説明

バイオマス混焼微粉炭焚きボイラ

【課題】専用石炭ミルと専用バイオマスミルとを備え、専用粉砕機で粉砕したバイオマス燃料を石炭微粉と混焼させるバイオマス混焼微粉炭焚きボイラについて、特別の設備を付加することなしで完全燃焼させて灰にすることができ、その混焼率を高められるようにバイオマス燃料の混焼方法を工夫すること。
【解決手段】混焼されるバイオマス燃料が粉砕粒度が5mm以上であり、上記ボイラのドライホッパの下方に燃焼空気供給手段を備えた乾式クリンカ処理装置が設けられており、当該乾式クリンカ処理装置に落下したバイオマス燃料の未燃分をクリンカコンベア上で完全燃焼させて灰にするようになっており、燃焼空気供給手段等によって上記乾式クリンカ処理装置に供給される空気量と火炉に供給される燃焼空気量で微粉炭及びバイオマス燃料が燃焼されるように、火炉に供給される燃焼空気量が制御されていること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、バイオマス燃料(主に木質燃料)と微粉炭とを混焼させるボイラ(バイオマス混焼微粉炭焚きボイラ)に関するものであり、そのバイオマス燃料について、粉砕粒度5mm以上で混焼させることができ、バイオマス燃料の混焼率を向上させることができ、さらに、バイオマス燃料を粉砕するための動力(粉砕動力)を低減して、バイオマス燃料を混焼させるボイラ運転の経済性を高めることができるものである。
なお、この明細書におけるバイオマス燃料の粉砕粒度は、粉砕した粉粒体を篩いで選別するメッシュの大きさをいう。また、「粉砕粒度5mm」は、粉粒体全体の90重量%が5mmメッシュを通過する粉粒体であり、「粉砕粒度5mm以上」は5mmメッシュを通過する粉粒が90%以下のものであり、「粉砕粒度5mm以下」は5mmメッシュを通過する粉粒が90%以上のものである。
ここで採用した5mmの粒子径の意味は、「浮遊燃焼する限界バイオマス粒径」の意味であり、バイオマスの種類、形状、含水率等で異なるが、木質系のバイオマスでは概ね3〜5mm程度と看做されている。
【背景技術】
【0002】
石炭などの化石燃料とバイオマス燃料を混焼させて化石燃料の消費量を低減させることが要請されており、このために、微粉炭焚きボイラでバイオマス燃料(例えば木質バイオマス燃料)を混焼させることが行われている。そして、微粉炭焚きボイラでバイオマス燃料を混焼させる方法として、石炭バンカに少量のバイオマスを投入して石炭と共に粉砕して微粉化し、これをバーナに空気搬送して火炉で燃焼させる方法が採用されている。
【0003】
ところで、石炭ミルで石炭と一緒にバイオマス燃料を粉砕して混焼させる方法ではバイオマス燃料の比率が高くなると、石炭の粉砕能率が低下するためこの方法によるバイオマス燃料の混焼率には限界があり、現状では重量割合で2〜3%程度が限度であるとされている。
【0004】
他方、バイオマス燃料の混焼率を高めるためにバイオマス燃料を専用ミルで粉砕して、これを石炭微粉とは別のバーナで火炉に供給して混焼させる方法がある。この方法によれば、石炭ミルによる石炭の粉砕能率が低下されることはないので、石炭の粉砕能力を低下させることなしにバイオマス燃料混焼率を増加させることができる。しかし、バイオマス燃料が火炉内で完全に浮遊燃焼されるようでなければ燃焼効率は悪くなる。他方、完全に浮遊燃焼させるには浮遊燃焼する限界粒径(木質バイオマスで3〜5mm程度)未満でなければならない。多量のバイオマス燃料を3〜5mm以下の粉粒体に粉砕するとそのための粉砕動力が非常に大きく、そのためのエネルギー損失が大きいので、バイオマス燃料を利用することのメリットがそれだけ減少する。
図8に示すグラフは、木質バイオマスを専用粉砕機で粉砕して粒度分布を実測したデータ(<3mm)をベースに<5mm、粉砕粒度5mmにシフトした3本の粒度分布を示している。この図から得られる平均粉砕粒度d50(50重量%粒度)を、公知の研究報告(NEDO)に記載されている平均粉砕粒度d50と動力原単位の関係を示すグラフに記入すれば図9のようになり、粉砕粒度<3mmに比べて粉砕粒度5mmでは動力原単位は約1桁少なくなることが分かる。
