説明

バリア素子及び3D表示装置

【課題】2D表示時には高輝度且つ色味変化のない白表示を可能とし、且つ3D表示時にはクロストークの軽減を可能にするバリア素子の提供。
【解決手段】画像表示素子の前面又は背面に配置される、透光部及び遮光部からなるバリアパターンを形成可能なバリア素子(2)であって、第1の偏光制御素子(6)と、液晶セル(5)と、前記第1の偏光制御素子と該液晶セルの一方の表面との間、及び前記液晶セルの他方の表面上の少なくとも一方に配置される、波長550nmの面内レターデーションRe(550)が−30〜100nmで、且つ波長550nmの厚み方向レターデーションRth(550)が−15〜180nmである位相差フィルム(7,8)とを少なくとも有するバリア素子である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バリア素子及び3D表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
立体(3D)表示方法には従来からさまざまな方式が提案されており、その一つにメガネが不要の方式が提案されている。
メガネが不要の方式の一つとして、パララックスバリア方式があり、この方式では、表示装置の視認側に観察者の位置や視差に応じた白黒ストライプを有するバリア層を貼合し、左目と右目に違う画像を認識させることで3D表示を得る方式である(例えば特許文献1)。
この方式による3D表示装置は、裸眼で3D表示を見ることができるというメリットがあるが、この方式で2D表示を見ようとすると、貼合した白黒ストライプにより輝度が低下してしまい、これを解決することが望まれている。これを解決するため、液晶セルを利用したバリア素子が提案され、3D表示時には、液晶セルによってバリアストライプ像を表示させ、2D表示時にはストライプ像を消去して、高い透過率で表示することが提案されている(例えば特許文献2及び3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−295115号公報
【特許文献2】特開平05−122733号公報
【特許文献3】特開2005−91834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した通り、2D表示の際の輝度の低下は、バリア素子に液晶セルを利用することで解決できるが、正面及び斜め方向において優れた(例えばクロストークの無い)3D表示品位を達成するためには、バリア素子に利用している液晶セルを光学補償する必要がある。しかし、本発明者が検討した結果、液晶セルの光学補償のためにバリア素子に位相差フィルムを配置すると、2D表示時の白表示において色味変化が生じることがわかった。
本発明は、これらの問題を解決すること、具体的には、2D表示時の輝度低下及び白表示における色味変化を生じさせることなく、3D表示特性を改善することを課題とする。
即ち、本発明は、2D表示時には高輝度且つ色味変化のない白表示を可能とし、且つ3D表示時にはクロストークの軽減を可能にする、バリア素子及びそれを用いた3D表示装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記問題を解決するため本発明者が鋭意検討した結果、液晶セルを有するバリア素子にRe及びRthが所定の範囲の位相差フィルムを配置することで、2D表示時の白表示に色味変化を生じさせることなく、3D表示時のクロストークを軽減できるとの知見を得、この知見に基づきさらに検討を重ね、本発明を完成するに至った。従来の2D表示用液晶セルでは、位相差フィルムは、主には、黒表示時の表示特性の改善を目的として配置されるものであり、その目的を達成するためにRe及びRthの最適化が検討されている。本発明では、位相差フィルムは、2D表示時の白表示の色味変化の軽減、及び3D表示時のクロストークの軽減の両立を目的として配置されるものであり、位相差フィルムを配置することによって得られる効果は、従来の2D表示用液晶表示装置とは全く異なる。
【0006】
前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
[1] 画像表示素子の前面又は背面に配置される、透光部及び遮光部からなるバリアパターンを形成可能なバリア素子であって、
第1の偏光制御素子と、
液晶セルと、
前記第1の偏光制御素子と該液晶セルの一方の表面との間、及び前記液晶セルの他方の表面上の少なくとも一方に配置される、波長550nmの面内レターデーションRe(550)が−30〜100nmで、且つ波長550nmの厚み方向レターデーションRth(550)が−15〜180nmである位相差フィルムと、
を少なくとも有するバリア素子。
[2] 前記位相差フィルムの波長550nmの厚み方向レターデーションRth(550)が30〜180nmである[1]のバリア素子。
[3] 前記位相差フィルムの波長550nmの厚み方向レターデーションRth(550)が−15〜30nmであり、前記位相差フィルム上に液晶性化合物を含有する組成物から形成された光学異方性層を有し、かつ、前記光学異方性層の面内レターデーションRe(550)が、20nm以上である[1]のバリア素子。
[4] 前記第1の偏光制御素子が、吸収型偏光子であり、且つ該吸収型偏光子の吸収軸と前記位相差フィルムの面内遅相軸との角度が、直交又は平行である[1]〜[3]のいずれかのバリア素子。
[5] 前記吸収型偏光子の吸収軸が、表示面水平方向を0°とした場合に、0°又は90°の方向である[4]のバリア素子。
[6] 前記第1の偏光制御素子が、反射型偏光子又は異方性散乱型偏光子である[1]〜[5]のいずれかのバリア素子。
[7] 前記第1の偏光制御素子とともに前記液晶セルを挟んで配置される第2の偏光制御素子をさらに有し、第1及び第2の偏光制御素子の組み合わせが、二つの吸収型偏光子の組み合わせ、又は一つの吸収型偏光子と一つの反射型偏光子又は異方性散乱型偏光子との組み合わせである[1]〜[6]のいずれかのバリア素子。
[8] 前記位相差フィルムが、前記少なくとも一つの偏光制御素子と該液晶セルの一方の表面との間、及び前記液晶セルの他方の表面上の双方にそれぞれ配置されている[1]〜[7]のいずれかのバリア素子。
[9] 前記位相差フィルムが、互いの遅相軸を直交にして配置されている[7]又は[8]のバリア素子。
[10] 前記位相差フィルム上に液晶性化合物を含有する組成物から形成された光学異方性層を有する[1]、[2]、[4]〜[9]のいずれかのバリア素子。
[11] 前記位相差フィルム上に主軸が厚み方向において傾斜した光学異方性層を有する[1]〜[10]のいずれかのバリア素子。
[12] 前記光学異方性層が、波長550nmにおいて、3≦R[+40°]/R[−40°]を満足する[3]〜[11]のいずれかのバリア素子;
ここで、位相差フィルムの遅相軸に直交した法線を含む面内(入射面)において、R[+40°]は前記法線からフィルム面方向に40°傾いた方向から測定したレターデーションであり、R[−40°]は前記法線から逆に40°傾斜した方向から測定したレターデーションである(但し、R[−40°]<R[+40°]とする)。
[13] 前記光学異方性層が、波長550nmにおいて、20nm≦Re(550)≦58nmである[3]〜[12]のいずれかのバリア素子。
[14] 前記液晶性化合物は、ディスコティック液晶性化合物である[3]〜[13]のいずれかのバリア素子。
[15] 前記位相差フィルムが、セルロースアシレートフィルムである[1]〜[14]のいずれかのバリア素子。
[16] 前記位相差フィルムが、光学的に二軸性のポリマーフィルムである[1]〜[15]のいずれかのバリア素子。
[17] 前記液晶セルが、TNモードである[1]〜[16]のいずれかのバリア素子。
[18] [1]〜[17]のいずれかのバリア素子と、画像表示素子とを含む3D表示装置。
[19] 前記画像表示素子が、一対の第3及び第4の偏光制御素子と、その間に配置される液晶セルとを少なくとも有する[18]の3D表示装置。
[20] 前記バリア素子が有する第1の偏光制御素子の透過率が、前記画像表示素子が有する第3及び第4の偏光制御素子の透過率より高い[19]の3D表示装置。
[21] 前記バリア素子が、前記第1の偏光制御素子として吸収型偏光子を有し、画像表示素子の前面に、該第1の偏光制御素子を前面側にして配置される[18]〜[20]のいずれかの3D表示装置。
[22] 前記バリア素子が、前記第1の偏光制御素子として吸収型偏光子、反射型偏光子又は異方性散乱型偏光子を有し、画像表示素子の背面に、該第1の偏光制御素子を背面側にして配置されている[18]〜[21]のいずれかの3D表示装置。
[23] 前記画像表示素子に含まれる液晶セルがVAモード又はIPSモードである[18]〜[22]のいずれかの3D表示装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、2D表示時の輝度低下及び白表示における色味変化を生じさせることなく、3D表示特性を改善することができる。
即ち、本発明によれば、2D表示時には高輝度且つ色味変化のない白表示を可能とし、且つ3D表示時にはクロストークの軽減を可能にする、バリア素子及びそれを用いた3D表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の3D表示装置の一例を示す模式断面図である。
【図2】Eモード、Oモードを説明するための模式図である。
【図3】本発明の3D表示装置の一例を示す模式断面図である。
【図4】本発明の3D表示装置の一例を示す模式断面図である。
【図5】本発明の3D表示装置の一例を示す模式断面図である。
【図6】本発明の3D表示装置の一例を示す模式断面図である。
【図7】本発明の3D表示装置の一例を示す模式断面図である。
【図8】本発明の3D表示装置の一例を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について、実施の形態を挙げて詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
まず、本明細書で用いられる用語について説明する。
【0010】
Re(λ)、Rth(λ)は、各々、波長λにおける面内のレターデーション、及び厚さ方向のレターデーションを表す。Re(λ)はKOBRA 21ADH、又はWR(王子計測機器(株)製)において、波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。測定波長λnmの選択にあたっては、波長選択フィルターをマニュアルで交換するか、または測定値をプログラム等で変換して測定することができる。測定されるフィルムが、1軸又は2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)が算出される。
Rth(λ)は、前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH、又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合には、フィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50°まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH、又はWRが算出する。なお、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合には、フィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値、及び入力された膜厚値を基に、以下の式(A)、及び式(B)よりRthを算出することもできる。
【0011】
【数1】

