説明

バッチ炉

【課題】全ての被焼成物に雰囲気ガスを均一に接触させることができ、被焼成物を良好に焼成することができるバッチ炉を提供する。
【解決手段】炉床3が開口部2bに挿入され炉体2にセットされた状態で、ガス供給管5は、積層セッター4の貫通孔に挿入されるように構成されており、駆動モータ8の駆動力は、出力軸8A、ベルト12、回転部材11B、およびロータリージョイント11を介して、ガス供給管5に伝達され、これによりガス供給管5は回転し、さらに、セラミック成型体の脱脂・焼成時には、ガス供給管5は、駆動モータ8の駆動力を受けて回転すると共に、ガス供給源から供給される雰囲気ガスをガス供給口からセラミック成型体に向けて供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッチ炉に関し、特にセラミック成型体又はセラミック材料を焼成するためのバッチ炉に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からセラミック成型体を焼成するためのバッチ炉の様々な構成が提案されている。例えば、炉本体と、回転可能な炉床と、炉床上に載置され複数の被焼成物を保持する積層セッターと、積層セッターの貫通孔内に配置されるガス供給管とを備えるバッチ炉が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
そして、特許文献1のバッチ炉では、焼成時に炉床を高速回転させることにより、セッター上の複数の被焼成物に雰囲気ガスを均一に接触させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−250531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし従来のバッチ炉では、炉床を高速回転させるので、被焼成物に遠心力が働き、被焼成物がセッターの外周側へ偏ってしまい、全ての被焼成物を均一に焼成することはできなかった。一方、炉床を高速回転させない場合には、雰囲気ガスを全ての被焼成物に十分に接触させることができず良好な焼成を実現できなかった。
【0006】
そこで、本発明は、全ての被焼成物に雰囲気ガスを均一に接触させることができ、被焼成物を良好に焼成可能なバッチ炉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、被焼成物を載置可能な上面をそれぞれ有し複数重ねられたときに積層方向に延びる貫通孔を提供すれる複数のセッターと、積層された複数のセッターが載置される炉床と、複数のセッターの積層方向において隣合うセッター間に向かって、貫通孔を介してガスを供給するガス供給管と、複数のセッターの周りに配置されるガス排気管と、ガス供給管を回転させる回転手段とを備えるバッチ炉を提供している。
【0008】
かかる構成によれば、ガス供給管がガス供給時に回転するので、ガス供給管からの雰囲気ガスが拡散され、隣合うセッター間のガス雰囲気を均一な流れ状態にすることができる。従って、ガスを全ての被焼成物に対し十分に接触させることができるので、全ての被焼成物を良好に脱脂・焼成することができる。さらに、ガス供給管を回転させることで、雰囲気ガスの供給量を減少させることができる。また、炉床を回転させないので、被焼成物の分布が偏ることはなく、良好に脱脂・焼成することができる。
【0009】
ここで、ガス供給管は貫通孔内に挿入され、ガス供給管には、隣合うセッターの間に対応するように複数のガス供給口が形成され、ガスは、複数のガス供給口から隣合うセッター間に向かって供給されること好ましい。
【0010】
かかる構成によれば、各ガス供給口は、隣合うセッター間に対応するように形成されているので、効率よくかつ集中して被焼成物へガスを供給することができ、ガスの供給量を減少させることができる。また、ガス供給管は回転するので、各ガス供給口とガス排出管との位置関係を相対的に変化させることができる。また、複数のセッターに対して、ガス供給口を任意の速度で回転させることができる。
【0011】