したがって、専用ミルによるバイオマス燃料の粉砕を粉砕粒度5mm以上のものがあってよいとすれば、粉砕動力が大幅に低減されることになる。
【0005】
専用ミルでバイオマス燃料を粉砕粒度5mm以下に粉砕してこれを混焼させることでバイオマス燃料の粉砕動力を低減する技術が、特開2005−291531号公報に記載されている(以下これを「従来技術」という)。これは図4に記載されているようなものであり、微粉炭バーナ4とバイオマスバーナ5とが同レベルに多段に設けられている。微粉炭とバイオマス燃料が風箱3からの燃焼空気で燃焼され、上方に吹き上げられ、上方において空気噴出口2からさらに燃焼空気が加えられて燃焼される。このとき、小粒径のバイオマス燃料は、浮遊しつつ燃焼して排ガスと共に火炉から流出するが、一部の大粒径バイオマス燃料は、燃えながらも燃焼ガスに逆らって炉底へ落下して行く。
【0006】
このような大粒径バイオマス燃料でも炉底まで降下したときには完全に灰になっているのが理想であるが、完全に燃え尽きて灰になるのは粒度が3〜5mm未満である。これ以上の粒子は、揮発分、水分を放出し一部固定炭素分の燃焼も行われるが、かなりの割合の未燃分が炉底下のクリンカ処理装置17に落下する。
【0007】
ところで、バイオマス燃料については、粉砕粒度5mm以下のもの(全量の90%以上が大きさ5mm未満の粒子で、残りの10%未満が5mm以上の粒子)になると、粉砕動力(粉砕するのに要する動力)が指数関数的に増加するという傾向がある。このために、専用ミルによるバイオマス燃料の粉砕粒度を5mmよりも大きくすれば(粒子の最大が5mm以上、5mm未満の微粒が90%以下)、粉砕動力が大幅に低減されることになる。上記従来技術は以上の知見に基づくものであり、粉砕粒度5mmのバイオマス燃料を使用している。しかしそうすると、中粒(5mmのもの)については、未燃のまま(灰にならないまま)で炉底まで降下し、クリンカ処理装置17に達する。他方、クリンカ処理装置17に落下した中粒は未燃のままで冷却されて炭化物になる。そこで、この従来技術は、これを湿式分離(水に浮かせて分離)して回収し、石炭バンカ11に投入して石炭とともに石炭ミル6で粉砕し、再び火炉1に投入して燃焼させるものである。この方法によれば、石炭ミルによる石炭の粉砕能率を低下させることなしにバイオマス燃料を粒度5mmに粉砕して混焼させることができる。
そして上記従来技術では湿式クリンカ処理装置に湿式分離装置14を設け、炭化物バンカ15を設け、湿式分離装置14と炭化物バンカ15との間に炭化物搬送装置Kを設けている。
【0008】
そして、上記従来技術によれば、クリンカ処理装置17に落下した未燃バイオマス(炭化物)は湿式で処理され、その後、湿式分離装置14で分離回収され、炭化物搬送装置Kで炭化物バンカ15に搬送され、当該炭化物バンカ15から石炭バンカ11に投入される。そして、石炭バンカ11に投入されたもの(炭化物)は石炭ミル6で石炭と一緒に粉砕され、微粉化されて微粉炭バーナ4で燃焼される。
なお、上記従来技術は、炭化した未燃バイマス燃料を湿式クリンカ処理装置で冷却し、湿式分離装置14で未燃分(炭化物)を回収することを基本とするが、乾式クリンカ処理装置を使用することも可能であることも記載されている。
【0009】
上記従来技術においては、湿式クリンカ処理装置で冷却されて回収されたバイオマス燃料(炭化物など)は図5における中粒bであって炭化しているので、石炭ミル6で粉砕するときの抵抗は小さくて比較的容易に粉砕される。
一方、バイオマス燃料の粉砕粒度が大きくて、そのために5mmより大きい粗粒が多く含まれていると、クリンカ処理装置17から回収されるときに木質の芯が多く残っていて(図5の粗粒B)、これが回収されて石炭ミルに投入されることになり、石炭の粉砕能力を著しく低下させることになる。
したがって、上記従来技術で混焼されるバイオマス燃料の粒子の大きさは、完全に炭化されて炉底に落下する範囲内のものに限られる。
