説明

ハロゲンヒータランプユニットおよび熱処理装置

【課題】長期間にわたって使用した場合にも発光管の破損が生じない長寿命のハロゲンヒータランプユニットおよび熱処理装置を提供することにある。
【解決手段】熱処理装置は、ワークを加熱する熱処理空間を取り囲む、断熱材からなる断熱筐体11と、当該断熱筐体の上壁に形成された挿入孔15に挿通されるよう配設された筒状体30と、ワークを加熱する熱源として、水平部およびその両端から垂直方向に伸びる垂直部よりなるU字状の発光管を備え、発光管内における少なくとも水平部21Aにフィラメントが配設されたハロゲンヒータランプ20とを備える熱処理装置であって、当該ハロゲンヒータランプが、当該ハロゲンヒータランプの発光管の各々の垂直部が前記筒状体内に当該垂直部の外周面と前記筒状体の内周面との間に間隙を介する状態で挿通されるよう配設されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池基板などの熱処理に用いられるハロゲンヒータランプユニットおよび熱処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池基板の製造方法などにおいては、雰囲気温度が1000℃前後の高温に保たれた領域で熱処理を行う工程が必要とされており、このような熱処理を行う装置として、例えば、図3に示されるように、ワークWを加熱する熱処理空間Hを取り囲む、断熱材からなる断熱筐体41の上壁に、挿入孔45,45が設けられると共に、ワークWを加熱する熱源として、水平部51Aおよびその両端から垂直方向に伸びる垂直部51B,51CよりなるU字状の発光管51を備え、発光管51内における少なくとも水平部51Aにフィラメント(図示せず)が配設されたハロゲンヒータランプ50が、その垂直部51B,51Cが挿入孔45,45内に挿通されるよう配設された装置が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
なお、図3において、43はワークWが載置された搬送手段42が搬入される搬入口、44は当該搬送手段42が搬出される搬出口である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−275499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この熱処理装置においては、長期間にわたって使用するとハロゲンヒータランプの発光管の破損が生じる、という問題があった。
この問題を検証したところ、ハロゲンヒータランプの発光管の垂直部の外周面が断熱材による壁に囲われていることにより、発光管が過熱状態となり、その状態でワークが加熱されることによって、当該ワークから蒸発した不純物が発光管に付着し、発光管と不純物とが反応することによって発光管が劣化して破損するものと推測された。
【0005】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、その目的は、長期間にわたって使用した場合にも発光管の破損が生じない長寿命のハロゲンヒータランプユニットおよび熱処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のハロゲンヒータランプユニットは、水平部およびその両端から垂直方向に伸びる垂直部よりなるU字状の発光管を備え、発光管内における少なくとも水平部にフィラメントが配設されたハロゲンヒータランプと、
当該ハロゲンヒータランプの各々の垂直部の周囲に、当該垂直部の外周面との間に間隙を介するよう配設された筒状体とを備えることを特徴とする。
【0007】
本発明のハロゲンヒータランプユニットにおいては、前記ハロゲンヒータランプは、ハロゲンヒータランプの発光管の各々の垂直部の端部が、前記筒状体の上端に支持されて配設されている構成とすることが好ましい。
【0008】
本発明の熱処理装置は、ワークを加熱する熱処理空間を取り囲む、断熱材からなる断熱筐体と、
当該断熱筐体の上壁に形成された挿入孔に挿通されるよう配設された筒状体と、
