説明

バイオマス系熱可塑性樹脂廃材の再資源化方法、バイオマス系熱可塑性樹脂成形体の製造方法およびバイオマス系熱可塑性樹脂成形体

【課題】バイオマス系熱可塑性樹脂廃材を、環境負荷が少なく、長期の使用にも耐え得る諸特性を備えるように再資源化し得る方法、ならびに当該方法を用いたバイオマス系熱可塑性樹脂成形体の製造方法およびバイオマス系熱可塑性樹脂成形体を提供する。
【解決手段】バイオマス系熱可塑性樹脂廃材に、スチレン系樹脂(A)、脂肪族ポリエステル樹脂(B)およびビニル系重合体(C)から選ばれる少なくとも1種を含む熱可塑性樹脂組成物を混合して、加熱溶融する工程を含むバイオマス系熱可塑性樹脂廃材の再資源化方法、ならびに当該方法を用いたバイオマス系熱可塑性樹脂成形体の製造方法およびバイオマス系熱可塑性樹脂成形体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマス系熱可塑性樹脂廃材の再資源化方法、バイオマス系熱可塑性樹脂成形体の製造方法およびバイオマス系熱可塑性樹脂成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、わが国では所得水準の向上に伴い、エアコンディショナ(本明細書において、エアコンとも呼称する)、テレビジョン受信機(本明細書において、テレビとも呼称する)、冷蔵庫、洗濯機などの家電製品、パーソナルコンピュータ、ワードプロセッサなどの情報機器、プリンタ、ファックスなどの事務用機器、その他の各種の家具、文具、玩具などが、一般家庭に高い普及率で備えられるようになっており、家庭生活における利便性は飛躍的に向上しつつある。
【0003】
一方、その結果、これらの家電製品をはじめとする製品の廃棄量も年々増加する傾向にある。ここで、従来は、これらの家電製品をはじめとする製品の廃棄物の再資源化は、鉄くずの回収ルートを通じて行われる場合が多かった。
【0004】
しかし、近年では、家電製品をはじめとする各種製品の部材の構成材料が変化し、鉄をはじめとする金属からなる部材が減少して熱可塑性樹脂組成物からなる部材の割合が増加する傾向にある。熱可塑性樹脂組成物は、鉄をはじめとする金属よりもデザインの自由度が大きく、構成成分の調製や添加剤の使用などにより金属では実現の難しい種々の特性を付与することができ、軽量であり耐久性が高いことなどの多くの利点を有するためである。
【0005】
そして、近年の家電製品をはじめとする各種製品の廃棄物は、各種構成部材の材質構成が複雑化しており、鉄や銅をはじめとする有価金属からなる部材の割合が少なく、有価性が低く、かつ従来の処理方法では多大の手間と経費がかかる熱可塑性樹脂組成物からなる部材の割合が多くなっており、従来の鉄くずの回収ルートではこのような廃棄物を再資源化しても採算がとれないため、対応が難しい状況になりつつある。
【0006】
これらの熱可塑性樹脂組成物からなる部材は、原油などの埋蔵化石燃料を基礎原料として合成されるものが多く、資源の有効活用の観点から、これらの熱可塑性樹脂組成物からなる部材を備えた製品の再資源化の推進が近年強く要求されてきている。
【0007】
また、原油などの埋蔵化石燃料の燃焼による二酸化炭素および硫黄酸化物の放出による地球温暖化、酸性雨といった環境破壊や、塩素化合物を含む熱可塑性樹脂組成物の焼却処理によるダイオキシンの生成、飛散といった環境汚染、さらには嵩の大きい熱可塑性樹脂組成物を含む廃棄物の増大によるゴミ埋立処理場の不足といった問題を抑制するという観点からも、これらの熱可塑性樹脂組成物からなる部材を備えた製品の廃棄物の再資源化が重要かつ緊急の課題となってきつつある。
【0008】
なお、本明細書においては、熱可塑性樹脂組成物からなる部材を「熱可塑性樹脂部材」とも呼称する。また、本明細書においては、熱可塑性樹脂部材を備えた製品を「熱可塑性樹脂製品」とも呼称する。さらに、本明細書においては、熱可塑性樹脂製品の廃棄物を「熱可塑性樹脂廃材」とも呼称する。
【0009】
ここで、上記の状況を受けて、2001年4月に家電リサイクル法が施行された。ここで、家電リサイクル法においては、2002年1月現在においては、エアコン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機の家電4品目のリサイクルが義務付けられ、また、それぞれの製品の再商品化率については、エアコン60%以上、テレビ55%以上、冷蔵庫50%以上、洗濯機50%以上の法定基準値が定められている。
【0010】
そこで、こうして回収された熱可塑性樹脂廃材から、たとえば手解体などの方法により、熱可塑性樹脂の系統ごとに熱可塑性樹脂部材を分離して、それらの熱可塑性樹脂部材を再度、製品の部材またはその原料に加工して使用する熱可塑性樹脂廃材の再資源化方法が提案されている。このような再資源化方法は、サーマルリサイクルと対比して、マテリアルリサイクルと呼ばれる。上述のように熱可塑性樹脂の系統ごとに分離された熱可塑性樹脂部材は、加熱溶融して再度成形することにより比較的容易にマテリアルリサイクルすることが可能となる。
【0011】
そのため、現在、熱可塑性樹脂廃材のマテリアルリサイクルの比率を高めるために、熱可塑性樹脂廃材のマテリアルリサイクルによる再資源化方法の研究開発が、各方面で多大な努力を払って行われている。
【0012】
しかしながら、熱可塑性樹脂廃材、特に家電製品や事務用機器などに使用されている熱可塑性樹脂廃材は、厳しい環境で長期間使用されることが多いため、廃材となった時点で既に特性が低下しており、変色または退色などの外観上の特性の低下だけでなく、強度、柔軟性などの物性も低下した耐久性に乏しい材料になっていることが多い。
【0013】
そのため、熱可塑性樹脂廃材は、要求特性の高い熱可塑性樹脂部材に用いられる熱可塑性樹脂組成物のバージン材料の代替用途ではなく、要求特性の高い熱可塑性樹脂部材の原料として用いられることが多い。
【0014】
そして、現在のところ、熱可塑性樹脂廃材のマテリアルリサイクルとしては、このようなカスケードリサイクルが主流となっている。そのため、熱可塑性樹脂廃材から再生される熱可塑性樹脂廃材が大量にあるということが問題となっている。
【0015】
ここで、本明細書において、バージン材料とは、未使用の樹脂組成物のことを意味するものとする。また、本明細書において、特性の低下した熱可塑性樹脂廃材を、要求特性の高い熱可塑性樹脂部材に用いられる熱可塑性樹脂組成物のバージン材料の代替用途ではなく、要求特性の低い熱可塑性樹脂部材の原料として用いることを、カスケードリサイクルと記載するようにする。
【0016】
このような問題を克服するため、上記熱可塑性樹脂廃材からのマテリアルリサイクルにより得られる熱可塑性樹脂成形体の特性を向上させ、要求特性の高い熱可塑性樹脂部材としても使用可能な水準に到達させるべく、多くの研究開発努力がなされている。
【0017】
たとえば、熱可塑性樹脂廃材(マテリアルリサイクル材料)にバージン材料を混合することによって特性を保持する方法が、数多く提案されている(たとえば特開2000−159900号公報(特許文献1)を参照。)。
【0018】
しかしながら、このようなマテリアルリサイクル方法においては、バージン材料の混合に伴い物性は向上するものの、物性が低下した熱可塑性樹脂廃材を混合する限り、バージン材料と同等の特性には回復するのは不可能である。また、バージン材料の物性に近似させるためには、熱可塑性樹脂廃材よりも多量のバージン材料を混合する必要がある場合が多く、資源循環型社会に対応しているとは言い難いものである。また、物性が低下していない熱可塑性樹脂廃材であっても、長期間の使用により寿命は大きく低下しており、再利用した際、長期信頼性に問題がある。
【0019】
