説明

ハードコートフィルムおよびその製造方法

【課題】本発明は、高いハードコート性を備え、且つ高い永久帯電防止性を示し、透明性に優れ、上層との密着性に優れたハードコートフィルムおよびその製造方法を提供することを目的とするものである。
【解決手段】基材(1)上に、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能性モノマーを主成分とする電離放射線硬化型樹脂(2)90〜10重量部と導電性材料(3)10〜90重量部を含むハードコート層(4)を有し、該ハードコート層(4)中の導電性材料(3)が、上方に偏在していること、前記基材(1)がトリアセチルセルロースフィルムであることを特徴とするハードコートフィルムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高いハードコート性を備え、且つ高い永久帯電防止性を示し、透明性に優れたハードコートフィルムおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、各種ディスプレイに用いられるプラスチックフィルムに硬度を付帯させるためにアクリル系UV樹脂等をコーティングし、ハードコート性を付帯させる方法が用いられてきた。しかし、これらの方法によってプラスチックフィルムの硬度は改善されるものの、プラスチックフィルムおよびアクリル系UV樹脂が帯電しやすく、作業時に塵やほこりが付着するという問題があり、帯電性の改善が強く要求されている。そこでこれらの問題点を改良するために各種導電性材料を添加することが行われているが(例えば、特許文献1参照。)、導電性材料がハードコート内で均一に分散すると導電性を発現し難いなどの課題があった。また、ハードコート層内の導電性微粒子を透明基材フィルム側に偏在させる方法として導電性材料を含む透明樹脂溶液を塗布し、透明基材フィルム側に導電性材料を沈降させたのち、透明樹脂を硬化してハードコート層を形成する提案もされているが(例えば、特許文献2参照。)、導電性微粒子がハードコート表面側にないため導電性が劣ってしまう。
【0003】
以下に先行技術文献を示す。
【特許文献1】特開2004−107529号公報
【特許文献2】特開2004−34399号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前記問題点を解決するためになされたものであり、その課題とするところは、高いハードコート性を備え、且つ高い永久帯電防止性を示し、透明性に優れ、上層との密着性に優れたハードコートフィルムおよびその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1に係る発明は、基材(1)上に、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能性モノマーを主成分とする電離放射線硬化型樹脂(2)90〜10重量部と導電性材料(3)10〜90重量部を含むハードコート層(4)を有し、該ハードコート層(4)中の導電性材料(3)が、上方に偏在していることを特徴とするハードコートフィルムである。
【0006】
本発明の請求項2に係る発明は、請求項1記載のハードコートフィルムにおいて、前記ハードコート層(4)の全体の厚み(L1)に対する前記ハードコート層(4)の表面部分の表面層(4a)の厚み(L2)の比(L2/L1)が0.7以下である表面層(4a)に、前記導電性材料(3)が50%以上含まれていることを特徴とするハードコートフィルムである。
【0007】
本発明の請求項3に係る発明は、請求項1又は2記載のハードコートフィルムにおいて、前記基材(1)がトリアセチルセルロースフィルムであることを特徴とするハードコートフィルムである。
【0008】
本発明の請求項4に係る発明は、請求項1乃至3のいずれか1項記載のハードコートフィルムにおいて、前記導電性材料(3)がATO(酸化アンチモン−酸化スズ複合酸化物)、ITO(酸化インジウム−酸化スズ複合酸化物)、Sb25、TiO2、ZnO2、Ce23の粒子のうち少なくとも1種類以上を含有することを特徴とするハードコートフィルムである。
【0009】
本発明の請求項5に係る発明は、請求項1乃至4のいずれか1項記載のハードコートフィルムにおいて、前記ハードコート層(4)上に一般式(X)および(Y)で示される有機珪素化合物または加水分解物、またはそれらの重合体を含む低屈折率層(5)を有することを特徴とするハードコートフィルムである。Si(OR)4 (X)(式中のRはアルキル基を表わす)、R’mSi(OR)4-m (Y)(式中のR’はフッ素含有置換基、Rはアルキル基、mは1〜4の整数を表わす)。
【0010】
本発明の請求項6に係る発明は、基材(1)上に、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能性モノマーを主成分とする電離放射線硬化型樹脂(2)90〜10重量部と導電性材料(3)10〜90重量部を含み、且つ前記基材(1)を溶解又は膨潤させる溶剤を含む組成物を塗工することによりハードコート層(4)を形成する工程を有し、該ハードコート層(4)中の導電性材料(3)が、上方に偏在していることを特徴とするハードコートフィルムの製造方法である。
