説明

バイオマス燃料およびその製造方法

【課題】家畜排泄物や食品廃棄物等の有機廃棄物を利用して、低コスト、かつ木質系廃棄物の有効利用を図ることが可能なバイオマス燃料及びその製造方法の提供。
【解決手段】家畜排泄物、食品廃棄物のいずれか一方または双方を含有する高含水率有機廃棄物に含まれる塩素および/または塩素化合物を除去した脱塩素有機廃棄物に、水分調整剤として木質系廃棄物を添加した後、発酵させてなるバイオマス燃料であって、前記木質系廃棄物が前記バイオマス燃料全体に対して、乾燥時で10質量%以上かつ70質量%以下の範囲で含まれるとともに、塩素濃度が4000ppm以下、含水率が40質量%以下であることを特徴とするバイオマス燃料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマス燃料およびその製造方法に関し、更に詳しくは、豚糞、牛糞、鶏糞等の畜糞尿を含む家畜排泄物、あるいは百貨店、スーパーマーケット、コンビニエンスストア等にて廃棄される食品廃棄物等を利用して製造されるバイオマス燃料およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鶏糞、牛糞、豚糞等の畜糞尿を含む家畜排泄物、あるいは百貨店、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、飲食店等にて廃棄される売れ残り弁当や各種残飯等の食品廃棄物は、そのままの状態もしくは発酵させた状態で肥料として利用するのが一般的である。また、焼却炉等を用いて焼却することで減容化し、得られた焼却灰を肥料として利用することもある。
【0003】
特に、近年、家畜排泄物の管理に関する適正化法が施行されたことにもより、畜糞尿を含む家畜排泄物の多くが肥料化されることが予想される一方、農地の減少傾向により使用される肥料の総量も減少傾向にある。そこで、家畜排泄物や食品廃棄物等の有機廃棄物を有効利用するために、肥料以外の用途の多角化が急務になっており、エネルギーとしての利用もその一つである。
【0004】
家畜排泄物や食品廃棄物等の有機廃棄物を燃料化する方法としては、例えば、有機廃棄物と水とを混合してスラリーを形成した後、このスラリーを含水率が90質量%以下になるまで脱水し、脱塩素有機廃棄物(脱水ケーキ)を得る。そして、この脱塩素有機廃棄物を発酵、乾燥させてバイオマス燃料を形成する。
【0005】
上述したようなバイオマス燃料の製造工程で、脱塩素有機廃棄物を発酵させる際に、脱塩素有機廃棄物をそのまま発酵させようとしても、含水率が80〜90質量%程度と高いため、発酵が進みにくい。発酵を効率的に促進させるためには、含水率を50〜70質量%程度にまで下げる必要がある。
【0006】
従来、脱塩素有機廃棄物を、発酵に適した含水率(例えば、50〜70質量%程度)に下げるために、例えば、次のような方法が行われている。
(1)脱塩素有機廃棄物を、天日乾燥やドライヤー乾燥などによって乾燥させ、含水率を下げる方法(例えば、特許文献1、2参照)。
(2)脱塩素有機廃棄物に対して、おが屑、籾殻、バーク材等を混合させて含水率を下げる方法。
【特許文献1】特開平4−4033号公報
【特許文献2】特開平11−77095号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述したような脱塩素有機廃棄物の含水率を下げる方法は、次のような課題があった。即ち、脱塩素有機廃棄物を天日乾燥させる方法では、寒冷地や冬季、多湿気候などの環境下では充分に含水率を下げることが困難であり、また、所定の含水率まで水分を蒸発させるのに時間がかかるという問題点があった。
また、脱塩素有機廃棄物をドライヤー乾燥など乾燥機を用いてて乾燥させる方法では、化石燃料や多量の電力が必要となるため、製造コストが高くなるという問題点があった。また、温室効果ガスの排出量が増加して環境にも好ましくない。