なお、上記のRe(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値を表す。また、式(A)におけるnxは、面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは、面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzは、nx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。dは膜厚を表す。
Rth=((nx+ny)/2−nz)×d・・・・・・・・・・・式(B)
【0012】
測定されるフィルムが、1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法により、Rth(λ)は算出される。Rth(λ)は、前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH、又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として、フィルム法線方向に対して−50°から+50°まで10°ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。また、上記の測定において、平均屈折率の仮定値は、ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについては、アッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADH又はWRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx、ny、nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
【0013】
本明細書において、「平行」、「直交」とは、厳密な角度±10゜以下の範囲内であることを意味する。この範囲は厳密な角度との誤差は、±5゜未満であることが好ましく、±2゜未満であることがより好ましい。また、「遅相軸」は、屈折率が最大となる方向を意味する。
なお、屈折率の測定波長は、特に断らない限り、可視光域のλ=550nmでの値であり、Re及びRthの測定波長については、特に断らない限り、550nmとする。
【0014】
また、本明細書では、「偏光膜」及び「偏光板」を区別して用いるが、「偏光板」は「偏光膜」の少なくとも片面に該偏光膜を保護する透明保護膜を有する積層体を意味するものとする。
【0015】
(バリア素子)
本発明は、透光部及び遮光部からなるバリアパターンを形成可能なバリア素子であって、第1の偏光制御素子と、液晶セルと、前記第1の偏光制御素子と該液晶セルの一方の表面との間、及び前記液晶セルの他方の表面上の少なくとも一方に配置される、波長550nmの面内レターデーションRe(550)が−30〜100nmで、且つ波長550nmの厚み方向レターデーションRth(550)が−15〜180nmである位相差フィルムと、を少なくとも有するバリア素子に関する。本発明のバリア素子は、画像表示素子の前面又は背面に配置され、2D表示及び3D表示モードの切り替えが可能に構成される。バリア素子は、3D表示時には、透光部と遮光部とからなるバリアパターン、例えばバリアストライプ像を表示する。3D表示時には、画像表示素子に、右眼用及び左眼用画像が表示され、バリア素子のバリアストライプ像によって、右眼用画像は観察者の右眼にだけ、及び左目画像は観察者の左眼にだけ入射し、観察者は立体画像として認識する。一方、2D表示時には、バリア素子のバリアパターンは消失し、画像表示素子に表示される画像の輝度を低下させず、高い輝度の2D表示が可能になる。
【0016】
しかし、バリア素子の表示するバリアパターンによって、正面方向(表示面に対して法線方向)に位置する観察者のみならず、左右斜め方向に位置する観察者に対しても、クロストークのない3D表示を可能にするためには、バリア素子の液晶セルの斜め方向に生じる複屈折を補償する必要がある。一方で、バリア素子が、光学補償のための位相差フィルムを含むことは、2D表示時の表示特性に影響を与え、特に、白表示時に色味変化を生じさせる。本発明では、バリア素子に含まれる液晶セルを、Re(550)が−30〜100nmで、且つRth(550)が−15〜180nmである位相差フィルムで光学補償することで、また、Rth(550)が−15〜30nmである位相差フィルムの場合は、位相差フィルム上にRe(550)が20nm以上の液晶性化合物を含有する組成物から形成された光学異方性層を有する位相差フィルムで光学補償することで、2D表示時の表示品位を低下させることなく、具体的には白表示の色味変化を生じさせることなく、3D表示時の表示品位を改善、具体的には斜め方向においてもクロストークのない3D表示を可能にしている。
【0017】
本発明のバリア素子は、第1の偏光制御素子を有する。液晶セルによってバリアパターン像を形成するためには、一般的には、一対の偏光制御素子を利用し、液晶セルをその間に配置する構成が採用される。但し、本発明のバリア素子と組み合わせる画像表示素子が液晶パネル等であって、偏光制御素子を部材として含む場合は、本発明のバリア素子は第1の偏光制御素子のみを有し、組み合わせる他方の偏光制御素子は、画像表示素子の部材である偏光制御素子であってもよい。
【0018】
本発明のバリア素子が有する第1の偏光制御素子の一例は、吸収型偏光子であり、一般的な直線偏光膜を用いることができる。本発明のバリア素子が、画像表示素子の前面に配置され、第1の偏光制御素子が前面に配置される態様では、第1の偏光制御素子は、直線偏光膜であるのが好ましい。一方、本発明のバリア素子が、画像表示素子の背面側に配置され、第1の偏光制御素子が、バックライト側に配置される態様では、第1の偏光制御素子は、吸収型偏光子、反射型偏光子及び異方性散乱型偏光子のいずれであってもよい。中でも、特表平9−506985号公報等に記載の強化型反射偏光子が好ましい。反射偏光子又は異方性散乱型偏光子は、直線偏光膜等の吸収偏光子と比較して、吸収がないので透過率が高く、2D表示時の輝度をより改善できる点で好ましい。一方で、反射型偏光子又は異方性散乱型偏光子の中には、吸収型偏光子と比較して偏光度が低いものもあるので、3D表示時のクロストーク改善の観点では、吸収型偏光子である直線偏光膜の採用がより好ましい。
【0019】
本発明のバリア素子は、液晶セルの少なくとも一方の表面上に配置される前記位相差フィルムを有する。前記位相差フィルムは、液晶セルの双方の表面上に配置されているのが、3D表示特性の改善の観点では好ましい。
【0020】
図1(a)に、本発明のバリア素子の一例の断面模式図を示す。なお、図中、各層の厚みの相対的関係は、実際の各層の厚みの相対的関係と必ずしも一致しているものではない。以下の図面のいずれにおいても同様である。
図1(a)は、第1の偏光制御素子6、液晶セル5、並びに第1の偏光制御素子6と液晶セル5との間、及び液晶セル5の他方の表面上にそれぞれ配置される位相差フィルム7及び8を有するバリア素子2である。バリア素子2は、例えば、液晶パネルである画像表示素子の前面に配置され、第1の偏光制御素子6を前面側にして配置される。この態様では、第1の偏光制御素子6は、直線偏光膜であるのが好ましく、その吸収軸を、組み合わせる液晶パネルの表示面側に配置される直線偏光膜の吸収軸と、直交にして配置されるのが好ましい。
【0021】
また、バリア素子2は、例えば、液晶パネルである画像表示素子の背面に配置され、第1の偏光制御素子6を背面側、即ちバックライト側にして配置される。この態様では、第1の偏光制御素子6は、吸収型偏光子(直線偏光膜)、反射型偏光子及び異方性散乱型偏光子のいずれであってもよい。第1の偏光制御素子6が直線偏光膜である態様では、該直線偏光膜は、その吸収軸を、組み合わせる液晶パネルの背面側に配置される直線偏光膜の吸収軸と、直交にして配置される。第1の偏光制御素子6が反射偏光子又は異方性散乱型偏光子である態様では、反射型偏光子又は異方性散乱型偏光子として、組み合わせる液晶パネルの背面側に配置される直線偏光膜の吸収軸によって吸収される直線偏光を、反射偏光技術又は異方性散乱偏光技術を利用して強化する反射型又は異方性散乱型偏光子が用いられる。
【0022】
図1(b)は、一対の第1及び第2の偏光制御素子6及び9、その間に配置される液晶セル5、並びに第1及び第2の偏光制御素子6及び9それぞれと液晶セル5との間に配置される位相差フィルム7及び8を有するバリア素子2'である。バリア素子2'は、画像表示素子の前面又は背面に配置され、第1の偏光制御素子6を前面側又は背面側にして配置される。
【0023】
バリア素子2'が画像表示素子の前面側に配置される態様では、第1及び第2の偏光制御素子6及び9は、直線偏光膜であるのが好ましく、互いの吸収軸6a及び9aを直交にして配置されるのが好ましい。第2の偏光制御素子9として、画像表示素子側に配置される直線偏光膜は、画像表示素子が液晶パネル等であって、構成部材として表示面側に直線偏光膜を有する場合には、その吸収軸を、画像表示素子の表示面側直線偏光膜の吸収軸と平行にして配置する必要がある。
【0024】
バリア素子2'が画像表示素子の背面側に配置される態様では、背面側であって、バックライト側に配置される第1の偏光制御素子6は、吸収型偏光子(直線偏光膜)、反射型偏光子及び異方性散乱型偏光子のいずれであってもよく、画像表示素子側に配置されている第2の偏光制御素子9は、直線偏光膜であるのが好ましい。第1及び第2の偏光制御素子6及び9が、直線偏光膜である態様では、互いの吸収軸6a及び9aを直交にして配置されるのが好ましい。第1の偏光制御素子6が反射型偏光子又は異方性散乱型偏光子であり、第2の偏光制御素子9が直線偏光膜である態様では、第1の偏光制御素子6として用いられる反射型偏光子又は異方性散乱型偏光子は、第2の偏光制御素子9として用いられる直線偏光膜の吸収軸によって吸収される直線偏光を、偏光反射技術又は異方性散乱偏光技術によって強化する反射型又は異方性散乱型偏光子が用いられる。
【0025】
液晶セル5の構成については特に制限されない。一例は、一対の電極を有する基板で液晶層を狭持した構成が挙げられる。
液晶セル5の駆動モードについては特に制限はなく、同一の駆動モードであってもいいし、異なる駆動モードであってもよい。ツイステットネマチック(TN)、スーパーツイステットネマチック(STN)、バーティカルアライメント(VA)、インプレインスイッチング(IPS)、オプティカリーコンペンセイテットベンドセル(OCB)等の種々のモードを利用することができる。中でも、TNモードは、VAモード、IPSモードと比較して透過率が高いので、2D表示時の輝度の向上の観点で好ましい。また省電力の観点では、特にノーマリーホワイトモードのTNモードが好ましい。バリア素子に用いられるTNモードの液晶セルのΔnd(550)は、一般的な画像表示素子に用いられるTNモード液晶セルのΔnd(550)と比較して、高くすることが透過率の観点で好ましく、具体的には、380〜540nmであることが好ましい。但し、この範囲に限定されるものではない。
【0026】
液晶セル5がTNモードの態様では、その上下に配置される直線偏光膜(図1(b)では、第1及び第2の偏光制御素子6及び9、図1(a)では、第1の偏光制御素子6と画像表示素子の直線偏光膜)の配置として、Oモード及びEモードがある。本発明では、Oモード配置であっても、Eモード配置であってもよい。即ち、図1(b)の態様を例に挙げれば、液晶セル5とその上下に配置される直線偏光膜6及び9との関係は、図2(a)に示す通り、直線偏光膜6及び9の吸収軸6a及び9aが、液晶セル5の電圧無印加時の液晶分子の配向方向、即ち、液晶セル5の基板5aの内面に施されたラビング処理の方向aと平行であっても、図2(b)に示す通り、直線偏光膜6及び9の吸収軸6a及び9aが、液晶セル5の電圧無印加時の液晶分子の配向方向、即ち、液晶セル5の基板5aの内面に施されたラビング処理の方向aと直交であってもよい。なお、TNモードでは、液晶セル5の基板5a及び5a'の対向基板5b及び5b'の内面には、それぞれa及びa'と直交する方向b及びb'にラビング処理が施され、電圧無印加時には捩れ配向する。
【0027】
また、一般的に、TNモード液晶セルを有する画像表示装置では、表示特性の観点から、一対の直線偏光膜は、その吸収軸をそれぞれ、表示面45°及び135°にして配置される。しかし、吸収軸が45°及び135°であると、例えば、屋外等でサングラスを装着した観察者には、バリア素子のバリアパターンが機能せず、3D画像として認識できなくなる。したがって、種々の使用形態を勘案すると、第1の偏光制御素子(図1(b)の態様では第2の偏光制御素子についても)の吸収軸が、表示面に対して0°又は90°の方向であるのが好ましい。
【0028】
図1(a)及び(b)のいずれの態様においても、位相差フィルム7及び8の面内遅相軸7a及び8aは、互いに直交又は平行であるのが好ましく、図1(a)及び(b)に示す通り、互いに直交であるのがより好ましい。液晶セル5が、TNモードの態様では、図1(a)及び図1(b)に示す通り、位相差フィルム7及び8を液晶セル5の上下に配置するのが好ましく、同一の位相差フィルムを互いの遅相軸を直交にして配置するのが好ましい。
【0029】
位相差フィルム7及び8は、単層構造であっても、2層以上の積層構造であってもよい。一例は、1枚のポリマーフィルム、又は2枚以上のポリマーフィルムの積層体である。また、液晶セル5がTNモードの態様では、位相差フィルム7及び8それぞれと液晶セル5との間に、配向状態(好ましくはハイブリッド配向状態)に固定された液晶化合物(好ましくはディスコティック液晶化合物)を含有する光学異方性層、または、主軸が厚み方向において傾斜した光学異方性層をそれぞれ配置するのが好ましい。該光学異方性層を配置することで、クロストークをさらに軽減することができる。位相差フィルム及び光学異方性層に詳細については、後述する。
【0030】
また、図1(a)及び(b)のいずれの態様においても、位相差フィルム7及び8の面内遅相軸7a及び8aは、第1及び第2の偏光制御素子6及び9それぞれの吸収軸6a及び9aに対して、直交又は平行であるのが好ましい。但し、10°以下の軸ズレがあっても、3D及び2D表示特性のいずれにも影響はなく、即ち、位相差フィルム7及び8の面内遅相軸7a及び8aは、第1及び第2の偏光制御素子6及び9それぞれの吸収軸6a及び9aに対して、90°±10°であるか、又は0°±10°であるのが好ましい。
【0031】
本発明のバリア素子が表示する透光部と遮光部とからなるバリアパターンの模様については特に制限はない。視差に応じて、ストライプ状又は格子状等、最適なパターンが選択される。また透光部と遮光部のコントラスト比は、4以上であるのが好ましく、8以上であるのがより好ましい。
【0032】
また、前記したように、本発明のバリア素子ではバリアパターンを任意に制御することが可能である。よって、従来のパララックスバリア方式の3D表示装置では3D表示を得るのに最適な観察範囲が予め設定されるのに対し、本発明の3D表示装置では観察者の位置に応じて最適な3D観察範囲を調整することが可能となる。
【0033】
本発明のバリア素子は、その他、第1の偏光制御素子のさらに外側に表面に配置される保護フィルムを有していてもよい。
【0034】
(3D表示装置)
次に、本発明のバリア素子を画像表示素子の前方(表示面側)に有する3D表示装置の例について、図面を参照して説明する。
図3に、図1(a)に示すバリア素子2を有する本発明の3D表示装置の一例の断面模式図を、図4に図1(b)に示すバリア素子2'を有する本発明の3D表示装置の他の例の断面模式図を示す。図1及び図2と同一の部材については同一の番号を付し、詳細な説明は省略する。
図3に示す3D表示装置1Aは、バリア素子2、画像表示素子3、及びバックライト4を有し、図4に示す3D表示装置1Bは、バリア素子2'、画像表示素子3、及びバックライト4を有する。画像表示素子3の構成については特に制限はなく、例えば、液晶層を含む液晶パネルであっても、有機EL層を含む有機EL表示パネルであってもよい。いずれの態様でも、種々の可能な構成を採用することができる。
【0035】
画像表示素子3は、一対の第3及び第4の直線偏光膜11及び12と、その間に配置される画像表示用液晶セル10を有する液晶パネルであり、画像表示用液晶セル10の後方であって、第4の直線偏光膜12の後方には、バックライト4が配置され、透過モードとして構成されている。第3及び第4の直線偏光膜11及び12の吸収軸は互いに直交関係、即ちクロスニコル配置になっている。
【0036】
画像表示用液晶セル10は、左目用及び右目用画像を表示するために用いられるので、駆動モードは、表示特性の観点で選択される。例えば、VAモード及びIPSモードは視野角特性に優れているので、画像表示用液晶セル10のモードとして適する。画像表示用液晶セル10の構成については特に制限はなく、一般的な液晶セルの構成を採用することができる。画像表示用液晶セル10は、例えば、図示しない対向配置された一対の基板と、該一対の基板間に挟持された液晶層とを含み、必要に応じて、カラーフィルタ層などを含んでいてもよい。また、第4の偏光膜12と画像表示用液晶セル10との間や、第3の偏光膜11と画像表示用液晶セル10との間には、視野角補償用の光学フィルムが配置されていてもよい。
【0037】
第3の偏光膜11の吸収軸11a、及び第4の偏光膜12の吸収軸12aは、互いに直交にして配置される。画像表示用液晶セル10がVAモード又はIPSモードの態様では、いずれか一方を表示面の左右方向に平行にし、且つ他方を上下方向に平行にして配置するのが好ましい。
【0038】
図3及び図4中、バリア素子2及び2'はそれぞれ、画像表示素子3の前面であって、表示面側に配置され、第1の偏光制御素子6である直線偏光膜を前面にして配置される。図3に示す例では、第3の偏光膜11は、画像表示用液晶セル10の画像表示機能のためにも利用され、且つバリア素子の液晶セル5のバリアパターン表示機能のためにも利用される。図4に示す例では、バリア素子2'には、第3の偏光膜11とは別に、バリアパターン表示機能のために利用される第2の偏光制御素子である直線偏光膜9が配置され、機能分離されている。但し、第2の偏光膜9の透過軸9aは、第3の偏光膜11の透過軸11aと平行にする必要がある。図3の構成は、薄型化、正面輝度の観点で好ましいが、一方で図4の構成のほうが、画像表示機能とバリアパターン表示機能とを分離でき、製造工程上有利な場合もある。
なお、第2の偏光膜9と第3の偏光膜11との間には、それぞれを保護するポリマーフィルムが配置されていてもよいが、当該ポリマーフィルムは、低Re及び低Rthであり、光学的に等方性のポリマーフィルムを用いるのが好ましい。
【0039】
バリア素子2及び2'がそれぞれ有する液晶セル5は、2D表示及び3D表示のモードの切り替えが可能に構成される。液晶セル5がノーマリーホワイトモードである態様では、電圧印加時に、3D表示モードになり、透光部と遮光部とからなるバリアパターン、例えばバリアストライプ像が表示される。画像表示素子1に表示される右眼用及び左眼用画像が、バリアストライプ像によって、右眼用画像は観察者の右眼にだけ、及び左目画像は観察者の左眼にだけ入射し、観察者は立体画像として認識する。一方、電圧無印加時には、2D表示モードになり、バリアパターン像は消失し、全面白表示になる。したがって、画像表示素子1に表示される画像を、輝度を低下させずに表示可能である。
【0040】
3D表示方法の一つに、表示装置と液晶セルとを2枚積層し、後方の表示装置に左目及び右目用画像を重畳して表示し、前方側の液晶セルで画素ごとにそれぞれの画像の偏光状態を制御し、偏光メガネを使用して左右画像を分離して視認させる方式がある。例えば、特開2010−134393号公報に記載がある。本発明の3D表示装置では図3及び図4中の第1の偏光制御素子6の視認側に、λ/4フィルムを有していても良く、この形態ではバリア素子の液晶セル5はアクティブリターダー素子としても使用可能である。すなわち、裸眼での立体表示とメガネを用いた立体表示を一つのセルで用途に応じて使い分けることが可能となる。この形態では、λ/4フィルムの遅相軸と第1の偏光制御素子6の吸収軸は45°または135°をなすのが好ましい。
【0041】
次に、本発明のバリア素子を画像表示素子の背面側に配置した例を説明する。
図5に、図1(a)に示すバリア素子2を有する本発明の3D表示装置の一例の断面模式図を、図6に、図1(b)に示すバリア素子2'を有する本発明の3D表示装置の他の例の断面模式図を示す。図1〜図4中の部材と同一の部材については、同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0042】
図5に示した本発明の3D表示装置1Cは、画像表示素子3、バリア素子2、及びバックライト4の順に有し、図6に示した本発明の3D表示装置1Cは、画像表示素子3、バリア素子2'、及びバックライト4の順に有する。バリア素子2及び2'は、第1の偏光制御素子6を背面側、即ち、バックライト側にして配置される。
【0043】
図5に示す例では、第3の偏光膜11は、画像表示用液晶セル10の画像表示機能のためにも利用され、且つバリア素子2の液晶セル5のバリアパターン表示機能のためにも利用される。図6に示す例では、バリア素子2'には、第3の偏光膜11とは別に、バリアパターン表示機能のために利用される第2の偏光制御素子である直線偏光膜9が配置され、機能分離されている。但し、第2の偏光膜9の透過軸9aは、第3の偏光膜11の透過軸11aと平行にする必要がある。図5の構成は、薄型化、正面輝度の観点で好ましいが、一方で図6の構成のほうが、画像表示機能とバリアパターン表示機能とを分離でき、製造工程上有利な場合もある。
なお、第2の偏光膜9と第3の偏光膜11との間には、それぞれを保護するポリマーフィルムが配置されていてもよいが、当該ポリマーフィルムは、低Re及び低Rthであり、光学的に等方性のポリマーフィルムを用いるのが好ましい。
【0044】
図5及び6に示す構成では、第1の偏光制御素子6は、吸収型偏光子(直線偏光膜)、反射型偏光子及び異方性散乱型偏光子のいずれであってもよい。直線偏光膜である態様では、その吸収軸6aを、図5の例では、画像表示素子3の背面側直線偏光膜11の吸収軸11aと直交にして配置され、及び図6の例では、バリア素子2'の第2の偏光制御素子である直線偏光膜9の吸収軸9aと直交にして配置される。また、第1の偏光制御素子6が反射型偏光子又は異方性散乱型偏光子である態様では、図5の例では、画像表示素子3の背面側直線偏光膜11の吸収軸11aによって吸収される直線偏光膜を、偏光反射技術又は異方性散乱偏光技術を利用して強化する反射型又は異方性散乱型偏光子が採用され、及び図6の例では、バリア素子2'の第2の偏光制御素子である直線偏光膜9の吸収軸9aによって吸収される直線偏光膜を、偏光反射技術又は異方性散乱偏光技術を利用して強化する反射型又は異方性散乱型偏光子が採用される。
【0045】
図3〜6の各部材の軸の関係は、90°回転させても等価であり、即ち、図3及び図4の例は、図7(a)及び(b)とそれぞれ等価であり、並びに図5及び6は、図8(a)及び(b)とそれぞれ等価である。
【0046】
以下、本発明のバリア素子及び3D表示装置に用いられる種々の部材について詳細に説明する。
【0047】
1.位相差フィルム
本発明のバリア素子は、液晶セルを光学補償するための位相差フィルムを有する。位相差フィルムは、第1の偏光制御素子と液晶セルの一方の表面との間、及び液晶セルの他方の表面上の少なくとも一方に、配置される。図1(a)及び(b)に示す様に、双方に位相差フィルムが配置されているのが好ましく、等しい光学特性の位相差フィルムが配置されているのが好ましい。該位相差フィルムは、その面内遅相軸を、第1の偏光制御素子(図1(b)の態様では第2の偏光制御素子についても)の吸収軸に対して直交又は平行にして配置される。但し、10°以下の軸ズレがあっても、3D及び2D表示特性のいずれにも影響はなく、即ち、位相差フィルムの面内遅相軸は、第1の偏光制御素子(図1(b)の態様では第2の偏光制御素子についても)の吸収軸に対して、90°±10°であるか、又は0°±10°であるのが好ましい。
なお、前記位相差フィルムがポリマーフィルムからなる、又はポリマーフィルムを含んでいると、第1の偏光制御素子が直線偏光膜である態様では、直線偏光膜の保護フィルムとしても機能させることができるので好ましい。
【0048】
前記位相差フィルムの波長550nmの面内レターデーションRe(550)は−30〜100nmであり、Rth(550)は−15〜180nmである。
【0049】
前記位相差フィルムのRth(550)が30〜180nmの場合、前記位相差フィルムを液晶セルの一方の表面上のみに配置する態様では、位相差フィルムのRe(550)は−10〜100nmであるのが好ましく、10〜100nmであるのがより好ましく、また、Rth(550)は40〜180nmであるのが好ましく、80〜160nmであるのがより好ましい。
前記位相差フィルムのRe(550)が前記範囲内であると、正面から見たときのクロストークを許容できる程度に抑えることができ、前記位相差フィルムのRth(550)が前記範囲内であると、左右方向から見たときのクロストークを許容できる程度に抑えることができる。
【0050】
前記位相差フィルムのRth(550)が30〜180nmの場合、前記位相差フィルムを液晶セルの双方の表面上に配置する態様では、位相差フィルムのRe(550)は−10〜80nmであるのが好ましく、10〜60nmであるのがより好ましく、また、Rth(550)は60〜160nmであるのが好ましく、80〜140nmであるのがより好ましい。
前記位相差フィルムのRe(550)が前記範囲内であると、正面から見たときのクロストークを許容できる程度に抑えることができ、前記位相差フィルムのRth(550)が前記範囲内であると、左右方向から見たときのクロストークを許容できる程度に抑えることができる。
【0051】
前記位相差フィルムのRth(550)が−15〜30nmの場合、液晶性化合物を含有する組成物から形成され、かつ、Re(550)が20nm以上の光学異方性層を位相差フィルム上に配置してもよい。光学異方性層が配置された位相差フィルムを液晶セルの一方の表面上のみに配置する態様では、位相差フィルムのRe(550)は−10〜100nmであるのが好ましく、10〜100nmであるのがより好ましく、また、Rth(550)は−10〜30nmであるのが好ましく、−10〜20nmであるのがより好ましい。
前記位相差フィルムのRe(550)が前記範囲内であると、正面から見たときのクロストークを許容できる程度に抑えることができる。
【0052】
また、前記位相差フィルムのRth(550)が−15〜30nmの場合、光学異方性層が配置された位相差フィルムを液晶セルの双方の表面上に配置する態様では、位相差フィルムのRe(550)は−10〜80nmであるのが好ましく、10〜60nmであるのがより好ましく、また、Rth(550)は−10〜30nmであるのが好ましく、−10〜20nmであるのがより好ましい。
前記位相差フィルムのRe(550)が前記範囲内であると、正面から見たときのクロストークを許容できる程度に抑えることができる。
【0053】
前記位相差フィルムは、一枚のポリマーフィルムからなっていても、二枚以上のポリマーフィルムからなっていてもよい。また、ポリマーフィルムは光学的に一軸性であっても二軸性であってもよいが、二軸性であるのがより好ましい。
【0054】
前記位相差フィルムとして利用可能なポリマーフィルムとしては、例えば、セルロースアシレート、ポリカーボネート系ポリマー、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマー等を利用することができる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、または前記ポリマーを混合したポリマー等から1種又は2種以上のポリマーを選択し、主成分として用いてポリマーフィルムを作製し、上記特性を満足する位相差フィルムの作製に利用することができる。
【0055】
前記位相差フィルムの一例は、セルロースアシレートフィルムであり、中でも、アセチル基を有するセルロースアセテートを主成分として含むフィルムが好ましい。特に低置換度のセルロースアシレート(好ましくは低置換度のセルロースアセテート)であって、下記式(1)を満たすセルロースアシレートを主成分として含む低置換度層からなる、又は該低置換度層を含むポリマーフィルムが好ましい。
(1) 2.0<Z1<2.7
(式(1)中、Z1はセルロースアシレートの総アシル(好ましくはアセチル)置換度を表す。)
上記式(1)を満たすセルロースアシレートを主成分として利用したポリマーフィルムの製造方法については特開2010−58331号公報に詳細な記載があり、参照することができる。
【0056】
・ポリマーフィルムの形成方法
ポリマーフィルムの一部又は全部として使用されるセルロースアシレートフィルムは、種々の方法で製造することができる。溶液キャスト法(溶液流延法)、溶融押出法、カレンダー法、圧縮成形法などが挙げられる。これらのフィルム成形方法のうち、溶液キャスト法(溶液流延法)、又は溶融押出法が好ましく、溶液キャスト法が特に好ましい。溶液キャスト法では、セルロースアシレートを有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)を用いてフィルムを製造することができる。添加剤を使用する場合は、添加剤はドープ調製のいずれのタイミングで添加してもよい。本発明に利用可能なセルロースアシレートフィルムの製造方法については、特開2006−184640号公報の[0219]〜[0224]の記載を参照することができる。
【0057】
本発明に使用するセルロースアシレートフィルムは、延伸処理によりレターデーションを調整されていてもよい。延伸処理は、一軸延伸処理であっても二軸延伸処理であってもよい。二軸延伸処理は、同時二軸延伸法又は逐次二軸延伸法により行うのが好ましい。連続製造には、逐次二軸延伸方法が適している。逐次二軸延伸方法では、バンドもしくはドラムにドープを流延した後、フィルムを剥ぎ取り、幅方向(又は長手方法)に延伸した後、長手方向(又は幅方向)に延伸する。
【0058】
幅方向に延伸する方法は、特開昭62−115035号、特開平4−152125号、同4−284211号、同4−298310号、同11−48271号の各公報に記載されている。フィルムの延伸は、常温又は加熱条件下で実施する。加熱温度は、フィルムのガラス転移温度以下であることが好ましい。フィルムの延伸処理は、乾燥処理中に実施してもよい。溶媒が残存する状態でのフィルムの延伸は、特別な効果が得られる場合がある。
長手方向の延伸の場合、フィルムの搬送ローラーの速度を調節して、フィルムの剥ぎ取り速度よりもフィルムの巻き取り速度の方を速くすると、フィルムを容易に延伸できる。
幅方向の延伸の場合、フィルムの巾をテンターで保持しながら搬送して、テンターの巾を徐々に広げることによってもフィルムを延伸できる。
【0059】
上記光学特性を満足するセルロースアシレートフィルムの製造方法の一例は、上記いずれかの製膜方法(好ましくは溶液製膜方法)で製膜後、得られたフィルムを、延伸倍率(元の長さに対する延伸による増加分の比率)0〜60%(より好ましくは0〜50%)で延伸処理する方法である。
【0060】
また、本発明では、位相差フィルム上に、液晶性化合物を含有する組成物から形成された光学異方性層、または、主軸が厚み方向において傾斜した光学異方性層を有する積層体を、液晶セルの一方の表面上又は双方の表面上に配置してもよい。バリア素子が有する液晶セルがTNモードである態様では、該積層体を液晶セルの双方の表面上にそれぞれ配置するのが好ましく、液晶セルを中心として対称的に配置するのが好ましい。また、バリア素子が有する液晶セルがTNモードである態様では、該積層体を構成する位相差フィルムのRth(λ)が(波長が長波長になる程小さくなるという)順分散性を示すのが、2D白表示における色味変化を小さくできるので好ましい。
なお、位相差フィルムのRth(550)が−15〜30nmである場合に光学異方性層を前記位相差フィルム上に配置することが好ましく、この場合の光学異方性層のRe(550)は20nm以上であることが好ましい。
【0061】
前記光学異方性層のRe(550)は、20〜58nmであるのが好ましく、25〜52nmであるのがより好ましく、27〜40nmであるのがさらに好ましい。光学異方性層のRe(550)が前記範囲内であると、正面から見たときのクロストークを許容できる程度に抑えることができる。
また、光学異方性層は、波長550nmにおいて、位相差フィルムの遅相軸に直交した法線を含む面内(入射面)において、前記法線からフィルム面方向に40°傾いた方向から測定したレターデーションR[+40°]と前記法線から逆に40°傾斜した方向から測定したレターデーションR[−40°](但し、R[−40°]<R[+40°]とする)の比が、1<R[+40°]/R[−40°]を満足することが好ましく、3≦R[+40°]/R[−40°]を満足することがより好ましく、4≦R[+40°]/R[−40°]を満足することがさらに好ましい。R[+40°]/R[−40°]を1より大きくすることで、2D表示での正面と斜めの色味変化を小さくすることができる。
【0062】
前記光学異方性層が液晶性化合物を含有する組成物から形成される態様では、液晶性化合物を含有する重合性組成物から形成するのが好ましい。前記光学異方性層の形成に用いられる液晶性化合物は、棒状液晶性化合物であっても、ディスコティック液晶性化合物であってもよい。偏光変換用液晶セルがTNモードの態様では、ディスコティック(円盤状)液晶性化合物が好ましい。ディスコティック液晶性化合物の例には、トリフェニレン化合物、及びベンゼンの1、3及び5位が置換された3置換ベンゼン化合物等が含まれる。
【0063】
光学異方性層中の液晶分子の配向状態については特に制限はないが、バリア層形成用液晶セルがTNモードの態様では、前記光学異方性層において、液晶性化合物の分子は、ハイブリッド配向状態に固定されているのが好ましい。ハイブリッド配向とは、棒状液晶性化合物では分子長軸と層面とのなす角度、ディスコティック液晶性化合物では、分子の円盤面と層面とのなす角度(以下、「チルト角」という)が、層厚み方向において変化(増加又は減少)している配向状態である。当該光学異方性層は、一般的には、配向膜の表面上でディスコティック液晶性化合物を含有する組成物を配向させて形成されるので、該層には配向膜界面と空気界面とが存在する。ハイブリッド配向には、前記チルト角が、配向膜界面側で大きく、空気界面側で小さくなっている態様(即ち、チルト角が配向膜界面から空気界面に向けて減少している態様、以下、「逆ハイブリッド配向」という)、及び前記チルト角が、配向膜界面側で小さく、空気界面側で大きくなっている態様(即ち、チルト角が配向膜界面から空気界面に向けて増加している態様、以下「正ハイブリッド配向」という)の2態様がある。クロストーク及び白表示時のカラーシフトの軽減の観点では、いずれの態様であってもよい。
【0064】
本発明に利用可能なディスコティック化合物の例には、ベンゼン誘導体(C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.71巻、111頁(1981年)に記載)、トルキセン誘導体(C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.122巻、141頁(1985年)、Physics lett,A,78巻、82頁(1990)に記載)、シクロヘキサン誘導体(B.Kohneらの研究報告、Angew.Chem.96巻、70頁(1984年)に記載)及びアザクラウン系又はフェニルアセチレン系のマクロサイクル(J.M.Lehnらの研究報告、J.Chem.Commun.,1794頁(1985年)、J.Zhangらの研究報告、J.Am.Chem.Soc.116巻、2655頁(1994年)記載)が含まれる。
【0065】
ディスコティック液晶性化合物は、重合により固定可能なように、重合性基を有するのが好ましい。例えば、ディスコティック液晶性化合物の円盤状コアに、置換基として重合性基を結合させた構造が考えられるが、但し、円盤状コアに重合性基を直結させると、重合反応において配向状態を保つことが困難になる。そこで、円盤状コアと重合性基との間に連結基を有する構造が好ましい。即ち、重合性基を有するディスコティック液晶性化合物は、下記式で表される化合物であることが好ましい。
D(−L−P)n
式中、Dは円盤状コアであり、Lは二価の連結基であり、Pは重合性基であり、nは1〜12の整数である。前記式中の円盤状コア(D)、二価の連結基(L)及び重合性基(P)の好ましい具体例は、それぞれ、特開2001−4837号公報に記載の(D1)〜(D15)、(L1)〜(L25)、(P1)〜(P18)であり、同公報に記載の内容を好ましく用いることができる。なお、液晶性化合物のディスコティックネマティック液晶相−固相転移温度は、30〜300℃が好ましく、30〜170℃が更に好ましい。
【0066】
3置換ベンゼン系ディスコティック液晶性化合物としては、特開2010−244038号公報の段落[0052]〜[0077]記載の化合物等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0067】
トリフェニレン化合物としては、特開2007−108732号公報の段落[0062]〜[0067]記載の化合物等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0068】
なお、上記逆ハイブリッド配向状態を達成可能な組成物の一例は、前記3置換ベンゼン又はトリフェニレン化合物とともに、下記一般式(II)(より好ましくは一般式(II'))で表されるピリジニウム化合物の少なくとも1種、及び下記一般式(III)で表されるトリアジン環基を含む化合物の少なくとも1種を含有する組成物である。前記ピリジニウム化合物の添加量は、ディスコティック液晶性化合物100質量部に対し、0.5〜3質量部であるのが好ましい。また、前記トリアジン環基を含む化合物の添加量は、ディスコティック液晶性化合物100質量部に対し、0.2〜0.4質量部であるのが好ましい。
【0069】
【化1】