【0011】
本発明の請求項7に係る発明は、請求項6記載のハードコートフィルムの製造方法において、前記ハードコート層(4)の全体の厚み(L1)に対する前記ハードコート層(4)の表面部分の表面層(4a)の厚み(L2)の比(L2/L1)が0.7以下である表面層(4a)に、前記導電性材料(3)が50%以上含まれていることを特徴とするハードコートフィルムの製造方法である。
【0012】
本発明の請求項8に係る発明は、請求項6又は7記載のハードコートフィルムの製造方法において、前記基材(1)がトリアセチルセルロースフィルムであることを特徴とするハードコートフィルムの製造方法である。
【0013】
本発明の請求項9に係る発明は、請求項6乃至8のいずれか1項記載のハードコートフィルムの製造方法において、前記溶剤が酢酸メチル及びメチルエチルケトンを含むことを特徴とするハードコートフィルムの製造方法である。
【0014】
本発明の請求項10に係る発明は、請求項6乃至9のいずれか1項記載のハードコートフィルムの製造方法において、前記ハードコート層(4)上に一般式(X)および(Y)で示される有機珪素化合物または加水分解物、またはそれらの重合体を含む低屈折率層(5)を有することを特徴とするハードコートフィルムの製造方法である。Si(OR)4
(X)(式中のRはアルキル基を表わす)、R’mSi(OR)4-m (Y)(式中のR’はフッ素含有置換基、Rはアルキル基、mは1〜4の整数を表わす)。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るハードコートフィルムは、基材上に、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能性モノマーを主成分とする電離放射線硬化型樹脂90〜10重量部と導電性材料10〜90重量部を含むハードコート層を有し、該ハードコート層中の導電性材料が、上方に偏在していることにより、高いハードコート性を備え、且つ高い永久帯電防止性を示し、透明性に優れ、上層との密着性に優れている。 また、導電性材料の添加によりハードコート層の表面に微細な凹凸が生じるため、ハードコート層上に低屈折率層を設けた場合、低屈折率層の耐擦傷性を向上させることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に本発明の実施の形態を図1〜図2に基づいて詳細に説明する。
【0017】
図1は本発明に係るハードコートフィルムの層構成を示す側断面図であり、図2は本発明に係るハードコートフィルムの断面の透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。
【0018】
本発明に係るハードコートフィルムは、基材(1)上に、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能性モノマーを主成分とする電離放射線硬化型樹脂(2)90〜10重量部と導電性材料(3)10〜90重量部を含むハードコート層(4)を有し、該ハードコート層(4)中の導電性材料(3)が、上方に偏在していることを特徴とするハードコートフィルムである。
【0019】
また、前記ハードコート層(4)の全体の厚み(L1)に対する前記ハードコート層(4)の表面部分の表面層(4a)の厚み(L2)の比(L2/L1)が0.7以下である表面層(4a)に、前記導電性材料(3)が50%以上含まれていることが好ましい。
【0020】
また、前記基材(1)がトリアセチルセルロースフィルムであること、さらに、前記導電性材料(3)がATO(酸化アンチモン−酸化スズ複合酸化物)、ITO(酸化インジウム−酸化スズ複合酸化物)、Sb25、TiO2、ZnO2、Ce23の粒子のうち少なくとも1種類以上を含有することが好ましい。
【0021】
次に、前記ハードコート層(4)上に一般式(X)および(Y)で示される有機珪素化合物または加水分解物、またはそれらの重合体を含む低屈折率層(5)を有することを特徴とするハードコートフィルムである。Si(OR)4(X)(式中のRはアルキル基を表わす)、R’mSi(OR)4-m (Y)(式中のR’はフッ素含有置換基、Rはアルキル基、mは1〜4の整数を表わす)。
【0022】
次に、ハードコートフィルムを構成する材料について詳細に説明する。先ず、基材(1)に用いられるトリアセチルセルロースフィルムは、複屈折が少なく、透明性、屈折率、分散などの光学特性、さらには耐衝撃性、耐熱性、耐久性などの諸物性の点に優れており、更に市販の溶剤によって容易に溶解または膨潤するため、本発明においては他のフィルムよりも好ましい。トリアセチルセルロースフィルムには、各種安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、着色剤、酸化防止剤、難燃剤等が添加されていても良い。また、トリアセチルセルロースフィルムの厚みは特に限定されるものではないが、20〜200μmが好ましい。
