説明

バッテリ冷却装置

【課題】 バッテリの温度を適正な温度範囲に保持することができるバッテリ冷却装置を提供する。
【解決手段】 バッテリ冷却装置1は、車両に搭載された高電圧バッテリ12と、高電圧バッテリ12を冷却する冷却ファン18と、車両の走行経路を設定すると共に、設定された走行経路に関する道路情報及び道路交通情報を取得するカーナビゲーションシステム30と、高電圧バッテリの温度を検出する温度センサ14と、バッテリ温度Tb、道路情報、及び道路交通情報に基づいて、走行経路を走行した場合における高電圧バッテリ12の温度を予測すると共に、バッテリ予測温度Tbfが所定温度Tmax以上になると予測された場合に冷却ファンを駆動するBATT ECU10とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリ冷却装置に関し、特に車両用バッテリの冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
バッテリは、一般的に、高温になると性能が著しく低下し、また寿命も低下する。そのため、従来から、バッテリが高温であるときに外気をバッテリ収容室に導入してバッテリを冷却することによりバッテリの発熱による温度上昇を抑制し、性能や寿命の低下を防止するバッテリ冷却装置が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平9−275601号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、ハイブリッド車等に用いられる大容量のバッテリは熱容量が大きく冷え難いため、冷却が開始されても温度がすぐには下がらない。また、冷却はバッテリの外側から行われるため、バッテリ内部が冷却されるまでには時間的な遅れがある。そのため、例えば、充放電が頻繁に行われる走行状態では、充放電による発熱により、バッテリ温度が適正温度範囲を超えて上昇するおそれがある。
【0004】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、バッテリの温度を適正な温度範囲に保持することができるバッテリ冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るバッテリ冷却装置は、車両に搭載されたバッテリと、バッテリを冷却する冷却手段と、車両の走行経路を設定する走行経路設定手段と、走行経路設定手段により設定された走行経路に関する情報を取得する走行経路情報取得手段と、走行経路情報取得手段により取得された走行経路情報に基づいて、上記走行経路を走行した場合におけるバッテリの温度が所定温度以上になると予測される場合に、冷却手段を駆動する制御手段とを備えることを特徴とする。
【0006】
本発明に係るバッテリ冷却装置によれば、設定された走行経路に関する走行経路情報に基づいて、バッテリ温度が所定温度以上に上昇すると予測された場合に、冷却手段が駆動されて予めバッテリ温度が下げられる。その結果、バッテリの温度を適正な温度範囲に保持することが可能となる。
【0007】
本発明に係るバッテリ冷却装置は、走行経路情報取得手段が、車両を目的地まで誘導するカーナビゲーションシステムであり、走行経路情報が、走行経路を構成する道路の物理的な情報であることが好ましい。
【0008】
この場合、道路の物理的な情報、例えば、平坦路、登坂路並びに降坂路の別、道路勾配、曲率、及び信号機の配置等がカーナビゲーションシステムから得られる。そのため、これらの情報に基づいて、走行経路を走行した場合におけるバッテリ温度を予測することができる。
【0009】
また、走行経路情報取得手段が、車両外部から道路交通情報を取得する道路交通情報通信システムをさらに有し、走行経路情報には、道路の道路交通情報が含まれることが好ましい。
【0010】
この場合、走行経路の道路交通情報、例えば、渋滞情報や工事情報等が道路交通情報通信システムから得られる。そのため、道路の物理的な情報に加え、道路交通情報をも考慮して走行経路を走行した場合におけるバッテリ温度を予測することができる。その結果、より正確に、バッテリ温度を予測することが可能となる。
【0011】
本発明に係るバッテリ冷却装置は、バッテリの温度を取得するバッテリ温度取得手段と、バッテリ温度取得手段により取得されたバッテリ温度及び走行経路情報に基づいて、走行経路を走行した場合におけるバッテリの温度を予測するバッテリ温度予測手段とを備え、制御手段が、バッテリ温度予測手段により予測されたバッテリ温度が所定温度以上になると予測される場合に、冷却手段を駆動することが好ましい。
【0012】
