説明

ハロゲン化ランタニド及びアルカリ金属をベースとしたシンチレータ組成物並びに関連する方法及び物品

【課題】シンチレータ組成物を提供する。
【解決手段】本組成物は、少なくとも1つのハロゲン化ランタニドと少なくとも1つのアルカリ金属とを含有するマトリックス材料を含む。本組成物はまた、マトリックスのための活性化剤を含み、この活性化剤は、セリウム、プラセオジム、又はセリウムとプラセオジムとの混合物をベースとすることができる。シンチレータを含む放射線検出器を開示している。また、放射線検出器で高エネルギー放射線を検出する方法をも提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
総括的な意味では、本発明は、発光材料に関する。より具体的には、本発明は、様々な条件の下でガンマ線及びX線を検出するのに特に有用なシンチレータ組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
シンチレータは、非常に簡単かつ非常に正確な方法で、高エネルギー放射線を検出するのに使用することできる。シンチレータ結晶は、ガンマ線、X線、宇宙線、及び約1keVよりも大きいエネルギーレベルに特徴がある粒子のための検出器に広く使用されている。シンチレータ結晶は、光検出手段すなわち光検出器と組合される。放射性核種源からの光子が結晶に衝突すると、結晶は光を放出する。光検出器は、受けた光パルスの数及びそれらの強度に比例した電気信号を生成する。
【0003】
シンチレータは、化学、物理、地質及び医療における用途に有用であることが見出されている。それら用途の具体的な実例としては、陽電子照射断層撮影(PET)装置、石油及びガス産業のためのボーリング検層用途並びに様々なデジタルイメージング用途が挙げられる。
【0004】
当業者には明らかなように、シンチレータの組成はそれら装置の全ての性能にとって極めて重要である。シンチレータは、X線及びガンマ線励起に応答しなくてはならない。さらに、シンチレータは、放射線検出を高める幾つかの特性を有するべきである。例えば、大部分のシンチレータ物質(材料)は、高い光出力、短い減衰時間、少ない残光、高い「阻止能」及び許容可能なエネルギー分解能を有しなければならない。(後述するように、シンチレータがどのように使用されるかに応じて、その他の特性もまた非常に重要である可能性がある)。
【0005】
これらの特性の大部分又は全てを有する幾つかのシンチレータ材料が、長年にわたって使用されてきた。例えば、タリウム活性化ヨウ化ナトリウム(NaI(Tl))は、何十年にもわたってシンチレータとして広く利用されてきた。他の一般的なシンチレータ材料の実例には、ゲルマニウム酸ビスマス(BGO)、セリウムドープドオルトケイ酸ガドリニウム(GSO)及びセリウムドープドオルトケイ酸ルテチウム(LSO)が含まれる。
【0006】
これらの材料の各々は、ある種の用途に非常に適した幾つかの良好な特性を有する。しかしながら、これらの材料はまた各々欠点も有する。一般的な問題点は、低い光収率、物理的脆弱性、及び大型かつ高品質の単結晶を製造できないことである。他の欠点もまた存在する。例えば、タリウム活性化材料は非常に吸湿性であり、また大きくかつ持続性の残光を生じる可能性があり、このことがシンチレータ機能の妨げになるおそれがある。さらに、BGO材料は、遅い減衰時間を有することが多い。他方において、LSO材料は高価であり、また放射性ルテチウム同位体を含有する可能性もあり、このこともまたシンチレータ機能の妨げになるおそれがある。
【0007】
セリウム活性化ハロゲン化ランタニド化合物は、最近では有望なシンチレータとして評されるようになってきた。これらの材料の幾つかは、P.Dorenbos他による2つの公告国際特許出願第WO 01/60944 A2号及び第WO 01/60945 A2号に記載されている。このハロゲン化物含有材料は、良好なエネルギー分解能及び低い減衰定数の組合せを同時に示すと言われている。そのような特性の組合せは、幾つかの用途にとっては非常に有利である場合がある。さらに、これらの材料は、許容可能な光出力値を明確に示す。さらに、これらの材料は、ルテチウムを含まず、上述したようなこの元素によって時々引き起こされる問題点が全くない。
【0008】
