説明

バリア性フィルム及び有機電子デバイス

【課題】バリア性能と屈曲耐性を両立できる均一なフィルムを提供することにあり、また該フィルムを有機電子デバイス用基材等のバリア性を必要とする素子等に応用することにある。
【解決手段】樹脂基材上に少なくとも1層の有機層を有するバリア性フィルムにおいて、該有機層上に厚み5〜150nmの第1のSiO(x>2)層が積層され、該SiO(x>2)層上にケイ素原子及び酸素原子を含有する無機層を少なくとも2層以上有することを特徴とするバリア性フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バリア性フィルムとそれを用いた有機電子デバイスに関する。より詳しくは、優れた水蒸気バリア性能を有するバリア性フィルムと該バリア性フィルムを用いた有機電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プラスチック基板やフィルムの表面に酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化珪素等の金属酸化物の薄膜を形成したガスバリアフィルムは、水蒸気や酸素等の各種ガスの遮断を必要とする物品の包装、食品や工業用品および医薬品等の変質を防止するための包装用途に広く用いられている。
【0003】
また、包装用途以外にも液晶表示素子、光電変換素子(太陽電池)、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)基板等で使用されている。
【0004】
この様な液晶表示素子等の分野での包装材料としてアルミ箔等が広く用いられているが、使用後の廃棄処理が問題となっている。その他にも基本的には不透明であり、外から内容物を確認することができないという課題を抱えている。更には、太陽電池用材料の分野では、透明性が求められているため、アルミ箔等を適用することができない。
【0005】
特に、液晶表示素子、有機EL素子、光電変換素子などへの応用が進んでいる透明基板には、近年、軽量化、大型化という要求に加えて、ロール・トゥ・ロールでの生産が可能であること、長期信頼性や形状の自由度が高いこと、曲面表示が可能であること等の高度な要求が加わる。そのため、重くて割れやすく大面積化が困難なガラス基板に代わって透明プラスチック等のフィルム基板が採用され始めている。
【0006】
しかしながら、透明プラスチック等のフィルム基板はガラスに対しバリア性が劣るという問題がある。例えば、有機電子デバイス用の材料としてフィルム基版を用いた場合、バリア性が劣る基板を用いると、水蒸気や空気が浸透して有機膜が劣化し、光電変換効率あるいは耐久性等を損なう要因となる。
【0007】
また、電子デバイス用基板として高分子基板を用いた場合には、酸素や水分子が高分子基板を透過して電子デバイス内に浸透、拡散し、デバイスを劣化させてしまうことや、電子デバイス内で求められる真空度を維持できないといった問題を引き起こす。
【0008】
この様な問題を解決するためにフィルム基板上に金属酸化物薄膜を蒸着してガスバリアフィルム基板とすることが知られている。最近では有機EL素子等の水分に弱い有機物のバリア性フィルムとしては、水蒸気透過率が1×10−3g/m・dayを下回るようなバリア性能が求められている。
【0009】
一方、真空プロセスが必要な蒸着法ではなく、簡便な塗布プロセスで成膜が可能な方法として、ポリシラザン等の珪素化合物の塗布液を基板上に塗布した膜に転化処理を施すことで、転化したシリカ膜からなるガスバリア層を形成する方法もいくつか知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1では、ポリシラザン塗布膜を大気圧下における酸素プラズマ放電処理によりシリカ膜に転化するプロセスの開示があり、真空プロセスを必要とせずにガスバリア層の形成が可能である。
【0010】
これらの塗布法による成膜は表面平滑性が非常に高い膜が形成できることが知られており、真空系の原子堆積法の根本的問題であるパーティクルによる平滑性の劣化が回避可能である。しかしながら、得られた膜の水蒸気透過率は、0.35g/(m・24h)と、前述したようなデバイスに適用が可能なガスバリア層とはとても言えない。
【0011】
また、特許文献1に記載の方法では、二酸化珪素の単一膜が形成されるものの、昨今求められているガスバリア性を実現するためには、ガスバリア層の膜厚を厚くする必要がある。塗膜の改質処理によりバリア性膜を形成する場合には、非常に大きな膜収縮を伴うため、塗膜膜厚を厚くしすぎるとバリア性膜への改質時にクラックを生じてしまう。そのため、クラックが生じない程度の薄膜を複数積層することで所望のガスバリア性を達成している。しかしながら、単に複数積層するだけでは前述したレベルのガスバリア性を実現するには不十分であった。
【0012】
また特許文献2では、硬化したオルガノポリシロキサン上に酸化窒化ケイ素層、窒化ケイ素層、酸化ケイ素層を形成したガスバリア性フィルムが開示されているが電子デバイス用の水蒸気透過率としては不十分であり、また屈曲耐性も不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2008−159824号公報
【特許文献2】特開2010−36577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、バリア性能と屈曲耐性を両立できる均一なフィルムを提供することにあり、また該フィルムを有機電子デバイス用基材等のバリア性を必要とする素子等に応用することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の目的は、下記構成を採ることにより達成される。
【0016】
(1)
樹脂基材上に少なくとも1層の有機層を有するバリア性フィルムにおいて、該有機層上に厚み5〜150nmの第1のSiO(x>2)層が積層され、該SiO(x>2)層上にケイ素原子及び酸素原子を含有する無機層を少なくとも2層以上有することを特徴とするバリア性フィルム。
【0017】
(2)
前記無機層の最表層側にも厚み1〜10nmの第2のSiO(x>2)層が積層していることを特徴とする(1)記載のバリア性フィルム。
【0018】
(3)
前記無機層のうち少なくとも1層が窒素原子を含有することを特徴とする(1)又は(2)に記載のバリア性フィルム。
【0019】
(4)
前記第1のSiO(x>2)層が5〜100nm以下であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載のバリア性フィルム。
【0020】
(5)
前記第1のSiO(x>2)層が5〜50nm以下であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載のバリア性フィルム。
【0021】
(6)
前記無機層のうち少なくとも1層がポリシラザンを塗布することによって得られており、少なくとも前記無機層のうち最上層の無機層は塗布後に酸化処理が行われていることを特徴とする(1)〜(5)のいずれか1項に記載のバリア性フィルム。
【0022】
(7)
前記酸化処理が、180nm以下の波長成分を有する真空紫外線を照射する処理であることを特徴とする(6)記載のバリア性フィルム。
【0023】
(8)
前記真空紫外線を照射する処理が、酸素濃度0.001〜5%の雰囲気下で行われることを特徴とする(7)記載のバリア性フィルム。
