説明

ハードコートフィルム

【課題】本発明が解決しようとする課題は、高いハードコ−ト性能と防指紋性能を両立するハードコート層により、透明度の高いハードコートフィルムを提供するものである。
【解決手段】基材の少なくとも一方の面にハードコート層を設けたハードコートフィルム
において、前記ハードコート層が、
(a)電離性放射線により重合する化合物
(b)電離性放射線により重合する疎水性の多官能高分子樹脂
(c)N-ビニルホルムアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、フェノキシ基含有(メタ)アクリレートより選ばれる少なくとも1種
を少なくとも含有する塗液を基材に塗布乾燥した後、電離性放射線を照射することで硬化してなるハードコート層であることを特徴とするハードコートフィルム。
さらには、前記疎水性の多官能高分子樹脂が、ポリブタジエン骨格を有するウレタンアクリレ−トであることを特徴とする前記のハードコートフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードコートフィルムに関する発明であって、指紋が付きにくい表面処理が施された、即ち防指紋性を付与された透明タイプのハードコートフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像表示素子としての液晶表示装置である情報端末が普及している。これらの情報端末などの入力装置として、液晶表示素子の上に透明タッチパネルを載せたもの、特に価格などの点から抵抗膜方式のタッチパネルが一般的に用いられており、このようなタッチパネルの表面部材としてハードコートフィルムが用いられている。また、携帯電話やスマートフォンなどのモバイル機器の最表面に、傷付防止を目的としてハードコートフィルムが粘着層を介して貼着されるケースも多く見受けられる。
このようなハードコートフィルムは、操作者が直接手で触れる部分に使われるため、皮脂汚れ、特に指紋が付着して、画像が見難くなったり、見映えが悪くなったりすることがある。
【0003】
そこで、ハードコート層上に防汚層を設けたハードコートフィルム(特許文献1)やハードコ−ト層にマット化剤としての粒子を含有させて表面をマット化し、指紋消去性を付与したハードコートフィルム(特許文献2)が提案されている。
【0004】
しかしながら、ハードコート層上に防汚層を設けたハードコートフィルムでは、ハードコート層が最表面とならないために、十分な表面硬度が得られず、また、防汚層を形成するための工数が増えるなどの問題があった。
また、ハードコート層に粒子を含有するハードコートフィルムでは、十分な防指紋効果を得ようとすると、粒子の量を多くする必要があり、十分な透明度が得られなかった。また非常に粒径の小さな粒子を使用すれば透明性が得られたが、粒子が凝集して表面に析出し、表面に異物として現れる問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−94588
【特許文献2】WO2004/046230
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、高いハードコ−ト性能と防指紋性能を両立するハードコート層により、透明度の高いハードコートフィルムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明は、基材の少なくとも一方の面にハードコート層を設けたハードコートフィルムにおいて、前記ハードコート層が、
(a)電離性放射線により重合する化合物
(b)電離性放射線により重合する疎水性の多官能高分子樹脂
(c)N-ビニルホルムアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、フェノキシ基含有(メタ)アクリレートより選ばれる少なくとも1種
を少なくとも含有する塗液を基材に塗布乾燥した後、電離性放射線を照射することで硬化してなるハードコート層であることを特徴とするハードコートフィルムである。

第2発明は、前記(b)電離性放射線により重合する疎水性の多官能高分子樹脂が、ポリブタジエン骨格を有するウレタンアクリレ−トであることを特徴とする第1発明記載のハードコートフィルムである。
第3発明は、前記(b)電離性放射線により重合する疎水性の多官能高分子樹脂の含有比率が、ハードコ−ト層の0.1〜8重量%であることを特徴とする第1〜2発明記載のハードコートフィルムである。
第4発明は、前記(c)N-ビニルホルムアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、フェノキシ基含有(メタ)アクリレートより選ばれる少なくとも1種の含有比率が、ハードコート層の5〜25重量%であることを特徴とする請求項1〜3記載のハードコートフィルムである。
【発明の効果】
【0008】
第1発明のように、ハードコート層に電離性放射線により重合する化合物と、電離性放射線により重合する疎水性の多官能高分子樹脂と、N-ビニルホルムアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、フェノキシ基含有(メタ)アクリレートより選ばれる少なくとも1種とを含有することによって、粒子を含有せずに高い防指紋効果が得られるので、透明性と防指紋効果を両立したハードコートフィルムが得られる。
第2発明のように、前記疎水性の多官能高分子樹脂をポリブタジエン骨格を有するウレタンアクリレ−トとすることにより、より高い防指紋効果が得られる。
