説明

ハードコートフィルム

【課題】優れた透明性、耐擦傷性及び防汚性、特に優れた指紋ふき取り性及び指紋視認性を有するハードコートフィルムを提供する。
【解決手段】本発明に係るハードコートフィルムは、透明基材及びハードコート層を有するハードコートフィルムであって、前記ハードコートフィルムは、全光線透過率が90%以上、ヘイズ値が1%以下であり、前記ハードコート層は、(B)パーフルオロポリエーテル基の両末端に、それぞれ1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物と、(C)パーフルオロポリエーテル基、ポリシロキサン基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物と、(D)分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する前記(B)成分及び前記(C)成分以外の化合物と、を含有する硬化性組成物の硬化膜であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードコートフィルムに関する。さらに詳しくは、特定の添加剤化合物を含有する、ハードコート膜形成に好適な硬化性組成物を硬化させてなる硬化膜を有するハードコートフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラスチック(ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリエステル、ポリオレフィン、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、トリアセチルセルロース樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、ノルボルネン系樹脂等)、金属、木材、紙、ガラス、スレート等の各種基材表面の傷付き(擦傷)防止や汚染防止のための保護コ−ティング材及び反射防止膜用コート材として、優れた塗工性を有し、かつ各種基材の表面に、硬度、耐擦傷性、防汚性、耐摩耗性、表面滑り性、低カール性、密着性、透明性、耐薬品性及び塗膜面の外観のいずれにも優れた硬化膜を形成し得る硬化性組成物が要請されている。
【0003】
これらの硬化性組成物をフィルム上で硬化したハードコートフィルムは、特に光学用途に使用される場合に、高い透明性と、優れた擦傷性が求められている。
【0004】
このような要請を満たすためのハードコート材として、種々の組成物が提案されているが、硬化性組成物として優れた塗工性を有し、硬化膜とした場合に、高硬度及び耐擦傷性を有し、透明性に優れ、さらに防汚性にも優れるという特性を備えたものは未だ得られていないのが現状である。
【0005】
防汚性を付与する方法として、例えば、特許文献1に(メタ)アクリロイル基を有するポリシロキサンを配合した硬化性組成物が記載されているが、油性マーカー拭き取り性の観点からはさらに改良の余地があった。
【0006】
特許文献2には、反射防止膜表面の滑り性を改善でき、かつ非フッ素系の汎用溶剤に可溶で、薄膜形成の容易な反射防止膜形成用組成物が記載されている。この反射防止膜形成用組成物は、反応性表面改質剤(I)及び反射防止膜材料(II)からなる組成物であって、そのうち、反応性表面改質剤(I)が、(A)ジイソシアネートを3量体化させたトリイソシアネートと(B)少なくとも2種の活性水素含有化合物との反応生成物からなる反応性基含有組成物であり、成分(B)が、少なくとも1つの活性水素を有するパーフルオロポリエーテル、及び活性水素と自己架橋性官能基を有するモノマーを含んでなる組成物からなっている。このような反応性表面改質剤(I)を添加することにより、反射防止膜の表面性状、特に表面滑り性(低摩擦係数化)、表面硬度、耐磨耗性、耐薬品性、汚染拭き取り性、撥水性、撥油性、耐溶剤性等を改善し、本来の塗膜の表面に改質された表面性状を付与することができると記載されている。なお、この反応性表面改質剤(I)と組み合わされる反射防止膜材料(II)は低屈折率層形成用である。
【特許文献1】特開2005−36018号公報
【特許文献2】特開2006−37024号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上述の問題に鑑みてなされたものであり、優れた透明性、耐擦傷性及び防汚性、特に優れた指紋ふき取り性及び指紋視認性を有するハードコートフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明者らは鋭意研究を行い、(D)2個以上の重合性不飽和基を有する化合物を含有する硬化性組成物に、(B)パーフルオロポリエーテル構造を含有する硬化性化合物と(C)ポリシロキサン構造とパーフルオロポリエーテル構造を有する硬化性化合物とを組み合わせて添加することにより、上記諸特性を満足し得る硬化膜が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
即ち、本発明は、下記のハードコートフィルムを提供する。
【0010】
本発明に係るハードコートフィルムは、
透明基材及びハードコート層を有するハードコートフィルムであって、
前記ハードコートフィルムは、全光線透過率が90%以上、ヘイズ値が1%以下であり、
前記ハードコート層は、
(B)パーフルオロポリエーテル基の両末端に、それぞれ1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物と、
(C)パーフルオロポリエーテル基、ポリシロキサン基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物と、
(D)分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する前記(B)成分及び前記(C)成分以外の化合物と、
を含有する硬化性組成物の硬化膜であることを特徴とする。
【0011】
本発明に係るハードコートフィルムにおいて、ヘイズ値が0.5%以下であることができる。
【0012】
本発明に係るハードコートフィルムにおいて、前記(C)成分は、下記一般式(1)で表される化合物であることができる。
【0013】
【化4】

【0014】
[式(1)中、R11はそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基であり、R12は置換基を有していてもよい2価の鎖状又は環状の脂肪族基或いは芳香族基であり、R13はそれぞれ独立に単結合、メチレン基又はエチレン基であり、R14及びR15はそれぞれ独立にフッ化メチレン又は炭素数2〜4のパーフルオロアルキレン基であり、R17は(メタ)アクリロイル基を3個以上有する基であり、R18はヘテロ原子を含んでいてもよいp+1価の有機基であり、sは10〜100の整数であり、tは5〜50の整数であり、pは1又は2である。]
本発明に係るハードコートフィルムにおいて、前記R12は、2価の芳香環であることができる。
【0015】
本発明に係るハードコートフィルムにおいて、前記R18は、下記一般式(2)で表される構造であることができる。
【0016】
【化5】

【0017】
[式(2)中、R16は炭素数2〜10のアルキレン基を表す。]
本発明に係るハードコートフィルムにおいて、前記(B)成分は、下記一般式(3)で表される化合物であることができる。
【0018】
【化6】