【0070】
式中、L23及びL24はそれぞれ二価の連結基であり;R22は水素原子、無置換アミノ基、又は炭素原子数が1〜20の置換アミノ基であり;Xはアニオンであり;Y22及びY23はそれぞれ、置換されていてもよい5又は6員環を部分構造として有する2価の連結基であり;Z21はハロゲン置換フェニル、ニトロ置換フェニル、シアノ置換フェニル、炭素原子数が1〜10のアルキル基で置換されたフェニル、炭素原子数が2〜10のアルコキシ基で置換されたフェニル、炭素原子数が1〜12のアルキル基、炭素原子数が2〜20のアルキニル基、炭素原子数が1〜12のアルコキシ基、炭素原子数が2〜13のアルコキシカルボニル基、炭素原子数が7〜26のアリールオキシカルボニル基および炭素原子数が7〜26のアリールカルボニルオキシ基からなる群より選ばれる一価の基であり;pは1〜10の数であり;並びにmは1又は2である。
【0071】
【化2】

【0072】
式中、R31、R32及びR33は、末端にCF3基を有するアルキル基又はアルコキシ基を表し、但し、アルキル基(アルコキシ基中のアルキル基も含む)中の隣接していない2以上の炭素原子は、酸素原子又は硫黄原子に置換されていてもよい;X31、X32及びX33は、アルキレン基、−CO−、−NH−、−O−、−S−、−SO2−及びそれらの群より選ばれる二価の連結基を少なくとも二つ組み合わせた基を表し;m31、m32及びm33はそれぞれ、1〜5の数である。上記式(III)中、R31、R32及びR33はそれぞれ、下記式で表される基であるのが好ましい。
−O(Cn2nn1O(Cm2mm1−Ck2k+1
式中、n及びmはそれぞれ1〜3であり、n1及びm1はそれぞれ1〜3であり、kは1〜10である。
【化3】