一方、脱塩素有機廃棄物に対して、おが屑、籾殻、バーク材等を混合させる方法は、近年、これらの材料の発生量が減少した結果、こうしたおが屑、籾殻、バーク材等を低コストで大量に入手することが困難になりつつあり、製造コストが高くなるという問題点があった。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、家畜排泄物や食品廃棄物等の有機廃棄物を利用して、低コスト、かつ木質系廃棄物の有効利用を図ることが可能なバイオマス燃料及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は次のようなバイオマス燃料及びその製造方法を提供した。
すなわち、本発明のバイオマス燃料は、家畜排泄物、食品廃棄物のいずれか一方または双方を含有する高含水率有機廃棄物に含まれる塩素および/または塩素化合物を除去した脱塩素有機廃棄物に、水分調整剤として木質系廃棄物を添加した後、発酵させてなるバイオマス燃料であって、前記木質系廃棄物が前記バイオマス燃料全体に対して、乾燥時で10質量%以上かつ70質量%以下の範囲で含まれるとともに、塩素濃度が4000ppm以下、含水率が40質量%以下であることを特徴とする。
【0010】
前記木質系廃棄物は、平均粒径が100mm以下であるのが好ましい。
前記木質系廃棄物は、含水率が50質量%以下であるのが好ましい。
【0011】
また、本発明のバイオマス燃料の製造方法は、家畜排泄物、食品廃棄物のいずれか一方または双方を含有する高含水率有機廃棄物を燃料化するための方法であって、前記高含水率有機廃棄物に脱水処理を施すことにより、この高含水率有機廃棄物に含まれる 塩素および/または塩素化合物を除去して脱塩素有機廃棄物とし、次いで、この脱塩素有機廃棄物に、含水率が50質量%以下の木質系廃棄物を水分調整剤として添加した後、発酵を行うことにより、塩素濃度が4000ppm以下、含水率が40質量%以下のバイオマス燃料を得ることを特徴とする。
【0012】
前記木質系廃棄物は、前記脱塩素有機廃棄物に対して、乾燥時で10質量%以上かつ230質量%以下の範囲で含まれることが好ましい。
前記木質系廃棄物は、含水率が50質量%以下であることが好ましい。
前記木質系廃棄物は、平均粒径が100mm以下であることが好ましい。
前記脱塩素有機廃棄物を発酵させた後に、更に、分級、粉砕、解砕のいずれか1つまたは2つ以上を行い、粒度を調整することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のバイオマス燃料によれば、含水率が50質量%以下の木質系廃棄物を水分調整剤として添加した後、発酵を行うことにより、塩素濃度を4000ppm以下、含水率を40質量%以下としたので、バイオマス燃料としての十分な発熱量を確保することができ、高位の発熱量を有する(燃焼効率が高い)燃料として有効利用することができる。
【0014】
また、塩素濃度が4000ppm以下と極めて低いので、燃焼装置等においても腐食や配管等の閉塞等のトラブルが発生する虞がなく、また、セメント焼成設備に投入した場合においても、セメントの操業や品質に悪影響を及ぼす虞が無い。そして、木質系廃棄物を水分調整剤として用いることにより、従来は埋立処分などによって廃棄されていた木質系廃棄物を有効利用することができる。
【0015】
また、本発明のバイオマス燃料の製造方法によれば、含水率が90質量%以下の脱塩素有機廃棄物に対して、水分調整剤として木質系廃棄物を10質量%以上かつ230質量%以下の範囲で添加させる事によって、次工程である発酵工程で、脱塩素有機廃棄物の発酵に適した含水率、即ち50〜70質量%程度に低減する事ができる。
【0016】