【0019】
[式(3)中、Rは(メタ)アクリロイル基を2個以上有する基であり、Rは置換基を有していてもよい2価の鎖状又は環状の脂肪族基或いは芳香族基であり、Rはそれぞれ独立に単結合、メチレン基又はエチレン基であり、R及びRはそれぞれ独立にフッ化メチレン又は炭素数2〜4のパーフルオロアルキレン基であり、nは5〜50の整数である。]
【0020】
本発明に係るハードコートフィルムにおいて、前記Rは、2価の芳香環であることができる。
【0021】
本発明に係るハードコートフィルムにおいて、前記硬化性組成物は、さらに(A)ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、チタニウム、亜鉛、ゲルマニウム、インジウム、スズ、アンチモン及びセリウムよりなる群から選ばれる少なくとも一つの元素の酸化物を主成分とする粒子を含有することができる。
【0022】
本発明に係るハードコートフィルムにおいて、前記(A)成分は、重合性不飽和基及び加水分解性シリル基を有する化合物(Ab)で表面処理された粒子であることができる。
【0023】
本発明に係るハードコートフィルムにおいて、前記(B)成分と前記(C)成分の合計の配合量は、溶剤を除く組成物の合計を100質量%としたときに、0.1〜5質量%の範囲内であることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、透明性、耐擦傷性及び防汚性、特に指紋ふき取り性及び指紋視認性に優れたハードコートフィルムを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明に係る好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は、下記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変型例も含む。
【0026】
1.硬化性組成物
本発明で使用される硬化性組成物(以下、「本発明の組成物」ともいう。)は、下記成分(A)〜(G)を含み得る。これらのうち、成分(B)〜(D)は必須成分であり、成分(A)及び成分(E)〜(G)は必要に応じて添加し得る任意成分である。
【0027】
(A)分子内に重合性不飽和基及び加水分解性シリル基を有する有機化合物(Ab)と結合されていてもよい、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、チタニウム、亜鉛、ゲルマニウム、インジウム、スズ、アンチモン及びセリウムよりなる群から選ばれる少なくとも一つの元素の酸化物を主成分とする粒子(以下、「粒子」ともいう。)
(B)パーフルオロポリエーテル基の両末端に、それぞれ1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物
(C)パーフルオロポリエーテル基、ポリシロキサン基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物
(D)分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する前記(B)成分及び前記(C)成分以外の化合物(以下、「多官能重合性不飽和基含有化合物」ともいう。)
(E)ラジカル重合開始剤
(F)有機溶剤
(G)添加剤
【0028】
本発明で使用される硬化性組成物は、特定の構造を有する成分(B)及び(C)の化合物を併用することにより、耐擦傷性(耐スチールウール性)だけでなく、特に指紋ふき取り性及び指紋視認性とが大きく向上した硬化膜を与える。
【0029】
成分(B)の化合物のみを添加した場合、指紋ふき取り性は向上するものの、指紋視認性及び耐擦傷性が低下してしまう。一方、成分(C)の化合物のみを添加した場合、耐擦傷性は向上するものの、指紋ふき取り性及び指紋視認性が低下してしまう。これらの成分(B)及び(C)を併用することによって、上記各種の特性、特に耐擦傷性、指紋ふき取り性及び指紋視認性が同時にバランス良く改善された硬化膜を与えることができる。
【0030】
以下、(A)〜(G)の各成分について詳細に説明する。
【0031】
1.1 (A)粒子
本発明に用いられる粒子(A)は、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、チタニウム、亜鉛、ゲルマニウム、インジウム、スズ、アンチモン及びセリウムよりなる群から選ばれる少なくとも一つの元素の金属酸化物を主成分とする粒子(Aa)である。また、分子内に重合性不飽和基及び加水分解性シリル基を有する有機化合物(Ab)で表面処理された反応性粒子(Ac)であることも好ましい。
【0032】
1.1.1 金属酸化物を主成分とする粒子(Aa)
金属酸化物粒子(Aa)は、得られる硬化性組成物の硬化膜の無色性を確保する観点から、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、チタニウム、亜鉛、ゲルマニウム、インジウム、スズ、アンチモン及びセリウムよりなる群から選ばれる少なくとも一つの元素の酸化物を主成分とする粒子であることが好ましい。
【0033】
これらの金属酸化物粒子(Aa)としては、例えば、シリカ、アルミナ、ジルコニア、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ゲルマニウム、酸化インジウム、酸化スズ、インジウムスズ酸化物(ITO)、酸化アンチモン、酸化セリウム等の粒子を挙げることができる。中でも、高硬度の観点から、シリカ、アルミナ、ジルコニア及び酸化アンチモンの粒子がより好ましい。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。さらには、金属酸化物粒子(Aa)は、粉体状又は溶剤分散ゾルとして用いるのが好ましい。溶剤分散ゾルとして用いる場合、他の成分との相溶性、分散性の観点から、分散媒は、有機溶剤が好ましい。このような有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類を挙げることができる。中でも、メタノール、イソプロパノール、ブタノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、キシレンが好ましい。
【0034】
金属酸化物粒子(Aa)の数平均粒子径は、得られる硬化膜の用途に応じて適宜選択すればよいが、0.001μm〜2μmが好ましく、0.003μm〜1μmがさらに好ましく、0.005μm〜0.5μmが特に好ましい。数平均粒子径が2μmを超えると、硬化物としたときの透明性が低下したり、硬化膜としたときの表面状態が悪化する傾向がある。また、粒子の分散性を改良するために各種の界面活性剤やアミン類を添加してもよい。
【0035】
ケイ素酸化物粒子(例えば、シリカ粒子)として市販されている商品としては、例えば、コロイダルシリカとして、日産化学工業(株)製のメタノ−ルシリカゾル、IPA−ST、MEK−ST、NBA−ST、XBA−ST、DMAC−ST、ST−UP、ST−OUP、ST−20、ST−40、ST−C、ST−N、ST−O、ST−50、ST−OL等を挙げることができる。また粉体シリカとしては、日本アエロジル(株)製のアエロジル130、アエロジル300、アエロジル380、アエロジルTT600、アエロジルOX50;旭硝子(株)製のシルデックスH31、H32、H51、H52、H121、H122;日本シリカ工業(株)製のE220A、E220;富士シリシア(株)の製SYLYSIA470;日本板硝子(株)製のSGフレ−ク等を挙げることができる。
【0036】
また、アルミナの水分散品としては、日産化学工業(株)製のアルミナゾル−100、−200、−520;アルミナのイソプロパノール分散品としては、住友大阪セメント(株)製のAS−150I;アルミナのトルエン分散品としては、住友大阪セメント(株)製のAS−150T;ジルコニアのトルエン分散品としては、住友大阪セメント(株)製のHXU−110JC;アンチモン酸亜鉛粉末の水分散品としては、日産化学工業(株)製のセルナックス;アルミナ、酸化チタン、酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛等の粉末及び溶剤分散品としては、シーアイ化成(株)製のナノテック;アンチモンドープ酸化スズの水分散ゾルとしては、石原産業(株)製のSN−100D;ITO粉末としては、三菱マテリアル(株)製の製品;酸化セリウム水分散液としては、多木化学(株)製のニードラール等を挙げることができる。
【0037】
金属酸化物粒子(Aa)の形状は、球状、中空状、多孔質状、棒状、板状、繊維状又は不定形状であり、好ましくは球状である。金属酸化物粒子(Aa)の比表面積(窒素を用いたBET比表面積測定法による)は、好ましくは10〜1000m/gであり、より好ましくは100〜500m/gである。これら金属酸化物粒子(Aa)の使用形態は、乾燥状態の粉末、又は水もしくは有機溶剤で分散した状態で用いることができる。例えば、上記の酸化物の溶剤分散ゾルとして当業界に知られている微粒子状の金属酸化物粒子の分散液を直接用いることができる。特に、硬化物に優れた透明性を要求する用途においては酸化物の有機溶剤分散ゾルの利用が好ましい。
【0038】
1.1.2 有機化合物(Ab)
本発明に用いられる有機化合物(Ab)は、重合性不飽和基及び加水分解性シリル基を有する化合物であれば特に限定されない。尚、加水分解性シリル基とは、水と反応してシラノール(Si−OH)基を生成するものであって、例えば、ケイ素に1以上のメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基等のアルコキシ基、アリールオキシ基、アセトキシ基、アミノ基、ハロゲン原子が結合したものを指す。
【0039】
(i)重合性不飽和基
有機化合物(Ab)に含まれる重合性不飽和基としては特に制限はないが、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、プロペニル基、ブタジエニル基、スチリル基、エチニル基、シンナモイル基、マレエート基、アクリルアミド基を好適例として挙げることができる。
【0040】
この重合性不飽和基は、活性ラジカル種により付加重合をする構成単位である。
【0041】
(ii)加水分解性シリル基
有機化合物(Ab)は、分子内に加水分解性シリル基を有する化合物、即ち、加水分解によってシラノール基を生成する化合物である。このようなシラノール基を生成する化合物としては、ケイ素原子にアルコキシ基、アリールオキシ基、アセトキシ基、アミノ基、ハロゲン原子等が結合した化合物を挙げることができるが、ケイ素原子にアルコキシ基又はアリールオキシ基が結合した化合物、即ち、アルコキシシリル基含有化合物又はアリールオキシシリル基含有化合物が好ましい。
【0042】
加水分解性シリル基を有する化合物のシラノール基生成部位は、縮合反応又は加水分解に続いて生じる縮合反応によって、酸化物粒子(Aa)と結合する構成単位である。
【0043】
(iii)好ましい態様
有機化合物(Ab)の好ましい具体例としては、例えば、(メタ)アクリロイルアルキルトリアルコキシシラン、特開平9−100111号公報に記載された化合物等を用いることができる。
【0044】
1.1.3 反応性粒子(Ac)の製造
シラノール基又は加水分解によってシラノール基を生成する基を有する有機化合物(Ab)を金属酸化物粒子(Aa)と混合し、加水分解させ、両者を反応させる。得られる反応性粒子(Ac)中の有機重合体成分即ち加水分解性シランの加水分解物及び縮合物の割合は、通常、乾燥粉体を空気中で完全に燃焼させた場合の質量減少%の恒量値として、例えば空気中で室温から通常800℃までの熱重量分析により求めることができる。
【0045】
金属酸化物粒子(Aa)への有機化合物(Ab)の結合量は、反応性粒子(Ac)(金属酸化物粒子(Aa)及び有機化合物(Ab)の合計)を100質量%として、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.1質量%以上、特に好ましくは1質量%以上である。金属酸化物粒子(Aa)に結合した有機化合物(Ab)の結合量が0.01質量%未満であると、組成物中における反応性粒子(Ac)の分散性が十分でなく、得られる硬化物の透明性、耐擦傷性が十分でなくなる場合がある。また、反応性粒子(Ac)製造時の原料中の金属酸化物粒子(Aa)の配合割合は、好ましくは5〜99質量%であり、さらに好ましくは10〜98質量%である。反応性粒子(Ac)を構成する酸化物粒子(Aa)の含有量は、反応性粒子(Ac)の65〜95質量%であることが好ましい。
【0046】
本発明の組成物中における粒子(A)の含有量は、溶剤を除く成分の合計を100質量%としたときに、0〜74質量%の範囲内であることが好ましく、40〜70質量%の範囲内であることがより好ましい。74質量%を超えると、成膜性が不十分となるおそれがある。
【0047】
尚、粒子(A)の含有量は、固形分を意味し、粒子(A)が溶剤分散ゾルの形態で用いられるときは、その含有量には溶剤の量を含まない。
【0048】
1.2 (B)成分
本発明の組成物における成分(B)の化合物(以下、「化合物(B)」ともいう。)は、パーフルオロポリエーテル基の両末端に、それぞれ1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物である。化合物(B)は、下記一般式(3)で示される、パーフルオロポリエーテル基、ウレタン基及び(メタ)アクリレート基を有する化合物であることが好ましい。これらの基を同時に有することにより、他の成分との相溶性に優れ、ヘイズが低く、透明性に優れた硬化膜を与えることができる。さらに、ポリジアルキルポリシロキサン部分を有していることにより、耐擦傷性が向上すると同時にパーフルオロポリエーテル基を有していることにより、防汚性、特に指紋ふき取り性に優れた硬化膜を与えることができる。
【0049】
本発明の組成物は、この化合物(B)を含有することにより、透明性、耐擦傷性及び防汚性、特に指紋ふき取り性に優れた硬化物を製造することができる。
【0050】
【化7】