この場合、バッテリ温度取得手段により取得された実際のバッテリ温度と走行経路情報とから、設定された走行経路を走行した場合のバッテリ温度が予測されるので、より精度良くバッテリ温度を予測することができる。そして、このバッテリ予測温度に基づいて冷却手段の駆動が制御されるので、より的確にバッテリの温度を適正な温度範囲に保持することが可能となる。
【0013】
また、本発明に係るバッテリ冷却装置では、バッテリ温度予測手段が、走行経路情報に基づいて上記走行経路を走行した場合におけるバッテリの充放電量を予測し、該充放電量に応じてバッテリの温度を予測することが好ましい。
【0014】
この場合、走行経路情報に基づいて走行経路を走行した場合におけるバッテリの充放電量が予測され、予測された充放電量からバッテリの発熱量が求められる。そして、バッテリの発熱量と既知の値であるバッテリの熱容量とからバッテリの上昇温度が算出されるので、バッテリ温度を予測することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、バッテリ温度が所定温度以上になると予測される場合に冷却手段を駆動し、予めバッテリ温度を下げる構成としたので、バッテリの温度を適正な温度範囲に保持することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。図中、同一又は相当部分には同一符号を用いることとする。
【0017】
まず、図1を用いて、本実施形態に係るバッテリ冷却装置の全体構成について説明する。図1は、ハイブリッド車両に搭載された高電圧バッテリ12を冷却するバッテリ冷却装置1の全体構成を示すブロック図である。
【0018】
ハイブリッド車両には、内燃機関であるエンジン42と、電動モータ24とを組み合わせて使用するハイブリッドシステムが搭載されている。このハイブリッドシステムは、エンジン42の動力により走行するモード、エンジン42の動力で発電を行い電動モータ24で走行するモード、及びエンジン42を停止し電動モータ24のみで走行するモードの3つのモードを有する。これら3つの走行モードは、車両の走行状態に応じ、最も効率がよくなるように切り替えられる。
【0019】
例えば、発進は電動モータ24の駆動力のみで行い、エンジン効率のよい走行状態に達すると、エンジン42による走行に切り替えられる。走行中は走行状態に応じて電動モータ24とエンジン42の動力配分が最適になるように調節される。加速時など大きな駆動力を必要とする場合、エンジン42と電動モータ24の両方が駆動される。
【0020】
また、制動時には、車輪から伝達される動力により電動モータ24を回転させることで発電機として作動させ、運動エネルギを電気エネルギに変換して高電圧バッテリ12に回収する。
【0021】
電動モータ24は、交流同期モータであり、インバータ22から出力される交流電力によって駆動される。また、上述したように、電動モータ24は車輪からの動力により発電(回生発電)を行うこともできる。
【0022】
電動モータ24及びエンジン42それぞれは、ハイブリッドシステム用電子制御装置(以下「HV ECU」という)20及びエンジン用電子制御装置(以下「EFI ECU」という)40により制御される。
【0023】
HV ECU20及びEFI ECU40それぞれは、その内部に演算を行うマイクロプロセッサ、このマイクロプロセッサに各処理を実行させるためのプログラムを記憶するROM、演算結果などの各種データを記憶するRAM及び12Vバッテリによってその記憶内容が保持されるバックアップRAM等を有している。
【0024】
HV ECU20には、アクセル開度を検出するアクセルポジションセンサ26やトランスミッションのシフト位置を検出するシフトポジションセンサ27等が接続されている。
【0025】
HV ECU20は、アクセル開度やシフト位置等に基づいて運転者が要求する要求駆動力を算出する。HV ECU72は、要求駆動力、高電圧バッテリ12の充電状態(以下「SOC:State of Charge」という)、及び車両の走行状態などに応じて電動モータ24とエンジン42それぞれの目標出力を設定する。設定された目標エンジン出力はEFI ECU40に出力される。
【0026】
EFI ECU40は、入力された目標エンジン出力に基づいて、吸入空気量や燃料噴射量などを調節することによりエンジン21の運転を制御する。
【0027】
一方、HV ECU20は、設定された目標モータ出力に基づいて、電動モータ24の運転を制御する。より具体的には、HV ECU20には、電動モータ24の回転数を検出するレゾルバ28及び三相線23に流れる相電流を検出する電流センサ29等が接続されており、HV ECU20は、上記センサからの入力信号と設定された目標モータ出力とに基づいてインバータ22のスイッチング制御を行うことにより、電動モータ24を駆動する。
