説明

ハードコートフィルム

【課題】薄膜でも高硬度で密着性の良いハードコート層を有し、生産性に優れたハードコートフィルムを提供すること。
【解決手段】ポリマーフィルム基材1の上にバリア層2を塗設し、該バリア層2を表面硬度が鉛筆硬度でH未満となる状態に硬化させた後、該バリア層2の上にハードコート層3を塗設し、硬化させてなるハードコートフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表面にハードコート層を有するハードコートフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ、CRTディスプレイ、プロジェクションディスプレイ、プラズマディスプレイ、ELディスプレイなどの各種ディスプレイには、例えば、表面の保護、反射防止、防眩等の目的で、光学フィルムが使用されている。そのような光学フィルムには、耐擦傷性の観点から、ポリマーフィルム基材の表面にハードコート層を形成したハードコートフィルムを使用することが知られている。
【0003】
しかしながら、従来のハードコートフィルムでは、基材から紫外線吸収剤などの添加剤がハードコート層に滲出し、ハードコート層の高硬度化を阻害するという問題があった。特にハードコート層深部においてそのような硬度不良の問題は顕著であった。ハードコート層の表面硬度を上げるために、当該層を厚くすることが考えられるが、厚くし過ぎると、光学フィルムとしての諸機能を阻害するおそれがあるため、厚膜化にも限界があった。
【0004】
一方、基材フィルム上に所定の凹凸面を有するハードコート下層を有し、さらにその上にハードコート上層を有するハードコートフィルムが知られている(特許文献1)。そのような構造によって、フィルムの表面硬度や耐擦傷性を向上させようとする技術である。しかしながら、ハードコート下層に所定の凹凸面を形成するために、特殊な処理を施す必要があるため、製造が煩雑であった。特殊な処理を施さないとハードコート上層とハードコート下層との間の密着性が問題となった。
【特許文献1】特開2006−110754号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、薄膜でも高硬度で密着性の良いハードコート層を有し、生産性に優れたハードコートフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ポリマーフィルム基材の上にバリア層を塗設し、該バリア層を表面硬度が鉛筆硬度でH未満となる状態に硬化させた後、該バリア層の上にハードコート層を塗設し、硬化させてなるハードコートフィルムに関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、基板とハードコート層との間にバリア層を形成し、かつ当該バリア層を不完全に硬化させておくことにより、薄膜でも高硬度で密着性の良いハードコート層を有するハードコートフィルムを、従来技術に比べ生産性よく製造できる。
また本発明によれば、基材に含有されるUV吸収剤や可塑剤等の添加剤のハードコート層への滲出を抑制できるので、ハードコート層の硬化に必要なUV光量が節減でき、しかも表面のさらなる高硬度化を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明に係るハードコートフィルムは、ポリマーフィルム基材の上にバリア層を塗設し、該バリア層を所定の硬度となる状態に硬化させた後、該バリア層の上にハードコート層を塗設し、硬化させたものである。以下、図1および図2を用いて、本発明を詳しく説明する。図1は本発明に係るハードコートフィルムの概略構成図である。図2は、本発明に係るハードコートフィルムの製造方法を実施する装置の一実施形態を示す概略構成図である。
【0009】
(基材)
基材1としてのフィルムは製造が容易であること、光学的に等方性であることが好ましい。これらの性質を有していれば何れでもよく、例えば、トリアセチルセルロースフィルム、セルロースアセテートプロピオネートオネートフィルム、セルロースジアセテートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム等のセルロースエステル系フィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリアリレート系フィルム、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンも含む)系フィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、シンジオタクティックポリスチレン系フィルム、ノルボルネン樹脂系フィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリエーテルケトンイミドフィルム、ポリアミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルムまたはアクリルフィルム等を挙げることができるが、これらに限定されるわけではない。これらの内、セルロースエステルフィルム(例えば、コニカミノルタタックKC8UX2M、KC4UX2M、KC4UY、KC8UT、KC5UN、KC12UR、KC8UCR−3、KC8UCR−4(以上、コニカミノルタオプト(株)製))、ポリカーボネートフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム、ポリエステルフィルムが好ましく、本発明においては、特にセルロースエステル系フィルムが、製造上、コスト面、等方性、接着性、及び本発明の目的効果が好適に得られることから好ましい。
【0010】
次に基材フィルムとして好ましいセルロースエステル系フィルム(以下、セルロースエステルフィルムともいう)について説明する。
セルロースエステル樹脂は、分子量が特に、数平均分子量(Mn)で80000〜200000のものが用いられ、100000〜200000のものが更に好ましく、150000〜200000が特に好ましい。
【0011】
セルロースエステルの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比、Mw/Mnは1.4〜3.0の範囲が好ましく、より好ましくは1.7〜2.2の範囲である。
【0012】
セルロースエステルの平均分子量及び分子量分布は、高速液体クロマトグラフィーを用いて公知の方法で測定することが出来る。これを用いて数平均分子量、重量平均分子量を算出し、その比(Mw/Mn)を計算することが出来る。
【0013】
測定条件は以下の通りである。
溶媒:メチレンクロライド
カラム:Shodex K806,K805,K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度:0.1重量%
検出器:RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ:L6000(日立製作所(株)製)