Dorenbosの公告特許は、確かにシンチレータ技術における進歩を示していると思われるが、これらの結晶材料に対する要求は、拡大し続けている。急速に一層要求されるようになってきた1つの最終用途は、上述したボーリング検層である。簡単に言えば、シンチレータ結晶(通常、NaI(Tl)ベースの)は一般的に、管又はケーシング内に封入されて、結晶パッケージが形成される。パッケージは、関連する光電子増倍管を含み、ボーリング孔内を移動する掘削ツール内に組み込まれる。
【0009】
シンチレータ素子は、周囲の地層からの放射線を捕捉しかつそのエネルギーを光に変換することによって機能する。生成された光は、光電子増倍管に伝えられる。光インパルスは、電気インパルスに転換される。インパルスに基づいたデータは、「孔上方に向けて」分析装置に伝送するか又は局所的に格納することができる。このような掘削(ボーリング)時データ、すなわち「掘削時測定値」(MWD)を取得しかつ伝送することは、今や普通の実施手法である。
【0010】
ボーリング検層用途に使用するシンチレータ結晶は、非常に高い温度において、また激しい衝撃及び振動条件下で機能することができなくてはならないことは、明らかである。従って、シンチレータ材料は、上述した多くの特性、例えば高い光出力及びエネルギー分解能並びに速い減衰時間などの最高の組合せをもつべきである。(シンチレータもまた、非常に制約された空間に適したパッケージ内に封入するのに十分なほど小さくなくてはならない。)許容可能な特性の閾値は、掘削がより大きな深さで行われるようになるのにつれて、著しく高められてきた。例えば、高い分解能で強力な光出力を生成する従来型のシンチレータ結晶の能力は、掘削深度が増大するにつれて大いに危うくなってきている。
【特許文献1】米国特許第5,213,712号公報
【特許文献2】米国特許第5,869,836号公報
【特許文献3】米国特許第5,882,547号公報
【特許文献4】米国特許第6,302,959号公報
【特許文献5】米国特許第6,437,336号公報
【特許文献6】米国特許第6,585,913号公報
【特許文献7】米国特許第6,624,420号公報
【特許文献8】米国特許第6,624,422号公報
【特許文献9】国際特許出願第60944A2号公報
【特許文献10】国際特許出願第60945A2号公報
【非特許文献1】"Scintillation Properties of LaCl3:Ce3+Crystals: Fast, Efficient, and High-Energy Resolution Scintillators", E.V.D. van Loef et al, IEEE Transactions on Nuclear Science, Vol. 48, No.3, June 2001, pp. 341-345
【非特許文献2】"High-Energy-Resolution Scintillator: Ce3+ Activated LaCl3", E.V.D. van Loef et al, Applied Physics Letters, Vol.77, No.10, September 2000, pp. 1467-1468
【非特許文献3】"High-Energy-Resolution Scintillator: Ce3+ Activated LaBr3", E.V.D. van Loef et al, Applied Physics Letters, Vol.79, No.10, September 2001, pp. 1573-1575
【非特許文献4】"Influence of the Anion on the Spectroscopy and Scintillation Mechanism in Pure and Ce3+ -doped K2LaX5 and LaX3 (X=Cl, Br, I), E.V.D. van Loef et al, Physical Review B 68, 045108 (2003), pp. 045108-1 to 045108-9
【非特許文献5】U. S. Patent Application, Serial No. 10/689,361, filed 10/17/03, entitled "SCINTILLAR COMPOSITIONS, AND RELATED PROCESSED AND ARTICLES OF MANUFACTURE", by Alok Srivastava, et al, Attorney Docket No. 135700-1.