【0024】
(9)
(1)〜(8)のいずれか1項に記載のバリア性フィルムを用いたことを特徴とする有機電子デバイス。
【発明の効果】
【0025】
本発明により、バリア性能と屈曲耐性を両立できる均一なフィルムを提供することができ、また該フィルムを有機電子デバイス用基材等のバリア性を必要とする素子等に応用することができた。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】有機電子デバイスの基本的構成の態様例である。
【図2】本発明のバリア性フィルムの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0028】
〈バリア性フィルム〉
まず、本発明のバリア性フィルムについて説明する。
【0029】
本発明のバリア性フィルムは、樹脂基材上に少なくとも1層の有機層を有するバリア性フィルムにおいて、該有機層上に厚み5〜150nmの第1のSiO(x>2)層が積層され、該SiO(x>2)層上にケイ素原子及び酸素原子を含有する無機層を少なくとも2層以上有することを特徴とする(例えば、好ましい態様として図2を参照)。
【0030】
第1のSiO(x>2)層の厚みは、5〜100nm以下であることが好ましく、5〜50nm以下であるとさらに水蒸気バリア性能が向上するため、好ましい。第1のSiO(x>2)層とは、Siに対して酸素過剰の状態を指しており、例えばシラノール層としてとらえることができる。詳細なメカニズムは不明だが、本発明ではSiに対して酸素過剰である第1のSiO(x>2)層が樹脂基材側に150nmよりも厚く積層されていると、本来バリア層として形成している無機層の水蒸気バリア性を劣化させることが本発明者の検討によりわかった。
【0031】
また本発明においては、ケイ素原子と酸素原子を含む無機層が2層以上積層されていることを特徴とする。無機層を2層以上にすることで1層目は第1のSiO(x>2)のような酸素過剰層の影響を受けてしまうが、2層以上であると2層目以降は酸素過剰層の影響を減少するためによりバリア性が高い膜を形成できる為である。さらに無機層に窒素原子を含有すると水蒸気バリア性が良くなり、さらには屈曲耐性も向上させることができた。
【0032】
本発明のバリア性フィルムは、JISK7129B法に従って測定した水蒸気透過率が、10−3g/m/day以下であることが好ましく、より好ましくは10−4g/m/day以下、更に好ましくは10−5g/m/day以下である。
【0033】
また、酸素透過率が0.01ml/m/day以下であることが好ましく、より好ましくは0.001ml/m/day以下である。
【0034】
続いて、本発明を構成する各要素について説明する。
【0035】
〈SiO(x>2)層〉
本発明における第1のSiO(x>2)層は、例えば有機層上にケイ素化合物を含有する液を塗布後、酸化処理することで形成することができる。
【0036】
ケイ素化合物については、バリア性の観点からは有機基がついていない無機ポリマーであることが好ましい。
【0037】
有機層上の第1のSiO(x>2)層は厚みが5〜150nm以下の範囲にあることが必要であり、好ましくは5〜100nm以下、さらに好ましくは、ガスバリア性の観点から5〜50nm以下である。
【0038】
また、本発明においては、無機層の最表層側に第2のSiO(x>2)層が存在することが好ましく、該SiO(x>2)層の厚みは、1〜10nm以下であることが好ましい。さらに好ましくは、1〜5nm以下である。ここで無機層の最表層側とは、n個無機層があった場合においてn番目における無機層の基板から最も離れた側をいう。
【0039】
本発明におけるSiO(x>2)層のOとSiの比率に関しては、SiO(x>2)層をスパッタで削りながらXPS(X−ray Photoelectron Spectroscopy)で測定することにより測定できる。装置は、例えば、ESCALab200R(VG Scientific社製)を用いて測定することができる。
【0040】
また、本発明において有機層上に第1のSiO(x>2)層が存在することにより、有機層との接着性が向上することが発明者の検討によりわかった。
【0041】
本発明で用いることのできるケイ素化合物としては、好ましいものとして、パーヒドロポリシラザン、シルセスキオキサン、テトラメチルシラン、トリメチルメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシラザン、1,1−ジメチル−1−シラシクロブタン、トリメチルビニルシラン、メトキシジメチルビニルシラン、トリメトキシビニルシラン、エチルトリメトキシシラン、ジメチルジビニルシラン、ジメチルエトキシエチニルシラン、ジアセトキシジメチルシラン、ジメトキシメチル−3,3,3−トリフルオロプロピルシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、アリールトリメトキシシラン、エトキシジメチルビニルシラン、アリールアミノトリメトキシシラン、N−メチル−N−トリメチルシリルアセトアミド、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、メチルトリビニルシラン、ジアセトキシメチルビニルシラン、メチルトリアセトキシシラン、アリールオキシジメチルビニルシラン、ジエチルビニルシラン、ブチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルジメチルエトキシシラン、テトラビニルシラン、トリアセトキシビニルシラン、テトラアセトキシシラン、3−トリフルオロアセトキシプロピルトリメトキシシラン、ジアリールジメトキシシラン、ブチルジメトキシビニルシラン、トリメチル−3−ビニルチオプロピルシラン、フェニルトリメチルシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン、フェニルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルジメトキシメチルシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ジメチルイソペンチロキシビニルシラン、2−アリールオキシエチルチオメトキシトリメチルシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−アリールアミノプロピルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、ジメチルエチキシフェニルシラン、ベンゾイロキシトリメチルシラン、3−メタクリロキシプロピルジメトキシメチルシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、ジメチルエトキシ−3−グリシドキシプロピルシラン、ジブトキシジメチルシラン、3−ブチルアミノプロピルトリメチルシラン、3−ジメチルアミノプロピルジエトキシメチルシラン、2−(2−アミノエチルチオエチル)トリエトキシシラン、ビス(ブチルアミノ)ジメチルシラン、ジビニルメチルフェニルシラン、ジアセトキシメチルフェニルシラン、ジメチル−p−トリルビニルシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、ジエチルメチルフェニルシラン、ベンジルジメチルエトキシシラン、ジエトキシメチルフェニルシラン