特に、マテリアルリサイクルを考慮した新しい方法では、微生物由来、植物由来をはじめとするバイオマス由来の持続可能な資源を利用することや、繰り返しユース、リサイクルが可能な資源を利用することが強く求められている。
【0020】
持続可能な資源という観点から、環境にやさしいバイオマス由来の資源が注目されている。バイオマス由来の資源の中でも特に植物由来の資源は、再生可能であり、焼却されても、植物の成長過程で吸収した二酸化炭素を放出するだけなので、植物由来の資源のライフサイクルにおいて二酸化炭素濃度が増加しないとされており、環境にやさしい材料である。環境にやさしい材料である植物由来の資源の由来を拡大し、適切に循環させるよう、近年、様々な分野で植物由来の資源が開発されつつあり、その利用技術のさらなる拡大が重要な課題となっている。
【0021】
植物由来の資源においては、溶融成形可能であること、燃焼時の燃焼熱量の低さや大量生産された場合のコストなどの点からポリ乳酸が注目されている。しかしながら、ポリ乳酸は、一般的に硬くて脆い材料であり、耐熱性、成形性は優れず、また、生分解性を有しているため、長期間の使用には不向きである。このような問題を解決するため、個々のポリマーの欠点を改良する方法として広く知られているポリマーブレンドまたはポリマーアロイとして、2種またはそれ以上のポリマー同士を混合することが、ポリ乳酸に対しても検討されている(たとえば特開2006−161024号公報(特許文献2)を参照)。
【0022】
しかしながら、上記方法では、ポリ乳酸とABS樹脂と硬質重合体からなるバイオマス系熱可塑性樹脂組成物が記載されている。耐衝撃性、剛性、強度などの機械特性バランスに優れるものの、長期間使用されると初期の優れた機械特性のバランスが保持できない虞がある。また、用途は高温多湿下で使用されず、また、長期使用されない部材が想定されているため、家電製品、OA機器、電気電子部品などの長期使用される部材には不向きである。
【特許文献1】特開2000−159900号公報
【特許文献2】特開2006−161024号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
上記のように、バイオマス系熱可塑性樹脂は、今後耐久消費財などの部材として使用されることが予想され、将来的にはこれらの部材も再資源化が要求される。さらに、耐久消費財にバイオマス系熱可塑性樹脂が混在するケースがある。市場から回収されたバイオマス系熱可塑性樹脂廃材から、バイオマス系熱可塑性樹脂廃材を主原料とするマテリアルリサイクルにより、再利用が可能であり、用途が広く、熱可塑性樹脂部材またはその原料としても使用可能な特性を有する、バイオマス系熱可塑性樹脂成形体を得ることができる、効率的かつ低コストの熱可塑性樹脂廃材の再資源化方法の開発が強く望まれているにもかかわらず、そのような再資源化方法は未だ公知となっていないのが現状である。
【0024】
本発明は、このような状況に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、バイオマス系熱可塑性樹脂廃材を、環境負荷が少なく、長期の使用にも耐え得る諸特性を備えるように再資源化し得る方法、ならびに当該方法を用いたバイオマス系熱可塑性樹脂成形体の製造方法およびバイオマス系熱可塑性樹脂成形体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明者らは、上記課題を解決するために、バイオマス系熱可塑性樹脂廃材に複数種類を混合し、バイオマス系熱可塑性樹脂成形体を得ればよいとの着想を得、そのようなバイオマス系熱可塑性樹脂廃材から得られる原料ペレット状の熱可塑性樹脂成形体を調製し、物性についての実験を行い、鋭意検討を重ねた結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は以下のとおりである。
【0026】
本発明のバイオマス系熱可塑性樹脂廃材の再資源化方法は、バイオマス系熱可塑性樹脂廃材に、スチレン系樹脂(A)、脂肪族ポリエステル樹脂(B)およびビニル系重合体(C)から選ばれる少なくとも1種を含む熱可塑性樹脂組成物を混合して、加熱溶融する工程を含むことを特徴とする。
【0027】
本発明におけるバイオマス系熱可塑性樹脂廃材が、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体を主成分とし、かつ、L−乳酸および/またはD−乳酸を主成分とするポリ乳酸重合体を含むものであることが、好ましい。
【0028】
本発明におけるスチレン系樹脂(A)は、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体であることが好ましい。
【0029】
また本発明における脂肪族ポリエステル樹脂(B)は、L−乳酸および/またはD−乳酸を主成分とするポリ乳酸重合体であることが好ましい。
【0030】
本発明におけるビニル系重合体(C)は、アクリル酸エステルの重合体および/またはメタクリル酸エステルの重合体を主成分とするものであることが好ましい。また本発明におけるビニル系重合体(C)は、水酸基および/またはカルボキシル基と反応性を有する官能基を有することが好ましく、この水酸基および/またはカルボキシル基と反応性を有する官能基はエポキシ基であることがより好ましい。
【0031】
本発明における熱可塑性樹脂組成物は、0.1〜50重量部のゴム含有共重合体(D)をさらに含むことが好ましい。当該ゴム含有共重合体(D)は、アクリル系成分を含むことが好ましく、シリコーン・アクリル系および/またはコア−シェル型アクリル系であることがより好ましい。
【0032】
本発明における熱可塑性樹脂組成物は、酸化防止剤(E)および/または耐加水分解安定剤(F)をさらに含むことが、好ましい。本発明における酸化防止剤(E)は、フェノール系酸化防止剤および/またはリン系の酸化防止剤であって、熱可塑性樹脂組成物100重量部中に、0.01〜5重量部のフェノール系酸化防止剤および/または0.01〜5重量部のリン系酸化防止剤が含まれることが好ましい。また、本発明における前記耐加水分解安定剤(F)はカルボジイミド化合物であり、脂肪族ポリエステル樹脂(B)100重量部に対し0.01〜10重量部含まれることが好ましい。
【0033】
本発明のバイオマス系熱可塑性樹脂廃材の再資源化方法におけるバイオマス系熱可塑性樹脂廃材は、家電廃材と、OA機器と、電気電子部品とからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0034】
本発明はまた、上述した本発明のバイオマス系熱可塑性樹脂廃材の再資源化方法を含む、バイオマス系熱可塑性樹脂成形体の製造方法について提供する。
【0035】
本発明は、さらに、本発明のバイオマス系熱可塑性樹脂成形体の製造方法によって製造されたバイオマス系熱可塑性樹脂成形体についても提供する。
【0036】
本発明のバイオマス系熱可塑性樹脂成形体は、ペレット状であることが好ましい。また本発明のバイオマス系熱可塑性樹脂成形体は、マテリアルリサイクルされる製品に用いられるものであることがより好ましい。
【0037】
本発明のバイオマス系熱可塑性樹脂成形体は、面衝撃強度が10cm以上であることが好ましい。
【0038】
また本発明のバイオマス系熱可塑性樹脂成形体は、ノッチ付きアイゾット衝撃強度が2KJ/m2以上であることがより好ましい。
【0039】
また、本発明のバイオマス系熱可塑性樹脂成形体は、アイゾット衝撃強度が初期のアイゾット衝撃強度の75%保持する時間が、温度65℃かつ湿度90%RHの条件下で、200時間以上であることが、特に好ましい。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、バイオマス系熱可塑性樹脂廃材を効率よくマテリアルリサイクルして再資源化でき、多様な用途に適した特性を有するバイオマス系熱可塑性樹脂成形体を提供することができる。