【非特許文献6】"Luminescent Materials", by G. Blasse et al, Springer-Verlag (1994)
【非特許文献7】"Crystal Growth Processes", by J.C. Brice, Blackie & Son Ltd (1986)
【非特許文献8】"Encyclopedia Americana", Volume 8, Grolier Incorporated (1981), pages 286-293
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
新規なシンチレータ材料は、もしそれらが高まり続ける商業的及び産業的使用のための要求を満たすことができるならば、大いに関心のあるものとなることは明らかである。それらの材料は、優れた光出力を示すべきである。それらの材料はまた、特にガンマ線の場合に比較的速い減衰時間及び良好なエネルギー分解能のような1つ又はそれ以上の他の望ましい特性も有するべきである。さらに、それらの材料は、妥当なコスト及び許容可能な結晶サイズで効率的に製造することができるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の実施形態はシンチレータ組成物に関し、本シンチレータ組成物は、(a)(i)少なくとも1つのハロゲン化ランタニドと(ii)少なくとも1つのアルカリ金属とを含むマトリックス材料と、(b)セリウム、プラセオジム、又はセリウムとプラセオジムとの混合物を含む前記マトリックス材料のための活性化剤と、それらの何らかの反応生成物とを含む。
【0013】
別の実施形態は、高エネルギー放射線を検出するための放射線検出器に関する。本放射線検出器は、結晶シンチレータを含む。シンチレータ材料は、上述のマトリックス材料とその何らかの反応生成物とを含む。シンチレータはさらに、セリウム、プラセオジム、又はセリウムとプラセオジムとの混合物を含む、マトリックス材料のための活性化剤を含む。
【0014】
放射線検出器はまた、光検出器を含む。光検出器は、該シンチレータによって生成された光パルスの放出に対応した電気信号を生成することができるようにシンチレータに光学的に結合される。
【0015】
さらに別の実施形態は、シンチレーション検出器で高エネルギー放射線を検出する方法に関する。本方法は、(A)シンチレータ結晶によって放射線を受けて、該放射線に特有の光子を生成する段階と、(B)シンチレータ結晶に結合された光子検出器で光子を検出する段階とを含む。
【0016】
シンチレータ結晶は上述の組成物で形成されており、シンチレータ結晶については、本発明の様々な特徴に関するその他の詳細事項と共に以下にさらに説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
シンチレータ組成物のためのマトリックス材料は、少なくとも1つのハロゲン化ランタニド化合物を含む。ハロゲン化物は、臭素、塩素又はヨウ素の何れかである。個々のハロゲン化物の各々は、特定の用途に有用である場合がある。幾つかの実施形態では、その高い光出力特性のためにヨウ素が特に好ましい。さらに、他の実施形態では、ハロゲン化物の少なくとも2つが存在する。従って、マトリックス材料は、少なくとも2つのハロゲン化ランタニドの固溶体の形態である場合がある。本明細書で用いる場合、「固溶体」という用語は、単相又は多相を含むことができる固体結晶質の形態のハロゲン化物の混合物を意味する。(相転移は、結晶の形成後、例えば焼結又は高密度化のような後続する処理段階後に結晶内で起こることになることは、当業者には明らかである。)
ランタニドは、希土類元素、すなわちランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム及びルテチウムの何れかとすることができる。ランタニドの2つ又はそれ以上の混合物もまた可能である。(イットリウムが希土類群に密接して関連していることは、当業者には明らかである。従って、本開示の目的の場合には、イットリウムもまたランタニド系統の一部と考えられる)。好ましいランタニドは、ランタン、イットリウム、ガドリニウム、ルテチウム、スカンジウム、プラセオジム及びそれらの混合物からなる群から選ばれる。特に好ましい実施形態では、ランタニドはランタン自体である。
【0018】
ハロゲン化ランタニドの幾つかの具体的かつ非限定的な実施例は、次の通り、すなわち塩化ルテチウム、臭化ルテチウム、塩化イットリウム、臭化イットリウム、塩化ガドリニウム、臭化ガドリニウム、塩化プラセオジム、臭化プラセオジム及びそれらの混合物である。しかしながら、好ましい実施形態では、ハロゲン化ランタン、すなわちヨウ化ランタン(LaI)、臭化ランタン(LaBr)、塩化ランタン(LaCl)又はそれらのある種の組合せが使用される。これらの材料は、当技術分野で公知でありかつ市販されており、或いは通常の方法で調製することができる。
