説明

ハニカム触媒体、及び、ハニカム触媒体の製造方法

【課題】 シリカ層が形成された炭化ケイ素粒子の表面に触媒が担持されたハニカム触媒体、及び、ハニカム触媒体の製造方法を提供する。
【解決手段】 主に炭化ケイ素粒子からなり、多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設された多孔質のハニカム焼成体を含むハニカム構造体と、上記ハニカム構造体に担持された、酸化物セラミック又はゼオライトを含む触媒とを備えたハニカム触媒体であって、上記炭化ケイ素粒子の表面には、シリカ層が形成されており、上記触媒は、上記炭化ケイ素粒子の表面に、上記シリカ層を介して担持されており、X線光電子分光法(XPS)を用いて測定した上記シリカ層の厚さは、5〜100nmであり、上記酸化物セラミック又は上記ゼオライトは、50g/L以上担持されていることを特徴とするハニカム触媒体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム触媒体、及び、ハニカム触媒体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン等の内燃機関から排出される排ガス中には、スス等のパティキュレート(以下、PMともいう)が含まれており、近年、このPMが環境及び人体に害を及ぼすことが問題となっている。また、排ガス中には、CO、HC、NOx等の有害なガス成分も含まれていることから、この有害なガス成分が環境及び人体に及ぼす影響についても懸念されている。
【0003】
そこで、排ガス中のPMを捕集したり、有害なガス成分を浄化したりするために、多孔質セラミックからなるハニカム構造体に、白金等の触媒が担持されたハニカム触媒体が種々提案されている。
ハニカム構造体を構成する多孔質セラミックとしては、例えば、耐熱性及び化学耐久性の観点から、炭化ケイ素が使用されている。
【0004】
このようなハニカム触媒体として、例えば、特許文献1には、触媒を分散して担持するために、アルミナ等のサポート材がハニカム構造体に担持されたハニカム触媒体が開示されている。
【0005】
特許文献1には、アルミナ等との化学的な結合を助成するために、ハニカム構造体を構成する炭化ケイ素粒子の各々の表面に、シリカ層を形成することが開示されている。
特許文献1には、ハニカム構造体を800〜1600℃で5〜100時間加熱して酸化処理を行うことにより、シリカ層を形成することが記載されている。
【0006】
また、特許文献2には、炭化ケイ素質焼結体を、空気雰囲気下において、800〜1600℃、5〜100時間で加熱処理を行うことにより、1〜10重量%の酸素濃度を有するシリカ層を形成することが記載されている。
【0007】
さらに、近年、排ガス中のNOxを浄化するために、尿素SCR(Selective Catalytic Reduction、選択的触媒還元)装置が提案されている。
尿素SCR装置では、ハニカム構造体にゼオライト等の触媒が担持されたハニカム触媒体を備えた排ガス浄化装置内に、例えば、尿素水を噴霧する。そして、尿素の熱分解によってアンモニアを発生させて、ゼオライトに吸着させてNOxを還元させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−154223号公報
【特許文献2】特開2000−218165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、炭化ケイ素粒子の表面にシリカ層が形成されたハニカム構造体に触媒を担持し、シリカ層が形成された炭化ケイ素粒子の表面に触媒が担持されたハニカム触媒体を提供することを目的とする。
また、本発明は、上記ハニカム触媒体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載のハニカム触媒体は、
主に炭化ケイ素粒子からなり、多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設された多孔質のハニカム焼成体を含むハニカム構造体と、
上記ハニカム構造体に担持された、酸化物セラミック又はゼオライトを含む触媒とを備えたハニカム触媒体であって、
上記炭化ケイ素粒子の表面には、シリカ層が形成されており、
上記触媒は、上記炭化ケイ素粒子の表面に、上記シリカ層を介して担持されており、
X線光電子分光法(XPS)を用いて測定した上記シリカ層の厚さは、5〜100nmであり、
上記酸化物セラミック又は上記ゼオライトは、50g/L以上担持されていることを特徴とする。
【0011】
請求項1に記載のハニカム触媒体では、ハニカム構造体を構成するハニカム焼成体の炭化ケイ素粒子の表面に、シリカ層が形成されている。そして、酸化物セラミック又はゼオライトを含む触媒が、炭化ケイ素粒子の表面に、シリカ層を介して担持されている。
炭化ケイ素粒子の表面に酸化物層が形成されていると、触媒が均一に担持される。
【0012】
請求項1に記載の炭化ケイ素質ハニカム触媒体では、X線光電子分光法(XPS)を用いて測定したシリカ層の厚さが、5〜100nmである。
X線光電子分光法(XPS)を用いて測定したシリカ層の厚さ(以下、単に「シリカ層の厚さ」ともいう)が5〜100nmの範囲にあると、以下の理由により、酸化物セラミック又はゼオライトを含む触媒が、炭化ケイ素粒子の表面に均一に担持されやすくなると考えられる。炭化ケイ素粒子の間には、ネック部分(2つの粒子が連結されたときに生じるくびれた部分)が存在する。5〜100nmの厚さを有するシリカ層が上記ネック部分に形成されると、ネック部分に深い谷部が存在しなくなる。このような状態では、炭化ケイ素粒子の表面に触媒が担持しやすくなるため、ネック部分の谷部に触媒が偏析することがなくなる。その結果、炭化ケイ素粒子の表面に一定の厚さを有する触媒を担持することができると考えられる。
シリカ層の厚さが5nm未満である場合には、ハニカム触媒体を尿素SCR装置に用いた場合におけるNOx浄化率が充分な値とならない。これは、シリカ層の厚さが5nm未満であると、触媒が、炭化ケイ素粒子間のネック部分にたまってしまうため、触媒が炭化ケイ素粒子の表面に均一に担持されないことが原因であると考えられる。
一方、シリカ層の厚さが100nmを超える場合にも、ハニカム触媒体を尿素SCR装置に用いた場合におけるNOx浄化率が充分な値とならない。これは、シリカ層の厚さが100nmを超えると、セル壁の気孔が埋まってしまうためであると考えられ、その結果、ハニカム焼成体のセル壁のガスの流れが不均一となり、NOx浄化率が低くなると考えられる。
【0013】
請求項1に記載のハニカム触媒体では、酸化物セラミック又はゼオライトは、50g/L以上担持されている。
上述した通り、請求項1に記載のハニカム触媒体では、酸化物セラミック又はゼオライトが、炭化ケイ素粒子の表面に均一に担持されている。しかしながら、酸化物セラミック又はゼオライトの担持量が50g/L未満であると、ハニカム触媒体を尿素SCR装置に用いた場合に充分なNOx浄化率が得られない。もしくは、ハニカム触媒体のサイズを大きくしなければならなくなる。
【0014】
請求項2に記載のハニカム触媒体のように、上記酸化物セラミック又は上記ゼオライトが、上記ハニカム焼成体のセル壁の内部に担持されていることが望ましい。
酸化物セラミック又はゼオライトが、ハニカム焼成体のセル壁の内部に担持されることにより、セル壁上に多量の触媒が担持されることを防ぎ、ハニカム触媒体の圧力損失の上昇を防止することができる。また、セル壁を通過する排ガスの流速に対して、ゼオライト等の触媒と排ガスとの接触距離を充分にとることができるため、ゼオライト等の触媒が触媒機能を発揮することができる。
【0015】
請求項3に記載のハニカム触媒体のように、上記ハニカム構造体は、1つのハニカム焼成体からなっていてもよい。また、請求項4に記載のハニカム触媒体のように、上記ハニカム構造体は、複数のハニカム焼成体が接着材層を介して結束されてなっていてもよい。