、デシルメチルジメトキシシラン、ジエトキシ−3−グリシドキシプロピルメチルシラン、オクチロキシトリメチルシラン、フェニルトリビニルシラン、テトラアリールオキシシラン、ドデシルトリメチルシラン、ジアリールメチルフェニルシラン、ジフェニルメチルビニルシラン、ジフェニルエトキシメチルシラン、ジアセトキシジフェニルシラン、ジベンジルジメチルシラン、ジアリールジフェニルシラン、オクタデシルトリメチルシラン、メチルオクタデシルジメチルシラン、ドコシルメチルジメチルシラン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1,4−ビス(ジメチルビニルシリル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アセトキシプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリビニルシクロトリシロキサン、1,3,5−トリス(3,3,3−トリフルオロプロピル)−1,3,5−トリメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラエトキシ−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等を挙げることができる。
【0042】
なかでもケイ素化合物は有機基を有しない方が好ましく、パーヒドロポリシラザンがより好ましく用いられる。酸化珪素化合物への転化を促進するために、ケイ素化合物を含有する液中にアミンや金属の触媒を添加することもできる。
【0043】
具体的には、AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製 アクアミカ NAX120−20、NN110、NN310、NN320、NL110A、NL120A、NL150A、NP110、NP140、SP140などが挙げられる。これらを塗布する場合、塗布液と水分が反応するのを抑制するため、溶媒としてキシレン、ジブチルエーテル、ソルベッソ、ターペン等、水分を含有しにくいものを用いることが好ましい。
【0044】
〈無機層〉
本発明における無機層とは、ケイ素原子および酸素原子を含有する層であり、SiO(x>2)層を除いたものである。また、本発明における無機層は、窒素原子を有することが好ましい。
【0045】
構成する材料として具体的には、ケイ素を有する無機酸化物が好ましく、酸化ケイ素、酸化窒化ケイ素等を有する層を挙げることができる。
【0046】
本発明における無機層は、特に酸化窒化ケイ素を含有するとバリア性、屈曲耐性が向上するため好ましい。窒素の量としてはSiOとした場合に、xが0.1〜1.8、yが0.3〜1.0であることが好ましい。さらに好ましくは、xが0.2〜1.4の間である。
【0047】
無機層の成膜方法としては、蒸着法、塗布法、スパッタリング法もしくはイオンプレーティング法等の物理的気相成長法(PVD)、化学的気相成長法(CVD)、ゾルゲル法等を用いることができるが生産性及び平滑性の観点から塗布法であることが好ましい。
【0048】
本発明のおける無機層の中でも少なくとも一層は、ポリシラザンを含有する塗布液を塗布して作製することが好ましい。また、バリア性の観点から無機層(特に最表層の無機層)は酸化処理されていることが好ましい。
【0049】
また、本発明における無機層は、樹脂基板上の有機層上に2層以上有する。この態様として、例えば基板側から数えて第1層目の無機層と第2層目の無機層が連続して積層されている場合や、第1層目の無機層と第2層目の無機層の間に有機層等を有している場合等がある。
【0050】
(塗布膜形成方法)
塗布法としては、任意の適切な方法が採用され得る。具体例としては、スピンコート法、ロールコート法、フローコート法、インクジェット法、スプレーコート法、プリント法、ディップコート法、流延成膜法、バーコート法、グラビア印刷法等が挙げられる。
【0051】
形成される無機層の厚みは、生産性及びバリア性の観点から、50〜1μmが好ましい。より好ましい厚みは40〜500nm、更に好ましくは40〜300nmである。
【0052】
また、塗布された膜はアニールすることが好ましい。アニール温度は、好ましくは60℃〜200℃、さらに好ましくは70℃〜160℃である。アニール時間は、好ましくは5秒〜24時間程度、さらに好ましくは10秒〜2時間程度である。このような範囲でアニールを行うことにより、ポリシラザンの一部が反応して分子が固定化され、良好な特性を有する無機層が得られる。なお、アニールは、一定温度で行ってもよく、段階的に温度を変化させてもよく、連続的に温度を変化(昇温および/または降温)させてもよい。アニールの際には、反応を安定化するために湿度を調節することが好ましく、通常30%RHから90%RH、より好ましくは40%RHから80%RHである。
【0053】
(ポリシラザン含有液の塗布膜)
本発明に係る無機層は少なくとも1層(特に最表層)はポリシラザンを塗布し、酸化処理によって形成されることが好ましい。
【0054】
ポリシラザンの塗布法としては、任意の適切な方法が採用され得る。具体例としては、スピンコート法、ロールコート法、フローコート法、インクジェット法、スプレーコート法、プリント法、ディップコート法、流延成膜法、バーコート法、グラビア印刷法等が挙げられる。塗布膜厚としては、乾燥後の膜厚が10nm〜3μm程度であることが好ましい。また、第1のSiO(x>2)層上に積層された第1層目の無機層の膜厚は50nm〜1μm程度であることが好ましく、第2層目以上の無機層の膜厚としては第1のSiO(x>2)層上の第1層目の無機層より薄いことが好ましく、30nm〜500nm程度であることが好ましい。当該範囲であると、バリア性及び安定性が向上するためである。なお、本発明では、基板から数えて1番目の無機層を第1層目の無機層とし、以下順に基板から数えてn番目の無機層を第n層目の無機層とする。
【0055】
本発明で用いられる「ポリシラザン」とは、珪素−窒素結合を持つポリマーで、Si−N、Si−H、N−H等からなるSiO、Si及び両方の中間固溶体SiO等のセラミック前駆体無機ポリマーである。
【0056】
【化1】

【0057】
式中、R、R、及びRのそれぞれは、独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基、アルコキシ基などを表す。
【0058】
本発明では、得られるバリア膜としての緻密性の観点からは、R、R及びRのすべてが水素原子であるパーヒドロポリシラザンが特に好ましい。
【0059】
一方、そのSiと結合する水素部分が一部アルキル基等で置換されたオルガノポリシラザンは、メチル基等のアルキル基を有することにより下地基材との接着性が改善される。さらには、硬くてもろいポリシラザンによるセラミック膜に靭性を持たせることができ、より(平均)膜厚を厚くした場合でもクラックの発生が抑えられる利点があるため好ましい。用途に応じて適宜、これらパーヒドロポリシラザンとオルガノポリシラザンを選択してよく、混合して使用することもできる。
【0060】
パーヒドロポリシラザンは直鎖構造と6及び8員環を中心とする環構造が存在した構造と推定されている。その分子量は数平均分子量(Mn)で約600〜2000程度(ポリスチレン換算)であり、液体又は固体の物質であり、分子量により異なる。これらは有機溶媒に溶解した溶液状態で市販されており、市販品をそのままポリシラザン含有塗布液として使用することができる。