【0010】
バイオマス燃料の粒子が大きい(例えば7mm)と、木質の芯が残ったもの(図5の粗粒B)がクリンカ処理装置17に多量に落下することになるので、バイオマス燃料の粉砕粒度を余り大きくすることはできない(因みに、粒子が大きいほど火炉内での落下速度が速くなり、火炉での浮遊燃焼時間が短くなり、したがって、未燃分が大幅に増加する)。
【0011】
なお、上記特許文献には乾式クリンカ処理装置の具体的構造は記載されていないから、その構造、冷却方法は明らかでない。クリンカ処理装置として乾式クリンカ処理装置は公知であり、その一例が特公平7−56375号公報に記載されている。この公知の乾式クリンカ処理装置の概略は図7に示されているとおりであり、耐熱性の高い金属製のコンベアベルトを備えており、ボイラとの間に設けられているトランジションホッパによりボイラのボトムアッシュが 該コンベアベルトに案内される。
乾式クリンカ処理装置のケーシングは密閉構造であり、そのコンベアベルトの側部に複数の冷却空気吸引孔があって、これによってクリンカ冷却空気が供給されている。
【0012】
火炉の底部(炉底)に落下したボトムアッシュは上記コンベアベルトで受け止められてゆっくりと移送され(毎秒約5mm)、徐々に空冷されて約1時間(コンベアベルトの搬送時間)後に、排出されてクリンカ収集手段に回収される。このものにおいては、上記クリンカ処理装置の本体内に冷却空気が供給され、コンベアベルトに落下したボトムアッシュが本体内を移動する間にゆっくりと空冷されて外に排出される。本体に供給された冷却空気は焼けたボトムアッシュによって加熱されて高温になり、火炉に吸引され、火炉内の燃焼ガスに合流する。
【0013】
微粉炭焚きボイラに乾式クリンカ処理装置が適用されるとき、当該乾式クリンカ処理装置に供給される冷却空気量は制限されていて、火炉に供給される燃焼空気量の約2%程度であり、クリンカ処理装置の本体(図7)内を排出位置まで移動する間(約1時間)にボトムアッシュがほぼ100℃まで冷却される。
【0014】
また、バイオマス粒子が上昇気流に乗って火炉内でのバイオマス燃料の燃焼時間を長くするように、バイオマスバーナを微粉炭バーナよりも上方位置に配置した従来技術がある(図6)。このものは、微粉炭バーナ4が火炉1の下方に配置されており、バイオマスバーナ5が火炉1の上方に配置されている。火炉1の下部に石炭微粉の燃焼領域F1があり、上部にバイオマス燃料の燃焼領域F2があって、微粉炭バーナ4の火炎の吹き上がりを利用してバイオマス燃料の降下を遅らせ、火炉1内での浮遊時間を長くしたもの(以下これを「公知技術」という)である(特開2007−101135号公報、特開2005−241108号公報)。この公知技術に倣えば、前記従来技術のバイオマスバーナ5が微粉炭バーナ4の上方に配置されて、上方の燃焼領域でバイオマス燃料が燃焼され、その火炉内での燃焼時間が若干長くなる。したがって、バイオマス燃料の粉砕粒度を幾分大きくすることができる。しかし、バイオマス燃料の粉砕粒度を大きくすると、5mm以上の粗粒Bの割合が高くなるので、バイオマスバーナ5が微粉炭バーナ4の上方に配置されて火炉内燃焼時間が若干長くなっても、木質の芯が残るという問題を解消することはできない。
【0015】
また、混焼ボイラに関する上記従来技術はバイオマス燃料の炭化物を回収し石炭バンカに投入するために、湿式分離装置、搬送ライン、貯蔵バンカ、切り出し装置等が必要であり、このために、既存の石炭ボイラでバイオマス燃料を混焼させるための追加設備が大がかりであり、この設備コストが非常に嵩むという問題がある。
【特許文献1】特開2005−291531号公報
【特許文献2】特開2007−101135号公報
【特許文献3】特開2005−241108号公報
【特許文献4】特公平7−56375号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
