説明

バッテリ駆動のホイールローダ

【課題】より多くのバッテリを積載した場合でも、バッテリを効率的に冷却できるバッテリ駆動のホイールローダを提供すること。
【解決手段】前輪および作業機が取り付けられる前部車体と、後部車体3と、後部車体3に搭載される電動モータ30と、電動モータ30の電源である複数の駆動用バッテリ40と、複数の駆動用バッテリ40に冷却空気を供給する電動冷却ファン46とを備え、電動冷却ファン46は、後部車体3の後方に設けられ、複数の駆動用バッテリ40は少なくとも、電動冷却ファン46前方の左右両側に互いに間隔を空けて配置された一対の第1バッテリユニット36と、電動冷却ファン46前方に、該電動冷却ファン46に対して間隔を開けて配置された第2、第3バッテリユニット37,38として集約され、平面視では、電動冷却ファン46および第1〜第3バッテリユニット36〜38で囲まれた吸入空間56が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリ駆動のホイールローダに係り、特に多数用いられるバッテリの車両への積載構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の作業車両として、作業機が設けられた前部車体と、電動モータが搭載された後部車体とで構成されるバッテリ駆動のホイールローダが知られている(例えば、特許文献1参照)。このようなホイールローダでは、複数のバッテリが後部車体の後方寄りに積載されており、大きな重量となる複数のバッテリにてカウンターウェイトを代用させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−67522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、車両の走行負荷や、作業機の作業負荷の増加に伴い、バッテリの積載量が増え、車体体積に対するバッテリ積載体積の比率が大きくなっている。
このため、バッテリの積載領域を拡張することになるが、バッテリは充放電時に発熱するため、多数搭載されたバッテリを効率的に冷却することが要求され、その問題解決が望まれている。
【0005】
本発明の目的は、より多くのバッテリを積載した場合でも、バッテリを効率的に冷却できるバッテリ駆動のホイールローダを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1発明に係るバッテリ駆動のホイールローダは、前輪および作業機が取り付けられる前部車体と、後輪が取り付けられ、かつ前記前部車体との間で屈曲自在(アーティキュレート自在)とされた後部車体と、前記後部車体に搭載されて、少なくとも前記後輪および前記作業機の駆動に用いられる電動モータと、前記電動モータの電源である複数の駆動用バッテリと、前記複数の駆動用バッテリに冷却空気を供給する冷却ファンとを備え、前記冷却ファンは、前記後部車体の後方に設けられ、複数の前記駆動用バッテリは少なくとも、前記冷却ファン前方の左右両側に互いに間隔を空けて配置された一対の後部バッテリユニットと、前記冷却ファン前方に、該冷却ファンに対して間隔を開けて配置された中央部バッテリユニットとして集約され、平面視では、前記冷却ファン、前記後部バッテリユニット、および前記中央部バッテリユニットで囲まれた中空空間が形成されていることを特徴とする。
【0007】
第2発明に係るバッテリ駆動のホイールローダでは、前記中央部バッテリユニットは、上下に配置された上部バッテリユニットと、下部バッテリユニットとで構成され、前記下部バッテリユニットと前記上部バッテリユニットとの間には、前記中空空間と前記中央部バッテリユニットの前方側とを連通させる連通空間が形成されていることを特徴とする。
【0008】
第3発明に係るバッテリ駆動のホイールローダでは、前記中央部バッテリユニットのさらに前方には、前記連通空間に対応した高さ位置に前記電動モータが配置されていることを特徴とする。
【0009】
第4発明に係るバッテリ駆動のホイールローダでは、前記電動モータの上方には、複数の前記駆動用バッテリが集約された前部バッテリユニットが配置されていることを特徴とする。
【0010】
第5発明に係るバッテリ駆動のホイールローダでは、前記中空空間の上方は、前記一対の後部バッテリユニット間に架け渡されたカバープレートで覆われ、前記中空空間の下方は、前記後部車体の後部フレームを構成する左右の側壁部分に架け渡されたアンダーガードで覆われていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
