルと、前記内方外周セルより内側に位置する、内方基本セルとからなり、
前記内方外周セルは、前記内方基本セルのセル断面積より大きいセル断面積を有する内方異形セルを含む請求項10〜15のいずれかに記載のハニカム構造体。
【請求項17】
前記ハニカムブロックは、前記ハニカムブロックの外周を構成する外方ハニカム焼成体と、
前記外周ハニカム焼成体より内側に位置する内方ハニカム焼成体とが接着材層を介して結束されてなり、
少なくとも1つの前記内方ハニカム焼成体において、前記セルは、前記内方ハニカム焼成体の外周壁に接する内方外周セルと、前記内方外周セルより内側に位置する内方基本セルとからなり、
前記内方外周セルは、前記内方基本セルのセル断面積より大きいセル断面積を有する内方異形セルを含む請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項18】
前記内方基本セルは、第1内方基本セルと第2内方基本セルとからなり、前記第1内方基本セルのセル断面積は前記第2内方基本セルのセル断面積より大きい請求項17に記載のハニカム構造体。
【請求項19】
前記内方異形セルは、前記第1内方基本セルのセル断面積より大きいセル断面積を有し、かつ、前記第2内方基本セルと隣接する請求項18に記載のハニカム構造体。
【請求項20】
前記内方異形セルは、前記第2内方基本セルのセル断面積より大きいセル断面積を有し、かつ、前記第1内方基本セルと隣接する請求項18に記載のハニカム構造体。
【請求項21】
少なくとも1つの前記外方ハニカム焼成体において、前記セルは、前記外方ハニカム焼成体の外周壁に接する外方外周セルと、前記外方外周セルより内側に位置する外方基本セルとからなり、
前記外方外周セルは、前記外方基本セルのセル断面積より大きいセル断面積を有する外方異形セルを含む請求項17〜20のいずれかに記載のハニカム構造体。
【請求項22】
前記外方ハニカム焼成体及び前記内方ハニカム焼成体のセルのそれぞれの一方の端部は交互に封止されている請求項10〜21のいずれかに記載のハニカム構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−224973(P2011−224973A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19704(P2011−19704)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(000000158)イビデン株式会社 (856)
【Fターム(参考)】