説明

バルブ構造

【課題】磨減や摩擦を生じる運動がシール材に発生せず、長期間の耐用期間・動作期間後にも使用開始時のトルクが低下することがない、バタフライ型式のバルブ構造を提供する。
【解決手段】環状のハウジング部分11およびその内部で回転軸を中心として回転可能に配置された弁体12,12’を含んでおり、ハウジング部分には弁座17が配置されており、弁座はプレート状に構成されるとともに、隣接する2つの開口部20,21を有しており、回転軸はウェブと平行に配置されており、弁体は2部分で構成されており、弁体はそれぞれの平面で相互に平行に、かつこれに対する垂直方向ではオフセットされており、閉じた位置のとき弁体が弁座プレートの両方の側でそれぞれ位置決めされ、開口部の間にはその輪郭および両方の弁体に沿って弁座プレートの両側にそれぞれ1つのシール材15,16が配置されており、弁体が閉じたときに当接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提項に記載されている、パイプ配管または容器のためのバルブ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
液体や気体の媒体に対する遮断機構としてのバルブは、多くの技術分野で必要とされている。課せられる要求事項に応じて、さまざまに異なる種類のバルブが多様な仕方で利用される。バルブはパイプ配管や容器の開口部を開閉する。バルブは、たとえばポンプ、容器、測定器具、およびその他の構成部品の間の配管を開閉する。バルブは液体やガスの流入や通過または遮断を可能にし、あるいは、固体のためのエアロックとしての役目を果たすこともできる。バルブの用途は非常に多様であり、したがって、その設計に関して課せられる要求事項も多様である。
【0003】
バルブの重要な部品はハウジングと可動のプレートないし弁体であり、いずれの場合にも、位置に応じて通過部を開放したり遮断したりするシール材を備えている。弁体は外部の大気側から動かされ、位置に応じて通過開口部を閉じるようになっている。多くのケースにおいて中間位置も設定することができ、それによって導通率が変わり、このようなケースでは調整可能な導通率をもつスロットル機構としてバルブを作動させることもできる。通常、閉じた位置では高い密閉性が求められ、この場合、バルブはハウジングおよび/または弁体縁部にシール材を備えていなくてはならない。その際には、エラストマーシール材が用いられるのが通常である。バルブに関する1つの重要な要求事項は、通常、開いた状態のときに媒体を通過させるためのできるだけ広い断面積が可能になることである。したがって、流動損失を少なく抑えるために高い導通率が実現されるのが望ましい。このことは、バルブのサイズを一定の枠内に抑えるために、特別なバルブ設計を必要とする。操作されるべき導通断面積よりも大きい断面積で、バルブそれ自体を構成することもできる。しかし経済的な理由から、バルブをあまり大きく構成するのは望ましくなく、それにもかかわらず、できる限り多い導通率が実現されるのがよい。
【0004】
このような設定事項を考慮に入れようとする公知のバルブ構造の1つは、いわゆる蝶形弁(バタフライ弁)である。この種類のバルブはそれ自体単純に構成されている。管状区域の内部に、または環状のハウジング部分の内部に、円板状の弁体がシャフトにより中心の軸を中心として回転可能に支承されて配置されている。ハウジングの外部すなわち大気側で駆動装置または手動によりシャフトを約90°だけ回転させることで、閉止のために弁体がハウジング部分に向かって回転し、または、開放のために流動方向を向く。良好な密閉をするために、ハウジング部分は内側円周にシール材としてのエラストマー材料を備えている。多くのケースにおいて、エラストマー材料はハウジング部分にではなく、弁体の外側縁部で弁体を取り囲むように配置される。すると閉止運動のとき、シール材はハウジング内壁と弁体縁部との間で摩擦を生じながら圧縮される。このような種類のバルブはたとえばドイツ特許出願公開第3302159A1号明細書に記載されている。
【0005】
多くのケースでこのような形式のバルブ構造を適用可能であり、特に、摩擦を生じるシール材の磨減を潤滑効果によって低減させる液体の媒体の場合や、あるいは、潤滑剤を使用できることによってある程度の不純物や磨減粒子を許容できる場合にも適用可能である。特別に高い清浄性が要求される利用ケースでは、このような種類のバルブ構造は採用することができない。このことは、特に、高度に清浄なプロセスがしばしば必要とされる真空用途の場合に当てはまり、たとえば、薄膜技術における多くの真空表面処理プロセスの場合などに当てはまる。このような種類のプロセスでは、シール材を乾式で作動させなく