【0061】
低温でセラミック化するポリシラザンの別の例としては、上記化1のポリシラザンにケイ素アルコキシドを反応させて得られるケイ素アルコキシド付加ポリシラザン(特開平5−238827号公報)、グリシドールを反応させて得られるグリシドール付加ポリシラザン(特開平6−122852号公報)、アルコールを反応させて得られるアルコール付加ポリシラザン(特開平6−240208号公報)、金属カルボン酸塩を反応させて得られる金属カルボン酸塩付加ポリシラザン(特開平6−299118号公報)、金属を含むアセチルアセトナート錯体を反応させて得られるアセチルアセトナート錯体付加ポリシラザン(特開平6−306329号公報)、金属微粒子を添加して得られる金属微粒子添加ポリシラザン(特開平7−196986号公報)等が挙げられる。
【0062】
ポリシラザンを含有する液体を調製する有機溶媒としては、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、脂肪族エーテル、脂環式エーテル等のエーテル類が使用できる。具体的には、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、ソルベッソ、ターベン等の炭化水素、塩化メチレン、トリコロロエタン等のハロゲン炭化水素、ジブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類等がある。これらの溶剤は、ポリシラザンの溶解度や溶剤の蒸発速度、等目的にあわせて選択し、複数の溶剤を混合しても良い。
【0063】
ポリシラザン含有塗布液中のポリシラザン濃度は目的とするシリカ膜厚や塗布液のポットライフによっても異なるが、0.2〜35質量%程度である。
【0064】
ポリシラザンは、そのSiと結合する水素部分が一部アルキル基等で置換された誘導体であってもよい。アルキル基、特に最も分子量の少ないメチル基を有することにより下地基材との接着性が改善され、かつ硬くてもろいシリカ膜に靭性を持たせることができ、より膜厚を厚くした場合でもクラックの発生が抑えられる。
【0065】
酸化珪素化合物への転化を促進するために、アミンや金属の触媒を添加することもできる。具体的には、AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製 アクアミカ NAX120−20、NN110、NN310、NN320、NL110A、NL120A、NL150A、NP110、NP140、SP140などが挙げられる。
【0066】
(酸化処理)
ポリシラザンの酸化処理としては、水蒸気酸化及び/又は加熱処理(乾燥処理を含む)、紫外線照射による処理等が知られている。その中でもよりフォトンエネルギーが大きい180nm以下の波長成分を有する真空紫外線照射によって処理することが好ましい。該真空紫外線照射により、バリア性が高くなるためである。
【0067】
(180nm以下の波長成分を有する真空紫外線照射による処理)
本発明において、好ましい方法として、真空紫外線照射による処理が挙げられる。真空紫外線照射による処理は、化合物内の原子間結合力より大きい100〜200nmの光エネルギーを用いる。そして、原子の結合を光量子プロセスと呼ばれる光子のみによる作用により、直接切断しながら活性酸素やオゾンによる酸化反応を進行させることで、比較的低温で、膜の形成をおこなう方法である。
【0068】
特にポリシラザン膜の処理において、単層を塗布してからエキシマ照射処理を行うと連続する2層以上の改質層ができる場合がある(これを本発明者らはSiO(x>2)層+無機層とする)。その場合にはエキシマ照射処理時間を変えることでSiO(x>2)層の膜厚を制御できる。機構は明確にはなっていないが、本発明者らは光エネルギーによるシラザン化合物の直接切断と、気相で生成する活性酸素やオゾンによる表面酸化反応が同時に進行し、また有機層上の水分等によりそのような状態になると推定している。
【0069】
真空紫外線照射に必要な真空紫外光源としては、希ガスエキシマランプが好ましく用いられる。
【0070】
Xe、Kr、Ar、Neなどの希ガスの原子は化学的に結合して分子を作らないため、不活性ガスと呼ばれる。しかし、放電などによりエネルギーを得た希ガスの原子(励起原子)は他の原子と結合して分子を作ることができる。希ガスがキセノンの場合には、
e+Xe→Xe
Xe+2Xe→Xe+Xe
となり、励起されたエキシマ分子であるXeが基底状態に遷移するときに172nmのエキシマ光を発光する。エキシマランプの特徴としては、放射が一つの波長に集中し、必要な光以外がほとんど放射されないので効率が高いことが挙げられる。
【0071】
Xeエキシマランプは波長の短い172nmの紫外線を単一波長で放射することから発光効率に優れている。この光は、酸素の吸収係数が大きいため、微量な酸素でラジカルな酸素原子種やオゾンを高濃度で発生することができる。また、有機物の結合を解離させる波長の短い172nmの光のエネルギーは能力が高いことが知られている。この活性酸素やオゾンと紫外線放射が持つ高いエネルギーによって、短時間でポリシラザン膜の改質を実現できる。したがって、波長185nm、254nmの発する低圧水銀ランプやプラズマ洗浄と比べて高スループットに伴うプロセス時間の短縮や設備面積の縮小、熱によるダメージを受けやすい有機材料やプラスチック基板などへの照射を可能としている。
【0072】
本発明者らの検討によれば、エキシマ照射処理時の環境としては酸素濃度が0.001〜5%であると好ましい。さらには0.01〜3%であると性能が安定して好ましい。該範囲であれば、生産性が向上し、さらには酸化処理が十分になるためである。また、ステージ温度については熱をかけるとより反応が進み好ましい。その場合の温度は50℃以上、基材のTg以下の温度が基材を痛めずに反応性が良好になるために好ましい。
【0073】
(有機層)
本発明に係る有機層は、バリアフィルムの曲げに対する応力を緩和する目的のほかに、突起等が存在する透明樹脂基材の粗面を平坦化し、あるいは、透明樹脂基材に存在する突起により透明無機化合物層に生じた凹凸やピンホールを埋めて平坦化するために設けられる。このような有機層は、たとえば感光性樹脂を含有する組成物を塗布乾燥後、硬化させて形成されることが好ましい。有機層を構成する成分の基本骨格は、炭素、水素、酸素、窒素、硫黄等を含有するものである。
【0074】
有機層の感光性樹脂としては、例えば、ラジカル反応性不飽和化合物を有するアクリレート化合物を含有する樹脂組成物、アクリレート化合物とチオール基を有するメルカプト化合物を含有する樹脂組成物、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、グリセロールメタクリレート等の多官能アクリレートモノマーを溶解させた樹脂組成物等が挙げられる。また、上記のような樹脂組成物の任意の混合物を使用することも可能であり、光重合性不飽和結合を分子内に1個以上有する反応性のモノマーを含有している感光性樹脂であれば特に制限はない。
【0075】