【0041】
本発明のバイオマス系熱可塑性樹脂成形体は、耐衝撃性、剛性、強度などの初期の機械特性バランスに優れ、長期間にわたり初期の優れた特性のバランスを保持するため、家電製品、OA機器、電気電子部品などの長期間にわたり使用される要求特性の高い部材、製品に採用できる。また、本発明のバイオマス系熱可塑性樹脂成形体は、バイオマス由来の熱可塑性樹脂を含むことができるため、環境負荷の低い部材、製品を提供できる。また、本発明のバイオマス系熱可塑性樹脂成形体は、長期間使用されても物性低下が少なく、初期の優れた特性バランスを保持するため、マテリアルリサイクルも可能である。
【0042】
また、本発明のバイオマス系熱可塑性樹脂成形体の製造方法は、通常使用されている設備を用いることができるため、特殊な専用設備を作製することなく、新たな設備投資の低減に貢献できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
本発明のバイオマス系熱可塑性樹脂廃材の再資源化方法は、バイオマス系熱可塑性樹脂廃材に、スチレン系樹脂(A)、脂肪族ポリエステル樹脂(B)およびビニル系重合体(C)から選ばれる少なくとも1種を含む熱可塑性樹脂組成物を混合して、加熱溶融する工程を含むことを特徴とする。本発明における再資源化の対象となるバイオマス系熱可塑性樹脂廃材は、特には制限されないが、耐衝撃性、剛性、強度などの初期の機械特性バランスに優れ、長期間にわたり初期の優れた特性のバランスを保持するバイオマス系熱可塑性樹脂成形体が得られることからは、家電廃材と、OA機器(パーソナルコンピュータなどの情報機器やプリンターやコピー機などの事務機器を含む)と、電気電子部品とからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。このようなバイオマス系熱可塑性樹脂廃材は、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)を主成分とし、かつ、L−乳酸および/またはD−乳酸を主成分とするポリ乳酸重合体を含むものであることが好ましく、具体的には、ABS樹脂を主成分として含み、さらに、ポリ乳酸重合体単独、ABS樹脂とポリ乳酸重合体とのアロイ樹脂、または、ポリ乳酸重合体とポリメタクリル酸メチル(PMMA樹脂)とのアロイ樹脂を含むものが用いられる。本発明のバイオマス系熱可塑性樹脂廃材の再資源化方法は、このようなバイオマス系熱可塑性樹脂廃材に、上述した熱可塑性樹脂組成物を混合し、加熱溶融する方法である。このような本発明の方法により、バイオマス系熱可塑性樹脂廃材を効率よくマテリアルリサイクルして再資源化して、後述するようなバイオマス系熱可塑性樹脂成形体を得ることが可能となる。
【0044】
本発明に用いられる熱可塑性樹脂組成物に含まれ得るスチレン系樹脂(A)としては、特に限定されるものではなく、スチレン成分を含むものであればよい。具体的には、スチレン重合体、スチレン−メタクリル酸エステル−アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)などが挙げられる。また、ブタジエンゴムなどのエラストマーを共重合させたものであってもよく、スチレン成分を含むならば、たとえば、変性ポリフェニレンエーテルなどの他の樹脂とのポリマーアロイであってもよい。中でも、脂肪族ポリエステル樹脂樹脂と親和性の高いアクリル成分を有する、スチレン−メタクリル酸エステル−アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体などが挙げられる。また、ブタジエンゴムなどのエラストマーを共重合させたものであってもよく、スチレン成分を含むならば、たとえば、変性ポリフェニレンエーテルなどの他の樹脂とのポリマーアロイであってもよい。中でも、脂肪族ポリエステル樹脂樹脂と親和性の高いアクリル成分を有する、スチレン−メタクリル酸エステル−アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体が好ましく、特にアクリロニトリル−ブタジエンースチレン共重合体が好ましい。これらのスチレン系樹脂は1種または複数種を用いることができる。
【0045】
本発明に用いられる熱可塑性樹脂組成物に含まれ得る脂肪族ポリエステル樹脂(B)としては、特に制限されるものではなく、脂肪族ヒドロキシカルボン酸を主たる構成成分とする重合体、脂肪族多価カルボン酸と脂肪族多価アルコールを主たる構成成分とする重合体などが挙げられる。脂肪族ヒドロキシカルボン酸を主たる構成成分とする重合体としては、具体的には、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリ3−ヒドロキシカルボン酪酸、ポリ4−ポリヒドロキシ酪酸、ポリ3−ヒドロキシヘキサン酸またはポリカプロラクトンなどが挙げられる。また脂肪族多価カルボン酸と脂肪族多価アルコールを主たる構成成分とする重合体としては、たとえばポリエチレンアジペート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンアジペートまたはポリブチレンサクシネートなどが挙げられる。中でも、脂肪族ポリエステル樹脂(B)として、脂肪族ヒドロキシカルボン酸を主たる構成成分とする重合体が好ましく、脂肪族ヒドロキシカルボン酸を主たる構成成分とする重合体の中でも、環境負荷の低減という点からは、バイオマス由来の資源であるポリ乳酸がより好ましい。ポリ乳酸の中でも、L−乳酸および/またはD−乳酸を主成分とするポリ乳酸重合体が特に好ましく用いられる。これらの脂肪族ポリエステル樹脂(B)も1種または複数種を用いることができる。
【0046】
本発明に用いられる熱可塑性樹脂組成物に含まれ得るビニル系重合体(C)としては、下記式で表されるようなビニル基を含み、C、H以外の原子または芳香族環を有するものであれば、特に制限されるものではない。
【0047】
C=C−R1
上記式中、R1は、C、H以外の原子および/または芳香族環を示す。たとえば、R1がHC65(芳香族環)である場合、上記式で表されるビニル基はスチレン基となる。この場合、上述したアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)などのスチレン系樹脂はビニル系重合体にも該当することになるが、このようなスチレン系樹脂を熱可塑性樹脂組成物が含む場合、当該熱可塑性樹脂組成物はスチレン系樹脂およびビニル系重合体の両方を含むことを意味する。本発明におけるビニル系重合体(C)としては、上述したスチレン系樹脂のほか、たとえば塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニレデン系樹脂、ビニルアルコール系樹脂などから選ばれる少なくとも1種以上を用いることができるが、中でも、上述したように脂肪族ポリエステル樹脂として好ましく用いられ得るポリ乳酸と親和性を示すことから、アクリル酸エステルの重合体および/またはメタクリル酸エステルの重合体であるアクリル系樹脂を主成分とするものであることが好ましい。
【0048】
アクリル系樹脂としては、特に制限されるものではなく、アクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルを用いたものであればよい。具体的には、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸メチル(PMMA樹脂)などが挙げられる。ポリアクリロニトリルは、主成分として、アクリロニトリル、メタアクリロニトリルなどのニトリル類を含み、スチレン、アクリル酸エステル類との共重合体、もしくはその共重合体を連続相とし、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン、アクリロニトリル−ブタジエン、ポリイソプレンなどの弾性体相が化学結合または混合した形で分散されたものであればよい。中でも、ポリ乳酸樹脂に対する相溶性の観点から、メタクリル酸メチルを主成分とした樹脂であるPMMA樹脂が好ましい。