式(II')中、式(II)と同一の符号は同一の意義であり;L25はL24と同義であり;R23、R24及びR25はそれぞれ、炭素原子数が1〜12のアルキル基を表し、n3は0〜4、n4は1〜4、及びn5は0〜4を表す。
【0073】
前記光学異方性層の形成に用いられる重合性液晶性組成物は、少なくとも1種以上含有しており、また、前記組成物とともに添加剤の1種以上を含有していてもよい。使用可能な添加剤の例として、空気界面配向制御剤、ハジキ防止剤、重合開始剤、重合性モノマー等について説明する。
【0074】
空気界面配向制御剤:
前記組成物は、空気界面においては空気界面のチルト角で配向する。このチルト角は、液晶性組成物に含まれる液晶性化合物の種類や添加剤の種類等で、その程度が異なるため、目的に応じて空気界面のチルト角を任意に制御する必要がある。
【0075】
前記チルト角の制御には、例えば、電場や磁場のような外場を用いることや添加剤を用いることができるが、添加剤を用いることが好ましい。このような添加剤としては、炭素原子数が6〜40の置換もしくは無置換脂肪族基、又は炭素原子数が6〜40の置換もしくは無置換脂肪族置換オリゴシロキサノキシ基を、分子内に1本以上有する化合物が好ましく、分子内に2本以上有する化合物が更に好ましい。例えば、空気界面配向制御剤としては、特開2002−20363号公報に記載の疎水性排除体積効果化合物を用いることができる。
また、特開2009−193046号公報等に記載のフルオロ脂肪族基含有ポリマーも同様な作用があるので空気界面配向制御剤として添加することができる。
【0076】
空気界面側の配向制御用添加剤の添加量としては、前記組成物(塗布液の場合は固形分、以下同様である)に対して、0.001質量%〜20質量%が好ましく、0.01質量%〜10質量%が更に好ましく、0.1質量%〜5質量%がより更に好ましい。
【0077】
ハジキ防止剤:
前記組成物に添加し、該組成物の塗布時のハジキを防止するための材料としては、一般に高分子化合物を好適に用いることができる。
使用するポリマーとしては、前記組成物の傾斜角変化や配向を著しく阻害しない限り、特に制限はない。
ポリマーの例としては、特開平8−95030号公報に記載があり、特に好ましい具体的なポリマーの例としてはセルロースエステル類を挙げることができる。セルロースエステルの例としては、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、ヒドロキシプロピルセルロース及びセルロースアセテートブチレートを挙げることができる。
前記組成物の配向を阻害しないように、ハジキ防止目的で使用されるポリマーの添加量は、前記組成物に対して一般に0.1〜10質量%の範囲にあり、0.1〜8質量%の範囲にあることがより好ましく、0.1〜5質量%の範囲にあることがさらに好ましい。
【0078】
重合開始剤:
前記組成物は、重合開始剤を含有しているのが好ましい。重合開始剤を含有する前記組成物を用いると、液晶相形成温度まで加熱した後、重合させ冷却することによって液晶状態の配向状態を固定化して、光学異方性層を作製することもできる。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応と電子線照射による重合反応が含まれるが、熱により支持体等が変形、変質するのを防ぐためにも、光重合反応又は電子線照射による重合反応が好ましい。
【0079】
光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号明細書記載)、アクリジン及びフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許4239850号明細書記載)及びオキサジアゾール化合物(米国特許4212970号明細書記載)等が挙げられる。
光重合開始剤の使用量は、前記組成物の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがさらに好ましい。
【0080】
重合性モノマー:
前記組成物には、重合性のモノマーを添加してもよい。本発明で使用できる重合性モノマーとしては、併用される液晶化合物と相溶性を有し、液晶性組成物の配向阻害を著しく引き起こさない限り、特に限定はない。これらの中では重合活性なエチレン性不飽和基、例えばビニル基、ビニルオキシ基、アクリロイル基及びメタクリロイル基などを有する化合物が好ましく用いられる。上記重合性モノマーの添加量は、併用される液晶化合物に対して一般に0.5〜50質量%の範囲にあり、1〜30質量%の範囲にあることが好ましい。また反応性官能基数が2以上のモノマーを用いると、配向膜との密着性を高める効果が期待できるため、特に好ましい。
【0081】
前記組成物は、塗布液として調製してもよい。塗布液の調製に使用する溶剤としては、汎用の有機溶剤が好ましく用いられる。汎用の有機溶剤の例には、アミド系溶剤(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド系溶剤(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環系溶剤(例、ピリジン)、炭化水素系溶剤(例、トルエン、ヘキサン)、アルキルハライド系溶剤(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル系溶剤(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン系溶剤(例、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン)、エーテル系溶剤(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。エステル系溶剤及びケトン系溶剤が好ましく、特にケトン系溶剤が好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
【0082】
前記光学異方性層は、前記組成物を、配向状態とし、その配向状態を固定することで、作製することができる。以下に、製造方法の一例について説明するが、この方法に限定されるものではない。
まず、重合性液晶性化合物を少なくとも含有する組成物を支持体の表面上(配向膜を有する場合は配向膜表面)に塗布する。所望により加熱等して、所望の配向状態で配向させる。次に、重合反応等を進行させて、その状態を固定して、光学異方性層を形成する。この方法に用いられる前記組成物に添加可能な添加剤の例としては、前記した空気界面配向制御剤、ハジキ防止剤、重合開始剤、重合性モノマー等が挙げられる。
【0083】
塗布は、公知の方法(例えば、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法)により行うことができる。
【0084】
均一に配向した状態を実現するためには、配向膜を利用するのが好ましい。配向膜は、ポリマー膜(例えば、ポリビニルアルコール膜及びイミド膜等)の表面をラビング処理することで形成されるものが好ましい。本発明に利用するのに好ましい配向膜の例には、特開2006−276203号公報の[0130]〜[0175]に記載のあるアクリル酸コポリマー又はメタクリル酸コポリマーの配向膜が含まれる。当該配向膜を利用すると、液晶化合物のゆらぎを抑制でき高コントラスト化が達成できるので好ましい。
【0085】
次に、配向状態を固定するために、重合を実施するのが好ましい。前記組成物中に光重合開始剤を含有させ、光照射により重合を開始するのが好ましい。光照射には、紫外線を用いることが好ましい。照射エネルギーは、10mJ/cm2〜50J/cm2であることが好ましく、50mJ/cm2〜800mJ/cm2であることがさらに好ましい。光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよい。また、雰囲気の酸素濃度は重合度に関与するため、空気中で所望の重合度に達しない場合には、窒素置換等の方法により酸素濃度を低下させることが好ましい。好ましい酸素濃度としては、10%以下が好ましく、7%以下がさらに好ましく、3%以下がよりさらに好ましい。
【0086】
本発明で配向状態が固定化された状態とは、その配向が保持された状態が最も典型的、且つ好ましい態様ではあるが、それだけには限定されず、具体的には、通常0℃〜50℃、より過酷な条件下では−30℃〜70℃の温度範囲において、該固定化された組成物に流動性が無く、また外場や外力によって配向形態に変化を生じさせることなく、固定化された配向形態を安定に保ち続けることができる状態を指すものである。なお、配向状態が最終的に固定化され光学異方性層が形成された際に、前記組成物はもはや液晶性を示す必要はない。例えば、結果的に熱、光等による反応により重合又は架橋反応が進行し、高分子量化して、液晶性化合物が液晶性を失ってもよい。
【0087】
前記光学異方性層の厚さについては特に制限されないが、一般的には、0.1〜10μm程度であるのが好ましく、0.5〜5μm程度であるのがより好ましい。
【0088】
前記光学異方性層の形成には、配向膜を利用してもよく、配向膜としては、ポリビニルアルコール又は変性ポリビニルアルコールを主成分とする膜の表面をラビング処理したもの等を利用することができる。
【0089】
前記光学異方性層の他の態様は、主軸が厚み方向において傾斜した光学異方性層である。この態様では、主軸が厚み方向において傾斜しているフィルムであるのが好ましい。ここで、フィルムの「主軸」とは、KOBRA 21ADH又はWRが算出した屈折率楕円体の主屈折率、nx、ny、nzにおけるフィルム厚さ方向の主屈折率nzをいう。また、「厚み方向において傾斜している」とは、フィルム面の法線方向に対して、フィルム面内の任意の方向を傾斜方位として、フィルム面方向に角度θt°(但し0°<θt<90°を満足する。以下、θtを「傾斜角」という)だけ傾斜していることを意味する。すなわち、波長550nmにおいて、位相差フィルムの遅相軸に直交した法線を含む面内(入射面)において、前記法線からフィルム面方向に40°傾いた方向から測定したレターデーションR[+40°]と前記法線から逆に40°傾斜した方向から測定したレターデーションR[−40°](但し、R[−40°]<R[+40°]とする)の比が、1<R[+40°]/R[−40°]であることを意味する。前記光学異方性層は、フィルム面法線方向に対して傾斜角度47°以下で3≦R[+40°]/R[−40°]であるのが好ましく、より好ましくは傾斜角度9〜47°で8≦R[+40°]/R[−40°]が8以上、また、さらに好ましいのは傾斜角度20〜47°でR[+40°]/R[−40°]が8〜15の範囲であるのが好ましい。また、バリア素子が有する液晶セルがTN、ECB及びOCBモードのいずれの態様においても、前記光学異方性層の傾斜角度θtは、47°以下であるのがより好ましく、9〜47°であるのがさらに好ましく、20〜47°であるのがより特に好ましい。
【0090】
なお、フィルムの主軸のフィルム面に対する傾斜角度は、以下の方法により測定することができる。なお、以下の測定方法において許容される誤差は、本発明に用いられるフィルムの主軸の傾斜角度についても許容されるであろう。
フィルムの主軸の傾斜角度は、KOBRA 21ADH又はWR(王子計測機器(株)製)を用い、フィルムの幅方向(TD方向)を傾斜軸とした測定を行い、傾斜角度40度での位相差及び傾斜角度−40度での位相差から、主軸の傾斜角度を測定する。なお、測定波長は550nmとする。
また、主軸の傾斜角のバラツキは、以下の方法により測定することができる。
フィルムの幅方向に10点、及び搬送方向10点に等間隔でサンプリングを行い、上記方法で主軸の傾斜角を測定し、その最大値と最小値の差を、主軸の傾斜角のバラツキとすることができる。
なお、遅相軸角度は、前記したReの測定によって決定することができ、そのバラツキも、フィルムの幅方向に10点、及び搬送方向10点に等間隔に測定を行った際の最大値と最小値の差で決定することができる。
【0091】
前記態様の光学異方性層は、例えば、以下の方法で製造することができる。
熱可塑性樹脂を含有する組成物のフィルム状の溶融物を、周速が互いに異なる2つのロール間を通過させること、及び所望によりさらに延伸すること、を含む方法により製造することができる。この方法により、所望の光学特性を満足するポリマーフィルムを安定的に及び簡易に製造することができる。より具体的には、溶融状態で周速が互いに異なる2つのロール間を通過させることにより、光学特性のバラツキが無く又は小さく、フィルム表面に接触傷などの欠陥を発生させずに、安定的に所望の光学特性を満足するポリマーフィルムを製造することができる。光学特性のバラツキが無い又は少ない点、及びフィルム表面に接触傷などの欠陥がない点で、下記方法で製造するフィルムは、特開平7−333437号公報や特開平6−222213号公報に記載されている、非溶融状態のフィルムを周速の異なるロール間を通過させて光軸を傾斜させたフィルムと相違する。
以下、この製造方法について詳細に説明する。
【0092】
前記方法では、熱可塑性樹脂を含有する組成物(「熱可塑性樹脂組成物」という場合がある)を溶融押出しする。溶融押出しをする前に、熱可塑性樹脂組成物をペレット化するのが好ましい。ペレット化は、前記熱可塑性樹脂組成物を乾燥した後、2軸混練押出機を用い150℃〜300℃で溶融後、ヌードル状に押出したものを空気中あるいは水中で固化し裁断することにより作製できる。また、押出機による溶融後、水中に口金より直接押出しながらカットするアンダーウオーターカット法等によりペレット化することもできる。ペレット化に利用される押出機としては、単軸スクリュー押出機、非かみ合い型異方向回転二軸スクリュー押出機、かみ合い型異方向回転二軸スクリュー押出機、かみ合い型同方向回転二軸スクリュー押出機などを用いることができる。押出機の回転数は10rpm〜1000rpmが好ましく、より好ましくは20rpm〜700rpmである。押出滞留時間は10秒〜10分、より好ましくは20秒〜5分である。
ペレットの大きさについては特に制限はないが、一般的には10mm3〜1000mm3程度であり、より好ましくは30mm3〜500mm3程度である。
【0093】
溶融押出し前に、ペレット中の水分を減少させることが好ましい。好ましい乾燥温度は40〜200℃、さらに好ましくは60〜150℃である。これにより含水率を1.0質量%以下にすることが好ましく、0.1質量%以下にすることがさらに好ましい。乾燥は空気中で行ってもよく、窒素中で行ってもよく、真空中で行ってもよい。
【0094】
次に、乾燥したペレットを、押出機の供給口を介してシリンダー内に供給し、混練及び溶融させる。シリンダー内は、例えば、供給口側から順に、供給部、圧縮部、計量部とで構成される。押出機のスクリュー圧縮比は1.5〜4.5が好ましく、シリンダー内径に対するシリンダー長さの比(L/D)は20〜70が好ましく、シリンダー内径は30mm〜150mmが好ましい。押出温度は、熱可塑性樹脂の溶融温度に応じて決定されるが、一般的には、190〜300℃程度が好ましい。さらに残存酸素による溶融樹脂の酸化を防止するため、押出機内を不活性(窒素等)気流中、あるいはベント付き押出機を用い真空排気しながら実施するのも好ましい。
【0095】
熱可塑性樹脂組成物中の異物濾過のためブレーカープレート式の濾過やリーフ型ディスクフィルターを組み込んだ濾過装置を設けることが好ましい。濾過は1段で行ってもよく、多段濾過で行ってもよい。濾過精度は15μm〜3μmが好ましく、さらに好ましくは10μm〜3μmである。濾材としてはステンレス鋼を用いることが望ましい。濾材の構成は、線材を編んだもの、金属繊維もしくは金属粉末を焼結したもの(焼結濾材)が使用でき、中でも焼結濾材が好ましい。
【0096】
吐出量の変動を減少させ厚み精度を向上させるために、押出機とダイの間にギアポンプを設けることが好ましい。これによりダイ内の樹脂圧力変動巾を±1%以内にすることができる。ギアポンプによる定量供給性能を向上させるために、スクリューの回転数を変化させて、ギアポンプ前の圧力を一定に制御する方法も用いることができる。
【0097】
前記の如く構成された押出機によって溶融され、必要に応じ濾過機、ギアポンプを経由して溶融樹脂がダイに連続的に送られる。ダイはTダイ、フィッシュテールダイ、ハンガーコートダイの何れのタイプでも構わない。またダイの直前に樹脂温度の均一性アップのためスタティックミキサーを入れることも好ましい。Tダイ出口部分のクリアランスは一般的にフィルム厚みの1.0〜10倍がよく、好ましくは1.2〜5倍である。
ダイは5〜50mm間隔で厚み調整可能であることが好ましい。また下流のフィルム厚み、厚み偏差を計算し、その結果をダイの厚み調整にフィードバックさせる自動厚み調整ダイも有効である。
単層製膜装置以外にも、多層製膜装置を用いて製造も可能である。
このようにして、樹脂が供給口から押出機に入ってからダイから出るまでの滞留時間は3分〜40分が好ましく、さらに好ましくは4分〜30分である。
【0098】
次に、熱可塑性樹脂の溶融物をダイからフィルム状に押出し、2つのロール(例えば、タッチロール及びキャスティングロール)間を通過させ、冷却固化して(タッチロール法)、フィルムを得る。前記方法では、互いに異なる周速で回転している2つのロール間にフィルム状の溶融物を通過させることで、フィルムにせん断を与えて、(主軸が法線方向に対して傾斜した)ポリマーフィルムを作製することができる。直径の大きなロールを用いるとフィルムにかかるせん断が大きくなり、R[+40°]/R[−40°]の値が大きくなる(主軸の傾斜角度が大きくなる)傾向がある。直径が、350〜600nm(より好ましくは350〜500nm)の2つのロール(例えば、タッチングロールとキャスティングロール)を使用するのが好ましい。直径の大きなロールを用いると、フィルム状の溶融物とロールの接触面積が広くなり、せん断がかかる時間がより長くなるため、R[+40°]/R[−40°]の値が大きい(主軸がより大きな傾斜角度で傾斜した)フィルムを、しかもそのバラツキを抑制しつつ製造することができる。なお、本発明の方法では、2つのロールの直径は等しくても、異なっていてもよい。また、フィルムの噛み込み性も向上するので、より安定的に製造することができる。一方、フィルム状の溶融物の幅方向の温度分布が顕著であると、均一性を維持するのが困難になるので、前記方法では、ダイから溶融押出しされ2つのロールの少なくとも一方に接触する直前まで、溶融物の幅方向の温度分布を軽減するのが好ましく、具体的には、幅方向の温度分布を5℃以内にするのが好ましい。温度分布を軽減するためには、溶融物のダイと2つのロールとの間の通路の少なくとも一部に、断熱機能又は熱反射機能のある部材を配置し、該溶融物を外気から遮蔽するのが好ましい。この様に、断熱部材を通路に配置して、外気から遮蔽することで、外部環境、例えば風、の影響を抑えることができ、フィルムの幅方向の温度分布を抑制することができる。フィルム状の溶融物の幅方向の温度分布は、±3℃以内がより好ましく、±1℃以内がよりさらに好ましい。この様に、ロール間を通過させる直前まで、フィルム状溶融物の幅方向の温度を均一にするバラツキを抑制することができる。
なお、フィルム状の溶融物の温度分布は、接触式温度計や非接触式温度計によって測定することができるが、特に非接触式の赤外温度計を用いて測定することができる。
【0099】
よりバラツキをなくす方法として、フィルム状の溶融物がキャスティングロールに接触する際の密着性を上げる方法がある。具体的には、静電印加法、エアナイフ法、エアーチャンバー法、バキュームノズル法などの方法を組み合わせて、密着性を向上させることができる。このような密着向上法は、フィルム状の溶融物の全面に実施してもよく、一部に実施してもよい。
【0100】
また、供給された熱可塑性樹脂組成物の溶融物を2つのロール表面で連続的に挟圧してフィルム状に成形する従来の方法に加え、ロール間に圧力を5〜500MPaかけるのが好ましい。より好ましい圧力は、20〜300MPaであり、さらに好ましくは、25〜200MPaであり、特に好ましくは30〜150MPaである。
【0101】
本発明では、2つのロールの材質は金属であることが好ましく、より好ましくはステンレスであり、表面をメッキ処理されたロールも好ましい。一方、ゴムロールやゴムでライニングした金属ロールは、表面の凹凸が大きく、フィルムの表面に傷が付き易いので、使用しないほうが好ましい。
タッチロールについては、例えば特開平11−314263号公報、特開2002−36332号公報、特開平11−235747号公報、国際公開第97/28950号パンフレット、特開2004−216717号公報、特開2003−145609号公報記載のものを利用できる。
【0102】
フィルム状の溶融物を通過させる2つのロール(例えばキャスティングロールとタッチロール)以外に、キャスティングロールを1本以上使用して、フィルムを冷却するのが好ましい。タッチロールは、通常は最上流側(ダイに近い方)の最初のキャスティングロールにタッチさせるように配置する。一般的には3本の冷却ロールを用いることが比較的よく行われているが、この限りではない。複数本あるキャスティングロールの間隔は、面間で0.3mm〜300mmが好ましく、より好ましくは、1mm〜100mm、さらに好ましくは3mm〜30mmである。
【0103】
また、タッチロールやキャスティングロールの表面は、算術平均高さRaが通常100nm以下、好ましくは50nm以下、さらに好ましくは25nm以下である。
【0104】
ここで、2つのロールの周速比とは、2つのロールの周速度の比率(第1のロールの周速度/第2のロールの周速度)を意味する。但し、第1のロールの周速度<第2のロールの周速度とする。2つのロールの周速差が大きいほど、即ち、上記周速比が小さいほど、得られるフィルムのR[+40°]/R[−40°]の値が大きくなる(主軸の傾斜角度は大きくなる)傾向があるが、一方、周速差が大きすぎると、得られるフィルムの表面に傷が付きやすくなる。具体的には、R[+40°]/R[−40°]の値が大きい(主軸の傾斜角度βが大きい、例えば、20°以上の)ポリマーフィルムを製造する際は、2つのロールの周速比は、0.55〜0.80とすることが好ましく、0.55〜0.74とすることがより好ましい。但し、傷が付かないよう、下記条件(i)〜(iii)を満足することが好ましい。
(i) 2つのロールの少なくとも一方に接触する直前の熱可塑性樹脂組成物の溶融物の粘弾性が、損失弾性率>貯蔵弾性率を示す温度領域(具体的にはTg+50℃〜Tg+70℃以上(Tgは熱可塑性樹脂のガラス転移点))にする、
(ii) ダイから溶融押出しされたフィルム状の溶融物が、2つのロールの少なくとも一方に接触する直前まで、溶融物の幅方向の温度分布を±5℃以内にする、
(iii) 2つのロールとして、少なくとも表面が金属製のロールを使用する。
【0105】
2つのロールは、連れ周り駆動でも独立駆動でもよいが、光軸のバラツキを制御するためには、独立駆動であることが好ましい。本発明では、2つのロールが、互いに異なる周速で駆動されることは上記した通りであるが、さらに、2つのロールの表面温度に差をつけてもよい。好ましい温度差は5℃〜80℃であり、より好ましくは20℃〜80℃、さらに好ましくは20℃〜60℃である。その際、2つのロールの温度は、好ましくは60℃〜160℃、より好ましくは70℃〜150℃、さらに好ましくは80℃〜140℃に設定する。このような温度制御は、タッチロール内部に温調した液体、気体を通すことで達成することができる。
【0106】
溶融物を延製膜した後、両端をトリミングすることが好ましい。トリミングで切り落とした部分は破砕し、再度原料として使用してもよい。
また片端あるいは両端に厚みだし加工(ナーリング処理)を行うことも好ましい。厚みだし加工による凹凸の高さは1μm〜50μmが好ましく、より好ましくは3μm〜20μmである。厚みだし加工は両面に凸になるようにしても、片面に凸になるようにしても構わない。厚みだし加工の幅は1mm〜50mmが好ましく、より好ましくは3mm〜30mmである。押出し加工は室温〜300℃で実施できる。巻き取る前に、片面もしくは両面に、ラミフィルムを付けることも好ましい。ラミフィルムの厚みは5μm〜100μmが好ましく、10μm〜50μmがより好ましい。材質はポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン等、特に限定されない。
巻き取り張力は、好ましくは2kg/m幅〜50kg/幅であり、より好ましくは5kg/m幅〜30kg/幅である。
【0107】
光学異方性層に要求される特性を満足するポリマーフィルムを製造するために、製膜した後、延伸及び/又は緩和処理を行ってもよい。例えば、以下の(a)〜(i)の組合せで各工程を実施することができる。
(a) 横延伸
(b) 横延伸→緩和処理
(c) 縦延伸→横延伸
(d) 縦延伸→横延伸→緩和処理
(e) 縦延伸→緩和処理→横延伸→緩和処理
(f) 横延伸→縦延伸→緩和処理
(g) 横延伸→緩和処理→縦延伸→緩和処理
(h) 縦延伸→横延伸→縦延伸
(i) 縦延伸→横延伸→縦延伸→緩和処理
これらの中で特に必要となるのが、(a)の横延伸工程である。
【0108】
横延伸はテンターを用い実施することができる。即ちフィルムの幅方向の両端部をクリップで把持し、横方向に拡幅することで延伸する。この時、テンター内に所望の温度の風を送ることで延伸温度を制御できる。本明細書中、「延伸温度」(以下、「横延伸温度」とも言う)は、フィルム膜面温度によって特定する(本明細書中、横延伸以外の各延伸工程においても、延伸温度は、フィルム膜面温度によって特定する)。延伸温度が、Tg−40℃〜Tg+40℃となるように制御して行うことが好ましい。すなわち、前記横延伸工程の横延伸温度はTg−40℃〜Tg+40℃が好ましく、より好ましくはTg−20℃〜Tg+20℃、さらに好ましくはTg−10℃〜Tg+10℃である。ここで、横延伸工程における横延伸温度とは、延伸開始点から延伸終了点までの間の平均温度を意味する。
横延伸工程の延伸時間は、1秒〜10分が好ましく、より好ましくは2秒〜5分、さらに好ましくは5秒〜3分である。延伸温度および延伸時間を上記の範囲内に制御することにより、溶融挟圧工程で形成されるフィルム中に厚み方向の傾斜構造が緩和し難く、延伸後のフィルムの傾斜構造を大きく維持することができるとともに、本発明の好ましい範囲内のR[+40°]/R[−40°]を形成することができる。前記横延伸工程の延伸温度はテンター内に所望の温度の風を送ることで制御できる。
また、好ましい横延伸倍率は1.01〜4倍、より好ましく1.03〜3.5倍、さらに好ましくは1.1〜3.0倍である。横延伸倍率は1.51〜3.0倍であるのが特に好ましい。
【0109】
前記横延伸は、テンター内でクリップを幅方向に拡幅する通常の横延伸方法に従って実行してもよいし、また同様に、クリップで把持して拡幅する下記の延伸方法に従って、実行することもできる。
【0110】
(同時2軸延伸)
通常の横延伸方法と同様、横方向にクリップを拡幅するが、それと同時に縦方向に延伸、収縮する方法である。具体的には、実開昭55−93520号、特開昭63−247021号、特開平6−210726号、特開平6−278204号、特開2000−334832号、特開2004−106434号、特開2004−195712号、特開2006−142595号、特開2007−210306号、特開2005−22087号、特表2006−517608号、特開2007−210306号各公報に記載されていて、いずれの公報に記載の方法も参照することができる。
【0111】
(斜め延伸)
通常の横延伸方法と同様、横方向にクリップを拡幅するが、左右のクリップの搬送速度を変えることで斜め方向に延伸する方法である。これによりMD方向から30°〜150°、より好ましくは40°〜140°、さらに好ましくは50°〜130°に延伸することができ、具体的には、特開2002−22944号、特開2002−86554号、特開2004−325561号、特開2008−23775号、特開2008−110573号、特開2000−9912号、特開2003−342384号、特開2004−20701号、特開2004−258508号、特開2006−224618号、特開2006−255892号、特開2008−221834号、特開2003−342384号、国際公開WO2003/102639号各公報に記載されていて、いずれの公報に記載の方法も参照することができる。
【0112】
このような延伸の前に予熱、延伸の後に熱固定を行うことで延伸後のRe、Rth分布を小さくし、ボーイングに伴う配向角のばらつきを小さくできる。予熱、熱固定はどちらか一方であってもよいが、両方行うのがより好ましい。これらの予熱、熱固定はクリップで把持して行うのが好ましく、即ち延伸と連続して行うのが好ましい。
予熱は延伸温度より1℃〜50℃程度高い温度で行うことができ、好ましく2℃〜40℃以下、さらに好ましくは3℃以上30℃以下高くすることが好ましい。好ましい予熱時間は1秒以上10分以下であり、より好ましくは5秒以上4分以下、さらに好ましくは10秒以上2分以下である。予熱の際、テンターの幅はほぼ一定に保つことが好ましい。ここで「ほぼ」とは未延伸フィルムの幅の±10%を指す。
熱固定は延伸温度より1℃以上50℃以下低い温度で行うことができ、より好ましく2℃以上40℃以下、さらに好ましくは3℃以上30℃以上低くする。特に好ましくは延伸温度以下でかつTg以下にするのが好ましい。好ましい予熱時間は1秒以上10分以下であり、より好ましくは5秒以上4分以下、さらに好ましくは10秒以上2分以下である。熱固定の際、テンターの幅はほぼ一定に保つことが好ましい。ここで「ほぼ」とは延伸終了後のテンター幅の0%(延伸後のテンター幅と同じ幅)〜−10%(延伸後のテンター幅より10%縮める=縮幅)を指す。延伸幅以上に拡幅すると、フィルム中に残留歪が発生しやすくRe、Rthの経時変動を増大し易く好ましくない。