【0023】
次に、電離放射線硬化型樹脂(2)は、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を含有する多官能性モノマーを主成分とする。該多官能性モノマーとしては、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、3−メチルペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールビスβ−(メタ)アクリロイルオキシプロピネート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリ(2−ヒドロキシエチル)イソシアネートジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、2,3−ビス(メタ)アクリロイルオキシエチルオキシメチル[2.2.1]ヘプタン、ポリ1,2−ブタジエンジ(メタ)アクリレート、1,2−ビス(メタ)ア
クリロイルオキシメチルヘキサン、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラデカンエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、10−デカンジオール(メタ)アクリレート、3,8−ビス(メタ)アクリロイルオキシメチルトリシクロ[5.2.10]デカン、水素添加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、1、 4−ビス((メタ)アクリロイルオキシメチル)シクロヘキサン、ヒドロキシピバリンサンエステルネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、エポキシ変成ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。該多官能モノマーは、単独で使用しても良いし、2種類以上を併用しても良い。また、必要で有れば単官能モノマーと併用して共重合させることもできる。
【0024】
該電離放射線硬化型樹脂(2)の配合割合は、導電性材料(3)10〜90重量部に対し、90〜10重量部程度が好ましく、特に導電性材料(3)20〜50重量部に対し、80〜50重量部がより好ましい。また、光重合開始剤としては、例えば、2,2−エトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ジベンゾイル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、p−クロロベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、ミヒラーケトン、アセトフェノン、2−クロロチオキサントン等が挙げられる。これらを単独、もしくは2種類以上合わせて用いても良い。さらに、光増感剤としては、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、2−ジメチルアミノエタノール等の3級アミン、トリフェニルホスフィン等のアルキルフォスフィン系、β―チオジグリコール等のチオエーテル系をあげることが出来、これらを1種類あるいは2種類以上を混合して使用できる。尚、性能改良のため、泡消剤、レベリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、重合禁止剤等を含有することができる。
【0025】
次に、導電性材料(3)の材質としては、ATO(酸化アンチモン−酸化スズ複合酸化物)、ITO(酸化インジウム−酸化スズ複合酸化物)、Sb25、TiO2、ZnO2、Ce23等の金属酸化物粒子が挙げられる。その中でも白色で透明性の優れたSb25の使用が好ましい。また、上記の導電性材料(3)の添加によりハードコート層(4)の表面に微細な凹凸が生じ、表面積が増大する。そのため、ハードコート層(4)上に低屈折率層(5)を設けた場合、該ハードコート層(4)と該低屈折率層(5)間で物理的吸着力が増大し、密着性が向上する。その結果、該低屈折率層(5)の耐擦傷性を向上させることが可能である。これらの金属酸化物微粒子の粒径は0.1μm以下であることが好ましく、0.1μmより大きくなるとヘイズが高くなり、該ハードコート層(4)の透過率が低下する。
【0026】
該導電性材料(3)の配合割合は、電離放射線硬化型樹脂(2)90〜10重量部に対し10〜90重量部程度が好ましく、特に電離放射線硬化型樹脂(2)80〜50重量部に対し20〜50重量部がより好ましい。
【0027】
次に、該ハードコート層(4)中の導電性材料(3)の偏析程度はTEM等による断面観察により行うことができる。偏析の程度は、ハードコート層(4)の全体の厚み(L1)に対するハードコート層(4)の表面部分の表面層(4a)の厚み(L2)の比(L2/L1)が0.7以下である表面層(4a)に、前記導電性材料(3)が50%以上含まれていることが好ましく、特に70%以上がより好ましい。尚、前記の比(L2/L1)は、さらに好ましくは0.5以下である。
