説明

バイオハザード対策室監視システム及びその装置

【課題】
バイオハザード対策室を構成する各装置に、上位装置へ情報を伝達する通信手段を設け、バイオハザード対策室内の各装置の運転状態を記録・管理するよう構成し、バイオハザード対策室利用者が正しく装置を使用しているかを管理し、バイオハザード対策室内での感染を防止するとともに、万が一、感染が起こった際に容易に原因を究明し、感染の拡大が防止できるバイオハザード対策室を提供する。
バイオハザード対策室内の装置が正しく使用されているかを、管理することができるバイオハザード対策室を提供する。
【解決手段】
バイオハザード対策室を構成する各装置に、上位装置へ情報を伝達する通信手段を設け、バイオハザード対策室内の各装置の運転状態を記録・管理するよう構成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療、製薬など遺伝子操作の産業分野において、微生物・病原体などの取り扱いにより発生する災害を防止する実験室、いわゆるバイオハザード対策室に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バイオハザード対策の人・環境と生物材料・病原体を物理的に隔離する一次バリアとして安全キャビネットが用いられている。その安全キャビネットをバックアップする二次バリアとしてバイオハザード対策室が用いられている。従来技術によるバイオハザード対策室を組換えDNA実験指針(平成14年1月31日文部科学省告示第5号)附属資料1 20リットル以下の規模で行う実験に係わる物理的封じ込めに関する規定に示す。従来技術では、前後の扉が同時に開かない構造の前室などを有する実験室内に試料を保存する冷蔵庫、エアロゾルを発生する作業を行う場合、外部への感染を保護する安全キャビネット、実験が終了し廃棄する際に滅菌する高圧蒸気滅菌器を配置し、感染源の物理的封じ込めを行いながら実験を行っている。
【0003】
また、特開2003−47457号公報(特許文献1)には、建屋内に配置した滅菌器と安全キャビネット装置を監視して制御する制御室を設けた構成が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−47457号公報
【非特許文献1】組換えDNA実験指針(平成14年1月31日文部科学省告示第5号)附属資料1 20リットル以下の規模で行う実験に係わる物理的封じ込めに関する規定
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来技術によるバイオハザード対策室では、前室の出入口の扉は、前後が同時に開かない構造で、前室だけで一つの機能、冷蔵庫は冷蔵庫、高圧蒸気滅菌器は高圧蒸気滅菌器と、それぞれ独立したものをバイオハザード対策室で使用しているという状態であった。更に、安全キャビネットに至っては、音波破砕機などのエアロゾルの発生する操作の安全キャビネット内での使用の義務付けなど安全キャビネットの正しい運用方法を人の取り扱い方法に頼っている状態であった。このため、万が一、装置の取り扱い不備などで感染が生じた場合、作業者への聴き取り調査などで原因を追求する手段しか方法がなかった。
【0006】
本発明の目的は、バイオハザード対策室内での感染を防止するとともに、万が一、感染が起こった際に容易に原因を究明し、感染の拡大が防止できるバイオハザード対策室を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は以下のように装置を構成したものである。
【0008】
バイオハザード対策室を構成する各装置に、上位装置へ情報を伝達する通信手段を設け、バイオハザード対策室内の各装置の運転状態を記録・管理するよう構成したものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施により、バイオハザード対策室内での感染を防止するとともに、万が一、感染が起こった際に容易に原因を究明し、感染の拡大が防止できるバイオハザード対策室を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図9により説明する。
【実施例1】
【0011】
図1は、本発明の第1実施の形態を示すバイオハザード対策室の構成図である。
【0012】
