説明

バネシステム及びバネシステムを備えた乗り物座席

【課題】 本発明の目的は、バネシステムに作用する体重に対して停止バッファが適合するような装置を提供することである。
【解決手段】本発明は、振動部(1)、静止部(2)、およびそれらの中間に配置された空気バネを備えたバネシステムに関し、本発明によると、該静止部(2)と該振動部(1)との間に、開口(7)を備えた少なくとも1つの圧縮可能な空気圧式バネ部(4)が配置され、無負荷状態では、該開口(7)を介して、バネ部(4)が空気バネ(3)のボリューム部(9)に接続され、負荷のかかった圧縮状態では、前記開口(7)が閉じる。本発明はさらに、上記特徴を有するスプリングシステムを備えた乗り物座席に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動部、静止部、およびその中間に配置された空気バネを備えたバネシステムに関し、さらに、そのようなバネシステムを備えた乗り物座席に関する(乗り物には、鉄道の車両、自動車、航空機、船舶等を含む)。
【背景技術】
【0002】
バネ付の座席では、大きな励起振幅(excitation amplitudes)が与えられると、バネシステムが限界停止点(limit stop)に達する場合がある。限界停止点に達したときの、乗り物座席に座っている人の負担を軽減するために、バネシステムでは、ゴムバッファなどの適切な停止バッファを用いて、限界停止点での硬い接触を和らげている。そのような停止バッファは、力−変位特性、自己減衰、長さ、およびバネの変位などの固定された物理的特性を持っている。しかし、この構成の主な不都合点の一つは、乗り物座席に座っている人の体重に対する適合性がないことである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このため、本発明の目的は、バネシステムに作用する体重に対して停止バッファが適合するような装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、請求項1の特徴を有するバネシステムおよび請求項11の特徴を有する乗り物座席によって達成できる。圧縮可能な空気圧式バネ部に開口が設けられていることにより、該空気圧式バネ部内のボリューム部と空気バネのボリューム部との間では、気体の行き来がある。このように変形していない状態においては、バネシステムは、従来の空気バネを備えた既知のバネシステムと同様に作用する。負荷をかけられて押し下げられた状態では、空気バネの終端停止点(end stop)の方向へ所定量近づくと開口が閉じ、空気圧式バネ部内のボリューム部が空気バネのボリューム部から隔離される。さらに終端停止点に近づくと、空気圧式バネ部のボリューム部が圧縮されて、空気圧式バネ部による力の作用が開始される。この時点で、所定の変位の場合、バネシステム全体の動きに対抗する力が移動質量に適合させられる。この場合、移動質量とは、バネシステムが置かれた乗り物座席の上に存在する質量を指す。これは、一定の変位に対しては、バネ部のボリューム部の体積が所定量減少するという事実に基づく。この場合、圧縮によって生じる力は、外向きの圧力に比例している。こうして、この構成により、自動的に移動質量に適合する終端停止バッファ(end-stop buffer)を実現することができる。
【0005】
本発明の好ましい発展例として、開口を閉じるために、振動部が作動部と接続されていてもよい。これによって、空気圧式バネ部を、バネシステムの静止部に接続できるようになり、該バネシステムと一緒に連続的に動かす必要がなくなる。
【0006】
本発明の他の好ましい発展例として、バネ部を空気バネの内部に配置してもよい。これによって、いずれにせよ空気バネによって占められている空間を有効に活用することができ、空気圧式バネ部がさらに別の場所で空間を占めることがない。このようにすることで、非常に小型の実施形態を実現できる。この場合、空気バネの、バネシステムの静止部に接続されている部分に、空気圧式バネ部を、しっかりと接続することが好ましい。
【0007】
本発明のさらに他の好ましい発展例として、バネ部のボリューム部を、絞り装置を備えたオーバーフロー管を介して、空気バネのボリューム部または大気と接続してもよい。空気圧式バネ部の内部の気体が強く圧縮されることによってバネ特性がより急勾配となる一方で、絞り装置を介して少量の気体がオーバーフローし続けることによって空気圧式バネ部からエネルギーが取り除かれ、振動が減衰される。この結果、非常に優れた制振作用とバネ作用の組み合わせが得られる。
