説明

バスバー装置及びブラシレスモータ

【課題】複数のバスバーを容易に配置することができるとともに、製造コストの低減を図ることができるバスバー装置を提供する。
【解決手段】バスバー装置21を構成する複数のバスバー30〜39は、円弧状に湾曲された帯状の導電性板材よりなるバスバー本体51と、該バスバー本体51の短手方向の片側端部に設けられコイルの接続端部16が接続される接続部52とを有する。これらバスバー30〜39を保持するバスバーホルダ22は、同心状に形成されるとともに径方向の幅がバスバー本体51の板厚よりも広く形成された複数の収容溝47を備えている。そして、各バスバー本体51は、その板厚方向と収容溝47の径方向とが一致するように且つ板厚方向に撓んだ状態で収容溝47内に挿入され、撓みに基づく復元力によってバスバー本体51の長手方向の両端部を収容溝47の周方向の両端の内壁面に圧接させることにより収容溝47内に保持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラシレスモータに備えられる複数のコイルの対応する端部同士を短絡するためのバスターを有するバスバー装置、及び該バスバー装置を備えたブラシレスモータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ブラシレスモータには、周方向に配置された複数のコイルの対応する端部同士を短絡するとともに外部から供給される電流を各コイルに供給するためのバスバー装置を備えたものがある。例えば、特許文献1に記載されているバスバー装置は、複数のバスバーと、径方向に隣り合うバスバー間の間隔を維持するためのスペーサと、バスバーを保持する樹脂製の保持部とから構成されている。各バスバーは、帯状の金属材料を湾曲させて形成されたバスバー本体と、該バスバー本体の幅方向の端部から径方向に沿って延びる複数の接続部とから構成されている。各接続部の先端部には、径方向外側若しくは径方向内側に開口しその内部にブラシレスモータのコイルの端部が配置される接続溝が形成されている。そして、複数のバスバーは、バスバー本体の板厚方向が径方向と一致するように同心状に配置されるとともに、これらバスバーに対し前記スペーサが配置されている。スペーサは、断面櫛形状をなし、径方向に隣り合うバスバー本体間に挿入されるスペーサ部を有している。そして、複数のバスバー及びスペーサは、接続部以外の部分が保持部を構成する樹脂材料にて覆われている。尚、保持部は円環状に成形されるとともに、各接続部の先端は、保持部の外周面よりも径方向外側若しくは保持部の内周面よりも径方向内側に突出している。このように、複数のバスバーを、バスバー本体の板厚方向と径方向とが一致するように配置することにより、バスバー装置の径方向の小型化が図られ、ひいては該バスバー装置を備えたブラシレスモータの径方向の小型化を図ることができる。
【特許文献1】特許第3489484号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、特許文献1に記載のバスバー装置を製造するには、複数のバスバーを、バスバー本体の板厚方向が径方向と一致するように同心状に配置した後に、これらバスバーに対してスペーサを配置する。この時、複数のバスバーは、径方向に隣り合うバスバー間の間隔が、スペーサに設けられたスペーサ部間の間隔と対応するように位置決めして配置される必要がある。しかしながら、治具等を使用することなく、複数のバスバーをスペーサ部間の間隔に対応させて配置することは困難である。また、バスバーを配置するための治具を使用すると、設備費が増大してしまう。
【0004】
また、上記のバスバー装置は、プレス加工により金属板材を打ち抜いた後にバスバー本体に対し接続部を屈曲してバスバーを製造する工程と、製造したバスバーを同心状に配置する工程と、バスバーに対しスペーサを配置する工程と、射出成形によりバスバー及びスペーサを樹脂材料にて覆う工程とを経て製造される。従って、バスバー装置を製造するための工程数が多く、生産性の低下を招くとともに、製造コストがかかるという問題があった。
【0005】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、複数のバスバーを容易に配置することができるとともに、製造コストの低減を図ることができるバスバー装置、及び該バスバー装置を備えたブラシレスモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、長手方向の両端部が互いに近づくように円弧状に湾曲された帯状の導電性板材よりなるバスバー本体、及び該バスバー本体の短手方向の片側端部に設けられコイルの端部が接続される接続部を有する複数のバスバーと、前記バスバー本体の少なくとも一部を収容するホルダとを備えたバスバー装置であって、前記ホルダは、前記バスバー本体をそれぞれ収容すべく同心状に形成さるとともに径方向の幅が前記バスバー本体の板厚よりも広く形成された複数の収容溝を備え、前記バスバー本体は、その板厚方向と前記収容溝の径方向とが一致するように且つ板厚方向に撓んだ状態で前記収容溝内に挿入され、撓みに基づく復元力によって該バスバー本体の長手方向の両端部を前記収容溝の周方向の両端の内壁面に圧接させることにより前記収容溝内に保持されたことをその要旨としている。
【0007】
同構成によれば、複数の収容溝にバスバー本体をそれぞれ挿入することにより、複数のバスバーを容易に同心状に配置することができるとともに、各バスバー間の間隔を維持することができる。そして、本発明のバスバー装置は、径方向に隣り合うバスバー間の間隔を維持するためのスペーサを備えないとともに、バスバーをホルダに組付けるだけで形成されるため、従来に比べてバスバー装置の製造にかかる製造コストを低減させることができる。また、バスバーのバスバー本体が挿入される収容溝は、その径方向の幅が、バスバー本体の板厚よりも広く形成されている。従って、バスバー本体を板厚方向に撓ませて容易に収容溝に挿入することができるとともに、収容溝の寸法精度を高精度としなくてもよい。更に、各バスバー本体は、板厚方向に撓んだ状態で各収容溝内に挿入されており、撓みに基づく復元力によって各バスバー本体の長手方向の両端部が各収容溝の周方向の両端の内壁面に圧接することにより各収容溝内に保持されている。即ち、各バスバーは、各バスバー本体の長手方向の両端部が各収容溝の周方向の両端の内壁面に圧接されることにより、ホルダに対して組付けられている。従って、バスバーをホルダに対して組付けるための部品を別途使用しなくてもよいため、部品点数の増大が抑制される。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のバスバー装置において、少なくとも1つの前記バスバーの前記バスバー本体は、その長手方向の少なくとも一方の端部に、前記バスバー本体の短手方向に沿って前記接続部が設けられた側の前記バスバー本体の短手方向の端部に向かうに連れて周方向に徐々に突出するとともに、前記収容溝の内壁面に対し前記バスバー本体の前記収容溝への挿入方向と逆方向に係止される係止凸部を有することをその要旨としている。