【0028】
次に、該ハードコート層(4)を硬化させる方法としては、例えば、紫外線照射、加熱等を用いることができる。該紫外線照射の場合、高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、フュージョンランプ等を使用することができる。紫外線照射量は、通常100〜800mJ/cm2程度である。膜厚は3μm以上あれば十分な強度となるが、塗工
精度、取扱いから5〜7μmの範囲が好ましい。
【0029】
また、ハードコート層(4)は、ウェットコーティング法(ディップコーティング法、スピンコーティング法、フローコーティング法、スプレーコーティング法、ロールコーティング法、グラビアロールコーティング法、エアドクターコーティング法、ブレードコーティング法、ワイヤードクターコーティング法、ナイフコーティング法、リバースコーティング法、トランスファロールコーティング法、マイクログラビアコーティング法、キスコーティング法、キャストコーティング法、スロットオリフィスコーティング法、カレンダーコーティング法、ダイコーティング法等)により、基材(1)であるトリアセチルセルロースフィルムの少なくとも片面に塗工される。
【0030】
次に、溶剤としては、トリアセチルセルロースを溶解または膨潤させる溶剤として、ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、プロピレンオキシド、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、1,3,5−トリオキサン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトール等のエーテル類、またアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、およびメチルシクロヘキサノン等のケトン類、また蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸n−ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン醸エチル、酢酸n−ペンチル、およびγ−プチロラクトン等のエステル類、さらにメチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のセロソルブ類が挙げられる。これらは1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。溶剤によって塗工中に溶解したトリアセチルセルロースが基材(1)であるトリアセチルセルロースフィルム上に存在することにより、導電性材料(3)をハードコート層(4)の上方に偏在させることができる。また、これらの溶剤はハードコート剤に対し、10〜80重量部が好ましく、特に50〜70重量部がより好ましい。
【0031】
前記低屈折率層(5)を形成する低屈折率コーティング剤で用いられる一般式(X)で表される有機ケイ素化合物としては、Si(OCH34、Si(OC254、Si(OC374、Si(OCH(CH32))4、Si(OC494等が例示でき、それらを単独に、あるいは2種類以上併せて用いてもよい。
【0032】
前記低屈折率層(5)を形成する低屈折率コーティング剤で用いられる一般式(Y)で表される有機ケイ素化合物としては、CF3(CH22Si(OCH33、CF3CF2(CH22Si(OCH33、CF3(CF22(CH22Si(OCH33、CF3(CF23(CH22Si(OCH33、CF3(CF24(CH22Si(OCH33、CF3(CF25(CH22Si(OCH33、CF3(CF26(CH22Si(OCH33、CF3(CF27(CH22Si(OCH33、CF3(CF28(CH22Si(OCH33、CF3(CF29(CH22Si(OCH33、CF3(CH22Si(OC253、CF3CF2(CH22Si(OC253、CF3(CF22(CH22Si(OC253、CF3(CF23(CH22Si(OC253、CF3(CF24(CH22Si(OC253、CF3(CF25(CH22Si(OC253、CF3(CF26(CH22Si(OC253、CF3(CF27(CH22Si(OC253、CF3(CF28(CH22Si(OC253、CF3(CF29(CH22Si(OC253等が例示でき、それらを単独に、あるいは2種類以上併せて用いてもよい。
【0033】
上記一般式(X)、又は一般式(Y)で表される有機ケイ素化合物を用いて重合体を、あるいは、一般式(X)で表される有機ケイ素化合物、若しくはその重合体と、一般式(Y)で表される有機ケイ素化合物、若しくはその重合体を用いて共重合体を作製する方法は限定されないが、加水分解によって作製するにあたっての触媒としては、塩酸、蓚酸、
硝酸、酢酸、フッ酸、ギ酸、リン酸、アンモニア、アルミニウムアセトナート、ジブチルスズラウレート、オクチル酸スズ化合物、メタンスルホン酸、トリクロロメタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、トリフロロ酢酸等が例示でき、それらを単独に、あるいは2種類以上併せて用いてもよい。