ワークを加熱する熱源として、水平部およびその両端から垂直方向に伸びる垂直部よりなるU字状の発光管を備え、発光管内における少なくとも水平部にフィラメントが配設されたハロゲンヒータランプとを備える熱処理装置であって、
当該ハロゲンヒータランプが、当該ハロゲンヒータランプの発光管の各々の垂直部が前記筒状体内に当該垂直部の外周面と前記筒状体の内周面との間に間隙を介する状態で挿通されるよう配設されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の熱処理装置においては、前記垂直部の外周面と前記筒状体の内周面との間の間隙の大きさが、5〜10mmであることが好ましい。
【0010】
また、本発明の熱処理装置においては、前記筒状体が、石英ガラスからなるものであることが好ましい。
【0011】
また、本発明の熱処理装置においては、前記ハロゲンヒータランプは、ハロゲンヒータランプの発光管の各々の垂直部の端部が、前記筒状体の上端に支持されて配設されている構成とされることが好ましい。
【0012】
また、本発明の熱処理装置においては、前記筒状体が、前記断熱筐体の上壁に形成された挿入孔に、当該筒状体の外周面と前記挿入孔の内周面との間に間隙を介する状態で挿通されて配設されている構成とされることが好ましい。
【0013】
また、本発明の熱処理装置においては、前記筒状体の外周面と前記挿通孔の内周面との間の間隙の大きさが、0〜10mmであることが好ましい。
【0014】
さらに、本発明の熱処理装置においては、前記筒状体は、前記断熱筐体に支持されたピンチ型筒状体保持具によってピンチされることにより、当該断熱筐体に支持されて配設されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のハロゲンヒータランプユニットによれば、発光管の垂直部の周囲に、当該垂直部の外周面との間に間隙を介するよう筒状体が支持されているために、当該ハロゲンヒータランプによる熱気流を垂直部の周囲に滞留させずに間隙を通過させることができ、従って、熱処理装置の加熱源として用いた場合に、長期間にわたって使用しても発光管の破損が生じず、長寿命が得られる。
【0016】
本発明の熱処理装置によれば、断熱筐体の上壁に形成された挿通孔に挿通された筒状体内に、ハロゲンヒータランプが、その発光管の垂直部が当該垂直部の外周面と筒状体の内周面との間に間隙を介する状態で挿通されるよう配設されている。このため、垂直部の外周面が断熱筐体の上壁に直接接触せず、しかも、熱処理空間内に発生する熱気流を垂直部の周囲に滞留させることなく間隙を流通させて外部に排出させることができ、その結果、垂直部の過熱が抑止される。従って、当該垂直部の外周面にワークから蒸発した不純物が付着しても、発光管と反応して当該外周面に反応物を生成することが抑止され、これにより、長期間にわたって使用した場合にも発光管の破損が生じず、長寿命が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の熱処理装置の構成の一例を示す説明用断面図である。
【図2】図1の熱処理装置におけるハロゲンヒータランプおよび筒状体の説明用平面図である。
【図3】従来の熱処理装置の構成を示す説明用断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について具体的に説明する。
【0019】
〔熱処理装置〕
図1は、本発明の熱処理装置の構成の一例を示す説明用断面図、図2は、本発明の熱処理装置におけるハロゲンヒータランプおよび筒状体の説明用平面図である。
本発明の熱処理装置は、断熱筐体11と、その上壁11Aに形成された挿入孔15,15に挿通されるよう配設された筒状体30,30と、水平部21Aおよびその両端から垂直方向に伸びる垂直部21B,21CよりなるU字状の発光管21を備えたハロゲンヒータランプ20とを備えるものである。
【0020】
この熱処理装置は、複数、例えば6本のハロゲンヒータランプ20の水平部21Aが、断熱筐体11の上壁に平行かつハロゲンヒータランプ20の発光管21の水平部21Aに垂直な方向(図1において紙面に垂直な方向)に並設されなる処理ブロックが、当該断熱筐体11の上壁に平行かつハロゲンヒータランプ20の発光管21の水平部21Aに垂直な方向に1〜8ブロック並設されている。