バイオハザード対策室1は開放できる窓のない部屋で構成され、限られた出入り口から作業者は出入りする。出入り口には、エアーロックルーム2が構成されている。エアーロックルーム2は、前後に同時に開かない扉を有し、バイオハザード対策室1内部の空間が開放状態になることを防いでいる。バイオハザード対策室1には排気用HEPAフィルタ10により室内の細菌・ウイルス28を除去し、排気ダクト11を通り、排気ファン12により屋外に排気する構成になっている。この構成によりバイオハザード対策室1内を負圧に保ち、細菌・ウイルス28の室外への漏洩を防止している。
【0013】
バイオハザード対策室1で用いられる試料は、冷蔵庫・冷凍庫3内で保管される。作業者は、冷蔵庫・冷凍庫3から試料を取り出し、安全キャビネット7内で実験を行う。安全キャビネット内で作業を行うことにより作業者への試料の感染や、試料への雑菌の混入を防止することが可能となる。実験には、音波破砕器、ホモジナイザー、シェーカー8などの使用時に必ずエアロゾルが発生する装置がある。これらの装置は必ず安全キャビネット7内で使用し、発生したエアロゾルがバイオハザード対策室内に漏れないように作業する必要がある。
実験が終了し不要になった廃棄物は、高圧蒸気滅菌器9により滅菌し、感染が起こらない状態にしてからバイオハザード対策室外から取り出し廃棄する。
【0014】
以上がバイオハザード対策室1の主な構成であるが、取り扱う細菌・ウイルス・DNAの感染時の人体及び社会に与える影響度のレベルによっては、エアーロックルーム2、排気用HEPAフィルタ10等の排気系統を設けない場合もある。
【0015】
第1実施の形態では、エアーロックルーム2の扉にリミットスイッチ、近接スイッチを設け、扉の開閉情報をパーソナルコンピュータ等の上位の記憶装置13に伝達している。これにより、何時、作業者がバイオハザード対策室に入退室したかを管理することができる。エアーロックルーム2では、前後の扉が同時に開かない構成にする必要があるため、入り口と出口の両方にリミットスイッチ、近接スイッチなどのセンサを個別に設けることにより、作業者が入室したのか、退室したのかを管理することができる。
【0016】
また、エアーロックルーム2の二つの扉のリミットスイッチ両方が、扉が開いていることを検出した場合、安全キャビネット7を運転開始しないインタロックを設ける等、実験室から細菌・ウイルスが漏洩する可能性を最小限にすることができる。安全キャビネット7運転中に他の装置とのインタロック機構により安全キャビネット7を停止することは、実験中の感染につながるため、一旦起動した安全キャビネット7の運転は、最優先にする必要がある。
【0017】
また、冷蔵庫・冷凍庫3の温度情報、扉の開閉情報をパーソナルコンピュータ等の上位の記憶装置13に伝達している。冷蔵庫・冷凍庫3扉の開閉情報は、扉にリミットスイッチ、近接スイッチを設け開閉情報を入手することが可能となる。冷蔵庫・冷凍庫3の温度情報、扉の開閉情報をパーソナルコンピュータ等の上位の記憶装置13に伝達することにより、バイオハザード対策室外から、冷蔵庫・冷凍庫3の温度情報、扉開閉情報による試料の出し入れ情報を入手、記憶することが可能となる。
【0018】
また、安全キャビネットの運転情報をパーソナルコンピュータ等の上位の記憶装置13に伝達している。この構成により何時、安全キャビネットを使用しかたを管理することが可能となる。
【0019】
また、高圧蒸気滅菌器9の温度情報、運転時間情報、扉開閉情報を、上位の記憶装置13に伝達している。この構成により、何時、高圧蒸気滅菌器9の扉を開け、何分間滅菌処理を行ったかを、管理することが可能となるため、正しく滅菌処理を行ったかを管理することが可能となる。
【0020】
高圧蒸気蒸気滅菌機9の運転時間を積算し、高圧蒸気により内部部品が劣化する時間を警告し、装置の点検を促すことにより、常に安全な滅菌処理行うことが可能となる。
また、排気ファン12の運転情報を、上位の記憶装置13に伝達することによりバイオハザード対策室1の空気が正常に排気されているかを管理することが可能となる。更に、バイオハザード対策室1内に差圧センサ6を設け、その差圧情報を上位の記憶装置13に伝達することにより、バイオハザード対策室1が正しく負圧になっているかを管理することが可能となる。
【0021】
バイオハザード対策室1が負圧になっていない場合、エアーロックルーム2の扉にインタロックを掛け、入室を制限することにより、細菌・ウイルスの漏洩を防止することが可能となる。
【0022】
以上の構成により、入室から、試料の保管状態、試料の取り出し、安全キャビネットの使用情報、試料の滅菌情報を上位の記憶装置13で管理することが可能となる。上位の記憶装置は、入退室の不便なバイオハザード対策室1内に設置する必要がないため、バイオハザード対策室外から、内部の状態を監視することが可能となる。
