ハードコーティング形成法
本発明はハードコーティング形成法に関する。本発明によれば、樹脂成形品または木工製品などをはじめとする各種の成形品の表面に硬度、耐摩擦性、耐擦傷性、耐薬品性、透明性および光沢度などの物性に優れており、しかも、高い屈折率を有する、ハードコーティングを形成することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハードコーティング形成法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂成形品または木工成形品などの各種の成形品に耐摩耗性および耐薬品性などに優れたハードコーティング(保護層と呼ばれることもある)を形成するために様々な方法が用いられている。例えば、離型性を有する基材の離型面の上に、光硬化型樹脂組成物からコーティング層を形成したシート(以下、「転写材」と称することがある)を用いる方法がある。この方法においては、まず、コーティング層を成形品の表面に貼り付けた後、基材を引き剥がしてハードコーティングを形成する。ハードコーティングを形成する他の方法としては、離型性を有さない基材の上に前記コーティング層を形成し、必要に応じて、前記基材の反対面に接着層などを形成したシート(以下、「表面保護シート」と称することがある)を用いる方法がある。前記方法においては、成形品の表面に表面保護シートの基材側を貼り付けて、ハードコーティングを形成する。
【0003】
前記転写材または表面保護シートには、必要に応じて、適宜な個所に図案層または蒸着層などの飾り効果を示す層を形成することもある。転写材の場合、基材と前記コーティング層との間に図案層または蒸着層が主として形成され、表面保護シートの場合、基材におけるコーティング層形成面とは反対側の面に図案層や蒸着層などが形成されることが一般的である。
【0004】
転写材または表面保護シートを用いてハードコーティングを形成するに際して、成形品に適用する前に予め光を照射して、コーティング層を光硬化させておく方式(先硬化方式)がある。かような先硬化方式においては、転写材または表面保護シートが成形品に適用されるときに成形品の曲面部などにおいてハードコーティングが引き剥がされたり、または、ハードコーティングにひび割れなどが発生したりするという問題がある。
【0005】
このため、成形品に適用するステップにおいては、コーティング層を未硬化の状態とし、成形品の表面にコーティング層を貼り付けた後に、これを硬化させる方式(後硬化方式)が用いられているが、この方式の場合、下記の如き問題点が発生する。
【0006】
通常、転写材または表面保護シートは、グラビア輪転印刷機などの機器を用いて製造する。ところが、後硬化方式においては、例えば、転写材の場合、コーティング層の上部に図案層、蒸着層または接着層を形成する場合、そして表面保護シートの場合には、製造されたシートを巻取する場合などにおいて、未硬化状態のコーティング層成分がガイドロールなどに転移したり、図案層または接着層の形成に用いられる成分がコーティング層の上に転移したりするという現象が誘発される。なお、図案層または接着層の形成のためのガイドロールにむしろ前記コーティング層の成分が再転移する現象(いわゆる、バックトラップ現象)も発生する。
【0007】
これにより、後硬化方式を用いる場合には、光硬化前のコーティング層の流動性または粘着性をなくすために、コーティング層の形成に際して特殊の装備または乾燥工程が別途に行われている。ところが、この場合には、コーティング層、図案層または接着層を一回の工程により形成することができず、前記別途の装備の設計などにも多大なコストがかかるため、転写材または表面保護シートの生産性が低下し、製造コストが大幅に嵩んでしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ハードコーティング形成法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、基材、および前記基材の上に形成され、エポキシ基および(メタ)アクリロイル基を有する樹脂およびチオール系硬化剤を含む樹脂組成物の熱硬化物を含有するコーティング層を有するシートを用いて、前記シートのコーティング層を成形品に転写または貼り付けるステップと、前記コーティング層に光を照射して、前記コーティング層を硬化させるステップと、を含むハードコーティング形成法に関する。
【0010】
本発明における用語「ハードコーティング」とは、樹脂、木工、金属または複合成形品などの様々な成形品の表面に形成されて、耐摩耗性、耐擦傷性、耐傷付き性および耐薬品性などの物性を与え得る、高い硬度を有する機能性層のことをいい、場合によっては、様々なディスプレイ装置に適用される機能性層を意味することもある。本発明における用語ハードコーティングは、場合によっては、保護層と同じ意味で用いられてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、樹脂成形品または木工製品などをはじめとする各種の成形品の表面に、硬度、耐摩擦性、耐擦傷性、耐薬品性、透明性および光沢度などの物性に優れており、しかも、高い屈折率を有する、ハードコーティングを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の例示によるシートの断面図である。
【図2】本発明の例示によるシートの断面図である。
【図3】本発明の例示によるシートの断面図である。
【図4】本発明の例示によるシートの断面図である。
【図5】本発明の例示によるシートの断面図である。
【図6】本発明の例示によるシートの断面図である。
【図7】本発明の例示によるシートの断面図である。
【図8】本発明の例示によるハードコーティング形成法を模式的に示す図である。
【図9】本発明の例示によるハードコーティング形成法を模式的に示す図である。
【図10】本発明の例示によるハードコーティング形成法を模式的に示す図である。
【図11】本発明の例示によるハードコーティング形成法を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の方法を詳述する。
【0014】
本発明の方法においては、エポキシ基および(メタ)アクリロイル基を有する樹脂およびチオール系硬化剤を含む組成物の熱硬化物を有効成分として含むコーティング層を有するシートを用いて、ハードコーティングまたは保護層を成形品に形成する。本発明の前記シートは、転写材または表面保護シートであってもよい。
【0015】
また、本発明の前記シートにおけるコーティング層は、上記の樹脂組成物の熱硬化物を有効成分として含む光硬化型にしてもよい。本発明における用語「樹脂組成物の熱硬化物」とは、前記樹脂に含まれるエポキシ基およびチオール系硬化剤のチオール基が開環付加反応などを経て付加反応物を形成している状態のことをいう。さらに、本明細書における用語「光硬化型」とは、電磁気波の照射に際して、樹脂に含まれている(メタ)アクリロイル基などの反応による硬化反応が進み得るコーティング層の状態のことをいう。前記電磁気波は、マイクロ波(microwaves)、赤外線(IR)、紫外線(UV)、X線およびγ線はもとより、α−粒子線(α−particle beam)、プロトンビーム(proton beam)、ニュートロンビーム(neutron beam)および電子線(electron beam)などの粒子ビームを総称する意味として用いられる。
【0016】
添付の図1は、本発明の方法に適用される前記シートの一例を示すものである。図1に示すように、本発明の方法に適用されるシート1は、基材11および前記基材の一方の面に形成されたコーティング層12を有していてもよい。必要に応じて、本発明のシート1は、前記コーティング層12の上、または基材11のコーティング層12の反対面に形成された層をさらに有していてもよい。
【0017】
本発明において、「Aの上に形成されたB」、「Aの上部に形成されたB」または「Aの表面に形成されたB」などの表現は、Aの表面にBが直接的に貼り付けられたり、粘着剤または接着剤などを介して貼り付けられている場合はもとより、Aの表面に他の層が形成され、さらにその他の層の表面にBが形成されている場合(例えば、A−C−B)も含む。
【0018】
本発明の前記シートにおいて使用可能な基材の種類には、特に制限はない。本発明においては、例えば、基材として、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ウレタン系樹脂またはポリエステル系樹脂などを主材とする樹脂フィルムと、アルミニウム箔または銅箔などの金属箔、グラシン紙(glassine paper)、コート紙(coated paper)またはセロファンなどのセルロース系シート、またはこれらのうちの2種以上の複合シートなどを用いることができる。本発明において、前記基材の厚さには、特に制限がなく、目的とする用途に応じて適切に選択することができる。
【0019】
本発明において、前記シートが転写材から形成される場合、前記基材の上には離型層が形成され、前記コーティング層が前記離型層の上に形成されていてもよい。この場合、離型層を形成する方式には特に制限がなく、例えば、エポキシ系、エポキシ−メラミン系、アミノアルキッド系、アクリル系、メラミン系、シリコン系、フッ素系、セルロース系、ヨウ素樹脂系、ポリオレフィン系、パラフィン系またはこれらのうちの2種以上の複合離型剤を用いた各種の印刷法またはコート法などを用いて形成することができる。
【0020】
本発明においては、必要に応じて、前記基材または離型層を無光状態で形成してもよい。例えば、基材または離型層にエンボス処理を施したり、離型層内に炭酸カルシウム、シリカ、酸化亜鉛、炭酸マグネシウム、ポリエチレンワックスまたはガラスビーズ(glass beads)などの微粉末を含ませる方式などを用いて無光状態を形成することができる。これにより、例えば、前記シートが転写材である場合には、基材の剥離後に、離型面に形成された微細な凹凸がコーティング層の表面に転写されて、無光表面を有する成形品が得られる。上記の如き無光状態は、基材または離型層に全面的に形成してもよく、部分的に形成してもよい。本発明において、前記離型層または無光層の厚さには特に制限がなく、必要に応じて、適切な厚さに設定すればよい。
【0021】
本発明において、前記シートの上に形成されるコーティング層を形成する樹脂組成物は、上述したように、エポキシ基および(メタ)アクリロイル基を有する樹脂を含む。本発明における用語「(メタ)アクリロイル基」、「(メタ)アクリレート」、または「(メタ)アクリル酸」は、アクリロイル基またはメタクリロイル基、アクリレートまたはメタクリレート、またはアクリル酸またはメタクリル酸を通称する用語である。
【0022】
本発明において、樹脂組成物に含まれる樹脂は、エポキシ当量が200g/eq〜20,000g/eq、好ましくは、2,000g/eq〜8,000g/eq、より好ましくは、4,000g/eq〜8,000g/eqであってもよい。本発明において使用する用語「エポキシ当量(epoxy equivalent weight、g/eq)」とは、エポキシ基の分子量を、前記樹脂に含まれるエポキシ基の数で除算した数値のことを言う。上記の如きエポキシ当量は、この分野における公知の様々な化学的な滴定法により分析することができる。本発明においては、樹脂のエポキシ当量を上述した範囲に納めることにより、熱硬化効率などの工程効率に優れており、熱硬化後に粘着性または接着性が適切に抑制され、耐溶剤性や耐薬品性などの物性に優れた樹脂層を提供することができる。
【0023】
本発明の樹脂組成物において、前記樹脂は、また、(メタ)アクリロイル当量が約100g/eq〜1,000g/eq、好ましくは、約200g/eq〜500g/eqであってもよい。本発明において使用する用語「(メタ)アクリロイル当量((meth)acryloyl equivalent weight、g/eq)」とは、(メタ)アクリロイル基の分子量を、前記樹脂に含まれる(メタ)アクリロイル基の数で除算した数値のことをいう。本発明においては、上記の如き(メタ)アクリロイル当量をこの分野における公知の各種の化学的滴定法により分析することができる。本発明においては、樹脂の(メタ)アクリロイル当量を上述した範囲に納めることにより、光硬化効率などの工程効率に優れており、しかも、硬化後に耐摩耗性、耐傷擦性および耐薬品性などの物性に優れたハードコーティングを提供することができる。
【0024】
本発明において、エポキシ基および(メタ)アクリロイル基を含む樹脂は、また、重量平均分子量が約5,000〜100,000、好ましくは、約10,000〜約80,000、さらに好ましくは、約20,000〜70,000であってもよい。本発明において使用する用語「重量平均分子量(weight average molecular weight、Mw)」とは、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC:Gel permeation chromatography)により測定したポリスチレン換算数値のことをいう。本発明においては、重量平均分子量を上述した範囲に納めて、コーティング性、熱硬化性および光硬化性などの工程効率に優れており、熱硬化後に粘着性または接着性が適切に抑制され、光硬化後には、耐摩耗性、耐擦傷性および耐薬品性などの物性に優れたハードコーティングを提供することができる。
【0025】
本発明において、上記の樹脂を製造する方法には特に制限がない。本発明においては、例えば、エポキシ基を有する単量体(例えば、グリシジル(メタ)アクリレート)を含む単量体混合物を重合させて、エポキシ基を有する重合物を製造し、前記重合物に(メタ)アクリロイル基を有する化合物、例えば、α、β−不飽和モノカルボキシル酸(例えば、(メタ)アクリル酸など)を付加反応させて、上述した樹脂を製造することができる。
【0026】
本発明の一例において、前記単量体混合物は、グリシジル(メタ)アクリレートを単独で含んでいてもよく、必要に応じては、グリシジル(メタ)アクリレートおよび他の共単量体を含んでいてもよい。
【0027】
上記の単量体混合物に含まれ得る共単量体の種類は、分子構造中にα、β−不飽和炭素-炭素の二重結合を含むものであれば、特に制限がない。本発明においては、例えば、炭素数1〜14のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート、スチレン、ビニルアセタートまたは(メタ)アクリロニトリルなどを用いることができるが、これに制限されるものではない。本発明において、単量体混合物がグリシジル(メタ)アクリレートおよび共単量体を含む場合、前記各単量体の割合には特に制限がなく、目的とする効果を考慮して適切に調節可能であり、例えば、前記単量体混合物は、グリシジル(メタ)アクリレート5重量部〜70重量部および共単量体5重量部〜70重量部を含んでいてもよい。
【0028】
本発明において、上記の単量体混合物を重合して重合物を製造する方法には特に制限がなく、例えば、溶液重合、光重合、バルク重合、サスペンション重合またはエマルジョン重合などこの分野における通常の重合方法を制限なしに適用することができる。
【0029】