炉床と共に焼成空間を画成する炉本体をさらに備え、ガス供給管は、炉本体から炉床に向かって積層方向に沿って延びる第1ガス供給管と、炉床から炉本体に向かって積層方向に沿って延びる第2ガス供給管とを備え、第1ガス供給管および第2ガス供給管は、貫通孔に挿入されて互いに当接可能に構成され、第1ガス供給管および第2ガス供給管には、隣合うセッターの間に対応するようにガス供給口が形成され、第1ガス供給管を通って供給されるガス、および第2ガス供給管を通って供給されるガスは、ガス供給口から、隣合うセッター間に向かって供給されることが好ましい。
【0012】
かかる構成によれば、第1ガス供給管を通って供給されるガスと、第2ガス供給管を通って供給される雰囲気ガスとが、第1ガス供給管および第2ガス供給管の当接部付近で衝突する。その後、雰囲気ガスは、ガス供給口を介して、隣合うセッター間の被焼成物に向かって供給される。従って、ガス供給口から供給されるガスの流量を均一にすることができる。すなわち、ガス供給口の上下方向におけるガス流量の偏りを防止することができる。
【0013】
更に、炉床と共に焼成空間を画成する炉本体をさらに備え、ガス供給管は、炉本体に設けられた第1ガス供給管と、炉床に設けられた第2ガス供給管とを備え、第1ガス供給管は、貫通孔の上側から貫通孔にガスを供給可能に構成され、第2ガス供給管は、貫通孔の下側から貫通孔にガスを供給可能に構成されることが好ましい。
【0014】
かかる構成によれば、第1ガス供給管および第2ガス供給管から貫通孔にガスが供給されて、貫通孔に溜まったガスが隣合うセッターの間に供給される。従って、各隣合うセッターの間に供給されるガスの流量を均一にすることができる。また、第1ガス供給管および第2ガス供給管は、回転しながら雰囲気ガスを供給するので、貫通孔内の雰囲気ガスを攪拌することができ、各隣合うセッターの間に供給されるガスの流量をより均一にすることができる。
【0015】
また、第1ガス供給管の下端部には、第1ガス供給管の径方向外方に向かって延び、積層方向において最上位のセッターの上面に対向する鍔部が設けられていることが好ましい。
【0016】
かかる構成によれば、鍔部は、最上位のセッターの上面に対向しており、複数のセッターは、炉床上に載置されている。よって、雰囲気ガス供給時には、第1供給管、第2供給管、鍔部、および炉床が、貫通孔の蓋の役割を果たすので、脱脂・焼成に必要な雰囲気ガスの供給量をより減少させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のバッチ炉によれば、全ての被焼成物に雰囲気ガスを均一に接触させることができ、被焼成物を良好に焼成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施の形態におけるバッチ炉の断面図。
【図2】図1に示したバッチ炉の積層セッター付近を拡大して示した断面図。
【図3】本発明の第2の実施の形態におけるバッチ炉の断面図。
【図4】図3に示したバッチ炉の積層セッター付近を拡大して示した断面図。
【図5】本発明の第3の実施の形態におけるバッチ炉の積層セッター付近を拡大して示した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のバッチ炉の第1の実施の形態について図1および図2に基づき説明する。図1に示すように、バッチ炉1は、炉本体2と、炉床3と、積層セッター4と、ガス供給管5と、ガス排気管6と、ヒーター7と、駆動モータ8とを備えている。炉本体2は、天井部2Aを有し、炉本体2の下側には、開口部2bが形成されている。よって、炉本体2は、天井部2Aにより上端が閉じた円筒形状(逆有底円筒形)をなしている。炉本体2の内部側は耐熱材により、外部側は断熱材により構成される。
【0020】