【0034】
前記低屈折率コーティング剤は、通常、揮発性溶媒に希釈して塗布される。希釈溶媒として用いられるものは、組成物の安定性、ハードコート層(4)に対する濡れ性、揮発性などを考慮して、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、2−メトキシエタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチル等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類、エチレングリコール、プロピレングリコール、へキシレングリコール等のグリコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチルカルビトール、ブチルカルビトール等のグリコールエーテル類、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。また、希釈溶媒は単独に、あるいは2種類以上併せて用いてもよい。
【0035】
前記低屈折率コーティング剤は、ハードコート層(4)上に塗工され、加熱乾燥により塗膜中の溶媒を揮発させ、その後、加熱、加湿、紫外線照射、電子線照射等により塗膜を硬化させる。該低屈折率層(5)の屈折率は、基材(1)であるトリアセチルセルロースフィルム(1)、ハードコート層(4)のいずれの屈折率よりも低い値であり、また、この低屈折率層(5)の厚さdは、低屈折率層の屈折率をnとすると、nd=λ/4であることが好ましい。
【実施例】
【0036】
以下、本発明の実施例について詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。ハードコートフィルムの性能は、下記の方法に従って評価した。
(a)光学特性
(a)−1 ヘイズ値・・・ハードコートフィルムを写像性測定器[日本電色工業(株)製、NDH−2000 ]を使用して測定した。
(b)表面抵抗値
(b)−1 表面抵抗:JIS K6911に準拠して行った。
(c) 機械強度
(c)−1 耐擦傷性:基材表面をスチールウール〔ボンスター#0000:日本スチールウール(株)製〕により250g/cm2で10回擦り、傷の有無を目視判定した(スチールウール試験)。判定基準を次に示す。○:傷を確認することが出来ない △:数本傷を確認できる ×:傷が多数確認できる
(c)−2 鉛筆硬度…JIS K5400に準拠し、試験機法により500g加重で
評価した。
(d)ハードコート層内部の観察
(d)−1 試料をエポキシ樹脂に包理固定(90℃、90分間)後、ウルトラミクロ
トームにて薄片(設定厚み:80nm)を切削し、透過型電子顕微鏡(日立H−800
)にてハードコート層の導電性微粒子の分散状態を観察した。
【0037】
<実施例1>
厚み80μmのトリアセチルセルロースフィルム(全光線透過率:93%、ヘイズ値:0.2%)上に、電離放射線硬化型樹脂:60重量部、導電性金属酸化物(酸化チタン微粒子):40重量部、イルガキュアー184:3.5重量部、イソプロピルアルコール:50重量部、酢酸メチル:50重量部からなる塗布液を、バーコーティング法により乾燥後の膜厚が3μm程度になるように塗布、乾燥させ、高圧水銀灯により600mJ/cm
2の紫外線を照射し、ハードコートフィルムを作製した。続いてSi(OC254を95mol%、CF3(CF27(CH22Si(OCH33を5mol%で混合したマトリックスに対して1.0N−HClを触媒に用いた低屈折率コーティング剤を作製した。ハードコート層上に同じくバーコーティング法により乾燥後の膜厚が100nmになるように塗布し、120℃で1分間乾燥を行うことによって低屈折率層を形成した。このフィルムの性能評価結果を表1に、ハードコートフィルム断面のTEM写真を図2に示す。
【0038】
<実施例2>
電離放射線硬化型樹脂:70重量部、導電性金属酸化物(五酸化アンチモン微粒子):30重量部、イルガキュアー184:3.5重量部、メチルエチルケトン:50重量部、酢酸メチル:50重量部とした以外は実施例1と同様にしてハードコート層および低屈折率層を作製した。このフィルムの性能評価結果を表1に示す。
【0039】
以下に、本発明の比較例について説明する。
【0040】
<比較例1>
電離放射線硬化型樹脂:40重量部、導電性金属酸化物(酸化亜鉛微粒子):60重量部、イルガキュアー184:3.5重量部、イソブチルアルコール:80重量部、シクロヘキサノン:20重量部とした以外は実施例1と同様にしてハードコート層および低屈折率層を作製した。このフィルムの性能評価結果を表1に示す。
<比較例2>
トリアセチルセルロースフィルムの代わりに厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(全光線透過率:88%、ヘイズ値:0.5%)を用いる以外は実施例2と同様にしてハードコート層および低屈折率層を作製した。このフィルムの性能評価結果を表1に、ハードコートフィルム断面のTEM写真を図3に示す。