【0021】
〔断熱筐体〕
本発明の熱処理装置を構成する断熱筐体11は、断熱材からなり、その内部はワークWを加熱する熱処理空間Hとされている。
断熱筐体11の対向する側壁11B,11Cには、それぞれ、ワークWを搬送するための例えばメッシュベルトコンベアなどの搬送手段12を搬入する搬入口13および当該搬送手段12を熱処理空間Hから搬出する搬出口14が設けられている。
【0022】
断熱筐体11を構成する断熱材としては、熱処理空間H内の雰囲気温度を一定に保持することができる断熱性を有するものであればよく、例えばセラミック、ガラスウール、珪酸カルシウム、ロックウール、耐火断熱レンガなどを用いることができる。
【0023】
断熱筐体11に形成された挿入孔15,15は、例えば断面が真円である円柱状とされる。
この挿入孔15,15の内径は、筒状体30,30の外径によっても異なるが、例えばφ25〜φ30mmとされる。
【0024】
〔筒状体〕
本発明の熱処理装置を構成する筒状体30,30は、例えば円筒状のものであり、断熱筐体11の上壁11Aに形成された挿入孔15,15に配設されており、筒状体30,30の外周面が、挿入孔15,15の内周面に接触した状態に配設されていてもよいが、特に、当該筒状体30,30の外周面と挿入孔15,15の内周面との間に間隙を介する状態で挿通されて配設されていることが好ましい。
具体的には、筒状体30,30は、断熱筐体11に、当該断熱筐体11の上壁11Aから外方に伸びる保持具支持アーム37,37の凹所に載置されて支持されたピンチ型筒状体保持具35,35によってピンチされることにより、当該断熱筐体11に支持されている。
【0025】
筒状体30,30の外周面と挿入孔15,15の内周面との間の間隙は、断面が全周にわたって均一な厚みを有する円環状である環状空隙であることが好ましい。
【0026】
筒状体30,30の外周面と挿入孔15,15の内周面との間の間隙の大きさ、すなわち環状空隙R1の厚みは、0〜10mmであることが好ましく、より好ましくは5〜8mmである。
筒状体30,30の外周面と挿入孔15,15の内周面との間の間隙の大きさが上記の範囲にあることにより、断熱筐体11内の温度を一定温度に維持することができながら、当該断熱筐体11内における熱気流を当該間隙に滞留させることなく流通させることができる。また、当該間隙の大きさが過大である場合は、断熱筐体11内(熱処理空間H)の温度を一定温度に維持することが難しい。
特に、当該間隙の大きさが5mm以上である場合は、当該間隙において自然対流がなされて、確実に、当該断熱筐体11内における熱気流を当該間隙に滞留させることなく流通させることができる。
【0027】
筒状体30,30は、その上部および下部が、断熱筐体11の上壁の下面および上面にそれぞれ突出する状態に配設されることが好ましい。
このような状態に配設されることにより、熱処理空間Hから熱処理装置の外部への熱気流の自然排出を確実に行うことができる。
【0028】
筒状体30,30を構成する材料としては、ワークWの加熱を行うときの熱処理空間H内の雰囲気温度において変形や損傷などを生じない耐久性を有し、かつ、ワークWの加熱を行うときの熱処理空間H内の雰囲気温度においてワークWにコンタミネーションを生じさせないものであり、さらに断熱筐体11を形成する断熱材の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有するものが好ましく、例えば石英ガラスやセラミック、あるいはステンレスなどの金属などを用いることができ、特に石英ガラスを用いることが好ましい。
【0029】
筒状体30,30が、断熱筐体11を形成する断熱材の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有する材料より形成されたものであることにより、発光管21の垂直部21B,21Cの過熱が抑止されるものと考えられる。
具体的には、筒状体が設けられていない構成を有する従来の熱処理装置においては、発光管の垂直部と断熱部材との間を熱気流が通過する際に、当該熱気流の熱が断熱部材にはほとんど伝熱されずに発光管に伝熱されるため、発光管は、フィラメントからの伝熱を受け、さらに、熱気流からの熱を受けることによって過熱される結果、発光管と不純物とが反応するものと推測される。