【0009】
同構成によれば、係止凸部は、収容溝の内壁面に対しバスバー本体の収容溝への挿入方向と逆方向に係止されるため、該係止凸部により、バスバー本体の収容溝からの脱落、即ちバスバーのホルダからの脱落を抑制することができる。また、係止凸部は、バスバー本体の長手方向の少なくとも一方の端部において、該バスバー本体の短手方向に沿って接続部が設けられた側の該バスバー本体の短手方向の端部に向かうに連れて周方向に徐々に突出した形状をなしている。従って、係止凸部を有するバスバー本体であっても、接続部が設けられた側と逆側の短手方向の端部から収容溝に挿入されることにより、容易に収容溝内へ挿入される。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載のバスバー装置において、前記ホルダは、該ホルダを軸方向に貫通した複数の案内孔を有し、前記バスバーは、前記バスバー本体に対し径方向に突出するように設けられるとともに前記案内孔に挿通された前記コイルの端部が接続される前記接続部を有することをその要旨としている。
【0011】
同構成によれば、コイルの端部は、ホルダにおいてコイルと対向する側、即ちホルダにおいて接続部が配置された側と反対側から案内孔に挿通されて接続部に接続されることにより、ホルダの外周縁よりも内側に配置される。また、コイルの端部は、ホルダに形成された案内孔を貫通した状態に保たれるため、ホルダによって、バスバー装置の外周側に配置される部品(ブラシレスモータのハウジングケース等)へのコイルの端部の干渉、及びコイルの端部と同部品との絶縁不良が抑制される。尚、本発明における「軸方向」は、各収容溝に収容されたバスバー本体の短手方向と同方向である。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のバスバー装置において、前記接続部は、軸方向に延びる筒状をなしその一端開口部が前記案内孔の開口部と対向するとともに前記コイルの端部が挿入される保持部を有することをその要旨としている。
【0013】
同構成によれば、保持部は、軸方向に延びる筒状をなすとともに、その一端開口部が案内孔の開口部と対向している。従って、案内孔を貫通したコイルの端部は、容易に保持部内に挿入される。また、コイルの端部は、筒状の保持部に挿入されるため、該保持部によって径方向の移動が規制される。従って、コイルの先端とバスバー装置の外周側に配置される部品(ブラシレスモータのハウジングケース等)との絶縁不良がより抑制されるとともに、接続部とコイルの端部との電気的な接続をより容易に行うことができる。尚、本発明において、「筒状」とは、コイルの端部の外周を完全に囲む形状だけでなく、コイルの端部の径方向に該端部が抜け出せない程度に該コイルの端部を囲む形状も意味する。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載のバスバー装置において、前記ホルダは、周方向に配置された複数のティースを有する金属製のステータコアと前記ティースに巻回された複数の前記コイルとを備えた固定子の軸方向の端部に配置されるとともに、前記固定子に軸方向に係合される係合部と、前記ステータコアに当接する当接部とを有することをその要旨としている。
【0015】
同構成によれば、係合部が固定子に軸方向に係合されることにより、ホルダは固定子の軸方向の端部に固定される。更に、固定子を構成するステータコアに巻回されたコイルの端部が、ホルダに組付けられたバスバーの接続部に電気的に接続されることにより、バスバーは、コイルを介して固定子と一体化される。従って、バスバーは、該バスバーが組み付けられたホルダが固定されるとともに該バスバーに接続されるコイルを備えた固定子を介してより一層ホルダと一体化される。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のバスバー装置において、前記係合部は、前記ステータコアと前記コイルとの短絡を防止すべく前記ステータコアに装着されるインシュレータに係合され、前記当接部は、前記ステータコアの外周面に当接することをその要旨としている。
【0017】
同構成によれば、係合部はインシュレータに係合されるため、係合部を係合させるべくステータコアが複雑な形状となることが防止される。また、ステータコアは金属製であることから、合成樹脂よりなる部材(例えばインシュレータ)よりも剛性が高い。従って、剛性の高いステータコアの外周面に当接部が当接することにより、ステータコアに対するホルダの径方向の位置決めを高精度に行うことができる。その結果、ステータコアに巻装されたコイルの端部を、ホルダに組付けられたバスバーの接続部に更に容易に電気的に接続することができる。
【0018】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載のバスバー装置において、前記当接部は、前記ステータコアの軸方向の端面にも当接することをその要旨としている。
同構成によれば、剛性の高い金属製のステータコアの軸方向の端面に当接部が当接することにより、ホルダの固定子に対するぐらつきを抑制することができる。その結果、接続部とコイルの端部との電気的な接続を一層容易に行うことができる。
【0019】
請求項8に記載の発明は、有底円筒状のハウジングケースと、周方向に配置された複数のティースを有するステータコア、及び前記ティースに巻回された複数の前記コイルを有し、前記ハウジングケースの内周面に固定された固定子と、前記固定子の軸方向の端部に配置され、前記コイルの所定の端部同士を短絡する請求項1乃至請求項7の何れか一項に記載のバスバー装置とを備えたブラシレスモータとすることをその要旨としている。
【0020】
同構成によれば、ハウジングケースの内周面に固定される固定子の軸方向に配置されるバスバー装置において、複数の収容溝にバスバー本体をそれぞれ挿入することにより、複数のバスバーを容易に同心状に配置することができる。そして、本発明のブラシレスモータに備えられるバスバー装置は、径方向に隣り合うバスバー間の間隔を維持するためのスペーサを備えないとともに、バスバーをホルダに組付けるだけでバスバー装置が形成されるため、従来に比べてバスバー装置の製造にかかる製造コストを低減させることができる。その結果、該バスバー装置を備えたブラシレスモータの製造にかかる製造コストを低減させることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、複数のバスバーを容易に配置することができるとともに、製造コストの低減を図ることができるバスバー装置、及び該バスバー装置を備えたブラシレスモータを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すブラシレスモータ1は、例えば電動パワーステアリング装置(図示略)の駆動源として用いられる。図1に示すように、ブラシレスモータ1を構成する有底円筒状のハウジングケース2の内周面には、略円筒状の固定子3が固定されるとともに、該固定子のハウジングケース2の内側には、回転子4が回転可能に配置されている。