バイオマス燃料の利用を促進し、その利用効果を高め、かつその設備コスト、運転コストを低減するためには、微粉炭焚きボイラのバイオマス燃料との混焼方法を工夫して、バイオマス燃料を大きい粒度で火炉に供給し、かつバイオマス燃料の混焼率を高くし、さらに、バイオマス燃料を完全燃焼させて灰にしてしまう必要がある。そして、そのための付加設備を少なくする必要がある。
【0017】
そこで、この発明は、専用石炭ミルと専用バイオマスミルとを備えていて、専用粉砕機で粉砕したバイオマス燃料を石炭微粉と混焼させるバイオマス燃料混焼微粉炭焚きボイラについて、特別の設備を付加することなしで粗粒のバイオマス燃料を完全燃焼させて灰にすることができ、かつ、その混焼率を高められるようにバイオマス燃料の混焼方法を工夫することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するための手段は、専用石炭ミル、専用バイオマスミルを備えていて、専用バイオマスミルで粉砕されたバイオマス燃料を供給して微粉炭と混焼させるバイオマス混焼微粉炭焚きボイラを前提にして、次の(イ)〜(ニ)によるものである。
(イ)混焼されるバイオマス燃料が粉砕粒度5mm以上の粉粒体であり、
(ロ)上記ボイラのトランジションホッパの下方に乾式クリンカ処理装置が設けられており、
(ハ)上記乾式クリンカ処理装置が燃焼空気供給手段を備えていて当該乾式クリンカ処理装置に落下したバイオマス燃料の未燃分をコンベアベルト上で完全燃焼させて灰にするようになっており、
(ニ)燃焼空気供給手段等によって上記乾式クリンカ処理装置に供給される空気量と火炉に供給される燃焼空気量で微粉炭及びバイオマス燃料が燃焼されるように、供給される燃焼空気量が制御されていること。
【0019】
なお、上記(ハ)の「乾式クリンカ処理装置に落下したバイオマス燃料の未燃分が完全燃焼される」は、乾式クリンカ処理装置に落下したバイオマス燃料の未燃分がほぼ完全に燃焼されることを意味する。仮に、未燃分が若干残っても、それはバイオマス燃料の可燃分が若干廃棄されるだけで特に運転に支障をきたすことはなく、バイオマス燃料を混焼させ、未燃分を乾式クリンカ処理装置で燃焼させてその燃焼熱を有効に利用するという初期の目的は十分に達成されるので、特に問題はないからである。
また、上記(ニ)は、乾式クリンカ処理装置に燃焼空気が供給されることによって、クリンカを空冷するために必要な冷却空気量よりも多量の空気が乾式クリンカ処理装置に供給され、これが火炉の下端から火炉内に吸引されて火炉内での燃焼に供されることになるので、乾式クリンカ処理装置に供給される空気の増分を考慮して、火炉内に風箱から吹き込まれる燃焼空気量が低減されるように、その給気制御がなされることを意味する。
そして、乾式クリンカ処理装置に供給される上記燃焼用空気量が比較的少量の場合はこれを無視して風箱から火炉に吹き込まれる空気量を制御してもボイラ性能の低下は微小であるから、この要件(ニ)を省略することができる。
【0020】
〔作用〕
専用ミルでバイオマス燃料を粉砕粒度5mm以上に粉砕してこれを微粉炭と混焼させる。このときバイオマス燃料は微粉炭バーナによる燃焼ガスで吹き上げられて浮遊燃焼し、粗大粒子は火炉内を降下し、最終的にトランジションホッパの下方に配置された乾式クリンカ処理装置に落下する。このとき、3mm以下の微粒分は火炉内で完全に燃え尽きて灰になり、5mm程度の中粒分はほぼ炭化状態で乾式クリンカ処理装置に落下し、また、5mmよりも大幅に大きい粗粒Bは木質の芯が残ったままでコンベアベルトに落下する。
【0021】
他方、上記乾式クリンカ処理装置に燃焼空気供給手段によって多量の燃焼空気が供給されており、トランジションホッパ20(図1参照)の直下における酸素濃度は十分に高い。他方、コンベアベルト23(図1参照)には高温のボトムアッシュが落下しており、落下直後のその表面温度は高い。そして、粗大バイオマス燃料は燃えながら乾式クリンカ処理装置のコンベアベルト上に落下する。
以上のことから、バイオマス燃料の未燃分はコンベアベルトに落下した後もその上で燃え続け、数分以内に燃え尽きて灰になる。