然るに、筒状体30,30が設けられた構成を有する本発明の熱処理装置においては、発光管21の垂直部21B,21Cと断熱筐体11との間を熱気流が通過する際に、当該熱気流の熱が、断熱筐体11にはほとんど伝熱されず、発光管21の垂直部21B,21Cには伝熱されるが、筒状体30,30が断熱筐体11を構成する断熱材よりも熱伝導率が高い材料からなることから、熱気流の熱のうち筒状体30,30が受けた熱量分、従来よりも発光管21の垂直部21B,21Cへの伝熱量が減るものと推測される。
このため、発光管21は、フィラメント24からの熱を受け、さらに、熱気流からの熱を受けるものの、当該熱気流からの伝熱量が従来よりも少ないために、発光管21は過熱の程度が抑制され、その結果、発光管21と不純物とが反応することを抑制することができるものと考えられる。
【0030】
筒状体30,30の肉厚は、例えば0.5〜3mmとされ、好ましくは1.5〜2.5mmである。
【0031】
〔ハロゲンヒータランプ〕
本発明の熱処理装置を構成するハロゲンヒータランプ20は、ワークWを加熱する熱源であり、両端部が溶着されて封止部22a,22bが形成された、例えば石英ガラスなどの光透過性材料からなる直管状の発光管21を備えている。この発光管21内における少なくとも水平部21Aに例えばタングステンからなるフィラメント24が当該発光管21と接触しないよう、管軸方向に伸びる状態に配設されていると共にハロゲンガスが封入されている。
【0032】
フィラメント24には、その一端部に給電用の内部リード24aが連結されると共に、その他端部に給電用の内部リード24bが連結されており、当該内部リード24a,24bが、それぞれ、発光管21の垂直部21B,21C内において管軸方向に伸びて封止部22a,22bに気密に埋設された金属箔29a,29bを介して、外部リード28a,28bに電気的に接続されている。そして、外部リード28a,28bが、給電線27a,27bを介して図示しない電源に電気的に接続されている。
【0033】
そして、ハロゲンヒータランプ20は、その発光管21の各々の垂直部21B,21Cが筒状体30,30内に当該垂直部21B,21Cの外周面と筒状体30,30の内周面との間に間隙を介する状態で挿通されるよう、支持されている。
また、ハロゲンヒータランプ20は、その水平部21AがワークWと平行に伸びる状態とされると共に、その垂直部21B,21Cが断熱筐体11の外方に突出する状態とされる。
【0034】
具体的には、ハロゲンヒータランプ20の発光管21の垂直部21B,21Cの上部に、例えばステアタイトのようなセラミックからなる円柱状の胴部26a,26bを有するランプベース25a,25bが、例えば無機接着剤を介してそれぞれ設けられている。このランプベース25a,25bの胴部26a,26bには、その外周壁に全周にわたって伸びる状態に環状凹溝23a,23bが形成されている。
一方、筒状体30,30の上端には、例えばステンレス鋼などの金属製の円盤状のフランジ31,31が設けられている。このフランジ31,31には、略四角形状の係止凹所32,32が形成されている。
そして、ハロゲンヒータランプ20の発光管21の垂直部21Bに係るランプベース25aの環状凹溝23aが、フランジ31の係止凹所32の対向する2つの側縁33,33にスライド嵌合され、必要に応じてNi線によって係止されている。また、ハロゲンヒータランプ20の発光管21の垂直部21Cに係るランプベース25bの環状凹溝23bが、フランジ31の係止凹所32の対向する2つの側縁33,33にスライド嵌合され、必要に応じてNi線によって係止されている。これにより、ハロゲンヒータランプ20が、筒状体30,30内に吊下げられた状態で支持されている。
ハロゲンヒータランプ20が筒状体30,30にこのように支持されていることにより、フランジ31,31の係止凹所32,32において筒状体30,30の上端に環状空隙R2が露出した状態とされ、これにより、筒状体30,30は、その上端が大気に連通される。
【0035】