【0016】
請求項5に記載のハニカム触媒体の製造方法は、
主に炭化ケイ素粒子からなり、多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設された多孔質のハニカム焼成体を含むハニカム構造体と、上記ハニカム構造体に担持された、酸化物セラミック又はゼオライトを含む触媒とを備えたハニカム触媒体の製造方法であって、
上記ハニカム焼成体を含むハニカム構造体を、酸化雰囲気下において、700〜1100℃、1〜10時間熱処理して酸化する酸化工程と、
上記酸化工程の後、上記ハニカム構造体に、酸化物セラミック又はゼオライトを含む触媒を担持する担持工程とを含み、
上記酸化工程では、上記ハニカム焼成体に含まれる炭化ケイ素粒子の表面に、X線光電子分光法(XPS)を用いて測定した厚さが5〜100nmであるシリカ層を形成し、
上記担持工程では、上記酸化物セラミック又は上記ゼオライトを50g/L以上担持することを特徴とする。
【0017】
請求項5に記載のハニカム触媒体の製造方法では、本発明のハニカム触媒体を好適に作製することができる。
【0018】
請求項6に記載のハニカム触媒体の製造方法のように、上記酸化工程において、上記酸化雰囲気中の酸素濃度は、5〜21容量%であることが望ましい。
酸化雰囲気中の酸素濃度が5容量%未満であると、炭化ケイ素粒子の表面の酸化が不安定となり、所望の厚さのシリカ層を形成することが困難となる。また、酸化雰囲気中の酸素濃度が5容量%未満であると、長時間熱処理を行う必要があり、製造効率が低下しやすくなる。一方、酸化雰囲気中の酸素濃度が21容量%を超えると、酸素ガスを準備する等、酸化雰囲気を生成する工程が必要となり、製造効率が低下しやすくなる。
【0019】
請求項7に記載のハニカム触媒体の製造方法のように、複数のハニカム焼成体を接着材層を介して接着させる接着工程をさらに含んでいてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明の第一実施形態のハニカム触媒体を構成するハニカム構造体の一例を模式的に示す斜視図である。
【図2】図2(a)は、図1に示したハニカム構造体を構成するハニカム焼成体の一例を模式的に示す斜視図であり、図2(b)は、図2(a)に示したハニカム焼成体のA−A線断面図である。
【図3】図3は、本発明の第一実施形態のハニカム触媒体の一例を模式的に示す部分拡大図である。
【図4】図4は、実施例及び比較例におけるシリカ層の厚さとNOx浄化率との関係を示すグラフである。
【図5】図5(a)は、本発明の第二実施形態のハニカム触媒体を構成するハニカム構造体の一例を模式的に示す斜視図であり、図5(b)は、図5(a)に示したハニカム構造体のB−B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
尿素SCR装置において、NOxを高い浄化率で浄化するには、ハニカム構造体のセル壁に、多量のゼオライトを担持することが必要になると考えられる。これは、アンモニアを多量に吸着させるためであり、そのためには、セル壁の中で、ガスが拡散するような構造になっていることが好ましい。
【0022】
本発明者らは、ハニカム触媒体を尿素SCR装置に用いることを想定して、ハニカム構造体に多量の触媒を担持した場合に、ハニカム構造体(セル壁)に触媒が担持されるハニカム触媒体を開発することを試みた。
【0023】
本発明者らは、まず、特許文献1及び特許文献2の記載に基づいて、従来のハニカム触媒体を作製した。
しかしながら、上記の方法で作製したハニカム触媒体では、尿素SCR装置に用いた場合におけるNOx浄化率が充分な値ではなかった。この結果は、上記の方法で作製したハニカム触媒体では、ゼオライトが不均一に担持されることにより生じたものであると考えられる。
【0024】
すなわち、前述したとおり、シリカ層が薄すぎる場合には、炭化ケイ素粒子間のネック部分にゼオライト(触媒)がたまることで不均一となる。
また、特許文献2の記載のように、炭化ケイ素粒子の表面に1〜10重量%の酸素濃度(酸素に換算した含有量)を有するシリカ層を形成しても、シリカ層が厚すぎることで、ゼオライト(触媒)が不均一に担持されることが分かった。
【0025】
このような検討結果を踏まえて、本発明者らは、炭化ケイ素粒子の表面に形成するシリカ層の厚さを所定の範囲に制御することにより、多量の触媒をハニカム構造体に担持させた場合であっても、炭化ケイ素粒子の表面に触媒をより均一に担持させることができることを見出し、本発明を完成した。
【0026】
以下、本発明の実施形態について具体的に説明する。しかしながら、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。
【0027】
(第一実施形態)
以下、本発明のハニカム触媒体、及び、ハニカム触媒体の製造方法の一実施形態である第一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0028】
まず、本発明の第一実施形態に係るハニカム触媒体について説明する。
図1は、本発明の第一実施形態のハニカム触媒体を構成するハニカム構造体の一例を模式的に示す斜視図である。
図2(a)は、図1に示したハニカム構造体を構成するハニカム焼成体の一例を模式的に示す斜視図であり、図2(b)は、図2(a)に示したハニカム焼成体のA−A線断面図である。
【0029】
図1に示すハニカム構造体10では、主に炭化ケイ素粒子からなる多孔質のハニカム焼成体20が、接着材層11を介して複数個結束されてセラミックブロック13を構成している。そして、セラミックブロック13の周囲には、排ガスの漏れを防止するためのコート層12が形成されている。なお、コート層は、必要に応じて形成されていればよい。
このような、ハニカム焼成体が複数個結束されてなるハニカム構造体は、集合型ハニカム構造体ともいう。
また、ハニカム焼成体20は、図2(a)及び図2(b)に示す形状を有している。
【0030】
図2(a)及び図2(b)に示すハニカム焼成体20には、多数のセル21a及び21bがセル壁23を隔てて長手方向(図2(a)中、矢印aの方向)に並設されており、セル21a及び21bのいずれかの端部が封止材22で封止されている。従って、一方の端面24が開口したセル21aに流入した排ガスG1(図2(b)中、排ガスをG1で表し、排ガスの流れを矢印で示す)は、必ずセル21aと他方の端面25が開口したセル21bとを隔てるセル壁23を通過した後、セル21bから流出するようになっている。従って、セル壁23がPM等を捕集するためのフィルタとして機能する。
なお、ハニカム焼成体及びハニカム構造体の表面のうち、セルが開口している面を端面といい、端面以外の面を側面という。
【0031】
ハニカム焼成体は、主に炭化ケイ素粒子からなり、炭化ケイ素質ハニカム焼成体という。具体的には、ハニカム焼成体は、炭化ケイ素を60重量%以上含んでいる。ハニカム焼成体は、骨材としての多数の炭化ケイ素粒子が相互間に多数の細孔を保持した状態で結合することによって構成されている。
また、ハニカム焼成体は、炭化ケイ素を60重量%以上含む限り、炭化ケイ素以外の他の成分を含んでいてもよい。例えば、ハニカム焼成体は、40重量%以下のケイ素を含んでいてもよい。ハニカム焼成体の構成材料の主成分は、炭化ケイ素に金属ケイ素が配合されたケイ素含有炭化ケイ素であってもよいし、ケイ素又はケイ酸塩化合物で結合された炭化ケイ素であってもよい。なお、ハニカム焼成体が金属ケイ素等のケイ素を含む場合には、これらのケイ素の表面にも、シリカ層が形成されていることになる。
これらの中でも、ハニカム焼成体は、炭化ケイ素を98重量%以上含んでいるか、又は、炭化ケイ素と金属ケイ素とを98重量%以上含んでいることが好ましい。