【0023】
前記ハウジングケース2の上底部中央には、内側に開口する軸受収容凹部2aが形成されるとともに、該軸受収容凹部2a内には、軸受5が収容されている。また、ハウジングケース2の開口部には、径方向外側に延びるフランジ部2bが一体に形成されるとともに、該フランジ部2bにはエンドフレーム6が螺子7にて固定されている。
【0024】
エンドフレーム6の略中央部には、ハウジングケース2の内側に開口する軸受収容凹部6aが凹設されるとともに、該軸受収容凹部6a内には、前記軸受5と対をなす軸受8が収容されている。また、エンドフレーム6の略中央部には、ハウジングケース2と反対側に開口するセンサステータ保持部6bが凹設されるとともに、該センサステータ保持部6b内には、後述する円環状のセンサステータ72が固定されている。
【0025】
図2に示すように、前記固定子3を構成するステータコア11は、周方向に配置された12個の分割コア12から構成されている。各分割コア12は、軸方向から見た形状が円弧状をなす連結部12aと、該連結部12aの周方向の中央部から径方向内側に延びるティース12bとが一体に形成されてなり、軸方向から見た形状が略T字状をなしている。また、各連結部12aの径方向外側の面の周方向の中央部には、軸方向に沿って延びる係合溝12cが形成されている。尚、各分割コア12は、磁性金属板材を打ち抜いて形成される略T字状のコアシート(図示略)を板厚方向に複数枚積層して形成されている。
【0026】
図3(a)に示すように、各分割コア12には、絶縁性を有する合成樹脂材料よりなるインシュレータ13が軸方向の両側から装着されている。各インシュレータ13は、分割コア12の軸方向の片側端面を覆う端面被覆部13aと、該端面被覆部13aの周方向の両端から軸方向に沿って延びティース12bの周方向の両側面を覆う一対の側面被覆部13b(図2参照)とが一体に形成されてなる。また、端面被覆部13aの径方向内側の端部には、軸方向に沿って立設される内周側はみ出し防止壁13cが一体に形成されるとともに、端面被覆部13aの径方向外側の端部には軸方向に沿って立設される外周側はみ出し防止壁13dが一体に形成されている。更に、24個のインシュレータ13において、ステータコア11の軸方向の片側(図1におけるハウジングケース2の開口部側)に装着される12個のインシュレータ13には、図3(c)に示すように、端面被覆部13aの径方向外側の端部に、径方向内側に向かって凹設された係合凹部13eが形成されている。尚、係合凹部13eの内周面のうち、ステータコア11の軸方向の片側端面と対向する面は、軸方向と直交する平坦な係止面13fとなっている。
【0027】
そして、図2に示すように、インシュレータ13が装着されたステータコア11の各ティース12bに、該インシュレータ13の上から導線14が集中巻きにて巻回されることにより12個のコイルU1〜U4,V1〜V4,W1〜W4が形成されている。各コイルU1〜U4,V1〜V4,W1〜W4は、内周側はみ出し防止壁13cによって径方向内側へのはみ出しが防止されるとともに、外周側はみ出し防止壁13dによって径方向外側へのはみ出しが防止されている。また、図3(a)に示すように、各コイルU1〜U4,V1〜V4,W1〜W4を構成する導線14は、絶縁被膜15にて覆われるとともに、各コイルU1〜U4,V1〜V4,W1〜W4の端部(接続端部)16の先端側の所定領域においては、絶縁被膜15は除去されている。更に、コイルU1〜U4,V1〜V4,W1〜W4の接続端部16は、周方向に等角度間隔となる位置から軸方向に引き出されている(図2参照)。尚、図1及び図3(a)においては、コイルU1〜U4,V1〜V4,W1〜W4のうち、コイルU2,U3のみを図示している。このように構成された固定子3は、ハウジングケース2内に圧入されることにより該ハウジングケース2の内周面に固定されている。
【0028】
図1に示すように、固定子3のハウジングケース2の開口部側の端部には、前記コイルU1〜U4,V1〜V4,W1〜W4(図2参照)のうち対応するコイル同士を短絡するとともに外部から供給される電流を各コイルU1〜U4,V1〜V4,W1〜W4に供給するためのバスバー装置21が固定されている。このバスバー装置21は、前記インシュレータ13に対して固定されるホルダとしてのバスバーホルダ22と、該バスバーホルダ22にて保持される複数のバスバー30〜39(図4参照)とから構成されている。
【0029】
図5(a)に示すように、バスバーホルダ22は、絶縁性の合成樹脂材料よりなり、円環状のホルダ本体41と、該ホルダ本体41から径方向外側に向かって延びる略四角形状の延設保持部42とが一体に形成されてなる。
【0030】
図1に示すように、ホルダ本体41の外径は、前記ステータコア11の外径と略等しく形成されているとともに、同ホルダ本体41の内径は、エンドフレーム6において軸受収容凹部6aが形成された部位の外径よりも大きく、且つ前記ステータコア11の内径と略等しく形成されている。このホルダ本体41の外周縁の複数個所(本実施形態では3箇所)には、バスバーホルダ22を固定子3に取着するためのスナップフィット係合部43が一体に形成されている。図5(a)に示すように、スナップフィット係合部43は、ホルダ本体41の外周縁において周方向に等角度間隔(本実施形態では120°間隔)となる位置に形成されている。そして、図3(c)に示すように、スナップフィット係合部43は、軸方向に沿って固定子3側に延び弾性を有する延長部43aと、該延長部43aの先端部からホルダ本体41の径方向内側に突出する係止部43bとが一体に形成されてなる。そして、延長部43aは、インシュレータ13の外周面(最も径方向外側に突出した部分の外周面)よりも径方向外側で軸方向に沿って延びるとともに、係止部43bは、インシュレータ13の外周面よりも径方向内側となる位置まで突出している。また、係止部43bにおける延長部43aの基端側の面は、軸方向と直交する平坦な係止面43cとなっている。
【0031】
また、図5(a)に示すように、ホルダ本体41の外周縁の複数個所(本実施形態では3箇所)には、当接部44が形成されている。これら当接部44は、ホルダ本体41の外周縁において周方向に隣り合う前記スナップフィット係合部43間の周方向の中央部となる3箇所に形成されている。そして、図3(b)に示すように、各当接部44は、ホルダ本体41の外周縁から軸方向に沿って固定子3側に延びる軸方向当接部44aと、該軸方向当接部44aの先端部から軸方向に沿って固定子3側に延びる径方向当接部44bとから構成されている。軸方向当接部44aは、略四角形の板状をなすとともに、ホルダ本体41の外周面に沿って湾曲している。また、図8(a)に示すように、軸方向当接部44aの先端部における周方向の中央部には、軸方向に凹設された非当接凹部44cが形成されるとともに、軸方向当接部44aにおける非当接凹部44cの周方向の両側の先端面は、軸方向と直行する平坦な当接面44dとなっている。