感光性樹脂の組成物は光重合開始剤を含有する。光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4−ビス(ジメチルアミン)ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミン)ベンゾフェノン、α−アミノ・アセトフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4−メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、p−tert−ブチルジクロロアセトフェノン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、ベンジルメトキシエチルアセタール、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、β−クロルアントラキノン、アントロン、ベンズアントロン、ジベンズスベロン、メチレンアントロン、4−アジドベンジルアセトフェノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)シクロヘキサン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン、2−フェニル−1,2−ブタジオン−2−(o−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1,3−ジフェニル−プロパントリオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−3−エトキシ−プロパントリオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム、ミヒラーケトン、2−メチル[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モノフォリノ−1−プロパン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モノフォリノフェニル)−ブタノン−1、ナフタレンスルホニルクロライド、キノリンスルホニルクロライド、n−フェニルチオアクリドン、4,4−アゾビスイソブチロニトリル、ジフェニルジスルフィド、ベンズチアゾールジスルフィド、トリフェニルホスフィン、カンファーキノン、四臭素化炭素、トリブロモフェニルスルホン、過酸化ベンゾイン、エオシン、メチレンブルー等の光還元性の色素とアスコルビン酸、トリエタノールアミン等の還元剤の組み合わせ等が挙げられる。また、これらの光重合開始剤を1種または2種以上の組み合わせで使用することができる。
【0076】
有機層の形成方法は特に制限はないが、スピンコーティング法、スプレー法、ブレードコーティング法、ディップ法等のウエットコーティング法により形成することが好ましい。
【0077】
有機層の形成では、上述の感光性樹脂に、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤等の添加剤を加えることができる。また、有機層の積層位置に関係なく、いずれの有機層においても、製膜性向上および膜のピンホール発生防止等のために適切な樹脂や添加剤を使用してもよい。
【0078】
感光性樹脂を溶媒に溶解または分散させた塗布液を用いて有機層を形成する際に使用する溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類、α−もしくはβ−テルピネオール等のテルペン類等、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、N−メチル−2−ピロリドン、ジエチルケトン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン等のケトン類、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、セロソルブ、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、2−メトキシエチルアセテート、シクロヘキシルアセテート、2−エトキシエチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等の酢酸エステル類、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、ジプロピレングリコールジアルキルエーテル、3−エトキシプロピオン酸エチル、安息香酸メチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等を挙げることができる。
【0079】
有機層の平滑性のため、JIS B 0601で規定される表面粗さで表現される値で、最大断面高さRt(p)が、30nm以下であることが好ましい。最大断面高さRt(p)は、例えばAFM(原子間力顕微鏡)で測定することができる。具体的には、AFMにより極小の先端半径の触針を持つ検出器で連続測定した凹凸の断面曲線から算出され、極小の先端半径の触針により測定方向が30μmの区間内を多数回測定し、微細な凹凸の振幅に関する平均の粗さを測定し、最大断面高さを測定することができる。
【0080】
本発明における有機層の厚みとしては、1〜10μm、好ましくは2〜7μmであることが望ましい。1μm以上にすることにより、有機層を有するフィルムとしての平滑性を十分なものにし易くなり、10μm以下にすることにより、フィルムの光学特性のバランスを調整し易くなる。
【0081】
(樹脂基材)
本発明で用いられる樹脂基材としてはロール状に巻き取りが可能な可撓性のある樹脂製のシートやフィルムが好適である。樹脂基材に用いられる樹脂としては、例えば塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニルとビニルアルコールの共重合体、部分加水分解した塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、塩素化ポリ塩化ビニル、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体または共重合体、ニトロセルロース、セルロースアセテートプロピオネート(好ましくはアセチル基置換度1.8〜2.3、プロピオニル基置換度0.1〜1.0)、ジアセチルセルロース、セルロースアセテートブチレート樹脂等のセルロース誘導体、マレイン酸及び/またはアクリル酸の共重合体、アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、塩素化ポリエチレン、アクリロニトリル−塩素化ポリエチレン−スチレン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステルポリウレタン樹脂、ポリエーテルポリウレタン樹脂、ポリカーボネートポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、アミノ樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、ブタジエン−アクリロニトリル樹脂等のゴム系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。樹脂基材の厚みとしては50〜300μm、好ましくは70〜180μmである。
【0082】
(有機電子デバイスの構成)
本発明の有機電子デバイスの基本的構成の態様例を図1に示す。当該図1に示されているように、本発明の有機電子デバイスは、基本的構成要素として、基板(10)上に対向する第1電極(11)と第2電極(12)を有し、第1電極(11)と第2電極(12)電極間に少なくとも1層の有機機能層(13)を有する。