【0049】
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物に用いられるビニル系重合体(C)は、水酸基および/またはカルボキシル基と反応性を有する官能基を有することが好ましい。上述した脂肪族ポリエステル樹脂(B)として好ましいポリ乳酸重合体は、末端基として水酸基およびカルボキシル基を有するため、成形性調整、鎖長延長による溶融状態の粘度の調整および末端基封鎖による耐加水分解性改善の観点から、ビニル系重合体(C)が水酸基および/またはカルボキシル基と反応性を有する官能基を有することが好ましい。
【0050】
水酸基および/またはカルボキシル基と反応性を有する官能基としては、たとえば、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、オキサゾリン基、カルボジイミド基、無水マレイン酸、無水フタル酸などが挙げられ、中でも反応性の観点からは、エポキシ基が特に好ましい。なお、エポキシ基は、グリシジル基などのように他の官能基の一部として存在していてもよい。グリシジル基を有するものとしては、たとえば、不飽和カルボン酸グリシジルエステル、不飽和グリシジルエーテルなどが挙げられ、具体的には、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、イタコン酸グリシジルエステル、ブテントリカルボン酸トリグリシジルエステル、p−スチレンカルボン酸グリシジルエステル、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、2−メチルアリルグリシジルエーテル、メタクリルグリシジルエーテル、スチレン−p−グリシジルエーテルなどが例示される。
【0051】
このようなグリシジル基を有するビニル系重合体としては、スチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル−グリシジルメタクリレート共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル−アクリル酸ブチル−グリシジルメタクリレート共重合体、メタクリル酸メチル−グリシジルメタクリレート共重合体が好ましく、中でも脂肪族ポリエステルとの親和性の点からスチレン成分を含まないメタクリル酸メチル−グリシジルメタクリレート共重合体が特に好ましい。これらのビニル系重合体(C)も1種または複数種を用いることができる。
【0052】
本発明におけるビニル系重合体が上述した水酸基および/またはカルボキシル基と反応性を有する官能基を有する場合、このような官能基を導入する方法は特に制限されるものではなく、従来公知の適宜の方法を用いることができる。たとえば、共重合体の合成の段階で、上述した官能基を有する単量体を共重合することにより導入することができるし、また、共重合体に上述した官能基を有する単量体をグラフト共重合することで導入することもできる。
【0053】
本発明のバイオマス系熱可塑性樹脂廃材の再資源化方法に用いられる熱可塑性樹脂組成物は、上述したスチレン系樹脂(A)、脂肪族ポリエステル樹脂(B)およびビニル系重合体(C)から選ばれる少なくとも1種を含んでいればよいが、脂肪族ポリエステル樹脂(B)およびビニル系重合体(C)を少なくとも含んでいることが好ましく、スチレン系樹脂(A)、脂肪族ポリエステル樹脂(B)およびビニル系重合体(C)のいずれもを含んでいることが特に好ましい。
【0054】
本発明における熱可塑性樹脂組成物中の各成分の含有量は特に制限されないが、バイオマス系熱可塑性樹脂廃材1〜99重量部に対し、熱可塑性樹脂組成物中のスチレン系樹脂(A)、脂肪族ポリエステル樹脂(B)およびビニル系重合体(C)から選ばれる少なくとも1種(複数種含まれる場合には、合計量)が99〜1重量部となるように混合させた場合(この場合、バイオマス系熱可塑性樹脂廃材とスチレン系樹脂(A)、脂肪族ポリエステル樹脂(B)およびビニル系重合体(C)から選ばれる少なくとも1種との合計量を100重量部とする)に、スチレン系樹脂(A)が0〜100重量部(より好ましくは1〜70重量部)、脂肪族ポリエステル樹脂(B)が0〜100重量部(より好ましくは1〜40重量部)、ビニル系重合体(C)が0〜100重量部(より好ましくは0.1〜40重量部)となるように各成分を含有してなることが好ましい。このような含有量で各成分を含有する熱可塑性樹脂組成物をバイオマス系熱可塑性樹脂廃材に混合し、加熱溶融することで、耐衝撃性、強度、剛性、成形性などの特性のバランスに優れるバイオマス系熱可塑性樹脂成形体を得ることができるという利点がある。
【0055】
本発明に用いられる熱可塑性樹脂組成物は、0.1〜50重量部のゴム含有共重合体(D)をさらに含むことが好ましい。ゴム質含有共重合体は、ゴム質成分を含有しているならば特に制限されるものではなく、ゴム質成分としては、たとえば、エチレン/プロピレン共重合体などのオレフィン系ゴム、アクリル酸ブチルなどのアクリル系ゴム、ポリオルガノシロキサンなどのシリコン系ゴム、アクリル酸エステル/ブタジエン共重合体、スチレン/ブタジエン共重合体、スチレン/ブチレン/ブタジエン共重合体などのブタジエン系ゴムが挙げられる。本発明におけるゴム質含有共重合体は、ゴム質成分を含んでいるならば、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体、メチルメタクリレート−アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体アクリロニトリル−エチレン−プロピレン−ジエン−スチレン共重合体やアクリレート−スチレン−アクリロニトリル共重合体などであってもよい。本発明におけるゴム質含有共重合体は、1種または2種以上を用いることができる。
【0056】
ゴム質含有共重合体(D)を含む熱可塑性樹脂組成物をバイオマス系熱可塑性樹脂廃材に混合し、加熱溶融後、成形して得られたバイオマス系熱可塑性樹脂成形体(後述)において、ノッチ付アイゾット衝撃強度、面衝撃強度、物性保持時間などの物性を良好に改善することができるため、ゴム質含有共重合体(D)はアクリル系成分を含むことが好ましい。耐熱性、耐久性の観点からは、このアクリル系成分は、ポリオルガノシロキサンなどのシリコーン系ゴムと、アクリル酸ブチル共重合体、アクリル酸エチル共重合体などのアクリル系ゴムとの複合ゴムであるシリコーン・アクリル系成分であることが好ましい。また、耐衝撃性の観点からは、本発明におけるゴム質含有共重合体(D)はゴム質成分としてブタジエン系のゴムを含有することが好ましいため、アクリル系成分は、このブタジエン系のゴムをコアとし、アクリル酸エステルをシェルとするコア・シェル型アクリル系成分であってもよい。このように、本発明におけるゴム質含有共重合体は、アクリル成分として上述したシリコーン・アクリル系成分および/またはコア・シェル型アクリル成分を含有してなることが好ましい。
【0057】