【0023】
また、上位の記憶装置に伝達される細菌・ウイルス・病原体情報とバイオハザード対策室の実験室レベルに危険度を照合し、病原体を取り扱うべき対策室を警告することにより、正しいバイオハザード実験を補うことが可能となる。
【0024】
更に、エアーロックルーム2、冷蔵庫・冷凍庫3、安全キャビネット7、高圧蒸気滅菌器9に使用者名を入力する入力装置(図示せず)を設けることにより、何時、誰が、感染の恐れのある試料を取り扱い、実験し、滅菌したかを管理できるため、万が一、感染が生じた際でも、感染源となる材料の足取りをつかむことが可能となり、感染の拡大を防止することが可能となる。使用者名を入力する装置は、使用者がバーコードを記載した名札を着用し、バーコードリーダーで入力する方法を用いると、入力ミスなどの誤りがなく、氏名入力などの、機器使用前のわずらわしさを排除することが可能となる。
【0025】
図2は、本発明の第1実施の形態を示す冷蔵庫・冷凍庫の構造図である。
冷蔵庫・冷凍庫3には、入出庫のため扉3aが設けられている。更に、冷蔵庫・冷凍庫3の操作部4を設けている。操作部4には、内部に試料を入庫した際に入力する入庫スイッチ4a、内部から試料を取り出した際に入力する出庫スイッチ4bを設け、試料の入出庫情報を管理することが可能となる。また、内部に格納する試料名称を入力する装置5を設け、冷蔵庫・冷凍庫3内に何が入っているかを管理することが可能となる。試料名称を入力する方法は、細菌・ウイルス・DNAなどの名称のメニューリストから選択し、選択スイッチ5aにより確定することにより入力ミスなどを防止することができる。更に、既知の細菌・ウイルス・DNAは感染した場合、社会の対する影響度により、取り扱うことができるバイオハザード対策室1のレベルが異なってくる。細菌・ウイルス・DNAのメニューとバイオハザード対策室1のレベルを照合することにより、試料が正しいか、バイオハザード対策室1のレベル分取り扱われたかを管理することが可能となる。試料名称を入力する装置は、ウイルス名称プルダウンメニュー5のようなものではなく、試料の入った容器に試料名を記載したバーコードを設け、バーコードリーダーで取り扱う試料を読み取ることにより、試料名称の誤入力防止と、管理が容易となる。
【0026】
この情報を上位の記憶装置13に伝達することにより、保管している試料、使用している試料を管理することが可能となる。
【0027】
また、操作部4に警報表示等(図示せず)を設け、冷蔵庫・冷凍庫3が設置されているバイオハザード対策室1の実験室レベルと、入出庫する病原体の危険度を照合することにより、実験室レベルに対応しない細菌・ウイルス・病原体を取り扱った場合に警告を発し、病原体の誤操作を防止することが可能となる。
【0028】
図3は、本発明の第1実施の形態を示す安全キャビネットの外観図である。
【0029】
図4は、本発明の第1実施の形態を示す安全キャビネットの操作部詳細図である。
【0030】
安全キャビネット7の正面には、前面シャッタ14とその下部に前面開口部15が形成されている。前面開口部15から手を挿入することができる内部に、作業台16が形成されている。前面開口部15の下部には、前面吸い込みスリット17が形成されている。前面吸い込みスリット17から吸い込まれる気流により、前面開口部15にエアバリアを形成し、作業台16側と安全キャビネット7外部とのコンタミネーションの防止を図っている。
【0031】
安全キャビネット7の操作部18には、送風機を運転するスイッチ18aが設けられており、送風機の運転停止を制御することができる。また、安全キャビネット7内で実験する試料名称を入力する装置5を設け、何時、どのような試料を安全キャビネット7内で取り扱ったかを管理することが可能となる。試料名称を入力する方法は、細菌・ウイルス・DNAなどの名称のメニューリストから選択し、選択スイッチ5aにより確定することにより入力ミスなどを防止することができる。
【0032】
また、安全キャビネット7を使用した使用者名を入力する装置(図示せず)を設けることにより、何時、誰が、どの試料を取り扱ったかを記憶することが可能となる。
【0033】
以上の安全キャビネット7運転情報を、上位の記憶装置13に伝達することにより、バイオハザード対策室1外から安全キャビネット7の運転情報、試料取り扱い情報を管理することが可能となる。使用者名を入力する装置は、冷蔵庫・冷凍庫3同様、使用者がバーコードを記載した名札を着用し、バーコードリーダーで入力する方法を用いてもよい。
【0034】