てはならない。たとえば、いかなる種類であれ潤滑剤の使用はできる限り回避しなくてはならないからである。潤滑剤を少量使用したとしても、その潤滑剤は数回のバルブ操作後に掻き落とされる。するとシール材が摩擦によって激しく磨耗し、発生する粒子が許容されないほどプロセスを汚染することになる。また、たとえばOリングのようなシール材はねじれたり回転したり、あるいは剥がれたりする危険もある。そのためにバルブが短期間のうちに使い物にならなくなる。駆動力も不均等になり、時間を通じて変化し、特に増大する。バタフライ弁の基本的構造それ自体は、このような形式のバルブによって実現可能な優れた導通率特性という観点から、真空中での用途に非常に適している。したがって、このような形式のバルブを設計的に改良し、前述したような問題を削減または回避できるようにしようとする試みが再三なされてきた。
【0006】
摩擦を生じるシール材を回避するための公知の提案は、高いコストのかかる追加のメカニズムによって弁体をまず弁座から持ち上げ、シール材が弁座と接触しなくなってから初めて弁体を回転させ、ないしは閉止のときにはこれと逆の順序を行うことを意図している。このような種類の高いコストのかかるバルブ構造は、たとえばドイツ特許第3508318C1号明細書、ドイツ特許第3533937C1号明細書、米国特許第3,065,950号、および米国特許第6,494,434号に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】ドイツ特許第3508318C1号
【特許文献2】ドイツ特許第3533937C1号
【特許文献3】米国特許第3,065,950号
【特許文献4】米国特許第6,494,434号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明の課題は、従来技術の欠点を取り除くことにある。特に本発明の課題は、磨減や摩擦を生じる運動がシール材に発生せず、長期間の耐用期間・動作期間後にも使用開始時のトルクが低下することがない、バタフライ型式のバルブ構造を提供することにある。さらに、このバルブ構造は簡素に構成されているのがよく、高い信頼度を実現し、経済的に製造可能であるのがよい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は、当分野に属するバルブ構造において、請求項1の特徴部の構成要件に基づいて解決される。従属請求項は、本発明のその他の好ましい実施形態に関わるものである。
【0010】
本発明によると、パイプ配管または容器のためのバルブ構造は、分断平面を含む導通断面を取り囲む環状のハウジング部分を含んでおり、ハウジング部分の内部にはハウジング部分に対して横向きに位置する回転軸を中心として開いた位置と閉じた位置との間で回転・旋回可能なように少なくとも1つのシャフト部分によりハウジング部分に支承された弁体が配置されており、ハウジング部分には弁座が配置されており、弁座と弁体の間にはシール材が設けられており、弁体は閉じた位置のときシール材へ封止をするように当接する。弁座はプレート状に構成されており、ハウジング部分の内部でこれに対して横向きに封止をするように配置されるとともに分断平面を包摂しており、弁座プレートは隣接する2つの開口部とこれらの間に構成されたウェブを有しており、回転軸はウェブと平行に配置されており、弁体は2部分で構成されており、これら両方の弁体は相並んでそれぞれの平面で相互に平行に、かつこれに対する垂直方向ではオフセットされて配置されており、一方の弁体は開口部のうちの一方を通って延びる結合手段によって他方の弁体と固定的に結
合されており、それにより、閉じた位置のとき第1の弁体が弁座プレートの一方の側で位置決めされるとともに第2の弁体が弁座プレートの他方の側で位置決めされるようになっており、両方の弁体は両方の開口部のそれぞれ一方の上でこれを覆うように付属しており、それぞれの開口部の間にはその輪郭および両方の弁体に沿って弁座プレートの両側にそれぞれ1つのシール材が配置されており、付属の弁体が閉じた位置のときにこれらのシール材へ封止をするように当接する。
【0011】
閉じた状態のとき、バルブはハウジング部分の一方の側を他方の側から分断し、それによって配管および/または容器開口部の所望の遮断作用が可能となる。この分断をする部分は、閉じた状態のとき、分断されるべき各領域の間で分断平面を形成する。先ほど述べた単純なディスク型バルブでは、これは弁体を通って延びる単一の平面である。本発明によるバルブ構造では、分断平面は、両方の弁体および弁座プレートの平行にオフセットされた平面によって、閉じた状態のときに形成される。すなわち分断平面は、相互に若干オフセットされた平行な3つの平面部分によって形成される。