【0051】
式(3)中、Rは(メタ)アクリロイル基を3個以上有する基であり、Rは置換基を有していてもよい2価の脂肪族基、脂環族基又は芳香族基であり、Rはそれぞれ独立に単結合、メチレン基又はエチレン基であり、R及びRはそれぞれ独立にフッ化メチレン又は炭素数2〜4のパーフルオロアルキレン基であり、nは5〜50の整数である。
【0052】
本発明で用いる化合物(B)の分子量は、通常2500〜10,000の範囲内であり、2,500〜9,000の範囲内であることが好ましい。ここで、分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフ法によって測定することができる。
【0053】
化合物(B)は、下記の製造方法によって製造することができる。
【0054】
化合物(B)の製造方法は、
(i)下記一般式(4)で示されるパーフルオロポリエーテルジオールと、芳香族ジイソシアネートとを反応させる工程、
HO−R−R−O−(RO)−R−R−OH …(4)
[式(4)中、Rはそれぞれ独立に単結合、メチレン基、又はエチレン基を表し、R及びRはそれぞれ独立にフッ化メチレン又は炭素数2〜4のパーフルオロアルキレン基を表し、nは5〜50の整数である。]
(ii)下記一般式(5)で示されるポリジアルキルシロキサンモノアルコールを反応させる工程、及び
【0055】
【化8】