流量:1.0ml/min
校正曲線:標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1000000〜500迄の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いることが好ましい。
【0014】
本発明に用いられるセルロースエステルは、炭素数2〜22程度のカルボン酸エステルであり、芳香族カルボン酸のエステルでもよく、特にセルロースの低級脂肪酸エステルであることが好ましい。セルロースの低級脂肪酸エステルにおける低級脂肪酸とは炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味し、例えば、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートフタレート等や、特開平10−45804号、同8−231761号、米国特許第2,319,052号等に記載されているようなセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等の混合脂肪酸エステルを用いることが出来る。上記記載の中でも、特に好ましく用いられるセルロースの低級脂肪酸エステルは、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネートである。これらのセルロースエステルは混合して用いることも出来る。
【0015】
セルローストリアセテートの場合には、総アシル基置換度(アセチル基置換度)2.6から2.9のものが好ましく用いられる。
【0016】
セルローストリアセテート以外で好ましいセルロースエステルは、炭素原子数2〜4のアシル基を置換基として有し、アセチル基の置換度をXとし、プロピオニル基の置換度をYとした時、下記式(I)及び(II)を同時に満たすセルロースエステルである。
式(I) 2.6≦X+Y≦2.9
式(II) 0≦X≦2.5
【0017】
中でも1.9≦X≦2.5、0.1≦Y≦0.9のセルロースアセテートプロピオネート(総アシル基置換度=X+Y)が好ましい。アシル基で置換されていない部分は通常水酸基として存在している。これらは公知の方法で合成することが出来る。
【0018】
これらアシル基置換度は、ASTM−D817−96に規定の方法に準じて測定することが出来る。
【0019】
セルロースエステルは綿花リンター、木材パルプ、ケナフ等を原料として合成されたセルロースエステルを単独或いは混合して用いることが出来る。特に綿花リンター(以下、単にリンターとすることがある)、木材パルプから合成されたセルロースエステルを単独或いは混合して用いることが好ましい。
【0020】
また、これらから得られたセルロースエステルはそれぞれ任意の割合で混合使用することが出来る。これらのセルロースエステルは、セルロース原料をアシル化剤が酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸)である場合には、酢酸のような有機酸やメチレンクロライド等の有機溶媒を用い、硫酸のようなプロトン性触媒を用いて常法により反応させて得ることが出来る。
【0021】
アセチルセルロースの場合、酢化率をあげようとすれば、酢化反応の時間を延長する必要がある。但し、反応時間を余り長くとると分解が同時に進行し、ポリマー鎖の切断やアセチル基の分解などが起り、好ましくない結果をもたらす。従って、酢化度をあげ、分解をある程度抑えるためには反応時間はある範囲に設定することが必要である。反応時間で規定することは反応条件が様々であり、反応装置や設備その他の条件で大きく変わるので適切でない。ポリマーの分解は進むにつれ、分子量分布が広くなってゆくので、セルロースエステルの場合にも、分解の度合いは通常用いられる重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)の値で規定出来る。即ちセルローストリアセテートの酢化の過程で、余り長すぎて分解が進みすぎることがなく、かつ酢化には十分な時間酢化反応を行わせしめるための反応度合いの一つの指標として用いられる重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)の値を用いることが出来る。
【0022】
セルロースエステルの製造法の一例を以下に示すと、セルロース原料として綿化リンター100重量部を解砕し、40重量部の酢酸を添加し、36℃で20分間前処理活性化をした。その後、硫酸8重量部、無水酢酸260重量部、酢酸350重量部を添加し、36℃で120分間エステル化を行った。24%酢酸マグネシウム水溶液11重量部で中和した後、63℃で35分間ケン化熟成し、アセチルセルロースを得た。これを10倍の酢酸水溶液(酢酸:水=1:1(重量比))を用いて、室温で160分間攪拌した後、濾過、乾燥させてアセチル置換度2.75の精製アセチルセルロースを得た。このアセチルセルロースはMnが92000、Mwが156000、Mw/Mnは1.7であった。同様にセルロースエステルのエステル化条件(温度、時間、攪拌)、加水分解条件を調整することによって置換度、Mw/Mn比の異なるセルロースエステルを合成することが出来る。
【0023】
尚、合成されたセルロースエステルは、精製して低分子量成分を除去したり、未酢化または低酢化の成分を濾過で取り除くことも好ましく行われる。
【0024】
また、混酸セルロースエステルの場合には、特開平10−45804号公報に記載の方法で反応して得ることが出来る。アシル基の置換度の測定方法はASTM−D817−96の規定に準じて測定することが出来る。
【0025】
ポリマーフィルム基材には、通常、紫外線吸収剤、可塑剤が含有され、所望により酸化防止剤、マット剤、導電性物質、帯電防止剤、難燃剤、滑剤等の添加剤が含有されてよい。
【0026】
紫外線吸収剤は400nm以下の紫外線を吸収することで、耐久性を向上させることを目的としており、特に波長370nmでの透過率が10%以下であることが好ましく、より好ましくは5%以下、更に好ましくは2%以下である。
【0027】
本発明に用いられる紫外線吸収剤は特に限定されず、光学フィルムの分野で従来から使用されている紫外線吸収剤が使用可能であり、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、トリアジン系化合物、ニッケル錯塩系化合物、無機粉体等が挙げられる。本発明においては紫外線吸収剤が2種以上含有されてもよい。
【0028】
例えば、5−クロロ−2−(3,5−ジ−sec−ブチル−2−ヒドロキシルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、(2−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、2,4−ベンジルオキシベンゾフェノン等があり、また、チヌビン109、チヌビン171、チヌビン234、チヌビン326、チヌビン327、チヌビン328等のチヌビン類があり、これらはいずれもチバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製の市販品であり好ましく使用出来る。