炉床3は、上下動可能に設けられ、開口部2bに挿入可能に構成されている。炉床3が開口部2bに挿入されることにより、炉本体2と炉床3とにより焼成空間2Cが画成される。また、積層セッター4は、炉床3の上に載置されている。図2に示すように、積層セッター4は、セラミックからなる複数のセッター4Aを上下方向に沿って積層することにより構成されている。各セッター4Aは、円盤状をなし、その中央部には円状の開口4bが形成されている。各セッター4Aの開口4bは、セッター4Aの積層方向(図の上下方向)において互いに対向しているため、積層セッター4全体では、上下方向に延びる貫通孔4cを提供している。また、貫通孔4cの下端は、炉床3によって閉じられている。
【0021】
また、上下方向において隣合うセッター4A間であって、各セッター4Aの上面には、被焼成物であるセラミック成型体9が複数配置されている。本実施の形態において、各セラミック部品9の重量は、約6mgである。
【0022】
ガス供給管5は、セラミックチューブからなり、図1に示すように、天井部2Aを上下方向に沿って貫通し、図示せぬ軸受により回転可能に設けられている。また、図2に示すように、ガス供給管5は、有底であり、その中心軸は、積層セッター4Aの貫通孔4cの中心と同軸になるように構成されている。また、炉床3が開口部2bに挿入され炉体2にセットされた状態で、ガス供給管5は、貫通孔4cに挿入されるように構成されている。また、ガス供給管5には、複数のガス供給口5aが形成されている。各ガス供給口5aは、ガス供給管5の周方向において所定の長さを有している。各ガス供給口5aは、ガス供給管5が貫通孔4cに挿入された状態で、上下方向において隣合うセッター4A間に対応するように形成されている。ガス供給管5が貫通孔4cに挿入された状態で、ガス供給管5および各セッター4A間の距離は、0.15〜0.2mmとなるように構成されている。
【0023】
図1に示すように、ガス供給管5には、焼成空間2Cと外気との連通を遮断するためのダブルシール10が装着されている。また、ガス供給管5の上端には、ロータリージョイント11が設けられている。ロータリージョイント11は、ガス供給部材11Aおよび上下方向に沿って延びる回転部材11Bを備えている。
【0024】
駆動モータ8は、その駆動力を出力するための出力軸8Aを備えている。出力軸8Aの図示せぬプーリ、および回転部材11Bの図示せぬプーリには、ベルト12が装着されている。当該構成により、駆動モータ8の駆動力は、出力軸8A、ベルト12、回転部材11B、およびロータリージョイント11を介して、ガス供給管5に伝達され、これによりガス供給管5は出力軸8Aと一体的に回転する。また、ガス供給管5の回転速度は、変更可能に構成されている。
【0025】
ガス排気管6は、セラミックチューブからなり、天井部2Aを上下方向に沿って貫通している。ガス排気管6の下端は、積層セッター4の外周縁部と上下方向において略同位置にある。
【0026】
ヒータ7は、天井部2Aから下方に向かって延び、セラミック成型体9の焼成時に焼成空間2C内を所望の温度に昇温可能である。ガス排気管6は、貫通孔4cの中心と同軸な円周方向に沿って、等間隔に複数配置されることが好ましい。
【0027】
上記の構成において、セラミック成型体9の脱脂・焼成時には、ガス供給管5は、駆動モータ8の駆動力を受けて回転すると共に、図示せぬガス供給源から供給される雰囲気ガスを各ガス供給口5aからセラミック成型体9に向けて供給する。そして、供給された雰囲気ガスは、図2の矢印に示されるように流れて、脱脂・焼成過程でセラミック成型体9から発生するCO等のガスをガス排気管6から炉外に排出する。
【0028】
よって、本実施の形態のバッチ炉1によれば、ガス供給管5がガス供給時に回転するので、ガス供給管5からの雰囲気ガスが拡散され、上下方向において隣合うセッター4A間のガス雰囲気を均一な流れ状態にすることができる。従って、雰囲気ガスを全てのセラミック成型体9に対し十分に接触させることができるので、全てのセラミック成型体9を良好に脱脂・焼成することができる。さらに、ガス供給管5を回転させることで、雰囲気ガスの供給量を減少させることができる。また、炉床3を回転させないので、セラミック成型体9の分布が偏ることはなく、良好に脱脂・焼成することができる。
【0029】