乾式クリンカ処理装置のコンベアベルト23の移動速度は極めて微速であり(約5mm/秒)、クリンカ収集手段へ排出されるまでの所要時間は約1時間である。
【0022】
乾式クリンカ処理装置に落下した未燃バイオマスの燃焼ガスは、火炉の下端からトランジションホッパ20を介して火炉1内へ吸引され、微粉炭、バイオマス燃料の燃焼ガスと合流する。
本発明は、木質の芯が残っている未燃バイオマスを乾式クリンカ処理装置のコンベアベルトに多量に落下させ、乾式クリンカ処理装置に燃焼空気供給手段を設けて当該燃焼空気供給手段によって多量の燃焼空気を供給して、落下した未燃バイオマスをコンベアベルト上で積極的に燃焼させる。いわば、バイオマス燃料を芯付きのままで多量に落下させ、コンベアベルトをトランジションホッパの直下における燃焼皿として利用してその上で積極的に燃焼させ、その燃焼熱を火炉内に取り込んでいる。これが本発明のバイオマス燃料混焼方法の基本であり、これが燃料を火炉内で全て燃焼させるという従来の方法と根本的に異なるところである。
【0023】
コンベアベルトに落下したバイオマス燃料を燃焼させるためには、木材の燃焼に必要な温度、酸素及び時間が必要であるが、温度は、火炉から落下してきたボトムアッシュは1000℃以上であるから十分であり、コンベアの移動速度は微速であるから燃焼時間は十分確保される。したがって、高温のコンベアベルト上のバイオマス燃料に十分に空気が供給されれば、当該バイオマスは十分に燃焼が継続される。
コンベアベルト上のバイオマス燃料にこれを完全燃焼させるのに十分な空気量が供給されるときの余剰酸素は火炉内に吸引されて火炉内燃焼に供されることになる。コンベアベルト上のバイオマス燃料に空気を供給する方法として、コンベアベルト上のバイオマス燃料に効率的に吹き付ける工夫が望まれ、効率的に空気が供給されると燃焼空気の過剰分を少なくすることができる。
いずれにしても、本発明によるバイオマス燃料混焼微粉炭焚きボイラに供給される総燃料量と総空気量は、通常の方法とほとんど違いはなく、したがって、燃焼空気供給のための追加設備が僅かである。
したがって、本発明の混焼方法を実施するための追加設備は極めて僅かであり、また、バイオマス燃料の粉砕機として小型のものを採用できるので、設備コスト及び運転コストが大幅に改善される。
【0024】
この発明によれば、バイオマス混焼率及び粉砕粒度の制約は大幅に緩和される。
しかし、混焼率が高いほど、また、粉砕粒度が5mmよりも大きいほど未燃バイオマスのコンベアベルトへの落下量が増大し、これに伴って、乾式クリンカ処理装置への燃焼空気供給量を増大させることになる。
乾式クリンカ処理装置への空気供給量が増大しても、ボイラに供給される総空気量に大差はないが、火炉内で通常の燃焼を行う時の空気過剰率が15〜20%であるのに対して、コンベアベルト上で多量のバイオマス燃料を焼却する時は50〜100%の過剰空気が必要である。余剰の空気は火炉内に吸引されるものの、火炉側壁に沿って上昇し火炉内での燃焼に寄与しないものもある。したがって、バイオマス燃料のコンベアベルトへの落下量が多いほど、厳密には総空気過剰率が高くなり、ボイラ効率が低下する可能性があるが、その低下率は僅かである。
したがって、火炉に投入したバイオマス燃料の全てを火炉内で燃焼させるのが好ましいが、火炉から落下した粗粒が乾式クリンカ処理装置のコンベアベルト上で燃やされ、その燃焼熱エネルギーがボイラ内に導入されれば、熱効率の点では大差がない。他方、上記のシステムではバイオマス粉砕機が小型化されその運転動力も低減されるので、設備コスト、運転コストの低減効果は顕著である。
【0025】
他方、バイオマス燃料の利用は、微粉炭焚きボイラでバイオマス燃料を混焼させることの経済性と社会的要請による。経済性は使用するバイオマス燃料の入手価格、加工価格の如何、石炭燃料の価格の如何によって左右され、社会的要請は化石燃料の消費量抑制、CO排出削減促進、地域のバイオマスの有効利用の促進等である。