【0113】
このような予熱、熱固定により配向角やRe、Rthのバラツキを小さくできるのは次の理由による。
(i)フィルムは幅方向に延伸され、直交方向(長手方向)に細くなろうとする(ネッキング現象)。このため横延伸前後のフィルムが引っ張られ応力が発生する。しかし幅方向両端はチャックで固定されており応力により変形を受け難く、幅方向の中央部は変形を受け易い。この結果、ネッキングによる応力は弓(bow)状に変形しボーイングが発生する。これにより面内のRe、Rthむらや配向軸の分布が発生する。
(ii)これを抑制するために、予熱側(延伸前)の温度を高くし、熱処理(延伸後)の温度を低くすると、ネックインはより弾性率の低い高温側(予熱)で発生し、熱処理(延伸後)では発生し難くなる。この結果、延伸後のボーイングを抑制できる。
【0114】
このような延伸によりさらに、Re、Rthの幅方向、長手方向のばらつきを、いずれも5%以下、より好ましくは4%以下、さらに好ましくは3%以下にできる。さらに配向角を90°±5°以下または0°±5°以下とすることができ、より好ましくは90°±3°以下または0°±3°以下、さらに好ましくは90°±1°以下または0°±1°以下とすることができる。
高速延伸処理を行ってもよく、好ましくは20m/分以上、より好ましくは25m/分以上、さらに好ましくは30m/分以上で延伸処理することができる。
【0115】
光学異方性層として利用可能なフィルムは、正の固有複屈折性を示す熱可塑性樹脂を含有する。熱可塑性樹脂は非晶性であるのが好ましい。種々の樹脂の固有複屈折については、MSDS、樹脂スペック表、高分子データベース等に記載があるので、それを参照することができる。また、いずれの書籍等にも記載されていない場合は、プリズムカップリング法に従って、測定することができる。また、本発明では、「非晶性樹脂」とは、該樹脂を製膜したフィルムについての熱分析測定を行った場合に、結晶融解ピークがないものをいう。上記性質を満足する限り、樹脂の種類については特に制限はない。熱可塑性樹脂の例には、環状オレフィン共重合体類、セルロースアシレート類、ポリエステル類、及びポリカーボネート類が含まれる。溶融押出し法を利用して作製する場合は、溶融押出し成形性が良好な材料を利用するのが好ましく、その観点では、環状オレフィン共重合体類、セルロースアシレート類を選択するのが好ましい。1種の当該樹脂を含有していてもよいし、互いに異なる2種以上の当該樹脂を含有していてもよい。中でも、セルロースアシレート類、及び付加重合によって得られた環状オレフィン樹脂が好ましい。
【0116】
前記環状オレフィン共重合体類の例には、ノルボルネン系化合物の重合により得られた樹脂が含まれる。開環重合及び付加重合のいずれの重合方法によって得られる樹脂であってもよい。
付加重合及びそれにより得られる樹脂としては、例えば、特許3517471号公報、特許3559360号公報、特許3867178号公報、特許3871721号公報、特許3907908号公報、特許3945598号公報、特表2005−527696号公報、特開2006−28993号公報、特開2006−11361号公報、国際公開WO第2006/004376号公報、国際公開WO第2006/030797号公報パンフレットに記載されているものが挙げられる。中でも、特許3517471号公報に記載のものが特に好ましい。
開環重合及びそれにより得られる樹脂としては、国際公開WO98第98/14499号公報パンフレット、特許3060532号公報、特許3220478号公報、特許3273046号公報、特許3404027号公報、特許3428176号公報、特許3687231号公報、特許3873934号公報、特許3912159号公報に記載のものが挙げられる。中でも、国際公開WO第98/14499号公報パンフレット、特許3060532号公報に記載のものが特に好ましい。
これらの環状オレフィンの中でも付加重合のもののほうがより好ましい。市販品を用いてもよく、特に押し出し成形時に発生するゲルを抑制しやすい、「TOPAS #6013」(Polyplastics社製)を用いることができる。
【0117】
前記セルロースアシレート類の例には、セルロース単位中の3個の水酸基の少なくとも一部がアシル基で置換されたいずれのセルロースアシレートも含まれる。当該アシル基(好ましくは炭素数3〜22のアシル基)は、脂肪族アシル基及び芳香族アシル基のいずれであってもよい。中でも、脂肪族アシル基を有するセルロースアシレートが好ましく、炭素数3〜7の脂肪族アシル基を有するものがより好ましく、炭素数3〜6の脂肪族アシル基を有するものがさらに好ましく、炭素数は3〜5の脂肪族アシル基を有するものがよりさらに好ましい。これらのアシル基は複数種が1分子中に存在していてもよい。好ましいアシル基の例には、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基などが含まれる。これらの中でも、さらに好ましいものは、アセチル基、プロピオニル基及びブチリル基から選択される1種又は2種以上を有するセルロースアシレートであり、よりさらに好ましいものは、アセチル基及びプロピオニル基の双方を有するセルロースアシレート(CAP)である。CAPは、樹脂の合成が容易であること、押し出し成形の安定性が高いこと、の点で好ましい。
【0118】
溶融押出し法によりフィルムを作製する場合は、用いるセルロースアシレートは、以下の式(S−1)及び(S−2)を満足することが好ましい。以下の式を満足するセルロースアシレートは、融解温度が低く、融解性が改善されているので、溶融押出し製膜性に優れる。
式(S−1) 2.5≦X+Y≦3.0
式(S−2) 1.25≦Y≦3.0
式中、Xはセルロースの水酸基に対するアセチル基の置換度を表し、Yはセルロースの水酸基に対するアシル基の置換度の総和を表す。本明細書でいう「置換度」とは、セルロースの2位、3位および6位のそれぞれの水酸基の水素原子が置換されている割合の合計を意味する。2位、3位および6位の全ての水酸基の水素原子がアシル基で置換された場合は置換度が3となる。
さらに、下記式を満足するセルロースアシレートを用いるのがより好ましく、
2.6≦X+Y≦2.95
2.0≦Y≦2.95
下記式を満足するセルロースアシレートを用いるのがさらに好ましい。
2.7≦X+Y≦2.95 2.3≦Y≦2.9
【0119】
セルロースアシレート類の質量平均重合度及び数平均分子量については特に制限はない。一般的には、質量平均重合度が350〜800程度、及び数平均分子量が70000〜230000程度である。前記セルロースアシレート類は、アシル化剤として酸無水物や酸塩化物を用いて合成できる。工業的に最も一般的な合成方法では、綿花リンタや木材パルプなどから得たセルロースをアセチル基及び他のアシル基に対応する有機酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸)又はそれらの酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸)を含む混合有機酸成分でエステル化してセルロースエステルを合成する。前記式(S−1)及び(S−2)を満足するセルロースアシレートの合成方法としては、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)7〜12頁の記載や、特開2006−45500号公報、特開2006−241433号公報、特開2007−138141号公報、特開2001−188128号公報、特開2006−142800号公報、特開2007−98917号公報記載の方法を参照することができる。
【0120】
前記ポリエステル類の例には、環状アセタール骨格を有するジオール単位であるポリエステル樹脂が挙げられ、特にジカルボン酸単位とジオール単位とを含みジオール単位中の1〜80モル%が環状アセタール骨格を有するジオール単位であるポリエステル樹脂が、複屈折が小さく本発明で好ましく使用される。
【0121】
光学異方性層に利用されるポリマーフィルムは、上記熱可塑性樹脂以外の材料を含有していてもよいが、上記熱可塑性樹脂の1種又は2種以上を主成分(組成物中の全材料中、最も含有割合の高い材料を意味し、当該樹脂を2種以上含有する態様では、それらの合計の含有割合が、他の材料のそれぞれの含有割合より高いことを意味する)として含有しているのが好ましい。また、前記ポリマーフィルムを液晶ディスプレイに用いた場合の正面コントラスト比特性を高めるには、上記熱可塑性樹脂を1種のみ用いることがより好ましい。なお、この態様における「1種のみを用いる」とは、「主原料となるポリマー材料を1種のみ用いる」ことを意味し、下記の1種以上の添加剤が添加されていても、本態様から排除されるものではない。
【0122】
上記熱可塑性樹脂以外の材料としては、種々の添加剤が挙げられ、その例には、安定化剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、可塑剤、微粒子、及び光学調整剤が含まれる。
【0123】
安定化剤:
光学異方性層に利用されるポリマーフィルムは、安定化剤の少なくとも一種を含有していてもよい。安定化剤は、前記熱可塑性樹脂を加熱溶融する前に又は加熱溶融時に添加することが好ましい。安定化剤は、フィルム構成材料の酸化防止、分解して発生した酸の捕捉、光または熱によるラジカル種基因の分解反応を抑制または禁止する等の作用がある。安定化剤は、解明されていない分解反応などを含む種々の分解反応によって、着色や分子量低下等の変質及び揮発成分の生成等が引き起こされるのを抑制するのに有用である。樹脂を製膜するための溶融温度においても安定化剤自身が分解せずに機能することが求められる。安定化剤の代表的な例には、フェノール系安定化剤、亜リン酸系安定化剤(フォスファイト系)、チオエーテル系安定化剤、アミン系安定化剤、エポキシ系安定化剤、ラクトン系安定化剤、アミン系安定化剤、金属不活性化剤(スズ系安定化剤)などが含まれる。これらは、特開平3−199201号公報、特開平5−1907073号公報、特開平5−194789号公報、特開平5−271471号公報、特開平6−107854号公報などに記載があり、本発明ではフェノール系や亜リン酸系安定化剤の少なくとも一方以上を用いることが好ましい。フェノール系安定化剤の中でも、特に分子量500以上のフェノール系安定化剤を添加することが好ましい。好ましいフェノール系安定化剤としては、ヒンダードフェノール系安定化剤が挙げられる。
【0124】
これらの素材は、市販品として容易に入手可能であり、下記のメーカーから販売されている。チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社から、Irganox 1076、Irganox 1010、Irganox 3113、Irganox 245、Irganox 1135、Irganox 1330、Irganox 259、Irganox 565、Irganox 1035、Irganox 1098、Irganox 1425WL、として入手することができる。また、旭電化工業株式会社から、アデカスタブ AO−50、アデカスタブ AO−60、アデカスタブ AO−20、アデカスタブ AO−70、アデカスタブ AO−80として入手できる。さらに、住友化学株式会社から、スミライザーBP−76、スミライザーBP−101、スミライザーGA−80、として入手できる。また、シプロ化成株式会社からシーノックス326M、シーノックス336B、としても入手することが可能である。
【0125】
また、上記の亜リン酸系安定化剤としては、特開2004−182979号公報の[0023]〜[0039]に記載の化合物をより好ましく用いることができる。亜リン酸エステル系安定化剤の具体例としては、特開昭51−70316号公報、特開平10−306175号公報、特開昭57−78431号公報、特開昭54−157159号公報、特開昭55−13765号公報に記載の化合物を挙げることができる。さらに、その他の安定化剤としては、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)17頁〜22頁に詳細に記載されている素材を好ましく用いることができる。
【0126】
上記亜リン酸エステル系安定化剤は、高温での安定性を保つために高分子量であることが有用であり、分子量500以上であり、より好ましくは分子量550以上であり、特には分子量600以上が好ましい。さらに、少なくとも一置換基は芳香族性エステル基であることが好ましい。また、亜リン酸エステル系安定化剤は、トリエステルであることが好ましく、リン酸、モノエステルやジエステルの不純物の混入がないことが望ましい。これらの不純物が存在する場合は、その含有量が5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは3質量%以下であり、特には2質量%以下である。これらは、特開2004−182979号公報の[0023]〜[0039]に記載の化合物などを挙げることが、さらに特開昭51−70316号公報、特開平10−306175号公報、特開昭57−78431号公報、特開昭54−157159号公報、特開昭55−13765号公報に記載の化合物も挙げることができる。亜リン酸エステル系安定化剤の好ましい具体例として下記の化合物を挙げることができるが、本発明で用いることができる亜リン酸エステル系安定化剤はこれらに限定されるものではない。
【0127】
これらは、旭電化工業株式会社からアデカスタブ1178、同2112、同PEP−8、同PEP−24G、PEP−36G、同HP−10として、またクラリアント社からSandostab P−EPQとして市販されており、入手可能である。更に、フェノールと亜リン酸エステルを同一分子内に有する安定化剤も好ましく用いられる。これらの化合物については、さらに特開平10−273494号公報に詳細に記載されており、その化合物例は、前記安定化剤の例に含まれるが、これらに限定されるものではない。代表的な市販品として、住友化学株式会社から、スミライザーGPがある。これらは、住友化学株式会社から、スミライザーTPL、同TPM、同TPS、同TDPとして市販されている。旭電化工業株式会社から、アデカスタブAO−412Sとしても入手可能である。
【0128】
前記安定化剤は、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択される。好ましくは、熱可塑性樹脂の質量に対して、安定化剤の添加量は0.001〜5質量%が好ましく、より好ましくは0.005〜3質量%であり、さらに好ましくは0.01〜0.8質量%である。
【0129】
紫外線吸収剤:
光学異方性層に利用されるポリマーフィルムは、1種または2種以上の紫外線吸収剤を含有していてもよい。紫外線吸収剤は、劣化防止の観点から、波長380nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ、透明性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられる。特に好ましい紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系化合物やベンゾフェノン系化合物である。中でも、ベンゾトリアゾール系化合物は、セルロース混合エステルに対する不要な着色が少ないことから好ましい。これらは、特開昭60−235852号、特開平3−199201号、同5−1907073号、同5−194789号、同5−271471号、同6−107854号、同6−118233号、同6−148430号、同7−11056号、同7−11055号、同7−11056号、同8−29619号、同8−239509号、特開2000−204173号の各公報に記載がある。
紫外線吸収剤の添加量は、熱可塑性樹脂の0.01〜2質量%であることが好ましく、0.01〜1.5質量%であることがさらに好ましい。
【0130】
光安定化剤:
光学異方性層に利用されるポリマーフィルムは、1種または2種以上の光安定化剤を含有していてもよい。光安定化剤としては、ヒンダードアミン光安定化剤(HALS)化合物が挙げられ、より具体的には、米国特許第4,619,956号明細書の第5〜11欄及び米国特許第4,839,405号明細書の第3〜5欄に記載されているように、2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン化合物、またはそれらの酸付加塩もしくはそれらと金属化合物との錯体が含まれる。これらは、旭電化からアデカスタブLA−57、同LA−52、同LA−67、同LA−62、同LA−77として、またチバ・スペシャリティーケミカルズ社からTINUVIN 765、同144として市販されている。
【0131】
これらのヒンダードアミン系光安定化剤は、それぞれ単独で、或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらヒンダードアミン系光安定化剤は、勿論、可塑剤、安定化剤、紫外線吸収剤等の添加剤と併用してもよいし、これらの添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。その配合量は、本発明の効果を損なわない範囲で決定され、一般的には、熱可塑性樹脂100質量部に対して、0.01〜20質量部程度であり、好ましくは0.02〜15質量部程度、特に好ましくは0.05〜10質量部程度である。光安定化剤は、熱可塑性樹脂組成物の溶融物を調製するいずれの段階で添加してもよく、例えば、溶融物調製工程の最後に添加してもよい。
【0132】
可塑剤:
光学異方性層に利用されるポリマーフィルムは、可塑剤を含有していてもよい。可塑剤の添加は、機械的性質向上、柔軟性を付与、耐吸水性付与、水分透過率低減等のフィルム改質の観点において好ましい。また、本発明の光学フィルムを溶融製膜法で製造する場合は、用いる熱可塑性樹脂のガラス転移温度よりも、可塑剤の添加によりフィルム構成材料の溶融温度を低下させることを目的として、または無添加の熱可塑性樹脂よりも同じ加熱温度において粘度を低下させることを目的として、添加されるであろう。ポリマーフィルムには、例えばリン酸エステル誘導体、カルボン酸エステル誘導体から選択される可塑剤が好ましく用いられる。また、特開2003−12859号に記載の重量平均分子量が500以上10000以下であるエチレン性不飽和モノマーを重合して得られるポリマー、アクリル系ポリマー、芳香環を側鎖に有するアクリル系ポリマーまたはシクロヘキシル基を側鎖に有するアクリル系ポリマーなども好ましく用いられる。
【0133】
微粒子:
光学異方性層に利用されるポリマーフィルムは、微粒子を含有していてもよい。微粒子としては、無機化合物の微粒子や有機化合物の微粒子が挙げられ、いずれでもよい。本発明における熱可塑性樹脂に含まれる微粒子の平均一次粒子サイズは、ヘイズを低く抑えるという観点から5nm〜3μmであることが好ましく、5nm〜2.5μmであることがより好ましく、10nm〜2.0μmであることが更に好ましい。ここで、微粒子の平均一次粒子サイズは、熱可塑性樹脂を透過型電子顕微鏡(倍率50万〜100万倍)で観察し、粒子100個の一次粒子サイズの平均値を求めることにより決定する。微粒子の添加量は、熱可塑性樹脂に対して0.005〜1.0質量%であることが好ましく、より好ましくは0.01〜0.8質量%であり、さらに好ましくは0.02〜0.4質量%である。
【0134】
光学調整剤:
光学異方性層に利用されるポリマーフィルムは、光学調整剤を含有していてもよい。光学調整剤としてはレターデーション調整剤を挙げることができ、例えば、特開2001−166144号、特開2003−344655号、特開2003−248117号、特開2003−66230号各公報記載のものを使用することができる。光学調整剤を添加することによって、面内のレターデーション(Re)、厚み方向のレターデーション(Rth)を制御することができる。好ましい添加量は0〜10質量%であり、より好ましくは0〜8質量%、さらに好ましくは0〜6質量%である。
【0135】
2.液晶セル
本発明のバリア素子は、液晶セルを有する。液晶セルのモードについては特に制限はない。VAモード、IPSモード、OCBモード、TNモード、STNモードなど各種のモードの液晶セルを用いることが可能である。透過率が高い点で、TNモードの液晶セルが好ましく、省電力化の観点では、特にノーマリーホワイトモードのTNモード液晶セルが好ましい。
【0136】
液晶セルの構成については特に制限はない。一般的には、対向配置された一対の基板と、該一対の基板間に挟持された液晶層とを含み、電圧を印加可能な電極を一対の基板の少なくとも一方に有する構成である。また、所望により、液晶層の配向を制御する配向膜が配置されている。
【0137】
前記液晶セルを構成する基板としては、液晶層を構成する液晶性を示す材料を特定の配向方向に配向させるものであれば特に制限はない。具体的には、基板自体が液晶を配向させる性質を有している基板、基板自体は配向能に欠けるが、液晶を配向させる性質を有する配向膜等をこれに設けた基板等がいずれも使用できる。
【0138】
前記バリア素子が有する液晶セルについては、そのΔnd(λ)(dは液晶層の厚さ(nm)、Δn(λ)は液晶層の波長λにおける複屈折率であり、Δnd(λ)はΔn(λ)とdの積のことである。)の好ましい範囲は、通常の2D表示装置に用いられる各駆動モードの液晶セルのΔnd(550)と比較して高くすることが透過率の観点で好ましく、具体的には、TNモード液晶セルでは、Δnd(550)が380〜540nmであることが好ましい。但し、この範囲に限定されるものではない。また、2D白表示における色味変化を小さくするには、前記バリア素子が有する液晶セルのΔnd(450)/Δnd(550)が1.20以下であることが好ましく、1.10以下であることが好ましく、1.05以下であることがさらに好ましい。液晶セルのΔnd(450)/Δnd(550)を小さくする手段として、例えば、液晶層にΔn(450)/Δn(550)の小さい液晶材料を用いる方法が挙げられる。前記液晶セルがカラーフィルタを有する態様では、450nmの透過率が最も大きいカラーフィルタ(例えば青色)の領域における液晶セルの厚みを、550nmの透過率が最も大きいカラーフィルタ(たとえば緑色)の領域における液晶セルの厚みよりも小さくすることでも、液晶セルのΔnd(450)/Δnd(550)を小さくすることができる。
【0139】
3.偏光制御素子
本発明のバリア素子は、少なくとも一つの偏光制御素子を有する。偏光制御素子は、吸収型偏光子、反射型偏光子及び異方性散乱型偏光子のいずれであってもよい。但し、本発明のバリア素子が、画像表示素子の前方に配置され、偏光制御素子が表示面側に配置される態様では、偏光度が高い、直線偏光膜等の吸収型偏光子を用いるのが好ましい。一方、本発明のバリア素子が、画像表示素子の後方に配置され、偏光制御素子がバックライト側に配置される態様では、透過率が高い反射型又は異方性散乱型偏光子、特に強化型反射偏光子を用いるのが好ましい。
【0140】
使用可能な吸収型偏光子については特に制限はなく、一般的な直線偏光膜を用いることができる。例えば、ヨウ素系偏光膜、二色性染料を利用した染料系偏光膜、及びポリエン系偏光膜のいずれも用いることができる。ヨウ素系偏光膜、及び染料系偏光膜は、一般に、ポリビニルアルコールにヨウ素又は二色性染料を吸着させ、延伸することで作製される。
【0141】
なお、偏光膜は、その両面に保護フィルムが貼合された偏光板として用いられることが一般的である。本発明でも、偏光板を用いてもよいが、液晶セル側に配置される保護フィルムは、前記位相差フィルムであるのが好ましい。また、図4及び6に示す通り、画像表示装置が液晶パネルであって、該液晶パネルの偏光膜11と本発明のバリア素子の偏光膜9とが積層される態様では、その間に配置される保護フィルムとしては、低Re且つ低Rthである、光学的に等方性のポリマーフィルムを用いることが好ましい。
【0142】
使用可能な反射型偏光子についても特に制限はない。反射型偏光子として、特表平9−506985号公報等に記載の強化型反射偏光子を用いると、輝度向上の観点で好ましい。強化型反射偏光子は、輝度上昇フィルムとして市販されているものもあり、当該市販品を用いることもできる。使用可能な反射型偏光子として、例えば、異方性反射偏光子が挙げられる。異方性反射偏光子としては、一方の振動方向の直線偏光を透過し、他方の振動方向の直線偏光を反射する異方性多重薄膜が挙げられる。異方性多重薄膜としては、例えば、3M製のDBEFが挙げられる(例えば、特開平4−268505号公報等参照。)。また異方性反射偏光子としては、コレステリック液晶層とλ/4板の複合体が挙げられる。かかる複合体としては、日東電工製のPCFが挙げられる(特開平11−231130号公報等参照。)。また異方性反射偏光子としては、反射グリッド偏光子が挙げられる。反射グリッド偏光子としては、金属に微細加工を施し可視光領域でも反射偏光を出すような金属格子反射偏光子(米国特許第6288840号明細書等参照。)、金属の微粒子を高分子マトリック中に入れて延伸したようなもの(特開平8−184701号公報等照。)が挙げられる。
【0143】
また、使用可能な異方性散乱型偏光子についても特に制限はない。異方性散乱型偏光子も、輝度上昇フィルムとして、市販されているものがあり、当該市販品を用いることもできる。使用可能な異方性散乱型偏光子としては、3M製のDRPが挙げられる(米国特許第5825543号明細書参照)。さらに、ワンパスで偏光変換できるような偏光素子が挙げられる。例えば、スメクテイックC*を用いたものなどが挙げられる(特開2001−201635号公報等参照。)異方性回折格子を用いることができる。
【0144】
なお、本発明の3D表示装置が有する画像表示素子が、液晶パネルである態様では、画像表示素子も、一対の偏光制御素子(一般的には一対の直線偏光膜)を有する。バリア素子が有する第1の偏光制御素子(図1(b)の態様では、第2の偏光制御素子についても)の透過率は、画像表示素子が有する一対の偏光制御素子の透過率と同程度もしくは大きいことが好ましい。バリア素子に配置される偏光制御素子は、画像表示素子と比較して、偏光度は低くてもよく(例えば、白表示/黒表示のコントラスト比は4程度でもよく)、一方で、2D表示時の輝度を低下させないためには、より高い透過率が要求される。この観点では、バリア素子に配置される第1の偏光制御素子(図1(b)の態様では、第2の偏光制御素子についても)の透過率は、40〜46%が好ましく、42〜46%がより好ましく、43〜45%が更に好ましい。
一方、画像表示素子に配置される一般的な直線偏光膜の透過率は、40〜43%程度である。
【実施例】
【0145】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の趣旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下の具体例に制限されるものではない。
なお、実施例および比較例において、Re(550)、Rth(550)及びR[+40°]/R[−40°]は、特に断りがない限り、自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測器(株)製)を用いて波長550nmにおいて測定した値を用いた。
また、偏光膜の透過率は、紫外分光光度計V−7100(日本分光(株)製)にて測定した。
【0146】
(ポリマーフィルムの作製)
(1)フィルム1〜10、12〜13の作製
特開平10−45804号公報、同08−231761号公報に記載の方法で、セルロースアシレートを合成し、その置換度を測定した。具体的には、触媒として硫酸(セルロース100質量部に対し7.8質量部)を添加し、アシル置換基の原料となるカルボン酸を添加し40℃でアシル化反応を行った。この時、カルボン酸の種類、量を調整することでアシル基の種類、置換度を調整した。またアシル化後に40℃で熟成を行った。さらにこのセルロースアシレートの低分子量成分をアセトンで洗浄し除去した。
【0147】
<セルロースアシレート溶液「C01」〜「C04」の調製>
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、撹拌して、各成分を溶解し、セルロースアシレート溶液を調製した。各セルロースアシレート溶液の固形分濃度は22質量%、粘度は60Pa・sとなるように溶剤(メチレンクロライドおよびメタノール)の量は適宜調整した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
・セルロースアセテート(置換度は下記表に示す) 100.0質量部
・下記表に記載の添加剤 下記表に記載の量
・メチレンクロライド 365.5質量部
・メタノール 54.6質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
下記の表に示したようにセルロースアシレートのアシル基の種類と置換度、添加剤量や添加剤種を変更した以外は「C01」と同様にしてその他の低置換度層用セルロースアシレート溶液を調製した。各セルロースアシレート溶液の固形分濃度が22質量%となるように溶剤(メチレンクロライドおよびメタノール)の量は適宜調整した。
【0148】
【表1】

