説明

ハンドカット丸太組工法耐力壁線交叉部の防水構造

【課題】ハンドカット丸太組工法耐力壁線交叉部の加工方法であって、防水窓等と同等の防水性能を持たせる。
【解決手段】一般的な交差部加工に、進入した水を集める溝4、集まった水を直ちに下に排水するように空間を確保する導水用穴3を追加工し、交差部から進入した水を室内側の壁に進入させず、壁下に排水できるよう加工する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本考案は、丸太組工法耐力壁のハンドカットログ工法において台風等暴風雨でも耐力壁線交叉部から室内への雨の進入を防止する耐力壁線交叉部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
丸太組工法のハンドカットログ工法では下の丸太と同じ方向に積み上げたログ壁部分、符号8の部分と、交差する丸太を隙間無く積むための耐力壁線交叉部、符号9の部分に刻みを施したノッチ部が存在する。
【0003】
台風等を想定した防水実験で図2符号8ログ壁部は防水性を確保する方法が見つかっていたが、ノッチ部符号9は防水性を確保する方法が無かった。
【0004】
図3が従来のノッチ部加工法での加工図であり、この加工法でくみ上げたログ壁で防水実験を行うと250〜500パスカル(pa)の風雨設定で10分以内に室内側に浸水がみられる。
この加工のままノッチ部分全てに防水処理、例えばシールテープを巻き付けて防水実験を行っても400パスカルで10分以内に室内側に浸水してしまい、750パスカルまで圧力を上げると室内側にかなりの浸水がみられる。
【0005】
そこで交差部分から浸水してきた水を受けるためにノッチ部に浸水した水を集める溝、符号4と符号10を設け、さらに水を下に誘導する導水用穴 符号3を設けて防水実験を行う。
この加工体で実験すると、550パスカルでは室内側への浸水はみられない。
500パスカルが通常の防水窓の試験レベルで台風などに十分耐えうる試験値である。
本考案の加工を施したログ壁に防水部材を併用した場合は実験場のほぼ上限である1600パスカル10分間の暴風雨実験を行っても、室内側への浸水はみられず非常に強固な耐水構造がえられている。
【0006】
実験は図9のように2.5m四方程度のログ壁に6本程度のノッチ部を加工して行い、実験後は分解し浸水の水跡確認なども行い室内側への浸水状況の確認を行っている。
本考案の加工を行った耐力壁線交叉部下部の排水構造符号6からは防水実験開始直後から排水がみられ、実験中は継続して排水されるので水を集める溝符号4、さらに水を下に誘導する導水用穴符号3が有効に動作しているのが確認される。
排水は排水口を室内側に設けても、室外側に設けても共に同じように排水される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−220557(P2005−220557A)
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】株式会社地球丸 「夢の丸太小屋に暮らす」2008年3月号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
解決しようとする問題点は、台風等暴風雨で耐力壁線交叉部から室内へ雨が進入するのを、500パスカルで30分以上の防水性保証する防水窓と同程度の防水性を確保できるハンドカット丸太組工法耐力壁線交叉部の加工方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本考案は、耐力壁線交叉部、ノッチ部に水を集めて流す役目の溝と集まった水が下に流れてゆくための空気穴を持つ構造の耐力壁線交叉部の加工方法。
【発明の効果】
【0011】
本考案を実施することにより台風等暴風雨を想定した550パスカルでは室内側への浸水はみられない。
防水窓は500パスカル程度の防水窓でもシールやコーキングを使用しており、本考案でログ部にシールを行うと1600パスカルでも防水する事が可能となる。
本考案を実施することにより台風等暴風雨を想定した実験で、ハンドカット丸太組工法耐力壁線交叉部からの浸水を防水窓等と同等もしくはそれ以上の性能とすることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は実験ログ壁の外観図。
【図2】図2は実験ログ壁の実験用吊り金具、通しボルトの位置図面。
【図3】図3は従来のハンドカット丸太組工法耐力壁線交叉部加工図。
【図4】図4は本考案のハンドカット丸太組工法耐力壁線交叉部加工図。
【図5】図5は本考案の加工写真。
【図6】図6は防水シール加工図面。
【図7】図7は排水溝、排水用貫通穴、排水構造部の図面。
【図8】図8は排水構造詳細図。
【図9】図9は防水実験現場写真。
【発明を実施するための形態】
【0013】
ノッチ内の加工のみで防水性を著しく向上させられるので外観を損なうことがない。
追加加工は溝加工とドリルによる穴開け加工で有るため施工がきわめて容易。
本考案の加工は耐力壁補強のだぼ穴や通しボルト、ノッチ加工等と同等であり、本考案の加工により耐力壁部も耐力壁線交叉部も強度を損なうことがない。
【実施例1】
【0014】
図4は、本考案加工方法の1実施例の図であって、図5と同様である。
【0015】
図7は、本考案加工方法で加工したノッチ部を組み合わせた図で、符号4の溝はノッチを組みあわせた際に導水用穴 符号3の穴により溝内水の下への落下空間を確保されている。ログ壁から浸水した水の排水は室外側へ排水され、室内への浸水はない。
【産業上の利用可能性】
【0016】
ハンドカット丸太組工法において台風等暴風雨による室内への浸水は一般住宅と同等もしくはそれ以上の防水性能を確保出来るようになる。
【符号の説明】
【0017】
1 吊り金具兼用通しボルト
2 通しボルト
3 導水用穴
4 ログ交差方向 導水用の溝
5 防水用のシール材
6 排水構造材
7 土台
8 ログ壁
9 ノッチ
10 ログ平行方向 導水用の溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドカット丸太組構造の耐力壁線交叉部において、耐力壁線交叉部内に進入した水を集める溝加工と溝に集まった水を下に落としてゆくための空間を確保する穴加工を施したハンドカット丸太組工法耐力壁線交叉部の加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図5】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−179223(P2011−179223A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−44205(P2010−44205)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【出願人】(710001502)
【Fターム(参考)】