水分調整剤として木質系廃棄物を用いる事により、脱塩素有機廃棄物を天日乾燥させる方法などと比較して、冷地や冬季、多湿気候などの環境下でも充分に含水率を下げることができ、また、所定の含水率まで短時間で低減させることができる。また、脱塩素有機廃棄物をドライヤー乾燥など乾燥機を用いてて乾燥させる方法と比較して、化石燃料や多量の電力が不要であり、低コストでバイオマス燃料を製造することができる。また、水分調整剤として木質系廃棄物を用いる事により、木材を含む建築廃材などの木質系廃棄物の有効活用が促進され、環境対策の面からも優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明のバイオマス燃料及びその製造方法を実施するための最良の形態について説明する。
なお、本実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
本発明のバイオマス燃料は、家畜排泄物、食品廃棄物のいずれか一方または双方を含有する高含水率有機廃棄物に含まれる塩素および/または塩素化合物を除去した脱塩素有機廃棄物に、水分調整剤として木質系廃棄物を添加した後、発酵させてなるバイオマス燃料であって、前記バイオマス燃料全体に対して、前記木質系廃棄物を10質量%以上かつ70質量%以下の範囲で含むとともに、塩素濃度が4000ppm以下、含水率が40質量%以下であることを特徴とする。
【0018】
このバイオマス燃料は、脱塩素有機廃棄物の水分調整剤として用いる木質系廃棄物を、乾燥質量換算で10質量%以上かつ70質量%以下、より好ましくは10質量%以上かつ60質量%以下の範囲で含んでいる。この木質系廃棄物は、平均粒径が100mm以下、好ましくは30mm以下である。更に、この木質系廃棄物は、含水率が50質量%以下、好ましくは30質量%以下である。
【0019】
このような木質系廃棄物の排出源としては、例えば、木造建築物の解体等で生じた木材砕片、間伐材の切断屑、剪定枝などが挙げられる。なお、この木質系廃棄物は、木材だけに限定されるものではなく、木材を集成している接着剤、防腐剤、塗料なども含まれる。
【0020】
このような木質系廃棄物を水分調整剤として用いて製造したバイオマス燃料は、塩素濃度を4000ppm以下、含水率を40質量%以下としたので、バイオマス燃料としての十分な発熱量を確保することができ、高位の発熱量を有する(燃焼効率が高い)燃料として有効利用することができる。
【0021】
また、塩素濃度が4000ppm以下と極めて低いので、燃焼装置等においても腐食や配管等の閉塞等のトラブルが発生する虞がなく、また、セメント焼成設備に投入した場合においても、セメントの操業や品質に悪影響を及ぼす虞が無い。このバイオマス燃料は、セメント焼成設備の燃料としての他、廃棄物発電用、廃棄物ボイラー用等、広範囲の燃料として有効利用することができる。よって、従来は埋立処分などによって廃棄されていた木質系廃棄物を燃料として有効利用することができる。
【0022】
以下、本発明に係るバイオマス燃料の製造方法を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明のバイオマス燃料の製造方法に用いられるバイオマス燃料の製造設備の構成を示す概略構造図である。
図1において、1は高含水率有機廃棄物を排出する排出源、2は高含水率有機廃棄物の脱塩設備、3は燃料化設備である。
【0023】
ここで、高含水率有機廃棄物とは、含水率が60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上の有機廃棄物のことであり、例えば、豚舎、牛舎、鶏舎等の畜舎を水洗により洗浄した際に排出される豚糞尿、牛糞尿、鶏糞尿等の畜糞尿と多量の洗浄水とを含む排泄物含有処理水、豚糞尿、牛糞尿、鶏糞尿等の畜糞尿を等量以上かつ20倍量以下の水に投入・撹拌して得られる畜糞尿含有スラリー、使用済みの弁当容器や食品用容器を水洗により洗浄する際に排出される食品と多量の水とを含む食品廃棄物含有処理水、等が挙げられる。これらは、その用途や必要に応じて、1種のみ、または2種以上を混合して用いることができる。