【0056】
[式(5)中、Rはそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基であり、mは10〜100の整数である。]
(iii)水酸基含有(メタ)アクリレート化合物を反応させる工程を含む。
【0057】
より具体的には、パーフルオロポリエーテルを有するジオール化合物をメチルエチルケトン等の溶剤で希釈、又は無溶剤にて、芳香族ジイソシアネート化合物と混合する。水浴にて10〜20℃に冷却したのち、ジラウリル酸ジブチル錫等のルイス酸触媒を添加し、15〜30℃で1〜3時間撹拌する。その後水浴にて10〜20℃に冷却し、ポリジメチルシロキサンを有するモノアルコールを添加し、15〜30℃で2〜4時間撹拌する。反応器を水浴にて10〜20℃に冷却し、5個以上の(メタ)アクリロイル基と1つの水酸基を有する化合物を混合し、45〜65℃で3〜6時間反応させる。
【0058】
上記一般式(4)で示されるパーフルオロポリエーテルジオールとしては、パーフルオロポリアルキレンオキシドの両末端に水酸基を有する化合物であれば特に限定されないが、パーフルオロポリエチレンオキシドの末端ジオール化合物、パーフルオロポリプロピレンオキシドの末端ジオール化合物が好ましい。
【0059】
また、上記一般式(4)で示されるパーフルオロポリエーテルジオールの市販品の例としては、Fluorolink D10H(ソルベイソレクシス社製)等が挙げられる。
【0060】
上記、芳香族ジイソシアネート化合物としては、メタフェニレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ジメチルベンゼンジイソシアネート、エチルベンゼンジイソシアネート、イソプロピルベンゼンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、1,4−ナフタレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、2,6−ナフタレンジイソシアネート、及び2,7−ナフタレンジイソシアネート等が挙げられ、メタフェニレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネートが好ましい。
【0061】
上記一般式(5)で示されるポリジアルキルシロキサンモノアルコールとしては、公知の化合物を使用することができ、市販品の例としては、サイラプレーンFM0411(m=10〜15)、FM0421(m=65〜75)(チッソ社製)等が挙げられる。
【0062】
上記水酸基含有(メタ)アクリレート化合物としては、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等が挙げられる。
【0063】
本発明の組成物中における化合物(B)の含有量は、溶剤を除く成分の合計量を100質量%としたときに、好ましくは0.01〜5質量%、より好ましくは0.1〜1質量%の範囲内である。0.01質量%未満であると、添加効果が発現しないおそれがあり、5質量%を超えると、塗膜の硬度が損なわれるおそれがある。
【0064】
1.3 (C)成分
本発明の組成物における成分(C)の化合物(以下、「化合物(C)」ともいう。)は、パーフルオロポリエーテル基、ポリシロキサン基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物である。化合物(C)は、下記一般式(1)で示される、ポリシロキサン構造、パーフルオロポリエーテル構造、及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物であることが好ましい。これらの基を同時に有することにより、他の成分との相溶性に優れ、ヘイズが低く、透明性に優れた硬化膜を与えることができる。さらに、ポリジアルキルポリシロキサン部分を有していることにより、耐擦傷性が向上すると同時にパーフルオロポリエーテル基を有していることにより、防汚性、特に指紋ふき取り性及び指紋視認性に優れた硬化膜を与えることができる。
【0065】
化合物(C)を配合することにより、得られる硬化膜に優れた透明性、耐擦傷性及び防汚性を与えることができる。化合物(C)を上記化合物(B)と併用することにより、それぞれを単独で用いた場合には得られない優れた指紋ふき取り性及び指紋視認性を与えることができる。
【0066】
【化9】

【0067】
式(1)中、R11はそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基であり、R12は置換基を有していてもよい2価の脂肪族基、脂環族基又は芳香族基であり、R13はそれぞれ独立に単結合、メチレン基又はエチレン基であり、R14及びR15はそれぞれ独立にフッ化メチレン又は炭素数2〜4のパーフルオロアルキレン基であり、R17は(メタ)アクリロイル基を3個以上有する基であり、R18はヘテロ原子を含んでいてもよいp+1価の有機基であり、sは10〜100の整数であり、tは5〜50の整数であり、pは1又は2である。
【0068】
本発明で用いる化合物(C)の分子量は、通常2500〜10,000の範囲内であり、2,500〜9,000の範囲内であることが好ましい。ここで、分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフ法によって測定することができる。
【0069】
化合物(C)は、下記の製造方法によって製造することができる。
【0070】
化合物(C)の製造方法は、
(i)下記一般式(5)で示されるポリジアルキルシロキサンモノアルコールと、下記(6)で示されるジイソシアネート化合物と、を反応させる工程、
【0071】
【化10】