なお、アクリル系成分を含有する場合、その含有率は、ゴム質含有共重合体(D)中、5〜95%の範囲内であることが好ましく、10〜80%の範囲内であることがより好ましい。アクリル系成分の含有率がゴム質含有共重合体(D)中5%未満である場合には、スチレン系樹脂(A)、脂肪族ポリエステル樹脂(B)および/またはビニル系重合体(C)との親和性に欠け、得られたバイオマス系熱可塑性樹脂成形体における耐熱性、耐久性ならびに耐衝撃性を十分に改善できない傾向にあり、また、95%を超える場合には、ゴム質成分が少ないため、得られたバイオマス系熱可塑性樹脂成形体における耐衝撃性を十分に改善できない傾向にあるためである。
【0058】
熱可塑性樹脂組成物が上述したゴム質含有共重合体(D)をさらに含有する場合、その含有量は、上述したスチレン系樹脂(A)、脂肪族ポリエステル樹脂(B)およびビニル系重合体(C)の合計100重量部に対し、0.1〜50重量部であることが好ましく、1〜20重量部であることがより好ましい。ゴム質含有共重合体(D)の含有量が0.1重量未満である場合には、上述したようにして得られたバイオマス系熱可塑性樹脂成形体においてノッチ付アイゾット衝撃強度や面衝撃強度などの耐衝撃性が十分に改良できない傾向にあるためであり、また、ゴム質含有共重合体(D)の含有量が50重量部を超える場合には、熱可塑性樹脂組成物がスチレン系樹脂(A)、脂肪族ポリエステル樹脂(B)およびビニル系重合体(C)から選ばれる少なくとも1種を含んでいることにより奏される優れた特性バランスが崩れる虞があるためである。
【0059】
本発明のバイオマス系熱可塑性樹脂廃材の再資源化方法に用いられる熱可塑性樹脂組成物は、上述したスチレン系樹脂(A)、脂肪族ポリエステル樹脂(B)およびビニル系重合体(C)から選ばれる少なくとも1種(場合によってはさらにゴム質含有共重合体(D)を含有)に加え、酸化防止剤(E)および/または耐加水分解安定剤(F)をさらに含有してなることが好ましい。酸化防止剤(E)をさらに含有する場合には、上述したようにして得られたバイオマス系熱可塑性樹脂成形体の酸化による劣化を防止することができるという利点がある。また耐加水分解安定剤(F)をさらに含有する場合には、上述したようにして得られたバイオマス系熱可塑性樹脂成形体の加水分解による劣化を防止または抑制して、当該バイオマス系熱可塑性樹脂成形体を長期にわたる使用に耐え得るように実現できるという利点がある。
【0060】
酸化防止剤(E)としては、たとえばフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤などから選ばれる少なくとも1種の従来公知の適宜の酸化防止剤を特に制限されることなく用いることができる。中でも、熱安定性、色調の安定性の観点からは、酸化防止剤としてフェノール系酸化防止剤および/またはリン系酸化防止剤を用いることが好ましい。フェノール系酸化防止剤としては、具体的には、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、n−オクデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェノール)プロピオネート、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロオキシフェニル)プロピオネート]メタン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロオキシフェニル)イソシアヌレート、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]、3,9−ビス{2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニル]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンなどが例示され、また、リン系酸化防止剤としては、具体的には、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4’−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチル)トリデシルホスファイト、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチル−ジ−トリデシル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリステアリルホスファイト、2,2’メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイトなどが例示される。
【0061】
本発明に用いられる熱可塑性樹脂組成物が酸化防止剤(E)をさらに含有する場合、その含有率は特に制限されるものではないが、上述したように酸化防止剤(E)としてフェノール系酸化防止剤および/またはリン系酸化防止剤を含有する場合には、得られたバイオマス系熱可塑性樹脂成形体における長期間の使用中における酸化による劣化を防ぐことから、熱可塑性樹脂組成物(上述したスチレン系樹脂(A)、脂肪族ポリエステル樹脂(B)およびビニル系重合体(C)の合計)100重量部に対し、0.01〜5重量部(より好適には0.05〜1重量部)のフェノール系酸化防止剤、および/または、0.01〜5重量部(より好適には0.05〜1重量部)のリン系酸化防止剤を含有してなることが好ましい。
【0062】
耐加水分解安定剤(F)としては、加水分解を防止または抑制する機能を有するものであれば、特に制限されることなく、たとえばカルボジイミド化合物、エポキシ化合物などから選ばれる少なくとも1種の従来公知の適宜の耐加水分解安定剤を用いることができる。ここで、カルボジイミド化合物とは、分子中に1個以上のカルボジイミド基を有する化合物を意味する。本発明における耐加水分解安定剤としては、上述した脂肪族ポリエステル樹脂(好ましくはL−乳酸および/またはD−乳酸を主成分とするポリ乳酸重合体)の一部を構成する水酸基および/またはカルボキシル基と反応性を有する官能基を有するものであることが好ましく、このような官能基としては、たとえばエポキシ基、カルボジイミド基、アミノ基、イソシアネート基、オキサゾリン基、無水カルボン酸基、無水フタル酸などが挙げられる。中でも、脂肪族ポリエステル樹脂の一部を構成する水酸基および/またはカルボキシル基との反応性の高さからは、カルボジイミド基が好ましく、このカルボジイミド基を分子中に1個以上有する化合物であるカルボジイミド化合物を耐加水分解安定剤として用いることが好ましい。
【0063】
上述したカルボジイミド化合物としては、具体的には、分子内に1個のカルボジイミド基を有するカルボジイミド化合物としてイソプロピルカルボジイミド、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジオクチルカルボジイミドなどが例示され、分子内に2個以上のカルボジイミド基を有するカルボジイミド化合物としては、1,3−フェニレンジイソシアナート、1,4−フェニレンジイソシアナート、2,4−トリレンジイソシアナート、2,6−トリレンジイソシアナート、テトラメチルキシリレンジイソシアナート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート、4,4’−ジフェニルジメチルメタンジイソシアナート、1,4−シクロヘキサンジイソシアナート、1−メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアナート、1−メチル―2、6−シクロヘキサンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナートなどが例示される。良好な耐加水分解安定性を示す観点からは、分子内に2個以上のカルボジイミド基を有するカルボジイミド化合物を耐加水分解安定剤として用いることが好ましい。
【0064】