【0012】
回転軸は弁座プレートの一方の側に配置されており、ハウジング部分ないし流動方向に対して横向きに延びている。回転軸はハウジング部分の横断面に対して中央に配置されていてよく、または好ましくは若干オフセットされて、ないしは非対称に配置されていてよい。弁体はこの回転軸を中心として回転・旋回可能なように両側でハウジング部分に支承されている。そのために両側に小さいシャフト部分を設けることができ、これらのシャフト部分の軸は回転軸と対応しており、これらのシャフト部分は両方の弁体に配置されており、それにより、これらのシャフト部分はバルブを封止して閉じるために、弁座プレートの付属の開口部に向かって旋回できるようになっている。短いシャフト部分に代えて、連続する1つのシャフト片を使用することもできる。少なくともハウジング部分の一方の側で、シャフト部分またはシャフトはハウジング部分を通りシャフトシール材を介して外方に向かって案内され、そこで大気側から駆動することができる。このことは、公知の仕方で手動により行うことができ、またはアクチュエータを用いて行うことができる。このバルブは長期の動作期間にわたって軽い動作で、かつ一定に保たれる駆動モーメントにより作動可能である。したがって、このバルブは非常に正確かつ再現可能に作動させることができ、また、正確な中間位置も設定可能または制御可能であり、それによって導通率を厳密に調整し、もしくは連続的に変化するように制御することができる。
【0013】
このバルブ構造は、特に2.0cmから1000cmの公称幅の範囲内で、小型のバルブ用としても大型のバルブ用としても適している。
用途や作動されるべき媒体に応じて、閉止力ないし開放力を適切な大きさに設定することも可能であり、そのために、弁座プレートおよび付属の弁体の両方の開口部の寸法がそれぞれ異なる大きさに設定され、それにより、開放時および特に閉止時の運動がサポートされるようにする。このことは、たとえば閉じた位置のときの確実な密封、およびこれに伴う小さい所要の駆動力を意味している。このことは、バルブ構造全体の小型の設計形態につながるとともに、少ない製造コストにつながる。ここで提案されるバルブ構造のこのような挙動は、たとえば清浄性、優れた導通率、再現可能な挙動、長い耐用寿命、簡単な取扱性とメンテナンスなどに関して特別に高い要求が課される真空技術の分野で、格別に好ましい使用を可能にする。
【0014】
次に、図面を参照しながら模式的に、かつ一例として本発明について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】従来技術に基づく「バタフライ」型式の1部分からなるディスク型バルブを模式的に断面図として示す図である。
【図2】本発明に基づいて2つの弁体を備える2部分からなるバルブ構造を模式的に断面図として示す図である。
【図3】閉じた位置にある弁体を示す平面図として、バルブ構造を流動方向の一方の側から見た模式的な図である。
【図4】2つの開口部を備える弁座プレートと、弁座プレートにおけるシール材の位置とを示す平面図として、図面を見やすくするために弁体なしで図3と同様に示した模式的な図である。
【図5】アングル弁を構成するためにハウジング部分に組み込まれた本発明に基づくバルブ構造を示す、さらに別の断面図としての模式的な図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1には、従来技術により以前から知られるディスク型バルブあるは「バタフライ」型のフラップバルブが断面図で示されている。バタフライ弁は、貫通孔を備えるハウジング部分1と、その中で開口部に対して横向きに配置された1部分からなる弁体2とで構成されており、弁体はその面の中心部でシャフト3と結合されており、たとえばねじ止めされている。シャフト3はハウジング部分1に対して横向きに配置されており、その壁部で回転可能なように両側を支承されている。弁体2には端面側に周回する溝4が刻設されており、この溝にOリング5がシール材として挿入されている。ハウジング部分1は、貫通孔の軸ないし流動方向に対して両側にそれぞれ1つのテーパ部6,7を内面に有しており、これらのテーパ部は、ハウジング部分1の内側円周および貫通孔を取り囲むとともに、等しい直径と大きい直径をもつそれらの面が互いにV字型突き合わされている。バルブが閉じた位置8にあるとき、弁体2はハウジング部分1に対して横向きにテーパ部6,7の各面の中央領域に位置しており、そこで弁体は円周全体にわたって封止をするようにテーパ部に当接する。そのために、弁体2の円周にはシール材であるOリングが周回する溝4に配置されており、このOリングは、ハウジング部分1の内側円周ないしテーパ部6,7の互いに接する面と、弁体2の外側円周との間で閉じた位置8のときに押圧され、それによって封止をするように各面に当接する。両方のテーパ部6,7の各面はシール材5に対する一種の導入面を形成しており、最終位置でのシール材の押圧を可能にする。その様子は図1に示されている。