【0032】
径方向当接部44bは、非当接凹部44cの周方向の中央部から軸方向に沿って延びるとともに、その周方向の幅は、前記各分割コア12に形成された係合溝12cの周方向の幅と略等しく形成されている。(図8(c)参照)。また、図8(b)に示すように、径方向当接部44bの内周面44e(ホルダ本体41の内周側の面)は、軸方向当接部44aの内周面44fよりホルダ本体41の外周側に設定されており、該径方向当接部44bの径方向の厚さは、軸方向当接部44aの径方向の厚さよりも薄く形成されている。
【0033】
そして、バスバーホルダ22は、図1に示すように、ホルダ本体41の軸方向と固定子3の軸方向とを一致させた状態で、ハウジングケース2の開口部側の固定子3の軸方向の端部に配置されるとともに、スナップフィット係合部43が固定子3に係合されることにより固定子3に対して固定されている。詳述すると、図3(a)乃至図3(c)に示すように、スナップフィット係合部43の係止部43bは、インシュレータ13に設けられた係合凹部13e内に配置されるとともに、インシュレータ13の係止面13fと該係止面13fに軸方向に対向するステータコア11の軸方向の端面の双方に当接される。これにより、スナップフィット係合部43が固定子3に対して軸方向に係合され、バスバーホルダ22が固定子3に固定されている。
【0034】
また、バスバーホルダ22が固定子3の軸方向の端部に固定された状態においては、図8(c)に示すように、当接部44の径方向当接部44bが、ステータコア11に設けられた係合溝12c内に挿入されるとともに、該径方向当接部44bは、ステータコア11の外周面(本実施形態では係合溝12cの底面)に当接する。また、当接部44の軸方向当接部44aの当接面44dが、ステータコア11の軸方向の端面に当接する。
【0035】
また、図5(a)に示すように、ホルダ本体41の外周寄りの部位には、軸方向に貫通する24個(即ちコイルU1〜U4,V1〜V4,W1〜W4の接続端部16と同数)の案内孔45が、周方向に配置されるコイルU1〜U4,V1〜V4,W1〜W4の位置に応じて周方向に形成されている。詳述すると、24個の案内孔45は、コイルU1〜U4,V1〜V4,W1〜W4の各接続端部16の周方向位置に応じて周方向に等角度間隔に形成されるとともに、その径方向位置も、コイルU1〜U4,V1〜V4,W1〜W4の径方向位置に応じた位置となっている。また、各案内孔45の直径は、前記導線14(図2参照)の直径よりも若干大きい値に設定されている。そして、各案内孔45における固定子3(図3(a)参照)側の開口部には、該案内孔45の開口部を拡径してなる導入部46が形成されている。
【0036】
図5(b)及び図5(c)に示すように、各導入部46の内周面は、軸方向に対して傾斜した傾斜面にて構成され、案内孔45の固定子3側(図3(a)参照)の開口端に向かうに連れてその内径が大きくなる略円錐台形状をなしている。また、図5(a)に示すように、各導入部46は、案内孔45の開口部を周方向に拡げて拡径されており、各導入部46の固定子3側の開口端における形状は、その長手方向が周方向に沿ったトラック形状(一対の平行線の両端部をそれぞれ円弧にて連結した形状)をなしている。従って、各導入部46は、径方向の幅に比べて周方向の幅が広い形状となっている。
【0037】
また、図6及び図7に示すように、ホルダ本体41には、24個の案内孔45よりも内周側となる位置に複数(本実施形態では10個)の収容溝47が形成されている。各収容溝47は、固定子3と逆側に開口している(図3参照)。また、各収容溝47は、軸方向から見た形状が円弧状をなすとともに、10個の収容溝47は、ホルダ本体41の中心軸線L1上の一点を中心O1とする同心状に形成されている。尚、ホルダ本体41の中心軸線L1は、図4に示すように、バスバーホルダ22が固定子3に組み着けられた状態においてステータコア11の中心軸線L1と一致する。更に、各収容溝47は、その内部に収容されるバスバー30〜39の後述するバスバー本体51に応じてその周方向の長さが設定されている。また、図10に示すように、各収容溝47の径方向の幅Dは、バスバー本体51の板厚Tよりも若干広く形成されている。尚、図10には、バスバーホルダ22の外周側に配置されるバスバー34を代表して図示したが、バスバー30〜33,35〜39のバスバー本体51が収容される各収容溝47についても同様に、その径方向の幅Dが、バスバー本体51の板厚Tよりも若干広く形成されている。また、図3(a)に示すように、各収容溝47の深さは、バスバー本体51の短手方向の幅よりも若干深く形成されている。尚、図6に示すように、複数の収容溝47のうち、所定の3つの収容溝47には、前記延設保持部42に近い方の周方向の端部から、同延設保持部42まで延びる連結収容部48が一体に形成されている。
【0038】
図9に示すように、各バスバー30〜39は、帯状の導電性板材よりなるバスバー本体51と、該バスバー本体51と一体に形成される複数の接続部52とを備えている。各バスバー本体51は、長手方向の両端部が互いに近づくように円弧状に湾曲された形状をなすとともに、各バスバー本体51の短手方向が、円弧の中心O1を通る直線と平行をなしている。そして、図3(a)に示すように、各バスバー本体51の短手方向の長さ(軸方向の長さ)は、前記収容溝47の深さよりも若干短い長さに設定されている。また、図11(a)乃至図11(c)に示すように、各バスバー本体51の周方向の両端部、即ち長手方向の両端部には、円弧状に切り欠かれた切欠き部51aが形成されるとともに、該切欠き部51aの側方(接続部52と逆側)には、周方向に突出した係止凸部51bが各バスバー本体51と一体に設けられている。尚、図11(a)乃至図11(c)には、外周側に配置されたバスバー34を代表として図示している。各係止凸部51bは、バスバー本体51の短手方向に沿って接続部52が設けられた側のバスバー本体51の短手方向の端部に向かうに連れて周方向に徐々に突出した形状をなしている。そして、バスバー本体51の板厚方向から見ると、各係止凸部51bの先端部は鋭角をなすとともに、各係止凸部51bにおいて鋭角を構成する一方の辺は、バスバー本体51の長手方向と平行をなしており、他方の辺は、バスバー本体51の短手方向に対して傾斜している。また、図4に示すように、各バスバー本体51の周方向の長さ、即ち長手方向の長さは、コイルU1〜U4,V1〜V4,W1〜W4の端部のうちバスバー30〜39にて互いに接続する接続端部16の位置に応じて設定されている。詳述すると、図10に示すように、係止凸部51bを除く各バスバー本体51の長手方向の長さは、それぞれが収容される収容溝47の径方向内側の内壁面47aの周方向の長さと等しい長さとなっている。一方、係止凸部51bを含む各バスバー本体51の長手方向の長さは、それぞれが収容される収容溝47の径方向内側の内壁面47aの周方向の長さよりも若干長い長さとなっている。