第1発明によれば、冷却ファン、一対の後部バッテリユニット、および中央部バッテリユニットで囲まれた中空空間を備えているので、冷却ファンが所謂吸込ファンであれば、冷却ファンにて後方から吸い込まれた冷却空気は、冷却ファンを通過した後に中空空間に入り込み、この中空空間で分散し、周囲の後部バッテリユニットや中央部バッテリユニットに偏りなく流れるようになり、各バッテリユニットが多数の駆動用バッテリにて構成されていても、それらの駆動用バッテリを効率的に冷却できる。
【0012】
なお、冷却ファンとしては、吸込ファンに限らず、所謂吐き出しファンでもよい。このような場合には、吸い込まれた冷却ファンが周囲から中空空間に集まり、ここから冷却ファンによって後方側に吐き出されるため、中空空間に冷却空気が集約される過程で各バッテリユニットを冷却空気が通過するようになり、やはり多数の駆動用バッテリを効率的に冷却できる。
【0013】
第2発明によれば、中央部バッテリユニットが上下のバッテリユニットに分割され、その間が連通空間になっているため、連通空間を通して冷却空気が流れるようになり、中央部バッテリユニットのさらに前方に配置されたコンポネント等を効率的に冷却得きる。
【0014】
第3発明によれば、そのような連通空間の前方側に電動モータが配置されている。電動モータは駆動されることで発熱するコンポネントであり、そのような電動モータを連通空間を通る冷却空気で確実に冷却でき、車両全体のヒートバランスを良好にできる。
【0015】
第4発明によれば、前述の電動モータに加え、前部バッテリユニットを構成する駆動用バッテリをも冷却でき、より多数の駆動用バッテリを搭載することに確実に対応できる。
【0016】
第5発明によれば、中空空間の情報がカバープレートで覆われ、下方がアンダーガードで覆われているので、中空空間の下方および上方を冷却空気が通ることで、バッテリユニットを通過しなくなるのを抑制でき、各バッテリユニットに対してより多くの冷却空気を通過させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態にかかるホイールローダの全体を示す側面図。
【図2】ホイールローダの後部車体のないぶを示す斜視図。
【図3】バッテリ積載部分の要部を後方から見た斜視図。
【図4】バッテリの積載部分の要部を下方から見た斜視図。
【図5】車体内部での冷却空気の流れを説明するための
【図6】第1バッテリボックスを示す斜視図。
【図7】第2バッテリボックスを示す斜視図。
【図8】第3バッテリボックスを示す斜視図。
【図9】第4バッテリボックスを示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
〔ホイールローダの概略全体説明〕
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1において、ホイールローダ1は、車両前方側の前部車体2と、車両後方側の後部車体3とで構成され、前部車体2および後部車体3がアーティキュレートピン4にて屈曲可能に連結されている。
【0019】
前部車体2には、油圧駆動の作業機5が取り付けられている。作業機5は、基端が前部フレーム6に連結されたブーム7と、ブーム7の長さ方向の途中に連結されたベルクランク8と、ベルクランク8の下端に基端が連結された連結リンク9と、ブーム7および連結リンク9の先端に取り付けられたバケット10と、ブーム7の長さ方向の途中と前部フレーム6とに連結されたブームシリンダ11と、ベルクランク8の上端と前部フレーム6とに連結されたバケットシリンダ12とで構成されている。前部車体2の前部フレーム6には、図示略のフロントアクスルを介して前輪13が取り付けられ、前輪13の上方に対応した位置にフロントフェンダ14が取り付けられている。
【0020】
後部車体3は、上方に開口した矩形枠状の後部フレーム15を備えている。後部フレーム15の前後方向の略中央で、かつその上部には、門形状のROPS(Roll-Over Protective Structure)フレーム16が接合されている。ROPSフレーム16の前方側のデッキ上にはシート17が設けられ、シート17の前方にはステアリング18が、側方には作業機レバー19等がそれぞれ設けられている。ROPSフレーム16には、シート17の上方を覆うキャノピ20が設けられている。ただし、本発明のホイールローダとしては、キャノピ20を有するものの他、箱状のキャブを有したものであってもよい。