以上により安全キャビネット7、何時、誰が、どの試料を用いた実験に使用したか管理することが可能となる。
【0035】
また、操作部18に警報表示等(図示せず)を設け、安全キャビネット7の設置上の排気状態(管理室の記憶装置に記憶)と取り扱う細菌・ウイルス・病原体を照合することにより、安全キャビネット7の排気状態に適合しない場合には、警告を発し、病原体の誤った操作を防止することが可能となる。安全キャビネット7の排気状態だけではなく、バイオハザード対策室1の実験室レベルと比較することも可能である。
【実施例2】
【0036】
図5は、本発明の第2実施の形態を示す安全キャビネットの断面構造図である。
【0037】
前面開口部15から吸い込まれる空気により前面開口部15に流入気流19を形成している。これが、作用空間25と外のエアバリアとなる。前面開口部15から吸い込まれた空気は、前面吸い込みスリット17を通り、作業台16下部を通り、作業空間25の背面に形成している循環流路26を通り、送風機22に吸い込まれる。循環流路26には、途中から、背面空気吸い込み口27から吸い込まれて作業空間25内の空気も加わる。送風機22で吸い込まれた空気は、圧力チャンバ21に供給される。このことにより、圧力チャンバ21は加圧される。圧力チャンバ21には、排気用HEPAフィルタ23、給気用HEPAフィルタ24に接続されているため、夫々、排気、給気側に清浄空気を供給することが可能となる。排気用HEPAフィルタ23を通った空気は、細菌・ウイルス28類を除去され、安全キャビネッ7外へ放出される。給気用HEPAフィルタ24を通った空気は、細菌・ウイルス28を除去され吹き出し気流20となって、作業区間25内に供給される。この気流構成により安全キャビネット7では、作業空間25内の細菌・ウイルス28を安全キャビネット7外へ漏洩することなく、また、安全キャビネット7外の雑菌を作業空間25内の混入することを防いでいる。
【0038】
病原体の研究、医薬品の研究開発、組換えDNAの研究には、音波破砕器、ホモジナイザー、シェーカー8などの感染の恐れがあるエアロゾルを発生する装置を使用する。これらの装置は、エアロゾルによる飛沫感染の可能性があるため、安全キャビネット7内で取り扱う必要がある。第2実施の形態では、音波破砕器、ホモジナイザー、シェーカー8に運転中で有ることを装置外部へ出力する信号接続口を設けている。また、安全キャビネット7の作業空間25には、音波破砕器8などの運転信号を接続する、作業区間内信号接続口29を設けている。この作業空間25内で使用する装置と、その装置の運転状態信号を安全キャビネット7の操作回路・通信機30を通し、上位の記憶装置13に出力している。また、安全キャビネット7の操作回路・通信機30は、安全キャビネットの運転情報も上位の記憶装置13に出力することにより、上位の記憶装置13では、安全キャビネット7内で使用すべき装置が正しく、安全キャビネット内7で使われているかを監視することが可能となる。
【0039】
また、音波破砕器8の運転情報を装置外へ出力するだけではなく、入出力装置から安全キャビネット7の運転情報を音波破砕器8などに取り込むことにより、安全キャビネット7の送風機22が運転していない場合には、音波破砕器8を動作しないようにして、エアロゾルの発生を防ぐなどして、装置の取り扱い不備による感染を防止することが可能となる。
【実施例3】
【0040】
図6は、本発明の第3実施の形態を示す安全キャビネットの断面構造図である。
【0041】
図8は、本発明の第3実施の形態を示す安全キャビネットの運転情報概念図である。
【0042】
図6において、安全キャビネット7の作業空間25背面の循環流路26には、複数の風速計31を配置している。この風速計の風速情報は、安全キャビネット7の操作回路・通信機30に伝達されている。風速計31は、循環流路26内に配置されているため、作業空間25内の吹き出し気流20と流入気流19の合計した風速を測定することが、可能となる。その風速計情報から安全キャビネット7の気流状態を推定したグラフを図8に示す。