【0019】
存在する場合には、通常、ヨウ化ランタンは実質的に酸素又は酸素含有化合物を全く含まないことが重要である。(酸素は、シンチレータの発光に有害な影響を与えるおそれがある)。本明細書で使用する場合、「実質的に含まない」は、約0.1モル%よりも少ない酸素、好ましくは約0.01モル%よりも少ない酸素を含有する化合物を示すことを意味する。ヨウ化ランタンが酸素を含まないことを保証する方法は、当技術分野では公知である。例示的な方法は、A.Srivastava他によって、係属中の米国特許出願第10/689,361号において記載されている。この出願は、2003年10月17日に出願されたものであり、参考文献として本明細書に組み入れている。
【0020】
マトリックス材料はさらに、少なくとも1つのアルカリ金属を含む。実施例としては、カリウム、ルビジウム、ナトリウム及びセシウムが含まれる。アルカリ金属の混合物もまた使用することができる。幾つかの好ましい実施形態では、ルビジウム及びセシウムが好ましいアルカリ金属であり、ルビジウムが特に好ましい。
【0021】
アルカリ金属とハロゲン化ランタニドとの相対的割合は、大幅に変化させることできる。一般的には、アルカリ金属(全体)のハロゲン化ランタニド(全体)に対するモル比は、約2.2:1.0〜約1.8:1.0の範囲となる。しかしながら、通常、この割合は、原子価、原子量、化学結合、配位数及び同種のもののような化学量論的考慮事項に基づくことになる。1つの実施例として、本発明の幾つかの実施形態のための多くのシンチレータ化合物は、一般式
LnX
を有し、式中、Aは少なくとも1つのアルカリ金属であり、Lnは少なくとも1つのランタニド元素であり、またXは少なくとも1つのハロゲンである。これらのタイプの化合物の場合、各アルカリ金属は通常、+1の原子価を有し、各ランタニドは通常、+3の原子価を有し、また各ハロゲンは−1の原子価を有して、この化学量論的平衡が得られる。
【0022】
本発明の幾つかの実施形態におけるシンチレータ(すなわち、マトリックス)の幾つかの具体的かつ非限定的な実施例は、次の通り、すなわちKLaCl、RbLaCl、CsLaCl、KLaBr、RbLaBr、KLaI、RbLaI、KGdCl、KGdBr及びCsLuClである。これらの材料の各々は、本発明の幾つかの実施形態(例えば、本明細書に記載した最終用途の幾つかについての)における良好なシンチレータ機能に貢献する結晶構造として形成されると考えられる。
【0023】
他のシンチレータ化合物は、良好なシンチレータ機能に最も貢献する結晶構造を形成しないようである。しかしながら、それらシンチレータ化合物は、少なくともその一部が互いに混合物になった又は上述の特定の化合物の何れかとの混合物になった結晶構造を実現することができる。それらの化合物の非限定的な実施例は、次の通り、すなわちCsLaBr、CsLaI、RbGdCl、CsGdCl、RbGdBr、CsGdBr、KGdI、RbGdI、CsGdI、KYCl、RbYCl、CsYCl、KYBr、RbYBr、CsYBr、KYI、RbYI、CsYI、KLuCl、RbLuCl、KLuBr、RbLuBr、CsLuBr、KLuI、RbLuI及びCsLuIである。
【0024】
シンチレータ組成物はさらに、マトリックス材料のための活性化剤(活性化剤は「ドーパント」と呼ばれることもある。)を含む。好ましい活性化剤は、セリウム、プラセオジム、及びセリウムとプラセオジムとの混合物とからなる群から選ばれる。発光効率及び減衰時間に関しては、多くの場合セリウムが最も好ましい活性化剤である。通常、セリウムは、その三価の形態Ce+3として使用される。この活性化剤は、様々な形態、例えば塩化セリウム又は臭化セリウムのようなハロゲン化物として供給することができる。
【0025】
存在する活性化剤の量は、マトリックス内に存在する個々のアルカリ金属及びハロゲン化ランタニド、所望の発光特性及び減衰時間、並びにシンチレータが組み込まれる検出装置のタイプのような様々な要因に応じて決まることになる。通常、活性化剤は、活性化剤とアルカリ金属−ハロゲン化ランタニドマトリックス材料との合計のモル数に基づいて、約0.1モル%〜約20モル%の範囲のレベルで使用される。多くの好ましい実施形態では、活性化剤の量は、約1モル%〜約10モル%の範囲内である。
【0026】
シンチレータ組成物は、様々な形態で調製しかつ使用することができる。幾つかの好ましい実施形態では、組成物は、単結晶性(すなわち、「single crystal」)の形態である。単結晶性シンチレーション結晶は、透明度がより高い傾向を有する。それらは、例えばガンマ線に使用する検出器のような高エネルギー放射線検出器に特に有用である。