ハロゲンヒータランプ20の垂直部21B,21Cの外周面と筒状体30,30の内周面との間の間隙は、断面が全周にわたって均一な厚みを有する円環状である環状空隙であることが好ましい。
【0036】
垂直部21B,21Cの外周面と筒状体30,30の内周面との間の間隙の大きさ、すなわち環状空隙R2の厚みは、5〜10mmであることが好ましく、より好ましくは5〜8mm、特に好ましくは5mmである。
垂直部21B,21Cの外周面と筒状体30,30の内周面との間の間隙の大きさが上記の範囲にあることにより、断熱筐体11内(熱処理空間H)の温度を一定温度に維持することができながら、当該断熱筐体11内における熱気流を当該間隙に滞留させることなく流通させることができる。また、当該間隙の大きさが5mm未満である場合は、当該間隙において自然対流がなされず、当該断熱筐体11内における熱気流を当該間隙に滞留させることなく流通させることができず、ハロゲンヒータランプ20の発光管21の垂直部21B,21Cが過熱されて当該ハロゲンヒータランプ20が破損するおそれがある。さらに、当該間隙の大きさが過大である場合は、断熱筐体11内(熱処理空間H)の温度を一定温度に維持することが難しい。
【0037】
以上の熱処理装置における発光管21、筒状体30および断熱筐体11の具体的な寸法例を以下に示す。
(1)発光管21
・水平部21Aの長さ:175mm
・垂直部21B,21Cの長さ:270mm
・水平部21Aおよび垂直部21B,21Cの外径:φ15mm
(2)筒状体30
・内径:φ21mm
・外径:φ25mm
・長さ:251mm
(3)断熱筐体11
・挿入孔:φ35mm
・上壁11Aの厚み:100mm
・上壁11Aの上面からの筒状体30の突出長さ:127mm
・上壁11Aの下面からの筒状体30の突出長さ:48mm
【0038】
この熱処理装置においては、搬送手段12によって搬入口13からワークWを搬入させ、1つの処理ブロックに係る所定の位置に1つのワークWを載置させた状態で、ハロゲンヒータランプ20を点灯させ、ハロゲンヒータランプ20のフィラメント24による加熱によって熱処理空間H内の大気が加熱されて当該熱処理空間H内の雰囲気温度が上昇され、断熱筐体11によって所望の雰囲気温度に所定時間保温されることによって、ワークWに対する熱処理が行われる。
この熱処理時において、熱処理空間H内の大気が加熱されることによって熱対流が生じ、熱処理空間H内の温度分布が均一化が図られると同時に、当該熱対流を生じさせる熱気流の一部が断熱筐体11の上壁11Aに向かって上昇し、断熱筐体11の上壁11Aの挿入孔15,15と筒状体30,30との間の環状空隙R1、および、筒状体30,30とハロゲンヒータランプ20の発光管21の垂直部21B,21Cとの間の環状空隙R2を通過して熱処理装置の外部に自然に排出される。
【0039】
ワークWの熱処理に係る熱処理空間H内の雰囲気温度は、ワークWの種類によっても異なるが、例えば800〜1000℃とされ、より好ましくは800〜900℃とされる。
【0040】
ワークWの熱処理に係る熱処理空間H内の雰囲気温度が1000℃である場合に、筒状体30,30とハロゲンヒータランプ20の発光管21の垂直部21B,21Cとの間の環状空隙R2の下端における温度は約950℃、上端における温度は約200℃となる。
【0041】
以上のような熱処理装置によれば、断熱筐体11の上壁11Aに形成された挿入孔15,15に挿通された筒状体30,30内に、ハロゲンヒータランプ20が、その発光管21の垂直部21B,21Cが当該垂直部21B,21Cの外周面と筒状体30,30の内周面との間に間隙を介する状態で挿通されるよう支持されている。このため、垂直部21B,21Cの外周面が断熱筐体11の上壁11Aに直接接触せず、しかも、熱処理空間H内に発生する熱気流を垂直部21B,21Cの周囲に滞留させることなく環状空隙R1,R2を流通させて外部に排出させることができ、その結果、垂直部21B,21Cの過熱が抑止される。従って、当該垂直部21B,21Cの外周面にワークWから蒸発した不純物が付着して発光管21と反応して当該外周面に反応物を生成することが抑止され、これにより、長期間にわたって使用した場合にも発光管21の破損が生じず、長寿命が得られる。