【0072】
[式(5)中、R11及びsは式(1)で定義した通りである。]
OCN−R12−NCO …(6)
[式(6)中、R12は式(1)で定義した通りである。]
(ii)上記工程(i)で得られた化合物と、下記一般式(4)で示されるパーフルオロポリエーテルジオールと、を反応させる工程、
HO−R13−R14−O−(R15O)−R14−R13−OH …(4)
[式(4)中、R13、R14、R15及びtは式(1)で定義した通りである。]
(iii)上記工程(ii)で得られた化合物と、ジイソシアネート化合物又はトリイソシアネート化合物と、を反応させる工程、及び
(iv)上記工程(iii)で反応させる化合物がジイソシアネート化合物の場合は、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の水酸基及び2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を、上記工程(iii)で反応させる化合物がトリイソシアネート化合物である場合は、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の水酸基及び1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を反応させる工程を含む。
【0073】
上記工程(iii)でジイソシアネート化合物を使用する場合は、工程(i)で使用する化合物と同じ化合物を使用しても良いし、異なる化合物を使用してもよい。
【0074】
より具体的には、水酸基を有するポリジメチルシロキサン化合物(5)をメチルエチルケトン等の溶剤で希釈し、又は無溶剤にて、ジイソシアネート化合物(6)と混合する。水浴にて10〜20℃に冷却したのち、ジラウリル酸ジブチル錫等のルイス酸触媒を添加し、15〜30℃で1〜3時間撹拌する。その後水浴にて10〜20℃に冷却し、両末端に水酸基を有するパーフルオロポリエーテル化合物(4)のメチルエチルケトン溶液、又は無溶剤にて添加し、40〜65℃で1〜3時間撹拌する。反応器を水浴にて10〜20℃に冷却し、ジイソシアネート化合物又はトリイソシアネート化合物を添加し、15〜30℃で1〜3時間攪拌する。水浴にて10〜20℃に冷却し、(メタ)アクリロイル基と1つの水酸基を有する化合物を混合し、45〜65℃で3〜6時間反応させることで製造することができる。
【0075】
本発明の組成物中における化合物(C)の含有量は、溶剤を除く成分の合計量を100質量%としたときに、好ましくは0.01〜5質量%、より好ましくは0.1〜1質量%の範囲内である。0.01質量%未満であると、添加効果が発現しないおそれがあり、5質量%を超えると、塗膜の硬度が損なわれるおそれがある。
【0076】
1.4 (D)多官能重合性不飽和基含有化合物
本発明に用いられる多官能重合性不飽和基含有化合物(D)は、組成物の成膜性を高めるために好適に用いられる。多官能重合性不飽和基含有化合物(D)としては、分子内に2個以上の重合性不飽和基を含むものであれば、前述の(B)及び(C)成分を除くほか、特に制限はないが、例えば、(メタ)アクリルエステル類、ビニル化合物類を挙げることができる。このうち、(メタ)アクリルエステル類が好ましい。
【0077】
(メタ)アクリルエステル類としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、エチレングルコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングルコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングルコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングルコールジ(メタ)アクリレート、ビス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート類、及びこれらの水酸基へのエチレンオキシド又はプロピレンオキシド付加物のポリ(メタ)アクリレート類、分子内に2以上の(メタ)アクリロイル基を有するオリゴエステル(メタ)アクリレート類、オリゴエーテル(メタ)アクリレート類、及びオリゴエポキシ(メタ)アクリレート類等を挙げることができる。この中では、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等が好ましい。
【0078】
ビニル化合物類としては、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル等を挙げることができる。
【0079】
このような多官能重合性不飽和基含有化合物(D)の市販品としては、例えば、東亞合成(株)製のアロニックスM−400、M−404、M−408、M−450、M−305、M−309、M−310、M−315、M−320、M−350、M−360、M−208、M−210、M−215、M−220、M−225、M−233、M−240、M−245、M−260、M−270、M−1100、M−1200、M−1210、M−1310、M−1600、M−221、M−203、TO−924、TO−1270、TO−1231、TO−595、TO−756、TO−1343、TO−902、TO−904、TO−905、TO−1330;日本化薬(株)製のKAYARAD D−310、D−330、DPHA、DPCA−20、DPCA−30、DPCA−60、DPCA−120、DN−0075、DN−2475、SR−295、SR−355、SR−399E、SR−494、SR−9041、SR−368、SR−415、SR−444、SR−454、SR−492、SR−499、SR−502、SR−9020、SR−9035、SR−111、SR−212、SR−213、SR−230、SR−259、SR−268、SR−272、SR−344、SR−349、SR−601、SR−602、SR−610、SR−9003、PET−30、T−1420、GPO−303、TC−120S、HDDA、NPGDA、TPGDA、PEG400DA、MANDA、HX−220、HX−620、R−551、R−712、R−167、R−526、R−551、R−712、R−604、R−684、TMPTA、THE−330、TPA−320、TPA−330、KS−HDDA、KS−TPGDA、KS−TMPTA;共栄社化学(株)製のライトアクリレート PE−4A、DPE−6A、DTMP−4A等を挙げることができる。
【0080】
本発明の組成物における多官能重合性不飽和基含有化合物(D)の配合量は、溶剤を除く成分の合計を100質量%としたときに、好ましくは20〜99質量%、より好ましくは25〜98質量%の範囲内である。(D)成分が上記範囲で配合されることで、高い硬度の硬化膜を得ることができる。
【0081】
1.5 (E)ラジカル重合開始剤
本発明の組成物には、上記成分(B)〜(D)以外に、(E)ラジカル重合開始剤を配合することが好ましい。
【0082】
このような(E)ラジカル重合開始剤としては、例えば、熱的に活性ラジカル種を発生させる化合物(熱重合開始剤)、及び放射線(光)照射により活性ラジカル種を発生させる化合物(放射線(光)重合開始剤)等の汎用されているものを挙げることができ、放射線(光)重合開始剤が好ましい。
【0083】
放射線(光)重合開始剤としては、光照射により分解してラジカルを発生して重合を開始せしめるものであれば特に制限はなく、例えば、アセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、キサントン、フルオレノン、ベンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1,4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン)等を挙げることができる。
【0084】
放射線(光)重合開始剤の市販品としては、例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製のイルガキュア 184、369、651、500、819、907、784、2959、CGI1700、CGI1750、CGI1850、CG24−61、ダロキュア 1116、1173;BASF社製のルシリン TPO、8893;UCB社製のユベクリル P36;フラテツリ・ランベルティ社製のエザキュアーKIP150、KIP65LT、KIP100F、KT37、KT55、KTO46、KIP75/B等を挙げることができる。
【0085】
本発明の組成物中における(E)ラジカル重合開始剤の配合量は、溶剤を除く成分の合計を100質量%としたときに、好ましくは0.01〜20質量%、より好ましくは0.1〜10質量%の範囲内である。0.01質量%未満であると、硬化物としたときの硬度が不十分となるおそれがあり、20質量%を超えると、塗膜の硬度が損なわれるおそれがある。
【0086】
1.6 (F)有機溶剤
本発明の組成物は、塗膜の厚さを調節するために、有機溶剤で希釈して用いることができる。例えば、反射防止膜や被覆材として用いる場合の粘度は、通常0.1〜50,000mPa・秒/25℃であり、好ましくは0.5〜10,000mPa・秒/25℃である。
【0087】
有機溶剤(F)としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類等が挙げられる。
【0088】
本発明の組成物において必要に応じて用いられる有機溶剤(F)の配合量は、溶剤を除く成分の合計を100質量部としたときに、50〜10,000質量部の範囲内であることが好ましい。溶剤の配合量は、塗布膜厚、組成物の粘度等を考慮して適宜決めることができる。
【0089】
1.7 (G)添加剤
本発明の組成物には、上記成分の他、必要に応じて熱重合開始剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、レベリング剤等を添加することができる。
【0090】
好ましい熱重合開始剤としては、例えば、過酸化物、アゾ化合物を挙げることができ、具体例としては、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチル−パーオキシベンゾエート、アゾビスイソブチロニトリル等を挙げることができる。
【0091】
本発明の組成物は、上記(A)〜(G)成分をそれぞれ添加して、室温又は加熱条件下で混合することにより調製することができる。具体的には、ミキサ、ニーダー、ボールミル、三本ロール等の混合機を用いて調製することができる。ただし、加熱条件下で混合する場合には、重合開始剤や重合性不飽和基の分解開始温度以下で行うことが好ましい。
【0092】
上記のようにして得られた本発明の組成物は、熱及び放射線(光)の少なくとも一方によって硬化させることができる。
【0093】
2.硬化膜
本発明の硬化膜は、前記硬化性組成物を種々の基材、例えば、プラスチック基材にコーティングして硬化させることにより得ることができる。具体的には、組成物をコーティングし、好ましくは0〜200℃で揮発成分を乾燥させた後、熱及び放射線の少なくとも一方で硬化処理を行うことにより被覆成形体として得ることができる。
【0094】
熱による場合、その熱源としては、例えば、電気ヒーター、赤外線ランプ、熱風等を用いることができる。熱による場合の好ましい硬化条件は20〜150℃であり、10秒〜24時間の範囲内で行われる。
【0095】
放射線(光)による場合、その線源としては、組成物をコーティング後短時間で硬化させることができるものである限り特に制限はないが、例えば、赤外線の線源として、ランプ、抵抗加熱板、レーザー等を、また可視光線の線源として、日光、ランプ、蛍光灯、レーザー等を、また紫外線の線源として、水銀ランプ、ハライドランプ、レーザー等を、また電子線の線源として、市販されているタングステンフィラメントから発生する熱電子を利用する方式、金属に高電圧パルスを通じて発生させる冷陰極方式及びイオン化したガス状分子と金属電極との衝突により発生する2次電子を利用する2次電子方式を挙げることができる。また、アルファ線、ベータ線及びガンマ線の線源として、例えば、60Co等の核分裂物質を挙げることができ、ガンマ線については加速電子を陽極へ衝突させる真空管等を利用することができる。これら放射線は1種単独で又は2種以上を同時に又は一定期間をおいて照射することができる。放射線による場合、紫外線又は電子線を用いることが好ましい。そのような場合、好ましい紫外線の照射光量は0.01〜10J/cmであり、より好ましくは、0.1〜2J/cmである。また、好ましい電子線の照射条件は、加速電圧は10〜300kV、電子密度は0.02〜0.30mA/cmであり、電子線照射量は1〜10Mradである。
【0096】
本発明の組成物は被覆材(ハードコート)や反射防止膜の用途に好適であり、反射防止や被覆の対象となる基材としては、例えば、プラスチック、金属、木材、紙、ガラス、スレート等を挙げることができる。これら基材の形状は板状、フィルム状又は3次元成形体でもよく、コーティング方法は、通常のコーティング方法、例えばディッピングコート、スプレーコ−ト、フローコ−ト、シャワーコート、ロールコート、スピンコート、刷毛塗り等を挙げることができる。これらコーティングにおける塗膜の厚さは、乾燥、硬化後、通常0.1〜400μmであり、好ましくは、1〜200μmである。
【0097】
本発明の硬化膜は、高硬度及び耐擦傷性を有するとともに、特に指紋ふき取り性及び指紋視認性に優れ、また、組成により、表面滑り性に優れた塗膜(被膜)を形成し得る特徴を有しているので、CD、DVD、MO等の記録用ディスク、プラスチック光学部品、タッチパネル、フィルム型液晶素子、プラスチック容器、建築内装材としての床材、壁材、人工大理石等の傷付き(擦傷)防止や汚染防止のための保護コーティング材、又は、フィルム型液晶素子、タッチパネル、プラスチック光学部品等の反射防止膜等として特に好適に用いられる。
【0098】
3.透明基材
本発明で使用される透明基材は、光学用途に使用されている素材のものであれば特に限定されないが、高度な透明性を有する観点から、ポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロース、ポリカーボネート、ポリメタクリレート、ポリスチレン、ポリエステル、ポリオレフィン、エポキシ、メラミン、ABS、AS、シクロオレフィン系樹脂等の各種プラスチックフィルムであることが好ましい。
【0099】
使用される透明基材の厚さは、用途により適宜変更することができるが、例えば、10〜5000μmの厚さの基材を使用することができる。また、本発明のハードコートフィルムが高い全光線透過率を得るために、透明基材自体の全光線透過率が92%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましい。更に、上記硬化性組成物を塗布する前に、コロナ放電処理、プラズマ処理、易接着処理等の表面処理を行うこともできる。
【0100】
4.ハードコートフィルム
本発明のハードコートフィルムは、透明基材上に上記硬化膜を積層して得ることができる。好適な透明基材や、硬化膜の積層方法は、前述の通りである。本発明のハードコートフィルムは全光線透過率が90%以上であることが必要である。全光線透過率が90%に満たないと、用途によっては視認性が劣る場合がある。また、フィルムのヘイズ値が1%を超えると光学用途に使用した場合に像の鮮明度が劣るため好ましくない。このような理由から、フィルムのヘイズは0.5%以下であることが好ましい。本発明のハードコートフィルムは、高い透明性と硬度を有し、かつ、防汚性、特に指紋ふき取り性及び指紋視認性にも優れているため、携帯電話等の指紋が付着し易い場面で用いられる各種表示装置の表面保護フィルム等として好適である。
【0101】
5.実施例
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0102】
5.1 合成例1
下記一般式(7)で示される化合物1(成分(B)に相当)の合成方法を以下に示す。
【0103】
【化11】