【0008】
本発明のさらに他の好ましい発展例として、バネ部を、弾性変形可能で耐圧性の、特に好ましくは、プラスチックまたはゴム等の材料からなるボールとして形成してもよい。このような実施形態は、非常に容易かつ安価に製造可能であり、しかも非常によく必要条件を満足する。この場合、ボールの上側部分には開口が設けられ、ボール自体は、ボールの下側部分で、空気バネにしっかりと接続されることが好ましい。より詳細には、この場合、振動部に接続されている空気バネの可動部に、ボールの開口を閉じるのに適した形状の作動部が配置されることが好ましい。
【0009】
本発明のさらに他の好ましい発展例として、作動部をゴムバッファとして形成してもよい。これにより、空気圧式バネ部が完全に圧縮されてしまった場合にも、作動部がさらに変形可能なので、最終の終端停止点がまだ残されているという効果が生じる。この目的を達成するためには、作動部の材質が、空気圧式バネ部の材質と適合していなければならない。
【0010】
本発明のさらに他の好ましい発展例として、バネ部を、空気圧式シリンダとして形成してもよい。そのような部品は、従来技術でよく知られているものであり、また、信頼できる部品として長年の使用実績がある。これにより、本発明の信頼できる1実施形態を実現することができる。また、この実施形態では、バネ部が管を介して空気バネのボリューム部と接続されていさえすれば、バネ部を完全に空気バネの外側に置くこともできる。
【0011】
本発明の他の好ましい発展例については、図示した実施例を参照しながら、より詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1から図3は、異なる負荷状態における、本発明の空気圧式バネ部4を備えた本発明の第1実施例の空気バネ3を示している。図1では、空気バネ3の周りに、本発明のバネシステム全体が模式的に示されている。このため、図1に関する次の説明は、純粋に各部の配置のみに限られ、機能については、図2及び図3に示した空気バネ3の異なる2つの負荷状態を参照しながら説明することにする。
【0013】
図1に示す本発明の第1実施例のバネシステムは、例えば、乗り物座席に一体に組み込まれていてもよい。バネシステムは、原則的には従来技術で知られているものであり、本発明にとって直接的に重要な部分を除き、バネシステムの構成については簡単に述べるにとどめる。
【0014】
通常は運転台の基礎部に接続される静止部2が、鋏形接続部15を介して振動部1に接続されている。空気バネ3は、静止部2と振動部1との間に配置されている。空気バネ3は固定部5を備え、固定部5は、バネシステムの静止部2に直接接続されている。空気バネ3はさらに可動部6を備え、可動部6は、鋏形接続部15のうちの1つを介して、バネシステムの振動部1に、間接的に接続されている。固定部5は、バネベローズ部16を介して可動部6に接続され、これによって可変ボリューム部9が構成される。
【0015】
空気バネ3のこのボリューム部9の内側に、圧縮可能な空気圧式バネ部4が配置されている。本実施例においては、このバネ部はボールである。ボールには、弾性変形可能で耐圧性のある材料を使用するが、さらに、劣化しにくいものであることが好ましい。このため、ボールは、適切なプラスチック、特に熱可塑性ポリウレタン(TPU)等のポリウレタンエラストマー、または、ゴムからなることが好ましい。この場合、強化ゴムを使用することもできる。空気圧式バネ部4の下側部分は、空気バネ3の固定部5にしっかりと接続されている。空気圧式バネ部4は、その上端に開口7を備えている。ボール型の空気圧式バネ部4の壁によって、ボリューム部14の境界が画定されている。バネ部4のボリューム部14は、オーバーフロー管11を介して空気バネ3のボリューム部9とつながっており、オーバーフロー管11には、絞り装置10が挿入されている。
【0016】
ここで、オーバーフロー管11と絞り装置10は、いずれも、完全に固定部5の内部に配置されている。ただし、これは、決して必須の条件ではなく、これら2つの部材は、空気バネ3のボリューム部9内に配置してもよい。
【0017】
可動部6は、ポリアミドまたはアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、またはその他の耐衝撃性プラスチック等で形成し、空気圧式バネ部4の開口7を閉じることのできる形状にする。