【0042】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
例えば、挿入孔、筒状体、ハロゲンヒータランプの発光管の形状は、それぞれ、断面が相似形状を有することに限定されず、例えば、挿入孔が円柱状を有すると共にハロゲンヒータランプの発光管が円筒状のものであるときに、筒状体が角筒状のものとしてもよい。
【0043】
以下に、本発明の効果を確認するための実験を行った。
図1の構成を有する熱処理装置〔1〕〜〔5〕を作製した。具体的な構成は、以下の通りである。
(1)処理ブロック
・1つ
・1つの処理ブロックに6本のハロゲンヒータランプ20
(2)ハロゲンヒータランプ20
・フィラメント24の材質:タングステン
・フィラメント24の長さ:160mm
・発光管21の材料:石英ガラス
・発光管21の水平部21Aの長さ:175mm
・発光管21の垂直部21B,21Cの長さ:270mm
・発光管21の水平部21Aおよび垂直部21B,21Cの外径:φ15mm
・ランプ入力:1100W
(3)筒状体30
・筒状体30の材料:石英ガラス
・内径:表1に示す通り
・外径:表1に示す通り
・長さ:260mm
(4)断熱筐体11
・断熱筐体11の材料:耐火断熱レンガ
・挿入孔15の内径:表1に示す通り
・上壁11Aの厚み:100mm
・上壁11Aの上面からの筒状体30の突出長さ:127mm
・上壁11Aの下面からの筒状体30の突出長さ:48mm
・ワークWと水平部21Aの離間距離:50mm
【0044】
この熱処理装置〔1〕〜〔5〕を、それぞれ、ハロゲンヒータランプ20を1100Wで点灯させ、ワークW(太陽電池基板)を1000℃で加熱する熱処理を行い、熱処理後のハロゲンヒータランプ20の色の程度を観察した。結果を表1に示す。
【0045】
【表1】

【実施例】
【0046】
<実施例1>
図1の構成を有する熱処理装置〔6〕を作製した。具体的な構成は、以下の通りである。
(1)処理ブロック
・1つ
・1つの処理ブロックに6本のハロゲンヒータランプ
(2)ハロゲンヒータランプ
・フィラメントの材質:タングステン
・フィラメントの長さ:160mm
・発光管の材料:石英ガラス
・発光管の水平部の長さ:175mm
・発光管の垂直部の長さ:270mm
・発光管の水平部および垂直部の外径:φ15mm
・ランプ入力:1100W
(3)筒状体
・筒状体の材料:石英ガラス
・内径:φ21mm
・外径:φ25mm
・長さ:251mm
(4)断熱筐体
・断熱筐体の材料:耐火断熱レンガ
・挿入孔:φ25mm
・上壁の厚み:100mm
・上壁の上面からの筒状体の突出長さ:127mm
・上壁の下面からの筒状体の突出長さ:48mm
・ワークと水平部の離間距離:50mm
【0047】
<比較例1>
図3の構成を有する熱処理装置〔7〕を作製した。具体的な構成は以下の通りである。
(1)処理ブロック
・1つ
・1つの処理ブロックに6本のハロゲンヒータランプ
(2)ハロゲンヒータランプ
・フィラメントの材質:タングステン
・フィラメントの長さ:160mm
・発光管の材料:石英ガラス
・発光管の水平部の長さ:175mm
・発光管の垂直部の長さ:270mm
・発光管の水平部および垂直部の外径:φ15mm
・ランプ入力:1100W
(3)断熱筐体
・断熱筐体の材料:耐火断熱レンガ
・挿入孔:φ20mm
・上壁の厚み:100mm
・ワークと水平部の離間距離:50mm
【0048】
上記の熱処理装置〔6〕,〔7〕を、それぞれ、ワークとして太陽電池基板を載置し、ハロゲンヒータランプを1100Wで点灯させ、破損するまでの時間を観察した。
その結果、本発明に係る熱処理装置〔6〕においては、点灯から500時間を経過しても6本中1本もハロゲンヒータランプの発光管の破損が観察されなかったのに対して、比較用の従来の熱処理装置〔7〕においては、点灯から160時間で6本すべてのハロゲンヒータランプの発光管が破損した。
このように、本発明の熱処理装置に係るハロゲンヒータランプの発光管の破損が防止された理由としては、筒状体を具備することにより、ハロゲンヒータランプの発光管の垂直部の過熱が抑止されて当該発光管の垂直部の温度が低く抑制されたために、当該垂直部の外周面にワークから蒸発した不純物が付着しても、発光管と反応して当該外周面に反応物を生成することが防止されたものと推測される。