【0029】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の具体例として、例えば、以下に示す化合物が挙げられるが、これに限定されるものではない。
UV−1:2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−2:2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−3:2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−4:2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール
UV−5:2−(2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−6:2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)
UV−7:2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール
UV−8:2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール(チヌビン171)
UV−9:オクチル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートの混合物(チヌビン109)
【0030】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤の具体例として、例えば、以下に示す化合物が挙げられるが、これに限定されるものではない。
UV−10:2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン
UV−11:2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン
UV−12:2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン
UV−13:ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)
【0031】
特開2001−235621の一般式(I)で示されているトリアジン系化合物も好ましく用いられる。
【0032】
紫外線吸収剤としては高分子紫外線吸収剤も好ましく用いることが出来、特に特開平6−148430号記載のポリマータイプの紫外線吸収剤が好ましく用いられる。
【0033】
紫外線吸収剤の添加方法は、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコールやメチレンクロライド、酢酸メチル、アセトン、ジオキソラン等の有機溶媒或いはこれらの混合溶媒に紫外線吸収剤を溶解してからドープに添加するか、または直接ドープ組成中に添加してもよい。無機粉体のように有機溶剤に溶解しないものは、有機溶剤と基材用ポリマー中にデゾルバーやサンドミルを使用し、分散してからドープに添加する。
【0034】
フィルム基材中の紫外線吸収剤の含有量は、紫外線吸収剤の種類、使用条件等により一様ではないが、フィルム基材の乾燥膜厚が30〜200μmの場合は、基材用ポリマーに対して0.5〜4.0重量%が好ましく、0.6〜2.0重量%が更に好ましい。
【0035】
本発明で用いられる可塑剤は特に限定されず、光学フィルムの分野で従来から使用されている可塑剤が使用可能であり、例えば、多価アルコールエステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、脂肪酸エステル系可塑剤、グリコレート系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤等から選択される。本発明においては可塑剤が2種以上含有されてもよい。
【0036】
多価アルコールエステル系可塑剤は2価以上の脂肪族多価アルコールとモノカルボン酸のエステルよりなる可塑剤であり、分子内に芳香環またはシクロアルキル環を有することが好ましい。好ましくは2〜20価の脂肪族多価アルコールエステルである。好ましい多価アルコールの例としては、例えば以下のようなものを挙げることが出来るが、本発明はこれらに限定されるものではない。アドニトール、アラビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジブチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘキサントリオール、ガラクチトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、キシリトール等を挙げることが出来る。特に、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、キシリトールが好ましい。
【0037】
多価アルコールエステルに用いられるモノカルボン酸としては、特に制限はなく、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることが出来る。脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸を用いると透湿性、保留性を向上させる点で好ましい。好ましいモノカルボン酸の例としては以下のようなものを挙げることが出来るが、本発明はこれに限定されるものではない。好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることが出来る。好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることが出来る。好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環にアルキル基を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタレンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることが出来る。特に安息香酸が好ましい。
【0038】
多価アルコールエステルの分子量は特に制限はないが、300〜1500であることが好ましく、350〜750であることが更に好ましい。分子量が大きい方が揮発し難くなるため好ましく、透湿性、セルロースエステルとの相溶性の点では小さい方が好ましい。多価アルコールエステルに用いられるカルボン酸は1種類でもよいし、2種以上の混合であってもよい。また、多価アルコール中のOH基は、全てエステル化してもよいし、一部をOH基のままで残してもよい。
【0039】