【0032】
本実施形態のハニカム触媒体では、このようなハニカム構造体を構成する炭化ケイ素質ハニカム焼成体の表面に、酸化物セラミック又はゼオライトを含む触媒が担持されている。触媒は、ハニカム構造体を構成するハニカム焼成体のセル壁に担持されていることが好ましい。
図3は、本発明の第一実施形態のハニカム触媒体の一例を模式的に示す部分拡大図である。
図3に示すように、ハニカム焼成体を構成する炭化ケイ素粒子31は、互いにネック31aを介して結合されている。また、炭化ケイ素粒子31の表面には、シリカ(SiO)層32が形成されている。そして、触媒33が、シリカ層32を介して、炭化ケイ素粒子31の表面に担持されている。
【0033】
X線光電子分光法(XPS)を用いて測定したシリカ層の厚さは、5〜100nmである。
本発明の実施形態に係るハニカム触媒体において、シリカ層の厚さは、X線光電子分光法(XPS)を用いて測定することができる。X線光電子分光法(XPS)は、サンプル表面にX線を照射し、生じる光電子のエネルギーをエネルギーアナライザーと呼ばれる装置で測定する分析法である。X線光電子分光法(XPS)により、サンプルの構成元素とその電子状態を分析することができる。また、X線光電子分析とイオンスパッタリングを交互に繰り返すことにより、サンプルの深さ方向(厚さ方向)の組成の変化を知ることができる。
【0034】
本発明の実施形態に係るハニカム触媒体においては、イオンスパッタリングにより一定速度でサンプルの表面を削り取りながら、X線光電子分光法(XPS)によりその組成を分析することにより、シリカ層の深さ(厚さ)を決定することができる。このような測定方法を用いた測定結果に基づき、上記炭化ケイ素粒子の表面には、厚さが5〜100nmのシリカ層が形成されているとしている。
【0035】
上記シリカ層の厚さの下限は、20nmがより好ましく、30nmがさらに好ましい。また、上記シリカ層の厚さの上限は、70nmがより好ましく、60nmがさらに好ましい。
また、炭化ケイ素粒子の表面に形成されたシリカ層の厚さは、8〜95nmであることがより好ましい。
【0036】
本明細書において、シリカ層の厚さとは、ハニカム触媒体を車等に搭載して使用する前のシリカ層の厚さをいう。
【0037】
本発明の実施形態に係るハニカム触媒体において、シリカ層の重量割合は、シリカ層を形成する前後のハニカム焼成体又はハニカム構造体の重量を測定することにより得られる重量増加率のことである。
上記重量増加率は、0.06〜0.49重量%が好ましい。この場合、シリカ層を一定の厚さにすることができる。
【0038】
次に、触媒について説明する。
触媒の主成分は、酸化物セラミック又はゼオライトである。触媒は、酸化物セラミック又はゼオライト以外に、貴金属成分又はアルカリ土類金属等のその他の成分を含有していてもよい。
なお、ゼオライトは、酸化物セラミックの一種と考えることもできるが、本明細書においては、ゼオライトは酸化物セラミックに含まれないとして区別することとする。また、ゼオライトは、アルミノケイ酸塩であるゼオライトだけでなく、アルミノリン酸塩、アルミノゲルマニウム酸塩等のゼオライト類縁体も含むこととする。
【0039】
酸化物セラミックとしては、Al、ZrO、TiO、CeO等のセラミックが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記セラミックの中では、Al又はCeOからなるセラミックが好ましい。
【0040】
ゼオライトとしては、β型ゼオライト、Y型ゼオライト、フェリエライト、ZSM−5型ゼオライト、モルデナイト、フォージャサイト、A型ゼオライト、L型ゼオライト、SAPO(Silicoaluminophosphate、シリコアルミノリン酸塩)、又は、MeAPO(Metalaluminophosphate、金属アルミノリン酸塩)等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記ゼオライトの中では、β型ゼオライト、ZSM−5型ゼオライト、又は、SAPOが好ましい。また、SAPOの中では、SAPO−5、SAPO−11、又は、SAPO−34が好ましく、SAPO−34がより好ましい。そして、MeAPOの中では、MeAPO−34が好ましい。
【0041】
また、上記ゼオライトは、金属イオンによりイオン交換されていることが好ましい。
金属イオンとしては、銅イオン、鉄イオン、ニッケルイオン、亜鉛イオン、マンガンイオン、コバルトイオン、銀イオン、又は、バナジウムイオン等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記金属イオンの中では、NOx浄化率の観点から、銅イオン又は鉄イオンが好ましい。
【0042】
ハニカム構造体に担持された酸化物セラミック又はゼオライトの量は、50g/L以上であり、50〜150g/Lであることが好ましい。また、ハニカム構造体に担持された酸化物セラミック又はゼオライトの量は、80g/L以上であることがより好ましく、80〜150g/Lであることがさらに好ましい。
酸化物セラミック又はゼオライトの担持量が50g/L未満であると、触媒量が少ないため、ハニカム触媒体を尿素SCR装置に用いた場合に充分なNOx浄化率が得られない。もしくは、ハニカム触媒体のサイズを大きくしなければならなくなる。一方、酸化物セラミック又はゼオライトの担持量が150g/Lを超えると、触媒量が多すぎるため、ハニカム焼成体の気孔径が小さくなり、ハニカム構造体の圧力損失が上昇してしまう。
本明細書において、ハニカム構造体に担持された酸化物セラミック又はゼオライトの量とは、ハニカム構造体の見掛けの体積1リットル当たりの酸化物セラミック又はゼオライトの重量をいう。
なお、ハニカム構造体の見掛けの体積は、接着材層及び/又はコート層の体積を含むこととする。
【0043】
上記酸化物セラミック又は上記ゼオライトは、ハニカム焼成体のセル壁の内部に担持されていることが好ましい。
セル壁の内部に酸化物セラミック又はゼオライトが担持されることにより、セル壁上に多量の触媒が担持されることを防ぎ、ハニカム触媒体の圧力損失の上昇を防止することができる。また、セル壁を通過する排ガスの流速に対して、ゼオライト等の触媒と排ガスとの接触距離を充分にとることができるため、ゼオライト等の触媒が触媒機能を発揮することができる。
【0044】
本実施形態のハニカム触媒体において、触媒(酸化物セラミック又はゼオライト)の平均粒子径は特に限定されないが、0.5〜5μmであることが好ましい。
触媒の平均粒子径が0.5μm未満である場合、炭化ケイ素粒子間のネック上に触媒が溜まりやすくなり、浄化性能が悪くなる。一方、触媒の平均粒子径が5μmを超える場合、排ガスと触媒との接触が悪くなったり、触媒の分散が悪くなったりする。
【0045】
次に、本発明の第一実施形態に係るハニカム触媒体の製造方法について説明する。
本実施形態のハニカム触媒体の製造方法は、
主に炭化ケイ素粒子からなり、多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設された多孔質のハニカム焼成体を含むハニカム構造体と、上記ハニカム構造体に担持された、酸化物セラミック又はゼオライトを含む触媒とを備えたハニカム触媒体の製造方法であって、
上記ハニカム焼成体を含むハニカム構造体を、酸化雰囲気下において、700〜1100℃、1〜10時間熱処理して酸化する酸化工程と、
上記酸化工程の後、上記ハニカム構造体に、酸化物セラミック又はゼオライトを含む触媒を担持する担持工程とを含み、
上記酸化工程では、上記ハニカム焼成体に含まれる炭化ケイ素粒子の表面に、X線光電子分光法(XPS)を用いて測定した厚さが5〜100nmであるシリカ層を形成し、
上記担持工程では、上記酸化物セラミック又は上記ゼオライトを50g/L以上担持することを特徴とする。