【0039】
また、図9及び図11(a)に示すように、各バスバー本体51の短手方向の片側端部に、径方向外側に突出した前記接続部52が複数設けられている。接続部52は、各バスバー本体51の周方向の端部等、バスバー本体51の周方向の所定箇所から径方向外側に延び、更に軸方向に沿ってバスバー本体51と逆側(ホルダ本体41から遠ざかる方向)に延びている(図3(a)参照)。図9に示すように、接続部52は、コイルU1〜U4,V1〜V4,W1〜W4の接続端部16(図2参照)の数に応じて複数のバスバー30〜39に合計で24個設けられている。また、図11(d)に示すように、各接続部52の先端部には、軸方向に延びる筒状をなす保持部52aが形成されるとともに、該保持部52aの内径は前記導線14(図9参照)の直径と略等しく形成されている。尚、本実施形態の保持部52aは、接続部52の先端部に一体に形成された四角形状の板材を湾曲させることにより筒状に形成されている。
【0040】
図4及び図10に示すように、上記のように構成された各バスバー30〜39は、対応する収容溝47内にそれぞれのバスバー本体51が挿入されることにより、バスバーホルダ22に対してそれぞれ組み付けられている。詳述すると、各バスバー本体51は、接続部52が設けられていない側の短手方向の端部から対応する収容溝47内に挿入され、短手方向の同端部が収容溝47の底面に当接している。係止凸部51bを含む各バスバー本体51の長手方向の長さは、それぞれが収容される収容溝47の径方向内側の内壁面47aの周方向の長さよりも長いため、各バスバー本体51は、内壁面47a側で板厚方向(径方向)に撓んだ状態で各収容溝47内にその全体が収容されている。尚、本実施形態においては、各バスバー本体51が撓むことにより各バスバー本体51と各収容溝47の内壁面47aとの間に生じる隙間は非常に微量であるため、図4及び図10には当該隙間の図示を省略している。そして、各バスバー本体51は、各バスバー本体51の撓みに基づく復元力によってその長手方向の両端部に設けられた係止凸部51bが、各収容溝47の周方向の両端の内壁面47b,47cをそれぞれ圧接する。このように、各バスバー本体51の長手方向の両端部にて各収容溝47の周方向の両端の内壁面47b,47cを圧接させることにより、各バスバー本体51は、各収容溝47内に保持されるとともに、各バスバー30〜39は、バスバーホルダ22に対して組み付けられている。また、バスバー本体51が収容溝47内に挿入された状態においては、各係止凸部51bは、各収容溝47の周方向の両端の内壁面47b,47cに対し、バスバー本体51の収容溝47への挿入方向と逆方向に係止される。即ち、各係止凸部51bは、バスバー本体51の収容溝47への挿入方向と逆方向の力がバスバー本体51に加わった場合、その先端部が収容溝47の周方向の両端の内壁面47b,47cに引っかかり、収容溝47からのバスバー本体51の脱落を防止する。
【0041】
また、図3(a)及び図4に示すように、各バスバー30〜39のバスバー本体51が対応する収容溝47に収容された状態においては、各接続部52は、収容溝47の外部に配置されるとともに、各保持部52aは、その径方向位置及び周方向位置が、ホルダ本体41に設けられた案内孔45にそれぞれ対応している。そして、同状態においては、案内孔45の固定子3側の開口部と保持部52a一端開口部(接続部52の基端側の開口部)とが対向している。また、同状態においては、接続部52は、その先端部に形成された保持部52aがホルダ本体41を軸方向に貫通する案内孔45と軸方向に並ぶことから、ホルダ本体41の外周面よりも径方向内側に配置されている。更に、10個の収容溝47は、軸方向から見た形状が円弧状をなすとともにホルダ本体41の中心軸線L1上の一点を中心O1とする同心状に形成されているため、同状態においては、各バスバー本体51は、その板厚方向とホルダ本体41の径方向とが略一致するとともに、略同心状に配置されている。
【0042】
尚、図4及び図9に示すように、複数のバスバー30〜39のうち、所定の3つのバスバー36,38,39のバスバー本体51における延設保持部42に近い方の周方向の端部からは、延設保持部42の連結収容部48内に収容される延設部53が一体に形成されている。この延設部53は、外部の電源装置に電気的に接続される。
【0043】
図3(a)及び図12に示すように、各コイルU1〜U4,V1〜V4,W1〜W4の接続端部16は、それぞれ軸方向に対向するバスバーホルダ22の案内孔45内に、導入部46側から挿入されるとともに、各案内孔45と軸方向に並ぶ保持部52a内に挿入されている。そして、保持部52aとコイルU1〜U4,V1〜V4,W1〜W4の接続端部16とが溶接によりそれぞれ電気的に接続され、これにより、図13に示すように、コイルU1〜U4,V1〜V4,W1〜W4の接続端部16のうち所定の端部同士がバスバー30〜39によって短絡されている。
【0044】
図1に示すように、前記回転子4を構成する回転軸61は、前記一対の軸受5,8によって軸支されるとともに、該回転軸61の基端部寄りの部位には、略円筒状のロータヨーク62が固定されている。このロータヨーク62の外周には、複数の永久磁石63が配置されるとともに、これら永久磁石63は、当該永久磁石63の外周に装着された円筒状のカバー64によってロータヨーク62の外周面に当接した状態に保たれている。また、これら永久磁石63は、ステータコア11と径方向に対向している。
【0045】
前記回転軸61の先端は、前記バスバーホルダ22及びエンドフレーム6を貫通してハウジングケース2の外部に突出している。また、回転軸61におけるエンドフレーム6からハウジングケース2の外部に突出した部位であって前記センサステータ72と径方向に対向する部位には、該センサステータ72とともにレゾルバ71を構成するセンサロータ73が固定されている。このレゾルバ71は、固定子3に対する回転子4の回転状態(回転位置、回転速度等)を検出するためのものであり、回転子4の回転状態に応じた位置検出信号をブラシレスモータ1の外部に設けられる駆動回路(図示略)に出力する。
【0046】
上記のように構成されたブラシレスモータ1では、所定のコイルU1〜U4,V1〜V4,W1〜W4への通電により回転子4が回転されると、回転軸61とともにセンサロータ73が回転する。そして、レゾルバ71はセンサロータ73の回転状態、即ち回転子4の回転状態に応じた回転検出信号を駆動回路(図示略)へ出力する。駆動回路は、レゾルバ71から入力される回転検出信号に基づいて、コイルU1〜U4,V1〜V4,W1〜W4への通電を行う。