【0021】
また、後部車体3の後部フレーム15には、リヤアクスルを介して後輪21が取り付けられ、後輪21の上方に対応した位置にリヤフェンダ22が取り付けられている。前部車体2の前部フレーム6と後部車体3の後部フレーム15とは、ステアリングシリンダ23にて連結されており、ステアリングシリンダ23がシート17の回転操作に応じて伸縮する。
【0022】
後部フレーム15の左側方には、車両全体の制御を行うコントローラや、ヘッドライト、ウインカ、および各種補機類の電源である補機用バッテリ24が収容されている。一方、図示を省略するが、後部フレーム15の右側方には、作業機5の駆動用および走行駆動用の作動油を貯留する作動油タンクが収容されている。そして、シート17の下方において、前部フレーム6内には、駆動源や油圧機器が収容されている。
【0023】
シート17の下方から後方にかけては、後部フレーム15やフード25に覆われたバッテリ収容領域26になっており、前記駆動源用の電源として、後述する多数のバッテリ40が収容されている。後部フレーム15の後端には、バンパ27が設けられている。後部フレーム15の後方下部において、リヤアクスルよりも後方側の開口が板金製のアンダーガード28で覆われている。さらに、後部フレーム15の後方下部には、所定角度θの背離角が設定されている。
【0024】
図2の車体内部構造において、後部フレーム15の前後方向の略中央であって、その左右側方には、図1に示したROPSフレーム16固定用のROPS座29が設けられている。ROPS座29の高さ位置は、リヤフェンダ22と略同じ位置であり、リヤフェンダ22には、ROPS座29との干渉を避けるための切欠開口22Aが設けられている。
【0025】
後部フレーム15の前後方向の略中央であって、その内部には電動モータ30が収容されている。電動モータ30の駆動軸には、カップリング31を介してHST(Hydro Static Transmission)ポンプ32および作業機ポンプ33が直列に接続されている。作業機ポンプ33の前方下部には一対のHSTモータ34が配置され、HSTポンプ32からの作動油がHSTモータ34に供給され、作業機ポンプ33からの作動油が作業機5に供給される。HSTモータ34からの出力は、トランスファを経由した後に前後のプロペラシャフトを介してフロントアクスルおよびリヤアクスルに伝達され、前輪13および後輪21が駆動される。また、作業機ポンプ33の近傍には、コントロールバルブ35が設けられ、このコントロールバルブ35によって作動油の作業機5への供給や、HSTモータ34への供給、あるいは作動油タンクへの戻りを切り換えている。
【0026】
従って、作業機5や、前輪13、後輪21は、直接的には油圧駆動であるが、油圧源であるHSTポンプ32、作業機ポンプ33は電動モータ30で駆動されることから、本実施形態のホイールローダ1の駆動源は電動モータ30であるといえる。なお、本発明は、後輪21のみが駆動される後輪駆動のホイールローダにも適用可能である。
【0027】
〔バッテリの積載構造の概略説明〕
図2および図3に基づき、バッテリ収容領域26内でのバッテリの積載構造について説明する。
後部フレーム15の後方側から前方側に向かって説明すると、先ず、後部フレーム15の後方上部には、左右方向(車幅方向)に間隔を空けて一対の第1バッテリユニット36が積載されている。第1バッテリユニット36の前方には、後部フレーム15の内部に収容されるように第2バッテリユニット37が積載されている。第2バッテリユニット37の上方には、左右のリヤフェンダ22間に架け渡されるように第3バッテリユニット38が積載されている。第3バッテリユニット38の前方には、第4バッテリユニット39が積載されている。第4バッテリユニット39は、電動モータ30の上方であって、シート17の下方やや後方に位置している。第2、第3バッテリユニット37,38により、本発明の中央部バッテリユニットが構成される。
【0028】
具体的には後述するが、第1バッテリユニット36、第2バッテリユニット37、第3バッテリユニット38、第4バッテリユニット39はそれぞれ、駆動用バッテリとしての複数のバッテリ40を板金製のバッテリボックス41内に収容した構成である。本実施形態で用いられるバッテリ40は、保水等が不要な鉛シールバッテリであり、12V60Ahの容量を有している。バッテリ40の総積載数は40個であり、各バッテリ40が電気的に直列に接続されている。ただし、各図においては、バッテリ40同士を接続するケーブル類や、バッテリ40をバッテリボックス41に固定するための固定部材の図示を省略してある。バッテリボックス41としては、バッテリ40を露出させるための開口部分を有した構造であり、後述するクーリングユニット45で吸い込まれたれた冷却空気により、各バッテリ40がバッテリボックス41に収容された状態で冷却されるようになっている。