【0027】
シンチレータ組成物は、その意図した最終用途に応じて、他の形態でも同様に使用することができる。例えば、シンチレータ組成物は、粉末の形態とすることができる。シンチレータ組成物はまた、先に引用した公告国際特許出願第WO 01/60944 A2号及び第WO 01/60945 A2号(参考文献として本明細書に組み入れている)に記載されているように、少量の不純物を含み得ることも理解されたい。これらの不純物は通常、出発材料に由来し、一般的にはシンチレータ組成物の約0.1重量%よりも少ない構成成分となる。非常に多くの場合、これらの不純物は、組成物の約0.01重量%よりも少ない構成成分となる。組成物はまた、寄生添加物を含む可能性があるが、その体積パーセントは、通常約1%よりも少ない。さらに、シンチレータ組成物内には、微量の他の材料を意図的に含ませることができる。
【0028】
シンチレータ材料は、様々な従来通りの方法によって調製することができる。(シンチレータ組成物はまた、これらの方法の様々な反応生成物も含有する可能性があることを理解されたい)。通常、正しい比率で所望の材料を含有する適切な粉末が最初に調製され、続いて、仮焼、型成形、焼結及び/又は熱間静圧圧縮成形のような工程が行われる。粉末は、様々な形態の反応物質(例えば、塩、酸化物、ハロゲン化物、シュウ酸塩、炭酸塩、硝酸塩又はその混合物)を混合することによって調製することができる。幾つかの好ましい実施形態では、ランタニド及びハロゲン化物は、単一化合物、例えば市販されている塩化ランタンのようなハロゲン化ランタニドとして供給される。非限定的な実施例として、1つ又はそれ以上のハロゲン化ランタニドは、1つ又はそれ以上のハロゲン化アルカリ金属(所望の割合での)及び少なくとも1つの活性化剤含有反応物質と混合することができる。
【0029】
反応物質の混合は、全体にわたって均一な混合を保証するあらゆる適当な手段によって行うことができる。例えば、混合は、めのう乳鉢及び乳棒で行うことができる。これに代えて、ボールミル、ボウルミル、ハンマミル又はジェットミルのような混合機又は粉砕装置を使用することができる。混合物はまた、媒溶化合物又は結合剤のような様々な添加物を含むことができる。時には適合性(相容性)及び/又は溶解性に応じて、ミリング時に様々な液体、例えばヘプタン、又はエチルアルコールのようなアルコールを液体溶媒として使用することができる。汚染はシンチレータの発光能力を低下させるおそれがあるので、適当なミリング媒体、例えばシンチレータを汚染することにならない材料を使用すべきである。
【0030】
混合した後に、混合物は次に、該混合物を固溶体に変えるのに十分な温度及び時間条件の下で焼成することができる。これらの条件は、部分的には使用するマトリックス材料及び活性化剤の具体的タイプに応じて決まることになる。通常、焼成は、炉内において約500℃〜900℃の範囲の温度で行われることになる。焼成時間は一般的に、約15分〜約10時間の範囲内となるであろう。
【0031】
焼成は、例えば真空のような酸素及び湿気を含まない雰囲気内で、或いは窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン又はキセノンのような不活性ガスを使用して行うべきである。焼成が完了した後に、得られた物質を粉末化して、シンチレータを粉末形態にすることができる。次に従来通りの方法を使用して粉末を処理して、放射線検出素子にすることができる。
【0032】
単結晶材料を作る方法もまた、当技術分野においてはよく知られている。非限定な例示的な参考文献には、Springer−VerlagからのG.Blasse他による「Luminescent Materials(発光材料)」(1994年)がある。通常、適切な反応物質は、一致溶融した組成物を形成するために十分な温度で溶融される。溶融温度は、反応物質自体の独自性に応じて決まることになるが、通常は、約650℃〜約1100℃の範囲内である。
【0033】
種々の方法を採用して、溶融組成物からシンチレータ材料の単結晶を調製することができる。これらの方法は、例えば米国特許第6,437,336号(Pauwels他)、Brackie & Son LtdからのJ.C.Briceによる「Crystal Growth Processes(結晶成長法)」(1986)、及びGrolier Incorporatedからの「Encyclopedia Americana」第8巻(1981)の286−293頁のような多くの参考文献に記載されている。これらの文献は、参考文献として本明細書に組み入れている。結晶成長方法の非限定的な実例には、Bridgman−Stockbarger法、Czochralski法、ゾーンメルティング法(すなわち、「フローティングゾーン」法)及び温度勾配法がある。当業者は、これらの方法の各々に関する必要詳細事項に精通している。