フタル酸エステル系可塑剤としては、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジオクチルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジシクロヘキシルテレフタレート等が挙げられる。
クエン酸エステル系可塑剤としては、クエン酸アセチルトリメチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル等が挙げられる。
脂肪酸エステル系可塑剤として、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル等が挙げられる。
【0040】
グリコレート系可塑剤は特に限定されないが、アルキルフタリルアルキルグリコレート類が好ましく用いることが出来る。アルキルフタリルアルキルグリコレート類としては、例えばメチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルメチルグリコレート、ブチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルオクチルグリコレート、エチルフタリルオクチルグリコレート、オクチルフタリルメチルグリコレート、オクチルフタリルエチルグリコレート等が挙げられる。
【0041】
リン酸エステル系可塑剤としては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等が挙げられる。
【0042】
フィルム基材中の可塑剤の含有量は、固形分総量に対し、5〜20重量%が好ましく、6〜16重量%が更に好ましく、特に好ましくは8〜13重量%である。
【0043】
フィルム基材の厚みは特に制限されず、通常は10〜200μm、好ましくは30〜100μmである。
【0044】
フィルム基材はいかなる方法によって製造されてよく、例えば、いわゆる溶液流延法や溶融流延法等によって製造可能である。例えば、溶融流延法を採用する場合、基材用ポリマー及び添加剤を溶剤に溶解または分散させてドープを調製する工程、ドープを無限に移行する無端の金属支持体上に流延する工程、流延したドープを乾燥する工程、金属支持体から剥離する工程、延伸または幅保持する工程、更に乾燥する工程、仕上がったフィルムを巻取る工程により、フィルム基材を製造できる。
【0045】
(バリア層)
本発明においては、前記フィルム基材1の上にバリア層2を塗設するに際し、バリア層2の表面硬度が鉛筆硬度でH未満、特に2B以上H未満、好ましくはB〜HBとなる状態まで硬化させる。これによって、当該バリア層の上に、高硬度で密着性の良いハードコート層を形成できる。しかも基材に含有されるUV吸収剤や可塑剤等の添加剤のハードコート層への滲出を抑制できる。バリア層の硬化を鉛筆硬度でH以上になるまで行うと、当該バリア層とハードコート層との密着性が低下する。またバリア層を形成しない場合は、ハードコート層にUV吸収剤が滲出するため、高硬度のハードコート層が得られない。
【0046】
詳しくは、例えば、巻き出し機11から巻き出されたフィルム基材上に、バリア層用塗液を塗布装置12により塗布し、所望により乾燥装置13で乾燥させた後または乾燥させながら、硬化装置14により硬化させる。硬化は活性線を照射することによって達成してもよいし、熱を付与することによって達成してもよい。いずれの硬化方法を採用する場合においても、硬化の程度を調整することによって、バリア層の表面硬度を制御できる。表面硬度の制御の観点からは、活性線照射により硬化を行うことが好ましい。
【0047】
活性線の照射条件はバリア層の上記表面硬度が達成されれば特に制限されず、通常は後述の厚みのバリア層を紫外線照射により形成する場合で、照度10〜200mW/cm、特に30〜100mW/cm、かつ照射量10〜50mJ/cm、特に20〜30mJ/cmの条件で紫外線を照射する。照度が大きすぎたり、照射量が多すぎると、バリア層表面が硬くなり過ぎる。一方、照度が小さすぎたり、照射量が少すぎると、硬化しない。
【0048】
活性線により硬化を行う場合において、照度および照射量、ならびにバリア層の厚み、固形分濃度、UVバックロール温度を適宜、調整することによって、バリア層の表面硬度を制御できる。例えば、照度、照射量、バリア層の厚みは大きいほど、表面硬度は上がり、一方で小さいほど、表面硬度は下がる。
【0049】
活性線は、照射によりバリア層に架橋反応等を起こさせて硬化させ得る限り特に制限されず、例えば、紫外線や電子線等が使用可能であり、好ましくは紫外線が使用される。紫外線を発生する光源としては、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることが出来る。
【0050】
活性線を照射する際には、フィルムの搬送方向に張力を付与しながら行うことが好ましく、更に好ましくは幅方向にも張力を付与しながら行うことである。付与する張力は、搬送方向および幅方向ともに30〜300N/mが好ましい。張力を付与する方法は特に限定されず、バックロール上で搬送方向に張力を付与してもよく、テンターにて幅方向、若しくは2軸方向に張力を付与してもよい。これによって更に平面性に優れたフィルムを得ることが出来る。
【0051】
バリア層用塗液の塗布方法は塗液を均一に塗布できる限り特に制限されず、例えば、グラビアコーター法、ディップコーター法、リバースコーター法、ワイヤーバーコーター法、ダイコーター法、インクジェット法等公知の方法を採用出来る。
【0052】
バリア層の厚みは本発明の目的が達成される限り特に制限されず、通常は0.2〜7μm、好ましくは0.2〜5μmである。本明細書中、バリア層の厚みはバリア層硬化直後の厚みである。
【0053】
バリア層用塗液は少なくとも硬化性樹脂、重合開始剤および溶媒を含んでなり、所望により無機微粒子、有機微粒子、界面活性剤、レベリング剤等の添加剤が含有されてもよい。
【0054】
硬化性樹脂は活性線硬化性樹脂が使用される。活性線硬化性樹脂は、エチレン性不飽和二重結合を1分子中に1以上、特に2〜6、好ましくは3〜4有するモノマー成分が好ましく用いられ、紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂等が代表的なものとして挙げられるが、紫外線硬化性樹脂が好ましい。
【0055】
紫外線硬化性樹脂としては、例えば、紫外線硬化型ウレタンアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂、または紫外線硬化型エポキシ樹脂等が好ましく用いられる。本明細書中、アクリレートにはメタクリレートを包含するものとしてアクリレートのみを表示するものとする。
【0056】
紫外線硬化型ウレタンアクリレート系樹脂は、一般にポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、またはプレポリマーを反応させて得られた生成物に更に2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等の水酸基を有するアクリレート系のモノマーを反応させることによって容易に得ることが出来る。例えば、特開昭59−151110号に記載のものを用いることが出来る。