また、図2に示すように、各ガス供給口5aは、隣合うセッター4A間に対応するように形成されているので、効率よくかつ集中してセラミック成型体9へ雰囲気ガスを供給することができ、雰囲気ガスの供給量を減少させることができる。また、ガス供給管5は回転するので、各ガス供給口5aとガス排出管6との位置関係を相対的に変化させることができる。また、積層セッター4に対して、ガス供給口5aを任意の速度で回転させることができる。
【0030】
次に、本発明のバッチ炉の第2の実施の形態について図3および図4に基づき説明する。図3および図4において、第1の実施の形態と同一の部材については、同一の番号を付して説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。図3および図4に示されるように、第2の実施の形態のバッチ炉101のガス供給管105は、第1ガス供給管105Aおよび第2ガス供給管105Bから構成される。
【0031】
第1ガス供給管105Aは、セラミックチューブからなり、天井部2Aから炉床3に向かって上下方向に沿って延びている。また、第1ガス供給管105Aは、第1の実施の形態のガス供給管5と同様に、駆動モータ8、ロータリージョイント11、ベルト12等により、回転可能かつガス供給可能に構成されている。また、第1ガス供給管105Aの下端には連通孔105cが形成されており、第1ガス供給管105Aの下端部には、複数のガス供給口105dが形成されている。第1ガス供給管105Aの各ガス供給口105dは、第1ガス供給管105Aが貫通孔4cに挿入された状態で、上下方向において隣合うセッター4A間に対応するように形成されている。
【0032】
第2ガス供給管105Bは、セラミックチューブからなり、炉床3から天井部2Aに向かって上下方向に沿って延びている。第2ガス供給管105Bは、第1ガス供給管105Aと同様の構成(図示せぬ軸受、駆動モータ、ロータリージョイント、ベルト等)により、回転可能かつガス供給可能に構成されている。第2ガス供給管105Bの上端には連通孔105eが形成されている。
【0033】
また、第2ガス供給管105Bの上端は、炉床3が開口部2bに挿入され炉体2にセットされた状態で、第1ガス供給管105Aの下端と当接するように構成されている。これにより、第1ガス供給管105Aの内部空間と、第2ガス供給管105Bの内部空間とは、連通孔105c、105eを介して互いに連通する。また、第2ガス供給管105Bの上端部には、複数のガス供給口105fが形成されている。第2ガス供給管105Bの各ガス供給口105fは、第2ガス供給管105Bが貫通孔4cに挿入された状態で、隣合うセッター4A間に対応するように形成されている。
【0034】
上記の構成において、セラミック成型体9の焼成時には、第1ガス供給管105Aおよび第2ガス供給管105Bは、互いに当接した状態で、駆動モータ8等の駆動力を受けて回転すると共に、図示せぬガス供給源から供給される雰囲気ガスを各ガス供給口105d、105fからセラミック成型体9に向けて供給する。そして、供給された雰囲気ガスは、図4の矢印に示されるように流れて、脱脂・焼成過程でセラミック成型体9から発生するCO等のガスをガス排気管6から炉外に排出する。
【0035】
よって、本実施の形態のバッチ炉101によれば、第1ガス供給管105Aを通って上側から供給される雰囲気ガスと、第2ガス供給管105Bを通って下側から供給される雰囲気ガスとが、第1ガス供給管105Aおよび第2ガス供給管105Bの当接部付近で衝突する。その後、雰囲気ガスは、各ガス供給口105d、105fを介して、隣合うセッター4A間のセラミック成型体9に向かって供給される。従って、各ガス供給口105d、105fから排出されるガスの流量を均一にすることができる。すなわち、各ガス供給口105d、105fの上下方向におけるガス流量の偏りを防止することができる。なお、第1ガス供給管105Aおよび第2ガス供給管105Bが回転することによる効果は、第1の実施の形態におけるガス供給管5が回転する効果と同様である。
【0036】