【0024】
排出源1は、上記の高含水率有機廃棄物を排出する源であり、例えば、豚の糞や尿を含む排泄物を水洗により洗浄した排泄物含有処理水を排出する豚舎、牛の糞や尿を含む排泄物を水洗により洗浄した排泄物含有処理水を排出する牛舎、鶏のケージ等を水洗により洗浄した排泄物含有処理水を排出する鶏舎等の畜舎、豚糞尿、牛糞尿、鶏糞尿等の畜糞尿を等量以上かつ20倍量以下の水に投入・撹拌して得られる畜糞尿含有スラリーの貯留槽、百貨店、スーパーマーケット、コンビニエンスストア等にて廃棄される食品廃棄物やその容器等を水洗により洗浄した食品廃棄物含有処理水を排出する食品廃棄処理施設等が挙げられる。
これらの各施設から排出される高含水率有機廃棄物は、その用途によっては、2種類以上を混合してもよい。
【0025】
脱塩設備2は、排出源1から排出される高含水率有機廃棄物を塩素濃度が4000ppm以下になるように脱塩処理するための設備であり、高含水率有機廃棄物を貯留する1次槽11と、この高含水率有機廃棄物を固液分離するスクリーン等からなる1次固液分離器12と、固液分離により生じた1次スラリー(水溶液)を貯留し流量を調整する調整槽13と、この1次スラリーを1次曝気処理する1次曝気槽14と、1次曝気処理されたスラリーを固液分離するスクリーン等からなる2次固液分離器15と、この固液分離により生じた2次スラリー(水溶液)を2次曝気処理する2次曝気槽16と、この2次曝気処理されたスラリーを膜浸漬処理により汚泥と処理水とに分離する膜浸漬槽17と、この汚泥を脱水処理して含水率が85質量%以下の脱塩素有機廃棄物と処理水とに分離する脱水処理装置18と、膜浸漬槽17及び脱水処理装置18から排出される処理水を一旦貯留し放流する処理水受槽19とにより構成されている。
【0026】
燃料化設備3は、脱塩設備2から送り出される塩素濃度が4000ppm以下の脱塩素有機廃棄物を燃料化するための設備であり、脱塩設備2で得られた脱塩素有機廃棄物の含水率を木質系廃棄物25と混合する事により調整する水分調整設備21と、木質系廃棄物25を添加する事により含水率が調整された脱塩素有機廃棄物を発酵させる発酵設備22と、発酵させた脱塩素有機廃棄物を乾燥させる乾燥設備23と、乾燥設備23から取り出された固形状の乾燥脱塩素有機廃棄物に対して、分級、粉砕、解砕のいずれか1つまたは2つ以上を行うことにより直径10mm以下の粒子状とする分級機能を有する粉砕機24とにより構成されている。
【0027】
ここで、木質系廃棄物とは、平均粒径が100mm以下、好ましくは30mm以下であり、含水率が50質量%以下、好ましくは30質量%以下の木質系廃棄物である。こうした木質系廃棄物の供給源としては、例えば、木造建築物の解体等で生じた木材砕片、間伐材の切断屑、剪定枝などが挙げられる。なお、この木質系廃棄物は、木材だけに限定されるものではなく、木材を集成している接着剤、防腐剤、塗料なども含まれる。
【0028】
水分調整設備21は、上述した小片状の木質系廃棄物と脱塩素有機廃棄物とを均一に混合可能な混合機であればよく、例えば、ブレード式混合機、ショベルローダー等の重機を利用した撹拌などが好ましく挙げられる。
【0029】
発酵設備22は、木質系廃棄物25の混合によって含水率が調整された脱塩素有機廃棄物を発酵させる際に生じる発酵熱により、脱塩素有機廃棄物の乾燥が進行する。発酵設備としては、例えば、縦型密閉式発酵槽、横型開放式発酵槽、横型開放式堆肥舎等が好適に用いられる。更に乾燥させようとする時、乾燥設備23を使用してもよい。乾燥設備23としては、例えば、電気式乾燥機、ロータリードライヤー等が好適に用いられる。粉砕機23としては、分級機能を備えたスタンパ、ニーダー、ロールミル等が好適に用いられる。