【0104】
[式中、nは、6〜10である。]
撹拌機を取り付けた3つ口フラスコに、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(吉富ファインケミカル社製、「ヨシノックスBHT」)0.024g、パーフルオロポリエーテルジオール(ソルベイソレクシス社製、「Fluorolink D10H」)52.89g、2,4−トリレンジイソシアナート(三井化学ポリウレタン社製、「TOLDY−100」)12.27g及びメチルエチルケトン(丸善石油化学株式会社製)を仕込み、水浴にて冷却した。そこにジラウリル酸ジブチル錫(共同薬品社製、「CASTIN−D」)0.080gを添加した後、60℃まで昇温し、1.5時間加熱した。次いで、反応混合物を水浴にて冷却し、ここに、テトラメチロールメタントリアクリレート(新中村化学株式会社製、「NKエステル A−TMM−3LM−N」)34.84gをメチルエチルケトンで固形分濃度50質量%に希釈したものを添加した。60℃まで昇温し、4時間加熱した。このようにして上記一般式(7)で示される化合物1を得た。
【0105】
5.2 合成例2
下記一般式(8)で示される化合物2(成分(B)に相当)の合成方法を以下に示す。
【0106】
【化12】

【0107】
[式中、nは、6〜10である。]
撹拌機を取り付けた3つ口フラスコに、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(吉富ファインケミカル社製、「ヨシノックスBHT」)0.024g、パーフルオロポリエーテルジオール(ソルベイソレクシス社製、「Fluorolink D10H」)37.00g、2,4−トリレンジイソシアナート(三井化学ポリウレタン社製、「TOLDY−100」)8.58g、及びメチルエチルケトン(丸善石油化学株式会社製)45.58gを仕込み、水浴にて冷却した。そこにジラウリル酸ジブチル錫(共同薬品社製、「CASTIN−D」)0.080gを添加した後、60℃まで昇温し、1.5時間加熱した。次いで、反応混合物を水浴にて冷却し、ここに、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(東亞合成株式会社製、「アロニックスM403」)54.42gをメチルエチルケトンで固形分50質量%に希釈して添加した。反応液を60℃まで昇温し、4時間加熱し上記一般式(8)で示される化合物2を得た。
【0108】
5.3 合成例3
下記一般式(9)で示される化合物3(成分(C)に相当)の合成方法を以下に示す。
【0109】
【化13】

【0110】
[式中、Meはメチル基を、PETAはペンタエリスリトールトリアクリレートに由来する基を示し、m=65〜75、n=10〜15である。]
撹拌機、還流管及び乾燥空気導入管を備えた反応容器に、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(吉富ファインケミカル社製、「ヨシノックスBHT」)0.024g[0.1mmol]、ポリジメチルシロキサンモノオール(チッソ株式会社製、「サイラプレーンFM0421」)60.96g、2,4−トリレンジイソシアナート(三井化学ポリウレタン社製、「TOLDY−100」)2.12g[11.9mmol]及びメチルエチルケトン(丸善石油化学株式会社製)63.08gを加え、水浴にて冷却した。10℃±5℃にてジラウリル酸ジブチル錫(共同薬品社製、「CASTIN−D」)0.080g[0.1mmol]を添加した後、室温にて1.5〜2.0時間攪拌した。次いで、反応混合物を水浴にて冷却し、ここに、メチルエチルケトン18.29g、パーフルオロポリエーテルジオール(ソルベイソレクシス製、「Fluorolink D10H」)18.29gを添加した後、60℃まで昇温し、同温度で2時間加熱した。反応混合物を水浴にて冷却し、ここに、メチルエチルケトンで固形分濃度50質量%に希釈したトリイソシアナ−ト(住化バイエルウレタン株式会社製、「スミジュールN3300」)6.15g[12.2mmol]を添加し、室温で2時間攪拌した。次いで、反応混合物を水浴にて冷却し、ここに、メチルエチルケトンで固形分濃度50質量%に希釈したペンタエリスリトールトリアクリレート(新中村化学株式会社製)12.47gを添加し、60℃に昇温し、同温度で4時間加熱を行い、上記一般式(9)で示される化合物3のメチルエチルケトン溶液200gを得た。
【0111】
5.4 合成例4
下記一般式(9)で示される化合物4(成分(C)に相当)の合成方法を以下に示す。
【0112】
【化14】