【化4】

【0149】
<セルロースアシレート系フィルムの作製>
セルロースアシレート溶液の1種以上を用いて、以下の単流延又は共流延のいずれかにより、フィルムを作製した。延伸温度及び延伸倍率は、下記表に示す。
単流延(フィルム5〜10の作製):
上記表中のいずれかのセルロースアシレート溶液を60μmの膜厚になるようにバンド延伸機を用いて流延した。引き続き、得られたウェブ(フィルム)をバンドから剥離し、クリップに挟み、テンターを用いて横延伸した。延伸温度及び延伸倍率は下記の表に示す。その後、フィルムからクリップを外して130℃で20分間乾燥させ、フィルムを得た。
共流延(フィルム1〜4、12、13の作製):
上記セルロースアシレート溶液C01を、56μmの膜厚のコア層になるように、セルロースアシレート溶液C02を2μmの膜厚のスキンA層になるように、それぞれバンド延伸機を用いて流延した。その後、フィルムからクリップを外して130℃で20分間乾燥させ、引き続き、得られたウェブ(フィルム)をバンドから剥離し、クリップに挟み、テンターを用いて横延伸した。延伸温度及び延伸倍率は下記の表に示す。
以下の表に、得られたフィルムの構成、延伸条件、及びフィルムの特性をそれぞれ示す。
【0150】
【表2】

【0151】
(2)フィルム11の作製
市販のノルボルネン系ポリマーフィルム「ZEONOR ZF14」((株)オプテス製)を固定端一軸延伸し、フィルム11を作製した。
【0152】
(3)フィルム14の準備
市販のセルロースアシレート系フィルム、商品名 「フジタック TD80UL」(富士フイルム社製)を準備し、フィルム14として利用した。
【0153】
(4)フィルム15の作製
下記表に記載のアシル基の種類、置換度のセルロースアシレートを調製した。これは、触媒として硫酸(セルロース100質量部に対し7.8質量部)を添加し、アシル置換基の原料となるカルボン酸を添加し40℃でアシル化反応を行った。この時、カルボン酸の種類、量を調整することでアシル基の種類、置換度を調整した。またアシル化後の40℃で熟成を行った。さらにこのセルロースアシレートの低分子量成分をアセトンで洗浄し除去した。なお、表中、Acとはアセチル基であり、CTAとは、セルローストリアセテート(アシル基がアセテート基のみからなるセルロースエステル誘導体)を意味する。
【0154】
<セルロースアシレート溶液>
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、更に90℃に約10分間加熱した後、平均孔径34μmのろ紙および平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
セルロースアシレート溶液
―――――――――――――――――――――――――――――――――
下記表中のCTA 100.0質量部
トリフェニルホスフェイト(TPP) 7.8質量部
ビフェニルジフェニルホスフェイト(BDP) 3.9質量部
メチレンクロライド 403.0質量部
メタノール 60.2質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0155】
<マット剤分散液>
次に上記方法で調製したセルロースアシレート溶液を含む下記組成物を分散機に投入し、マット剤分散液を調製した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
マット剤分散液
――――――――――――――――――――――――――――――――――
平均粒径16nmのシリカ粒子
(aerosil R972 日本アエロジル(株)製 2.0質量部
メチレンクロライド 72.4質量部
メタノール 10.8質量部
セルロースアシレート溶液 10.3質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0156】
<添加剤溶液>
次に上記方法で調製したセルロースアシレート溶液を含む下記組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して溶解し、添加剤溶液を調製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
添加剤溶液
―――――――――――――――――――――――――――――――――
レターデーション発現剤(1) 20.0質量部
メチレンクロライド 58.3質量部
メタノール 8.7質量部
セルロースアシレート溶液 12.8質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0157】
上記セルロースアシレート溶液を100質量部、マット剤分散液を1.35質量部、更にセルロースアシレート系フィルム中のレターデーション発現剤(1)の添加量が10質量部となる量の添加剤溶液を混合し、製膜用ドープを調製した。添加剤の添加割合はセルロースアシレート量を100質量部とした時の質量部で示した。
ここで、表中及び上記の添加剤および可塑剤の略称は下記の通りである。
CTA:セルローストリアセテート、
TPP:トリフェニルホスフェイト、
BDP:ビフェニルジフェニルホスフェイト。
【0158】
【化5】

【0159】
上述のドープをバンド流延機を用いて流延した。下記表に記載の残留溶剤量でバンドから剥ぎ取ったフィルムを、剥ぎ取りからテンターまでの区間で下記表に記載の延伸倍率で縦方向に延伸し、ついでテンターを用いて下記表に記載の延伸倍率で幅方向に延伸し、横延伸直後に、下記表に記載の倍率で幅方向に収縮(緩和)させた後にフィルムをテンターから離脱し、セルロースアシレート系フィルムを製膜した。テンター離脱時のフィルムの残留溶剤量は、下記表に記載のとおりであった。巻取り部前で両端部を切り落とし幅2000mmとし、長さ4000mのロールフィルムとして巻き取った。下記表に、延伸倍率を示してある。
【0160】
【表3】

【0161】
(5)フィルム16の作製
下記表に示すセルロースアシレートを用い、下記表に示す通りレターデーション発現剤(1)の添加量を代え、及び延伸条件を代えて延伸処理を実施した以外は、フィルム15と同様にしてセルロースアシレート系フィルムを作製した。このフィルムを、フィルム16として用いた。なお、下記の添加剤および可塑剤の略称については、上記と同義である。
【0162】
【表4】

【0163】
(6)フィルム17の作製
<低置換度層用セルロースアシレート溶液>
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して各成分を溶解し、低置換度層用セルロースアシレート溶液を調製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
セルロースアシレート溶液
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
置換度2.43のセルロースアセテート 100質量部
レターデーション発現剤(2) 18.5質量部
メチレンクロライド 365.5質量部
メタノール 54.6質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0164】
前記レターデーション発現剤(2)の組成を、下記表5に示す。なお、下記表5中、EGはエチレングリコールを、PGはプロピレングリコールを、BGはブチレングリコールを、TPAはテレフタル酸を、PAはフタル酸を、AAはアジピン酸を、SAはコハク酸をそれぞれ示している。なお、前記レターデーション発現剤(2)は、非リン酸系エステル系化合物であり、かつ、レターデーション発現剤でもある。前記レターデーション発現剤(2)の末端はアセチル基で封止されている。
【0165】
【表5】

【0166】
<高置換度層用セルロースアシレート溶液>
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、撹拌して、各成分を溶解し、高置換度層用セルロースアシレート溶液を調製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
セルロースアシレート溶液
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
置換度2.79のセルロースアセテート 100.0質量部
レターデーション発現剤(2) 11.0質量部
平均粒径16nmのシリカ粒子
(aerosil R972 日本アエロジル(株)製) 0.15質量部
メチレンクロライド 395.0質量部
メタノール 59.0質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0167】
(セルロースアシレート試料の作製)
前記低置換度層用セルロースアシレート溶液を膜厚70μmのコア層になるように、前記高置換度層用セルロースアシレート溶液を膜厚2μmのスキンA層及びスキンB層になるように、それぞれ流延した。得られたフィルムをバンドから剥離し、クリップに挟み、フィルム全体の質量に対する残留溶媒量が20%の状態の時に、延伸温度180℃で幅方向に41%、テンターを用いて横延伸した。その後、フィルムからクリップを外して130℃で20分間乾燥させ、フィルム17を作製した。
【0168】
(7)フィルム18の作製
フィルム17の作製において、流延時のコア層の膜厚を65μmに変更し、さらに延伸温度を200℃、延伸倍率を60%に変更した以外は、フィルム17の作製と同様にして、フィルム18を作製した。
【0169】
(8)フィルム19の作製
(低置換度層用セルロースアシレート溶液)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して各成分を溶解し、低置換度層用セルロースアシレート溶液を調製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
セルロースアシレート溶液
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
置換度2.43のセルロースアセテート 100質量部
レターデーション発現剤(2) 17.0質量部
メチレンクロライド 361.8質量部
メタノール 54.1質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0170】
<高置換度層用セルロースアシレート溶液>
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、撹拌して、各成分を溶解し、高置換度層用セルロースアシレート溶液を調製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
セルロースアシレート溶液
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
置換度2.79のセルロースアセテート 100.0質量部
レターデーション発現剤(2) 11.0質量部
平均粒径16nmのシリカ粒子
(aerosil R972 日本アエロジル(株)製) 0.15質量部
メチレンクロライド 395.0質量部
メタノール 59.0質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0171】
<セルロースアシレート試料の作製>
前記低置換度層用セルロースアシレート溶液を、膜厚76μmのコア層になるように、前記高置換度層用セルロースアシレート溶液を膜厚2μmのスキンA層及びスキンB層になるように、それぞれ流延した。得られたフィルムをバンドから剥離し、クリップに挟み、フィルム全体の質量に対する残留溶媒量が20%の状態の時に、温度170℃でテンター搬送した。その後フィルムからクリップを外して130℃で20分間乾燥させた後、延伸温度180℃で幅方向に23%、テンターを用いて更に横延伸し、フィルム19を作製した。
【0172】
(9)フィルム20の作製
<フィルム20Aの作製>
フィルム18の作製において、コア層の厚み65μmを18μmとし、さらに幅方向の延伸倍率を60%から62%に変えた以外はフィルム18の作製と同様にしてフィルム20Aを作製した。 フィルム20Aの膜厚は22μmであり、Re(550)は30nmであり、Rth(550)は25nmであった。
【0173】
<フィルム20Bの作製>
下記の組成でセルロースアシレート溶液(ドープ)を調整した。
【0174】
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
メチレンクロライド 435質量部
メタノール 65質量部
セルロースアシレートベンゾエート(CBZ) 100質量部
(アセチル置換度2.45、ベンゾイル置換度0.55、質量平均分子量180000)二酸化ケイ素微粒子(平均粒径20nm、モース硬度 約7) 0.25質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0175】
得られたドープを、製膜バンド上に流延し、室温で1分間乾燥後、45℃で5分間乾燥させた。乾燥後の溶剤残留量は30質量%であった。セルロースアシレートフィルムをバンドから剥離し、100℃で10分間乾燥した後、130℃で20分間乾燥し、フィルム20Bを得た。溶剤残留量は0.1質量%であった。フィルム20Bの膜厚は29μmであり、Re(550)は0nmであり、Rth(550)は−43nmであった。
【0176】
<フィルム20の作製>
フィルム20Aとフィルム20Bを接着剤で貼り合せて、フィルム20を作製した。フィルム20の膜厚は61μmであり、Re(550)は30nmであり、Rth(550)は−17nmであった。
【0177】
(10)フィルム30の作製
<ドープ調製>
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、さらに90℃に約10分間加熱した後、平均孔径34μmのろ紙および平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過した。Acはアセチル基を表し、Prはプロピオニル基を表す。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
セルロースアシレート溶液
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
Ac置換度1.6、Pr置換度0.9のセルロースアシレート 100.0質量部
糖エステル(1) 8.0質量部
ポリエステル(1) 1.5質量部
メチレンクロライド 403.0質量部
メタノール 60.2質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0178】
【化6】