【0029】
第1バッテリユニット36の上部位置は、第3バッテリユニット38の上部位置よりも低く、第1バッテリユニット36の上部には、コンタクタボックス42が設置され、第3バッテリユニット38の上部には、インバータ43が設置されている。この結果やはり、より後方側のコンタクタボックス42の上部位置の方が前方のインバータ43の上部位置よりも低くなっており、後方視界が妨げられることがない。また、より高所に設置されたコンタクタボックス42、インバータ43は、バッテリ40などと比較して軽量であることから、重心位置が高くなるのを抑制でき、斜面上で斜面の傾斜方向に対して車体の前後方向が直角付近となっている車体状態にあるとき、バケット10を上方に位置させつつ、アーティキュレートさせた場合でも、車体を転倒し難くでき、側方安定性が良好である。
【0030】
ここで、コンタクタボックス42は、第1バッテリユニット36、第2バッテリユニット37、第3バッテリユニット38、第4バッテリユニット39の充放電を切り換える複数のコンタクタ(リレー)や、DC−DCコンバータ等で構成される。このため、コンタクタボックス42の背面には、外部からの充電用ケーブルが接続されるコネクタ44が設けられている。このようなコンタクタボックス42の下部には、車両全体の制御、例えば補機用バッテリ24から補機類への電力供給に関する制御、コントロールバルブ35の動作制御などを行うコントローラが配置されている。
【0031】
インバータ43は、第1バッテリユニット36、第2バッテリユニット37、第3バッテリユニット38、第4バッテリユニット39から電動モータ30へ供給される電力量を走行負荷や作業負荷に応じて制御するものであり、電動モータ30駆動用の駆動素子、昇圧回路、これらを冷却する冷却回路等で構成され、電力ケーブル43Aを介して電動モータ30へ電力を供給する。
【0032】
〔クーリングユニットの説明〕
図5に示すように、車両後方において、一対の第1バッテリユニット36間にはクーリングユニット45が配置されている。クーリングユニット45は、電動冷却ファン46と、電動冷却ファン46の後方に左右に並設されたオイルクーラ47、ラジエータ48とを備え、電動冷却ファン46にて外部からフード25内に吸い込まれた冷却空気により、オイルクーラ47、ラジエータ48が冷却される。オイルクーラ47では、作業機5やHSTモータ34で用いられる作動油が冷却され、ラジエータ48では、インバータ43および電動モータ30で用いられる冷却水が冷却される。この際、駆動用バッテリ40の高電圧からコンタクタボックス42内のDC/DCコンバータにて駆動電圧(例えば12V)が生成され、この駆動電圧にて電動冷却ファン46が駆動される。
【0033】
〔第1バッテリユニット〕
第1バッテリユニット36は、2段2列に積載された計4個のバッテリ40と、これらのバッテリ40を収容する第1バッテリボックス41Aとで構成される。
第1バッテリボックス41Aは、図6に示すように、バッテリ40の冷却を考慮して前後方向に大きく開口しているのに加え、左右方向および上方にも開口した構造であり、開口部分を有した左右の側部プレート49と、底部分を形成する底部プレート50と、側部プレート49の上端間を連結する一対の上部プレート51とを備え、第1バッテリボックス41Aの内部は、仕切プレート52によって上下2段に仕切られ、第1バッテリボックス41Aの前側には適宜な前部プレート53が左右方向に架設されている。
【0034】
第1バッテリボックス41Aの後側にはプレートが設けられておらず、従って、図示しない固定部材を外すことで、第1バッテリボックス41A内のバッテリ40を後側にスライドさせて引き出すことが可能である。他のバッテリボックス41でも同様である。上部プレート51、仕切プレート52には、バッテリ40の電極部分に対応した半長孔形状の切欠部51A、52Aが設けられ、ケーブル等の接続を可能にしている。
【0035】