次に、本発明のバッチ炉の第3の実施の形態について図5に基づき説明する。図5において、第1の実施の形態と同一の部材については、同一の番号を付して説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。図5に示されるように、第3の実施の形態のガス供給管205は、第3ガス供給管205Aおよび第4ガス供給管205Bから構成される。
【0037】
第3ガス供給管205Aは、セラミックチューブからなり、天井部2Aから炉床3に向かって上下方向に沿って延びている。また、第3ガス供給管205Aは、第2の実施の形態の第1ガス供給管105Aと同様に、回転可能かつガス供給可能に構成されている。第3ガス供給管205Aの下端には、開口205cが形成され、貫通孔4cに向かって開口している。第3ガス供給管205Aの下端は、貫通孔4cの上端付近に位置している。また、第3ガス供給管205Aの下端部には、第3ガス供給管205Aの径方向外方に向かって延びる鍔部205Dが設けられている。鍔部205Dは、最上位のセッター4Aの上面に対向している。
【0038】
第4ガス供給管205Bは、セラミックチューブからなり、炉床3に設けられている。また、第4ガス供給管205Bは、第2の実施の形態の第2ガス供給管105Bと同様に、回転可能かつガス供給可能に構成されている。第4ガス供給管205Bの上端には、開口205eが形成され、貫通孔4cに向かって開口している。第4ガス供給管205Bの上端は、貫通孔4cの下端付近に位置している。
【0039】
上記の構成において、セラミック成型体9の焼成時には、第3ガス供給管205Aおよび第4ガス供給管205Bは、駆動モータ8等の駆動力を受けて回転すると共に、図示せぬガス供給源から供給される雰囲気ガスを各開口205c、205eから貫通孔4cに向かって供給する。すなわち、第3ガス供給管205Aは貫通孔4cの上側から、第4ガス供給管205Bは貫通孔4cの下側から、それぞれ貫通孔4cへ雰囲気ガスを供給する。そして、貫通孔4cに供給された雰囲気ガスは、隣合うセッター4Aの間のセラミック成型体9に向かって、図5の矢印に示されるように流れて、脱脂・焼成過程でセラミック成型体9から発生するCO等のガスをガス排気管6から炉外に排出する。
【0040】
よって、本実施の形態のバッチ炉によれば、第3ガス供給管205Aおよび第4ガス供給管205Bから貫通孔4cに雰囲気ガスが供給されて、貫通孔4cに溜まった雰囲気ガスが隣合うセッター4Aの間に供給される。従って、各隣合うセッター4Aの間に供給されるガスの流量を均一にすることができる。また、第3ガス供給管205Aおよび第4ガス供給管205Bは、回転しながら雰囲気ガスを供給するので、貫通孔4c内の雰囲気ガスを攪拌することができ、各隣合うセッター4Aの間に供給されるガスの流量をより均一にすることができる。
【0041】
また、第3供給管205Aには、鍔部205Dが設けられており、鍔部205Dは、最上位のセッター4Aの上面に対向しており、最下位のセッター4Aは、炉床3上に配置されている。よって、雰囲気ガス供給時には、第3供給管205A、第4供給管205B、鍔部205D、および炉床3が、貫通孔4cの蓋の役割を果たすので、供給されるガスの全てを隣合うセッター4A間に流すことができ、脱脂・焼成に必要な雰囲気ガスの供給量をより減少させることができる。
【0042】
尚、本発明のバッチ炉は、上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。例えば、被焼成物は、セラミック成型体9であったが、セラミック材料の粉末であっても良い。また、各セッター4Aは、開口が形成された円盤状であったが、複数の部材を組合せて開口を提供し、これを積層させて貫通孔を提供する構成であっても良い。また、第1の実施の形態において、ガス供給管5の内部のガス供給口5a近傍に、上下方向におけるガスの供給量を均一にするために仕切り板をつけても良い。
【0043】