本発明においては、上記のようにして形成した重合物を、(メタ)アクリロイル基を有する化合物、例えば、α、β−不飽和モノカルボキシル酸(例えば、(メタ)アクリル酸など)と付加反応させて、上述した如き樹脂を製造することができる。この場合、前記重合物および化合物を付加反応させる方法および条件などには特に制限がなく、この分野における公知の通常の方式を適切に採用すればよい。また、本発明において、付加反応に適用される、前記(メタ)アクリロイル基含有化合物の重合物に対する使用量には、やはり特に制限がなく、上述したエポキシ当量および(メタ)アクリロイル当量を満足する範囲内において適切に選択可能である。本発明においては、例えば、付加反応時に重合物に含まれるエポキシ基の残量が反応に預かるエポキシ基を有する単量体の含量を基準として、α、β−不飽和モノカルボキシル酸の反応当量を100%としたとき、約50%以下、好ましくは、約30%以下、より好ましくは、約5%以下になるように前記化合物を用いることができる。
【0030】
本発明における樹脂組成物は、チオール系硬化剤を含む。本発明における用語「チオール系硬化剤」は、上述した樹脂に含まれるエポキシ基または組成物に含まれている化合物の炭素−炭素の二重結合と反応して、樹脂組成物を1次的に熱硬化させ得るチオール基を分子中に1以上含む化合物を意味する。
【0031】
本発明において使用可能なチオール系硬化剤の種類は、分子構造中に1以上、好ましくは、2以上のチオール基を有するものであれば、特に制限がない。
【0032】
本発明においては、例えば、前記チオール系硬化剤として、エトキシ化トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)(ethoxylated trimethylolpropane tris(3−mercaptopropionate))、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート))(trimethylolpropane tris(3−mercaptopropionate))、グリコールジ(3−メルカプトプロピオネート)(glycol di(3−mercaptopropionate))、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)(pentaerythritol tetrakis(3−mercapto−propionate))、4−メルカプトメチル−3,6−ジチア−1,8−オクタンジチオール(4−mercaptomethyl−3,6−dithia−1,8−octanedithiol)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトアセタート)(pentaerythritol tetrakis(3−mercaptoacetate))、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトアセタート)(trimethylolpropane tris(3−mercaptoacetate))、4−t−ブチル−1,2−ベンゼンジチオール(4−t−butyl−1,2−benzenedithiol)、2−メルカプトエチルスルフィド(2−mercaptoethylsulfide)、4,4’−チオジベンゼンチオール(4,4’−thiodibenzenethiol)、ベンゼンジチオール(benzenedithiol)、グリコールジメルカプトアセタート(glycol dimercaptoacetate)、グリコールジメルカプトプロピオネートエチレンビス(3−メルカプトプロピオネート)(glycol dimercaptopropionate ethylene bis(3−mercaptopropionate))、ポリエチレングリコールジメルカプトアセタート(polyethylene glycol dimercaptoacetates)およびポリエチレングリコールジ(3−メルカプトプロピオネート)(polyethylene glycol di(3−mercaptopropionates))よりなる群から選ばれるいずれか1種以上のポリチオールを用いることができる。
【0033】
本発明においては、好ましくは、チオール系硬化剤として、下記の一般式1で表される化合物を用いることができる。
【0034】
【化1】
【0035】
式中、R1〜R4は、それぞれ独立して、水素、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニルまたはチオール含有基を示し、前記R1〜R4のうちの2以上は、チオール含有基を示す。
【0036】
本明細書における用語「アルキル」または「アルコキシ」は、炭素数1〜20、炭素数1〜16、炭素数1〜12、炭素数1〜8または炭素数1〜4の直鎖型または分岐鎖型、または環状または非環状アルキルまたはアルコキシを意味してもよく、上記のアルキルまたはアルコキシは、任意的に1以上の置換基によって置換されていてもよい。
【0037】
また、本明細書における用語「アルケニル」または「アルキニル」は、炭素数2〜20、炭素数2〜16、炭素数2〜12、炭素数2〜8または炭素数2〜4の直鎖型または分岐鎖型、または環状または非環状のアルケニルまたはアルキニルを意味してもよく、上記のアルケニルまたはアルキニルは、任意的に1以上の置換基によって置換されていてもよい。
【0038】
前記各用語の定義において、アルキル、アルコキシ、アルケニルまたはアルキニルなどに置換可能な置換基の例としては、化学分野において一般的に適用されるあらゆる置換基が挙げられ、具体的には、チオール、アミン、アミド、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシ、グリシジル、シアノ、ニトロ、ヘテロシクロアルキルまたはアリールなどが挙げられるが、これらに制限されるものではない。
【0039】
さらに、上記の一般式1の化合物において、チオール含有基の種類は、置換体構造の末端にチオール基(−SH)を有する、1価残基であれば、特に制限はない。本発明の一例において、前記チオール含有基は、例えば、下記の一般式2で表される1価残基であってもよい。
【0040】
[一般式2]
−A−B−C−D−SH
【0041】
式中、Aは、単一結合またはアルキレンであり、Bは、−NH(C=O)−、−OC(=O)−、−O−E−OC(=O)−、−SC(=O)−または−OCH2−であり、Cは、単一結合またはアルキレンであり、Dは、単一結合または下記の一般式3の2価残基であり、上記におけるEは、アルキレンを示す。
【0042】
【化2】
【0043】
式中、Pは、2価アリールを示し、nは、0〜10の整数を示す。
【0044】
前記A、CまたはDにおいて、用語「単一結合」は、A、CまたはDの位置に別途の原子が存在しない場合を意味する。例えば、Aが単一結合である場合には、チオール含有基が−B−C−D−SHで表され、Cが単一結合である場合、チオール含有基が−A−B−D−SHで表され、Dが単一結合である場合、チオール含有基が−A−B−C−SHで表される。
【0045】
また、本明細書における用語「アルキレン」は、炭素数1〜20、炭素数1〜16、炭素数1〜12、炭素数1〜8または炭素数1〜4の直鎖型または分岐鎖型、または環状または非環状のアルキレンを意味し、上記のアルキレンは、任意的に1以上の置換基によって置換されていてもよい。
【0046】
さらに、本明細書における用語「2価アリール」は、芳香族環化合物から誘導されるか、あるいは、前記化合物を骨格内に含む2価残基(bivalent moiety)を意味し、具体的には、6員〜22員、6員〜18員、6員〜14員または6員〜10員の芳香族環化合物から誘導されるか、あるいは、それを骨格内に含む、2価残基を意味し、上記のアリールは、任意的に1以上の置換基によって置換されていてもよい。
【0047】
さらに、上記の一般式3において、nは、好ましくは、0〜7であり、より好ましくは、0〜5であり、さらに好ましくは、0〜3であり、最も好ましくは、1〜3である。
【0048】
上記におけるアルキレンまたは2価アリールによって置換可能な置換基の例は、上記の一般式1の項目において述べた通りである。
【0049】
本発明の前記一般式1のチオール系硬化剤において、R1〜R4は、好ましくは、それぞれ独立して、水素、炭素数1〜4のアルキルまたは−A−B−C−D−SHであり、より好ましくは、それぞれ独立して、水素、メチル、エチルまたは−A−B−C−D−SHであってもよい。
【0050】
また、前記好適なチオール系硬化剤の定義において、R1〜R4のうちの2以上、好ましくは、3以上は、−A−B−C−D−SHであってもよく、上記におけるAは、好ましくは、単一結合または炭素数1〜4のアルキレンであり、Bは、−OC(=O)−または−O−E−OC(=O)−であり、Cは、単一結合または炭素数1〜4のアルキレンであり、Dは、単一結合または下記の一般式4の2価残基であり、前記におけるEは、炭素数1〜4のアルキレンであってもよい。
【0051】
【化3】
【0052】
前記一般式4において、nは、0〜10であり、好ましくは、0〜7であり、より好ましくは、0〜5であり、さらに好ましくは、0〜3であり、最も好ましくは、1〜3の整数である。
【0053】
上記の一般式で表されるチオール系硬化剤の例としては、アルコキシ化トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)またはアルキレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)などが挙げられ、より具体的には、エトキシ化トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート))またはエチレングリコールジ(3−メルカプトプロピオネート)などが挙げられるが、これらに制限されるものではない。
【0054】
本発明の樹脂組成物において、前記チオール系硬化剤の含量は、樹脂に含まれているエポキシ基の当量や、目的とする硬化度を考慮して適切に選択可能であり、特に制限はない。例えば、本発明の樹脂組成物は、前記チオール系硬化剤を、上述の樹脂100重量部に対して、0.1重量部〜10重量部、好ましくは、0.5重量部〜5重量部含んでいてもよい。本発明においては、チオール系硬化剤の樹脂に対する含量比を上記のように制御して、熱硬化の際に樹脂のエポキシ基との適切な反応を誘導し、熱硬化後に粘着性の発現を適切に抑制し、耐溶剤性やコーティング性などの物性を卓越に維持することができる。
【0055】
本発明において、コーティング層を形成する前記樹脂組成物は、光開始剤をさらに含んでいてもよい。本発明において使用可能な光開始剤の種類には特に制限がなく、この分野における公知の一般的な種類を制限なしに使用することができる。
【0056】
本発明においては、例えば、ベンゾイン系、ヒドロキシケトン系、アミノケトン系またはホスフィンオキシド系などの化合物を使用することができ、より具体的には、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2、2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2、2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2−(ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4、4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−メチルチオキサントン(thioxanthone)、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p−ジメチルアミノ安息香酸エステル、オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン]および2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキシドなどを使用することができる。本発明においては、これらのうちの1種または2種以上を使用することができるが、これに制限されるものではない。
【0057】
本発明の樹脂組成物において、光開始剤は、上述の樹脂100重量部に対して、1重量部〜15重量部、好ましくは、3重量部〜12重量部、より好ましくは、5重量部〜10重量部含んでいてもよい。光開始剤の含量を前記範囲に納めて、光硬化効率を卓越に維持し、硬化後における残存成分による物性の低下を防ぐことができる。
【0058】
本発明の樹脂組成物は、さらに多官能性アクリレートを含んでいてもよい。本発明の樹脂組成物が多官能性アクリレートを含むことにより、光硬化後にハードコーティングが緻密になる架橋構造を実現し、これにより、ハードコーティングの硬度、耐摩耗性、耐擦傷性および耐薬品性などの物性をなお一層改善することができる。
【0059】
本発明において使用可能な多官能性アクリレートの種類には特に制限がなく、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペート(neopentylglycol adipate)ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバル酸(hydroxyl puivalic acid)ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(dicyclopentanyl)ジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリロキシエチルイソシアヌレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ヘキサヒドロフタル酸ジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチルプロパンジ(メタ)アクリレート、アダマンタンジ(メタ)アクリレートまたは9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレンなどの2官能性アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、3官能型ウレタン(メタ)アクリレートまたはトリス(メタ)アクリロキシエチルイソシアヌレートなどの3官能型アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレートまたはペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどの4官能型アクリレートと、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどの5官能型アクリレート、およびジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートまたはウレタン(メタ)アクリレート(例えば、イソシアネート単量体およびトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートの反応物)などの6官能型アクリレートなどを使用することができるが、これらに制限されるものではない。
【0060】