【0030】
次に、図1に示すバイオマス燃料の製造設備を用いて、高含水率有機廃棄物を燃料化するための方法について説明する。
図2に示すように、排出源1から排出される上述した排泄物含有処理水、食品廃棄物含有処理水等の高含水率有機廃棄物を脱塩設備2の1次槽11に一旦貯留し、送液ポンプ(図示略)等を用いて1次固液分離器12に投入し、この高含水率有機廃棄物をケーキ(固形分)と1次スラリー(水溶液)に固液分離する(ステップS1)。次いで、この固液分離により生じた1次スラリーを調整槽13に投入して貯留し、この1次スラリーを調整槽13の計量槽等の定量供給装置を介して1次曝気槽14に導入し、この1次スラリーに1次曝気処理を施す。
【0031】
次いで、この1次曝気処理が施されたスラリーを、送液ポンプ(図示略)等を用いて2次固液分離器15に投入し、このスラリーをケーキ(固形分)と2次スラリー(水溶液)に分離し、この固液分離により生じた2次スラリーを2次曝気槽16に投入し、2次曝気処理を施す。次いで、この2次曝気処理されたスラリーを膜浸漬槽17に投入して膜浸漬処理を施し、汚泥と処理水とに分離する。次いで、この汚泥を脱水処理装置18に導入し、脱水処理を施す。
【0032】
これにより、高含水率有機廃棄物は、2段階の固液分離により効果的に脱塩処理が施され、塩素濃度が4000ppm以下、好ましくは3000ppm以下であり、かつ含水率が90質量%以下、好ましくは80質量%以下のケーキ状の脱塩素有機廃棄物となる(ステップS2)。
この膜浸漬槽17及び脱水処理装置18から排出される処理水は、処理水受槽19に一旦貯留された後、放流される。
【0033】
一方、1次固液分離器12及び2次固液分離器15各々から取り出されたケーキは、さらに塩素濃度の低い余剰汚泥と混合して用いることができる。
【0034】
次いで、この脱塩素有機廃棄物を燃料化設備3に搬送し、燃料化する。
まず、この脱塩素有機廃棄物と木質系廃棄物25とを水分調整設備21に投入する。そして、水分調整設備21で脱塩素有機廃棄物と、水分調整剤としての木質系廃棄物25とを均一に混合する(ステップS3)。これによって、水分調整設備21に投入される前の含水率が90質量%以下の脱塩素有機廃棄物を、木質系廃棄物25との混合により、次工程の発酵に適した含水率である50〜70質量%程度に調整させる。例えば、含水率が90質量%程度の脱塩素有機廃棄物の含水率を50〜70質量%程度に低減するようにするには、含水率が50質量%以下の木質系廃棄物を脱塩素有機廃棄物に対して10質量%以上かつ230質量%以下の割合で添加させれば良い。
【0035】
木質系廃棄物25により含水率が50〜70質量%程度に低減された脱塩素有機廃棄物は、発酵設備22に投入され、発酵過程にて発生する熱量を利用して乾燥され、乾燥脱塩素有機廃棄物となる(ステップS4)。この後、更に含水率を低減させるために、乾燥設備23によって乾燥を行うなとの工程を加えてもよい(ステップS5)。
【0036】
この乾燥脱塩素有機廃棄物は、単に乾燥または加熱乾燥しただけでは、球状、塊状、板状等、比較的大きな形状をしていることが多い。用途によってはこのままの形状でもよいが、セメント焼成設備等にて用いる場合等では、燃焼効率を向上させるために、粉砕機24を用いて分級、粉砕、解砕のいずれか1つまたは2つ以上を行い、直径10mm以下の粒子状とする(ステップS6)。
以上の工程で得られたバイオマス燃料は、保管庫26に搬入され、仕様別や品種別に選別され、保管され、必要に応じて取り出される。
【0037】
なお、発酵設備を経た乾燥脱塩素有機廃棄物は、乾燥が十分ならば乾燥設備23を経ずに粉砕機24を用いて分級、粉砕、解砕後にバイオマス燃料としてもよく、更に、乾燥設備23、粉砕機24を経ずに、発酵後の乾燥脱塩素有機廃棄物をそのままバイオマス燃料としてもよい。