実際においてバイオマス燃料の粉砕粒度をどの程度にするか、また、バイオマス燃料の混焼率をどの程度にするかは、以上のようなことを考慮して適宜選択されることである。
【0026】
〔実施態様1〕
実施態様1は、微粉炭バーナよりも上方位置にバイオマスバーナを配置したことである。
このバイオマスバーナの配置は、従来公知の配置である(図6)が、この発明においてバイオマスバーナの配置を微粉炭バーナよりも上方に配置すると、バイオマス燃料の火炉内での浮遊燃焼時間が長くなり、その分だけ落下する未燃分(炭化分及び木質分)が減少し、したがって、その分だけ乾式クリンカ処理装置に供給される燃焼空気量が減少される。それゆえ、バイオマス混焼微粉炭焚きボイラの熱効率の低下を抑制し、バイオマス燃料の混焼率を向上させることができる。
【0027】
〔実施態様2〕
実施態様2は、燃焼空気供給手段を冷却空気供給手段とは別個の空気供給手段とし、これをトランジションホッパの近傍に配置したことである。
コンベアベルト上に落下した未燃バイオマスに、上記燃焼空気供給手段によって新気が供給されることになり、当該バイオマス燃料がコンベアベルト上で引き続き燃焼され、その燃焼が促進される。したがって、少ない給気量で極めて短時間に未燃分が燃え尽きることになり、コンベアベルト上で未燃分が積み重なって燃焼が遅延されることはないから、未燃分が確実に燃焼され、排出されるクリンカに未燃分として残ることはない。
上記の燃焼空気供給手段は、コンベアベルトの上面に向けて空気を高速で吹き付けるように空気ノズルを備えたものであれば、落下した未燃バイオマスの燃焼が一層促進される。
【発明の効果】
【0028】
この発明は専用ミルでバイオマス燃料を粉砕するので、バイオマス燃料粉砕のために石炭ミルの石炭粉砕能率が低下されることはなく、また、バイオマス燃料の粉砕粒度5mm以上であるから、バイオマス燃料の粉砕動力が著しく軽減される。
乾式クリンカ処理装置に燃焼空気を供給して落下した多量の未燃バイオマスを乾式クリンカ処理装置上で積極的に燃焼させて速やかに燃え尽きさせるから、粉砕粒度5mm以上のバイオマス燃料を高い混焼率で燃焼させることがきる。
【0029】
そして、僅かなボイラ効率の低下を問題にしなければ、混焼率を20%にしてもバイオマス燃料を完全燃焼させることができ、この場合でもバイオマス燃料の未燃分(炭化分及び木質部)が冷却されたボトムアッシュに残ることはない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
粉砕粒度5mmのバイオマス燃料を毎時2.6tと微粉炭を毎時10.8tとを混焼させ(バイオマスの熱量混焼率10%)て、蒸気を毎時105t発生させるバイオマス混焼微粉炭焚きボイラの実施例を図1を参照して説明する。
この実施例では、含水率20%まで乾燥した木質(雑木)のバイオマス燃料が毎時2.6t混焼される。
図1の実施例のバイオマス混焼微粉炭焚きボイラでは、火炉の下部に微粉炭バーナ4が設けられ、当該バーナ4よりも上方位置にバイオマスバーナ5が設けられており、下方にトランジションホッパ20を介して乾式クリンカ処理装置21が設けられている。この乾式クリンカ処理装置21の構造は、図7に示す従来公知の乾式クリンカ処理装置と同じであって、ケーシング22内に耐熱性の高いコンベアベルト23があり、落下したボトムアッシュを受け止め、図において左側から右側に秒速5mm程度で移動するようになっている。そして、乾式クリンカ処理装置21のケーシング22の側壁に、図7に示すものと同様に多数の冷却空気吸引孔31があり、さらに、トランジションホッパ20の近傍に空気源、配管等で構成される燃焼空気供給手段31aが設けられている。
上記冷却空気吸引孔31は、外気に開口した給気孔であってフラップ板で開閉されるようになっている。炉内圧が負圧のときフラップが開いて上記冷却空気吸引孔31から外気が吸引され、正圧のとき上記フラップで閉じられて炉内燃焼ガスの噴出が阻止される。
【0031】