【0017】
開いた位置9のとき、弁体の面は流動方向へ回転しており、ないしは貫通孔の軸方向へ回転している。すなわちバルブの開閉をするために、弁体の最大90°の回転ないし揺動が可能である。
【0018】
テーパ面6,7を備えるこのようなバルブ構造は、弁体が開いた位置9から90°だけ回転するとき、弁体2とハウジング部分1の内側の壁との間に、および/またはこれに取り付けられた配管との間に、十分な余裕ができるように構成されており、また、0°の位置へと位置決めされるとき、すなわち特に閉じた最終位置8にくるとき、テーパ部の導入面を通じてこの余裕が小さくなっていき、ついにはシール材5が押圧され、それにより、そこでこの最終位置(閉じた位置8)で封止されるように構成されている。弁体の90°の回転は、シャフト3を介して外部から手動式、電気式、空気圧式、磁気式、油圧式に行うことができる。駆動側では0°と90°のリミットストッパも定義されており、0°のリミットストッパすなわち閉じた位置8は細かく設定可能でなければならない。
【0019】
Oリング5は側方で、封止機能のためにそこで押圧をするために、テーパ部6に当たって磨減されざるを得ないので、特に真空の用途における磨耗は甚大である。また、Oリング5が溝のなかで回りはじめ、そのためにOリングがねじれたり、剥がれたりするという危険もある(シャフト3に対して約90°部分)。閉じた位置8で長期間停止していると、場合によっては、潤滑のためにOリングへ取り付けられた油脂膜が取れてしまい、回転運動を最初に操作するときに駆動モーメントが極端に大きくなる。Oリング5は真空動作ではそれ自体として潤滑されるべきでなく、もしくはごくわずかしか潤滑されるべきでな
く、それは、油脂のような潤滑剤がプロセスを汚染しないようにするためである。Oリング5の耐用寿命は潤滑の種類や、そのつど行われる真空プロセスの許容される汚染に依存して決まる。非常に清浄な特定の真空プロセスでは、潤滑剤は一般に許容されない。
【0020】
前述した問題は、本発明によると、図2から図5に示す、真空の用途に特別に適した実施例に基づくバルブ構造の構成によって解決される。
【0021】
図2には、本発明によるバルブ構造が模式的に断面図として示されている。閉じた位置8,18は実線の太さで図示されており、弁体12,12’が90°だけ回転した開いた位置9,19は同じ図面に鎖線で示されている。
【0022】
パイプ配管または容器のためのバルブ構造は、分断平面を含む導通断面を取り囲む環状のハウジング部分1,11を含んでおり、ハウジング部分1,11の内部には弁体2,12,12’が配置されており、弁体はハウジング部分に対して横向きに位置する回転軸10を中心として開いた位置と閉じた位置との間で回転・旋回可能なように両側で少なくとも1つのシャフト部分3,13,13’によりハウジング部分1,11に支承されており、ハウジング部分1,11には弁座17が配置されており、弁座17と弁体の間にはシール材5,15,16が設けられており、弁体2,12,12’は閉じた位置のときシール材5,15,16へ封止をするように当接する。本発明によると、弁座17はプレート状に構成されており、ハウジング部分11の内部でこれに対して横向きに封止をするように配置されるとともに分断平面を包摂しており、弁座プレート17は隣接する2つの開口部20,21とこれらの間に構成されたウェブを有しており、回転軸10はウェブと平行に配置されており、弁体12,12’は2部分で構成されており、これら両方の弁体12,12’は相並んでそれぞれの平面で相互に平行に、かつこれに対する垂直方向ではオフセットされて配置されており、一方の弁体12は結合手段14によって開口部20,21のうちの一方を通って延びるように他方の弁体12’と固定的に結合されており、それにより、閉じた位置のとき第1の弁体12が弁座プレート17の一方の側で位置決めされるとともに第2の弁体12’が弁座プレート17の他方の側で位置決めされるようになっており、両方の弁体12,12’は両方の開口部20,21のそれぞれ一方の上でこれを覆うように付属しており、それぞれの開口部20,21の間にはその輪郭および両方の弁体12,12’に沿って弁座プレート17の両側にそれぞれ1つのシール材15,16が配置されており、付属の弁体12,12’が閉じた位置のときにこれらのシール材へ封止をするように当接する。
【0023】