【0028】
インバータ22は、HV ECU20からのスイッチング信号に基づいて、高電圧バッテリ12に蓄えられた電力を直流から交流に変換して、電動モータ24に供給する。また、電動モータ24により回生発電された電力を、交流から直流に変換して高電圧バッテリ12に蓄える。
【0029】
高電圧バッテリ12は、例えば、1.2Vのセルが6個直列に接続されたバッテリモジュール12A(図2参照)を、28個直列に接続することにより形成されており、合計168セルとすることで、210.6Vの高電圧を確保している。高電圧バッテリ12は、システムメインリレーなどと共にバッテリパック13に収められて車両に搭載される。
【0030】
高電圧バッテリ12は、車両加速時などには放電、減速時には回生ブレーキによる充電が繰り返し行われるため、バッテリ用電子制御装置(以下「BATT ECU」という)10によりSOCが適切な範囲に管理される。
【0031】
BATT ECU10は、HV ECU20などと同様に、演算を行うマイクロプロセッサ、このマイクロプロセッサに各処理を実行させるためのプログラムを記憶するROM、演算結果などの各種データを記憶するRAM及び12Vバッテリによってその記憶内容が保持されるバックアップRAM等によって構成されている。
【0032】
また、BATT ECU10には、高電圧バッテリ12の温度を検出する温度センサ14、高電圧バッテリ12の電圧を検出する電圧センサ15、及び高電圧バッテリ12の充放電電流を検出する電流センサ16などが接続されている。温度センサ14はバッテリ温度取得手段として機能する。
【0033】
BATT ECU10は、検出された充放電電流を積算してSOCを検出し、SOCが制御目標範囲内に維持されるように、HV ECU20にSOCを出力する。また、BATT ECU10は、検出された高電圧バッテリ12の温度や電圧などを監視し、異常が検出された場合には、充放電を停止することなどにより高電圧バッテリ12を保護する。
【0034】
BATT ECU10は、高電圧バッテリ12の充放電による発熱に対して、バッテリ性能を確保するために、高電圧バッテリ12の温度に応じて冷却ファン18の駆動を制御し、高電圧バッテリ12の温度を適切な範囲に調節する。
【0035】
また、BATT ECU10では、後述するカーナビゲーションシステム30から入力される走行経路の道路情報や道路交通情報など基づいて、この走行経路を走行するときの高電圧バッテリ12の充放電量が予測される。予測された充放電量から求められる発熱量と温度センサ14で検出されたバッテリ温度とに基づいて、この走行経路を走行するときのバッテリ温度が予測される。そして、予測されたバッテリ温度(以下「バッテリ予測温度」という)が所定温度以上に上昇すると予測された場合に、冷却ファン18を駆動する。即ち、BATT ECU10は、バッテリ温度予測手段及び制御手段として機能する。
【0036】
本実施形態では、冷却ファン18によって高電圧バッテリ12が収められたバッテリパック13内に冷却風を流すことによって高電圧バッテリ12を冷却する空冷式の冷却方法を採用した。即ち、冷却ファン18は冷却手段として機能する。図2に、高電圧バッテリ12を冷却する冷却風の流れを示す。吸気ダクト62の吸い込み口は、例えばリアシート右側に設置されている。冷却ファン18によって車室内から取り込まれた空気は、吸気ダクト62を介してバッテリパック13上側から導入され、高電圧バッテリ12を構成するバッテリモジュール12A間を上から下に流されることで高電圧バッテリ12を冷却する。冷却によって熱交換された空気は、バッテリパック13下側から排気ダクト66を通り、トランクルーム内および車外に排出される。
【0037】
ハイブリッド車両は、車両を目的地まで誘導するカーナビゲーションシステム30を備えている。本実施形態のカーナビゲーションシステム30は、GPS(Global Positioning System)及び道路交通情報通信システム(VICS:Vehicle Information and Communication System)を利用したシステムであり、カーナビゲーションシステム用電子制御装置(以下「NAVI ECU」という)32により制御される。
【0038】
NAVI ECU32は、GPS受信機34によって受信されたGPS衛星信号に基づき自車位置を検出する。また、車速信号に基づいて走行距離を算出すると共に、ジャイロセンサからの信号に応じて車両進行方向を検出する。
【0039】
一方、VICS受信機36は、VICSセンタから、電波ビーコン、光ビーコンやFM多重放送を用いて提供される道路交通情報を取得する。道路交通情報の種類には、例えば、渋滞、事故、工事規制、所要時間、高速道路の入口閉鎖情報などがある。VICSセンタから取得されたこれらの道路交通情報はNAVI ECU32に出力される。