本発明においては、特に、多官能性アクリレートとして、分子構造中に環状構造および/またはウレタン結合を含むアクリレートを使用することが好ましい。上記のアクリレートを使用することにより、硬化後に一層優れた硬度を有し、且つ、屈折率の高いハードコーティングを提供することができる。この場合、アクリレートに含まれる環構造は、炭素環式構造または複素環式構造、または単環式または多環式構造のいずれであってもよい。具体的に、前記多官能性アクリレートに含まれる環構造の例としては、シクロペンタン、シクロヘキサンまたはシクロヘプタンなどの、炭素数3〜12、好ましくは、炭素数3〜8のシクロアルキル環構造が挙げられ、前記環構造は、アクリレート内に1以上、好ましくは、1〜5、より好ましくは、1〜3個含まれていてもよく、なお、O、SまたはNなどのヘテロ原子が1以上含まれていてもよい。
【0061】
本発明において使用可能な上記の環構造を含む多官能性アクリレートの具体例としては、トリス(メタ)アクリロキシエチルイソシアヌレートなどのイソシアヌレート構造を有する単量体、イソシアヌレート変性ウレタンアクリレート(例えば、分子中に環構造を有するイソシアネート化合物(例えば、イソボロンジイソシアネート)およびアクリレート化合物(例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートまたはペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート)の反応物など)などが挙げられるが、これらに制限されるものではない。
【0062】
本発明の樹脂組成物において、多官能性アクリレートは、上述の樹脂100重量部に対して、30重量部以下、好ましくは、5重量部〜15重量部含んでいてもよい。本発明においては、多官能性アクリレートの含量を上述の範囲に納めることにより、ハードコーティングになお一層優れた硬度などの物性を有するコーティング層を提供することができる。
【0063】
本発明の樹脂組成物は、酸化防止剤をさらに含んでいてもよく、これにより、コーティング層に発生し得る黄変現象などを抑制することができる。
【0064】
本発明において使用可能な酸化防止剤の種類には特に制限がなく、この分野において公知の通常の酸化防止剤を使用することができる。本発明においては、例えば、フェノール系酸化防止剤(例えば、IRGANOX;RONOTEC;ETANOX)、リン系酸化防止剤(例えば、CYANOX;ULTRANOX)またはキレート系酸化防止剤(IGAFOS)などを使用することができる。
【0065】
本発明において、前記酸化防止剤の含量には特に制限がなく、コーティング層の物性を考慮して適切に選択することができる。本発明の樹脂組成物は、例えば、前記酸化防止剤を上述の樹脂100重量部に対して0.1重量部〜2重量部含んでいてもよい。
【0066】
本発明の樹脂組成物は、滑剤をさらに含んでいてもよい。滑剤は、樹脂組成物から形成されたコーティング層の巻取効率、耐ブロッキング性、耐摩耗性および耐傷付き性を改善することができる。本発明において使用可能な滑剤の種類には特に制限がなく、例えば、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス、合成ワックスまたはモンタンワックスなどのワックス類、シリコン系樹脂またはフッ素系樹脂などの合成樹脂類を使用することができる。本発明の樹脂組成物において、前記滑剤の含量には特に制限がなく、例えば、上述の樹脂100重量部に対して0.5重量部〜15重量部、好ましくは、1重量部〜6重量部含んでいてもよい。滑剤の含量を前記範囲に納めることにより、コーティング層に優れた耐ブロッキング性、耐摩擦性および耐傷付性を与えつつ、その透明性も卓越に維持することができる。
【0067】
本発明の樹脂組成物は、さらに耐光性の向上を目指して紫外線吸収剤を適切な含量で含むことができる。本発明において使用可能な紫外線吸収剤の例としては、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール、ヒドロキシフェニル−S−トリアジンまたは2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールなどが挙げられるが、これらに制限されるものではない。本発明において前記紫外線吸収剤が含まれる場合、その含量には特に制限がなく、目的とする物性を考慮して適切に選択することができる。
【0068】
本発明の樹脂組成物には、上述の成分に加えて、発明の目的を損なわない範囲において、この分野において公知の通常の成分、例えば、DMAP(dimethylaminopyridine)などの熱硬化用触媒、ナノシリカなどのフィラー成分、またはイソシアネート化合物などをさらに含んでいてもよい。
【0069】
本発明において、上記の樹脂組成物を用いて、基材の上にコーティング層を形成する方法には特に制限がない。本発明においては、例えば、上述の樹脂組成物を適切な条件下で処理することにより、前記組成物内の樹脂のエポキシ基または炭素−炭素の二重結合をチオール系硬化剤と反応させて付加反応物を形成し、前記付加反応物を含む組成物を基材の上に適切な方式によりコーティングして形成することができる。この場合、前記付加反応物を形成する条件には特に制限がなく、樹脂または硬化剤に含まれるエポキシ基またはチオール基の含量または種類を考慮して適切な反応条件を設定することができる。本発明においては、例えば、前記樹脂組成物を配合し、これを約100℃〜170℃の条件下で30秒〜2分間処理して前記付加反応物を形成することができる。
【0070】
本発明においては、上述のようにしてコーティング層を形成して、別途の乾燥工程などを行わなくても、粘着性のないコーティング層を形成することができる。これにより、本発明においては、コーティング層の形成のための特殊装備を使用することなく、且つ、別途の乾燥工程などを行うことなく、コーティング層の上に図案層、蒸着層または接着層などの他の層をさらに形成したり、シートを巻取したりすることが可能である。
【0071】
本発明のシートにおいて、上記のコーティング層の厚さには特に制限がなく、目的とする物性を考慮して適切な厚さに設定すればよい。
【0072】
添付の図2または図3に示すように、本発明のシート2、3は、前記コーティング層12の上部または基材11の上部に形成された接着層21、31をさらに含んでいてもよい。このような接着層21、31は、例えば、本発明のシート2が、転写材または表面保護シートとして用いられる場合、成形品への接着力を提供する用途に使用可能である。
【0073】
本発明において、上記の接着層21、31は、この分野において公知の各種の感熱性または感圧性樹脂を用いて形成することができる。本発明においては、例えば、ポリアクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系、塩素化ポリオレフィン系樹脂、塩素化エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂またはゴム系樹脂などのうち、前記接着層21、31が貼り付けられる被着体の材質を考慮して適切な成分から接着層21、31を形成することができる。
【0074】
本発明においては、また、図4または図5に示すように、前記シート4、5が前記コーティング層12または基材11の上に形成された図案層41、51および前記図案層41、51の上に形成された接着層21、31を備えていてもよい。本発明において、上記の図案層41、51を形成する方法には特に制限がない。本発明においては、例えば、ポリビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、セルロースエステル系樹脂またはアルキッド樹脂などの樹脂をバインダーとし、適切なカラーの顔料または染料を含む着色インクを用いて前記図案層を形成することができる。本発明において、上記の図案層の形成方法および厚さなどには特に制限がなく、この分野における公知の手段を適切に採用することができる。
【0075】
本発明においては、さらに、図6または図7に示すように、シート6、7が、前記図案層41、51の上に形成された蒸着層61、71をさらに備えていてもよい。図6または図7においては、コーティング層12または基材11の上に図案層41、51が形成され、その上部に蒸着層61、71が形成された場合を例示しているが、本発明においては、必要に応じて、前記図案層41、51がなく、蒸着層61、71が直接にコーティング層12または基材11の上に形成されてもよい。本発明において、前記蒸着層を形成する素材およびその形成方法には特に制限がなく、この分野において一般的に用いられる素材を用いた汎用的な方法、例えば、真空蒸着や、スパッタリング法などを用いて前記蒸着層を形成すればよい。
【0076】
本発明のシートにおいては、上述の各層の間の適切な個所に1以上のアンカー層が配設されてもよい。上記のアンカー層は、シートの各層間の密着性を高め、化学薬品などから成形品や、図案層を保護する役割を果たす。上記のアンカー層は、例えば、通常の二液型ウレタン樹脂、メラミン系またはエポキシ系などの熱硬化性樹脂または塩化ビニル共重合体樹脂などの熱可塑性樹脂を用い、通常の手段により形成することができる。
【0077】
本発明の方法においては、上記のシートを用いて、前記シートのコーティング層を成形品に転写または貼り付け、前記コーティング層を光硬化させて、ハードコーティングを形成する。
【0078】
本発明において、用語「コーティング層の転写」は、本発明のシートが転写材(例えば、図2、図4および図6のシート)から形成される場合に主として適用される方式であり、前記シートのコーティング層または前記コーティング層の上に接着層が形成される場合、その接着層を成形品に表面に貼り付け、基材を引き剥がす過程を経てコーティング層を形成する方式を意味する。なお、本発明における用語「コーティング層の貼り付け」は、本発明のシートが表面保護シート(例えば、図3、図5および図7のシート)から形成される場合に主として適用される方式であり、前記シートの基材または前記基材の上に接着層が形成される場合、その接着層を成形品に表面に貼り付ける過程を経てコーティング層を形成する方式を意味する。
【0079】
すなわち、本発明の方法は、用いられるシートの形態に応じて、様々なステップを含むことができる。
【0080】
例えば、本発明のシートが転写材から形成される場合、前記方法は、前記シートのコーティング層(または、前記コーティング層の上に形成された接着層)を成形品の表面に貼り付けるステップと、基材を引き剥がすステップと、光照射によりコーティング層を硬化させるステップと、を含むことができる。
【0081】
また、本発明において用いられるシートが転写材である場合、前記方法は、射出成形により成形品を製造するとともに、その表面にハードコーティングを形成するステップを含むことができる。この場合、前記方法は、例えば、前記シートのコーティング層(または、コーティング層の上に接着層が形成されている場合、その接着層)が成形品と接触するように前記シートを射出金型内に設けるステップと、前記射出金型内の空洞に溶融樹脂を射出するステップと、前記シートから基材を引き剥がすステップと、光照射によりコーティング層を硬化させるステップと、を含むことができる。
【0082】
本発明の方法においては、また、前記シートが表面保護シートから形成される場合、前記方法が、シートを基材側(または、前記基材の上に接着層が形成される場合、その接着層)が成形品の表面を向くように配置するステップと、前記シートを加熱して、基材を軟化させるステップと、前記シートを下方から真空吸引して、成形品の表面に貼り付けるステップと、光照射によりコーティング層を硬化させるステップと、を含むことができる。
【0083】
また、本発明の方法においては、前記シートが表面保護シートである場合にも、射出成形により成形品を製造するとともに、その表面にハードコーティングを形成するステップを含むことができる。この場合、前記方法は、例えば、前記シートの基材(または、基材の上に接着層が形成されている場合、その接着層)が成形品と接触するように射出金型内に設けるステップと、前記金型内の空洞に溶融樹脂を射出するステップと、光照射によりコーティング層を硬化させるステップと、を含むことができる。
【0084】
上記の各本発明の各方法における各ステップの順序には特に制限がなく、必要に応じて、一部のステップの順番を変えたり、あるいは、同時に行ったりすることができる。本発明の方法において、例えば、基材の剥離および光照射が行われる場合、まず、基材を引き剥がし、光を照射して光硬化を行ってもよく、前記基材として光透過性を有する基材を用いて、まず、コーティング層を硬化させ、基材を引き剥がす工程を行ってもよい。なお、本発明の方法において、前記加熱、軟化および真空吸引などの工程は、同時に行われてもよい。
【0085】
添付図面に基づき、本発明の転写方法を詳述する。
【0086】
添付の図8は、本発明の一例示による方法を模式的に示す図である。
【0087】
本発明の前記方法においては、まず、シートのコーティング層12側(図示はしないが、コーティング層12の上に接着層などが形成されている場合、その接着層側)を下部として、成形品81の上に配置する。その後、耐熱ゴム状弾性体82、例えば、シリコンラバーなどを備えたロール転写機またはアップダウン転写機などの転写機を用いて、温度約80℃〜260℃および圧力約50Kg/m2〜200Kg/m2の条件下で、前記耐熱ゴム状弾性体82を介してシートの基材11側に熱および/または圧力を加える。このような方式により、コーティング層12または接着層などが成形品51の表面に貼り付けられる。次いで、必要に応じて、冷却工程を適切に行った後に、基材11を引き剥がすと、基材11とコーティング層12との間の境界面において剥離が起こる。その後、光照射などにより、成形品81に転写されたコーティング層12を光硬化させる。上述したように、前記光硬化工程は、基材11の剥離前に行ってもよい。
【0088】
本発明において、前記光照射を行う条件には特に制限がなく、コーティング層の組成を考慮して適切な範囲内において選択すればよい。本発明においては、例えば、高圧水銀ランプ、無電極ランプまたはキセノンランプなどの手段を用いた紫外線照射方式により前記光照射を行うことができる。この場合には、前記光照射を波長が約300nm〜400nmの紫外線を用いて、照度80mW/cm2〜200mW/cm2および光量1,000mJ/cm2〜2,000mJ/cm2の条件下で1秒〜5分間行うことができる。
【0089】
また、上記において、成形品の材質には特に制限がない。本発明においては、例えば、前記成形品が樹脂成形品、木工製品、金属製品、これらのうちの2種以上の複合製品またはその他ハードコーティングが求められるあらゆる種類の成形品であってもよい。上記において、樹脂成形品の樹脂としては、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、またはAN樹脂などの汎用樹脂が挙げられる。さらに、ポリフェニレンオキシド・ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂または超高分子量ポリエチレン樹脂などの汎用エンジニアリング樹脂や、ポリスルホン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリフェニレンオキシド系樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリイミド樹脂、液晶ポリエステル樹脂、ポリアリール系耐熱樹脂などのスーパーエンジニアリング樹脂を使用することもできる。加えて、本発明においては、ガラス繊維や無機フィラーなどの補強材を添加した複合樹脂も使用することができる。