【0046】
本実施形態のハニカム触媒体の製造方法で用いるハニカム構造体は、例えば、セラミック原料を成形することにより、多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設されたハニカム成形体を作成する成形工程と、上記ハニカム成形体を焼成してハニカム焼成体を作製する焼成工程と、複数の上記ハニカム焼成体を接着材層を介して接着させることにより、セラミックブロックを作製する接着工程とを経ることによって作製することができる。
【0047】
以下、図2(a)及び図2(b)に示したハニカム焼成体を含むハニカム構造体に触媒が担持されたハニカム触媒体を製造する方法について工程順に説明する。
まず、セラミック原料を成形することにより、多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設されたハニカム成形体を作製する成形工程を行う。
具体的には、まず、セラミック粉末としての平均粒子径の異なる炭化ケイ素粉末、有機バインダ、液状の可塑剤、潤滑剤、及び、水を混合することにより、ハニカム成形体製造用のセラミック原料(湿潤混合物)を調製する。
続いて、上記湿潤混合物を押出成形機に投入する。上記湿潤混合物を押出成形することにより所定の形状のハニカム成形体を作製する。
【0048】
次に、ハニカム成形体を所定の長さに切断し、マイクロ波乾燥機、熱風乾燥機、誘電乾燥機、減圧乾燥機、真空乾燥機、凍結乾燥機等を用いて乾燥させる乾燥工程を行った後、所定のセルの端部に封止材となる封止材ペーストを充填して上記セルを目封じする封止工程を行う。
ここで、封止材ペーストとしては、上記セラミック原料(湿潤混合物)を用いることができる。
【0049】
次に、ハニカム成形体中の有機物を脱脂炉中で加熱する脱脂工程を行い、焼成炉に搬送し、焼成工程を行うことにより、図2(a)及び図2(b)に示したようなハニカム焼成体を作製する。
なお、セルの端部に充填された封止材ペーストは、加熱により焼成され、封止材となる。
また、切断工程、乾燥工程、封止工程、脱脂工程及び焼成工程の条件は、従来からハニカム焼成体を作製する際に用いられている条件を適用することができる。
【0050】
次に、複数の上記ハニカム焼成体を接着材層を介して接着させることにより、セラミックブロックを作製する接着工程を行う。以下、接着工程の一例を説明する。
まず、ハニカム焼成体のそれぞれの所定の側面に、接着材ペーストを塗布して接着材ペースト層を形成する。そして、この接着材ペースト層の上に、順次他のハニカム焼成体を積層する工程を繰り返す。このような方法により、ハニカム焼成体の側面に接着材ペーストが塗布されてなるハニカム焼成体の集合体を作製する。
続いて、ハニカム焼成体の集合体を乾燥機等を用いて加熱して、接着材ペーストを乾燥固化させることによって、複数のハニカム焼成体が接着材層を介して接着されてなるセラミックブロックを作製する。
なお、接着材ペーストとしては、例えば、無機バインダと有機バインダと無機粒子とからなるものを使用する。また、上記接着材ペーストは、さらに無機繊維及び/又はウィスカを含んでいてもよい。
【0051】
その後、セラミックブロックに切削加工を施す外周加工工程を行う。
具体的には、セラミックブロックに対して、ダイヤモンドカッターを用いて切削加工を施すことにより、外周が円柱状に加工されたセラミックブロックを作製する。
【0052】
続いて、円柱状のセラミックブロックの外周面にコート材ペーストを塗布し、上記コート材ペーストを乾燥固化させることによりコート層を形成するコート層形成工程を行う。
なお、コート材ペーストとしては、上記接着材ペーストを使用することができる。
以上の工程により、ハニカム構造体を作製することができる。
【0053】
次に、ハニカム構造体を、酸化雰囲気下において、700〜1100℃、1〜10時間熱処理して酸化する酸化工程を行う。
酸化工程は、酸素を含む雰囲気下において行うものであり、コスト面から考えると、大気雰囲気下で行うことが好ましい。
酸化雰囲気中の酸素濃度(酸素に換算した含有量)は特に限定されないが、5〜21容量%であることが好ましい。コスト面から考えると、空気を用いることが好ましい。
酸化雰囲気中の酸素濃度が5容量%未満であると、ハニカム焼成体の炭化ケイ素粒子の表面の酸化が不安定となり、所望の厚さのシリカ層を形成することが困難となる。また、酸化雰囲気中の酸素濃度が5容量%未満であると、長時間熱処理を行う必要があり、製造効率が低下しやすくなる。一方、酸化雰囲気中の酸素濃度が21容量%を超えると、酸素ガスを準備する等、酸化雰囲気を生成する工程が必要となり、製造効率が低下しやすくなる。
【0054】
酸化工程における熱処理温度は、700〜1100℃であることが好ましい。
熱処理温度が700℃未満であると、所望の厚さのシリカ層を形成することが難しくなる。また、目的の厚さのシリカ層を形成するために長時間熱処理を行う必要がある。一方、熱処理温度が1100℃を超えると、熱処理温度をコントロールすることが難しい。
【0055】
酸化工程における熱処理時間は、1〜10時間であり、熱処理温度、及び、目的のシリカ層の厚さ等に応じて適宜決定される。
具体的には、熱処理温度が、700℃以上850℃未満、850℃以上950℃未満、950℃以上1100℃未満である場合、熱処理時間は、それぞれ、3〜12時間、2〜10時間、0.5〜4.5時間であることが好ましい。特に、1000〜1100℃、1〜4時間で酸化工程を行うことが好ましい。
熱処理時間が下限値よりも短いと、目的の厚さのシリカ層を形成することが困難となる。一方、熱処理時間が上限値を超えると、目的の厚さよりも厚いシリカ層が形成されてしまう。その結果、後述する担持工程において、ハニカム構造体に触媒を均一に担持することが困難となる。
本明細書において、熱処理時間とは、目的の熱処理温度まで昇温した後、その熱処理温度を保持する時間のことをいう。従って、酸化工程全体においてハニカム構造体を加熱している時間は、上記熱処理時間の他に、昇温及び降温のために必要な時間が含まれる。
【0056】
上記の条件で酸化工程を行うことにより、ハニカム構造体を構成するハニカム焼成体に含まれる炭化ケイ素粒子の表面に、X線光電子分光法(XPS)を用いて測定した厚さが5〜100nmであるシリカ層を形成することができる。
【0057】
上記酸化工程の後、ハニカム構造体に、酸化物セラミック又はゼオライトを含む触媒を担持する担持工程を行う。
ハニカム構造体に担持する触媒としては、本実施形態のハニカム触媒体で説明した触媒を用いることができる。
ハニカム構造体に触媒を担持する方法としては、例えば、酸化物セラミック又はゼオライトを含むスラリーにハニカム構造体を浸漬した後、引き上げて加熱する方法等が挙げられる。
【0058】
担持工程では、酸化物セラミック又はゼオライトの担持量を50g/L以上とし、50〜150g/Lとすることが好ましい。また、酸化物セラミック又はゼオライトの担持量を80g/L以上とすることがより好ましく、80〜150g/Lとすることがさらに好ましい。
酸化物セラミック又はゼオライトの担持量の調整は、例えば、スラリーにハニカム構造体を浸漬する工程及び加熱する工程を繰り返す方法、又は、スラリー濃度を変更する方法等により行うことができる。
【0059】
以上の工程によって、本発明の第一実施形態に係るハニカム触媒体を製造することができる。
【0060】
なお、上述したハニカム触媒体の製造方法では、コート層形成工程の後に酸化工程を行っている。しかしながら、本実施形態のハニカム触媒体の製造方法では、接着工程と外周加工工程との間、又は、外周加工工程とコート層形成工程との間に酸化工程を行ってもよい。
また、酸化工程を行うハニカム構造体としては、上記の工程で作製するハニカム構造体に限定されず、任意の集合型ハニカム構造体を用いることができる。例えば、コート層が形成されていないハニカム構造体に対して酸化工程を行ってもよい。