【0038】
以上のように、本発明のバイオマス燃料の製造方法によれば、脱塩素有機廃棄物に対して水分調整剤として木質系廃棄物を10質量%以上かつ230質量%以下の割合で添加することによって、脱塩素有機廃棄物の発酵に適した含水率、即ち50〜70質量%程度に低減する事ができる。
【0039】
水分調整剤として木質系廃棄物を用いる事により、脱塩素有機廃棄物を天日乾燥させて水分調整する方法などと比較して、冷地や冬季、多湿気候などの環境下でも充分に含水率を下げることができ、また、所定の含水率まで短時間で低減させることができる。
また、脱塩素有機廃棄物をドライヤー乾燥など乾燥機を用いてて乾燥させる方法と比較して、化石燃料や多量の電力が不要であり、低コストでバイオマス燃料を製造することができる。また、水分調整剤として木質系廃棄物を用いる事により、木材を含む建築廃材などの木質系廃棄物の有効活用が促進され、環境対策の面からも優れている。
【実施例】
【0040】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
(実施例1)
含水率90質量%、塩素濃度6500ppmの豚糞100kg及び脱塩処理を施した上水道水50Lを含む高含水率有機廃棄物を、脱水機を用いて脱水し、含水率82質量%、塩素濃度2100ppmのケーキ(脱塩素豚糞)55kgを得た。
ついで、このケーキに水分調整材として平均粒径30mmの木質系建設廃材(含水率30質量%)20kgを添加・混合して、含水率63質量%、塩素濃度670ppmの脱塩素豚糞65kgを得た。
ついでこの脱塩素豚糞を横型開放式堆肥舎に搬入し、発酵熱を用いて乾燥させ乾燥脱塩豚糞30kgを得た。この乾燥脱塩豚糞の塩素濃度は670ppm、含水率は20質量%であった。
この乾燥豚糞をセメント製造設備のセメントキルンの窯前部の燃焼バーナーより吹き込み燃焼させたところ、セメントキルンの燃焼効率が低下することはなく、セメントキルンの操業やセメントの品質に影響はなかった。
【0041】
(実施例2)
含水率92質量%、塩素濃度8000ppmの豚糞100kg及び脱塩処理を施した上水道水50Lを含む高含水率有機廃棄物を、脱水機を用いて脱水し、含水率82質量%、塩素濃度2030ppmのケーキ(脱塩素豚糞)44kgを得た。
ついで、このケーキに水分調整材として平均粒径30mmの木質系建設廃材(含水率25質量%)20kgを添加・混合して、含水率64質量%、塩素濃度700ppmの脱塩素豚糞64kgを得た。
ついでこの脱塩素豚糞を縦型発酵機に搬入し、発酵熱を用いて乾燥させ乾燥脱塩豚糞31kgを得た。この乾燥脱塩豚糞の塩素濃度は700ppm、含水率は25質量%であった。
この乾燥豚糞をセメント製造設備のセメントキルンの窯前部の燃焼バーナーより吹き込み燃焼させたところ、セメントキルンの燃焼効率が低下することはなく、セメントキルンの操業やセメントの品質に影響はなかった。
【0042】
(実施例3)
含水率92質量%、塩素濃度6000ppmの豚糞100kgを、脱水機を用いて脱水し、含水率82質量%、塩素濃度2350ppmのケーキ(脱塩素豚糞)44kgを得た。
ついで、このケーキに水分調整材として平均粒径30mmの木質系建設廃材(含水率30質量%)15kgを添加・混合して、含水率69質量%、塩素濃度1020ppmの脱塩素豚糞59kgを得た。
ついでこの脱塩素豚糞を横型開放式堆肥舎に搬入し、発酵熱を用いて乾燥させ乾燥脱塩豚糞23kgを得た。この乾燥脱塩豚糞の塩素濃度は1020ppm、含水率は20質量%であった。
この乾燥豚糞をセメント製造設備のセメントキルンの窯前部の燃焼バーナーより吹き込み燃焼させたところ、セメントキルンの燃焼効率が低下することはなく、セメントキルンの操業やセメントの品質に影響はなかった。
【0043】
(比較例)