【0090】
添付の図9は、本発明の他の例示による方法を示すものであり、射出成形による成形同時転写法を用いて成形品の表面にコーティング層を転写する方法を示す模式図である。
【0091】
前記方法においては、まず、可動金型91と固定金型92を有する射出金型内に前記シートをコーティング層12側(図示はしないが、コーティング層の上に接着層などが形成されている場合、その接着層側)を内側とし、基材11が固定金型92に接するように設ける。次いで、金型を密閉した後、可動金型91に形成されたゲートから、溶融樹脂を金型内に射出93して、成形品を形成し、これと同時に、その成形品の表面にコーティング層を貼り付ける。次いで、必要に応じて、樹脂成形品を適正な条件下で冷却した後、成形用金型を開放して樹脂成形品を取り出す。そして、基材11の剥離前または剥離後に光照射によりコーティング層を硬化させて、ハードコーティングを形成することができる。
【0092】
前記方法において、成形品の形成に用いられる樹脂の種類および光照射の条件などには特に制限がなく、例えば、図8の方法に示す範疇内において適切に選択することができる。
【0093】
添付の図10は、本発明のシートが表面保護シートから形成されている場合、有用に適用可能なハードコーティング形成法の例を示す模式図である。前記方法においては、まず、基材11側(図示はしないが、基材11の上に接着層などが形成されている場合、その接着層側)を下部として、成形品102の表面にシートを配置する。次いで、ヒーター104などによってシートを加熱して基材11を軟化させ、下部側から真空吸引103して、シートを成形品102に貼り付ける。その後、光照射によりコーティング層を硬化させることにより、ハードコーティングを形成することができる。前記方法においては、シートの加熱および真空吸引工程を同時に行ってもよく、また、下部から真空吸引を行うと同時に上部から加圧して接着効率を高めてもよい。この場合、シートの加圧は、流体などにより直接的に行ってもよく、または、可塑性シートを介して行うことができる。
【0094】
前記方法において、成形品の形成に用いられる樹脂の種類および光照射の条件などには特に制限がなく、例えば、図8の方法に示す範疇内において適切に選択することができる。
【0095】
添付の図11は、シートが表面保護シートである場合、ハードコーティングを形成する方法の他の例示であり、射出成形による成形と同時に、ハードコーティングを形成する方法を示す模式図である。前記方法においては、まず、可動金型112と固定金型111を有する成形用金型内にコーティング層12が固定金型111に接するようにシートを設ける。その後、金型を密閉した後、可動金型112に設けられたゲートから溶融樹脂を射出113して、成形品を成形するとともに、その表面にシートの基材またはその基材の上に形成された接着層を貼り付ける。その後、必要に応じて、成形品の冷却工程などを経た後、金型を開放し、成形品を取り出した後に光照射などによりコーティング層を硬化させることにより、ハードコーティングを形成することができる。
【0096】
前記方法において、成形品の形成に用いられる樹脂の種類および光照射の条件などには特に制限がなく、例えば、図8の方法に示す範疇内において適切に選択することができる。
【0097】
本発明のハードコーティング形成法は、上述の方式に加えて、この分野における公知の様々な方式により、ハードコーティングを形成することができる。
【実施例】
【0098】
以下、本発明に係る実施例を通じて本発明をより一層詳述するが、本発明の範囲が下記に示す実施例によって制限されるものではない。
【0099】
(実施例1)
エポキシ基および(メタ)アクリロイル基を有する樹脂の製造
攪拌装置、冷却管、滴下ロットおよび窒素導入管を備えた反応器に、グリシジルメタアクリレート(GMA)11重量部、メチルメタクリレート(MMA)3重量部、スチレン(SM)6重量部、ブチルアセタート(BA)150重量部および2、2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.25重量部を投入した。その後、窒素気流下において約1時間かけて反応系の温度を約65℃まで昇温させた後、約9時間保温した。次いで、GMA43重量部、MMA12重量部、SM25重量部、ラウリルメルカプタン0.5重量部およびAIBN1重量部を含む混合物を滴下ロットを用いて、窒素気流下において反応装置に約2時間かけて滴下し、約3時間同温度に保持した。その後、AIBN0.25重量部を入れ、2時間保温した。次いで、温度を約105℃に調整し、窒素導入管を空気導入管に取り替えた後、アクリル酸(AA)37重量部、p−メトキシフェノール(p−methoxyphenol)0.05重量部およびジメチルアミノピリジン(DMAP)0.04重量部を投入して混合した後、空気バブリング下において105℃に保温した。同温度に15時間保持し、p−メトキシフェノール0.05重量部を入れて冷却した後、不揮発分が30%になるようにメチルエチルケトンを加えて、エポキシ基およびアクリロイル基を有する樹脂を製造した。製造された樹脂に対して化学的滴定法により測定したところ、エポキシ当量は、6,600g/eq、アクリロイル当量は、349g/eqであり、GPCにより測定した標準ポリスチレン換算重量平均分子量は、60,000であった。
【0100】
コーティング液の調製
製造された樹脂100重量部に対して、チオール系硬化剤として、エトキシ化トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)5重量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)20重量部、1,6−ヘキサンイソシアネート3量体5重量部、光開始剤8重量部、酸化防止剤1重量部、ナノシリカ20重量部およびメチルエチルケトン70重量部を混合してコーティング液を製造した。
【0101】
ハードコーティング形成用シートの製造
基材として、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの一方の面にグラビアコーティング法によりメラミン系離型剤を約1μmの厚さでコーティングして離型層を形成した。次いで、離型層の上に製造されたコーティング液をマイクログラビアコーティング法により約6μmの厚さで塗布した。その後、塗布されたコーティング液を150℃において30秒間加熱して、樹脂のエポキシ基およびチオール系硬化剤のチオール基を反応させて熱硬化物を形成した。その後、熱硬化物を含む前記コーティング層の上にアクリル系樹脂からアンカー層、アクリル酸−ウレタン系樹脂から図案層、アクリル系樹脂系蒸着プライマーから真空蒸着層およびアクリル系樹脂から接着層をマイクログラビア印刷法によりこの順に形成してハードコーティング形成用シートを製造した。
【0102】
ハードコーティングの形成
このようにして製造されたシートに、図9に示す方式を適用して、成形品の表面にハードコーティングを形成した。具体的に、シートを基材が固定金型92に当たるように配置し、溶融樹脂を射出した後、基材の剥離および紫外線照射工程を通じて、ハードコーティングを形成した。このとき、成形条件は、樹脂の温度が約280℃であり、金型温度が約60℃であり、樹脂圧力は約1,600Kg/cm2であった。なお、紫外線の照射条件は1,000w/cm、ランプの高さは約10cm、照射時間は約3秒に設定した。
【0103】
(実施例2)
チオール系硬化剤として、エトキシ化トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)の代わりに、エチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)を用いた以外は、実施例1の方法と同様にしてハードコーティング形成用組成物およびシートを製造し、これを用いて成形品の表面にハードコーティングを形成した。
【0104】
このようにして製造されたハードコーティング形成用組成物に対して、下記の方式により物性(鉛筆硬度)を評価し、その結果を表1に示す。
【0105】
1.鉛筆硬度
実施例1および2および比較例1において調製されたハードコーティング形成用組成物を、厚さ2mmのPMMA(Poly(methyl methacrylate))基板にバーコーティング法を用いて6μmの厚さでコーティングした。その後、160℃において40秒間熱硬化させ、さらに紫外線を照射して硬化させた(1,000mW)。その後、鉛筆硬度測定機(コアテック社製)および硬度測定用三菱鉛筆を用いて、1Kgの荷重がかかった状態において鉛筆硬度を測定した。
【0106】
【表1】
【0107】
前記表1の結果から明らかなように、本発明のハードコーティング形成用組成物を使用する場合、効果的に高い硬度のハードコーティングを形成することができる。
【符号の説明】
【0108】
1、2、3、4、5、6、7:シート
11:基材
12:コーティング層
21、31:接着層
41、51:図案層
61、71:蒸着層
81、101:成形品
82:ロール
91、112:可動金型
92、111:固定金型
93、113:溶融樹脂の射出方向
102:真空吸引方向
103:ヒーター
【技術分野】
【0001】
本発明はハードコーティング形成法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂成形品または木工成形品などの各種の成形品に耐摩耗性および耐薬品性などに優れたハードコーティング(保護層と呼ばれることもある)を形成するために様々な方法が用いられている。例えば、離型性を有する基材の離型面の上に、光硬化型樹脂組成物からコーティング層を形成したシート(以下、「転写材」と称することがある)を用いる方法がある。この方法においては、まず、コーティング層を成形品の表面に貼り付けた後、基材を引き剥がしてハードコーティングを形成する。ハードコーティングを形成する他の方法としては、離型性を有さない基材の上に前記コーティング層を形成し、必要に応じて、前記基材の反対面に接着層などを形成したシート(以下、「表面保護シート」と称することがある)を用いる方法がある。前記方法においては、成形品の表面に表面保護シートの基材側を貼り付けて、ハードコーティングを形成する。
【0003】
前記転写材または表面保護シートには、必要に応じて、適宜な個所に図案層または蒸着層などの飾り効果を示す層を形成することもある。転写材の場合、基材と前記コーティング層との間に図案層または蒸着層が主として形成され、表面保護シートの場合、基材におけるコーティング層形成面とは反対側の面に図案層や蒸着層などが形成されることが一般的である。
【0004】
転写材または表面保護シートを用いてハードコーティングを形成するに際して、成形品に適用する前に予め光を照射して、コーティング層を光硬化させておく方式(先硬化方式)がある。かような先硬化方式においては、転写材または表面保護シートが成形品に適用されるときに成形品の曲面部などにおいてハードコーティングが引き剥がされたり、または、ハードコーティングにひび割れなどが発生したりするという問題がある。
【0005】
このため、成形品に適用するステップにおいては、コーティング層を未硬化の状態とし、成形品の表面にコーティング層を貼り付けた後に、これを硬化させる方式(後硬化方式)が用いられているが、この方式の場合、下記の如き問題点が発生する。
【0006】
通常、転写材または表面保護シートは、グラビア輪転印刷機などの機器を用いて製造する。ところが、後硬化方式においては、例えば、転写材の場合、コーティング層の上部に図案層、蒸着層または接着層を形成する場合、そして表面保護シートの場合には、製造されたシートを巻取する場合などにおいて、未硬化状態のコーティング層成分がガイドロールなどに転移したり、図案層または接着層の形成に用いられる成分がコーティング層の上に転移したりするという現象が誘発される。なお、図案層または接着層の形成のためのガイドロールにむしろ前記コーティング層の成分が再転移する現象(いわゆる、バックトラップ現象)も発生する。
【0007】
これにより、後硬化方式を用いる場合には、光硬化前のコーティング層の流動性または粘着性をなくすために、コーティング層の形成に際して特殊の装備または乾燥工程が別途に行われている。ところが、この場合には、コーティング層、図案層または接着層を一回の工程により形成することができず、前記別途の装備の設計などにも多大なコストがかかるため、転写材または表面保護シートの生産性が低下し、製造コストが大幅に嵩んでしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ハードコーティング形成法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、基材、および前記基材の上に形成され、エポキシ基および(メタ)アクリロイル基を有する樹脂およびチオール系硬化剤を含む樹脂組成物の熱硬化物を含有するコーティング層を有するシートを用いて、前記シートのコーティング層を成形品に転写または貼り付けるステップと、前記コーティング層に光を照射して、前記コーティング層を硬化させるステップと、を含むハードコーティング形成法に関する。
【0010】
本発明における用語「ハードコーティング」とは、樹脂、木工、金属または複合成形品などの様々な成形品の表面に形成されて、耐摩耗性、耐擦傷性、耐傷付き性および耐薬品性などの物性を与え得る、高い硬度を有する機能性層のことをいい、場合によっては、様々なディスプレイ装置に適用される機能性層を意味することもある。本発明における用語ハードコーティングは、場合によっては、保護層と同じ意味で用いられてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、樹脂成形品または木工製品などをはじめとする各種の成形品の表面に、硬度、耐摩擦性、耐擦傷性、耐薬品性、透明性および光沢度などの物性に優れており、しかも、高い屈折率を有する、ハードコーティングを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の例示によるシートの断面図である。
【図2】本発明の例示によるシートの断面図である。
【図3】本発明の例示によるシートの断面図である。
【図4】本発明の例示によるシートの断面図である。
【図5】本発明の例示によるシートの断面図である。
【図6】本発明の例示によるシートの断面図である。
【図7】本発明の例示によるシートの断面図である。
【図8】本発明の例示によるハードコーティング形成法を模式的に示す図である。
【図9】本発明の例示によるハードコーティング形成法を模式的に示す図である。
【図10】本発明の例示によるハードコーティング形成法を模式的に示す図である。
【図11】本発明の例示によるハードコーティング形成法を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の方法を詳述する。
【0014】
本発明の方法においては、エポキシ基および(メタ)アクリロイル基を有する樹脂およびチオール系硬化剤を含む組成物の熱硬化物を有効成分として含むコーティング層を有するシートを用いて、ハードコーティングまたは保護層を成形品に形成する。本発明の前記シートは、転写材または表面保護シートであってもよい。
【0015】