ハウジング部分1,11,11’は断面ないし導通断面を有する開口部を取り囲んでおり、好ましくは一種の管区域のように環状に構成されている。このハウジング部分はバルブを構成するための各部品を収容し、分断領域ないし分断平面を備えるバルブ構造を構成する。このバルブ構造は公知の仕方によりハウジング部分11,11’で、パイプ配管および/または容器開口部と片側または両側で結合手段45を介して結合することができる。結合手段45はさまざまな形式で構成することができるが、フランジ45,45’として構成されるのが好ましい。それによってバルブ構造を簡単にコンポーネントとして利用可能である。あるいはバルブ構造は、パイプ配管または容器開口部に固定的に組み込まれた状態で配置されていてもよい。
【0024】
分断平面は、ハウジング部分11,11’の内部でこれに対して横向きに形成されており、分断平面を中心としてバルブの遮断機構が構成されている。遮断機構は、ハウジング部分11,11’の内側円周でこれに対して横向きに位置するように封止をしながら結合された、2つの開口部20,21を備える弁座プレート17と、回転軸10を中心として一緒に同時に旋回可能な2つの弁体12,12’とを含んでおり、これらの弁体によって両方の開口部20,21を封止するように閉じたり、開いたりすることができる。それに
より、媒体の流動方向ないしパイプ配管方向で開口部を閉止したり開放したりすることができ、それによって遮断機構としてのバルブが構成される。
2つの開口部20,21は断面に関して等しい大きさであってよく、または比率に関して相違していてよい。図2から図4には異なる大きさの開口部20,21が一例として図示されており、ほぼ1対2の比率となっている。異なる大きさの開口部20,21の場合、閉止力または開放力は、流動方向に依存して、希望に応じて閉止または開放を促進または阻止するように構造の利用状況に応じて作用することができ、開口部の比率に依存してこれらの力を設定することができる。
【0025】
両方の開口部20,21は同一の弁座プレート17に穿設されているので、これらの開口部は同一の平面に位置しており、その間にはウェブ17’が弁座プレートに形成されている。シャフト13またはシャフト部分13’を有する回転軸10は、このウェブ17’の一方の側で弁座プレート17と平行に、かつウェブ17’と平行に配置されている。さらに回転軸10は、開口部のいずれとも交差していない。開口部20,21は、回転軸10に対して対称に位置決めされているのが好ましい。両方の弁体12,12’は結合手段14を介して互いに固定的に結合されており、それぞれの平面は互いに平行に、シール材15,16が希望どおり押圧される弁座プレート17の厚みに相当する間隔をおいてオフセットされており、それにより、これらの弁体が相互に旋回することができるとともに、相互に同じ位置で固定されたまま保たれ、閉じた位置18のときに両方の開口部20,21を覆うようになっている。このとき結合手段14は、両方の開口部20,21のうちの一方を通って延びており、異なる大きさの開口部が適用される場合には、大きいほうの開口部を通って延びているのが好ましい。シャフト13またはシャフト部分13,13’を備える回転軸10は、弁座プレート17の一方の側で若干間隔をおいて位置するとともに、これと同じ側にある弁体12に固定されており、その様子は図2に示されている。閉じたバルブ位置18のとき、両方の弁体12,12’は弁座プレート17に当接して、付属の開口部20,21を封止するように覆う。この覆われた縁部領域には、開口部20,21を周回するようにそれぞれ1つのシール材15,16が配置されている。シール材15,16は弁座プレート17および/または弁体12,12’に配置されていてよく、溝に挿入されているのが好ましい。その様子は図2から図5に示されている。
【0026】
開口部20,21は、開いたバルブ位置19のときに良好な導通率を実現するために、できるだけ大きい断面積で構成されているのが好ましい。この場合、開口部20,21はハウジング部分11の内壁の環状の内側輪郭にできるだけ追随しており、その間に位置する領域には、直線状のウェブ17’が形成されており、回転軸10はこのウェブ17’と平行に位置している。弁座プレート17の残りの輪郭部は両方の弁体12,12’に対するストッパとしての役目を果たしており、弁体との重なり合い領域で両方の開口部20,21の輪郭に追随しながら、これらの間に位置する、シール材15,16を収容するための溝を受容している。図2には、好ましい例として、弁座プレート17に配置されたシール溝が示されている。ウェブ17’には、図2の例ではシール材が弁座プレート17にあるケースとして、上側と下側にそれぞれ1つのシール材15,16が取り付けられている。シール材15とシール材16はそれぞれループ状または環状に、好ましくはD字型に閉じており、異なる高さに位置しているので、互いに幾何学的に分断されている。あるいは、これらのシール材を弁体に取り付けたり、これら両方に取り付けることもできる。