例えば、ユニディック17−806(大日本インキ(株)製)100部とコロネートL(日本ポリウレタン(株)製)1部との混合物等が好ましく用いられる。
【0057】
紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂としては、一般にポリエステルポリオールに2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシアクリレート系のモノマーを反応させると容易に形成されるものを挙げることが出来、特開昭59−151112号に記載のものを用いることが出来る。
紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂の具体例としては、エポキシアクリレートをオリゴマーとし、これに反応性希釈剤、光反応開始剤を添加し、反応させて生成するものを挙げることが出来、特開平1−105738号に記載のものを用いることが出来る。
【0058】
紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂の具体例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、1,4−シクロヘキシルジメチルアジアクリレート等を挙げることが出来る。
【0059】
他の紫外線硬化性樹脂として、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、酢酸ビニル、スチレン、ジビニルベンゼン等の一般的なモノマーを挙げることが出来る。
【0060】
本発明において使用し得る紫外線硬化性樹脂の市販品としては、アデカオプトマーKR・BYシリーズ:KR−400、KR−410、KR−550、KR−566、KR−567、BY−320B(旭電化(株)製);コーエイハードA−101−KK、A−101−WS、C−302、C−401−N、C−501、M−101、M−102、T−102、D−102、NS−101、FT−102Q8、MAG−1−P20、AG−106、M−101−C(広栄化学(株)製);セイカビームPHC2210(S)、PHC X−9(K−3)、PHC2213、DP−10、DP−20、DP−30、P1000、P1100、P1200、P1300、P1400、P1500、P1600、SCR900(大日精化工業(株)製);KRM7033、KRM7039、KRM7130、KRM7131、UVECRYL29201、UVECRYL29202(ダイセル・ユーシービー(株)製);RC−5015、RC−5016、RC−5020、RC−5031、RC−5100、RC−5102、RC−5120、RC−5122、RC−5152、RC−5171、RC−5180、RC−5181(大日本インキ化学工業(株)製);オーレックスNo.340クリヤ(中国塗料(株)製);サンラッドH−601、RC−750、RC−700、RC−600、RC−500、RC−611、RC−612(三洋化成工業(株)製);SP−1509、SP−1507(昭和高分子(株)製);RCC−15C(グレース・ジャパン(株)製)、アロニックスM−6100、M−8030、M−8060(東亞合成(株)製)等を適宜選択して利用出来る。
【0061】
紫外線硬化性樹脂の重合開始剤(光反応開始剤)としては、具体的には、ベンゾイン及びその誘導体、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、α−アミロキシムエステル、チオキサントン等及びこれらの誘導体を挙げることが出来る。光増感剤と共に使用してもよい。エポキシアクリレート系樹脂のための光反応開始剤の使用の際、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等の増感剤を用いることが出来る。
光反応開始剤は、硬化性樹脂100重量部に対して0.1〜15重量部であり、好ましくは1〜10重量部である。
【0062】
溶剤は、硬化性樹脂を溶解可能な限り特に制限されないが、バリア層と基材との密着性および干渉ムラの低減の観点から、基材を膨潤または溶解し得る溶剤を含むことが好ましい。基材を膨潤または溶解し得る溶剤の塗液全体に占める割合は20〜60重量%の範囲であり、より好ましくは30〜50重量%の範囲である。
【0063】
基材がセルロースエステルを含む場合、基材を膨潤または溶解し得る溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルオキシド、メチル−n−アミルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、ジイソブチルケトン、メチルシクロヘキサノン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、安息香酸エチル、アセト酢酸メチル等のエステル類、ジオキソラン、ジオキサン、メチルセロソルブ、メチルカルビトール等のエーテル類、メチルセロソルブアセテート、セロソルブアセテート等の多価アルコールエステル類、テトラヒドロフラン、フルフラール等のフラン類、氷酢酸等の酸類、メチレンクロライド、エチレンジクロライド、テトラクロロエタン等のハロゲン炭化水素類、ニトロメタン、ニトロエタン、ピリジン、ジメチルホルムアミド、ニトロベンゼン等の窒素化合物、ジメチルスルホキサイド等のスルホン酸類等が好適に用いられる。塗布後の乾燥を考慮すると、揮発し易い溶剤が好ましく、沸点が200℃以下のものが好ましい。
【0064】
本発明では、基材を膨潤または溶解しない溶剤を、塗液全体に占める割合が1〜30重量%、好ましくは5〜20重量%の範囲となるように、使用することが出来る。基材がセルロースエステルを含む場合、基材を膨潤または溶解しない溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノールなどのアルコール類、グリコールエーテル類[プロピレングリコールモノ(C1〜C4)アルキルエーテル(具体的にはプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノn−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等)、プロピレングリコールモノ(C1〜C4)アルキルエーテルエステル(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート)]、水、その他の溶媒などが挙げられる。特にこれらに限定されるものではないが、これらを適宜混合した溶媒が好ましく用いられる。
【0065】
(ハードコート層)
本発明においては、前記バリア層2の上にハードコート層3を塗設するに際し、十分に硬化させる。ハードコート層は前記バリア層の上に形成されるため、十分な硬化が可能となり、結果として高硬度で密着性の良いハードコート層を形成できる。