【0061】
以下、本実施形態のハニカム触媒体、及び、ハニカム触媒体の製造方法の作用効果について説明する。
(1)本実施形態のハニカム触媒体、及び、ハニカム触媒体の製造方法では、ハニカム構造体を構成するハニカム焼成体の炭化ケイ素粒子の表面に、シリカ層が形成されている。そして、酸化物セラミック又はゼオライトを含む触媒が、炭化ケイ素粒子の表面に、シリカ層を介して担持されている。
炭化ケイ素粒子の表面に酸化物層が形成されていると、触媒が均一に担持される。
【0062】
(2)本実施形態の炭化ケイ素質ハニカム触媒体、及び、ハニカム触媒体の製造方法では、X線光電子分光法(XPS)を用いて測定したシリカ層の厚さが、5〜100nmである。
X線光電子分光法(XPS)を用いて測定したシリカ層の厚さが5〜100nmの範囲にあると、酸化物セラミック又はゼオライトを含む触媒が、炭化ケイ素粒子の表面に均一に担持されやすくなる。
【0063】
(3)本実施形態のハニカム触媒体、及び、ハニカム触媒体の製造方法では、酸化物セラミック又はゼオライトは、50g/L以上担持されている。
本実施形態のハニカム触媒体では、酸化物セラミック又はゼオライトが、ハニカム焼成体の炭化ケイ素粒子の表面に均一に担持されている。そして、酸化物セラミック又はゼオライトの担持量が50g/L以上であるため、ハニカム触媒体を尿素SCR装置に用いた場合に充分なNOx浄化率が得ることができる。
【実施例】
【0064】
以下、本発明の第一実施形態をより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明はこの実施例のみに限定されるものではない。
【0065】
(実施例1)
(ハニカム触媒体の作製)
(1)ハニカム構造体の作製工程
平均粒子径22μmの炭化ケイ素の粗粉末52.8重量%と、平均粒子径0.5μmの炭化ケイ素の微粉末22.6重量%とを混合し、得られた混合物に対して、アクリル樹脂2.1重量%、有機バインダ(メチルセルロース)4.6重量%、潤滑剤(日油社製 ユニルーブ)2.8重量%、グリセリン1.3重量%、及び、水13.8重量%を加えて混練して湿潤混合物を得た。そして、湿潤混合物を押出成形した後、切断することにより、図2(a)及び図2(b)に示した形状と同様の形状であって、セルを封止していない生のハニカム成形体を作製した。
【0066】
次いで、マイクロ波乾燥機を用いて上記生のハニカム成形体を乾燥させ、ハニカム成形体の乾燥体とした後、上記湿潤混合物と同様の組成の封止材ペーストを所定のセルに充填し、再び乾燥機を用いて乾燥させた。
【0067】
ハニカム成形体の乾燥体を400℃で脱脂処理を行い、さらに、常圧のアルゴン雰囲気下2200℃、3時間の条件で焼成処理を行うことにより、気孔率が45%、平均気孔径が15μm、大きさが34.3mm×34.3mm×150mm、セルの数(セル密度)が46.5個/cm、セル壁の厚さが0.25mm(10mil)の炭化ケイ素焼結体からなるハニカム焼成体を作製した。
【0068】
次に、平均繊維長20μm、平均繊維径2μmのアルミナファイバ30重量%、平均粒子径0.6μmの炭化ケイ素粒子21重量%、シリカゾル(固形分30重量%)15重量%、カルボキシメチルセルロース5.6重量%、及び、水28.4重量%を含む接着材ペーストを調製した。
そして、16個のハニカム焼成体を用いて、ハニカム焼成体の側面に接着材ペーストを塗布し、この接着材ペーストを介してハニカム焼成体を縦4個、横4個の計16個接着させることにより、ハニカム焼成体の集合体を作製した。
【0069】
さらに、ハニカム焼成体の集合体を120℃で加熱して、接着材ペーストを乾燥固化させることにより、厚さが1.0mmの接着材層が形成された四角柱状のセラミックブロックを作製した。
【0070】
次に、ダイヤモンドカッターを用いて、セラミックブロックの外周を切断することにより、外周が直径142mmの円柱状に加工されたセラミックブロックを作製した。
次に、外周が円柱状に加工されたセラミックブロックの外周面にコート材ペーストを塗布し、コート材ペースト層を形成した。そして、このコート材ペースト層を120℃で乾燥固化させてコート層を形成することにより、外周にコート層が形成された直径143.8mm×長さ150mmの円柱状のハニカム構造体を作製した。
この際、コート材ペーストとしては、上記接着材ペーストを使用した。
【0071】
(2)酸化工程
作製したハニカム構造体を、空気雰囲気下において、室温から昇温速度300℃/時間で700℃まで昇温し、700℃で3時間保持した後、降温速度100℃/時間で4時間かけて300℃まで降温した後、室温(25℃)に取り出した。
上記酸化工程により、ハニカム構造体を構成するハニカム焼成体の表面が酸化される。具体的には、ハニカム焼成体の炭化ケイ素粒子の表面にシリカ層が形成される。
【0072】
(3)担持工程
酸化工程を行ったハニカム構造体のセル壁に、触媒として下記ゼオライトを担持させた。
まず、銅イオン交換ゼオライト粉末(平均粒子径2μm)を充分量の水と混合して攪拌し、ゼオライトスラリーを作製した。このゼオライトスラリー中にハニカム構造体を一方の端面を下にして浸漬し、1分間保持した。続いて、このハニカム構造体を110℃で1時間加熱する乾燥工程を行い、さらに700℃で1時間焼成する焼成工程を行って、ゼオライト担持層を形成した。
このとき、ゼオライト担持層の形成量が、ハニカム構造体の見掛けの体積1リットルあたり100gとなるように、ゼオライトスラリーへの浸漬、乾燥工程を繰り返し行った。
以上により、ゼオライトが100g/L担持されているハニカム触媒体を作製した。
【0073】
(実施例2〜6)
酸化工程における熱処理温度及び熱処理時間を表1に示すように変更した他は、実施例1と同様にしてハニカム触媒体を作製した。
実施例2〜6における熱処理温度及び熱処理時間は、それぞれ、900℃で10時間、1000℃で3時間、1100℃で1時間、1100℃で3時間、及び、1100℃で4時間である。
【0074】
(比較例1)
酸化工程を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にしてハニカム触媒体を作製した。
【0075】
(比較例2)
酸化工程における熱処理温度を1100℃、熱処理時間を5時間に変更した他は、実施例1と同様にしてハニカム触媒体を作製した。
【0076】
(ハニカム触媒体の評価)
(1)重量増加率の測定
実施例1〜6及び比較例1、2で作製したハニカム触媒体について、ハニカム触媒体を構成するハニカム焼成体の重量増加率を測定した。
重量増加率の測定にあたっては、実施例1〜6及び比較例1、2で作製したハニカム触媒体から、ダイヤモンドカッターを使用することにより1個のハニカム焼成体(34.3mm×34.3mm×150mm)を切り出し、それぞれ酸化工程を行ったハニカム焼成体の重量Mを測定した。また、各実施例及び比較例で作製した酸化工程を行う前(ハニカム焼成体の集合体を作製する前)のハニカム焼成体の重量Mを測定し、以下の式から重量増加率を測定した。
重量増加率(重量%)=[(M−M)/M]×100
重量増加率の測定の結果を表1に示す。
実施例1〜6における重量増加率は、それぞれ、0.06重量%、0.20重量%、0.25重量%、0.30重量%、0.33重量%及び0.49重量%であった。また、比較例1及び2における重量増加率は、それぞれ、0重量%及び0.56重量%であった。
【0077】
(2)X線光電子分光法(XPS)によるシリカ層の厚さの測定
実施例1〜6及び比較例1、2で作製したハニカム触媒体について、X線光電子分光法(XPS)により、ハニカム焼成体のシリカ層の厚さを測定した。