【0034】
部分的には上述のLyons他の特許の教示に基づいて、単結晶の形態でシンチレータを製造する1つの非限定的な方法の例示を行うことができる。この方法では、所望の組成物(上述した)の種結晶を、飽和溶液内に挿入する。この溶液は、適当なるつぼ内に収容されており、シンチレータ物質のための適切な前駆体を含む。上述した結晶成長法の1つを用いて、新しい結晶質物質を成長させかつ単結晶に付加させる。結晶のサイズは、部分的にはその所望の最終用途、例えばその結晶が組み込まれることになる放射線検出器のタイプに応じて決まることになる。
【0035】
本発明の別の実施形態は、シンチレーション検出器で高エネルギー放射線を検出する方法に関する。この検出器は、本明細書に記載したシンチレータ組成物で形成された1つ又はそれ以上の結晶を含む。シンチレーション検出器は、当技術分野においてはよく知られており、ここで詳述する必要はない。このような装置について説明している幾つかの参考文献(多くの参考文献のうちの)には、上述した米国特許第6,585,913号及び第6,437,336号、並びにこれまた参考文献として本明細書に組み入れている米国特許第6,624,420号(Chai他)がある。一般的に、これらの装置のシンチレータ結晶は、調査対象の線源から放射線を受け、その放射線に特有の光子を生成する。これらの光子は、或るタイプの光検出器(「光子検出器」)によって検出される。(光検出器は、従来型の電子的及び機械的取付けシステムによってシンチレータ結晶に結合される。)
光検出器は、当技術分野において全てよく知られた多様な装置とすることができる。非限定的な実施例には、光電子倍増管、光ダイオード、CCDセンサ及びイメージ増強管が含まれる。特定の光検出器の選択は、部分的には製作しようとする放射線検出器のタイプ及びその意図した用途に応じて決まることになる。
【0036】
シンチレータ及び光検出器を含む放射線検出器自体は、前に述べたように多様なツール及び装置に結合することができる。非限定的な実施例には、ボーリング検層ツール及び核医学装置(例えば、PET)が含まれる。放射線検出器はまた、例えばピクサレイテッドフラットパネル装置などのデジタルイメージング装置に結合することができる。さらに、シンチレータは、スクリーンシンチレータの構成要素として役立てることもできる。例えば、粉末状のシンチレータ物質は、例えば写真フィルムなどのフィルムに取り付けられる比較的平坦なプレートに形成することができる。或る線源から発した例えばX線などの高エネルギー放射線は、シンチレータと接触し、光子に変換され、この光子がフィルム上に現像されることになる。
【0037】
好ましい最終用途の幾つかを簡単に説明することにする。ボーリング検層装置は、前に述べたが、これらの放射線検出器の重要な用途に相当する。放射線検出器をボーリング検層管に対して作動可能に結合する方法は、当技術分野において公知である。その一般的概念は、参考文献として本明細書に組入れている米国特許第5,869,836号(Linden他)に記載されている。シンチレータを含む結晶パッケージは通常、収納ケーシングの一端部に光学窓を含む。この窓は、放射線誘起シンチレーション光が、パッケージに結合された光感知装置(例えば、光電子倍増管)による測定のために、結晶パッケージから外に出ることを可能にする。光感知装置は、結晶から放出された光子を電気パルスに変換し、これらの電気パルスは、関連する電子機器によって整形されかつデジタル化される。この一般的プロセスによってガンマ線を検出することができ、これにより、掘削ボーリング孔を囲む岩層の分析を可能にする。
【0038】
上述したPET装置のような医用イメージング装置は、これらの放射線検出の別の重要な用途に相当する。放射線検出器(シンチレータを含む)をPET装置に対して作動可能に結合する方法もまた、当技術分野においてよく知られている。その一般的概念は、参考文献として本明細書に組み入れている米国特許第6,624,422号(Williams他)のような多くの参考文献に記載されている。要するに、放射性医薬品は通常、患者の体内に注入され、関心のある器官内に集中した状態になる。その化合物からの放射性核種は、崩壊して陽電子を放出する。陽電子が電子と遭遇した時、それら陽電子は壊滅して、光子又はガンマ線に変換される。PETスキャナは、これらの「壊滅」を三次元的に定位し、それによって関心のある器官の形状を観察のために再構成することができる。スキャナ内の検出器モジュールは通常、多数の「検出器ブロック」と共に関連する回路を含む。各検出器ブロックは、特殊な配列のシンチレータ結晶のアレイと共に光電子倍増管を含むことができる。