また、第1バッテリボックス41Aには、複数のナット部材54が設けられている。これらナット部材54の多くは、ケーブル保持用のクランプをボルト止めするためのものであるが、上部プレート51上に設けられた一対のナット部材54Aには、コンタクタボックス42を載置するためのカバープレート55(図2、図5)が固定される。第1バッテリユニット36が後部フレーム15の左右両側に配置されることから、ナット部材54Aも左右に設けられることになり、左右の第1バッテリユニット36に架け渡されたカバープレート55の両端側がナット部材54Aに固定される。
【0036】
左右の第1バッテリユニット36の間は冷却空気の吸込空間56になっており、この吸込空間56の上方を覆うようにカバープレート55が設置される。吸込空間56の後方寄りには、前述のクーリングユニット45が配置されている。なお、図6には、代表してラジエータ48側(左側)の第1バッテリユニット36のみを図示した。
【0037】
このような第1バッテリユニット36は、図3および図4に示すように、後部フレーム15の側方に設けられた固定座58上に固定される。すなわち、第1バッテリユニット36の底部プレート50下面には、前後方向に沿った2条の脚部59が設けられ、固定座58に挿通される下方からのボルトを脚部59に螺入することで、第1バッテリユニット36が固定される。
【0038】
〔第2バッテリユニット〕
第2バッテリユニット37は、3段4列に積載された計12個のバッテリ40と、これらのバッテリ40を収容する第2バッテリボックス41Bとで構成される。
図7には、第2バッテリボックス41Bが示されている。図7において、図6で示した第1バッテリボックス41Aと同一機能部分には同一符合を付してあり、ここでのそれらの説明を省略する。第2バッテリボックス41Bでは、バッテリ40を3段に配置することから、仕切プレート52が上下2段に設けられている。また、各段において、4列に配置されるバッテリ40を左右2個ずつに仕切るように仕切プレート60が立設されている。このような仕切プレート60は、第2バッテリボックス41Bの剛性を向上させる補強部材として用いられる他、第2バッテリユニット37内を流れる冷却空気の整流板としても機能する。
【0039】
このような第2バッテリユニット37において、第2バッテリボックス41Bの各側部プレート49には、前後方向に沿った当接部材73が設けられている。一方、図3に示すように、後部フレーム15の側壁部分の内側には、前後方向に沿った固定座74が内方に突出して設けられている。
【0040】
第2バッテリユニット37は、後部フレーム15内に上方から落とし込まれ、固定座74上に当接部材73が当接され、第2バッテリユニット37全体が後部フレーム15内で吊り下げられた状態とされ、この状態で上方からのボルトを当接部材73に挿通して固定座74に螺入し、第2バッテリユニット37を後部フレーム15に固定する。第2バッテリユニット37が後部フレーム15に固定された状態では、第2バッテリユニット37の下部側が後部フレーム15の底に設けられた開口部分から露出することになるが、そのような開口部分はアンダーガード28にて覆われることになる。
【0041】
〔第3バッテリユニット〕
第3バッテリユニット38は、本実施形態では最も横長の(左右方向に長い)バッテリボックスであり、2段8列に積載された計16個のバッテリ40と、これらのバッテリ40を収容する第3バッテリボックス41Cとで構成される。従って、第3バッテリボックス41Cは、図8に示すように、左右方向の中央に立設された仕切プレート60の他、その両側に上下段にわたって立設された形状の異なる仕切プレート61を有し、各段のバッテリ40を2列ずつ仕切っている。仕切プレート61の機能は、仕切部材60の前述した機能と同じである。その仕切プレート61の上端に設けられたナット部材54Bは、インバータ43を固定するために用いられる。
【0042】
このような第3バッテリユニット38は、後部フレーム15を横断するように、左右のリヤフェンダ22に跨って後部車体3の後部フレーム15に積載されており、従って、第3バッテリユニット38を構成する複数のバッテリ40の幾つかは、リヤフェンダ22が設けられた位置で積載されていることになる。また、第3バッテリユニット38は、第2バッテリユニット37の上方に位置しており、第2、第3バッテリユニット37,38の間に後述する連通空間70(図5)が形成されている。
【0043】