【符号の説明】
【0049】
11 断熱筐体
11A 上壁
11B,11C 側壁
12 搬送手段
13 搬入口
14 搬出口
15 挿入孔
20 ハロゲンヒータランプ
21 発光管
21A 水平部
21B,21C 垂直部
22a,22b 封止部
23a,23b 環状凹溝
24 フィラメント
24a,24b 内部リード
25a,25b ランプベース
26a,26b 胴部
27a,27b 給電線
28a,28b 外部リード
29a,29b 金属箔
30 筒状体
31 フランジ
32 係止凹所
33 側縁
35 ピンチ型筒状体保持具
37 保持具支持アーム
41 断熱筐体
42 搬送手段
43 搬入口
44 搬出口
45 挿入孔
50 ハロゲンヒータランプ
51 発光管
51A 水平部
51B,51C 垂直部
H 熱処理空間
R1,R2 環状空隙
W ワーク



【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平部およびその両端から垂直方向に伸びる垂直部よりなるU字状の発光管を備え、発光管内における少なくとも水平部にフィラメントが配設されたハロゲンヒータランプと、
当該ハロゲンヒータランプの各々の垂直部の周囲に、当該垂直部の外周面との間に間隙を介するよう配設された筒状体とを備えることを特徴とするハロゲンヒータランプユニット。
【請求項2】
前記ハロゲンヒータランプは、ハロゲンヒータランプの発光管の各々の垂直部の端部が、前記筒状体の上端に支持されて配設されていることを特徴とする請求項1に記載のハロゲンヒータランプユニット。
【請求項3】
ワークを加熱する熱処理空間を取り囲む、断熱材からなる断熱筐体と、
当該断熱筐体の上壁に形成された挿入孔に挿通されるよう配設された筒状体と、
ワークを加熱する熱源として、水平部およびその両端から垂直方向に伸びる垂直部よりなるU字状の発光管を備え、発光管内における少なくとも水平部にフィラメントが配設されたハロゲンヒータランプとを備える熱処理装置であって、
当該ハロゲンヒータランプが、当該ハロゲンヒータランプの発光管の各々の垂直部が前記筒状体内に当該垂直部の外周面と前記筒状体の内周面との間に間隙を介する状態で挿通されるよう配設されていることを特徴とする熱処理装置。
【請求項4】
前記垂直部の外周面と前記筒状体の内周面との間の間隙の大きさが、5〜10mmであることを特徴とする請求項3に記載の熱処理装置。
【請求項5】
前記筒状体が、石英ガラスからなるものであることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の熱処理装置。
【請求項6】
前記ハロゲンヒータランプは、ハロゲンヒータランプの発光管の各々の垂直部の端部が、前記筒状体の上端に支持されて配設されていることを特徴とする請求項3〜請求項5のいずれかに記載の熱処理装置。
【請求項7】
前記筒状体が、前記断熱筐体の上壁に形成された挿入孔に、当該筒状体の外周面と前記挿入孔の内周面との間に間隙を介する状態で挿通されて配設されていることを特徴とする請求項3〜請求項6のいずれかに記載の熱処理装置。
【請求項8】
前記筒状体の外周面と前記挿通孔の内周面との間の間隙の大きさが、0〜10mmであることを特徴とする請求項3〜請求項7のいずれかに記載の熱処理装置。
【請求項9】
前記筒状体は、前記断熱筐体に支持されたピンチ型筒状体保持具によってピンチされることにより、当該断熱筐体に支持されて配設されていることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の熱処理装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−256523(P2012−256523A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129052(P2011−129052)
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】