【0179】
【化7】

【0180】
<マット剤分散液>
次に上記方法で作成したセルロースアシレート溶液を含む下記組成物を分散機に投入し、マット剤分散液を調製した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
マット剤分散液
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
・マット剤(アエロジルR972) 0.2質量部
・メチレンクロライド 72.4質量部
・メタノール 10.8質量部
・セルロースアシレート溶液 10.3質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0181】
(セルロースアシレート試料の作製)
セルロースアシレート溶液を100質量部、マット剤分散液をセルロースアシレート樹脂に対して無機微粒子が0.02質量部となる量を混合し、製膜用ドープを調製した。さらに製膜用ドープを、バンド流延機を用いて流延した。なお、バンドはSUS製であった。
流延されて得られたウェブ(フィルム)を、158℃で剥離前のバンド上で乾燥装置を用いて20分間乾燥した。また、別の態様として、バンドから剥離後、クリップでウェブの両端をクリップして搬送するテンター装置を用いて該テンター装置内で20分間乾燥した。これら2つの態様で得られる結果は同様であった。なお、ここでいう乾燥温度とは、フィルムの膜面温度のことを意味する。
得られたウェブ(フィルム)をバンドから剥離し、クリップに挟み、フィルム全体の質量に対する残留溶媒量が30〜5%の状態のときに固定端一軸延伸の条件で、延伸温度165℃で幅方向に30%、テンターを用いてフィルム搬送方向に直交する方向(横方向)に延伸した。その後、フィルムからクリップを外して110℃で30分間乾燥させ、フィルム30を作製した。
【0182】
(11)フィルム31の作製
<ドープの調製>
以下に示すセルロースアシレート溶液を作製し、内層、および外層A,B用ドープとした。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
内層用セルロースアシレート溶液の組成
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
・平均置換度2.86のセルロースアシレート 100.0質量部
・メチレンクロライド(第1溶媒) 284.2質量部
・メタノール(第2溶媒) 71.9質量部
・ブタノール (第3溶媒) 3.6質量部
・オリゴマー(下記組成) 7.0質量部
・紫外線吸収剤混合物(下記組成) 3.5質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
*オリゴマー:テレフタル酸/アジピン酸/エチレングリコール/プロピレングリコール共重合体
共重合比:1/1/1/1
数平均分子量:1200
*紫外線吸収剤混合物:下記化合物16/下記化合物17/下記化合物18
混合比:2/2/1
【化8】

【化9】

【化10】

【0183】
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
外層A、B用セルロースアシレート溶液の組成
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
・平均置換度2.86のセルロースアシレート 100.0質量部
・メチレンクロライド(第1溶媒) 335.0質量部
・メタノール(第2溶媒) 84.8質量部
・ブタノール (第3溶媒) 4.2質量部
・平均粒子サイズ16nmのシリカ粒子 0.1質量部
(AEROSIL R972、日本アエロジル(株)製)
・オリゴマー(前記組成) 4.0質量部
・紫外線吸収剤混合物(前記組成) 2.0質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0184】
上記のセルロースアシレート溶液それぞれをミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解した後、平均孔径34μmのろ紙および平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過し、セルロースアシレートドープを調整した。
【0185】
<溶液共流延>
調製したそれぞれのドープを、内層が膜厚75μm、外層Aが膜厚2.5μm、外層Bが膜厚2.5μmになるように、流延ギーサーを通して直径3mのドラムである鏡面ステンレス支持体上に、共流延した。各幅方向位置における内層、および外層A、Bの和で示される総膜厚の調整は、流延ギーサーの出口のクリアランスを調整することにより実施し、各幅方向位置における外層A、Bの膜厚の調整は外層ドープ流量、および流延ギーサー内で内層と合流する際の流路の幅、幅方向位置でのクリアランスを調整することにより実施した。
次に、ドラム上に共流延したドープをPITドロー103%で剥ぎ取り、ピン状テンターで把持して乾燥ゾーン内にて搬送し、固形分濃度が77%、膜面温度が48℃になった時、110%の延伸倍率で搬送方向と直交する方向に延伸処理を行った。
さらにピン状テンターで把持した状態のまま、乾燥ゾーン内を搬送し、固形分濃度97%以上まで乾燥を進めた後に、ピン状テンターから外し、さらに140℃の乾燥風下にて、固形分濃度99%以上になるまで乾燥後、巻き取ることで、フィルム31を得た。
【0186】
(12)フィルム32の作製
フィルム31の作製において、内層の膜厚を75μmから50μmに変更した以外は、フィルム31と同様の方法でフィルム32を作製した。
【0187】
(13)フィルム33の作製
<セルロースアシレート系フィルムの作製>
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、30℃に加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液を調製した。
────────────────────────────────────
セルロースアセテート溶液組成(質量部) 内層 外層
────────────────────────────────────
酢化度60.9%のセルロースアセテート 100 100
トリフェニルホスフェート(可塑剤) 7.8 7.8
ビフェニルジフェニルホスフェート(可塑剤) 3.9 3.9
メチレンクロライド(第1溶媒) 293 314
メタノール(第2溶媒) 71 76
1−ブタノール(第3溶媒) 1.5 1.6
シリカ微粒子(AEROSIL R972、日本アエロジル(株)製)
0 0.8
下記レターデーション上昇剤(A) 1.7 0
───────────────────────────────────
【0188】
【化11】

【0189】
得られた内層用ドープおよび外層用ドープを、三層共流延ダイを用いて、0℃に冷却したドラム上に流延した。残留溶剤量が70質量%のフィルムをドラムから剥ぎ取り、両端をピンテンターにて固定して搬送方向のドロー比を110%として搬送しながら80℃で乾燥させ、残留溶剤量が10%となったところで、110℃で乾燥させた。その後、140℃の温度で30分乾燥し、残留溶剤が0.3質量%のフィルム33(厚み80μm(外層:3μm、内層:74μm、外層:3μm))を製造した。
【0190】
(14)フィルム34の作製
市販のノルボルネン系ポリマーフィルム「ZEONOR ZF14−100」((株)オプテス製)を、温度153℃にてMD方向に1.5倍、TD方向に1.5倍で固定端二軸延伸を行った後、表面にコロナ放電処理を行った。このフィルムを2枚用意し、アクリル系粘着剤で貼合したものをフィルム34として使用した。このフィルムの厚みは、90μmであった。
【0191】
(15)フィルム42の作製
<<セルロースアシレートの調製>>
全置換度2.97(内訳:アセチル置換度0.45、プロピオニル置換度2.52)のセルロースアシレートを調製した。触媒としての硫酸(セルロース100質量部に対し7.8質量部)とカルボン酸無水物との混合物を−20℃に冷却してからパルプ由来のセルロースに添加し、40℃でアシル化を行った。この時、カルボン酸無水物の種類及びその量を調整することで、アシル基の種類及びその置換比を調整した。またアシル化後に40℃で熟成を行って全置換度を調整した。
【0192】
<<セルロースアシレート溶液の調製>>
1)セルロースアシレート
調製したセルロースアシレートを120℃に加熱して乾燥し、含水率を0.5質量%以下とした後、30質量部を溶媒と混合させた。
2)溶媒
ジクロロメタン/メタノール/ブタノール(81/15/4質量部)を溶媒として用いた。なお、これらの溶媒の含水率は、いずれも0.2質量%以下であった。
3)添加剤
全ての溶液調製に際し、トリメチロールプロパントリアセテート0.9質量部、上記レターデーション上昇剤(A)0.2質量部を添加した。また、全ての溶液調製に際し、二酸化ケイ素微粒子(粒径20nm、モース硬度 約7)0.25質量部を添加した。
4)膨潤、溶解
攪拌羽根を有し外周を冷却水が循環する400リットルのステンレス製溶解タンクに、上記溶媒、添加剤を投入して撹拌、分散させながら、上記セルロースアシレートを徐々に添加した。投入完了後、室温にて2時間撹拌し、3時間膨潤させた後に再度撹拌を実施し、セルロースアシレート溶液を得た。
なお、攪拌には、15m/sec(剪断応力5×104kgf/m/sec2)の周速で攪拌するディゾルバータイプの偏芯攪拌軸及び中心軸にアンカー翼を有して周速1m/sec(剪断応力1×104kgf/m/sec2)で攪拌する攪拌軸を用いた。膨潤は、高速攪拌軸を停止し、アンカー翼を有する攪拌軸の周速を0.5m/secとして実施した。
5)ろ過
上記で得られたセルロースアシレート溶液を、絶対濾過精度0.01mmの濾紙(#63、東洋濾紙(株)製)で濾過し、更に絶対濾過精度2.5μmの濾紙(FH025、ポール社製)にて濾過してセルロースアシレート溶液を得た。
【0193】
上記セルロースアシレート溶液を30℃に加温し、流延用ダイ(特開平11−314233号公報に記載)を通して15℃に設定したバンド長60mの鏡面ステンレス支持体上に流延した。流延スピードは15m/分、塗布幅は200cmとした。流延部全体の空間温度は、15℃に設定した。そして、流延部から50cm手前で、流延して回転してきたセルロースアシレートフィルムをバンドから剥ぎ取り、45℃の乾燥風を送風した。次に110℃で5分、更に140℃で10分乾燥して、セルロースアシレートフィルム42を得た(膜厚53μm)。
【0194】
(16)フィルム43の作製
市販のセルロースアシレート系フィルム、商品名 「Z−TAC」(富士フイルム社製)を準備し、フィルム43として使用した。
【0195】
以下、作製したフィルム1〜20、30〜34、42、及び43の厚み、Re(550)及びRth(550)をまとめた表を示す。
【0196】
【表6】

【0197】
また、下記表中のフィルムについて、波長450nm、550nmにおけるRthを測定し、Rth(450)/Rth(550)を求めた。
【0198】
【表7】

【0199】
(17)フィルム21の作製
<配向膜の作製>
作製したフィルム5に鹸化処理を行った後、鹸化処理面に、下記の組成の塗布液を#16のワイヤーバーコーターで28mL/m2塗布した。60℃の温風で60秒、さらに90℃の温風で150秒乾燥した。形成された膜表面に、ラビングロールで搬送方向に平行な方向に500回転/分で回転させてラビング処理を行い、配向膜を作製した。
────────────────────────────────────
(配向膜塗布液組成)
────────────────────────────────────
下記の変性ポリビニルアルコール 20質量部
水 360質量部
メタノール 120質量部
グルタルアルデヒド(架橋剤) 1.0質量部
────────────────────────────────────
【0200】
【化12】

【0201】
<光学異方性層の作製>
下記の組成の塗布液を調製した。
下記の組成物を98質量部のメチルエチルケトンに溶解して塗布液を調製した。
────────────────────────────────────
下記のディスコティック液晶性化合物(1) 41.01質量部
エチレンオキサイド変成トリメチロールプロパントリアクリレート
(V#360、大阪有機化学(株)製 4.06質量部
セルロースアセテートブチレート
(CAB551−0.2、イーストマンケミカル社製) 0.34質量部
セルロースアセテートブチレート
(CAB531−1、イーストマンケミカル社製) 0.11質量部
下記フルオロ脂肪族基含有ポリマー1 0.13質量部
下記フルオロ脂肪族基含有ポリマー2 0.03質量部
光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製) 1.35質量部
増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製) 0.45質量部
────────────────────────────────────
【0202】
【化13】

【0203】
【化14】

【0204】
【化15】

【0205】
上記塗布液を、#3.2のワイヤーバーを用いて、30m/分で搬送されている上記ロールフィルムの配向膜面に連続的に塗布した。室温から100℃に連続的に加温する工程で、溶媒を乾燥させ、その後、135℃の乾燥ゾーンで、ディスコティック液晶化合物層にあたる膜面風速がフィルム搬送方向に平行に1.5m/secとなるようにし、約90秒間加熱し、ディスコティック液晶化合物を配向させた。次に、80℃の乾燥ゾーンに搬送させて、フィルムの表面温度が約100℃の状態で、紫外線照射装置(紫外線ランプ:出力160W/cm、発光長1.6m)により、照度600mWの紫外線を4秒間照射し、架橋反応を進行させ、ディスコティック液晶化合物をその配向に固定した。その後、室温まで放冷し、円筒状に巻き取ってロール状の形態にした。
この様にして、支持体上に光学異方性を有するフィルム21を作製した。
【0206】
(18)フィルム22の作製
フィルム21の作製において、支持体をフィルム5からフィルム6に代え、以下の方法で光学異方性層を形成した以外は、フィルム21の作製と同様にフィルム22を作製した。
【0207】
<配向膜の作製>
作製したフィルム6に鹸化処理を行った後、鹸化処理面に、下記の組成の塗布液を#16のワイヤーバーコーターで28mL/m2塗布した。60℃の温風で60秒、さらに90℃の温風で150秒乾燥した。形成された膜表面に、ラビングロールで搬送方向に平行な方向に500回転/分で回転させてラビング処理を行い、配向膜を作製した。
────────────────────────────────────
配向膜塗布液組成
────────────────────────────────────
下記の変性ポリビニルアルコール 20質量部
水 360質量部
メタノール 120質量部
グルタルアルデヒド(架橋剤) 1.0質量部
────────────────────────────────────
【0208】
【化16】

【0209】
<光学異方性層の作製>
下記の組成のディスコティック液晶化合物を含む塗布液Bを上記作製した配向膜上に#2.7のワイヤーバーで連続的に塗布した。フィルムの搬送速度(V)は36m/minとした。塗布液の溶媒の乾燥及びディスコティック液晶化合物の配向熟成のために、120℃の温風で90秒間加熱した。続いて、80℃にてUV照射を行い、液晶化合物の配向を固定化し光学異方性層を形成し、支持体上に光学異方性を有するフィルム22を作製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
光学異方性層塗布液(B)の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――
下記のディスコティック液晶化合物 100質量部
光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製) 3質量部
増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製) 1質量部
下記のピリジニウム塩 1質量部
下記のフッ素系ポリマー(FP2) 0.4質量部
メチルエチルケトン 252質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0210】
【化17】

【0211】
【化18】

【0212】
【化19】

【0213】
(19)フィルム23の作製
フィルム21の作製において、支持体をフィルム5からフィルム7に代え、塗布時の厚みをフィルム21の0.7倍となるように塗布した以外はフィルム21の作製と同様にしてフィルム23を作製した。
【0214】
(20)フィルム24の作製
フィルム21の作製において、支持体をフィルム5からフィルム7に代え、ワイヤーバーの種類、塗布時の搬送速度と温度、及び乾燥時の搬送速度と温度を適宜調整した以外はフィルム21の作製と同様にしてフィルム24を作製した。
【0215】
(21)フィルム25の作製
フィルム21の作製において、支持体をフィルム5からフィルム12に代え、ワイヤーバーの種類、塗布時の搬送速度と温度、及び乾燥時の搬送速度と温度を適宜調整した以外はフィルム21の作製と同様にしてフィルム25を作製した。
【0216】
(22)フィルム26の作製
フィルム22の作製において、支持体をフィルム6からフィルム8に代え、塗布時の厚みをフィルム22の0.8倍となるように塗布した以外はフィルム22の作製と同様にしてフィルム26を作製した。
【0217】
(23)フィルム27の作製
フィルム22の作製において、支持体をフィルム6からフィルム8に代え、塗布時の厚みをフィルム22の0.7倍となるように塗布した以外はフィルム22の作製と同様にしてフィルム27を作製した。
【0218】
(24)フィルム28の作製
フィルム21の作製において、支持体をフィルム5からフィルム7に代えた以外はフィルム21の作製と同様にしてフィルム28を作製した。
【0219】
(25)フィルム29の作製
フィルム22の作製において、支持体をフィルム6からフィルム8に代えた以外はフィルム22の作製と同様にしてフィルム29を作製した。
【0220】
(26)フィルム35の作製
<セルロースアシレートフィルムの鹸化処理>
作製したフィルム31について、温度60℃の誘電式加熱ロールを通過させ、フィルム表面温度を40℃に昇温した後、下記に示す組成のアルカリ溶液を、バーコーターを用いて14ml/m2で塗布し、110℃に加熱したスチーム式遠赤外線ヒーター((株)ノリタケカンパニーリミテッド製)の下に10秒滞留させた後に、同じくバーコーターを用いて純水を3ml/m2塗布した。この時のフィルム温度は40℃であった。次いで、ファウンテンコーターによる水洗とエアナイフによる水切りを3回繰り返した後に70℃の乾燥ゾーンに10秒滞留させて乾燥した。
【0221】
────────────────────────────────────
鹸化処理用のアルカリ溶液の組成
────────────────────────────────────
水酸化カリウム 4.7質量部
水 15.8質量部
イソプロパノール 63.7質量部
プロピレングリコール 14.8質量部
界面活性剤(C1633O(CH2CH2O)10H) 1.0質量部
────────────────────────────────────
【0222】
<配向膜の作製>
鹸化したフィルム31の鹸化処理面に、下記の組成の塗布液を#14のワイヤーバーコーターで24mL/m2塗布し、100℃の温風で120秒乾燥した。配向膜の厚さは0.6μmであった。次に、ラビングローラーの回転数400回転/分で搬送方向に平行な方向にラビング処理を行い、配向膜を作製した。この際、搬送速度は40m/分であった。続いてラビング処理面を超音波除塵した。
────────────────────────────────────
配向膜塗布液組成
────────────────────────────────────
下記の変性ポリビニルアルコール 23.4質量部
水 732.0質量部
メタノール 166.3質量部
イソプロピルアルコール 77.7質量部
IRGACURE2959(BASF社製) 0.6質量部
────────────────────────────────────
【0223】
【化20】

【0224】
<光学異方性層の作製>
防塵後の配向膜のラビング処理面に、下記表に示した組成の光学異方性層形成用塗布液を#2.6のワイヤーバーコーターで連続的に塗布した。その後、70℃の乾燥ゾーン内で90秒間加熱し、ディスコティック液晶化合物を配向させた。その後、膜面温度が100℃の状態で紫外線照射装置(紫外線ランプ:出力160W/cm、発光長1.6m)により、照度500mW/cm2の紫外線を4秒間照射し、架橋反応を進行させ、液晶化合物をその配向に固定した。その後、室温まで放冷し、円筒状に巻き取った。この様にして、支持体上に光学異方性を有するフィルム35を作製した。
【0225】
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
光学異方性層形成用塗布液の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
下記のディスコティック液晶化合物 100質量部
光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製) 1.5質量部
増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製) 0.5質量部
下記のピリジニウム塩 1.0質量部
下記のフッ素系ポリマー 0.8質量部
メチルエチルケトン 345質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0226】
【化21】