【0066】
詳しくは、例えば、バリア層上に、ハードコート層用塗液を塗布装置15により塗布し、所望により乾燥装置16で乾燥させた後または乾燥させながら、硬化装置17により硬化させ、巻き取り機18によって巻き取る。
【0067】
ハードコート層およびその形成方法(硬化方法)は特記しない限り、バリア層と同様である。すなわちハードコート層は特記しない限り、前記したバリア層と同様の範囲内において、独立して選択・決定されればよい。
【0068】
ハードコート層を形成する際の硬化は十分に行う。例えば、後述の厚みのハードコート層を紫外線照射により形成する場合で、照度100〜2000mW/cm、特に200〜1000mW/cm、かつ照射量50〜1000mJ/cm、特に80〜500mJ/cmの条件で紫外線を照射する。
【0069】
ハードコート層の厚みは本発明の目的が達成される限り特に制限されず、通常は4〜14μm、好ましくは5〜10μm、より好ましくは5〜8μmである。本明細書中、ハードコート層の厚みはハードコート層硬化後の厚みである。
【0070】
本発明で得られるハードコート層は、基材に含まれる紫外線吸収剤の濃度が190ppm以下、特に5〜190ppmであり、好ましくは5〜170ppm、より好ましくは5〜120ppm、さらに好ましくは5〜70ppmを達成する。
【0071】
ハードコート層は、基材に含まれる可塑剤の濃度が200ppm以下、特に20〜200ppmであり、好ましくは20〜170ppm、より好ましくは20〜120ppmを達成する。
【0072】
ハードコート層用塗液はバリア層用塗液と同様である。ハードコート層において活性線硬化性樹脂はバリア層と同様の範囲内において、独立して選択・決定されればよいが、バリア層で使用された紫外線硬化性樹脂よりも、エチレン性不飽和二重結合の数が多いものを使用することが好ましい。例えば、エチレン性不飽和二重結合を1分子中に5〜6有する紫外線硬化性樹脂が好ましく用いられる。
【0073】
ハードコート層用塗液の溶剤は、バリア層用塗液の溶剤と同様のものが使用される。
【0074】
(バックコート層)
本発明のハードコートフィルムのバリア層およびハードコート層を設けた側と反対側の面には、いわゆるバックコート層を設けてもよい。バックコート層は、ハードコート層やバリア層を設けることで生じるカールを矯正するために設けられる。即ち、バックコート層を設けた面を内側にして丸まろうとする性質を持たせることにより、カールの度合いをバランスさせることが出来る。バックコート層は好ましくはブロッキング防止層を兼ねて塗設され、その場合、バックコート層塗液には、ブロッキング防止機能を持たせるために微粒子、特に無機微粒子が添加されることが好ましい。
【0075】
バックコート層は、具体的には前記した基材を膨潤または溶解し得る溶剤を含む塗液を塗設することによって行われる。用いる溶剤としては基材を膨潤または溶解し得る溶剤と溶解しない溶剤を含む場合もあり、これらを基材のカール度合いや樹脂の種類によって適当な割合で混合した塗液及び塗布量で行われる。
【0076】
バックコート層のバインダーとして用いられる樹脂としては、例えば塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニルとビニルアルコールの共重合体、部分加水分解した塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、塩素化ポリ塩化ビニル、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体或いは共重合体、ニトロセルロース、セルロースアセテートプロピオネート(好ましくはアセチル基置換度1.8〜2.3、プロピオニル基置換度0.1〜1.0)、ジアセチルセルロース、セルロースアセテートブチレート樹脂等のセルロース誘導体、マレイン酸及び/またはアクリル酸の共重合体、アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、塩素化ポリエチレン、アクリロニトリル−塩素化ポリエチレン−スチレン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステルポリウレタン樹脂、ポリエーテルポリウレタン樹脂、ポリカーボネートポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、アミノ樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、ブタジエン−アクリロニトリル樹脂等のゴム系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂等を挙げることが出来るが、これらに限定されるものではない。
【0077】
(用途)
以上の方法で製造された本発明のハードコートフィルムは、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ等の各種ディスプレイの光学フィルム、例えば、偏向板保護フィルム、位相差フィルム、反射防止フィルム、輝度向上フィルム、視野角拡大等の光学補償フィルム等としての使用に特に適している。
【0078】
例えば、本発明のハードコートフィルムを、反射防止機能を有する偏光板保護フィルムとして使用する場合、該保護フィルムの厚さは10〜500μmが好ましい。特に20μm以上、更に35μm以上が好ましい。また、150μm以下、更に120μm以下が好ましい。特に好ましくは25〜90μmが好ましい。上記領域よりも保護フィルムが厚いと偏光板加工後の偏光板が厚くなり過ぎ、ノート型パソコンやモバイル型電子機器に用いる液晶表示においては、特に薄型軽量の目的には適さない。一方、上記領域よりも薄いと、リターデーションの発現が困難となること、フィルムの透湿性が高くなり偏光子に対して湿度から保護する能力が低下してしまうために好ましくない。
【0079】
本発明のハードコートフィルムを用いた偏光板について述べる。偏光板は一般的な方法で作製することができる。本発明のハードコートフィルムの裏面側をアルカリ鹸化処理し、処理したハードコートフィルムを、ヨウ素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光膜の少なくとも一方の面に、完全鹸化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせることが好ましい。もう一方の面に該ハードコートフィルムを用いても、別の偏光板保護フィルムを用いてもよい。本発明のハードコートフィルムに対して、もう一方の面に用いられる偏光板保護フィルムは面内リターデーションRoが590nmで、20〜70nm、Rtが70〜400nmの位相差を有する光学補償フィルム(位相差フィルム)を用いることが好ましい。これらは例えば、特開2002−71957号、特願2002−155395号記載の方法で作製することができる。または、更にディスコチック液晶等の液晶化合物を配向させて形成した光学異方層を有している光学補償フィルムを兼ねる偏光板保護フィルムを用いることが好ましい。例えば、特開2003−98348号記載の方法で光学異方性層を形成することができる。或いは、特開2003−12859号記載のリターデーションRoが590nmで0〜5nm、Rtが−20〜+20nmの無配向フィルムも好ましく用いられる。本発明のハードコートフィルムと組み合わせて使用することによって、安定した視野角拡大効果を有する偏光板を得ることができる。