【0018】
図2に示すのは、図1の一部であり、空気バネ3に負荷のかかっていない場合の、空気バネ3及び関連部材の状態を示している。この状態では、空気圧式バネ部4のボリューム部14は、開口7を介して、空気バネ3のボリューム部9と通じている。バネシステムに負荷がかかると、可動部6が下方に押しつけられる。この結果、空気バネ3のボリューム部9の体積が減少するが、一方で、空気圧式バネ部のボリューム部14の体積は変わらない。開口7によって、空気圧式バネ部4のボリューム部14と空気バネ3のボリューム部9との間の気体の行き来が継続して行われる。他方で、空気圧式バネ部4のボリューム部14から空気バネ3のボリューム部9へのオーバーフロー管11を通じた気体の流れは生じない。なぜなら、絞り装置10によって妨げられているからである。
【0019】
バネの変位が、作動部13と空気圧式バネ部4が接触するまで大きくなると、図3に示す状態が得られる。空気バネ3がこのように負荷状態にある場合、作動部13によって空気圧式バネ部4の開口7が塞がれる。この結果、この時点から、空気圧式バネ部4のボリューム部14と空気バネ3のボリューム部9との間で気体の行き来ができなくなる。空気圧式バネ部4は、空気圧式終端停止バッファ(end-stop buffer)として機能する。
【0020】
さらに空気バネ3を押し下げると、最初はボール形であった空気圧式バネ部4が圧縮される。この場合、ボリューム部14の体積が減少し、ボリューム部14内の気体が圧縮される。これによって、より急勾配のバネ特性が生じる。この場合、所定の変位に対し、バネシステムの動きに対抗する力が、移動質量と釣り合う。なぜなら、空気圧式バネ部4の体積は、一定の変位に対して一定量減少するからである。この場合、圧縮によって生じる力は、外向きの圧力に比例している。このようにして、移動質量と自動的に釣り合う終端停止バッファが得られる。
【0021】
空気圧式バネ部4のボリューム部14に存在する気体のうち少量は、オーバーフロー管11と、オーバーフロー管11中に配置された絞り装置10とを介して、空気バネ3のボリューム部9に逃れる。オーバーフローした気体によって、空気圧式バネ部4のエネルギーの一部が取り除かれ、振動が減衰する。このようにして、一方ではバネ要素として働きながら、他方では、続いて減衰要素として機能する、混合システムが得られる。
【0022】
空気バネ3の可動部6が、戻る方向である上方に動くと、所定点を越えた時点で、作動部13が空気圧式バネ部4と接触しなくなるので、再び開口7が開く。
【0023】
オーバーフロー管11を、空気バネ3のボリューム部9で終わるように引き込む代わりに、該オーバーフロー管を、外側の大気中に向けて配管することもできる。空気圧式バネ部4のボリューム部14からオーバーフローする気体を、別個の容器に集めることも、同様に考えられる。
【0024】
図4は、全部で2つの空気圧式終端停止バッファを備えた第2実施例を示している。図1から3に示し、これまでに詳しく説明してきた空気圧式バネ部4が、第2実施例でも、空気バネ3のボリューム部9内に配置されている一方で、第1実施例とは対照的に、前記空気圧式バネ部4には、絞り装置10のついたオーバーフロー管11が備えられていない。ただし、機能については、上述の実施例1と同じである。
【0025】
さらに、空気バネ3の外側に、第2の空気圧式終端停止バッファが備えられている。本実施例においては、該終端停止バッファは、空気圧式シリンダ8であり、バネシステムの静止部2にしっかりと接続されている。空気圧式シリンダ8の作動ボリューム部(working volume)は、接続管12(接続管12には、図示されない絞り装置が内蔵されている)を介して空気バネ3のボリューム部9に接続されている。バネの変位が所定量を超えると、振動部1が空気圧式シリンダ8を作動させ、これによって、空気圧式シリンダ8の作動ボリューム部の体積が減少する。空気圧式シリンダ8の作動ボリューム部をこれ以上押し下げるには、非常に大きな力が必要となる。空気圧式シリンダ8の作動ボリューム部の気体の一部は、接続管12中の絞り装置によって空気バネ3のボリューム部9中に逃れるが、これは、弾性特性に加えて制振特性を備える空気圧式シリンダ8から、エネルギーを取り除くために限られる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1実施例のバネシステムの模式的断面図を示す。