図3に示すように、全体凸状に湾曲したリヤフェンダ22の後部側には、略水平な平坦部62が設けられ、この平坦部62から前方のROPS座29までは、前方に向かうに従って上向きに傾斜した傾斜面部63になっている。傾斜面部63には、ROPS座29を露出させるための前述の切欠開口22A(図2)と連続した平面四角形状の開口部22Bが設けられている。さらに、リヤフェンダ22に平坦部62および傾斜面部63が設けられることで、リヤフェンダ22には後部フレーム15の外側面に対向した鉛直面64が設けられている。そして、左右のリヤフェンダ22での鉛直面64の間に第3バッテリユニット38全体が収容される。
【0044】
図4において、後部フレーム15の側方には、前後方向に沿った固定座65が傾斜面部63を貫通して設けられている。固定座65上には、第3バッテリボックス41Cに設けられた脚部66が当接され、固定座65に挿通される下方からのボルトを脚部66に螺入することで、第3バッテリユニット38が固定座65に固定される。この際、第3バッテリユニット38の前方下部側の左右の角部分は、開口部22Bに落とし込まれてリヤフェンダ22内にはみ出すことになり、リヤフェンダ22と第3バッテリユニット38とが干渉しないようになっている。
【0045】
このような積載構造では、第3バッテリユニット38がリヤフェンダ22上にまで積載されているため、より多くのバッテリ40が高さ位置を高くせずに、かつ前方側で積載されるようになる。なお、第3バッテリユニット38と開口部22Bとの隙間の他、バッテリ収容領域26で生じる部材間の隙間は、必要に応じてスポンジ状のシール部材で塞がれる。また、平面視では、この第3バッテリユニット38の他、冷却ファン46、一対の第1バッテリユニット41、および第2バッテリユニット42で周囲が囲まれることになる。
【0046】
〔第4バッテリユニット〕
第4バッテリユニット39は、1段4列に積載された計4つのバッテリ40と、これらのバッテリ40を収容する第4バッテリボックス41Dとで構成される。
第4バッテリボックス41Dは、図9に示すように、底部プレート50の下面に垂設された左右一対の固定ブラケット67を有している。固定ブラケット67は、側面略三角形状とされ、固定ブラケット67の後端には、固定片68が一体に形成されている。これに対して、後部フレーム15の側壁部分の内側には、左右に対向する位置に上下方向に沿った一対の固定座69が設けられている。
【0047】
この固定座69に対して固定片68が後方側から当接され、固定片68に挿通されたボルトを固定座69に螺入することで、第4バッテリユニット39が後部フレーム15に固定される。第4バッテリユニット39が固定された状態では、固定ブラケット67間に電動モータ30が位置することになる。なお、第4バッテリボックス41Dには、仕切プレート60は設けられていないが、設けても何ら問題はない。
【0048】
〔冷却空気の流れの説明〕
以下には、図5を参照して冷却空気(白抜き矢印で図示)の流れについて説明する。
クーリングユニット45の電動冷却ファン46は本来、オイルクーラ47およびラジエータ48に冷却空気を供給するものであるが、本実施形態では、電動冷却ファン46にて外部からフード25内に吸い込まれた冷却空気は、クーリングユニット45の直前に形成された吸込空間56にて上下左右に拡散し、その一部は左右の第1バッテリユニット36側に流れてこれを冷却するとともに、他の一部は前方下部の第2バッテリユニット37および前方上部の第3バッテリユニット38側に流れてこれらを冷却する。
【0049】
ここで、吸入空間56の上方はカバープレート55で覆われているため、冷却空気は上方からコンタクタボックス42側への流出が抑制され、左右両端側および前方側に向かって確実に流れるようになって、第1〜第3バッテリユニット36〜38を良好に冷却する。しかも、吸込空間56の下方は、後部フレーム15の左右の側壁部分に跨ったアンダーガード28で覆われているから、後部フレーム15の下方の開口部分から冷却空気が流出する心配もない。
【0050】
また、第2バッテリユニット37と第3バッテリユニット38との間は、後方から前方に向かって連通した連通空間70になっており、連通空間70を通して前方側に供給される冷却空気や、第2バッテリユニット37を通過した冷却空気により第4バッテリユニット39が冷却される。そして、連通空間70の前方側の出口付近には、連通空間70に対応した高さ位置に電動モータ30の背面や端子ボックス71が配置されており、これらを良好に冷却できるとともに、これらにぶつかった冷却空気が上方に積極的に向きを変え、第4バッテリユニット39を効果的に冷却する。