XPS測定用サンプルとして、実施例1〜6及び比較例1、2で作製したハニカム触媒体から、2cm×2cm×0.25mmの大きさの炭化ケイ素部分を切り出した。そして、XPS測定用サンプルの破断面ではない表面を観察した。
XPS装置としては、ULVAC−PHI社製のQuantera SXMを用い、X線源としては、モノクロ化されたAl−Kα線(Monochromated Al−Kα)を用いた。測定条件は、電圧:15kV、出力:25W、測定領域:100μmφとした。イオンスパッタ条件は、イオン種:Ar、電圧:1kV(実施例1〜4及び比較例1)又は2kV(実施例5、6及び比較例2)、スパッタレート(SiO換算):1.5nm/min(実施例1〜4及び比較例1)又は5.4nm/min(実施例5、6及び比較例2)とした。
上記XPS装置を用いて、各XPS測定用サンプルの定性分析(ワイドスキャン)、及び、C、O、Siについての深さ方向分析を行った。深さ方向分析の結果より、SiOプロファイルの最高強度と最低強度の中間となる強度の時間と、各XPS測定用サンプルのスパッタレート(SiO換算)からシリカ層の厚さを算出した。
X線光電子分光法(XPS)によるシリカ層の厚さの測定の結果を表1に示す。
実施例1〜6におけるシリカ層の厚さは、それぞれ、8nm、26nm、36nm、45nm、65nm及び95nmであった。また、比較例1及び2におけるシリカ層の厚さは、それぞれ、4nm未満及び109nmであった。
【0078】
(3)NOx浄化率の測定
実施例1〜6及び比較例1、2で作製したハニカム触媒体について、NOx浄化率を測定した。
NOx浄化率の測定にあたっては、実施例1〜6及び比較例1、2で作製したハニカム触媒体から、ダイヤモンドカッターを使用することにより1個のハニカム焼成体(34.3mm×34.3mm×150mm)を切り出し、切り出したハニカム焼成体をさらに切断してφ1インチ(25.4mm)×3インチ(76.2mm)の円柱短尺体を作製した。
次に、上述した封止工程及び脱脂工程と同様に、作製した短尺体のセルのいずれか一方の端部が封止されるように短尺体のセルを接着材ペーストで封止し、セルが封止された短尺体を400℃で脱脂することによりNOx浄化率測定用サンプルを作製した。
NOx浄化率の測定は、NOx浄化率測定装置(堀場製作所製 触媒評価装置SIGU−2000)を用いて行った。
NOx浄化率測定装置は、ガス発生部と反応部とからなり、ガス発生部で発生させた擬似排ガス及びアンモニアを、NOx浄化率測定用サンプルをセットした反応部に流通させた。
擬似排ガスの組成(体積比)は、NO:350ppm(NO/NOx=0.25)、O:14%、HO:10%、N:balanceであり、また、NH/NOx=1である。各ガスの流量を流量調節器を用いて調節することにより上記組成とした。
また、反応部の温度を200℃で一定とした。そして、ゼオライトと擬似排ガス及びアンモニアとが接触する条件として、空間速度(SV)を70000hr−1に設定した。
擬似排ガスがNOx浄化率測定用サンプルを流通する前のNOx濃度N、及び、擬似排ガスがNOx浄化率測定用サンプルを通過した後のNOx濃度Nを測定し、以下の式からハニカム触媒体のNOx浄化率を測定した。
NOx浄化率(%)=[(N−N)/N]×100
NOx浄化率の測定結果を表1に示す。
実施例1〜6におけるNOx浄化率は、それぞれ、62%、66%、70%、74%、68%及び60%であった。また、比較例1及び2におけるNOx浄化率は、それぞれ、48%及び52%であった。
【0079】
実施例1〜6及び比較例1、2で作製したハニカム触媒体について、熱処理温度、熱処理時間、重量増加率、シリカ層の厚さ、及び、NOx浄化率の測定結果をまとめて表1に示した。
また、実施例1〜6及び比較例1、2におけるシリカ層の厚さ、及び、NOx浄化率の測定結果から、実施例及び比較例におけるシリカ層の厚さとNOx浄化率との関係を図4のグラフに示した。
【0080】
【表1】

【0081】
重量増加率の測定結果より、酸化工程を行うことにより、ハニカム焼成体の重量が増加することが分かる。
また、X線光電子分光法(XPS)によるシリカ層の厚さの測定結果より、酸化工程を行った実施例1〜6及び比較例2のハニカム触媒体では、シリカ層の厚さは、8〜109nmであり、それぞれシリカ層が形成されていることが分かる。一方、酸化工程を行わなかった比較例1のハニカム触媒体では、シリカ層の厚さは、4nm未満であり、有効なシリカ層が形成されていないことが分かる。図4では、比較例1におけるシリカ層の厚さを便宜的に0nmとしている。
以上より、酸化工程による重量増加率は、ハニカム焼成体中のシリカ層の重量割合と考えられる。
【0082】
さらに、NOx浄化率の測定結果より、実施例1〜6のように、シリカ層の厚さが8〜95nmである場合、NOx浄化率は、60〜74%と高い値であった。一方、比較例1のように、有効なシリカ層が形成されていない場合、及び、比較例2のように、シリカ層の厚さが109nmと厚い場合、NOx浄化率は、それぞれ48%及び52%と低い値であった。
以上より、シリカ層の厚さを所定の範囲(5〜100nm、好ましくは8〜95nm)に制御することによって、NOx浄化率を向上させることができることが分かる。これらの結果より、シリカ層の厚さを所定の範囲に制御することによって、ゼオライトを、炭化ケイ素粒子の表面に均一に担持させることができ、NOx浄化率を向上させることができると考えられる。
【0083】
なお、炭化ケイ素粒子の表面への触媒の担持され方は、触媒の種類に大きく影響することはないと考えられる。従って、触媒としてゼオライトを用いる以外に、Al等の酸化物セラミックを用いた場合においても、シリカ層の厚さを所定の範囲に制御することによって、上記触媒を炭化ケイ素粒子の表面に均一に担持することができると想定される。
そのため、ゼオライトを用いたNOx浄化率の向上と同様にして、酸化物セラミックを用いて、さらにこれらの酸化物セラミックに貴金属又はアルカリ土類金属等を担持することにより、排ガス中に含まれるCO、HC等の有害成分の浄化率を向上させることができると考えられる。
【0084】
(第二実施形態)
以下、本発明の一実施形態である第二実施形態について説明する。
本実施形態では、ハニカム触媒体を構成するハニカム構造体が、1つのハニカム焼成体からなる。このような、1つのハニカム焼成体からなるハニカム構造体は、一体型ハニカム構造体ともいう。
【0085】
図5(a)は、本発明の第二実施形態のハニカム触媒体を構成するハニカム構造体の一例を模式的に示す斜視図であり、図5(b)は、図5(a)に示したハニカム構造体のB−B線断面図である。
【0086】
図5(a)及び図5(b)に示すハニカム構造体40は、多数のセル51a及び51bがセル壁53を隔てて長手方向(図5(a)中、矢印bの方向)に並設された円柱状の1つのハニカム焼成体からなるセラミックブロック43を有し、セラミックブロック43の周囲にコート層42が形成されてなる。なお、コート層は、必要に応じて形成されていればよい。
【0087】
ハニカム構造体40では、セル51a及び51bのいずれかの端部が封止材52で封止されている。従って、一方の端面54が開口したセル51aに流入した排ガスG2(図5(b)中、排ガスをG2で表し、排ガスの流れを矢印で示す)は、必ずセル51aと他方の端面55が開口したセル51bとを隔てるセル壁53を通過した後、セル51bから流出するようになっている。従って、セル壁53がPM等を捕集するためのフィルタとして機能する。
【0088】
本発明の第一実施形態と同様、ハニカム構造体を構成するハニカム焼成体は、主に炭化ケイ素粒子からなり、具体的には、炭化ケイ素を60重量%以上含んでいる。
また、ハニカム焼成体は、炭化ケイ素を60重量%以上含む限り、炭化ケイ素以外の他の成分を含んでいてもよい。例えば、ハニカム焼成体は、40重量%以下のケイ素を含んでいてもよい。ハニカム焼成体の構成材料の主成分は、炭化ケイ素に金属ケイ素が配合されたケイ素含有炭化ケイ素であってもよいし、ケイ素又はケイ酸塩化合物で結合された炭化ケイ素であってもよい。