【0047】
次に、上記のように構成されたバスバー装置21の製造方法を説明する。
本実施形態のバスバー装置21は、バスバー30〜39を形成するバスバー形成工程、バスバーホルダ22を形成するホルダ形成工程、及びバスバーホルダ22にバスバー30〜39を組み付ける組付け工程を経て製造される。
【0048】
まず、バスバー形成工程では、導電性の金属板材をプレス加工により打ち抜いて、切欠き部51a及び係止凸部51bを有するバスバー本体51に対し、接続部52となる部位とが一体に形成された部品が形成される(図11(a)乃至図11(d)参照)。そして、この部品において、バスバー本体51をその長手方向が互いに近づくように円弧状に湾曲させ、接続部52となる部位を径方向外側に向かって屈曲させるとともに先端側の部位を筒状に湾曲させて保持部52aを形成することにより、各バスバー30〜39(図9参照)が形成される。
【0049】
また、ホルダ形成工程では、バスバーホルダ22成形用の成形型(図示略)内に溶融した絶縁性樹脂材料を充填する。この絶縁性樹脂材料を冷却して固化することにより、バスバーホルダ22(図6参照)が形成される。尚、バスバー形成工程及びホルダ形成工程は、何れの工程が先に行われてもよいし、2つの工程が同時に行われてもよい。
【0050】
そして、組付け工程では、図4に示すように、バスバーホルダ22の各収容溝47内に、バスバー30〜39のバスバー本体51がそれぞれ挿入される。各バスバー30〜39のバスバー本体51は、短手方向の端部のうち接続部52が設けられていない側の端部から各収容溝47内に挿入される。この時、図10に示すように、各収容溝47の径方向の幅Dは、バスバー本体51の板厚Tよりも広く形成されているため、バスバー本体51は、板厚方向(径方向)に撓むことにより容易に収容溝47内に収容される。また、係止凸部51bは、バスバー本体51の短手方向に沿って接続部52が設けられた側のバスバー本体51の短手方向の端部に向かうに連れて周方向に徐々に突出した形状をなしているため、バスバー本体51の収容溝47への挿入時の妨げとはならない。そして、各バスバー本体51は、内壁面47a側で板厚方向(径方向)に撓んだ状態で各収容溝47内にその全体が収容されるとともに、各バスバー本体51の撓みに基づく復元力によってその長手方向の両端部に設けられた係止凸部51bが、各収容溝47の周方向の両端の内壁面47b,47cをそれぞれ圧接する。これにより、各バスバー本体51は、各収容溝47内に保持されるとともに、各バスバー30〜39は、バスバーホルダ22に対して組み付けられてバスバー装置21が完成する。
【0051】
上記したように、本実施形態によれば、以下の作用効果を有する。
(1)複数の収容溝47にバスバー本体51をそれぞれ挿入することにより、複数のバスバー30〜39を容易に同心状に配置することができるとともに、各バスバー30〜39の径方向の間隔を維持することができる。そして、バスバー装置21は、径方向に隣り合うバスバー30〜39間の間隔を維持するためのスペーサを備えないとともに、バスバー30〜39をバスバーホルダ22に組付けるだけで形成されるため、従来に比べてバスバー装置21の製造にかかる製造コストを低減させることができる。その結果、該バスバー装置21を備えたブラシレスモータ1の製造にかかる製造コストを低減させることができる。また、バスバー30〜39のバスバー本体51がそれぞれ挿入される収容溝47は、その径方向の幅Dが、バスバー本体51の板厚Tよりも広く形成されている。従って、各バスバー本体51を板厚方向に撓ませて容易に各収容溝47に挿入することができるとともに、各収容溝47の寸法精度を高精度としなくてもよい。更に、各バスバー本体51は、板厚方向に撓んだ状態で各収容溝47内に挿入されており、撓みに基づく復元力によって各バスバー本体51の長手方向の両端部が各収容溝47の周方向の両端の内壁面47b,47cに圧接することにより各収容溝47内に保持されている。即ち、各バスバー30〜39は、各バスバー本体51の長手方向の両端部が各収容溝47の周方向の両端の内壁面47b,47cに圧接されることにより、バスバーホルダ22に対して組付けられている。従って、バスバー30〜39をバスバーホルダ22に対して組付けるための部品を別途使用しなくてもよいため、部品点数の増大が抑制される。
【0052】
(2)各係止凸部51bは、収容溝47の内壁面47b若しくは内壁面47cに対しバスバー本体51の収容溝47への挿入方向と逆方向に係止されるため、各係止凸部51bにより、各バスバー本体51の各収容溝47からの脱落、即ちバスバー30〜39のバスバーホルダ22からの脱落を抑制することができる。また、係止凸部51bは、各バスバー本体51の両端部において、バスバー本体51の短手方向に沿って接続部52が設けられた側のバスバー本体51の短手方向の端部に向かうに連れて周方向に徐々に突出した形状をなしている。従って、係止凸部51bを有するバスバー本体51であっても、接続部52が設けられた側と逆側の短手方向の端部から収容溝47に挿入されることにより、容易に同収容溝47内へ挿入される。
【0053】
(3)各コイルU1〜U4,V1〜V4,W1〜W4の接続端部16は、バスバーホルダ22においてコイルU1〜U4,V1〜V4,W1〜W4と対向する側、即ちバスバーホルダ22において接続部52が配置された側と反対側から案内孔45にそれぞれ挿通されて接続部52に接続されることにより、バスバーホルダ22の外周縁よりも内側に配置される。また、各コイルU1〜U4,V1〜V4,W1〜W4の接続端部16は、バスバーホルダ22に形成された案内孔45を貫通した状態に保たれるため、バスバーホルダ22によって、バスバー装置21の外周側に配置される部品(ブラシレスモータ1のハウジングケース2等)への接続端部16の干渉、及び接続端部16と同部品との絶縁不良が抑制される。
【0054】
(4)各保持部52aは、軸方向に延びる筒状をなすとともに、その一端開口部が案内孔45の開口部と対向している。従って、案内孔45を貫通したコイルU1〜U4,V1〜V4,W1〜W4の接続端部16は、容易に保持部52a内に挿入される。また、コイルU1〜U4,V1〜V4,W1〜W4の接続端部16は、筒状の保持部52aに挿入されるため、該保持部52aによって径方向の移動が規制される。従って、コイルU1〜U4,V1〜V4,W1〜W4の先端とバスバー装置21の外周側に配置される部品(ブラシレスモータ1のハウジングケース2等)との絶縁不良がより抑制されるとともに、接続部52と接続端部16との電気的な接続をより容易に行うことができる。
【0055】