【0051】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記実施形態では、横長の第3バッテリユニット38が左右のリヤフェンダ22上に架設されていたが、左右方向に沿って複数のバッテリユニットに分割した場合など、リヤフェンダ22に対応した位置のバッテリユニットのみがリヤフェンダ22上に積載されてもよい。
【0052】
前記実施形態では、第3バッテリユニット38の両端がリヤフェンダ22上に積載されることで、第3バッテリユニット38を構成するバッテリ40もリヤフェンダ22上に積載されていることとして説明したが、バッテリ1つの大きさが大きく、複数のバッテリにてバッテリユニットを構築できない場合など、そのようなバッテリをリヤフェンダ上に直接的に積載した場合でも、本発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、バッテリ駆動のホイールローダに利用できる。
【符号の説明】
【0054】
1…ホイールローダ、2…前部車体、3…後部車体、5…作業機、13…前輪、15…後部フレーム、21…後輪、22…リヤフェンダ、22B…開口部、24…補機用バッテリ、28…アンダーガード、30…電動モータ、36…後部バッテリユニットである第1バッテリユニット、37…中央部バッテリユニットの下部バッテリユニットである第2バッテリユニット、38…中央部バッテリユニットの上部バッテリニットである第3バッテリユニット、39…前部バッテリユニットである第4バッテリユニット、40…駆動用バッテリであるバッテリ、46…冷却ファンである電動冷却ファン、55…カバープレート、56…中空空間である吸込空間、70…連通空間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪および作業機が取り付けられる前部車体と、
後輪が取り付けられ、かつ前記前部車体との間で屈曲自在とされた後部車体と、
前記後部車体に搭載されて、少なくとも前記後輪および前記作業機の駆動に用いられる電動モータと、
前記電動モータの電源である複数の駆動用バッテリと、
前記複数の駆動用バッテリに冷却空気を供給する冷却ファンとを備え、
前記冷却ファンは、前記後部車体の後方に設けられ、
複数の前記駆動用バッテリは少なくとも、
前記冷却ファン前方の左右両側に互いに間隔を空けて配置された一対の後部バッテリユニットと、
前記冷却ファン前方に、該冷却ファンに対して間隔を開けて配置された中央部バッテリユニットとして集約され、
平面視では、前記冷却ファン、前記後部部バッテリユニット、および前記中央部バッテリユニットで囲まれた中空空間が形成されている
ことを特徴とするバッテリ駆動のホイールローダ。
【請求項2】
請求項1に記載のバッテリ駆動のホイールローダにおいて、
前記中央部バッテリユニットは、上下に配置された上部バッテリユニットと、下部バッテリユニットとで構成され、
前記下部バッテリユニットと前記上部バッテリユニットとの間には、前記中空空間と前記中央部バッテリユニットの前方側とを連通させる連通空間が形成されている
ことを特徴とするバッテリ駆動のホイールローダ
【請求項3】
請求項2に記載のバッテリ駆動のホイールローダにおいて、
前記中央部バッテリユニットのさらに前方には、前記連通空間に対応した高さ位置に前記電動モータが配置されている
ことを特徴とするバッテリ駆動のホイールローダ。
【請求項4】
請求項3に記載のバッテリ駆動のホイールローダにおいて、
前記電動モータの上方には、複数の前記駆動用バッテリが集約された前部バッテリユニットが配置されている
ことを特徴とするバッテリ駆動のホイールローダ。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のバッテリ駆動のホイールローダにおいて、
前記中空空間の上方は、前記一対の後部バッテリユニット間に架け渡されたカバープレートで覆われ、
前記中空空間の下方は、前記後部車体の後部フレームを構成する左右の側壁部分に架け渡されたアンダーガードで覆われている
ことを特徴とするバッテリ駆動のホイールローダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−201188(P2012−201188A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66723(P2011−66723)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】