第3、4発明のように、前記電離性放射線により重合する疎水性の多官能高分子樹脂の含有比率がハードコ−ト層の0.1〜8重量%であり、N-ビニルホルムアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、フェノキシ基含有(メタ)アクリレートより選ばれる少なくとも1種の含有比率が5〜25重量%とすることにより、より高いハードコート効果と防指紋性を両立し、さらに透明性に優れたハードコートフィルムが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明で使用するハードコ−トフィルムの基材は、各種のプラスティックからなるフィルムであれば、特に限定されない。例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、フッ素樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、ポリアミドイミド、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、セルロース系樹脂等よりなるフィルムが例示されるが、これらに限定されるものではない。取り扱い性、貼着層との接着力の向上、コストの面より好ましくはポリエステルフィルムを用いるとよい。基材の厚みは、用途に応じて適宜選択すればよいが、通常4〜400μmの範囲のものを用いる。
【0010】
本発明のハードコート層を形成する塗液には電離性放射線により重合する化合物を含有する。電離性放射線により重合する化合物としてはラジカル重合反応を形成する(メタ)アクリロイル基を有する化合物や、カチオン重合反応を形成する化合物であることが好ましい。(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては分子内に(メタ)アクリロイル基を1以上有する化合物を意味し、モノマーであっても、オリゴマーであってもよく、またその両方を含んでもよい。
【0011】
本発明では、アクリロイル基とメタアクリロイル基を総称して、(メタ)アクリロイル基という。すなわち、(メタ)アクリロイル基を有する化合物とは、アクリロイル基のみを有する化合物であってもよく、メタアクリロイル基のみを有する化合物であってもよく、アクリロイル基とメタアクリロイル基との両方を有するものであってもよい。また、以下に記載する(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸エステルについても同様である。
【0012】
本発明に係る(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、例えば、以下に記載する多官能(メタ)アクリレートや単官能(メタ)アクリレートのモノマー又はオリゴマーが挙げられる。
【0013】
多官能(メタ)アクリレートとしては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、エチレングルコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングルコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングルコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングルコールジ(メタ)アクリレート、ビス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、及びこれらの出発アルコール類へのエチレンオキシド又はプロピレンオキシド付加物のポリ(メタ)アクリレート類、分子内に2以上の(メタ)アクリロイル基を有するオリゴエステル(メタ)アクリレート類、オリゴエーテル(メタ)アクリレート類、オリゴウレタン(メタ)アクリレート類、及びオリゴエポキシ(メタ)アクリレート類等を挙げることができる。
【0014】
単官能(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、アクリロニトリル、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノールエチレンオキサイド変性(n=2)(メタ)アクリレート、ノニルフェノールプロピレンオキサイド変性(n=2.5)(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルフタレート等のフタル酸誘導体のハーフ(メタ)アクリレート、フルフリル(メタ)アクリレート、カルビトール(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェートモノエステル、シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−グリシジルオキシブチルアクリレート、ダイアセトンアクリルアミド等が挙げられる。
【0015】
これらの(メタ)アクリロイル基を有する化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合してもよい。
【0016】
一方、カチオン重合を形成する化合物としては、エポキシ系樹脂が通常使用される。このエポキシ系樹脂としては、例えばビスフェノール樹脂やノボラック樹脂などの多価フェノール類にエピクロルヒドリンなどでエポキシ化した化合物、直鎖状オレフィン化合物や環状オレフィン化合物を過酸化物などで酸化して得られた化合物などが挙げられる。
【0017】
電離性放射線重合反応に用いられる光重合開始剤としては、ラジカル重合型の化合物に対しては、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2(ヒドロキシ−2−プロプル)ケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4,4'−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリ−ブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p−ジメチルアミン安息香酸エステルなどが挙げられる。また、カチオン重合型の化合物に対する光重合開始剤としては、例えば芳香族スルホニウムイオン、芳香族オキソスルホニウムイオン、芳香族ヨードニウムイオンなどのオニウムと、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアンチモネート、ヘキサフルオロアルセネートなどの陰イオンとからなる化合物が挙げられる。これらは1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、また、その配合量は、重合性化合物100重量部に対して、通常0.2〜10重量部の範囲で選ばれる。