石炭バンカ11から供給された石炭は石炭ミル6で粉砕され、微粉炭バーナ4で火炉に供給されて下部領域F1で燃焼される。一方、バイオマス燃料はバイオマスバンカ12に投入され、バイオマスミル13で粉砕粒度5mmに粉砕され、このバイオマス燃料の粉粒体が上方のバイオマスバーナ5から火炉に供給されて上部領域F2で燃焼され、下部領域F1の燃焼ガスで吹き上げられて浮遊し、その中粒、粗粒が火炉1の内壁側を降下し、トランジションホッパ20を経て乾式クリンカ処理装置21のコンベアベルト23上に落下する。
【0032】
バイオマス燃料のうちの5mm未満の微粒sはコンベアベルトに落下するまでの間に火炉1内で完全に燃え尽きて灰になり、その一部が未燃の炭化物になる。他方、5mmを若干超える中粒b、5mmを大幅に超える粗粒Bの大方は、未燃の炭化物または木質の芯が残った炭化物の状態でコンベアベルトに落下する。コンベアベルトに落下したとき、これに燃焼空気供給手段31aによって必要な燃焼空気が供給されるので未燃分は落下後も燃え続け、3分程度で燃え尽きる。他方、コンベアベルト上のボトムアッシュは冷却空気吸引孔31から供給される冷却空気(トランジションホッパ20を経て火炉1に向って流れる冷却空気)によって十分に冷却され、約1時間後に乾式クリンカ処理装置21から排出されてクリンカ収集部41に収容される。
【0033】
蒸気発生量が毎時105tのこの実施例のボイラは、混焼されるバイオマス燃料は粉砕粒度5mmである。このバイオマス燃料では5mm以下の微粉が90重量%であり、5mmを超える中粒と粗粒が10重量%である。そしてバイオマス燃料の熱量混焼率が10%であり、微粉炭の供給量が毎時10.8tであり、バイオマス燃料(含水率20%)供給量が毎時2.6tである。
この時乾式クリンカ処理装置21に落下する可能性のあるバイオマスの量は5mm以上の毎時0.26tであり、未燃分の内訳は、木質分が約70%(揮発成分)炭化物が30%(残炭成分)である。0.26tのうち、5mmに近い中粒の大部分は落下途中で燃焼し、総体として約半分の毎時0.13t程度がコンベアベルトに落下すると見られる。
【0034】
トランジションホッパ20の近傍において燃焼空気供給手段31aによって毎時1,000Nmの空気が供給される(Nm(ノーマル・リューベ) は1気圧0℃での体積)。トランジションホッパの下端の左右両側に燃焼空気ノズル31bがあり、この燃焼空気ノズル31bからトランジションホッパ20の直下のコンベアベルト23の上面に向けて斜めに秒速30m程度で当該空気が吹き付けられる。
これによってコンベアベルトに落下したバイオマス燃料に燃焼空気が直接吹き付けられる。そして毎秒5mm程度で移動しているコンベアベルト23に落下した未燃バイオマスは、落下してから3分程度で燃え尽きて灰になる。
図2(a)では、左右の燃焼空気ノズル31bからコンベアベルト23の表面に向けて斜めに燃焼空気が吹き付けられるように、燃焼空気ノズル31bが配置されているが、図2(b)、コンベアベルトの裏面に向けて燃焼空気が吹き付けられるように、燃焼空気ノズル31bを配置することもできる。
なお冷却空気吸引孔31によって毎時2,000Nmの空気がコンベアベルトの下側に供給される。
【0035】
この実施例のボイラ火炉内での燃焼に供給される空気量は、毎時10万Nmである。乾式クリンカ処理装置に燃焼空気供給手段31aによって供給される燃焼空気量毎時1,000Nmと、冷却空気吸引孔31による冷却空気量毎時2,000Nmの合計は毎時3,000Nmであり、これらの空気がトランジションホッパ20を経て火炉1に吸引されるから、風箱3から火炉1に供給される燃焼空気量は毎時97,000Nmであり、この空気が燃焼空気供給装置50によって供給される。
【0036】
この実施例で使用している乾式クリンカ処理装置21の基本構造は、上記特公平7−56375号公報に記載されているものと同じであり、コンベアベルト23の断面構造は図3(a)に示すように、金属線材による網ベルト23aと鋼板23bによるものであり、図3(b)に示されているように本体22のガイドローラ25a,25bに支持されている。