また、本発明の前記シートにおけるコーティング層は、上記の樹脂組成物の熱硬化物を有効成分として含む光硬化型にしてもよい。本発明における用語「樹脂組成物の熱硬化物」とは、前記樹脂に含まれるエポキシ基およびチオール系硬化剤のチオール基が開環付加反応などを経て付加反応物を形成している状態のことをいう。さらに、本明細書における用語「光硬化型」とは、電磁気波の照射に際して、樹脂に含まれている(メタ)アクリロイル基などの反応による硬化反応が進み得るコーティング層の状態のことをいう。前記電磁気波は、マイクロ波(microwaves)、赤外線(IR)、紫外線(UV)、X線およびγ線はもとより、α−粒子線(α−particle beam)、プロトンビーム(proton beam)、ニュートロンビーム(neutron beam)および電子線(electron beam)などの粒子ビームを総称する意味として用いられる。
【0016】
添付の図1は、本発明の方法に適用される前記シートの一例を示すものである。図1に示すように、本発明の方法に適用されるシート1は、基材11および前記基材の一方の面に形成されたコーティング層12を有していてもよい。必要に応じて、本発明のシート1は、前記コーティング層12の上、または基材11のコーティング層12の反対面に形成された層をさらに有していてもよい。
【0017】
本発明において、「Aの上に形成されたB」、「Aの上部に形成されたB」または「Aの表面に形成されたB」などの表現は、Aの表面にBが直接的に貼り付けられたり、粘着剤または接着剤などを介して貼り付けられている場合はもとより、Aの表面に他の層が形成され、さらにその他の層の表面にBが形成されている場合(例えば、A−C−B)も含む。
【0018】
本発明の前記シートにおいて使用可能な基材の種類には、特に制限はない。本発明においては、例えば、基材として、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ウレタン系樹脂またはポリエステル系樹脂などを主材とする樹脂フィルムと、アルミニウム箔または銅箔などの金属箔、グラシン紙(glassine paper)、コート紙(coated paper)またはセロファンなどのセルロース系シート、またはこれらのうちの2種以上の複合シートなどを用いることができる。本発明において、前記基材の厚さには、特に制限がなく、目的とする用途に応じて適切に選択することができる。
【0019】
本発明において、前記シートが転写材から形成される場合、前記基材の上には離型層が形成され、前記コーティング層が前記離型層の上に形成されていてもよい。この場合、離型層を形成する方式には特に制限がなく、例えば、エポキシ系、エポキシ−メラミン系、アミノアルキッド系、アクリル系、メラミン系、シリコン系、フッ素系、セルロース系、ヨウ素樹脂系、ポリオレフィン系、パラフィン系またはこれらのうちの2種以上の複合離型剤を用いた各種の印刷法またはコート法などを用いて形成することができる。
【0020】
本発明においては、必要に応じて、前記基材または離型層を無光状態で形成してもよい。例えば、基材または離型層にエンボス処理を施したり、離型層内に炭酸カルシウム、シリカ、酸化亜鉛、炭酸マグネシウム、ポリエチレンワックスまたはガラスビーズ(glass beads)などの微粉末を含ませる方式などを用いて無光状態を形成することができる。これにより、例えば、前記シートが転写材である場合には、基材の剥離後に、離型面に形成された微細な凹凸がコーティング層の表面に転写されて、無光表面を有する成形品が得られる。上記の如き無光状態は、基材または離型層に全面的に形成してもよく、部分的に形成してもよい。本発明において、前記離型層または無光層の厚さには特に制限がなく、必要に応じて、適切な厚さに設定すればよい。
【0021】
本発明において、前記シートの上に形成されるコーティング層を形成する樹脂組成物は、上述したように、エポキシ基および(メタ)アクリロイル基を有する樹脂を含む。本発明における用語「(メタ)アクリロイル基」、「(メタ)アクリレート」、または「(メタ)アクリル酸」は、アクリロイル基またはメタクリロイル基、アクリレートまたはメタクリレート、またはアクリル酸またはメタクリル酸を通称する用語である。
【0022】
本発明において、樹脂組成物に含まれる樹脂は、エポキシ当量が200g/eq〜20,000g/eq、好ましくは、2,000g/eq〜8,000g/eq、より好ましくは、4,000g/eq〜8,000g/eqであってもよい。本発明において使用する用語「エポキシ当量(epoxy equivalent weight、g/eq)」とは、エポキシ基の分子量を、前記樹脂に含まれるエポキシ基の数で除算した数値のことを言う。上記の如きエポキシ当量は、この分野における公知の様々な化学的な滴定法により分析することができる。本発明においては、樹脂のエポキシ当量を上述した範囲に納めることにより、熱硬化効率などの工程効率に優れており、熱硬化後に粘着性または接着性が適切に抑制され、耐溶剤性や耐薬品性などの物性に優れた樹脂層を提供することができる。
【0023】
本発明の樹脂組成物において、前記樹脂は、また、(メタ)アクリロイル当量が約100g/eq〜1,000g/eq、好ましくは、約200g/eq〜500g/eqであってもよい。本発明において使用する用語「(メタ)アクリロイル当量((meth)acryloyl equivalent weight、g/eq)」とは、(メタ)アクリロイル基の分子量を、前記樹脂に含まれる(メタ)アクリロイル基の数で除算した数値のことをいう。本発明においては、上記の如き(メタ)アクリロイル当量をこの分野における公知の各種の化学的滴定法により分析することができる。本発明においては、樹脂の(メタ)アクリロイル当量を上述した範囲に納めることにより、光硬化効率などの工程効率に優れており、しかも、硬化後に耐摩耗性、耐傷擦性および耐薬品性などの物性に優れたハードコーティングを提供することができる。
【0024】
本発明において、エポキシ基および(メタ)アクリロイル基を含む樹脂は、また、重量平均分子量が約5,000〜100,000、好ましくは、約10,000〜約80,000、さらに好ましくは、約20,000〜70,000であってもよい。本発明において使用する用語「重量平均分子量(weight average molecular weight、Mw)」とは、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC:Gel permeation chromatography)により測定したポリスチレン換算数値のことをいう。本発明においては、重量平均分子量を上述した範囲に納めて、コーティング性、熱硬化性および光硬化性などの工程効率に優れており、熱硬化後に粘着性または接着性が適切に抑制され、光硬化後には、耐摩耗性、耐擦傷性および耐薬品性などの物性に優れたハードコーティングを提供することができる。
【0025】
本発明において、上記の樹脂を製造する方法には特に制限がない。本発明においては、例えば、エポキシ基を有する単量体(例えば、グリシジル(メタ)アクリレート)を含む単量体混合物を重合させて、エポキシ基を有する重合物を製造し、前記重合物に(メタ)アクリロイル基を有する化合物、例えば、α、β−不飽和モノカルボキシル酸(例えば、(メタ)アクリル酸など)を付加反応させて、上述した樹脂を製造することができる。
【0026】
本発明の一例において、前記単量体混合物は、グリシジル(メタ)アクリレートを単独で含んでいてもよく、必要に応じては、グリシジル(メタ)アクリレートおよび他の共単量体を含んでいてもよい。
【0027】
上記の単量体混合物に含まれ得る共単量体の種類は、分子構造中にα、β−不飽和炭素-炭素の二重結合を含むものであれば、特に制限がない。本発明においては、例えば、炭素数1〜14のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート、スチレン、ビニルアセタートまたは(メタ)アクリロニトリルなどを用いることができるが、これに制限されるものではない。本発明において、単量体混合物がグリシジル(メタ)アクリレートおよび共単量体を含む場合、前記各単量体の割合には特に制限がなく、目的とする効果を考慮して適切に調節可能であり、例えば、前記単量体混合物は、グリシジル(メタ)アクリレート5重量部〜70重量部および共単量体5重量部〜70重量部を含んでいてもよい。
【0028】
本発明において、上記の単量体混合物を重合して重合物を製造する方法には特に制限がなく、例えば、溶液重合、光重合、バルク重合、サスペンション重合またはエマルジョン重合などこの分野における通常の重合方法を制限なしに適用することができる。
【0029】
本発明においては、上記のようにして形成した重合物を、(メタ)アクリロイル基を有する化合物、例えば、α、β−不飽和モノカルボキシル酸(例えば、(メタ)アクリル酸など)と付加反応させて、上述した如き樹脂を製造することができる。この場合、前記重合物および化合物を付加反応させる方法および条件などには特に制限がなく、この分野における公知の通常の方式を適切に採用すればよい。また、本発明において、付加反応に適用される、前記(メタ)アクリロイル基含有化合物の重合物に対する使用量には、やはり特に制限がなく、上述したエポキシ当量および(メタ)アクリロイル当量を満足する範囲内において適切に選択可能である。本発明においては、例えば、付加反応時に重合物に含まれるエポキシ基の残量が反応に預かるエポキシ基を有する単量体の含量を基準として、α、β−不飽和モノカルボキシル酸の反応当量を100%としたとき、約50%以下、好ましくは、約30%以下、より好ましくは、約5%以下になるように前記化合物を用いることができる。
【0030】
本発明における樹脂組成物は、チオール系硬化剤を含む。本発明における用語「チオール系硬化剤」は、上述した樹脂に含まれるエポキシ基または組成物に含まれている化合物の炭素−炭素の二重結合と反応して、樹脂組成物を1次的に熱硬化させ得るチオール基を分子中に1以上含む化合物を意味する。
【0031】
本発明において使用可能なチオール系硬化剤の種類は、分子構造中に1以上、好ましくは、2以上のチオール基を有するものであれば、特に制限がない。
【0032】
本発明においては、例えば、前記チオール系硬化剤として、エトキシ化トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)(ethoxylated trimethylolpropane tris(3−mercaptopropionate))、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート))(trimethylolpropane tris(3−mercaptopropionate))、グリコールジ(3−メルカプトプロピオネート)(glycol di(3−mercaptopropionate))、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)(pentaerythritol tetrakis(3−mercapto−propionate))、4−メルカプトメチル−3,6−ジチア−1,8−オクタンジチオール(4−mercaptomethyl−3,6−dithia−1,8−octanedithiol)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトアセタート)(pentaerythritol tetrakis(3−mercaptoacetate))、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトアセタート)(trimethylolpropane tris(3−mercaptoacetate))、4−t−ブチル−1,2−ベンゼンジチオール(4−t−butyl−1,2−benzenedithiol)、2−メルカプトエチルスルフィド(2−mercaptoethylsulfide)、4,4’−チオジベンゼンチオール(4,4’−thiodibenzenethiol)、ベンゼンジチオール(benzenedithiol)、グリコールジメルカプトアセタート(glycol dimercaptoacetate)、グリコールジメルカプトプロピオネートエチレンビス(3−メルカプトプロピオネート)(glycol dimercaptopropionate ethylene bis(3−mercaptopropionate))、ポリエチレングリコールジメルカプトアセタート(polyethylene glycol dimercaptoacetates)およびポリエチレングリコールジ(3−メルカプトプロピオネート)(polyethylene glycol di(3−mercaptopropionates))よりなる群から選ばれるいずれか1種以上のポリチオールを用いることができる。
【0033】
本発明においては、好ましくは、チオール系硬化剤として、下記の一般式1で表される化合物を用いることができる。
【0034】
【化1】
【0035】
式中、R1〜R4は、それぞれ独立して、水素、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニルまたはチオール含有基を示し、前記R1〜R4のうちの2以上は、チオール含有基を示す。
【0036】
本明細書における用語「アルキル」または「アルコキシ」は、炭素数1〜20、炭素数1〜16、炭素数1〜12、炭素数1〜8または炭素数1〜4の直鎖型または分岐鎖型、または環状または非環状アルキルまたはアルコキシを意味してもよく、上記のアルキルまたはアルコキシは、任意的に1以上の置換基によって置換されていてもよい。
【0037】
また、本明細書における用語「アルケニル」または「アルキニル」は、炭素数2〜20、炭素数2〜16、炭素数2〜12、炭素数2〜8または炭素数2〜4の直鎖型または分岐鎖型、または環状または非環状のアルケニルまたはアルキニルを意味してもよく、上記のアルケニルまたはアルキニルは、任意的に1以上の置換基によって置換されていてもよい。
【0038】
前記各用語の定義において、アルキル、アルコキシ、アルケニルまたはアルキニルなどに置換可能な置換基の例としては、化学分野において一般的に適用されるあらゆる置換基が挙げられ、具体的には、チオール、アミン、アミド、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシ、グリシジル、シアノ、ニトロ、ヘテロシクロアルキルまたはアリールなどが挙げられるが、これらに制限されるものではない。
【0039】
さらに、上記の一般式1の化合物において、チオール含有基の種類は、置換体構造の末端にチオール基(−SH)を有する、1価残基であれば、特に制限はない。本発明の一例において、前記チオール含有基は、例えば、下記の一般式2で表される1価残基であってもよい。
【0040】
[一般式2]
−A−B−C−D−SH
【0041】
式中、Aは、単一結合またはアルキレンであり、Bは、−NH(C=O)−、−OC(=O)−、−O−E−OC(=O)−、−SC(=O)−または−OCH2−であり、Cは、単一結合またはアルキレンであり、Dは、単一結合または下記の一般式3の2価残基であり、上記におけるEは、アルキレンを示す。
【0042】
【化2】
【0043】
式中、Pは、2価アリールを示し、nは、0〜10の整数を示す。
【0044】