【0113】
[式中、Meはメチル基を、PETAはペンタエリスリトールトリアクリレートに由来する基を示し、m=10〜15、n=10〜15である。]
撹拌機、還流管及び乾燥空気導入管を備えた反応容器に、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(吉富ファインケミカル社製、「ヨシノックスBHT」)0.024g[0.1mmol]、ポリジメチルシロキサンモノオール(チッソ株式会社製、「サイラプレーンFM0411」)23.80g、2,4−トリレンジイソシアナート(三井化学ポリウレタン社製、「TOLDY−100」)4.14g[23.8mmol]及びメチルエチルケトン(丸善石油化学株式会社製)27.94gを加え、水浴にて冷却した。10℃±5℃にてジラウリル酸ジブチル錫(共同薬品社製、「CASTIN−D」)0.080g[0.1mmol]を添加した後、室温にて1.5〜2.0時間攪拌した。次いで、反応混合物を水浴にて冷却し、ここに、メチルエチルケトン35.70g、パーフルオロポリエーテルジオール(ソルベイソレクシス製、「Fluorolink D10H」)35.70gを添加した後、60℃まで昇温し、同温度で2時間加熱する。反応混合物を水浴にて冷却し、ここに、メチルエチルケトンで固形分濃度50質量%に希釈したトリイソシアナ−ト(住化バイエルウレタン株式会社製、「スミジュールN3300」)12.01g[23.8mmol]を添加し、室温で2時間攪拌した。次いで、反応混合物を水浴にて冷却し、ここに、メチルエチルケトンで固形分濃度50質量%に希釈したペンタエリスリトールトリアクリレート(新中村化学株式会社製)24.35gを添加し、60℃に昇温し、同温度で4時間加熱を行い、上記一般式(9)で示される化合物4のメチルエチルケトン溶液200gを得た。
【0114】
5.5 製造例1
5.5.1 有機化合物(Ab)の合成
下記一般式(10)及び(11)で示される有機化合物(Ab)の合成方法を以下に示す。
【0115】
【化15】

【0116】
【化16】

【0117】
乾燥空気中、メルカプトプロピルトリメトキシシラン221質量部、ジブチル錫ジラウレート1質量部からなる溶液に対し、イソホロンジイソシアネート222質量部を攪拌しながら50℃で1時間かけて滴下後、70℃で3時間加熱攪拌した。これに新中村化学製NKエステルA−TMM−3LM−N(ペンタエリスリトールトリアクリレート60質量%とペンタエリスリトールテトラアクリレート40質量%とからなる。このうち、反応に関与するのは、水酸基を有するペンタエリスリトールトリアクリレートのみである。)549質量部を30℃で1時間かけて滴下後、60℃で10時間加熱攪拌することで重合性不飽和基を含む有機化合物(Ab)を得た。生成物中の残存イソシアネート量をFT−IRで分析したところ0.1%以下であり、反応がほぼ定量的に終了したことを示した。生成物の赤外吸収スペクトルは原料中のメルカプト基に特徴的な2550cm−1の吸収ピーク及び原料イソシアネート化合物に特徴的な2260cm−1の吸収ピークが消失し、新たにウレタン結合及びS(C=O)NH−基に特徴的な1660cm−1のピーク及びアクリロキシ基に特徴的な1720cm−1のピークが観察され、重合性不飽和基としてのアクリロキシ基と−S(C=O)NH−、ウレタン結合を共に有するアクリロキシ基修飾アルコキシシランが生成していることを示した。以上により、前記式(10)及び(11)で示される有機化合物(Ab)が合計で773質量部とペンタエリスリトールテトラアクリレート220質量部が得られた。
【0118】
5.5.2 反応性粒子(A)の製造
上記「5.5.1 有機化合物(Ab)の合成」で製造した組成物2.98質量部(有機化合物(Ab)を2.32質量部含む。)、シリカ粒子分散液(Aa)(固形分:35質量%、MEK−ST−L、数平均粒子径0.022μm、日産化学工業(株)製)89.90質量部、イオン交換水0.12質量部、及びp−ヒドロキシフェニルモノメチルエーテル0.01質量部の混合液を、60℃、4時間攪拌後、オルト蟻酸メチルエステル1.36質量部を添加し、さらに1時間同一温度で加熱攪拌することで反応性粒子分散液を得た。この分散液をアルミ皿に2g秤量後、175℃のホットプレート上で1時間乾燥、秤量して固形分含量を求めたところ、36.5%であった。また、分散液を磁性るつぼに2g秤量後、80℃のホットプレート上で30分予備乾燥し、750℃のマッフル炉中で1時間焼成した後の無機残渣より、固形分中の無機含量を求めたところ、95%であった。
【0119】
5.5.3 ハードコート形成用硬化性組成物の製造
(1)実施例1
「5.5.2 反応性粒子(A)の製造」で製造した反応性粒子178.3質量部(固形分量65.08質量部)を固形分量70%になるまで濃縮し、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬社製、「KAYARAD DPHA」)31.57質量部、光開始剤(チバスペシャルティケミカルズ社製、「イルガキュア184」)3.00質量部及び合成例1で製造した化合物1を0.3質量部、合成例3で製造した化合物3を0.05質量部添加し、固形分濃度が50%になるようにメチルエチルケトンを添加し、撹拌して硬化性組成物を得た。
【0120】
(2)実施例2〜5、比較例1〜8
実施例2〜5、比較例1〜8に係るハードコート形成用硬化性組成物は、表1に示す組成とした以外は実施例1と同様にして製造した。
【0121】
得られた各硬化性組成物の溶剤を除く成分の合計を100質量%としたときの各成分の割合を下記表1に示す。
【0122】
5.5.4 硬化膜の作製
実施例及び比較例で製造した各硬化性組成物を、バーコーター(12ミル)を用いて、厚さ80μmのTACフィルム基材上に塗工した。80℃で2分乾燥した後、高圧水銀灯を用いて空気下で照射量1.0J/cmの強度で紫外線を照射して硬化膜を作製した。
【0123】
5.6 硬化膜の物性評価
得られた硬化膜のヘイズ、全光線透過率、指紋ふき取り性、指紋視認性、耐擦傷性及び接触角を測定又は評価した。結果を表1に示す。
【0124】
(1)ヘイズの測定
硬化膜のヘイズ(%)を、カラーヘイズメーター(スガ試験機(株)製)を用いて、JIS K7105に準拠して測定した。
【0125】
(2)全光線透過率の測定
硬化膜の全光線透過率(%)を、カラーヘイズメーター(スガ試験機(株)製)を用いて、JIS K7105に準拠して測定した。
【0126】
(3)指紋ふき取り性試験
フィルムの裏面を黒打ちし、フィルム表面に指紋を付着させた。その後、テッシュで拭き取り、下記評価基準に従って評価した。
◎:容易に拭き取れる。
○:拭き取れる。
△:拭き取りにくい。
×:拭き取れない。
【0127】
(4)指紋視認性試験
下記評価基準に従って評価した。
フィルムの裏面を黒打ちし、フィルム表面に指紋を付着させた。その後、蛍光灯下で、フィルムの真上から観察し、下記評価基準に従って評価した。
○:見えにくい。
×:見えやすい。
【0128】
(5)耐擦傷性試験(耐スチールウール試験)
スチールウール(ボンスターNo.0000、日本スチールウール(株)製)を学振型摩擦堅牢度試験機(「AB−301」、テスター産業(株)製)に取りつけ、硬化膜の表面を荷重900g/cmの条件で10回繰り返し擦過し、当該硬化膜の表面における傷の発生の有無を目視で確認し、下記評価基準に従って評価した。
◎:硬化フィルムに傷が発生しない(無傷)。
○:硬化フィルムに数本の傷が発生する。
△:硬化フィルムに多数の傷が発生する。
×:硬化フィルムが剥離する。
【0129】
(6)接触角の測定
水及びヘキサデカンに対する、硬化膜の接触角を協和界面化学株式会社製の接触角計「Drop Master500」を用いてJIS6768に準拠して測定した。
【0130】
【表1】