【0080】
裏面側に用いられる偏光板保護フィルムとしては、市販のセルロースエステルフィルムとして、KC8UX2MW、KC4UX、KC5UX、KC4UY、KC8UY、KC12UR、KC4UEW、KC8UCR−3、KC8UCR−4、KC8UCR−5、KC4FR−1、KC4FR−2、KC8UE、KC4UE(コニカミノルタオプト(株)製)等が好ましく用いられる。
【0081】
偏光板の主たる構成要素である偏光膜とは、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光膜は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムで、これはポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものがあるがこれのみに限定されるものではない。偏光膜は、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行ったものが用いられている。偏光膜の膜厚は5〜30μm、好ましくは8〜15μmの偏光膜が好ましく用いられる。該偏光膜の面上に、本発明のハードコートフィルムの片面を貼り合わせて偏光板を形成する。好ましくは完全鹸化ポリビニルアルコール等を主成分とする水系の接着剤によって貼り合わせる。
【0082】
本発明のハードコートフィルムを用いて作製した偏光板を表示装置に組み込むことによって、種々の視認性に優れた画像表示装置を作製することができる。
本発明のハードコートフィルムは前記偏光板に組み込まれ、反射型、透過型、半透過型液晶表示装置またはTN型、STN型、OCB型、HAN型、VA型(PVA型、MVA型)、IPS型、OCB型等の各種駆動方式の液晶表示装置で好ましく用いられる。
また、本発明のハードコートフィルムは、プラズマディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ、電子ペーパー等の各種画像表示装置にも好ましく用いられる。
【実施例】
【0083】
(セルロースエステルフィルムの製造)
密閉容器にメチレンクロライド440重量部およびエタノール35重量部を投入し、攪拌しながら、セルロースエステル(アセチル基置換度2.9、プロピオニル基置換度0、Mn=16万、Mw/Mn=1.7)100重量部、トリメチロールプロパントリベンゾエート5重量部、エチルフタリルエチルグリコレート5重量部、チヌビン109(チバスペシャルティケミカルズ(株)社製)1重量部、チヌビン171(チバスペシャルティケミカルズ(株)社製)1重量部、およびアエロジルR972V(日本アエロジル(株)社製)0.3重量部を順に投入し、加熱、攪拌しながら完全に溶解し、混合した。微粒子は溶剤の一部で分散して添加した。溶液を流延する温度まで下げて一晩静置し、脱泡操作を施した後、溶液を安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、セルロースエステル溶液を得た。
【0084】
次に、33℃に温度調整したセルロースエステル溶液を、ダイに送液して、ダイスリットからステンレスベルト上に均一に流延した。ステンレスベルトの流延部は裏面から37℃の温水で加熱した。流延後、金属支持体上のドープ膜(ステンレスベルトに流延以降はウェブということにする)に44℃の温風を当てて乾燥させ、剥離の際の残留溶媒量が120重量%で剥離し、剥離の際の張力をかけて所定の縦延伸倍率となるように延伸し、次いで、テンターでウェブ端部を把持し、幅手方向に表に示した延伸倍率となるように延伸した。延伸後、その幅を維持したまま数秒間保持した後、幅方向の張力を緩和させた後、幅保持を解放し、更に125℃に設定された第3乾燥ゾーンで20分間搬送させて、乾燥を行い、幅1.4〜2mの、かつ端部に幅1.5cm、高さ8μmのナーリングを有する所定の膜厚のセルロースエステルフィルムを製造した。
製造したセルロースエステルフィルムについて、ウェブの剥離直後の縦延伸倍率は1.1倍、横延伸倍率は1.1倍、膜厚は50μm、製膜幅は1.5mであった。
【0085】
(実施例1)
上記セルロースエステルフィルムの上に下記のバリア層用塗液1をマイクログラビアコーターを用いて塗布し、90℃で40秒間乾燥後、紫外線ランプを用い照射部の照度が50mW/cm、照射量30mJ/cmで硬化させ、バリア層を形成した。バリア層の膜厚および硬度を測定した。下記ハードコート層用塗液1をマイクログラビアコーターを用いて上記バリア層上に塗布し、90℃で40秒間乾燥後、酸素濃度が1.0%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら、紫外線ランプを用い照射部の照度が200mW/cm、照射量90mJ/cmで硬化させ、ハードコート層を形成し、ハードコートフィルムを得た。ハードコート層の膜厚および硬度を測定した。
【0086】
・バリア層用塗液1
下記材料を攪拌・混合し、バリア層用塗液1を得た。
(樹脂:多官能アクリレート)
ペンタエリスリトールトリアクリレート 20重量部
ペンタエリスリトールテトラアクリレート 50重量部
(光重合開始剤)
イルガキュア184(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 5重量部
イルガキュア907(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 2重量部
(溶媒)
アセトン 70重量部
酢酸メチル 20重量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 10重量部
【0087】
・ハードコート層用塗液1
下記材料を攪拌・混合し、ハードコート層用塗液1を得た。
(樹脂:多官能アクリレート)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 50重量部
ジペンタエリスリトールペンタアクリレート 50重量部
(光重合開始剤)
イルガキュア184(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 1重量部
イルガキュア907(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 4重量部
(溶媒)
メチルイソブチルケトン 100重量部
【0088】
(実施例2〜3)
バリア層およびハードコート層の膜厚を表1に示す値に変更したこと以外、実施例1と同様の方法によりハードコートフィルムを得た。