循環流路26内の左右離れた位置に風速計31a、風速計31bを配置している。図8において、安全キャビネット7の運転を開始した場合、送風機22により循環流路26内の気流が流れ、風速計31aの風速はグラフ中のeポイント、風速計31bの風速はhポイントとなる。運転状態で前面シャッタ14を開いた場合、前面開口部15から流入する空気が増加し、結果的に、風量が増えたことにより循環流路26内の風速も増加し、風速計の値は、風速計31aの風速はグラフ中のfポイント、風速計31bの風速はiポイントとなる。2つの風速計の値が同様に増加するため、前面シャッタ14を開き、全体の風量が変化したと推定することができる。このとき、細菌・ウイルス28を取り扱っていた場合は、前面開口部15の流入風速低下によりエアバリア破損で、感染する可能性があったことが分かる。風速計bのj部のように片側の風速計の風速値が低下した場合には、安全キャビネット7の前面吸い込みスリット17の左右の局部が、一時的に塞がれ、風速が低下したと推定できる。このとき細菌・ウイルス28を取り扱っていた場合には、感染の可能性があったことを示している。他に背面空気吸い込み口27が塞がれた場合にも循環流露26の風速は低下する。
【0043】
図7は、本発明の第1実施の形態を示す安全キャビネットの運転情報概念図である。
安全キャビネット7の運転スイッチ18aを押すと、送風機22の運転が始まり、作業空間25内に清浄空気が供給され始める。このとき、運転履歴には、運転開始情報aが残る。また、作業空間25内細菌・ウイルス28の取り扱い始めた場合、ウイルス選択スイッチ5aで入力することにより、運転履歴には、ウイルス操作開始情報cが残る。安全キャビネット7では、運転開始から安全キャビネット内のクリーンアップ完了まで時間を要する場合がある。医薬製造業では、安全キャビネット7の運転開始時間から、ウイルス操作開始時間に時間差を設け、安全キャビネット7のクリーンアップ運転時間を管理している場合がある。その場合、本実施例を使用することにより、安全キャビネット7の運転開始時間、ウイルス操作開始時間を自動的に記録することが可能となる。
【0044】
ウイルス操作完了時点には、ウイルス選択スイッチ5aを解除するなどして、ウイルス操作完了時間を記録する。また、安全キャビネット7の運転終了は、運転停止スイッチをOFFすることで、安全キャビネット停止時間を記録することが可能となる。安全キャビネット内に漂っている細菌・ウイルス28をHEPAフィルタで回収してから安全キャビネット7の送風機22を停止される必要があるため、ウイルス操作完了から安全キャビネット7の停止まで、時間差を設ける必要がある。作業者がこの時間差を確実に取っているかも運転記録を見ることにより管理することが可能となる。
【実施例4】
【0045】
図9は、本発明の第4実施の形態を示すエアーロックルームの構成図である。
エアーロックルーム2の前後には、同時に開かない扉2a、2bが設けられている。この2枚の扉の開閉情報を上位の記憶装置13に伝達することにより、バイオハザード対策室への入退室情報を管理することが可能となる。
【0046】
更に、第4実施の形態では、エアーロックルーム2内に血液採取分析装置32を配置し、入室時に血液採取、分析し、氏名情報と共に管理することにより、万が一、感染が生じた場合、何時の時点から感染が生じたかの履歴を追うことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、バイオハザード対策室内での感染を低減するとともに、万が一、感染が起こった際に容易に原因を究明し、感染の拡大が防止できるバイオハザード対策室を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の第1実施の形態を示すバイオハザード対策室の構成図である。
【図2】本発明の第1実施の形態を示す冷蔵庫・冷凍庫の構成図である。
【図3】本発明の第1実施の形態を示す安全キャビネットの外観図である。
【図4】本発明の第1実施の形態を示す安全キャビネットの操作部詳細図である。
【図5】本発明の第2実施の形態を示す安全キャビネットの断面構造図である。
【図6】本発明の第3実施の形態を示す安全キャビネットの断面構造図である。
【図7】本発明の第1実施の形態を示す安全キャビネットの運転情報概念図である。
【図8】本発明の第3実施の形態を示す安全キャビネットの運転情報概念図である。
【図9】本発明の第4実施の形態を示すエアーロックルームの構成図である。
【符号の説明】
【0049】
1…バイオハザード対策室、2…エアーロックルーム、
2a…エアーロックルーム入り口扉、2b…エアーロックルーム出口扉、
3…冷蔵庫・冷凍庫、3a…冷蔵庫・冷凍庫扉、4…冷蔵庫・冷凍庫操作部、
4a…入庫スイッチ、4b…出庫スイッチ、5…ウイルス名称プルダウンメニュー、
5a…選択スイッチ、6…差圧センサ、7…安全キャビネット、7a…本体ケース、
8…音波破砕器(ホモジナイザー、シェーカー)、9…高圧蒸気滅菌器、