本発明に用いられる熱可塑性樹脂組成物が耐加水分解安定剤(F)をさらに含有する場合、その含有率については特に制限されるものではないが、上述したように耐加水分解安定剤としてカルボジイミド化合物を用いる場合には、脂肪族ポリエステル樹脂(B)100重量部に対し、0.01〜10重量部の範囲内であることが好ましく、0.1〜5重量部の範囲内であることがより好ましい。カルボジイミド化合物の含有率が脂肪族ポリエステル樹脂(B)100重量部に対し0.01重量部未満である場合には、得られたバイオマス系熱可塑性樹脂成形体が耐加水分解性に劣り、長時間にわたる使用に耐えきれない虞があるためであり、また、脂肪族ポリエステル樹脂(B)100重量部に対し10重量部を超える場合には、得られたバイオマス系熱可塑性樹脂成形体の物性のバランスが崩れてしまう虞があるためである。
【0065】
本発明はまた、上述した本発明のバイオマス系熱可塑性樹脂廃材の再資源化方法を含むバイオマス系熱可塑性樹脂成形体の製造方法についても提供する。本発明のバイオマス系熱可塑性樹脂成形体の製造方法によれば、通常使用されている設備を用いて、後述するように優れた特性を有するバイオマス系熱可塑性樹脂成形体を製造することができ、特殊な専用設備を作製することなく、新たな設備投資の低減に貢献できるという利点がある。
【0066】
本発明のバイオマス系熱可塑性樹脂成形体の製造方法において、バイオマス系熱可塑性樹脂廃材と熱可塑性樹脂組成物との混合物の加熱溶融および成形には、たとえば単軸押出機成形機、多軸式押出成形機などの押出成形機を好適に用いることができる。後述するようなペレット状のバイオマス系熱可塑性樹脂成形体を得る場合には、シートカット、ストランドカット、ホットエアカット、アンダーウォーターカットなどの方法を好適に用いることができる。これらの方法の中でも、後に、射出成形により特定の形状に成形する場合には、樹脂原料の供給が円滑に行なえ、大量処理にも対応できるアンダーウォーターカットが特に好ましい。
【0067】
また本発明は、このようなバイオマス系熱可塑性樹脂成形体の製造方法によって製造されたバイオマス系熱可塑性樹脂成形体についても提供する。本発明のバイオマス系熱可塑性樹脂成形体は、その形状は特に制限されるものではなく、たとえば各種製品の部材に応じた形状に成形されていてもよいし、各種製品の部材に応じた形状に成形する工程に用いるための前駆体としてペレット状、シート状、フィルム状、パイプ状などの形状であってもよい。
【0068】
本発明のバイオマス系熱可塑性樹脂成形体を上述した前駆体として用いる場合には、ペレット状とすることが好ましい。本発明のバイオマス系熱可塑性樹脂成形体をペレット状とする場合、その粒径は特に制限されるものではないが、粒径1mm未満である場合は、浮遊するため作業性が低下するという傾向があることから、粒径は1mm以上であることが好ましく、特に2mm以上であることが好ましい。また、本発明のバイオマス系熱可塑性樹脂成形体をペレット状とする場合、粒径が8mmを超える場合には、成形機のシリンダ内で十分に溶融しないため均一に混練されないという傾向があるため、その粒径は8mm以下であることが好ましく、特に5mm以下であることが好ましい。上述した前駆体から各種製品の部材に応じた形状に成形する方法としては、従来公知の方法を用いることができ、たとえばスクリュインライン式射出成形機、プランジャ式射出成形機などの射出成形機を用いることができる。
【0069】
本発明のバイオマス系熱可塑性樹脂成形体は、上述した組成を有することにより、以下の(1)〜(3)の少なくともいずれかの優れた特性のバランスを有するように実現され得るものである。
【0070】
(1)面衝撃強度が10cm以上である、
(2)ノッチ付アイゾット衝撃強度が2kJ/m2以上である、
(3)ノッチ付アイゾット衝撃強度が初期のノッチ付アイゾット衝撃強度の75%を保持する時間(物性保持時間)が、温度65℃かつ湿度90%RHの条件下で200時間以上である。
【0071】
(1)面衝撃強度
本発明のバイオマス系熱可塑性樹脂成形体は、たとえばJIS K7211の規定に準拠して測定された面衝撃強度が好ましくは10cm以上であり、より好ましくは30cm以上であるように実現され得る。ここで、「面衝撃強度」とは、一定の高さから錘を落下させ、どの高さで材料が割れるかを示すものであり、異種材料が混合しているような材料は、互いの材料が界面で剥離している(相容していない)ため、面衝撃強度が小さくなり、相容しているかどうかの指標になるものである。好ましくは10cm以上、より好ましくは30cm以上の面衝撃強度を有するように実現された本発明のバイオマス系熱可塑性樹脂成形体は、重量のあるものを落としたり、ぶつけたりしても割れたり、クラックが入る虞がないため、たとえば家電4品目(エアコン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機)などの強度の必要な外装部材に好適に用いることができる。
【0072】
(2)ノッチ付アイゾット衝撃強度
また本発明のバイオマス系熱可塑性樹脂成形体は、たとえばJIS K7110の規定に準拠して測定されたノッチ付アイゾット衝撃強度が好ましくは2kJ/m2以上であり、より好ましくは4kJ/m2以上、特に好ましくは5kJ/m2以上である。ここで、「アイゾット衝撃強度」とは、材料に高速で負荷を与えた際、その破壊に対する抵抗力を表現するものである。一般に強度が大きいと硬くて強い材料、小さいと脆くて弱い材料といえるが、ゴムのように弾性が大きいために破壊しにくい材料もある。好ましくは2kJ/m2以上、より好ましくは4kJ/m2以上、特に好ましくは5kJ/m2以上のノッチ付アイゾット衝撃強度を有するように実現された本発明のバイオマス系熱可塑性樹脂成形体は、たとえばツメを有する成形品などに用いても、この成形品の組立時にツメが折れてしまう可能性が低いため、このようなツメを有する成形品に好適に用いることができる。
【0073】
(3)物性保持時間
また、本発明のバイオマス系熱可塑性樹脂成形体は、たとえばJIS K7110の規定に準拠して測定されたノッチ付アイゾット衝撃強度が初期のノッチ付アイゾット衝撃強度の75%を保持する時間が、温度65℃かつ湿度90%RHの条件下で200時間以上であることが好ましく、300時間以上であることがより好ましく、400時間以上であることが特に好ましい。このようなノッチ付アイゾット衝撃強度の保持時間を有するように実現された本発明の熱可塑性樹脂成形体は、長期に使用してもツメ、リブなどが折れて成形品が破損してしまうなどの支障をきたす虞がない。
【0074】
本発明のバイオマス系熱可塑性樹脂成形体は、上述したように優れた初期の特性バランスを保持するものであるため、その用途は特に制限されるものではないが、マテリアルリサイクルされる製品に好適に用いることができる。このようなマテリアルリサイクルされる製品としては、特に制限されるものではなく、たとえば、上述した家電4品目を含む家電製品、OA機器(パーソナルコンピュータなどの情報機器やプリンターやコピー機などの事務機器を含む)、電気電子部品などの各種製品が挙げられる。本発明のバイオマス系熱可塑性樹脂成形体は、これら家電製品、OA機器、電気電子部品などの各種製品の部材として好適に用いることができ、初期の優れた特性バランスと、初期の優れた特性バランスを長期間にわたり保持するという本発明のバイオマス系熱可塑性樹脂成形体が有する特徴を十分に活用し得る観点からは、中でも、家電4品目であるエアコン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機の部材として特に好適に用いることができる。
【0075】