【0089】
本実施形態のハニカム触媒体は、このようなハニカム構造体に、酸化物セラミック又はゼオライトを含む触媒を担持させたものである。触媒は、ハニカム構造体を構成するハニカム焼成体のセル壁に担持されていることが好ましい。
本発明の第一実施形態と同様、ハニカム焼成体を構成する炭化ケイ素粒子の表面に、シリカ層が形成されている。そして、触媒は、シリカ層を介して、炭化ケイ素粒子の表面に担持されている。
【0090】
本実施形態のハニカム触媒体において、シリカ層の種類、シリカ層の厚さ、触媒の種類、触媒の担持され方、触媒の平均粒子径、及び、ハニカム構造体(セル壁)に担持された酸化物セラミック又はゼオライトの量については、本発明の第一実施形態と同様である。
【0091】
本実施形態のハニカム触媒体を構成するハニカム構造体を作製する場合には、押出成形により成形するハニカム成形体の大きさが、本発明の第一実施形態において説明したハニカム成形体の大きさに比べて大きく、その外形が異なる他は、本発明の第一実施形態と同様にしてハニカム成形体を作製する。
【0092】
その他の工程は、本発明の第一実施形態においてハニカム構造体を作製する工程と同様である。但し、本発明の第二実施形態では、ハニカム構造体が1つのハニカム焼成体からなるため、接着工程を行う必要はない。また、本発明の第二実施形態では、外周加工工程を行う必要はない。
【0093】
上記のようにして作製したハニカム構造体に対して、本発明の第一実施形態で説明した酸化工程(ハニカム焼成体の炭化ケイ素粒子の表面にシリカ層を形成する工程)及び担持工程(触媒としてゼオライト等の担持層を形成する工程)を行うことにより、本発明の第二実施形態に係るハニカム触媒体を製造することができる。
【0094】
なお、本実施形態のハニカム触媒体の製造方法では、コート層形成工程の後に酸化工程を行ってもよい。外周加工工程を行う場合には、焼成工程と外周加工工程との間、又は、外周加工工程とコート層形成工程との間に酸化工程を行ってもよい。また、外周加工工程を行わない場合には、焼成工程とコート層形成工程との間に酸化工程を行ってもよい。
また、酸化工程を行うハニカム構造体としては、上記の工程で作製するハニカム構造体に限定されず、任意の一体型ハニカム構造体を用いることができる。例えば、コート層が形成されていないハニカム構造体に対して酸化工程を行ってもよい。
【0095】
本実施形態のハニカム触媒体、及び、ハニカム触媒体の製造方法においても、本発明の第一実施形態において説明した効果(1)〜(3)を発揮することができる。
【0096】
(その他の実施形態)
集合型ハニカム構造体を用いてハニカム触媒体を製造する場合、本発明の第一実施形態では、ハニカム構造体に酸化物セラミック又はゼオライトを含む触媒を担持させているが、ハニカム焼成体に上記触媒を担持させた後、上記触媒を担持させたハニカム焼成体を接着材層を介して複数接着させてもよい。
【0097】
本発明のハニカム触媒体において、ハニカム構造体の形状は、円柱状に限定されるものではなく、楕円柱状、多角柱状等の任意の柱の形状であればよい。
【0098】
本発明のハニカム触媒体において、ハニカム構造体を構成するハニカム焼成体の気孔率は、特に限定されないが、35〜70%であることが好ましい。
ハニカム焼成体の気孔率が35%未満であると、ハニカム焼成体がパティキュレート(PM)の目詰まりを起こしやすくなる。一方、ハニカム焼成体の気孔率が70%を超えると、ハニカム焼成体の強度が低下して容易に破壊されやすくなる。
【0099】
また、ハニカム構造体を構成するハニカム焼成体の平均気孔径は、5〜30μmであることが好ましい。
ハニカム焼成体の平均気孔径が5μm未満であると、パティキュレートが容易に目詰まりを起こしやすくなる。一方、ハニカム焼成体の平均気孔径が30μmを超えると、パティキュレートがセル壁の気孔を通り抜けてしまい、パティキュレートを捕集することができず、フィルタとしての機能が不充分となる。
【0100】
なお、上記気孔率及び気孔径は、例えば、従来公知の方法である水銀圧入法により測定することができる。
【0101】
ハニカム焼成体のセル壁の厚さは、特に限定されないが、0.12〜0.40mmであることが好ましい。
セル壁の厚さが0.12mm未満であると、セル壁の厚さが薄くなり、ハニカム焼成体の強度を保つことができなくなる。一方、セル壁の厚さが0.40mmを超えると、ハニカム構造体の圧力損失の上昇を引き起こしやすくなる。
【0102】
ハニカム焼成体の長手方向に垂直な断面におけるセル密度は、特に限定されないが、好ましい下限は、31.0個/cm(200個/inch)、好ましい上限は、93.0個/cm(600個/inch)、より好ましい下限は、38.8個/cm(250個/inch)、より好ましい上限は、77.5個/cm(500個/inch)である。
【0103】
本発明のハニカム触媒体において、各セルのハニカム焼成体の長手方向に垂直な断面の形状は、四角形に限定されるものではなく、例えば、円形、楕円形、五角形、六角形、台形、又は、八角形等の任意の形状であればよい。また、種々の形状を混在させてもよい。
【0104】
集合型ハニカム構造体を作製する際の接着工程は、接着材ペーストを各ハニカム焼成体の側面に塗布する方法以外に、例えば、作製するセラミックブロック(又はハニカム焼成体の集合体)の形状と略同形状の型枠内に各ハニカム焼成体を仮固定した状態とし、接着材ペーストを各ハニカム焼成体間に注入する方法等によって行ってもよい。
【0105】
また、集合型ハニカム構造体を作製する際に、断面形状が異なる複数種類のハニカム焼成体を作製し、複数種類のハニカム焼成体を組み合わせて、ハニカム焼成体が接着材層を介して複数個結束されてなるセラミックブロックを作製することにより、外周加工工程を省略してもよい。
例えば、以下のような断面形状が異なる3種類のハニカム焼成体を作製してもよい。第1のハニカム焼成体は、断面形状が2本の直線と1本の円弧とで囲まれた形状である。第2のハニカム焼成体は、断面形状が3本の直線と1本の円弧とで囲まれた形状である。第3のハニカム焼成体は、断面形状が4本の直線で囲まれた形状(四角形)である。断面形状の異なるこれら3種類のハニカム焼成体は、押出形成において用いるダイスの形状を変更することにより作製することができる。そして、第1のハニカム焼成体を8個、第2のハニカム焼成体及び第3のハニカム焼成体をそれぞれ4個ずつ組み合わせることにより、円柱状のハニカム構造体を作製することができる。
【0106】
本発明のハニカム触媒体において、ハニカム構造体を構成するハニカム焼成体を作製する際に用いられる湿潤混合物に含まれる有機バインダとしては、特に限定されず、例えば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレングリコール等が挙げられる。これらのなかでは、メチルセルロースが好ましい。有機バインダの配合量は、通常、セラミック粉末100重量部に対して、1〜10重量部が好ましい。
【0107】
湿潤混合物に含まれる可塑剤としては、特に限定されず、例えば、グリセリン等が挙げられる。
また、湿潤混合物に含まれる潤滑剤としては、特に限定されず、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル等のポリオキシアルキレン系化合物等が挙げられる。
潤滑剤の具体例としては、例えば、ポリオキシエチレンモノブチルエーテル、ポリオキシプロピレンモノブチルエーテル等が挙げられる。
なお、可塑剤、潤滑剤は、場合によっては、湿潤混合物に含まれていなくてもよい。
【0108】
また、湿潤混合物を調製する際には、分散媒液を使用してもよく、分散媒液としては、例えば、水、ベンゼン等の有機溶媒、メタノール等のアルコール等が挙げられる。