(5)スナップフィット係合部43が固定子3に軸方向に係合されることにより、バスバーホルダ22は固定子3の軸方向の端部に固定される。更に、固定子3を構成するステータコア11に巻回されたコイルU1〜U4,V1〜V4,W1〜W4の接続端部16が、バスバーホルダ22に組付けられたバスバー30〜39の接続部52に電気的に接続されることにより、バスバー30〜39は、コイルU1〜U4,V1〜V4,W1〜W4を介して固定子3と一体化される。従って、バスバー30〜39は、該バスバー30〜39が組み付けられたバスバーホルダ22が固定されるとともに該バスバー30〜39に接続されるコイルU1〜U4,V1〜V4,W1〜W4を備えた固定子3を介してより一層バスバーホルダ22と一体化される。その結果、バスバーホルダ22に対するバスバー30〜39の組付け状態が安定する。
【0056】
(6)スナップフィット係合部43はインシュレータ13に係合されるため、スナップフィット係合部43を係合させるべくステータコア11が複雑な形状となることが防止される。また、ステータコア11は金属製であることから、合成樹脂よりなる部材(例えばインシュレータ13)よりも剛性が高い。従って、剛性の高いステータコア11の外周面に当接部44の径方向当接部44bが当接することにより、ステータコア11に対するバスバーホルダ22の径方向の位置決めを高精度に行うことができる。その結果、ステータコア11に巻装されたコイルU1〜U4,V1〜V4,W1〜W4の接続端部16を、バスバーホルダ22に組付けられたバスバー30〜39の接続部52に更に容易に電気的に接続することができる。
【0057】
(7)合成樹脂製のインシュレータ13よりも剛性の高い金属製のステータコア11の軸方向の端面に当接部44の軸方向当接部44aが当接することにより、バスバーホルダ22の固定子3に対するぐらつきを抑制することができる。その結果、接続部52とコイルU1〜U4,V1〜V4,W1〜W4の接続端部16との電気的な接続を一層容易に行うことができる。
【0058】
尚、本発明の実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、バスバーホルダ22に設けられる当接部44は、ステータコア11の軸方向の端面に当接する軸方向当接部44aを備えているが、ステータコア11の外周面に当接する径方向当接部44bのみから構成されてもよい。逆に、当接部44において、径方向当接部44bを省略してもよい。
【0059】
・上記実施形態では、径方向当接部44bは、係合溝12cの底面に当接する。しかしながら、径方向当接部44bは、ステータコア11の外周面に径方向から当接するのであれば、係合溝12cの底面以外の部分に当接してもよい。また、径方向当接部44bは、ステータコア11の外周面を圧接するように構成されてもよい。このようにすると、固定子3に対するバスバーホルダ22のぐらつきをより抑制することができる。
【0060】
・上記実施形態では、当接部44は、ホルダ本体41の外周縁の3箇所に設けられているが、ホルダ本体41の外周縁の1箇所若しくは2箇所に設けられてもよいし、4箇所以上の複数箇所に設けられてもよい。また、バスバーホルダ22は、当接部44を備えない構成であってもよい。
【0061】
・上記実施形態では、スナップフィット係合部43は、ステータコア11に装着されるインシュレータ13に対して係合される。しかしながら、スナップフィット係合部43は、ステータコア11に係合されるものであってもよい。この場合、ステータコア11には、スナップフィット係合部43に係止部43bが形成される係合凹部が形成される。
【0062】
・上記実施形態では、スナップフィット係合部43は、径方向内側に突出する係止部43bを有するとともに、該係止部43bは、インシュレータ13に形成された係合凹部13eに係合される。しかしながら、固定子3に対してバスバーホルダ22を固定するための構成はこれに限らない。例えば、スナップフィット係合部43側に凹部を形成し、インシュレータ13側に当該凹部に係合する凸部を形成し、当該凹部と凸部とを係合させることにより、固定子3に対してバスバーホルダ22を固定する構成としてもよい。
【0063】
・上記実施形態では、スナップフィット係合部43は、ホルダ本体41の外周縁の3箇所に設けられているが、ホルダ本体41の外周縁の1箇所若しくは2箇所に設けられてもよい。また、スナップフィット係合部43は、ホルダ本体41の外周縁の4箇所以上の複数箇所に設けられてもよい。更に、バスバーホルダ22は、固定子3に対してバスバー装置21を固定するスナップフィット係合部43を備えない構成であってもよい。
【0064】
・上記実施形態では、接続部52の先端部には、その一端開口部が案内孔45の開口部(固定子3と逆側の開口部)と対向する筒状の保持部52aが形成されており、各コイルU1〜U4,V1〜V4,W1〜W4の接続端部16は当該保持部52aに電気的に接続される。しかしながら、接続部52において、コイルU1〜U4,V1〜V4,W1〜W4の接続端部16が接続される部位の形状は、これに限らない。例えば、接続部52の先端に、コイルU1〜U4,V1〜V4,W1〜W4の接続端部16の外周を完全に囲む保持部52aを形成してもよいし、コイルU1〜U4,V1〜V4,W1〜W4の接続端部がその径方向に抜け出せない程度の開口を有する保持部52aを形成してもよい。また例えば、バスバー本体51の短手方向の端部から径方向外側に延びる板状の接続部52の先端部に、径方向外側に開口する凹部を形成し、該凹部内にコイルU1〜U4,V1〜V4,W1〜W4の接続端部16が配置される構成としてもよい。
【0065】
・上記実施形態では、接続部52は何れも径方向外側に突出している。しかしながら、接続部52は、バスバー本体51の短手方向の片側端部から径方向内側に突出してもよい。
【0066】
・上記実施形態では、案内孔45は、ホルダ本体41の軸方向から見た形状が円形状をなしているが、多角形状等をなすものであってもよい。また、上記実施形態の各案内孔45における固定子3(図3(a)参照)側の開口部には、導入部46が設けられているが、導入部46は省略してもよい。
【0067】
・バスバーホルダ22は、案内孔45を備えない構成であってもよい。この場合、各コイルU1〜U4,V1〜V4,W1〜W4の接続端部16は、ホルダ本体41の外周側若しくは内周側からホルダ本体41における固定子3と逆側の端部に取り回されて接続部52に接続される。
【0068】
・上記実施形態では、各バスバー本体51の長手方向の両端部には係止凸部51bが設けられている。しかしながら、バスバー30〜39のうち、少なくとも1つのバスバーのバスバー本体51の長手方向の少なくとも一方の端部にのみ係止凸部51bが設けられてもよい。また、全てのバスバー本体51が、係止凸部51bを備えない構成であってもよい。この場合、各バスバー本体51の長手方向の長さは、板厚方向(径方向に同じ)に撓んだ状態で収容溝47内に挿入可能であるとともに、各バスバー本体51の長手方向の両端部にて収容溝47の周方向の両端の内壁面47b,47cを圧接可能な長さに設定される。このようにしても、上記実施形態の(1)の作用効果と同様の作用効果を得ることができる。