なお、本発明のバイオマス系熱可塑性樹脂成形体は、バイオマス系熱可塑性樹脂廃材と混合させる熱可塑性樹脂組成物が上述したように酸化防止剤(E)および/または耐加水分解安定剤(F)をさらに含有する場合には、長期にわたり初期の優れた特性バランスを保持することができる。なお、マテリアルリサイクルされた後にも、長期間の使用に耐え得るためには、マテリアルリサイクルする際に酸化防止剤(E)および/または耐加水分解安定剤(F)を添加するようにしてもよい。酸化防止剤(E)を添加する場合には、上述したようにスチレン系樹脂(A)、脂肪族ポリエステル樹脂(B)およびビニル系重合体(C)の合計100重量部に対し、0.01〜5重量部のフェノール系酸化防止剤、および/または、0.01〜5重量部のリン系酸化防止剤を添加することが好ましい。また、耐加水分解安定剤(F)を添加する場合には、脂肪族ポリエステル樹脂(B)100重量部に対し、0.1〜10重量部のカルボジイミド化合物を添加することが好ましい。
【0076】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0077】
(サンプルの調整)
バイオマス系熱可塑性樹脂廃材、熱可塑性樹脂組成物のサンプルの各成分として、以下のものを用いた。
【0078】
・スチレン系樹脂A:ABS樹脂(テルランGP−35、BASF製)
・脂肪族ポリエステル樹脂B:ポリ乳酸樹脂(レイシアH−100J、三井化学製)
・ビニル系重合体C1:PMMA樹脂(アクリペットMD001、三菱レイヨン製)
・ビニル系重合体C2:ポリメタクリル酸メチル−メタクリル酸メチル−グリシジルメタクリレートグラフト共重合体(レゼダGP−301、東亞合成製)
・ゴム質含有共重合体D:シリコーン−アクリル系ゴム(メタブレンS−2001、三菱レイヨン製)
・酸化防止剤E1:フェノール系酸化防止剤(アデカスタブAO−51、旭電化製)
・酸化防止剤E2:リン系酸化防止剤(アデカスタブHP10、旭電化製)
・耐加水分解安定剤F:カルボジイミド化合物(カルボジライトLA−1、日清紡製)
また、上記スチレン系樹脂Aを68重量部、脂肪族ポリエステル樹脂Bを23重量部、ビニル系重合体C1を9重量部、通常使用されるタンブラー混合機で混合し、二軸溶融混練押出機(株式会社テクノベル製、スクリュー径:25mm、L/D:26)で設定温度220℃で加熱溶融し、1回押出加工したものをバイオマス系熱可塑性樹脂廃材のサンプルとした。
【0079】
<実施例1>
75重量部のバイオマス系熱可塑性樹脂廃材のサンプルと、25重量部のスチレン系樹脂Aとを、通常使用されるタンブラー混合機で混合し、二軸溶融混練押出機(株式会社テクノベル製、スクリュー径:25mm、L/D:26)で設定温度220℃で加熱溶融混練するとともに、押出成形し、通常使用されるペレタイザーを用いてカットし、ペレット状のバイオマス系熱可塑性樹脂成形体を得た。次に、得られたペレット状のバイオマス系熱可塑性樹脂成形体を、10トン射出成形機(日精樹脂株式会社製)ホッパーに投入し、設定温度220℃、金型温度40℃、冷却時間30秒の射出成形条件で、後述する引張強度、伸び、曲げ強度、曲げ弾性率およびアイゾット衝撃強度を測定するためのASTM準拠の物性測定用試験片を作製した。また、面衝撃強度測定のために、厚さ3mmの物性測定用試験片も作製した。
【0080】
<実施例2>
75重量部のバイオマス系熱可塑性樹脂廃材のサンプルと、25重量部の脂肪族ポリエステル樹脂Bとを混合したこと以外は実施例1と同様にして、各試験片を作製した。
【0081】
<実施例3>
75重量部のバイオマス系熱可塑性樹脂廃材のサンプルと、25重量部のビニル系重合体C1とを混合したこと以外は実施例1と同様にして、各試験片を作製した。
【0082】
<実施例4>
75重量部のバイオマス系熱可塑性樹脂廃材のサンプルと、17重量部のスチレン系樹脂Aと、6重量部の脂肪族ポリエステル樹脂Bと、2重量部のビニル系重合体C1とを混合したこと以外は実施例1と同様にして、各試験片を作製した。
【0083】
<実施例5>
75重量部のバイオマス系熱可塑性樹脂廃材のサンプルと、17重量部のスチレン系樹脂Aと、6重量部の脂肪族ポリエステル樹脂Bと、2重量部のビニル系重合体C1と、1.5重量部のビニル系重合体C2と、10重量部のゴム質含有共重合体Dとを、混合したこと以外は実施例1と同様にして、各試験片を作製した。
【0084】
<実施例6>
75重量部のバイオマス系熱可塑性樹脂廃材のサンプルと、17重量部のスチレン系樹脂Aと、6重量部の脂肪族ポリエステル樹脂Bと、2重量部のビニル系重合体C1と、1.5重量部のビニル系重合体C2と、10重量部のゴム質含有共重合体Dと、0.3重量部の酸化防止剤E1と、0.3重量部の酸化防止剤E2と、耐加水分解安定剤Fとを、混合したこと以外は実施例1と同様にして、各試験片を作製した。
【0085】
<参考例1>
スチレン系樹脂Aのみを100重量部用いたこと以外は実施例1と同様にして、各試験片を作製した。
【0086】
<参考例2>
バイオマス系熱可塑性樹脂廃材のサンプルのみを100重量部用いたこと以外は実施例1と同様にして、各試験片を作製した。
【0087】
<評価試験>
実施例1〜6、参考例1、2で作製した各試験片を用いて、以下の各種物性の評価試験を行なった。
【0088】
・引張強度(MPa)および伸び(%)
JIS K7113の規定に準拠して、引張破断点降伏強さ、引張破断点伸びとしてそれぞれ測定した。なお、「引張強度」、「伸び」とは、材料を一定の速度で引張、応力と歪の関係を求めるもので、伸長された材料は、はじめに弾性変形をし、その後塑性変形をはじめ、極大強度に達し、さらに降伏点を越えるとネッキングを生じ、破断に至る。応力の一番大きいところ(最大点応力)を「引張強度」、破断したときの歪(破断点伸び)を「伸び」としている。
【0089】
・曲げ強度(MPa)および曲げ弾性率(GPa)
JIS K7203の規定に準拠してそれぞれ測定した。なお、「曲げ強度」、「曲げ弾性率」とは、2点で支えた試験片の中心に応力をかけることにより、応力と歪の関係を求めるものである。応力の一番大きいところを「曲げ強度」、応力−歪曲線の傾きを「曲げ弾性率」としている。
【0090】
・ノッチ付アイゾット衝撃強度(KJ/m2
JIS K7110の規定に準拠して測定した。
【0091】
・面衝撃強度(cm)
JIS K7211の規定に準拠して測定した。なお、表1中の「>200」は、面衝撃強度が200cm以上、「<2.5」は2.5cm以下であることを示す。
【0092】
・物性保持時間(hr)
JIS K7110の規定に準拠して測定されるノッチ付アイゾット衝撃強度が、65℃90%RHの条件下で初期のノッチ付アイゾット衝撃強度の75%以上を保持する時間を評価した。なお、表1中、「>1000」は物性保持時間が1000hr以上であることを示している。
【0093】
結果を表1に示す。
【0094】
【表1】

【0095】
表1から、バイオマス系熱可塑性樹脂廃材のサンプルを単独で用いた参考例2では、曲げ弾性率が2.41GPaであるため、参考例1のアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体の代替材料としては、若干、曲げ弾性率が大きいことが分かる。
【0096】
同様に表1から、実施例1のようにバイオマス系熱可塑性樹脂廃材のサンプルにスチレン系樹脂Aを加えることにより、アイゾット衝撃強度が改善されることが理解できる。しかしながら、実施例1では、参考例1から理解されるようなアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体の代替材料としてはアイゾット衝撃強度が弱い。
【0097】
また同様に表1から、実施例2のようにバイオマス系熱可塑性樹脂廃材のサンプルに脂肪族ポリエステル樹脂Bを加えることにより、参考例2と比較するとアイゾット衝撃強度、面衝撃強度、物性保持時間は十分ではなかったことが分かる。しかしながら、環境に優しい材料である植物由来の資源を利用しているため焼却した際に環境負荷が少ないので、カスケードリサイクルに適していることが理解できる。