【0083】
有機機能層(13)としては、有機発光層、有機光電変換層、液晶ポリマー層など特に限定無く挙げることができるが、本発明は、機能層が薄膜でかつ電流駆動系のデバイスである有機発光層、有機光電変換層である場合において、特に有効である。更に、デバイスの中でも最もバリア性が必要である有機発光層を用いた有機EL素子に本発明のバリア性フィルムは適している。
【0084】
(封止)
本発明のバリア性フィルムを、有機電子デバイスとして適用する場合について説明する。
【0085】
まず、本発明のバリア性フィルムの第2無機層の上に、例えば、有機EL素子の場合、陽極層/正孔注入・輸送層/発光層/電子注入・輸送層/陰極層等、各種の有機化合物からなる機能層を作製する。得られた有機EL素子の全体若しくは上部を封止する。
【0086】
封止部材としては、本発明のバリア性フィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ナイロン、ポリ塩化ビニル等のプラスチック、およびこれらの複合物、ガラス等が挙げられ、必要に応じて、特に樹脂フィルムの場合には、樹脂基板と同様、アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、窒化ケイ素等のガスバリア層を積層したものを用いることができる。ガスバリア層は、封止部材成形前に封止部材の両面若しくは片面にスパッタリング、蒸着等により形成することもできるし、封止後に封止部材の両面若しくは片面に同様な方法で形成してもよい。これについても、酸素透過率が1×10−3cm/(m・24h・atm)以下、水蒸気透過率(25±0.5℃、相対湿度(90±2)%RH)が、1×10−3g/(m・24h)以下のものであることが好ましい。
【実施例】
【0087】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されない。また、実施例に用いられる化合物の構造を以下に示す。
【0088】
【化2】

【0089】
【化3】

【0090】
《実施例1》
〈バリア性フィルム1の作製〉
(樹脂基材)
樹脂基材として、両面に易接着加工された125μmの厚さのポリエステルフィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製、テトロンO3(商品名))の基板を、170℃で30分アニール加熱処理したものを用いた。
【0091】
(有機層の形成)
上記樹脂基材上に、JSR株式会社製 UV硬化型有機/無機ハイブリッドハードコート材 OPSTAR Z7501を塗布、乾燥後の(平均)膜厚が4μmになるようにワイヤーバーで塗布した。その後、乾燥条件;80℃、3分で乾燥して、空気雰囲気下、高圧水銀ランプ使用、硬化条件;1.0J/cm硬化を行い、平滑層を形成した。
【0092】
このときの最大断面高さRt(p)は16nmであった。
【0093】
表面粗さの指標である最大断面高さRt(p)を、AFM(原子間力顕微鏡)を用いて極小の先端半径の触針により測定方向が30μmの区間内を30回測定して、算出した。
【0094】
(第1のSiO(x>2)層の形成)
上記有機層上に、低温硬化性触媒を含有するペルヒドロポリシラザン(PHPS)のジブチルエーテル溶液(固形分量20質量%、AZエレクトロニックマテリアルズ社製、商品名:アクアミカNAX120)をスピンコート塗布方式で140nmとなるように塗布、乾燥し、60℃90%で1時間保存して第1のSiO(x>2)層を形成した。
【0095】
スパッタXPSで観察したところSiO(x=2.1〜2.3)であった。
【0096】
(無機層)
上記第1のSiO(x>2)層上に触媒を含有しないペルヒドロポリシラザン(PHPS)のジブチルエーテル溶液(固形分量20質量%、AZエレクトロニックマテリアルズ社製、商品名:アクアミカNN320)を乾燥後の第1層目の膜厚が200nm、第2層目の膜厚が100nmとなる様に2層スピンコート塗布方式で塗布、乾燥し、下記の真空紫外線処理装置及び条件を用いて酸化処理を行った。
【0097】
スパッタXPSで組成を確認したところ、
第2層目 最表面はSiO(x=2.15)の膜厚が5nmであり、それ以外の部分はSiO(x=0.2〜1、y=0.3〜0.7)であった。
【0098】
第1層目 SiO(x=0.9〜1.7、y=0〜0.6)であった。
【0099】
(真空紫外線処理装置)
株式会社エム・ディ・コム製エキシマ照射装置、波長172nm、ランプ封入ガスXe 稼動ステージ上に固定した試料を以下の条件で改質処理を行った。
【0100】
(条件)
エキシマ光強度 60mW/cm(172nm)
試料と光源の距離 5mm
照射装置内の酸素濃度 0.5%
エキシマ照射時間 30秒
《実施例2、3》
〈バリア性フィルム2、3の作製〉
第1のSiO(x>2)層を形成する際に、表1に記載の膜厚になるようにした以外は実施例1と同様にしてバリア性フィルム2、3を作製した。
【0101】
《実施例4》
〈バリア性フィルム4の作製〉
実施例3のバリア性フィルムを60℃、RH90%の条件下に3時間保存することにより、実施例4のバリア性フィルムを作製した。最表面側のSiO(x>2)の層が20nmとなっていた。
【0102】
《実施例5》
〈バリア性フィルム5の作製〉
実施例3において第1層目の無機層を形成する際に、アミン触媒を含有したペルヒドロポリシラザンのジブチルエーテル溶液(固形分量20質量%、AZエレクトロニックマテリアルズ社製、商品名:アクアミカNAX120)に変更し、常温で1日保存して層にした以外は、実施例3と同様にしてバリア性フィルム5を作製した。第1層目はSiO層となり、x=1.98であった。
【0103】
《実施例6》
〈バリア性フィルム6の作製〉
実施例5において第2層目の無機層の真空紫外線処理時の酸素濃度を10%にした以外は実施例5と同様にしてバリア性フィルム6を作製した。第2層目はSiO層となり、x=1.97であった。
【0104】
《実施例7》
〈バリア性フィルム7の作製〉
実施例6において第2層目の無機層の酸化処理を真空紫外線処理ではなく、UVオゾン処理法で1時間処理した以外は実施例6と同様にしてバリア性フィルム7を作製した。第2層目はSiO層となり、x=1.96であった。
【0105】
《実施例8》
〈バリア性フィルム8の作製〉
実施例5のバリア性フィルム上に、さらに触媒を含有しないペルヒドロポリシラザン(PHPS)のジブチルエーテル溶液(固形分量20質量%、AZエレクトロニックマテリアルズ社製、商品名:アクアミカNN320)を膜厚50nmとなるように塗布し、真空紫外線処理装置を用いて酸化処理を行い、バリア性フィルム8を作製した。
【0106】
(条件)
エキシマ光強度 60mW/cm(172nm)
試料と光源の距離 5mm
照射装置内の酸素濃度 0.5%
エキシマ照射時間 30秒
第3層 最表面はSiO(x=2.15)の膜厚が5nmであった。
【0107】
それ以外の部分はSiO(x=0.2〜1、y=0.3〜0.7)であった。
【0108】
《実施例9》
〈バリア性フィルム9の作製〉
実施例3の第2層目の無機層を反応性イオンプレーティング法により酸化窒化ケイ素層(酸化窒化珪素膜)を形成した以外は同様にしてバリア性フィルム9を作製した。第2層目はSiO層となった。
【0109】
《実施例10》
〈バリア性フィルム10の作製〉