さらに、湿潤混合物中には、成形助剤が添加されていてもよい。
成形助剤としては特に限定されず、例えば、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等が挙げられる。
【0109】
さらに、湿潤混合物には、必要に応じて酸化物系セラミックを成分とする微小中空球体であるバルーンや、球状アクリル粒子、グラファイト等の造孔剤を添加してもよい。
バルーンとしては特に限定されず、例えば、アルミナバルーン、ガラスマイクロバルーン、シラスバルーン、フライアッシュバルーン(FAバルーン)、ムライトバルーン等が挙げられる。これらの中では、アルミナバルーンが好ましい。
【0110】
接着材ペースト及びコート材ペーストに含まれる無機バインダとしては、例えば、シリカゾル、アルミナゾル等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。無機バインダの中では、シリカゾルが好ましい。
【0111】
接着材ペースト及びコート材ペーストに含まれる有機バインダとしては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。有機バインダの中では、カルボキシメチルセルロースが好ましい。
【0112】
接着材ペースト及びコート材ペーストに含まれる無機繊維としては、例えば、シリカ−アルミナ、ムライト、アルミナ、シリカ等のセラミックファイバー等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。無機繊維の中では、アルミナファイバが好ましい。
【0113】
接着材ペースト及びコート材ペーストに含まれる無機粒子としては、例えば、炭化物粒子、窒化物粒子等が挙げられる。具体的には、炭化ケイ素粒子、窒化ケイ素粒子、窒化ホウ素粒子等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。無機粒子の中では、熱伝導性に優れる炭化ケイ素粒子が好ましい。
【0114】
さらに、接着材ペースト及びコート材ペーストには、必要に応じて酸化物系セラミックを成分とする微小中空球体であるバルーンや、球状アクリル粒子、グラファイト等の造孔剤を添加してもよい。バルーンとしては特に限定されず、例えば、アルミナバルーン、ガラスマイクロバルーン、シラスバルーン、フライアッシュバルーン(FAバルーン)、ムライトバルーン等が挙げられる。これらの中では、アルミナバルーンが好ましい。
【0115】
本発明のハニカム触媒体において、酸化物セラミック又はゼオライト以外の触媒の成分としては、例えば、白金、パラジウム、ロジウム等の貴金属、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属、バリウム等のアルカリ土類金属等が挙げられる。これらの中では、白金が好ましい。
【0116】
本発明のハニカム触媒体において、ハニカム構造体には、セルに封止材が設けられずに、セルの端部が封止されていなくてもよい。この場合、ハニカム構造体は、触媒を担持させることによって、排ガス中に含まれるCO、HC又はNOx等の有害なガス成分を浄化する触媒担体として機能する。
【0117】
本発明のハニカム触媒体においては、炭化ケイ素粒子の表面に、シリカ層が形成されていること、酸化物セラミック又はゼオライトを含む触媒が、炭化ケイ素粒子の表面に、シリカ層を介して担持されていること、X線光電子分光法(XPS)を用いて測定した上記シリカ層の厚さが、5〜100nmであること、及び、酸化物セラミック又はゼオライトが、50g/L以上担持されていることが必須の構成要素である。また、本発明のハニカム触媒体の製造方法においては、ハニカム構造体を、酸化雰囲気下、700〜1100℃、1〜10時間熱処理して酸化する酸化工程と、上記酸化工程の後、上記ハニカム構造体に、酸化物セラミック又はゼオライトを含む触媒を担持する担持工程とを含むこと、酸化工程では、上記ハニカム焼成体に含まれる炭化ケイ素粒子の表面に、X線光電子分光法(XPS)を用いて測定した厚さが5〜100nmであるシリカ層を形成すること、及び、担持工程では、上記酸化物セラミック又は上記ゼオライトを50g/L以上担持することが必須の構成要素である。
係る必須の構成要素に、本発明の第一実施形態、第二実施形態、及び、その他の実施形態で詳述した種々の構成(例えば、ハニカム焼成体の構成材料、触媒の種類、酸化工程の条件等)を適宜組み合わせることにより所望の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0118】
10、40 ハニカム構造体
11 接着材層
20 ハニカム焼成体
21a、21b、51a、51b セル
23、53 セル壁
31 炭化ケイ素粒子
32 シリカ層
33 触媒(酸化物セラミック又はゼオライトを含む触媒)



【特許請求の範囲】
【請求項1】
主に炭化ケイ素粒子からなり、多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設された多孔質のハニカム焼成体を含むハニカム構造体と、
前記ハニカム構造体に担持された、酸化物セラミック又はゼオライトを含む触媒とを備えたハニカム触媒体であって、
前記炭化ケイ素粒子の表面には、シリカ層が形成されており、
前記触媒は、前記炭化ケイ素粒子の表面に、前記シリカ層を介して担持されており、
X線光電子分光法(XPS)を用いて測定した前記シリカ層の厚さは、5〜100nmであり、
前記酸化物セラミック又は前記ゼオライトは、50g/L以上担持されていることを特徴とするハニカム触媒体。
【請求項2】
前記酸化物セラミック又は前記ゼオライトが、前記ハニカム焼成体のセル壁の内部に担持されている請求項1に記載のハニカム触媒体。
【請求項3】
前記ハニカム構造体は、1つのハニカム焼成体からなる請求項1又は2に記載のハニカム触媒体。
【請求項4】
前記ハニカム構造体は、複数のハニカム焼成体が接着材層を介して結束されてなる請求項1又は2に記載のハニカム触媒体。
【請求項5】
主に炭化ケイ素粒子からなり、多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設された多孔質のハニカム焼成体を含むハニカム構造体と、前記ハニカム構造体に担持された、酸化物セラミック又はゼオライトを含む触媒とを備えたハニカム触媒体の製造方法であって、
前記ハニカム焼成体を含むハニカム構造体を、酸化雰囲気下において、700〜1100℃、1〜10時間熱処理して酸化する酸化工程と、
前記酸化工程の後、前記ハニカム構造体に、酸化物セラミック又はゼオライトを含む触媒を担持する担持工程とを含み、
前記酸化工程では、前記ハニカム焼成体に含まれる炭化ケイ素粒子の表面に、X線光電子分光法(XPS)を用いて測定した厚さが5〜100nmであるシリカ層を形成し、
前記担持工程では、前記酸化物セラミック又は前記ゼオライトを50g/L以上担持することを特徴とするハニカム触媒体の製造方法。
【請求項6】
前記酸化工程において、前記酸化雰囲気中の酸素濃度は、5〜21容量%である請求項5に記載のハニカム触媒体の製造方法。
【請求項7】
複数のハニカム焼成体を接着材層を介して接着させる接着工程をさらに含む請求項5又は6に記載のハニカム触媒体の製造方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−101215(P2012−101215A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225194(P2011−225194)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000000158)イビデン株式会社 (856)
【Fターム(参考)】