【図2】図1のバネシステムのうち、空気バネの部分の、無負荷状態を示す。
【図3】図1のバネシステムのうち、空気バネの部分の、負荷状態を示す。
【図4】本発明の第2実施例のバネシステムの模式的断面図を示す。
【符号の説明】
【0027】
1…振動部(Oscillating part)
2…静止部(Stationary part)
3…空気バネ(Air spring)
4…空気圧式バネ部(Pneumatic spring element)
5…固定部(Fixed part)
6…可動部(Movable part)
7…開口(Aperture)
8…空気圧式シリンダ(Pneumatic cylinder)
9…空気バネのボリューム部(Volume of the air spring)
10…絞り装置(Throttle)
11…オーバーフロー管(Overflow line)
12…接続管(Connecting line)
13…作動部(Actuating element)
14…バネ部のボリューム部(Volume of the spring element)
15…鋏形接続部(Scissor-shaped connection)
16…バネベローズ部(Spring bellows)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動部(1)、静止部(2)およびその中間に配置される空気バネ(3)を備えたバネシステムにおいて、
該静止部(2)と該振動部(1)との間に、開口(7)を備えた少なくとも1つの圧縮可能な空気圧式バネ部(4)が配置され、無負荷状態においては、該開口(7)を介して該バネ部(4)が前記空気バネ(3)のボリューム部(9)に接続され、
負荷のかかった圧縮状態においては、該開口(7)が閉じることを特徴とするバネシステム。
【請求項2】
前記開口(7)を閉じる目的で、前記振動部(1)が、作動部(13)と接続されていることを特徴とする、請求項1のバネシステム。
【請求項3】
前記バネ部(4)が、前記空気バネ(3)内に配置されていることを特徴とする、請求項1または2のバネシステム。
【請求項4】
前記バネ部(4)が、前記空気バネ(3)の固定部(5)にしっかりと接続され、該固定部(5)が、前記バネシステムの静止部(2)に接続されていることを特徴とする、請求項1から3のいずれかのバネシステム。
【請求項5】
前記バネ部(4)のボリューム部(14)が、絞り装置(10)を備えたオーバーフロー管(11)を介して前記空気バネ(3)のボリューム部(9)または大気中に接続されることを特徴とする、請求項1から4のいずれかのバネシステム。
【請求項6】
前記バネ部(4)が、弾性変形可能で耐圧性の、特に好ましくは、プラスチックまたはゴム等の材料からなるボールとして形成されることを特徴とする、請求項1から5のいずれかのバネシステム。
【請求項7】
前記開口(7)が前記ボールの上側部分に形成され、前記ボールの下側部分が、前記空気バネ(3)にしっかりと接続されていることを特徴とする、請求項6のバネシステム。
【請求項8】
前記作動部(13)が、前記振動部(1)に接続された前記空気バネ(3)の可動部(6)に配置され、該作動部(13)が、前記ボールの開口(7)を閉じるのに適した形状であることを特徴とする、請求項7のバネシステム。
【請求項9】
前記作動部(13)が、ゴムバッファとして形成されていることを特徴とする、請求項1から8のいずれかのバネシステム。
【請求項10】
前記空気圧式バネ部(4)が、空気圧式シリンダ(8)として形成されていることを特徴とする、請求項1から5のいずれかのバネシステム。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかのバネシステムを備えた、乗り物座席。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−266497(P2006−266497A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−46106(P2006−46106)
【出願日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(501377265)イスリングハウゼン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (6)
【Fターム(参考)】