実施例6の有機層上の第1のSiO(x>2)層をアミン触媒を含有したペルヒドロポリシラザンのキシレン溶液(固形分量20質量%、AZエレクトロニックマテリアルズ社製、商品名:アクアミカNAX120)を膜厚が250nmとなるように塗布・乾燥し、60℃RH90%の条件下で3日間処理してバリア性フィルム10を作製した。上記の層をスパッタXPSで確認したところ、SiO(x=2.2)の層となっていた。その他は実施例6と同様にしてバリア性フィルム10を作製した。
【0110】
《実施例11》
〈バリア性フィルム11の作製〉
実施例1と同様にして、有機層上に第1のSiO(x>2)の層を形成した後、実施例10に記載の第1層目の無機層を形成させてバリア性フィルム11を作製した。
【0111】
《実施例12》
実施例1の有機層上の第1のSiO(x>2)層を用い、実施例9の第2層目の作製方法を用いて第1層目の無機層を形成させて、バリア性フィルム12を作製した。
【0112】
(評価方法)
(水蒸気透過率の評価)
以下の測定方法により評価した。
【0113】
蒸着装置:日本電子(株)製真空蒸着装置JEE−400
恒温恒湿度オーブン:Yamato Humidic ChamberIG47M
水分と反応して腐食する金属:カルシウム(粒状)
水蒸気不透過性の金属:アルミニウム(φ3〜5mm、粒状)
水蒸気バリア性評価用セルの作製
バリア性フィルムの無機層面に、真空蒸着装置(日本電子製真空蒸着装置JEE−400)を用い、透明導電膜を付ける前のバリアフィルム試料の蒸着させたい部分(12mm×12mmを9箇所)以外をマスクし、金属カルシウムを蒸着させた。その後、真空状態のままマスクを取り去り、シート片側全面にアルミニウムをもう一つの金属蒸着源から蒸着させた。アルミニウム封止後、真空状態を解除し、速やかに乾燥窒素ガス雰囲気下で、厚さ0.2mmの石英ガラスに封止用紫外線硬化樹脂(ナガセケムテックス製)を介してアルミニウム封止側と対面させ、紫外線を照射することで、評価用セルを作製した。また、屈曲前後のガスバリア性の変化を確認するために、上記屈曲の処理を行わなかったバリアフィルムについても同様に、水蒸気バリア性評価用セルを作製した。
【0114】
得られた両面を封止した試料を60℃、90%RHの高温高湿下で保存し、特開2005−283561号公報に記載の方法に基づき、金属カルシウムの腐食量からセル内に透過した水分量を計算した。
【0115】
なお、バリアフィルム面から以外の水蒸気の透過が無いことを確認するために、比較試料としてバリアフィルム試料の代わりに、厚さ0.2mmの石英ガラス板を用いて金属カルシウムを蒸着した試料を、同様な60℃、90%RHの高温高湿下保存を行い、1000時間経過後でも金属カルシウム腐食が発生しないことを確認した。
【0116】
得られた水分量から以下の5段階に分類した。
【0117】
5:1×10−4g/m/day未満
4:1×10−4g/m/day以上、5×10−4g/m/day未満
3:5×10−4g/m/day以上、1×10−3g/m/day未満
2:1×10−3g/m/day以上、1×10−2g/m/day未満
1:1×10−2g/m/day以上
(平滑性(表面粗さ))
表面粗さの指標である最大断面高さRt(p)は、AFM(原子間力顕微鏡;Digital Instruments社製DI3100)で、極小の先端半径の触針を持つ検出器で連続測定した凹凸の断面曲線から算出され、極小の先端半径の触針により測定方向が30μmの区間内を30回測定し、微細な凹凸の振幅に関する平均の粗さから求めた。
【0118】
○:5nm未満
△:5nm以上10nm未満
×:10nm以上
(折り曲げ後のバリア性(屈曲耐性))
半径10mmの曲率になるように、180度の角度で100回の屈曲を繰り返した試料の水蒸気透過率の評価を行い、屈曲をしなかった試料からの劣化度合いを評価した。
【0119】
屈曲試験後の水蒸気透過度/屈曲なしの水蒸気透過度(%)
◎:90%以上
○:80%以上90%未満
△:60%以上80%未満
×:60%未満
【0120】
【表1】

【0121】
実施例2
《有機電子デバイス(有機EL素子)101の作製》
〈第1電極層の形成〉
実施例1で作製したバリア性フィルム1の無機層の上に厚さ120nmのITO(インジウムチンオキシド)をスパッタ法により成膜し、フォトリソグラフィー法によりパターニングを行い、第1電極層を形成した。なお、パターンは発光面積が50mm平方になるようなパターンとした。
【0122】
〈正孔輸送層の形成〉
第1電極層が形成されたバリア性フィルム1の第1電極層の上に、以下に示す正孔輸送層形成用塗布液を押出し塗布機で塗布した後、乾燥し正孔輸送層を形成した。正孔輸送層形成用塗布液は乾燥後の厚みが50nmになるように塗布した。
【0123】
正孔輸送層形成用塗布液を塗布する前に、バリア性フィルム1の洗浄表面改質処理を、波長184.9nmの低圧水銀ランプを使用し、照射強度15mW/cm、距離10mmで実施した。帯電除去処理は、微弱X線による除電器を使用し行った。
【0124】
(塗布条件)
塗布工程は大気中、25℃相対湿度50%の環境で行った。
【0125】
(正孔輸送層形成用塗布液の準備)
ポリエチレンジオキシチオフェン・ポリスチレンスルホネート(PEDOT/PSS、Bayer社製 Bytron P AI 4083)を純水で65%、メタノール5%で希釈した溶液を正孔輸送層形成用塗布液として準備した。
【0126】
(乾燥及び加熱処理条件)
正孔輸送層形成用塗布液を塗布した後、製膜面に向け高さ100mm、吐出風速1m/s、幅手の風速分布5%、温度100℃で溶媒を除去した後、引き続き、加熱処理装置を用い温度150℃で裏面伝熱方式の熱処理を行い、正孔輸送層を形成した。
【0127】
〈発光層の形成〉
引き続き、正孔輸送層迄を形成したバリア性フィルム1の正孔輸送層の上に、以下に示す白色発光層形成用塗布液を押出し塗布機で塗布した後、乾燥し発光層を形成した。白色発光層形成用塗布液は乾燥後の厚みが40nmになるように塗布した。
【0128】
(白色発光層形成用塗布液)
ホスト材のH−Aを1.0gと、ドーパント材D−Aを100mg、ドーパント材D−Bを0.2mg、ドーパント材D−Cを0.2mg、100gのトルエンに溶解し白色発光層形成用塗布液として準備した。
【0129】
(塗布条件)
塗布工程を窒素ガス濃度99%以上の雰囲気で、塗布温度を25℃とし、塗布速度1m/minで行った。
【0130】
(乾燥及び加熱処理条件)
白色発光層形成用塗布液を塗布した後、製膜面に向け高さ100mm、吐出風速1m/s、幅手の風速分布5%、温度60℃で溶媒を除去した後、引き続き、温度130℃で加熱処理を行い、発光層を形成した。
【0131】
〈電子輸送層の形成〉
引き続き、発光層迄を形成したのち、以下に示す電子輸送層形成用塗布液を押出し塗布機で塗布した後、乾燥し電子輸送層を形成した。電子輸送層形成用塗布液は乾燥後の厚みが30nmになるように塗布した。
【0132】
(塗布条件)
塗布工程は窒素ガス濃度99%以上の雰囲気で、電子輸送層形成用塗布液の塗布温度を25℃とし、塗布速度1m/minで行った。
【0133】
(電子輸送層形成用塗布液)
電子輸送層はE−Aを2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール中に溶解し0.5質量%溶液とし電子輸送層形成用塗布液とした。
【0134】
(乾燥及び加熱処理条件)