【0098】
同様に表1から、実施例3のようにバイオマス系熱可塑性樹脂廃材のサンプルにビニル系重合体C1を加えることにより、参考例2では十分でなかった物性保持時間が改善されていることが理解できる。しかしながら、アイゾット衝撃強度、面衝撃強度は十分ではなく、参考例1のアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体の代替材料としては、引張強度、曲げ強度が共に高い。
【0099】
また同様に表1から、実施例4のようにバイオマス系熱可塑性樹脂廃材のサンプルに、スチレン系樹脂A、脂肪族ポリエステル樹脂Bおよびビニル系重合体C1を加えることにより、参考例2では十分ではなかった物性保持時間が改善されていることが理解できる。
【0100】
さらに表1から、実施例5のようにバイオマス系熱可塑性樹脂廃材のサンプルに、スチレン系樹脂A、脂肪族ポリエステル樹脂B、ビニル系重合体C1,C2、ゴム質含有共重合体Dを加えることにより、実施例4では十分ではなかったアイゾット衝撃強度、面衝撃強度、物性保持時間が改善されていることが理解できる。
【0101】
またさらに、実施例6のようにバイオマス系熱可塑性樹脂廃材のサンプルに、スチレン系樹脂A、脂肪族ポリエステル樹脂B、ビニル系重合体C1,C2、ゴム質含有共重合体D、酸化防止剤E1,E2、耐加水分解安定剤Fを加えることにより、実施例5と比較して物性保持時間がさらに改善されていることが理解できる。よって実施例6は、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体の代替材料としても採用できる可能性があることが示唆された。
【0102】
今回開示された実施の形態及び実施例は全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内で全ての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0103】
以上のように、本発明のバイオマス系熱可塑性樹脂廃材の再資源化方法は、バイオマス系熱可塑性樹脂廃材をマテリアルリサイクルすることができ、それによって得られた本発明のバイオマス系熱可塑性樹脂成形体は、耐衝撃性、剛性、強度などの特性バランスに優れ、長期間の使用にも耐えうることから、長期間使用されるような要求特性の高い家電製品、OA機器、電気電子部品等の部材、製品に採用することができる。また、サーマルリサイクルされるバイオマス系熱可塑性樹脂廃材を低減し、効率的なバイオマス系熱可塑性樹脂廃材の再資源化方法が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマス系熱可塑性樹脂廃材に、スチレン系樹脂(A)、脂肪族ポリエステル樹脂(B)およびビニル系重合体(C)から選ばれる少なくとも1種を含む熱可塑性樹脂組成物を混合して、加熱溶融する工程を含む、バイオマス系熱可塑性樹脂廃材の再資源化方法。
【請求項2】
バイオマス系熱可塑性樹脂廃材が、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体を主成分とし、かつ、L−乳酸および/またはD−乳酸を主成分とするポリ乳酸重合体を有する、請求項1に記載のバイオマス系熱可塑性樹脂廃材の再資源化方法。
【請求項3】
スチレン系樹脂(A)がアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体である、請求項1または2に記載のバイオマス系熱可塑性樹脂廃材の再資源化方法。
【請求項4】
脂肪族ポリエステル樹脂(B)がL−乳酸および/またはD−乳酸を主成分とするポリ乳酸重合体である、請求項1〜3のいずれかに記載のバイオマス系熱可塑性樹脂廃材の再資源化方法。
【請求項5】
ビニル系重合体(C)がアクリル酸エステルの重合体および/またはメタクリル酸エステルの重合体を主成分とするものである、請求項1〜4のいずれかに記載のバイオマス系熱可塑性樹脂廃材の再資源化方法。
【請求項6】
ビニル系重合体(C)が水酸基および/またはカルボキシル基と反応性を有する官能基を有する、請求項1〜5のいずれかに記載のバイオマス系熱可塑性樹脂廃材の再資源化方法。
【請求項7】
水酸基および/またはカルボキシル基と反応性を有する官能基がエポキシ基である、請求項6に記載のバイオマス系熱可塑性樹脂廃材の再資源化方法。
【請求項8】
熱可塑性樹脂組成物が0.1〜50重量部のゴム含有共重合体(D)をさらに含む、請求項1〜7のいずれかに記載のバイオマス系熱可塑性樹脂廃材の再資源化方法。
【請求項9】
ゴム含有共重合体(D)がアクリル系成分を含む、請求項8に記載のバイオマス系熱可塑性樹脂廃材の再資源化方法。
【請求項10】
ゴム含有共重合体(D)がシリコーン・アクリル系および/またはコア−シェル型アクリル系である、請求項9に記載のバイオマス系熱可塑性樹脂廃材の再資源化方法。
【請求項11】
熱可塑性樹脂組成物が酸化防止剤(E)および/または耐加水分解安定剤(F)をさらに含む、請求項1〜10のいずれかに記載のバイオマス系熱可塑性樹脂廃材の再資源化方法。
【請求項12】
酸化防止剤(E)がフェノール系酸化防止剤および/またはリン系の酸化防止剤であって、熱可塑性樹脂組成物100重量部中に、0.01〜5重量部のフェノール系酸化防止剤および/または0.01〜5重量部のリン系酸化防止剤が含まれる、請求項11に記載のバイオマス系熱可塑性樹脂廃材の再資源化方法。
【請求項13】
前記耐加水分解安定剤(F)はカルボジイミド化合物であり、脂肪族ポリエステル樹脂(B)100重量部に対し0.01〜10重量部含まれる、請求項11または12に記載のバイオマス系熱可塑性樹脂廃材の再資源化方法。
【請求項14】
バイオマス系熱可塑性樹脂廃材が、家電廃材と、OA機器と、電気電子部品とからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜13のいずれかに記載のバイオマス系熱可塑性樹脂廃材の再資源化方法。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれかに記載のバイオマス系熱可塑性樹脂廃材の再資源化方法を含む、バイオマス系熱可塑性樹脂成形体の製造方法。
【請求項16】
請求項15に記載の製造方法によって製造されたものである、バイオマス系熱可塑性樹脂成形体。
【請求項17】
ペレット状である、請求項16に記載のバイオマス系熱可塑性樹脂成形体。
【請求項18】
マテリアルリサイクルされる製品に用いられるものである、請求項16または17に記載のバイオマス系熱可塑性樹脂成形体。
【請求項19】
面衝撃強度が10cm以上である、請求項16〜18のいずれかに記載のバイオマス系熱可塑性樹脂成形体。
【請求項20】
ノッチ付きアイゾット衝撃強度が2KJ/m2以上である、請求項16〜19のいずれかに記載のバイオマス系熱可塑性樹脂成形体。
【請求項21】
アイゾット衝撃強度が初期のアイゾット衝撃強度の75%保持する時間が、温度65℃かつ湿度90%RHの条件下で、200時間以上である、請求項16〜20のいずれかに記載のバイオマス系熱可塑性樹脂成形体。

【公開番号】特開2009−161655(P2009−161655A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−609(P2008−609)
【出願日】平成20年1月7日(2008.1.7)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】