網ベルト23aの線材を横桟23dと鋼板23bとで鋏み、ボルト、ナット8,10で固定しており、多数の鋼板23bがその一部を重ね合わせた状態で組み合わされていて、これによって網ベルト23aがカバーされている。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】は、実施例の断面図
【図2】(a)は、図1におけるX−X断面図、(b)は、燃焼空気ノズルの他の配置の例を示すX−X断面図
【図3】(a)は、実施例の乾式クリンカ処理装置のコンベアベルトの一部の断面図、(b)は、他の断面図
【図4】は、従来例の断面図
【図5】(a)は、上記従来例におけるバイオマス燃料の燃焼状態の説明図、(b)は、未燃バイオマスの模式的な断面図
【図6】は、他の従来例における微粉炭バーナとバイオマスバーナの配置を示す断面図
【図7】は、公知の乾式クリンカ処理装置を模式的に示す断面図
【図8】は、粉砕バイオマスの粒度別の粉砕粒度分布の一例を示すグラフ
【図9】は、平均粉砕粒度と動力原単位の関係の一例を示すグラフ
【符号の説明】
【0038】
1:火炉
3:風箱
4:微粉炭バーナ
5:バイオマスバーナ
6:石炭ミル
11:石炭バンカ
12:バイオマスバンカ
13:バイオマスミル
17:クリンカ処理装置
20:トランジションホッパ
21:乾式クリンカ処理装置
22:ケーシング
23:コンベアベルト
24:駆動輪
25a,25b:ガイドローラ
31:冷却空気吸引孔
31a:燃焼空気供給手段
31b:燃焼空気ノズル
50:燃焼空気供給装置
s:バイオマス粉体の微粒
b:バイオマス粉体の中粒
B:バイオマス粉体の粗粒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
専用石炭ミル、専用バイオマスミルを備えていて、専用バイオマスミルで粉砕されたバイオマス燃料をバーナに供給して微粉炭と混焼させるバイオマス混焼微粉炭焚きボイラであって、
混焼されるバイオマス燃料が粉砕粒度5mm以上の粉粒体であり、
上記ボイラの下方に乾式クリンカ処理装置が設けられており、
上記乾式クリンカ処理装置が燃焼空気供給手段を備えていて当該乾式クリンカ処理装置に落下したバイオマス燃料の未燃分をクリンカコンベア上で完全燃焼させることを特徴とするバイオマス混焼微粉炭焚きボイラ。
【請求項2】
専用バイオマスミルで粉砕されたバイオマス燃料をバーナに供給して微粉炭と混焼させるバイオマス混焼微粉炭焚きボイラであって、
混焼されるバイオマス燃料が粉砕粒度5mm以上の粉粒体であり、
上記ボイラの下方に乾式クリンカ処理装置が設けられており、
上記乾式クリンカ処理装置が燃焼空気供給手段を備えていて当該乾式クリンカ処理装置に落下したバイオマス燃料の未燃分をクリンカコンベア上で完全燃焼させるようになっており、
燃焼空気供給手段等によって上記乾式クリンカ処理装置に供給される空気量と火炉に供給される燃焼空気量で微粉炭及びバイオマス燃料が良好に燃焼されるように、供給される燃焼空気量が制御されていることを特徴とするバイオマス混焼微粉炭焚きボイラ。
【請求項3】
微粉炭バーナよりも上方位置にバイオマスバーナを配置している請求項1又は請求項2のバイオマス混焼微粉炭焚きボイラ。
【請求項4】
燃焼空気供給手段を冷却空気供給手段とは別個の空気供給手段とし、これをトランジションホッパの近傍に配置したことを特徴とする請求項1又は請求項2のバイオマス混焼微粉炭焚きボイラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−276027(P2009−276027A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−129783(P2008−129783)
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【出願人】(308007505)カワサキプラントシステムズ株式会社 (51)
【Fターム(参考)】