【0131】
表1中の略号等は下記のものを表す。
【0132】
反応性粒子:上記「5.5.2 反応性粒子(A)の製造」で製造した反応性基修飾コロイダルシリカ
化合物1:合成例1で製造した成分(B)の化合物
化合物2:合成例2で製造した成分(B)の化合物
化合物3:合成例3で製造した成分(C)の化合物
化合物4:合成例4で製造した成分(C)の化合物
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート:日本化薬社製、「KAYARAD DPHA」
Irg.184:チバスペシャルティケミカルズ社製の光重合開始剤
FM0421:チッソ社製、ポリジアルキルシロキサンモノアルコール
D1OH:ソルベイソレクシス社製、パーフルオロポリエーテルジオール
表1の結果から、本発明における成分(B)及び(C)の2種類の化合物が配合された硬化性組成物は、透明性が高く、指紋拭き取り性、指紋視認性及び耐擦傷性(耐スチールウール性)のいずれにも優れていることがわかった。
【0133】
本発明における成分(B)の化合物のみしか配合していない比較例1及び2では、透明性及び接触角には優れているものの、指紋視認性及び耐擦傷性(耐スチールウール性)が大きく劣っていることがわかった。また、成分(C)の化合物のみしか配合している比較例3及び4では、透明性及び耐擦傷性(耐スチールウール性)には優れているものの、指紋拭き取り性及び指紋視認性が大きく劣っていることがわかった。成分(B)および成分(C)のいずれの化合物も配合していない比較例7では、指紋拭き取り性、指紋視認性及び耐擦傷性が大きく劣り、水及びヘキサデカンに対する接触角も小さくなった。
【産業上の利用可能性】
【0134】
本発明の硬化性組成物は、透明性、耐擦傷性及び防汚性、特に指紋拭き取り性及び指紋視認性に優れた硬化膜を製造するのに有用である。
【0135】
本発明の硬化膜は、透明性、耐擦傷性及び防汚性、特に指紋拭き取り性及び指紋視認性に優れているため、特にハードコートとして有用である。
【0136】
また、本発明の硬化膜は、透明性に優れているため光学用途に好適であり、さらに、指紋ふき取り性及び指紋視認性にも優れているため、指紋が付着し易い場面で使用されるハードコートとして特に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材及びハードコート層を有するハードコートフィルムであって、
前記ハードコートフィルムは、全光線透過率が90%以上、ヘイズ値が1%以下であり、
前記ハードコート層は、
(B)パーフルオロポリエーテル基の両末端に、それぞれ1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物と、
(C)パーフルオロポリエーテル基、ポリシロキサン基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物と、
(D)分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する前記(B)成分及び前記(C)成分以外の化合物と、
を含有する硬化性組成物の硬化膜であることを特徴とする、ハードコートフィルム。
【請求項2】
請求項1において、
ヘイズ値が0.5%以下であることを特徴とする、ハードコートフィルム。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記(C)成分は、下記一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする、ハードコートフィルム。
【化1】

[式(1)中、R11はそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基であり、R12は置換基を有していてもよい2価の鎖状又は環状の脂肪族基或いは芳香族基であり、R13はそれぞれ独立に単結合、メチレン基又はエチレン基であり、R14及びR15はそれぞれ独立にフッ化メチレン又は炭素数2〜4のパーフルオロアルキレン基であり、R17は(メタ)アクリロイル基を3個以上有する基であり、R18はヘテロ原子を含んでいてもよいp+1価の有機基であり、sは10〜100の整数であり、tは5〜50の整数であり、pは1又は2である。]
【請求項4】
請求項3において、
前記R12は、2価の芳香環であることを特徴とする、ハードコートフィルム。
【請求項5】
請求項3または請求項4において、
前記R18は、下記一般式(2)で表される構造であることを特徴とする、ハードコートフィルム。
【化2】

[式(2)中、R16は炭素数2〜10のアルキレン基を表す。]
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか一項において、
前記(B)成分は、下記一般式(3)で表される化合物であることを特徴とする、ハードコートフィルム。
【化3】

[式(3)中、Rは(メタ)アクリロイル基を2個以上有する基であり、Rは置換基を有していてもよい2価の鎖状又は環状の脂肪族基或いは芳香族基であり、Rはそれぞれ独立に単結合、メチレン基又はエチレン基であり、R及びRはそれぞれ独立にフッ化メチレン又は炭素数2〜4のパーフルオロアルキレン基であり、nは5〜50の整数である。]
【請求項7】
請求項6において、
前記Rは、2価の芳香環であることを特徴とする、ハードコートフィルム。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか一項において、
前記硬化性組成物は、さらに(A)ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、チタニウム、亜鉛、ゲルマニウム、インジウム、スズ、アンチモン及びセリウムよりなる群から選ばれる少なくとも一つの元素の酸化物を主成分とする粒子を含有することを特徴とする、ハードコートフィルム。
【請求項9】
請求項8において、
前記(A)成分は、重合性不飽和基及び加水分解性シリル基を有する化合物(Ab)で表面処理された粒子であることを特徴とする、ハードコートフィルム。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のいずれか一項において、
前記(B)成分と前記(C)成分の合計の配合量は、溶剤を除く組成物の合計を100質量%としたときに、0.1〜5質量%の範囲内である、ハードコートフィルム。

【公開番号】特開2010−143092(P2010−143092A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−323233(P2008−323233)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【特許番号】特許第4273362号(P4273362)
【特許公報発行日】平成21年6月3日(2009.6.3)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】