【0089】
(実施例4〜6)
バリア層用塗液として下記バリア層用塗液2を用いたこと以外、それぞれ実施例1〜3と同様の方法によりハードコートフィルムを得た。
【0090】
・バリア層用塗液2
下記材料を攪拌・混合し、バリア層用塗液2を得た。
(樹脂:多官能アクリレート)
ペンタエリスリトールトリアクリレート 20重量部
ペンタエリスリトールテトラアクリレート 50重量部
(光重合開始剤)
イルガキュア184(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 5重量部
イルガキュア907(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 2重量部
(溶媒)
メチルエチルケトン 50重量部
酢酸メチル 50重量部
【0091】
(比較例1)
バリア層への紫外線照度を200mW/cm、照射量を90mJ/cmとしたこと以外は、実施例2と同様の方法によりハードコートフィルムを得た。
【0092】
(比較例2)
セルロースエステルフィルムの上に下記ハードコート層用塗液2をマイクログラビアコーターを用いて塗布し、90℃で乾燥後、酸素濃度が1.0%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら、紫外線ランプを用い照射部の照度が200mW/cm、照射量90mJ/cmで硬化させ、ハードコート層を形成し、ハードコートフィルムを得た。ハードコート層の膜厚および硬度を測定した。
【0093】
・ハードコート層用塗液2
下記材料を攪拌・混合し、ハードコート層用塗液2を得た。
(樹脂:多官能アクリレート)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 50重量部
ジペンタエリスリトールペンタアクリレート 50重量部
(光重合開始剤)
イルガキュア184(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 1重量部
イルガキュア907(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 4重量部
(溶媒)
アセトン 70重量部
酢酸メチル 20重量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 10重量部
【0094】
(比較例3)
セルロースエステルフィルムの上に下記ハードコート層用塗液1をマイクログラビアコーターを用いて塗布し、90℃で乾燥後、酸素濃度が1.0%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら、紫外線ランプを用い照射部の照度が200mW/cm、照射量90mJ/cmで硬化させ、ハードコート層を形成し、ハードコートフィルムを得た。ハードコート層の膜厚および硬度を測定した。
【0095】
(ハードコートフィルムの評価法)
1.鉛筆硬度
バリア層またはハードコート層を形成した直後のフィルムを、温度23℃、相対湿度55%の条件で24時間調湿した後、JIS S 6006に規定する試験用鉛筆を用いて、JIS K 5400に規定する鉛筆硬度評価法に従い、加重は500gのおもりを用いて、各硬度の鉛筆で、各層表面を5回繰り返して引っ掻き、傷(圧痕含む)が1本以下の表面硬度を測定した。数字が高いほど、高硬度を示す。
【0096】
2.密着性
ハードコートフィルムを3cm×4cmサイズでカットし、ハードコート層の表面に片刃のカミソリの刃を面に対して90°の角度で切り込みを1mm間隔で縦横に11本入れ、1mm角の碁盤目を100個作製した。この上に市販のセロハン製テープを貼り付け、その一端を手で持って垂直に力強く引っ張って剥がし、切り込み線からの貼られたテープ面積に対する薄膜が剥がされた面積の割合を目視で観察し、下記の基準で評価した。
◎:全く剥離されなかった;
○:剥離された面積割合が5%未満であった;
△:剥離された面積割合が10%未満であった(実用上問題あり);
×:剥離された面積割合が10%以上であった。
【0097】
3.耐擦傷性
#0000のスチールウールにより、ハードコート層の表面を1000gの荷重をかけながら10回往復させ、傷の発生の有無を目視により観察し傷の本数を判定した。
【0098】
4.UV吸収剤濃度
ハードコートフィルムを切削して作成した断面についてTOF−SIMS測定を行い、ハードコート層に含まれるUV吸収剤の濃度を定量した。測定はハードコート層の深部である、バリア層との界面から深さ方向に1μm離れた位置について行った。
【0099】
5.可塑剤濃度
可塑剤濃度は、UV吸収剤濃度と同様の測定方法により測定した。
【0100】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明に係るハードコートフィルムの一例の概略構成図である。
【図2】本発明に係るハードコートフィルムの製造方法を実施する装置の一実施形態を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0102】
1:基材、2:バリア層、3:ハードコート層、11:巻き出し機、12:バリア層塗布装置、13:乾燥装置、14:硬化装置(紫外線照射装置)、15:ハードコート層塗布装置、16:乾燥装置、17:硬化装置(紫外線照射装置)、18:巻き取り機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーフィルム基材の上にバリア層を塗設し、該バリア層を表面硬度が鉛筆硬度でH未満となる状態に硬化させた後、該バリア層の上にハードコート層を塗設し、硬化させてなるハードコートフィルム。
【請求項2】
ハードコート層の表面硬度が鉛筆硬度で3H〜6Hである請求項1に記載のハードコートフィルム。
【請求項3】
ハードコート層において、基材に含まれるUV吸収剤の濃度が190ppm以下である請求項1または2に記載のハードコートフィルム。
【請求項4】
ハードコート層の厚さが5μm〜10μmである請求項1〜3のいずれかに記載のハードコートフィルム。
【請求項5】
バリア層の厚さが0.2μm〜5μmである請求項1〜4のいずれかに記載のハードコートフィルム。
【請求項6】
バリア層を形成するための溶剤が基材を膨潤または溶解し得る溶剤を含む請求項1〜5のいずれかに記載のハードコートフィルム。
【請求項7】
ハードコート層において、基材に含まれる可塑剤の濃度が200ppm以下である請求項1〜6のいずれかに記載のハードコートフィルム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−234052(P2009−234052A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−83322(P2008−83322)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】