【0040】
NAVI ECU32は、DVD−ROMプレーヤで読み取った地図情報、算出した自車位置、及び道路交通情報などをディスプレイ38に出力する。ディスプレイ38は、NAVI ECU32から入力された地図情報や道路交通情報などを図形や文字を用いて表示する。
【0041】
カーナビゲーションシステム30では、目的地が設定された場合、経路検索が実行されて現在地点から目的地までの走行経路が設定される。なお、目的地が設定されていない場合であっても、例えば高速道路のような一本道を走行しているときには、この道を走行経路として設定してもよい。また、設定された走行経路を構成する道路の物理的な情報(道路情報)、例えば、平坦路、登坂路並びに降坂路の別、道路勾配、曲率、及び信号機の配置等が取得される。即ち、カーナビゲーションシステム30は、走行経路設定手段及び走行経路情報取得手段として機能する。取得された走行経路の道路情報、道路交通情報や自車位置などは、HV ECU20に出力される。
【0042】
なお、BATT ECU10、HV ECU20、NAVI ECU30、及びEFI ECU40それぞれは、例えばCAN(Controller Area Network)等の通信回線50で接続されており、相互にデータの交換が可能となるように構成されている。
【0043】
次に、図3を参照してバッテリ冷却装置1の動作について説明する。ここで、図3は、バッテリ冷却装置1による高電圧バッテリ12の冷却制御の処理手順(第1制御形態)を示すフローチャートである。この処理は、BATT ECU10によって行われるものであり、BATT ECU10の電源がオンされてからオフされるまでの間、所定のタイミングで繰り返し実行される。
【0044】
ステップS100では、カーナビゲーションシステム30から、設定されている走行経路の道路勾配や曲率などの道路情報が読み込まれる。続くステップS102では、高電圧バッテリ12のバッテリ温度Tb及びバッテリ電圧Vbが読み込まれる。次に、ステップS104では、ステップS100において読み込まれた道路情報に基づいて、設定されている走行経路を走行した場合における高電圧バッテリ12の充放電量Cbが予測される。
【0045】
続いてステップS106では、ステップS102において読み込まれたバッテリ温度Tb、バッテリ電圧Vb、及びステップS104で予測された高電圧バッテリ12の充放電量Cbに応じた発熱量などに基づいて、設定されている走行経路を走行した場合のバッテリ温度を予測する。例えば、この先、上り下りが連続する道路を走行する場合、電動モータ24のアシスト量及び回生量が増大して高電圧バッテリ12の充放電量Cbが増大するため、発熱量が増大してバッテリ温度Tbが上昇する。
【0046】
続くステップS108では、ステップS106において予測されたバッテリ温度(以下「バッテリ予測温度Tbf」という)が所定温度Tmax(例えば60℃)以上に上昇するか否かについての判断が行われる。ここで、バッテリ予測温度Tbfが所定温度Tmax以上に上昇しないと判断された場合には、本処理から一旦抜ける。一方、バッテリ予測温度Tbfが所定温度Tmax以上に上昇すると判断された場合には、ステップS110に処理が移行する。
【0047】
ステップS110では、高電圧バッテリ12の温度が上昇する前に予め温度を下げる制御(以下「予測冷却制御」という)を実行する冷却開始地点及び冷却開始時刻が設定される。より具体的には、BATT ECU10のROMには、高電圧バッテリ12のバッテリ温度Tbと、高電圧バッテリ12の充放電量Cbが増加する地点までの距離と、冷却開始地点との関係を定めたマップ(冷却開始地点マップ)が記憶されている。そして、バッテリ温度Tbと充放電量増加地点により冷却開始地点マップが検索され冷却開始地点が求められる。図4に示されるように、冷却開始地点マップは、バッテリ温度Tbが高くなるに従い冷却開始地点が自車位置に近くなるように設定されている。また、充放電量Cbが増加する地点までの距離が遠くなるほど冷却開始地点が自車位置から遠くなるように設定されている。また、自車位置から冷却開始地点までの距離と、平均車速とから冷却開始時刻が求められる。
【0048】
ステップS112では、予測冷却制御が実行されていることを示すフラグF_YOSOKUがオンされているか否か、即ち予測冷却制御が実行中であるか否かについての判断が行われる。ここで、フラグF_YOSOKUがオンの場合、即ち予測冷却制御が実行中の場合には、ステップS126に処理が移行する。一方、フラグF_YOSOKUがオフのとき、即ち予測冷却制御が実行中ではないときには、ステップS114に処理が移行する。