【0069】
・上記実施形態では、各バスバー30〜39のバスバー本体51は、その全体が収容溝47内にそれぞれ収容されている。しかしながら、バスバー本体51は、その少なくとも一部が収容溝47内に収容されればよい。従って、収容溝47の深さは適宜変更してもよい。
【0070】
・上記実施形態では、ステータコア11を構成する分割コア12は、磁性金属板材を打ち抜いて形成されるコアシートを積層して形成されている。しかしながら、分割コア12は、磁性粉体を焼結して形成されるものであってもよい。また、ステータコア11は、全てのティースが周方向に一体に連結された構成(周方向に分割されない構成)であってもよい。
【0071】
・上記実施形態のブラシレスモータ1の固定子3は、12個のティース12bと、該ティース12bに集中巻にて巻回された12個のコイルU1〜U4,V1〜V4,W1〜W4を備えている。しかしながら、固定子3を構成するティース及びコイルの数はこれに限らず、適宜変更してもよい。この場合、コイルの数に応じて、バスバー装置21を構成するバスバー30〜39の数も適宜変更してよい。更に、バスバー装置21を構成するバスバーの数に応じて、バスバーホルダ22に形成される収容溝47の数も適宜変更してよい。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】ブラシレスモータの断面図。
【図2】固定子の底面図。
【図3】(a)はバスバー装置が固定された固定子の断面図、(b)及び(c)はバスバー装置が固定された固定子の部分拡大断面図。
【図4】固定子に固定されたバスバー装置の底面図。
【図5】(a)はバスバーホルダの平面図、(b)は図5(a)におけるA−A線断面図、(c)は図5(a)におけるB−B線断面図。
【図6】バスバーホルダの底面図。
【図7】バスバーホルダの断面図(図6におけるC−C線断面図)。
【図8】(a)は当接部の正面図、(b)は当接部の断面図、(c)はステータコアに対して当接された当接部の斜視図。
【図9】バスバーの平面図。
【図10】バスバー装置における収容溝付近の拡大図。
【図11】(a)はバスバーの側面図、(b)は接続部側から見たバスバーの平面図、(c)はバスバーの部分拡大図、(d)はバスバーの部分拡大斜視図。
【図12】バスバー装置が固定された固定子における保持部付近の断面図。
【図13】コイルの結線図。
【符号の説明】
【0073】
2…ハウジングケース、3…固定子、11…ステータコア、12b…ティース、13…インシュレータ、16…コイルの端部としての接続端部、21…バスバー装置、22…ホルダとしてのバスバーホルダ、30〜39…バスバー、43…係合部としてのスナップフィット係合部、44…当接部、45…案内孔、47…収容溝、47b,47c…内壁面、51…バスバー本体、51b…係止凸部、52…接続部、52a…保持部、D…収容溝の径方向の幅、T…バスバー本体の板厚、U1〜U4,V1〜V4,W1〜W4…コイル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向の両端部が互いに近づくように円弧状に湾曲された帯状の導電性板材よりなるバスバー本体、及び該バスバー本体の短手方向の片側端部に設けられコイルの端部が接続される接続部を有する複数のバスバーと、
前記バスバー本体の少なくとも一部を収容するホルダと
を備えたバスバー装置であって、
前記ホルダは、前記バスバー本体をそれぞれ収容すべく同心状に形成さるとともに径方向の幅が前記バスバー本体の板厚よりも広く形成された複数の収容溝を備え、
前記バスバー本体は、その板厚方向と前記収容溝の径方向とが一致するように且つ板厚方向に撓んだ状態で前記収容溝内に挿入され、撓みに基づく復元力によって該バスバー本体の長手方向の両端部を前記収容溝の周方向の両端の内壁面に圧接させることにより前記収容溝内に保持されたことを特徴とするバスバー装置。
【請求項2】
請求項1に記載のバスバー装置において、
少なくとも1つの前記バスバーの前記バスバー本体は、その長手方向の少なくとも一方の端部に、前記バスバー本体の短手方向に沿って前記接続部が設けられた側の前記バスバー本体の短手方向の端部に向かうに連れて周方向に徐々に突出するとともに、前記収容溝の内壁面に対し前記バスバー本体の前記収容溝への挿入方向と逆方向に係止される係止凸部を有することを特徴とするバスバー装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のバスバー装置において、
前記ホルダは、該ホルダを軸方向に貫通した複数の案内孔を有し、
前記バスバーは、前記バスバー本体に対し径方向に突出するように設けられるとともに前記案内孔に挿通された前記コイルの端部が接続される前記接続部を有することを特徴とするバスバー装置。
【請求項4】
請求項3に記載のバスバー装置において、
前記接続部は、軸方向に延びる筒状をなしその一端開口部が前記案内孔の開口部と対向するとともに前記コイルの端部が挿入される保持部を有することを特徴とするバスバー装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載のバスバー装置において、
前記ホルダは、周方向に配置された複数のティースを有する金属製のステータコアと前記ティースに巻回された複数の前記コイルとを備えた固定子の軸方向の端部に配置されるとともに、前記固定子に軸方向に係合される係合部と、前記ステータコアに当接する当接部とを有することを特徴とするバスバー装置。
【請求項6】
請求項5に記載のバスバー装置において、
前記係合部は、前記ステータコアと前記コイルとの短絡を防止すべく前記ステータコアに装着されるインシュレータに係合され、
前記当接部は、前記ステータコアの外周面に当接することを特徴とするバスバー装置。
【請求項7】
請求項6に記載のバスバー装置において、
前記当接部は、前記ステータコアの軸方向の端面にも当接することを特徴とするバスバー装置。
【請求項8】
有底円筒状のハウジングケースと、
周方向に配置された複数のティースを有するステータコア、及び前記ティースに巻回された複数の前記コイルを有し、前記ハウジングケースの内周面に固定された固定子と、
前記固定子の軸方向の端部に配置され、前記コイルの所定の端部同士を短絡する請求項1乃至請求項7の何れか一項に記載のバスバー装置と
を備えたことを特徴とするブラシレスモータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−312393(P2008−312393A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−159011(P2007−159011)
【出願日】平成19年6月15日(2007.6.15)
【出願人】(000101352)アスモ株式会社 (1,622)
【Fターム(参考)】