【0018】
前記電離性放射線硬化性化合物以外にもハードコート性を大きく損なわない範囲で熱可塑性ポリマーを添加することができる。該熱可塑性ポリマーとしては、例えばアクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ブチラール系樹脂、ゼラチン、セルロース系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ウレタン系樹脂等が挙げられる。
【0019】
さらに、必要に応じて、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、界面活性剤、有機系潤滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、発泡剤、染料、顔料、帯電防止剤などを含有していてもよい。また、ハードコ−トフィルム自体に透明性を要求されない場合には、有機系微粒子、無機系微粒子を含有してもよい。
【0020】
ハードコート層に用いられる電離性放射線により重合する化合物の一部を、疎水性の多官能高分子樹脂とすることにより、ハードコート層に防指紋性を付与することができる。ハードコート層の表面に皮脂や油分が付着すると、一点に付着した皮脂や油分は表面に薄く押し広げられ、人間の視力では皮脂や油分の外周部の境界が識別できなくなり、あたかも皮脂や油分が付着していないように視認されるものである。
【0021】
また、皮脂や油分の付着量が非常に多く、厚く重なって、薄く押し広げられる効果が直ぐに現れない場合でも、付着した皮脂や油分を拭き取りその付着量を少なくすると、薄く押し広げられ付着していないように視認される。このように、皮脂や油分を拭き取ることによって見えなくするという、拭き取りによる防指紋性も付与される。
【0022】
このハードコート層は、粒子を含有しなくても防指紋効果が得られるので、高い透明性を両立するものとなり、特に透明性を損なう材料を含有しない限り、ハードコートフィルムのヘイズ値は通常2%以下であり、最大でも3%を超えることはない。
【0023】
疎水性の多官能高分子樹脂は、ハードコート層に用いられる主成分の電離性放射線により重合する化合物と同じく、ラジカル重合反応を形成する(メタ)アクリロイル基を有する化合物や、カオチン重合反応を形成する化合物であることが好ましい。また、これらの疎水性の多官能高分子樹脂は、主成分の化合物と同種のものを用いることがより好ましい。同種のものを用いることにより、ハードコート層内での重合反応による結合を強固にでき、ハードコ−トの効果をより高めることができる。
【0024】
疎水性の多官能高分子樹脂は、アルキル基、フェニル基、ニトロ基などの親油性の官能基を有する化合物でも良いが、ブタジエン骨格を有する化合物が、防指紋性の向上のために、より好ましい。
【0025】
ハードコート層に含有される疎水性の多官能高分子樹脂の含有量は、ハードコート層に対して0.1〜8重量%が好ましく、より好ましくは0.2〜8重量%、さらに好ましくは0.2〜1重量%である。0.1重量%未満では十分な防指紋効果が得られず、8重量%を超えるとハードコート層に十分な硬度が得られなくなるばかりでなく透明性が低下する場合があり好ましくない。
【0026】
ハードコート層にはN-ビニルホルムアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、フェノキシ基含有(メタ)アクリレートより選ばれる少なくとも1種を含有する。フェノキシ基含有(メタ)アクリレートとしては、2−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−フェノキシ−エチル(メタ)アクリレート、3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらN-ビニルホルムアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、フェノキシ基含有(メタ)アクリレートより選ばれる少なくとも1種を含有することで、ハードコート層に用いられる主成分の化合物である(メタ)アクリロイル基を有する化合物や、カチオン重合反応を形成する化合物と疎水性の多官能高分子樹脂との相溶性が極めて良好となり、高い透明性、防指紋効果、硬度を両立する事が可能となる。
【0027】
また、N-ビニルホルムアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、フェノキシ基含有(メタ)アクリレートより選ばれる少なくとも1種の配合量の合計は、ハードコート層に対して5〜25重量%であることが好ましく、より好ましくは10〜20重量%である。5重量%未満では(メタ)アクリロイル基を有する化合物と疎水性の多官能高分子樹脂との相溶性が劣るため高い透明性を得ることが出来ず、25重量%を超えるとハードコート層に十分な硬度が得られなくなる場合があり好ましくない。
【0028】
ハードコート塗膜の厚みは1μm以上20μm以下、好ましくは3μm以上15μm以下であることが好ましい。1μm未満ではハードコート性が十分得られず、塗膜に傷がつきやすい。一方、20μmを超えるとコストアップにつながる。また、両側にハードコートを塗工する場合、その両層の膜厚差は30%以内に抑えることが好ましい。該範囲を超えると、ハードコートフィルムのカールが大きくなることで、次工程移行の取り扱い性に悪影響する可能性や、タッチパネルを組んだ際にタッチパネル機能に悪影響を及ぼす可能性がある。