【0049】
ステップS114では、バッテリ温度Tbが所定温度Tmin1(例えば8℃)より高いか否かについての判断が行われる。ここで、バッテリ温度Tbが所定温度Tmin1より高い場合には、ステップS116に処理が移行する。一方、バッテリ温度Tbが所定温度Tmin1以下のとき、即ち高電圧バッテリ12の温度がすでに低いときには、ステップS122に処理が移行する。
【0050】
ステップS116では、ステップS110で設定された冷却開始地点に到着したか否か、または冷却開始時刻を経過したか否かについての判断が行われる。ここで、冷却開始地点に到着した場合、または、冷却開始時間を経過した場合には、ステップS118において、フラグF_YOSOKUがオンされ、続くステップS120において冷却ファン18が駆動されることにより、高電圧バッテリ12が冷却される。その後、本処理から一旦抜ける。
【0051】
一方、まだ冷却開始地点に到着しておらず、かつ冷却開始時間を経過していない場合には、ステップS122において、フラグF_YOSOKUがオフされ、続くステップS124において冷却ファン18が停止される。その後、本処理から一旦抜ける。
【0052】
ステップS112においてフラグF_YOSOKUがオンの場合、即ち予測冷却制御が実行中の場合、ステップS126では、バッテリ温度Tbが所定温度Tmin2(例えば5℃)より高いか否かについての判断が行われる。ここで、バッテリ温度Tbが所定温度Tmin2より高い場合には、ステップS128において、フラグF_YOSOKUがオンされ、続くステップS130において冷却ファン18が駆動されることにより、予測冷却制御が継続して実行される。その後、本処理から一旦抜ける。
【0053】
一方、バッテリ温度が所定温度Tmin2以下のとき、即ち高電圧バッテリ12の温度が十分に低下したときには、ステップS132において、フラグF_YOSOKUがオフされ、続くステップS134において冷却ファン18が停止されることにより、予測冷却制御が停止される。その後、本処理から一旦抜ける。
【0054】
ここで、予測冷却制御が行われたときのバッテリ温度変化の例を図5に示す。道路情報や道路交通情報に基づいて、例えば時刻t2以降で充放電量Cbが増大しバッテリ温度Tbが所定温度Tmax以上に上昇すると予測された場合(一点鎖線参照)、時刻t1になった時点で事前に冷却ファン18が駆動され、予め高電圧バッテリ12の温度が低下される。そのため、時刻t2以降で充放電量Cbが増大し、高電圧バッテリ12の発熱量が増大したとしても、バッテリ温度Tbが所定温度Tmax以下の適正温度範囲に保持される。
【0055】
本実施形態によれば、走行経路を構成する道路の勾配や曲率などの道路情報に基づいて予測された高電圧バッテリ12の充放電量Cbからバッテリ予測温度Tbfが求められ、このバッテリ予測温度Tbfが所定温度Tmax以上に上昇すると予測された場合に、冷却ファン1が駆動されて予めバッテリ温度Tbが下げられる。その結果、高電圧バッテリ12の温度を適正な温度範囲に保持することが可能となる。
【0056】
設定されている走行経路の道路情報に加え、VICSの道路交通情報をさらに考慮して高電圧バッテリ12の充放電量Cb、バッテリ予測温度Tbfを求め、冷却ファン18の駆動を制御することもできる(第2制御形態)。次に、図6を参照して、第2制御形態について説明する。図6は、バッテリ冷却装置1による予測冷却制御の他の処理手順(第2制御形態)を示すフローチャートである。この処理も、BATT ECU10によって行われるものであり、BATT ECU10の電源がオンされてからオフされるまでの間、所定のタイミングで繰り返し実行される。
【0057】
ステップS200では、走行経路を構成する道路の勾配や曲率などの道路情報が読み込まれると共に、渋滞や事故などの道路交通情報が読み込まれる。続いてステップS202では、高電圧バッテリ12のバッテリ温度Tb及びバッテリ電圧Vbが読み込まれる。
【0058】
続くステップS204では、ステップS200において読み込まれた道路情報及び道路交通情報に基づいて、設定されている走行経路を走行した場合における高電圧バッテリ12の充放電量Cbが予測される。例えば、この先走行することが予定されている走行経路上で渋滞が発生している場合には、発進、加速、制動(回生)が頻繁に繰り返され、高電圧バッテリ12の充放電量Cbが増大する。
【0059】
ステップS206からS234における処理内容は、上述したステップS106からS134における処理内容と同一であるので、ここでは説明を省略する。
【0060】