含水率92質量%、塩素濃度8000ppmの豚糞100kg及び脱塩処理を施した上水道水50Lを含む高含水率有機廃棄物を、脱水機を用いて脱水し、含水率82質量%、塩素濃度2030ppmのケーキ(脱塩素豚糞)44kgを得た。
ついで、このケーキを縦型発酵機に搬入し、発酵熱を用いて乾燥させ乾燥脱塩豚糞15kgを得た。この乾燥脱塩豚糞の塩素濃度は2030ppm、含水率は45質量%であった。
この乾燥豚糞をセメント製造設備のセメントキルンの窯前部の燃焼バーナーより吹き込み燃焼させたところ、セメントキルンの燃焼効率が低下し、セメントキルンの操業やセメントの品質に悪影響があった。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明におけるバイオマス燃料の製造方法にバイオマス燃料の製造設備の構成を示す概略構造図である。
【図2】本発明のバイオマス燃料の製造方法を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0045】
2 脱塩設備
3 燃料化設備
21 水分調整設備
22 発酵設備
24 粉砕機
25 木質系廃棄物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
家畜排泄物、食品廃棄物のいずれか一方または双方を含有する高含水率有機廃棄物に含まれる塩素および/または塩素化合物を除去した脱塩素有機廃棄物に、水分調整剤として木質系廃棄物を添加した後、発酵させてなるバイオマス燃料であって、
前記木質系廃棄物が前記バイオマス燃料全体に対して、乾燥時で10質量%以上かつ70質量%以下の範囲で含まれるとともに、塩素濃度が4000ppm以下、含水率が40質量%以下であることを特徴とするバイオマス燃料。
【請求項2】
前記木質系廃棄物は、平均粒径が100mm以下であることを特徴とする請求項1記載のバイオマス燃料。
【請求項3】
前記木質系廃棄物は、含水率が50質量%以下であることを特徴とする請求項1または2記載のバイオマス燃料。
【請求項4】
家畜排泄物、食品廃棄物のいずれか一方または双方を含有する高含水率有機廃棄物を燃料化するための方法であって、
前記高含水率有機廃棄物に脱水処理を施すことにより、この高含水率有機廃棄物に含まれる塩素および/または塩素化合物を除去して脱塩素有機廃棄物とし、
次いで、この脱塩素有機廃棄物に、含水率が50質量%以下の木質系廃棄物を水分調整剤として添加した後、発酵を行うことにより、
塩素濃度が4000ppm以下、含水率が40質量%以下のバイオマス燃料を得ることを特徴とするバイオマス燃料の製造方法。
【請求項5】
前記木質系廃棄物は、前記脱塩素有機廃棄物に対して、乾燥時で10質量%以上かつ230質量%以下の範囲で添加されることを特徴とする請求項4記載のバイオマス燃料の製造方法。
【請求項6】
前記木質系廃棄物は、含水率が50質量%以下であることを特徴とする請求項4または5記載のバイオマス燃料の製造方法。
【請求項7】
前記木質系廃棄物は、平均粒径が100mm以下であることを特徴とする請求項4ないし6のいずれか1項記載のバイオマス燃料の製造方法。
【請求項8】
前記脱塩素有機廃棄物を発酵させた後に、更に、分級、粉砕、解砕のいずれか1つまたは2つ以上を行い、粒度を調整することを特徴とする請求項4ないし7のいずれか1項記載のバイオマス燃料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−84082(P2010−84082A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−257243(P2008−257243)
【出願日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【Fターム(参考)】