【0227】
【化22】

【0228】
【化23】

【0229】
(27)フィルム36の作製
フィルム35の作製において、光学異方性層塗布時の厚みをフィルム35の0.7倍となるように塗布した以外はフィルム35の作製と同様にしてフィルム36を作製した。
【0230】
(28)フィルム37の作製
フィルム21の作製において、支持体をフィルム5からフィルム32に代えた以外はフィルム21の作製と同様にしてフィルム37を作製した。
【0231】
(29)フィルム38の作製
フィルム21の作製において、支持体をフィルム5からフィルム33に代えた以外はフィルム21の作製と同様にしてフィルム38を作製した。
【0232】
(30)フィルム39の作製
フィルム21の光学異方性層をフィルム34に転写し、フィルム39を作製した。
【0233】
(31)フィルム40の作製
特開2010−58495に記載の実施例11において、タッチ圧力を変更した以外は、特開2010−58495に記載の実施例11と同様の方法で環状オレフィンからなる光学異方性フィルムを作製した。このフィルムの表面にコロナ放電処理を行った後、アクリル系粘着剤にてフィルム32と貼合することで、フィルム40を作製した。
【0234】
(32)フィルム41の作製
フィルム38の作製において、塗布時の厚みをフィルム38の0.7倍となるように塗布した以外はフィルム38の作製と同様にしてフィルム41を作製した。
【0235】
(33)フィルム44の作製
フィルム21の作製において、塗布時の厚みをフィルム21の0.7倍となるように塗布した以外はフィルム21の作製と同様にしてフィルム44を作製した。
【0236】
(34)フィルム45の作製
フィルム44の作製において、支持体をフィルム5からフィルム14に代えた以外はフィルム44の作製と同様にしてフィルム45を作製した。
【0237】
(35)フィルム46の作製
フィルム44の作製において、支持体をフィルム5からフィルム43に代えた以外はフィルム44の作製と同様にしてフィルム46を作製した。
【0238】
(36)フィルム47の作製
フィルム24の作製において、支持体をフィルム7からフィルム42に代えた以外はフィルム24の作製と同様にしてフィルム47を作製した。
【0239】
(37)フィルム48の作製
フィルム44の作製において、支持体をフィルム5からフィルム42に代えた以外はフィルム44の作製と同様にしてフィルム48を作製した。
【0240】
以下、作製したフィルム21〜29、35〜41、及び44〜48の光学異方性層のRe(550)及びR[+40°]/R[−40°]をまとめた表を示す。なお、各フィルムの光学異方性層のRe(550)及びR[+40°]/R[−40°]は、各フィルムと同じ光学異方性層を、別途用意したガラス板上に形成したものを用いて測定した。
【0241】
【表8】

【0242】
【表9】

【0243】
1.3D表示装置の作製
(画像表示素子)
画像表示素子として、垂直配向型(VAモード)液晶セルを準備した。具体的には、PVAモード用液晶を基板間に真空注入で封入し、波長550nmにおける液晶層のΔn・dが290nmであるVAモード液晶セルを準備した。この表示装置を、以下の実施例及び比較例において、液晶セル(10)、第3及び第4の偏光膜(11,12)を含む画像表示素子として用いた。なお、下記実施例及び比較例において、バリア素子を画像表示素子の背面に配置した例では、画像表示素子の表示面外側に配置される偏光膜の表面には、易接着剤を介して低反射フィルムのクリアLR(富士フイルム社製「CV−LC」)を貼り合わせた。
【0244】
(バリア素子)
厚さ80μmのポリビニルアルコール(PVA)フィルムを、ヨウ素濃度0.05質量%のヨウ素水溶液中に30℃で60秒浸漬して染色し、次いでホウ酸濃度4質量%濃度のホウ酸水溶液中に60秒浸漬している間に元の長さの5倍に縦延伸した後、50℃で4分間乾燥させて、厚さ20μmの偏光膜を得た。
上記で作製したいずれかのポリマーフィルムをアルカリ鹸化処理した後、偏光膜の片面にポリビニルアルコール系接着剤を用いて貼り合わせ、積層体をそれぞれ作製した。フィルム11、39、40については、表面にコロナ放電処理を行った後、アクリル系粘着剤を用いて偏光膜と貼り合わせた。なお、偏光膜のもう片面には、市販のセルロースアシレート系フィルム「TD80UL」(富士フイルム社製)または低反射フィルムのクリアLR(富士フイルム社製CV−LC)を貼り合わせた。
【0245】
バリア素子用液晶セルとして、TNモード液晶セルおよびVAモード液晶セルを作製した。具体的には、TNモード液晶セルは、正の誘電率異方層を持つ液晶材料を基板間に真空注入で封入し、波長550nmにおける液晶層のΔn・dが400nmであるTNモード液晶セルを準備した。液晶材料は誘電異方性が正で、屈折率異方性、Δn=0.0854(589nm、20°C)、Δε=+8.5程度の液晶を使用した。TNモード液晶セルのツイスト角は90°であった。VAモード液晶セルは、PVAモード用液晶を基板間に真空注入で封入し、波長550nmにおける液晶層のΔn・dが290nmであるVAモード液晶セルを準備した。
この様にして作製したTNモード液晶セル及びVAモード液晶セルの双方の表面それぞれに、上記で作製した積層体のいずれかを貼合した。なお、下記実施例及び比較例において、バリア素子を画像表示素子の前方に配置した例では、積層体として、低反射フィルムのクリアLR(富士フイルム社製CVフィルムCV−LC)を有する積層体を用い、表示面外側にクリアLRを配置した。また、TNモード液晶セルを含むバリア素子をこれらの積層体を貼合する際は、下記表に示す通り、液晶セルとの関係で偏光膜の吸収軸をEモード又はOモード配置にした。貼合時の各部材の軸の関係は、後述の表中に示した。
【0246】
(3D表示装置の作製)
上記の画像表示素子の前方又は後方に、上記で作製したバリア素子を、それぞれ貼合し、3D表示装置をそれぞれ作製した。貼合時の各部材の軸の関係については、下記表にまとめた。下記表中、第1の位相差フィルムおよび第2の位相差フィルムの遅相軸は、第3および第2の偏光膜の吸収軸との軸の関係を示した。たとえば、第1の位相差フィルムの遅相軸角度が「直交」かつReが正ならば、第1の位相差フィルムの遅相軸と第3および第2の偏光膜の吸収軸が直交であることを意味する。第1の位相差フィルムの遅相軸角度が「直交」かつReが負ならば、第1の位相差フィルムの遅相軸と第3および第2の偏光膜の吸収軸が平行であることを意味する。第2の位相差フィルムの遅相軸角度が「平行」かつReが正ならば、第2の位相差フィルムの遅相軸と第3および第2の偏光膜の吸収軸が平行であることを意味する。第2の位相差フィルムの遅相軸角度が「平行」かつReが負ならば、第2の位相差フィルムの遅相軸と第3および第2の偏光膜の吸収軸が直交であることを意味する。
【0247】
比較例1および比較例2、比較例11および比較例12として、上記で作製したバリア素子に代えて、ガラス基板上に黒ストライプパターンを形成したバリア層を、画像表示素子に貼合して、3D表示装置を作製した。
【0248】
2.3D表示装置の評価
(1)2D表示での正面輝度
各表示装置を2D表示にし、正面輝度を輝度計(BM−5A、トプコン社製)を用いて測定し、下記の基準で評価した。また、評価Aの例については、実施例7の正面輝度を100%としたときの相対値を算出し、下記表中に示した。
[評価基準]
A: 比較例1よりも高輝度
B: 比較例1と同等以下の輝度
【0249】
(2)2D表示での横方向の輝度
各表示装置を2D表示にし、極角60度における方位角0度、180度の輝度を輝度計(BM−5A、トプコン社製)を用いて測定し、下記の基準で評価した。また、評価Aの例については、実施例4の横方向輝度を100%としたときの相対値を算出し、下記表中に示した。
[評価基準]
A: 比較例1よりも高輝度
B: 比較例1と同等以下の輝度
【0250】
(3)2D表示での白色表示の色味変化
各表示装置を2D表示にし、方位角0度、45度、90度、135度、180度、225度、270度、315度の8方位について、正面から斜め方向に視点をずらしたときの色味変化を下記の基準で評価した。なお、極角60度における上記8方向の色度u'と色味v'を輝度計(BM−5A、トプコン社製)を用いて測定し、正面との色度差Δu'v'の最大値も併せて測定した。
[評価基準]
A:8方向全てで色味変化が視認されない(Δu'v'が0.015未満)。
B:1方向でわずかな色味変化が視認される(Δu'v'が0.015以上0.041未満)が、許容できる程度である。
C:2方向〜5方向でわずかな色味変化が視認される(Δu'v'が0.015以上0.041未満)が、許容できる程度である。
D:1方向で色味変化がはっきり視認されるものの(Δu'v'が0.041以上)、他の7方向の色味変化はわずか(Δu'v'が0.041未満)で、許容できる程度である。
E:2方向で色味変化がはっきり視認され、許容できない(Δu'v'が0.041以上)。
【0251】
(4)3D表示での視認性
極角45度における方位角0度、45度、90度、135度、180度、225度、270度、315度の8方位について、各方向で3D表示が得られるように、バリア素子によって表示されるバリアパターン像を調整し、斜め方向における3D表示の視認性を下記の基準で目視にて評価した。
[評価基準]
A:8方向全てでクロストークが視認されない。
B:1〜4方向でわずかなクロストークが視認されるが、許容できる程度である。
C:5方向以上でわずかなクロストークが視認され、許容できない。
【0252】
【表10】

【0253】
【表11】

【0254】
【表12】

【0255】
【表13】

【0256】
【表14】

【0257】
【表15】

【0258】
【表16】

【0259】
【表17】

【0260】
【表18】

【0261】
【表19】

【0262】
【表20】

【0263】
【表21】

【0264】
【表22】

【0265】
【表23】

【0266】
【表24】

【0267】
【表25】

【0268】
【表26】

【0269】
【表27】

【0270】
【表28】

【0271】
【表29】

【0272】
【表30】

【0273】
【表31】

【0274】
【表32】

【0275】
【表33】

【0276】
【表34】

【0277】
【表35】

【0278】
【表36】

【0279】
【表37】

【0280】
【表38】

【0281】
【表39】

【0282】
【表40】

【0283】
【表41】

【0284】
【表42】

【0285】
【表43】

【0286】
【表44】

【0287】
【表45】

【0288】
【表46】

【0289】
【表47】

【0290】
【表48】

【0291】
【表49】

【0292】
【表50】

【0293】
【表51】

【0294】
上記表に示す結果から、Re(550)が−30〜100nmであり、Rth(550)が−15〜180nmである位相差フィルムが液晶セルと第1の偏光膜との間、及び液晶セルの後方の少なくとも一方に配置されている本発明の実施例のバリア素子を用いると、2D表示の際の白表示時に色味変化を生じさせることなく、3D表示の際のクロストークの軽減効果が改善されることが理解できる。
【0295】
3.バリア素子用液晶セルの波長分散の評価(実施例174〜197)
続いて、バリア素子用液晶セルのΔnd(λ)の波長分散の影響について検討した。
正の誘電率異方層を持ち、かつ、Δn(λ)の波長分散性の異なる3種類の液晶材料を基板間に真空注入で封入し、波長550nmにおける液晶層のΔn・dが400nmであるTNモード液晶セルA、B、Cを準備し、バリア素子用液晶セルとして使用した。TNモード液晶セルのツイスト角は90°であった。
作製したバリア素子用液晶セルのΔnd(λ)の波長分散をAXOMETRICS社製のAXOSCANと付属のソフトを使用して測定し、Δnd(450)/Δnd(550)を算出した結果を下表に示す。
【0296】
【表52】

【0297】
画像表示素子用液晶セルには、前記したVAモードの液晶セルを使用した。
この様にして作製したバリア素子用液晶セル及び画像表示素子用液晶セルの双方の表面それぞれに、前記積層体のいずれかを貼合した。なお、下記実施例において、バリア素子を画像表示素子の前方に配置した例では、積層体として、低反射フィルムのクリアLR(富士フイルム社製CVフィルムCV−LC)を有する積層体を用い、表示面外側にクリアLRを配置した。また、TNモード液晶セルは、下記表に示す通り、液晶セルとの関係で偏光膜の吸収軸をEモード又はOモード配置にした。貼合時の各部材の軸の関係、バリア素子用液晶セルの種類は、下記表に示した。
この様にして作製した3D表示装置を評価した結果をあわせて下記表に示す。
【0298】
【表53】

【0299】
【表54】

【0300】
【表55】

【0301】
【表56】

【0302】
上記表に示す結果から、バリア素子用液晶セルの波長分散Δnd(450)/Δnd(550)が小さいほど、2D表示の際の白表示時に色味変化が視認されにくくなる、すなわち、2D表示の視認性が改善されることが理解できる。
【符号の説明】
【0303】
1 3D表示装置
2 バリア素子
3 画像表示装置
4 バックライト
5 バリア層形成用液晶セル
5a 5a' 基板
5b 5b' 対向基板
6 第1の偏光膜
6a 第1の偏光膜の吸収軸
7 8 位相差フィルム
7a 8a 位相差フィルムの面内遅相軸
9 第2の偏光膜
9a 第2の偏光膜の吸収軸
10 画像表示用液晶セル
11 第3の偏光膜
11a 第3の偏光膜の吸収軸
12 第4の偏光膜
12a 第4の偏光膜の吸収軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像表示素子の前面又は背面に配置される、透光部及び遮光部からなるバリアパターンを形成可能なバリア素子であって、
第1の偏光制御素子と、
液晶セルと、
前記第1の偏光制御素子と該液晶セルの一方の表面との間、及び前記液晶セルの他方の表面上の少なくとも一方に配置される、波長550nmの面内レターデーションRe(550)が−30〜100nmで、且つ波長550nmの厚み方向レターデーションRth(550)が−15〜180nmである位相差フィルムと、
を少なくとも有するバリア素子。
【請求項2】
前記位相差フィルムの波長550nmの厚み方向レターデーションRth(550)が30〜180nmである請求項1に記載のバリア素子。
【請求項3】
前記位相差フィルムの波長550nmの厚み方向レターデーションRth(550)が−15〜30nmであり、前記位相差フィルム上に液晶性化合物を含有する組成物から形成された光学異方性層を有し、かつ、前記光学異方性層の面内レターデーションRe(550)が、20nm以上である請求項1に記載のバリア素子。
【請求項4】
前記第1の偏光制御素子が、吸収型偏光子であり、且つ該吸収型偏光子の吸収軸と前記位相差フィルムの面内遅相軸との角度が、直交又は平行である請求項1〜3のいずれか1項に記載のバリア素子。
【請求項5】
前記吸収型偏光子の吸収軸が、表示面水平方向を0°とした場合に、0°又は90°の方向である請求項4に記載のバリア素子。
【請求項6】
前記第1の偏光制御素子が、反射型偏光子又は異方性散乱型偏光子である請求項1〜5のいずれか1項に記載のバリア素子。
【請求項7】
前記第1の偏光制御素子とともに前記液晶セルを挟んで配置される第2の偏光制御素子をさらに有し、第1及び第2の偏光制御素子の組み合わせが、二つの吸収型偏光子の組み合わせ、又は一つの吸収型偏光子と一つの反射型偏光子又は異方性散乱型偏光子との組み合わせである請求項1〜6のいずれか1項に記載のバリア素子。
【請求項8】
前記位相差フィルムが、前記少なくとも一つの偏光制御素子と該液晶セルの一方の表面との間、及び前記液晶セルの他方の表面上の双方にそれぞれ配置されている請求項1〜7のいずれか1項に記載のバリア素子。
【請求項9】
前記位相差フィルムが、互いの遅相軸を直交にして配置されている請求項7又は8に記載のバリア素子。
【請求項10】
前記位相差フィルム上に液晶性化合物を含有する組成物から形成された光学異方性層を有する請求項1、2、4〜9のいずれか1項に記載のバリア素子。
【請求項11】
前記位相差フィルム上に主軸が厚み方向において傾斜した光学異方性層を有する請求項1〜10のいずれか1項に記載のバリア素子。
【請求項12】
前記光学異方性層が、波長550nmにおいて、3≦R[+40°]/R[−40°]を満足する請求項3〜11のいずれか1項に記載のバリア素子;
ここで、位相差フィルムの遅相軸に直交した法線を含む面内(入射面)において、R[+40°]は前記法線からフィルム面方向に40°傾いた方向から測定したレターデーションであり、R[−40°]は前記法線から逆に40°傾斜した方向から測定したレターデーションである(但し、R[−40°]<R[+40°]とする)。
【請求項13】
前記光学異方性層が、波長550nmにおいて、20nm≦Re(550)≦58nmである請求項3〜12のいずれか1項に記載のバリア素子。
【請求項14】
前記液晶性化合物は、ディスコティック液晶性化合物である請求項3〜13に記載のバリア素子。
【請求項15】
前記位相差フィルムが、セルロースアシレートフィルムである請求項1〜14のいずれか1項に記載のバリア素子。
【請求項16】
前記位相差フィルムが、光学的に二軸性のポリマーフィルムである請求項1〜15のいずれか1項に記載のバリア素子。
【請求項17】
前記液晶セルが、TNモードである請求項1〜16のいずれか1項に記載のバリア素子。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか1項に記載のバリア素子と、画像表示素子とを含む3D表示装置。
【請求項19】
前記画像表示素子が、一対の第3及び第4の偏光制御素子と、その間に配置される液晶セルとを少なくとも有する請求項18に記載の3D表示装置。
【請求項20】
前記バリア素子が有する第1の偏光制御素子の透過率が、前記画像表示素子が有する第3及び第4の偏光制御素子の透過率より高い請求項19に記載の3D表示装置。
【請求項21】
前記バリア素子が、前記第1の偏光制御素子として吸収型偏光子を有し、画像表示素子の前面に、該第1の偏光制御素子を前面側にして配置される請求項18〜20のいずれか1項に記載の3D表示装置。
【請求項22】
前記バリア素子が、前記第1の偏光制御素子として吸収型偏光子、反射型偏光子又は異方性散乱型偏光子を有し、画像表示素子の背面に、該第1の偏光制御素子を背面側にして配置されている請求項18〜21のいずれか1項に記載の3D表示装置。
【請求項23】
前記画像表示素子に含まれる液晶セルがVAモード又はIPSモードである請求項18〜22のいずれか1項に記載の3D表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−212110(P2012−212110A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−25234(P2012−25234)
【出願日】平成24年2月8日(2012.2.8)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】