【0039】
ボーリング検層法及びPET法の両方において、シンチレータの光出力は、非常に重要である。本発明は、これらの方法の厳しい用途に合った所望の光出力を有するシンチレータ材料を提供することができる。さらに、これらの結晶は、上述したその他の重要な特性、例えば短い減衰時間、高い「阻止能」及び許容可能なエネルギー分解能の幾つかを同時に示すことができることが可能である。さらに、これらのシンチレータ材料は、経済的に製造することができる。これらのシンチレータ材料はまた、放射線検出を必要とする多様なその他の装置内で使用することができる。
【0040】
本発明の様々な態様の実施形態を説明してきたが、本発明の技術思想及び技術的範囲から逸脱せずに、それら実施形態において、付加、変更及び置換を行うことができることは明らかである。上に述べた、特許、論文及び文書の全ては、参考文献として本明細書に組み入れている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)、(b)とその反応生成物とを有し、
(a)(i)少なくとも1つのハロゲン化ランタニドと(ii)少なくとも1つのアルカリ金属とを含むマトリックス材料と、
(b)セリウム、プラセオジム、又はセリウムとプラセオジムとの混合物を含む前記マトリックス材料のための活性化剤と、
を含むことを特徴とするシンチレータ組成物。
【請求項2】
前記マトリックス材料内のランタニドが、ランタン、イットリウム、ガドリニウム、ルテチウム、スカンジウム及びそれらの混合物からなる群から選ばれることを特徴とする請求項1記載のシンチレータ組成物。
【請求項3】
前記アルカリ金属が、カリウム、ルビジウム、セシウム、ナトリウム及びそれらの混合物からなる群から選ばれることを特徴とする請求項1記載のシンチレータ組成物。
【請求項4】
前記成分(i)のハロゲン化ランタニドが、臭化ランタン、塩化ランタン、ヨウ化ランタン、塩化ルテチウム、臭化ルテチウム、塩化イットリウム、臭化イットリウム、塩化ガドリニウム、臭化ガドリニウム、塩化プラセオジム、臭化プラセオジム及びそれらの混合物からなる群から選ばれることを特徴とする請求項1記載のシンチレータ組成物。
【請求項5】
前記アルカリ金属(全体)のハロゲン化ランタニド(全体)に対するモル比が、約2.2:1.0〜約1.8:1.0であることを特徴とする請求項1記載のシンチレータ組成物。
【請求項6】
実質的に単結晶質の形態であることを特徴とする請求項1記載のシンチレータ組成物。
【請求項7】
前記マトリックス材料が、KLaCl、RbLaCl、CsLaCl、KLaBr、RbLaBr、KLaI、RbLaI、KGdCl、KGdBr及びCsLuClからなる群から選ばれた少なくとも1つの化合物を含むことを特徴とする請求項1記載のシンチレータ組成物。
【請求項8】
高エネルギー放射線を検出するための放射線検出器であって、
(A)(a)(i)少なくとも1つのハロゲン化ランタニドと(ii)少なくとも1つのアルカリ金属とを含むマトリックス材料、
(b)セリウム、プラセオジム、又はセリウムとプラセオジムとの混合物を含む前記マトリックス材料のための活性化剤、及び
それらの何らかの反応生成物、を含む結晶シンチレータと、
(B)前記シンチレータによって生成された光パルスの放出に対応した電気信号を生成することができるように前記シンチレータに光学的に結合された光検出器と、
を含むことを特徴とする放射線検出器。
【請求項9】
前記光検出器が、光電子増倍管、フォトダイオード、CCDセンサ及びイメージ増倍管からなる群から選ばれた少なくとも1つの装置であることを特徴とする請求項8記載の放射線検出器。
【請求項10】
シンチレーション検出器で高エネルギー放射線を検出する方法であって、
(A)シンチレータ結晶によって放射線を受けて、該放射線に特有の光子を生成する段階と、
(B)前記シンチレータ結晶に結合された光子検出器で前記光子を検出する段階と、
を含み、前記シンチレータ結晶が、
(a)(i)少なくとも1つのハロゲン化ランタニドと(ii)少なくとも1つのアルカリ金属とを含むマトリックス材料と、
(b)セリウム、プラセオジム、又はセリウムとプラセオジムとの混合物を含む前記マトリックス材料のための活性化剤と、
それらの何らかの反応生成物と、を含むことを特徴とする方法。

【公開番号】特開2006−283018(P2006−283018A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−82223(P2006−82223)
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】