10…排気HEPAフィルタ、11…排気ダクト、12…排気ファン、13…記憶装置、14…前面シャッタ、15…前面開口部、16…作業台、17…前面吸い込みスリット、18…操作部、18a…操作スイッチ、19…流入気流、20…吹き出し気流、
21…圧力チャンバ、22…送風機、23…排気用HEPAフィルタ
24…給気用HEPAフィルタ、25…作業空間、26…循環流路、
27…背面空気吸い込み口、28…細菌・ウイルス、29…作業室内信号接続口、
30…操作回路・通信機、31a…風速計、31b…風速計、32…血液採取分析装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出入り口と、閉鎖された空間と、前記空間内に配置した冷蔵庫と、前記空間内に配置した安全キャビネットと、前記空間内に配置した高圧蒸気滅菌器を有するバイオハザード対策室監視システムにおいて、
冷蔵庫の開閉情報、入出庫情報と、安全キャビネット運転情報と、高圧蒸気滅菌器開閉情報、運転時間情報を、上位機器に通信する通信機を有し、上位機器は記憶装置からなることを特徴とするバイオハザード対策室監視システム。
【請求項2】
請求項1記載のバイオハザード対策室監視システムにおいて、
出入口に両方が同時に開かない扉を有する前室と、室内の空気を、空気清浄手段を通し、送風手段により排気し、室内を負圧にする排気系と、室内の圧力を測定する差圧系を有し、前記出入口扉の開閉情報と、前記排気系の送風手段の運転情報と、前記室内差圧系の差圧情報を上位機器に通信、伝達することを特徴とするバイオハザード対策室監視システム。
【請求項3】
請求項1又は2記載のバイオハザード対策用冷蔵庫において、
内部に格納する試料名称を入力する操作部と、前記内部に試料の入出庫時間と格納した試料名称を記憶する装置を有することを特徴とする冷蔵庫。
【請求項4】
請求項3記載の冷蔵庫において、内部に格納した試料名称と、試料の入出庫時間の情報を上位機器に伝える通信機を有することを特徴とする冷蔵庫。
【請求項5】
送風手段により第一の空気清浄手段を通して作業空間に清浄空気を供給する給気系と、前記作業空間に連結する循環流路から排気手段により第二の空気清浄手段を介して装置外へ空気を排出する排気系と、前記送風手段と、前記第一の空気清浄手段に連接する圧力チャンバと、前記作業空間前面に形成する前面シャッタと、前記前面シャッタ下部の作業空間に連接する前面開口部と、前記開口部下側の前記作業空間底面の前面に形成した空気吸い込み口と、前記空気吸い込み口と相反する作業空間壁面に形成した空気吸い込み口を有する安全キャビネットにおいて、
前記送風手段の運転開始・停止時間を記憶する記憶装置と、実験試料名称を入力する操作部と、前記試料名称を記憶する装置を有することを特徴とする安全キャビネット。
【請求項6】
請求項5記載の安全キャビネットにおいて、作業空間内に通信接続装置を有し、作業空間内の通信情報と安全キャビネットの情報を記憶することを特徴とする安全キャビネット。
【請求項7】
請求項5又は6記載の安全キャビネットにおいて、排気系に連接する循環流露内に複数の風速計を有し、前記風速計の速度情報と、安全キャビネットの情報を記憶する装置を有することを特徴とする安全キャビネット。
【請求項8】
請求項5、6又は7記載の安全キャビネットにおいて、安全キャビネットの情報を上位機器に伝える通信機を有することを特徴とする安全キャビネット。
【請求項9】
請求項1又は2記載の高圧蒸気滅菌器において、扉の開閉情報と、滅菌時間の情報を記憶する装置を有することを特徴とする高圧蒸気滅菌器。
【請求項10】
請求項9記載の高圧蒸気滅菌器において、扉開閉情報、滅菌時間情報を上位機器へ伝える通信機を有することを特徴とする高圧蒸気滅菌器。
【請求項11】
請求項2記載の出入口に両方が同時に開かない扉を有する前室において、採血手段と血液分析装置を有することを特徴とするバイオハザード対策室用エアーロックルーム。
【請求項12】
請求項1又は2記載のバイオハザード対策室内のエアーロックルーム、冷蔵庫、安全キャビネット、高圧蒸気滅菌器において、
使用者名を入力する入力装置を有することを特徴とするバイオハザード対策機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2006−71233(P2006−71233A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−257829(P2004−257829)
【出願日】平成16年9月6日(2004.9.6)
【出願人】(502129933)株式会社日立産機システム (1,140)
【Fターム(参考)】