【0041】
【表1】

表1は、実施例1〜2、比較例1〜2における、ハードコート層の膜厚[μm]、光学特性(ヘイズ値)、表面抵抗値[Ω/□]、低屈折率層の耐擦傷性、鉛筆硬度[3H−500g]の測定評価表である。
【0042】
実施例1、2では塗工中に溶解したトリアセチルセルロースが基材(1)であるトリアセチルセルロースフィルム上に存在し、導電性材料(3)がハードコート層(4)上に偏在しているため、表面抵抗値、低屈折率層の耐擦傷性ともに良好であるのに対し、比較例1ではハードコート層(4)を形成するハードコート剤中の溶剤の含有量が少なくトリアセチルセルロースの溶解が不充分であるため、表面抵抗値、低屈折率層の耐擦傷性がともに劣っている。比較例2でも同様に、ポリエチレンテレフタレートが溶剤によって溶解しないため、実施例と比較して表面抵抗値、低屈折率層の耐擦傷性がともに劣っている。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係るハードコートフィルムの層構成を示す側断面図である。
【図2】本発明に係るハードコートフィルムの断面のTEM写真である。
【図3】従来のハードコートフィルムの断面のTEM写真である。
【符号の説明】
【0044】
1・・・基材
2・・・電離放射線硬化型樹脂
3・・・導電性材料
4・・・ハードコート層 4a・・・表面層
5・・・低屈折率層
1・・・全体の厚み
2・・・表面層の厚み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能性モノマーを主成分とする電離放射線硬化型樹脂90〜10重量部と導電性材料10〜90重量部を含むハードコート層を有し、該ハードコート層中の導電性材料が、上方に偏在していることを特徴とするハードコートフィルム。
【請求項2】
前記ハードコート層の全体の厚みに対する前記ハードコート層の表面部分の表面層の厚みの比が0.7以下である表面層に、前記導電性材料が50%以上含まれていることを特徴とする請求項1記載のハードコートフィルム。
【請求項3】
前記基材がトリアセチルセルロースフィルムであることを特徴とする請求項1又は2記載のハードコートフィルム。
【請求項4】
前記導電性材料がATO(酸化アンチモン−酸化スズ複合酸化物)、ITO(酸化インジウム−酸化スズ複合酸化物)、Sb25、TiO2、ZnO2、Ce23の粒子のうち少なくとも1種類以上を含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のハードコートフィルム。
【請求項5】
前記ハードコート層上に一般式(X)および(Y)で示される有機珪素化合物または加水分解物、またはそれらの重合体を含む低屈折率層を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のハードコートフィルム。
Si(OR)4 (X)
(式中のRはアルキル基を表わす)
R’mSi(OR)4-m (Y)
(式中のR’はフッ素含有置換基、Rはアルキル基、mは1〜4の整数を表わす)
【請求項6】
基材上に、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能性モノマーを主成分とする電離放射線硬化型樹脂90〜10重量部と導電性材料10〜90重量部を含み、且つ前記基材を溶解又は膨潤させる溶剤を含む組成物を塗工することによりハードコート層を形成する工程を有し、該ハードコート層中の導電性材料が、上方に偏在していることを特徴とするハードコートフィルムの製造方法。
【請求項7】
前記ハードコート層の全体の厚みに対する前記ハードコート層の表面部分の表面層の厚みの比が0.7以下である表面層に、前記導電性材料が50%以上含まれていることを特徴とする請求項6記載のハードコートフィルムの製造方法。
【請求項8】
前記基材がトリアセチルセルロースフィルムであることを特徴とする請求項6又は7記載のハードコートフィルムの製造方法。
【請求項9】
前記溶剤が酢酸メチル及びメチルエチルケトンを含むことを特徴とする請求項8記載のハードコートフィルムの製造方法。
【請求項10】
前記ハードコート層上に一般式(X)および(Y)で示される有機珪素化合物または加水分解物、またはそれらの重合体を含む低屈折率層を有することを特徴とする請求項6乃至9のいずれか1項記載のハードコートフィルムの製造方法。
Si(OR)4 (X)
(式中のRはアルキル基を表わす)
R’mSi(OR)4-m (Y)
(式中のR’はフッ素含有置換基、Rはアルキル基、mは1〜4の整数を表わす)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−159415(P2006−159415A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−349496(P2004−349496)
【出願日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】