前記A、CまたはDにおいて、用語「単一結合」は、A、CまたはDの位置に別途の原子が存在しない場合を意味する。例えば、Aが単一結合である場合には、チオール含有基が−B−C−D−SHで表され、Cが単一結合である場合、チオール含有基が−A−B−D−SHで表され、Dが単一結合である場合、チオール含有基が−A−B−C−SHで表される。
【0045】
また、本明細書における用語「アルキレン」は、炭素数1〜20、炭素数1〜16、炭素数1〜12、炭素数1〜8または炭素数1〜4の直鎖型または分岐鎖型、または環状または非環状のアルキレンを意味し、上記のアルキレンは、任意的に1以上の置換基によって置換されていてもよい。
【0046】
さらに、本明細書における用語「2価アリール」は、芳香族環化合物から誘導されるか、あるいは、前記化合物を骨格内に含む2価残基(bivalent moiety)を意味し、具体的には、6員〜22員、6員〜18員、6員〜14員または6員〜10員の芳香族環化合物から誘導されるか、あるいは、それを骨格内に含む、2価残基を意味し、上記のアリールは、任意的に1以上の置換基によって置換されていてもよい。
【0047】
さらに、上記の一般式3において、nは、好ましくは、0〜7であり、より好ましくは、0〜5であり、さらに好ましくは、0〜3であり、最も好ましくは、1〜3である。
【0048】
上記におけるアルキレンまたは2価アリールによって置換可能な置換基の例は、上記の一般式1の項目において述べた通りである。
【0049】
本発明の前記一般式1のチオール系硬化剤において、R1〜R4は、好ましくは、それぞれ独立して、水素、炭素数1〜4のアルキルまたは−A−B−C−D−SHであり、より好ましくは、それぞれ独立して、水素、メチル、エチルまたは−A−B−C−D−SHであってもよい。
【0050】
また、前記好適なチオール系硬化剤の定義において、R1〜R4のうちの2以上、好ましくは、3以上は、−A−B−C−D−SHであってもよく、上記におけるAは、好ましくは、単一結合または炭素数1〜4のアルキレンであり、Bは、−OC(=O)−または−O−E−OC(=O)−であり、Cは、単一結合または炭素数1〜4のアルキレンであり、Dは、単一結合または下記の一般式4の2価残基であり、前記におけるEは、炭素数1〜4のアルキレンであってもよい。
【0051】
【化3】
【0052】
前記一般式4において、nは、0〜10であり、好ましくは、0〜7であり、より好ましくは、0〜5であり、さらに好ましくは、0〜3であり、最も好ましくは、1〜3の整数である。
【0053】
上記の一般式で表されるチオール系硬化剤の例としては、アルコキシ化トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)またはアルキレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)などが挙げられ、より具体的には、エトキシ化トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート))またはエチレングリコールジ(3−メルカプトプロピオネート)などが挙げられるが、これらに制限されるものではない。
【0054】
本発明の樹脂組成物において、前記チオール系硬化剤の含量は、樹脂に含まれているエポキシ基の当量や、目的とする硬化度を考慮して適切に選択可能であり、特に制限はない。例えば、本発明の樹脂組成物は、前記チオール系硬化剤を、上述の樹脂100重量部に対して、0.1重量部〜10重量部、好ましくは、0.5重量部〜5重量部含んでいてもよい。本発明においては、チオール系硬化剤の樹脂に対する含量比を上記のように制御して、熱硬化の際に樹脂のエポキシ基との適切な反応を誘導し、熱硬化後に粘着性の発現を適切に抑制し、耐溶剤性やコーティング性などの物性を卓越に維持することができる。
【0055】
本発明において、コーティング層を形成する前記樹脂組成物は、光開始剤をさらに含んでいてもよい。本発明において使用可能な光開始剤の種類には特に制限がなく、この分野における公知の一般的な種類を制限なしに使用することができる。
【0056】
本発明においては、例えば、ベンゾイン系、ヒドロキシケトン系、アミノケトン系またはホスフィンオキシド系などの化合物を使用することができ、より具体的には、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2、2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2、2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2−(ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4、4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−メチルチオキサントン(thioxanthone)、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p−ジメチルアミノ安息香酸エステル、オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン]および2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキシドなどを使用することができる。本発明においては、これらのうちの1種または2種以上を使用することができるが、これに制限されるものではない。
【0057】
本発明の樹脂組成物において、光開始剤は、上述の樹脂100重量部に対して、1重量部〜15重量部、好ましくは、3重量部〜12重量部、より好ましくは、5重量部〜10重量部含んでいてもよい。光開始剤の含量を前記範囲に納めて、光硬化効率を卓越に維持し、硬化後における残存成分による物性の低下を防ぐことができる。
【0058】
本発明の樹脂組成物は、さらに多官能性アクリレートを含んでいてもよい。本発明の樹脂組成物が多官能性アクリレートを含むことにより、光硬化後にハードコーティングが緻密になる架橋構造を実現し、これにより、ハードコーティングの硬度、耐摩耗性、耐擦傷性および耐薬品性などの物性をなお一層改善することができる。
【0059】
本発明において使用可能な多官能性アクリレートの種類には特に制限がなく、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペート(neopentylglycol adipate)ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバル酸(hydroxyl puivalic acid)ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(dicyclopentanyl)ジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリロキシエチルイソシアヌレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ヘキサヒドロフタル酸ジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチルプロパンジ(メタ)アクリレート、アダマンタンジ(メタ)アクリレートまたは9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレンなどの2官能性アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、3官能型ウレタン(メタ)アクリレートまたはトリス(メタ)アクリロキシエチルイソシアヌレートなどの3官能型アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレートまたはペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどの4官能型アクリレートと、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどの5官能型アクリレート、およびジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートまたはウレタン(メタ)アクリレート(例えば、イソシアネート単量体およびトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートの反応物)などの6官能型アクリレートなどを使用することができるが、これらに制限されるものではない。
【0060】
本発明においては、特に、多官能性アクリレートとして、分子構造中に環状構造および/またはウレタン結合を含むアクリレートを使用することが好ましい。上記のアクリレートを使用することにより、硬化後に一層優れた硬度を有し、且つ、屈折率の高いハードコーティングを提供することができる。この場合、アクリレートに含まれる環構造は、炭素環式構造または複素環式構造、または単環式または多環式構造のいずれであってもよい。具体的に、前記多官能性アクリレートに含まれる環構造の例としては、シクロペンタン、シクロヘキサンまたはシクロヘプタンなどの、炭素数3〜12、好ましくは、炭素数3〜8のシクロアルキル環構造が挙げられ、前記環構造は、アクリレート内に1以上、好ましくは、1〜5、より好ましくは、1〜3個含まれていてもよく、なお、O、SまたはNなどのヘテロ原子が1以上含まれていてもよい。
【0061】
本発明において使用可能な上記の環構造を含む多官能性アクリレートの具体例としては、トリス(メタ)アクリロキシエチルイソシアヌレートなどのイソシアヌレート構造を有する単量体、イソシアヌレート変性ウレタンアクリレート(例えば、分子中に環構造を有するイソシアネート化合物(例えば、イソボロンジイソシアネート)およびアクリレート化合物(例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートまたはペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート)の反応物など)などが挙げられるが、これらに制限されるものではない。
【0062】
本発明の樹脂組成物において、多官能性アクリレートは、上述の樹脂100重量部に対して、30重量部以下、好ましくは、5重量部〜15重量部含んでいてもよい。本発明においては、多官能性アクリレートの含量を上述の範囲に納めることにより、ハードコーティングになお一層優れた硬度などの物性を有するコーティング層を提供することができる。
【0063】
本発明の樹脂組成物は、酸化防止剤をさらに含んでいてもよく、これにより、コーティング層に発生し得る黄変現象などを抑制することができる。
【0064】
本発明において使用可能な酸化防止剤の種類には特に制限がなく、この分野において公知の通常の酸化防止剤を使用することができる。本発明においては、例えば、フェノール系酸化防止剤(例えば、IRGANOX;RONOTEC;ETANOX)、リン系酸化防止剤(例えば、CYANOX;ULTRANOX)またはキレート系酸化防止剤(IGAFOS)などを使用することができる。
【0065】
本発明において、前記酸化防止剤の含量には特に制限がなく、コーティング層の物性を考慮して適切に選択することができる。本発明の樹脂組成物は、例えば、前記酸化防止剤を上述の樹脂100重量部に対して0.1重量部〜2重量部含んでいてもよい。
【0066】
本発明の樹脂組成物は、滑剤をさらに含んでいてもよい。滑剤は、樹脂組成物から形成されたコーティング層の巻取効率、耐ブロッキング性、耐摩耗性および耐傷付き性を改善することができる。本発明において使用可能な滑剤の種類には特に制限がなく、例えば、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス、合成ワックスまたはモンタンワックスなどのワックス類、シリコン系樹脂またはフッ素系樹脂などの合成樹脂類を使用することができる。本発明の樹脂組成物において、前記滑剤の含量には特に制限がなく、例えば、上述の樹脂100重量部に対して0.5重量部〜15重量部、好ましくは、1重量部〜6重量部含んでいてもよい。滑剤の含量を前記範囲に納めることにより、コーティング層に優れた耐ブロッキング性、耐摩擦性および耐傷付性を与えつつ、その透明性も卓越に維持することができる。
【0067】
本発明の樹脂組成物は、さらに耐光性の向上を目指して紫外線吸収剤を適切な含量で含むことができる。本発明において使用可能な紫外線吸収剤の例としては、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール、ヒドロキシフェニル−S−トリアジンまたは2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールなどが挙げられるが、これらに制限されるものではない。本発明において前記紫外線吸収剤が含まれる場合、その含量には特に制限がなく、目的とする物性を考慮して適切に選択することができる。
【0068】
本発明の樹脂組成物には、上述の成分に加えて、発明の目的を損なわない範囲において、この分野において公知の通常の成分、例えば、DMAP(dimethylaminopyridine)などの熱硬化用触媒、ナノシリカなどのフィラー成分、またはイソシアネート化合物などをさらに含んでいてもよい。
【0069】
本発明において、上記の樹脂組成物を用いて、基材の上にコーティング層を形成する方法には特に制限がない。本発明においては、例えば、上述の樹脂組成物を適切な条件下で処理することにより、前記組成物内の樹脂のエポキシ基または炭素−炭素の二重結合をチオール系硬化剤と反応させて付加反応物を形成し、前記付加反応物を含む組成物を基材の上に適切な方式によりコーティングして形成することができる。この場合、前記付加反応物を形成する条件には特に制限がなく、樹脂または硬化剤に含まれるエポキシ基またはチオール基の含量または種類を考慮して適切な反応条件を設定することができる。本発明においては、例えば、前記樹脂組成物を配合し、これを約100℃〜170℃の条件下で30秒〜2分間処理して前記付加反応物を形成することができる。
【0070】
本発明においては、上述のようにしてコーティング層を形成して、別途の乾燥工程などを行わなくても、粘着性のないコーティング層を形成することができる。これにより、本発明においては、コーティング層の形成のための特殊装備を使用することなく、且つ、別途の乾燥工程などを行うことなく、コーティング層の上に図案層、蒸着層または接着層などの他の層をさらに形成したり、シートを巻取したりすることが可能である。
【0071】
本発明のシートにおいて、上記のコーティング層の厚さには特に制限がなく、目的とする物性を考慮して適切な厚さに設定すればよい。
【0072】
添付の図2または図3に示すように、本発明のシート2、3は、前記コーティング層12の上部または基材11の上部に形成された接着層21、31をさらに含んでいてもよい。このような接着層21、31は、例えば、本発明のシート2が、転写材または表面保護シートとして用いられる場合、成形品への接着力を提供する用途に使用可能である。
【0073】
本発明において、上記の接着層21、31は、この分野において公知の各種の感熱性または感圧性樹脂を用いて形成することができる。本発明においては、例えば、ポリアクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系、塩素化ポリオレフィン系樹脂、塩素化エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂またはゴム系樹脂などのうち、前記接着層21、31が貼り付けられる被着体の材質を考慮して適切な成分から接着層21、31を形成することができる。