本実施形態によれば、道路の勾配や曲率などの道路情報に加え、渋滞や事故などの道路交通情報をも考慮して、設定された走行経路を走行した場合のバッテリ温度Tbが予測される。そのため、より正確にバッテリ温度Tbを予測することができるので、より的確に高電圧バッテリ12の温度を適正な温度範囲に保持することが可能となる。
【0061】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、冷却ファン18の冷却風によって高電圧バッテリ12を冷却する空冷式を採用したが、冷却方式は空冷式に限られることなく、冷却水等を循環させて高電圧バッテリを冷却する水冷式を採用することもできる。
【0062】
上記実施形態では、バッテリ冷却装置をハイブリッド車に搭載された高電圧バッテリに適用した場合を例に説明したが、電気自動車などに搭載された高電圧バッテリにも適用することができる。
【0063】
また、道路情報や道路交通情報は、車両外部に設置された情報提供基地局からデータ通信により取得してもよいし、他の車両から車車間通信などによって取得してもよい。さらに、各電子制御装置の構成や機能分担は上記実施形態に限られるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】実施形態に係るバッテリ冷却装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】高電圧バッテリを冷却する冷却風の流れを示す図である。
【図3】実施形態に係るバッテリ冷却装置による予測冷却制御の処理手順を示すフローチャートである。
【図4】バッテリ温度と冷却開始地点との関係を示す図である。
【図5】予測冷却制御が行われたときのバッテリ温度変化の例を示す図である。
【図6】実施形態に係るバッテリ冷却装置による予測冷却制御の他の処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0065】
1…バッテリ冷却装置、10…BATT ECU、12…高電圧バッテリ、14…温度センサ、15…電圧センサ、16…電流センサ、18…冷却ファン、20…HV ECU、22…インバータ、24…電動モータ、30…カーナビゲーションシステム、32…NAVI ECU、34…GPS受信機、36…VICS受信機、38…ディスプレイ、40…EFI ECU、42…エンジン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されたバッテリと、
前記バッテリを冷却する冷却手段と、
前記車両の走行経路を設定する走行経路設定手段と、
前記走行経路設定手段により設定された前記走行経路に関する走行経路情報を取得する走行経路情報取得手段と、
前記走行経路情報取得手段により取得された前記走行経路情報に基づいて、前記走行経路を走行した場合における前記バッテリの温度が所定温度以上になると予測される場合に、前記冷却手段を駆動する制御手段と、を備えることを特徴とするバッテリ冷却装置。
【請求項2】
前記走行経路情報取得手段は、前記車両を目的地まで誘導するカーナビゲーションシステムであり、
前記走行経路情報は、前記走行経路を構成する道路の物理的な情報であることを特徴とする請求項1に記載のバッテリ冷却装置。
【請求項3】
前記走行経路情報取得手段は、車両外部から道路交通情報を取得する道路交通情報通信システムをさらに有し、
前記走行経路情報には、前記道路の道路交通情報が含まれることを特徴とする請求項2に記載のバッテリ冷却装置。
【請求項4】
前記バッテリの温度を取得するバッテリ温度取得手段と、
前記バッテリ温度取得手段により取得されたバッテリ温度及び前記走行経路情報に基づいて、前記走行経路を走行した場合における前記バッテリの温度を予測するバッテリ温度予測手段と、を備え、
前記制御手段は、前記バッテリ温度予測手段により予測されたバッテリ温度が前記所定温度以上になると予測される場合に、前記冷却手段を駆動することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のバッテリ冷却装置。
【請求項5】
前記バッテリ温度予測手段は、前記走行経路情報に基づいて前記走行経路を走行した場合における前記バッテリの充放電量を予測し、該充放電量に応じて前記バッテリの温度を予測することを特徴とする請求項4に記載のバッテリ冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−139963(P2006−139963A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−326910(P2004−326910)
【出願日】平成16年11月10日(2004.11.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】