また、第1および第2の実施の形態では、ガス供給管5、105に複数のガス供給口5a、105e、105fを隣合うセッター4A間に対応するように形成したが、ガス供給管5、105を多孔質のセラミックチューブにより構成しても良い。この場合、ガス供給管全体からガスが排出可能であるので、隣合うセッター4A間に対応する箇所のみから雰囲気ガスが排出されるように構成する。第3の実施の形態において、第3ガス供給管205Aおよび第4ガス供給管205Bを回転させたが、回転させなくても良い。当該構成によっても、各隣合うセッター4Aの間に供給されるガスの流量を均一にすることができ、かつガスの流量を減少させることができる。
【0044】
また、第3の実施の形態において、第3ガス供給管205Aの下端および第4ガス供給管205Bの上端は、それぞれ開口4b(貫通孔4c)内に位置していたが、貫通孔4c雰囲気ガスを供給可能であれば、開口4b(貫通孔4c)に入っていなくても良い。また、第3の実施の形態において、第3ガス供給管205Aの下端および第4ガス供給管205Bの上端の形状を、波形状等にしても良い。当該構成により、貫通孔4c内の雰囲気ガスを攪拌することができ、各隣合うセッター4Aの間に供給されるガスの流量をさらに均一にすることができる。
【符号の説明】
【0045】
1、101 バッチ炉
2 炉本体
3 炉床
4 積層セッター
4A セッター4
4b 開口
4c 貫通孔
5、105、205 ガス供給管
5a、105d、105f ガス供給口
6 ガス排気管
8 駆動モータ
8A 出力軸
9 セラミック成型体
11 ロータリージョイント
11A ガス供給部材
11B 回転部材
12 ベルト
105A 第1ガス供給管
105B 第2ガス供給管
105c、105e 連通孔
205A 第3ガス供給管
205B 第4ガス供給管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被焼成物を載置可能な上面をそれぞれ有し複数重ねられたときに積層方向に延びる貫通孔を提供すれる複数のセッターと、
該積層された複数のセッターが載置される炉床と、
該複数のセッターの積層方向において隣合うセッター間に向かって、該貫通孔を介してガスを供給するガス供給管と、
該複数のセッターの周りに配置されるガス排気管と、
該ガス供給管を回転させる回転手段と、を備えることを特徴とするバッチ炉。
【請求項2】
該ガス供給管は該貫通孔内に挿入され、該ガス供給管には、該隣合うセッターの間に対応するようにガス供給口が形成され、該ガスは、該ガス供給口から該隣合うセッター間に向かって供給されることを特徴とする請求項1に記載のバッチ炉。
【請求項3】
該炉床と共に焼成空間を画成する炉本体をさらに備え、
該ガス供給管は、該炉本体から該炉床に向かって該積層方向に沿って延びる第1ガス供給管と、該炉床から該炉本体に向かって該積層方向に沿って延びる第2ガス供給管とを備え、
該第1ガス供給管および該第2ガス供給管は、該貫通孔に挿入されて互いに当接可能に構成され、該第1ガス供給管および該第2ガス供給管には、該隣合うセッターの間に対応するように該ガス供給口が形成され、
該第1ガス供給管を通って供給される該ガス、および第2ガス供給管を通って供給される該ガスは、該ガス供給口から、該隣合うセッター間に向かって供給されることを特徴とする請求項2に記載のバッチ炉。
【請求項4】
該炉床と共に焼成空間を画成する炉本体をさらに備え、
該ガス供給管は、該炉本体に設けられた第1ガス供給管と、該炉床に設けられた第2ガス供給管とを備え、
該第1ガス供給管は、該貫通孔の上側から該貫通孔に該ガスを供給可能に構成され、該第2ガス供給管は、該貫通孔の下側から該貫通孔に該ガスを供給可能に構成されることを特徴とする請求項1に記載のバッチ炉。
【請求項5】
該第1ガス供給管の下端部には、該第1ガス供給管の径方向外方に向かって延び、該積層方向において該最上位のセッターの上面に対向する鍔部が設けられていることを特徴とする請求項4に記載のバッチ炉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−13256(P2012−13256A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−147564(P2010−147564)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】