【0074】
本発明においては、また、図4または図5に示すように、前記シート4、5が前記コーティング層12または基材11の上に形成された図案層41、51および前記図案層41、51の上に形成された接着層21、31を備えていてもよい。本発明において、上記の図案層41、51を形成する方法には特に制限がない。本発明においては、例えば、ポリビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、セルロースエステル系樹脂またはアルキッド樹脂などの樹脂をバインダーとし、適切なカラーの顔料または染料を含む着色インクを用いて前記図案層を形成することができる。本発明において、上記の図案層の形成方法および厚さなどには特に制限がなく、この分野における公知の手段を適切に採用することができる。
【0075】
本発明においては、さらに、図6または図7に示すように、シート6、7が、前記図案層41、51の上に形成された蒸着層61、71をさらに備えていてもよい。図6または図7においては、コーティング層12または基材11の上に図案層41、51が形成され、その上部に蒸着層61、71が形成された場合を例示しているが、本発明においては、必要に応じて、前記図案層41、51がなく、蒸着層61、71が直接にコーティング層12または基材11の上に形成されてもよい。本発明において、前記蒸着層を形成する素材およびその形成方法には特に制限がなく、この分野において一般的に用いられる素材を用いた汎用的な方法、例えば、真空蒸着や、スパッタリング法などを用いて前記蒸着層を形成すればよい。
【0076】
本発明のシートにおいては、上述の各層の間の適切な個所に1以上のアンカー層が配設されてもよい。上記のアンカー層は、シートの各層間の密着性を高め、化学薬品などから成形品や、図案層を保護する役割を果たす。上記のアンカー層は、例えば、通常の二液型ウレタン樹脂、メラミン系またはエポキシ系などの熱硬化性樹脂または塩化ビニル共重合体樹脂などの熱可塑性樹脂を用い、通常の手段により形成することができる。
【0077】
本発明の方法においては、上記のシートを用いて、前記シートのコーティング層を成形品に転写または貼り付け、前記コーティング層を光硬化させて、ハードコーティングを形成する。
【0078】
本発明において、用語「コーティング層の転写」は、本発明のシートが転写材(例えば、図2、図4および図6のシート)から形成される場合に主として適用される方式であり、前記シートのコーティング層または前記コーティング層の上に接着層が形成される場合、その接着層を成形品に表面に貼り付け、基材を引き剥がす過程を経てコーティング層を形成する方式を意味する。なお、本発明における用語「コーティング層の貼り付け」は、本発明のシートが表面保護シート(例えば、図3、図5および図7のシート)から形成される場合に主として適用される方式であり、前記シートの基材または前記基材の上に接着層が形成される場合、その接着層を成形品に表面に貼り付ける過程を経てコーティング層を形成する方式を意味する。
【0079】
すなわち、本発明の方法は、用いられるシートの形態に応じて、様々なステップを含むことができる。
【0080】
例えば、本発明のシートが転写材から形成される場合、前記方法は、前記シートのコーティング層(または、前記コーティング層の上に形成された接着層)を成形品の表面に貼り付けるステップと、基材を引き剥がすステップと、光照射によりコーティング層を硬化させるステップと、を含むことができる。
【0081】
また、本発明において用いられるシートが転写材である場合、前記方法は、射出成形により成形品を製造するとともに、その表面にハードコーティングを形成するステップを含むことができる。この場合、前記方法は、例えば、前記シートのコーティング層(または、コーティング層の上に接着層が形成されている場合、その接着層)が成形品と接触するように前記シートを射出金型内に設けるステップと、前記射出金型内の空洞に溶融樹脂を射出するステップと、前記シートから基材を引き剥がすステップと、光照射によりコーティング層を硬化させるステップと、を含むことができる。
【0082】
本発明の方法においては、また、前記シートが表面保護シートから形成される場合、前記方法が、シートを基材側(または、前記基材の上に接着層が形成される場合、その接着層)が成形品の表面を向くように配置するステップと、前記シートを加熱して、基材を軟化させるステップと、前記シートを下方から真空吸引して、成形品の表面に貼り付けるステップと、光照射によりコーティング層を硬化させるステップと、を含むことができる。
【0083】
また、本発明の方法においては、前記シートが表面保護シートである場合にも、射出成形により成形品を製造するとともに、その表面にハードコーティングを形成するステップを含むことができる。この場合、前記方法は、例えば、前記シートの基材(または、基材の上に接着層が形成されている場合、その接着層)が成形品と接触するように射出金型内に設けるステップと、前記金型内の空洞に溶融樹脂を射出するステップと、光照射によりコーティング層を硬化させるステップと、を含むことができる。
【0084】
上記の各本発明の各方法における各ステップの順序には特に制限がなく、必要に応じて、一部のステップの順番を変えたり、あるいは、同時に行ったりすることができる。本発明の方法において、例えば、基材の剥離および光照射が行われる場合、まず、基材を引き剥がし、光を照射して光硬化を行ってもよく、前記基材として光透過性を有する基材を用いて、まず、コーティング層を硬化させ、基材を引き剥がす工程を行ってもよい。なお、本発明の方法において、前記加熱、軟化および真空吸引などの工程は、同時に行われてもよい。
【0085】
添付図面に基づき、本発明の転写方法を詳述する。
【0086】
添付の図8は、本発明の一例示による方法を模式的に示す図である。
【0087】
本発明の前記方法においては、まず、シートのコーティング層12側(図示はしないが、コーティング層12の上に接着層などが形成されている場合、その接着層側)を下部として、成形品81の上に配置する。その後、耐熱ゴム状弾性体82、例えば、シリコンラバーなどを備えたロール転写機またはアップダウン転写機などの転写機を用いて、温度約80℃〜260℃および圧力約50Kg/m2〜200Kg/m2の条件下で、前記耐熱ゴム状弾性体82を介してシートの基材11側に熱および/または圧力を加える。このような方式により、コーティング層12または接着層などが成形品51の表面に貼り付けられる。次いで、必要に応じて、冷却工程を適切に行った後に、基材11を引き剥がすと、基材11とコーティング層12との間の境界面において剥離が起こる。その後、光照射などにより、成形品81に転写されたコーティング層12を光硬化させる。上述したように、前記光硬化工程は、基材11の剥離前に行ってもよい。
【0088】
本発明において、前記光照射を行う条件には特に制限がなく、コーティング層の組成を考慮して適切な範囲内において選択すればよい。本発明においては、例えば、高圧水銀ランプ、無電極ランプまたはキセノンランプなどの手段を用いた紫外線照射方式により前記光照射を行うことができる。この場合には、前記光照射を波長が約300nm〜400nmの紫外線を用いて、照度80mW/cm2〜200mW/cm2および光量1,000mJ/cm2〜2,000mJ/cm2の条件下で1秒〜5分間行うことができる。
【0089】
また、上記において、成形品の材質には特に制限がない。本発明においては、例えば、前記成形品が樹脂成形品、木工製品、金属製品、これらのうちの2種以上の複合製品またはその他ハードコーティングが求められるあらゆる種類の成形品であってもよい。上記において、樹脂成形品の樹脂としては、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、またはAN樹脂などの汎用樹脂が挙げられる。さらに、ポリフェニレンオキシド・ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂または超高分子量ポリエチレン樹脂などの汎用エンジニアリング樹脂や、ポリスルホン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリフェニレンオキシド系樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリイミド樹脂、液晶ポリエステル樹脂、ポリアリール系耐熱樹脂などのスーパーエンジニアリング樹脂を使用することもできる。加えて、本発明においては、ガラス繊維や無機フィラーなどの補強材を添加した複合樹脂も使用することができる。
【0090】
添付の図9は、本発明の他の例示による方法を示すものであり、射出成形による成形同時転写法を用いて成形品の表面にコーティング層を転写する方法を示す模式図である。
【0091】
前記方法においては、まず、可動金型91と固定金型92を有する射出金型内に前記シートをコーティング層12側(図示はしないが、コーティング層の上に接着層などが形成されている場合、その接着層側)を内側とし、基材11が固定金型92に接するように設ける。次いで、金型を密閉した後、可動金型91に形成されたゲートから、溶融樹脂を金型内に射出93して、成形品を形成し、これと同時に、その成形品の表面にコーティング層を貼り付ける。次いで、必要に応じて、樹脂成形品を適正な条件下で冷却した後、成形用金型を開放して樹脂成形品を取り出す。そして、基材11の剥離前または剥離後に光照射によりコーティング層を硬化させて、ハードコーティングを形成することができる。
【0092】
前記方法において、成形品の形成に用いられる樹脂の種類および光照射の条件などには特に制限がなく、例えば、図8の方法に示す範疇内において適切に選択することができる。
【0093】
添付の図10は、本発明のシートが表面保護シートから形成されている場合、有用に適用可能なハードコーティング形成法の例を示す模式図である。前記方法においては、まず、基材11側(図示はしないが、基材11の上に接着層などが形成されている場合、その接着層側)を下部として、成形品102の表面にシートを配置する。次いで、ヒーター104などによってシートを加熱して基材11を軟化させ、下部側から真空吸引103して、シートを成形品102に貼り付ける。その後、光照射によりコーティング層を硬化させることにより、ハードコーティングを形成することができる。前記方法においては、シートの加熱および真空吸引工程を同時に行ってもよく、また、下部から真空吸引を行うと同時に上部から加圧して接着効率を高めてもよい。この場合、シートの加圧は、流体などにより直接的に行ってもよく、または、可塑性シートを介して行うことができる。
【0094】
前記方法において、成形品の形成に用いられる樹脂の種類および光照射の条件などには特に制限がなく、例えば、図8の方法に示す範疇内において適切に選択することができる。
【0095】
添付の図11は、シートが表面保護シートである場合、ハードコーティングを形成する方法の他の例示であり、射出成形による成形と同時に、ハードコーティングを形成する方法を示す模式図である。前記方法においては、まず、可動金型112と固定金型111を有する成形用金型内にコーティング層12が固定金型111に接するようにシートを設ける。その後、金型を密閉した後、可動金型112に設けられたゲートから溶融樹脂を射出113して、成形品を成形するとともに、その表面にシートの基材またはその基材の上に形成された接着層を貼り付ける。その後、必要に応じて、成形品の冷却工程などを経た後、金型を開放し、成形品を取り出した後に光照射などによりコーティング層を硬化させることにより、ハードコーティングを形成することができる。
【0096】
前記方法において、成形品の形成に用いられる樹脂の種類および光照射の条件などには特に制限がなく、例えば、図8の方法に示す範疇内において適切に選択することができる。
【0097】
本発明のハードコーティング形成法は、上述の方式に加えて、この分野における公知の様々な方式により、ハードコーティングを形成することができる。
【実施例】
【0098】
以下、本発明に係る実施例を通じて本発明をより一層詳述するが、本発明の範囲が下記に示す実施例によって制限されるものではない。
【0099】
(実施例1)
エポキシ基および(メタ)アクリロイル基を有する樹脂の製造
攪拌装置、冷却管、滴下ロットおよび窒素導入管を備えた反応器に、グリシジルメタアクリレート(GMA)11重量部、メチルメタクリレート(MMA)3重量部、スチレン(SM)6重量部、ブチルアセタート(BA)150重量部および2、2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.25重量部を投入した。その後、窒素気流下において約1時間かけて反応系の温度を約65℃まで昇温させた後、約9時間保温した。次いで、GMA43重量部、MMA12重量部、SM25重量部、ラウリルメルカプタン0.5重量部およびAIBN1重量部を含む混合物を滴下ロットを用いて、窒素気流下において反応装置に約2時間かけて滴下し、約3時間同温度に保持した。その後、AIBN0.25重量部を入れ、2時間保温した。次いで、温度を約105℃に調整し、窒素導入管を空気導入管に取り替えた後、アクリル酸(AA)37重量部、p−メトキシフェノール(p−methoxyphenol)0.05重量部およびジメチルアミノピリジン(DMAP)0.04重量部を投入して混合した後、空気バブリング下において105℃に保温した。同温度に15時間保持し、p−メトキシフェノール0.05重量部を入れて冷却した後、不揮発分が30%になるようにメチルエチルケトンを加えて、エポキシ基およびアクリロイル基を有する樹脂を製造した。製造された樹脂に対して化学的滴定法により測定したところ、エポキシ当量は、6,600g/eq、アクリロイル当量は、349g/eqであり、GPCにより測定した標準ポリスチレン換算重量平均分子量は、60,000であった。
【0100】
コーティング液の調製
製造された樹脂100重量部に対して、チオール系硬化剤として、エトキシ化トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)5重量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)20重量部、1,6−ヘキサンイソシアネート3量体5重量部、光開始剤8重量部、酸化防止剤1重量部、ナノシリカ20重量部およびメチルエチルケトン70重量部を混合してコーティング液を製造した。
【0101】
ハードコーティング形成用シートの製造
基材として、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの一方の面にグラビアコーティング法によりメラミン系離型剤を約1μmの厚さでコーティングして離型層を形成した。次いで、離型層の上に製造されたコーティング液をマイクログラビアコーティング法により約6μmの厚さで塗布した。その後、塗布されたコーティング液を150℃において30秒間加熱して、樹脂のエポキシ基およびチオール系硬化剤のチオール基を反応させて熱硬化物を形成した。その後、熱硬化物を含む前記コーティング層の上にアクリル系樹脂からアンカー層、アクリル酸−ウレタン系樹脂から図案層、アクリル系樹脂系蒸着プライマーから真空蒸着層およびアクリル系樹脂から接着層をマイクログラビア印刷法によりこの順に形成してハードコーティング形成用シートを製造した。