電子輸送層形成用塗布液を塗布した後、製膜面に向け高さ100mm、吐出風速1m/s、幅手の風速分布5%、温度60℃で溶媒を除去した後、引き続き、加熱処理部で温度200℃で加熱処理を行い、電子輸送層を形成した。
【0135】
(電子注入層の形成)
引き続き、形成された電子輸送層の上に電子注入層を形成した。まず、基板を減圧チャンバーに投入し、5×10−4Paまで減圧した。あらかじめ、真空チャンバーにタンタル製蒸着ボートに用意しておいたフッ化セシウムを加熱し、厚さ3nmの電子注入層を形成した。
【0136】
(第2電極の形成)
引き続き、形成された電子注入層の上に第1電極の上に取り出し電極になる部分を除き、形成された電子注入層の上に5×10−4Paの真空下にて第2電極形成材料としてアルミニウムを使用し、取り出し電極を有するように蒸着法にて、発光面積が50mm平方になるようにマスクパターン成膜し、厚さ100nmの第2電極を積層した。
【0137】
(裁断)
第2電極まで形成したバリア性フィルム1を、再び窒素雰囲気に移動し、規定の大きさに裁断し、有機EL素子を作製した。
【0138】
(電極リード接続)
作製した有機EL素子に、ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社製異方性導電フィルムDP3232S9を用いて、フレキシブルプリント基板(ベースフィルム:ポリイミド12.5μm圧延銅箔18μm、カバーレイ:ポリイミド12.5μm、表面処理NiAuメッキ)を接続した。
【0139】
圧着条件:温度170℃(別途熱伝対を用いて測定したACF温度140℃)、圧力2MPa、10秒で圧着を行った。
【0140】
(封止)
電極リード(フレキシブルプリント基板)を接続した有機EL素子を、市販のロールラミネート装置を用いて封止部材を接着し、有機EL素子101を製作した。
【0141】
なお、封止部材として、30μm厚のアルミニウム箔(東洋アルミニウム株式会社製)に、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(12μm厚)をドライラミネーション用の接着剤(2液反応型のウレタン系接着剤)を用いラミネートした(接着剤層の厚み1.5μm)ものを用いた。
【0142】
アルミニウム面に熱硬化性接着剤を、ディスペンサを使用してアルミ箔の接着面(つや面)に沿って厚み20μmで均一に塗布した。
【0143】
熱硬化接着剤としては以下のエポキシ系接着剤を用いた。
【0144】
ビスフェノールAジグリシジルエーテル(DGEBA)
ジシアンジアミド(DICY)
エポキシアダクト系硬化促進剤
しかる後、封止基板を、取り出し電極および電極リードの接合部を覆うようにして密着・配置して、圧着ロールを用いて圧着条件、圧着ロール温度120℃、圧力0.5MPa、装置速度0.3m/minで密着封止した。
【0145】
《有機EL素子102〜111の作製》
有機EL素子101の作製において、バリア性フィルム1の代わりにバリア性フィルム2〜11を用いて、有機EL素子102〜111を作製した。
【0146】
《有機EL素子の評価》
得られた有機EL素子101〜111を、60℃90%RHに300時間保管し保管前の状態と比較を行った。
【0147】
(黒点の評価方法)
試料に1mA/cmの電流を印加し発光させ、100倍のマイクロスコープ(株式会社モリテックス製MS−804、レンズMP−ZE25−200)でパネルの一部分を拡大し、撮影を行った。撮影画像を2mm四方に切り抜き、目視で観察を行い、黒点の状況を調べた。
【0148】
A:0時間から300時間まで、劣化が認められない
B:0時間から300時間まで、わずかに劣化が認められる
C:0時間から300時間まで、劣化が認められるが実用上問題ないレベル
D:0時間から300時間まで、大きく劣化が認められ実用上問題のあるレベル。
【0149】
(高温高湿保存性)
各有機EL素子を、60℃、相対湿度90%の環境下に300時間の保存を行った後、各有機EL素子に2.5mA/cmの一定電流で駆動させた時の発光輝度の変化の測定を行い、未処理の各有機EL素子の各特性と比較し、下記の基準に従って高温高湿保存性の評価を行った。測定には、駆動電源として株式会社エーディーシー製電圧/電流発生・測定器R6243、輝度測定器としてコニカミノルタセンシング社製、分光放射輝度計CS−2000を用いた。
【0150】
A:未処理品に対し、電流密度一定時の輝度変動が5%未満である
B:未処理品に対し、電流密度一定時の輝度変動が5%以上、10%未満である
C:未処理品に対し、電流密度一定時の輝度変動が10%以上である
【0151】
【表2】

【0152】
表2より、バリア性が高いフィルムを用いた場合には、比較例よりもダークスポットが少なく、輝度変動も小さいことがわかった。
【符号の説明】
【0153】
10 基板
11 第1電極
12 第2電極
13 有機機能層
20 樹脂基材
21 有機層
22 第1のSiO(x>2)層
23 無機層
24 第2のSiO(x>2)層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂基材上に少なくとも1層の有機層を有するバリア性フィルムにおいて、該有機層上に厚み5〜150nmの第1のSiO(x>2)層が積層され、該SiO(x>2)層上にケイ素原子及び酸素原子を含有する無機層を少なくとも2層以上有することを特徴とするバリア性フィルム。
【請求項2】
前記無機層の最表層側にも厚み1〜10nmの第2のSiO(x>2)層が積層していることを特徴とする請求項1記載のバリア性フィルム。
【請求項3】
前記無機層のうち少なくとも1層が窒素原子を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載のバリア性フィルム。
【請求項4】
前記第1のSiO(x>2)層が5〜100nm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のバリア性フィルム。
【請求項5】
前記第1のSiO(x>2)層が5〜50nm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のバリア性フィルム。
【請求項6】
前記無機層のうち少なくとも1層がポリシラザンを塗布することによって得られており、少なくとも前記無機層のうち最上層の無機層は塗布後に酸化処理が行われていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のバリア性フィルム。
【請求項7】
前記酸化処理が、180nm以下の波長成分を有する真空紫外線を照射する処理であることを特徴とする請求項6記載のバリア性フィルム。
【請求項8】
前記真空紫外線を照射する処理が、酸素濃度0.001〜5%の雰囲気下で行われることを特徴とする請求項7記載のバリア性フィルム。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のバリア性フィルムを用いたことを特徴とする有機電子デバイス。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−76403(P2012−76403A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−225453(P2010−225453)
【出願日】平成22年10月5日(2010.10.5)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】