【実施例】
【0029】
本発明を以下の実施例に従って、さらに具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0030】
[疎水性多官能高分子樹脂の合成]
5リットルの4つ口フラスコにポリブタジエングリコ−ル(日本曹達製、商品名NISSO PB G−3000、数平均分子量2600〜3200)を1943重量部、ジラウリン酸ジ−n−ブチル錫を0.2重量部、2,6−ジ−ターシャリブチル−4−メチルフェノ−ルを0.7重量部入れ、50℃で攪拌しつつ、イソホロンジイソシアネ−ト(住友バイエル社製、商品名デスモジュ−ルI)289重量部を4時間にわたって滴下した。
【0031】
滴下終了後50℃で攪拌しながら、3時間反応を続行したのち、さらに、50℃で攪拌しつつ、ペンタエリスリトールトリアクリレート388重量部を2時間にわたって滴下し、滴下終了後70℃で攪拌しながら、5時間反応を続行し、ポリブタジエン骨格を有するウレタンアクリレートA(疎水性多官能高分子樹脂)を得た。
【0032】
[ハードコートフィルムの形成]
上記で合成したポリブタジエン骨格を有するウレタンアクリレートAとN-ビニルホルムアミド、アクリロイルモルホリン、フェノキシ基含有アクリレートを用いて表1の各ハードコート塗液を調整し、厚さ100μmの光学PETの片面に表1の各ハードコート塗液を塗布乾燥した後、それぞれ積算光量500mj/cmの紫外線を照射し、塗膜を硬化させて厚み7μmのハードコート層を形成して、実施例1〜11と比較例1〜3のハードコ−トフィルムを作成した。
【0033】
【表1】

表1中の各成分の材料名
※1:A−9550(ジペンタエリスリトールヘキサアクレート、新中村化学製)とUA−53(ウレタンアクリレートオリゴマ−、新中村化学製)の1:1混合物
※2:ポリブタジエン骨格を有するウレタンアクリレ−トA
※3:N-ビニルホルムアミド
※4:アクリロイルモルホリン
※5:フェノキシ基含有アクリレート
※6:イルガキュア184(光開始剤、チバスペシャリティケミカル製)
※7:キシレン
【0034】
以上の様にして作製したハードコートフィルムについて以下の評価を行った。評価項目および評価基準は以下の通りである。
【0035】
1.防指紋性評価(視認性評価)
ハードコ−ト層面上に右手人差し指の指先を押しあてて指紋をつけ、黒地にのせて目視で指紋の付着度合いを確認した。指先を押し付ける順番により指紋の濃淡差が発生することを避けるために、指先をハードコ−ト面上に押し付ける前に、必ず右手人差し指と右手の他の指先又は左手の掌を擦り合わせた。評価基準は、下記の通りである。
○:指紋が比較的目立たない。
△:指紋が若干目立つ。
×:指紋が目立つ。
【0036】
2.防指紋性評価(拭き取り性評価)
視認性評価と同様の方法で、ハードコート層面上に指紋をつけた。次いで、綿布で拭き取りを行い、拭き取り後の指紋の残り度合いで拭取りやすさを評価した。評価基準は下記の通りである。
○:指紋が見えない。
△:指紋が若干残っている。
×:指紋が残っている。
【0037】
3.全光線透過率
日本電色工業製ヘイズメーターNDH2000を用い、JIS−K7361−1:1997に基づき、測定した。なお、光はハードコート層面側から入射させて測定した。
【0038】
4.ヘイズ
日本電色工業製ヘイズメーターNDH2000を用い、JIS−K7105:1981に基づき測定した。なお、光はハードコート層面側から入射させて測定した。
【0039】
5.耐スチールウール硬度
スチールウール(#0000)に、500gf/cmの加重をかけ、ハードコ−ト層上をストロ−ク幅30mmで、14秒間に10往復させた後、ハードコ−ト層の傷を評価した。評価基準は、下記の通りである。

○:傷跡が全く見えない
△:傷跡が薄く見える
×:傷跡がはっきり見える
【0040】
6.鉛筆硬度
JIS−K5600−5−4に基づき、ハードコート層の鉛筆硬度を測定した。
【0041】
測定結果および評価結果を表2にまとめた。
【0042】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の少なくとも一方の面にハードコート層を設けたハードコートフィルムにおいて、前記ハードコート層が、
(a)電離性放射線により重合する化合物
(b)電離性放射線により重合する疎水性の多官能高分子樹脂
(c)N-ビニルホルムアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、フェノキシ基含有(メタ)アクリレートより選ばれる少なくとも1種
を少なくとも含有する塗液を基材に塗布乾燥した後、電離性放射線を照射することで硬化してなるハードコート層であることを特徴とするハードコートフィルム。
【請求項2】
前記(b)電離性放射線により重合する疎水性の多官能高分子樹脂が、ポリブタジエン骨格を有するウレタンアクリレ−トであることを特徴とする請求項1記載のハードコートフィルム。
【請求項3】
前記(b)電離性放射線により重合する疎水性の多官能高分子樹脂の含有量が、ハードコート層塗液に含まれる固形分中の0.1〜8重量%であることを特徴とする請求項1〜2記載のハードコートフィルム。
【請求項4】
前記(c)N-ビニルホルムアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、フェノキシ基含有(メタ)アクリレートより選ばれる少なくとも1種の含有比率が、ハードコート層の5〜25重量%であることを特徴とする請求項1〜3記載のハードコートフィルム。

【公開番号】特開2013−1098(P2013−1098A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−138034(P2011−138034)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(000237237)フジコピアン株式会社 (130)
【Fターム(参考)】