【0102】
ハードコーティングの形成
このようにして製造されたシートに、図9に示す方式を適用して、成形品の表面にハードコーティングを形成した。具体的に、シートを基材が固定金型92に当たるように配置し、溶融樹脂を射出した後、基材の剥離および紫外線照射工程を通じて、ハードコーティングを形成した。このとき、成形条件は、樹脂の温度が約280℃であり、金型温度が約60℃であり、樹脂圧力は約1,600Kg/cm2であった。なお、紫外線の照射条件は1,000w/cm、ランプの高さは約10cm、照射時間は約3秒に設定した。
【0103】
(実施例2)
チオール系硬化剤として、エトキシ化トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)の代わりに、エチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)を用いた以外は、実施例1の方法と同様にしてハードコーティング形成用組成物およびシートを製造し、これを用いて成形品の表面にハードコーティングを形成した。
【0104】
このようにして製造されたハードコーティング形成用組成物に対して、下記の方式により物性(鉛筆硬度)を評価し、その結果を表1に示す。
【0105】
1.鉛筆硬度
実施例1および2および比較例1において調製されたハードコーティング形成用組成物を、厚さ2mmのPMMA(Poly(methyl methacrylate))基板にバーコーティング法を用いて6μmの厚さでコーティングした。その後、160℃において40秒間熱硬化させ、さらに紫外線を照射して硬化させた(1,000mW)。その後、鉛筆硬度測定機(コアテック社製)および硬度測定用三菱鉛筆を用いて、1Kgの荷重がかかった状態において鉛筆硬度を測定した。
【0106】
【表1】
【0107】
前記表1の結果から明らかなように、本発明のハードコーティング形成用組成物を使用する場合、効果的に高い硬度のハードコーティングを形成することができる。
【符号の説明】
【0108】
1、2、3、4、5、6、7:シート
11:基材
12:コーティング層
21、31:接着層
41、51:図案層
61、71:蒸着層
81、101:成形品
82:ロール
91、112:可動金型
92、111:固定金型
93、113:溶融樹脂の射出方向
102:真空吸引方向
103:ヒーター
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材、および前記基材の上に形成され、エポキシ基および(メタ)アクリロイル基を有する樹脂およびチオール系硬化剤を含む樹脂組成物の熱硬化物を含有するコーティング層を有するシートを用いて、前記シートのコーティング層を成形品に転写または接着するステップと、
前記コーティング層に光を照射して、前記コーティング層を硬化させるステップと、
を含む、ハードコーティング形成法。
【請求項2】
シートは、基材の一方の面に形成された離型層をさらに備え、コーティング層が前記離型層の上に形成されている、請求項1に記載のハードコーティング形成法。
【請求項3】
樹脂は、エポキシ当量が200g/eq〜20,000g/eqであり、(メタ)アクリロイル当量が100g/eq〜1,000g/eqである、請求項1に記載のハードコーティング形成法。
【請求項4】
樹脂は、重量平均分子量が5,000〜100,000である、請求項1に記載のハードコーティング形成法。
【請求項5】
チオール系硬化剤が、下記の一般式1で表される、請求項1に記載のハードコーティング形成法:
【化1】
式中、R1〜R4は、それぞれ独立して、水素、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニルまたはチオール含有基を示し、前記R1〜R4のうちの2以上はチオール含有基を示す。
【請求項6】
チオール含有基は、下記の一般式2で表される、ハードコーティング形成法:
[一般式2]
−A−B−C−D−SH
式中、Aは、単一結合またはアルキレンであり、Bは、−NH(C=O)−、−OC(=O)−、−O−E−OC(=O)−、−SC(=O)−または−OCH2−であり、Cは、単一結合またはアルキレンであり、Dは、単一結合または下記の一般式3の2価残基であり、上記におけるEは、アルキレンを示す:
【化2】
式中、Pは、2価アリールを示し、nは、0〜10の整数を示す。
【請求項7】
R1〜R4は、それぞれ独立して、水素、炭素数1〜4のアルキルまたは−A−B−C−D−SHであり、R1〜R4のうちの2以上は、−A−B−C−D−SHであり、上記におけるAは、単一結合または炭素数1〜4のアルキレンであり、Bは、−OC(=O)−または−O−E−OC(=O)−であり、Cは、単一結合または炭素数1〜4のアルキレンであり、Dは、単一結合または下記の一般式4の2価残基であり、上記におけるEは、炭素数1〜4のアルキレンである、請求項1に記載のハードコーティング形成法:
【化3】
式中、nは、0〜10の整数を示す。
【請求項8】
樹脂組成物は、チオール系硬化剤を、樹脂100重量部に対して、0.1重量部〜10重量部含む、請求項1に記載のハードコーティング形成法。
【請求項9】
樹脂組成物が、光開始剤、多官能性アクリレート、酸化防止剤、滑剤、紫外線吸収剤、熱硬化用触媒、フィラーまたはイソシアネート化合物よりなる群から選ばれた1種以上をさらに含む、請求項1に記載のハードコーティング形成法。
【請求項10】
シートは、コーティング層、または、基材における前記コーティング層の反対面側に形成された接着層をさらに備える、請求項1に記載のハードコーティング形成法。
【請求項11】
シートは、コーティング層、または、基材における前記コーティング層の反対面側に形成された図案層をさらに備える、請求項1に記載のハードコーティング形成法。
【請求項12】
シートは、コーティング層、または、基材における前記コーティング層の反対面側に形成された蒸着層をさらに備える、請求項1に記載のハードコーティング形成法。
【請求項13】
シートのコーティング層を成形品の表面に貼り付けるステップと、基材を引き剥がすステップと、光照射によりコーティング層を硬化させるステップと、を含む、請求項1に記載のハードコーティング形成法。
【請求項14】
シートのコーティング層が成形品と接触できるように前記シートを射出金型内に設けるステップと、前記射出金型内の空洞に溶融樹脂を射出するステップと、前記シートから基材を引き剥がすステップと、光照射によりコーティング層を硬化させるステップと、を含む、請求項1に記載のハードコーティング形成法。
【請求項15】
シートを基材側が成形品の表面を向くように配置するステップと、前記シートを加熱して、基材を軟化させるステップと、前記シートを下方から真空吸引して、成形品の表面に貼り付けるステップと、光照射によりコーティング層を硬化させるステップと、を含む、請求項1に記載のハードコーティング形成法。
【請求項16】
シートの基材が成形品と接触できるように前記シートを射出金型内に設けるステップと、前記金型内の空洞に溶融樹脂を射出するステップと、光照射によりコーティング層を硬化させるステップと、を含む、請求項1に記載のハードコーティング形成法。
【請求項17】
成形品は、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、AN樹脂、ポリフェニレンオキシド・ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、超高分子量ポリエチレン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリフェニレンオキシド系樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリイミド樹脂、液晶ポリエステル樹脂またはポリアリール系耐熱樹脂を含む組成物から形成された樹脂成形品である、請求項1に記載のハードコーティング形成法。
【請求項18】
光照射は、波長が300nm〜400nmである紫外線を用いて、照度80mW/cm2〜200mW/cm2および光量1,000mJ/cm2〜2,000mJ/cm2の条件下で1秒〜5分間行う、請求項1に記載のハードコーティング形成法。
【請求項1】
基材、および前記基材の上に形成され、エポキシ基および(メタ)アクリロイル基を有する樹脂およびチオール系硬化剤を含む樹脂組成物の熱硬化物を含有するコーティング層を有するシートを用いて、前記シートのコーティング層を成形品に転写または接着するステップと、
前記コーティング層に光を照射して、前記コーティング層を硬化させるステップと、
を含む、ハードコーティング形成法。
【請求項2】
シートは、基材の一方の面に形成された離型層をさらに備え、コーティング層が前記離型層の上に形成されている、請求項1に記載のハードコーティング形成法。
【請求項3】
樹脂は、エポキシ当量が200g/eq〜20,000g/eqであり、(メタ)アクリロイル当量が100g/eq〜1,000g/eqである、請求項1に記載のハードコーティング形成法。
【請求項4】
樹脂は、重量平均分子量が5,000〜100,000である、請求項1に記載のハードコーティング形成法。
【請求項5】
チオール系硬化剤が、下記の一般式1で表される、請求項1に記載のハードコーティング形成法:
【化1】
式中、R1〜R4は、それぞれ独立して、水素、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニルまたはチオール含有基を示し、前記R1〜R4のうちの2以上はチオール含有基を示す。
【請求項6】
チオール含有基は、下記の一般式2で表される、ハードコーティング形成法:
[一般式2]
−A−B−C−D−SH
式中、Aは、単一結合またはアルキレンであり、Bは、−NH(C=O)−、−OC(=O)−、−O−E−OC(=O)−、−SC(=O)−または−OCH2−であり、Cは、単一結合またはアルキレンであり、Dは、単一結合または下記の一般式3の2価残基であり、上記におけるEは、アルキレンを示す:
【化2】
式中、Pは、2価アリールを示し、nは、0〜10の整数を示す。
【請求項7】
R1〜R4は、それぞれ独立して、水素、炭素数1〜4のアルキルまたは−A−B−C−D−SHであり、R1〜R4のうちの2以上は、−A−B−C−D−SHであり、上記におけるAは、単一結合または炭素数1〜4のアルキレンであり、Bは、−OC(=O)−または−O−E−OC(=O)−であり、Cは、単一結合または炭素数1〜4のアルキレンであり、Dは、単一結合または下記の一般式4の2価残基であり、上記におけるEは、炭素数1〜4のアルキレンである、請求項1に記載のハードコーティング形成法:
【化3】
式中、nは、0〜10の整数を示す。
【請求項8】
樹脂組成物は、チオール系硬化剤を、樹脂100重量部に対して、0.1重量部〜10重量部含む、請求項1に記載のハードコーティング形成法。
【請求項9】
樹脂組成物が、光開始剤、多官能性アクリレート、酸化防止剤、滑剤、紫外線吸収剤、熱硬化用触媒、フィラーまたはイソシアネート化合物よりなる群から選ばれた1種以上をさらに含む、請求項1に記載のハードコーティング形成法。
【請求項10】
シートは、コーティング層、または、基材における前記コーティング層の反対面側に形成された接着層をさらに備える、請求項1に記載のハードコーティング形成法。
【請求項11】
シートは、コーティング層、または、基材における前記コーティング層の反対面側に形成された図案層をさらに備える、請求項1に記載のハードコーティング形成法。
【請求項12】
シートは、コーティング層、または、基材における前記コーティング層の反対面側に形成された蒸着層をさらに備える、請求項1に記載のハードコーティング形成法。
【請求項13】
シートのコーティング層を成形品の表面に貼り付けるステップと、基材を引き剥がすステップと、光照射によりコーティング層を硬化させるステップと、を含む、請求項1に記載のハードコーティング形成法。
【請求項14】
シートのコーティング層が成形品と接触できるように前記シートを射出金型内に設けるステップと、前記射出金型内の空洞に溶融樹脂を射出するステップと、前記シートから基材を引き剥がすステップと、光照射によりコーティング層を硬化させるステップと、を含む、請求項1に記載のハードコーティング形成法。
【請求項15】
シートを基材側が成形品の表面を向くように配置するステップと、前記シートを加熱して、基材を軟化させるステップと、前記シートを下方から真空吸引して、成形品の表面に貼り付けるステップと、光照射によりコーティング層を硬化させるステップと、を含む、請求項1に記載のハードコーティング形成法。
【請求項16】
シートの基材が成形品と接触できるように前記シートを射出金型内に設けるステップと、前記金型内の空洞に溶融樹脂を射出するステップと、光照射によりコーティング層を硬化させるステップと、を含む、請求項1に記載のハードコーティング形成法。
【請求項17】
成形品は、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、AN樹脂、ポリフェニレンオキシド・ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、超高分子量ポリエチレン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリフェニレンオキシド系樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリイミド樹脂、液晶ポリエステル樹脂またはポリアリール系耐熱樹脂を含む組成物から形成された樹脂成形品である、請求項1に記載のハードコーティング形成法。
【請求項18】
光照射は、波長が300nm〜400nmである紫外線を用いて、照度80mW/cm2〜200mW/cm2および光量1,000mJ/cm2〜2,000mJ/cm2の条件下で1秒〜5分間行う、請求項1に記載のハードコーティング形成法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2013−518713(P2013−518713A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−551926(P2012−551926)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【国際出願番号】PCT/KR2011/000861
【国際公開番号】WO2011/099766
【国際公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(510244710)エルジー・ハウシス・リミテッド (17)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【国際出願番号】PCT/KR2011/000861
【国際公開番号】WO2011/099766
【国際公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(510244710)エルジー・ハウシス・リミテッド (17)
【Fターム(参考)】
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