2部分からなる弁体12,12’は組立可能性を向上させるために複数の部分で構成されていてよく、両方の弁体は結合部材14によって固定的に、または取外し可能に結合されていてよい。弁体12,12’は、シャフト13またはシャフト片13,13’により、ハウジング部分11の壁部に回転可能なように両側で支承されており、シャフト端部13,13’の一方だけが、ハウジング部分11を通って外部へと抜ける、シャフトシール材38を備える封止された挿通部を有しているのが好ましい。他方のシャフト端部13’は、この場合、外部への挿通部を有しておらず、ハウジング部分11でのシャフト支承部だ
けを有している。2部分からなる弁体12,12’の閉じた0°位置18から開いた90°位置19への90°の回転は、導出されているシャフト13を通じて、たとえば手動式、電動式、空気圧式、磁気式、油圧式に外部から行うことができる。外部に配置された回転駆動装置39によって0°と90°のリミットストッパも定義され、0°のリミットストッパすなわち閉じた位置18は微調整可能でなくてはならない。
【0027】
図3は、弁座プレート17と両方の弁体12,12’を示す閉じた位置18のバルブ機構の平面図、および、ハウジング部分11の断面図ないし流動方向から見た分断平面の一方の側からの平面図を、それぞれわかりやすく図解するために示している。ここでは第1の弁体12よりも小さく構成されている第2の弁体12’は、その下に位置する第2の開口部20(破線)を弁座プレート17の上で覆い、第1の弁体12(破線)は、第1の開口部21を覆うように弁座プレート17に下方から突き当たる。第2の弁体12’は第1の弁体12と結合手段14を介して固定的に結合されており、その各面は平行かつ互いに間隔をおくように保たれており、それにより、両方の弁体12,12’はそれぞれの平面に関して互いに平行に、かつ、閉じた位置18のとき弁座プレートに対して封止をするように保持されるようになっている。このとき結合部材14は開口部20,21の一方を、好ましくは広いほうの開口部21を通って延びており、シャフト13,13’またはシャフト部分はその回転軸10(破線)がウェブ17’の下でこれと平行に配置されており、かつ、下側に位置する第1の弁体12に固定された状態で配置されている。
【0028】
図4には、ここでは弁座プレート17へのシール材の配置の一例として、シール材15、16を備える溝の配置を明示するために、回転軸10を有する弁体12,12’を省いたうえで図3と同じ図面が示されている。シール材16を備える第2の溝は第2の開口部20を取り囲んでおり、ここでは弁座プレート17の上方に配置されており(見ることができる)、シール材15を備える第1の溝は第1の開口部21を取り囲んでおり、ここでは弁座プレート17の裏面に配置されている(隠されており、破線で図示)。
両方の開口部20,21の断面積の比率は、たとえば真空と大気による動作時に、大気が大きいほうの弁体12の面に当たることによって、大きいほうの弁体12が圧着と封止をする役目を果たすように選択することができ、これはたとえば開口部21,20の比率が2:1の場合である。ウェブ17’がたとえばハウジング11のちょうど真ん中に配置されており、両方の開口部20,21が等しい大きさであれば、封止のときの力は等しい大きさになり、バランスが保たれる。
【0029】
本発明に基づく上述したバルブ構造では、Oリング15,16のようなシール材が封止プロセスのときに鉛直方向でのみ対応物に向かって押圧される。したがって、閉止運動ないし摩擦運動は完全に回避される。それによってOリングが磨減することがなく、特に真空である媒体を相応のプロセスで汚染することになる望ましくない粒子が生成されず、また、シール材がねじれたり剥がれたりすることもないので、それによって大幅に長い耐用寿命が実現される。シール材ないしシールゾーンを強力に潤滑する必要もなくなり、あるいは、潤滑剤なしに乾式で作動させることさえできる。バルブの長期間の停止後にシャフト13の始動トルクが大きくなることもない。シール材が大きな始動トルクを生成することがなくなるので、回転駆動装置38はわずかなトルクしか必要としない。したがって回転駆動装置を小型かつ低出力に設計することができ、それに伴って低コストになる。一定で再現可能な操作力の挙動により、バルブを非常に正確に作動させることができ、中間位置すなわち設定可能な導通率も再現可能に調整し、また制御することができる。このことは、特に要求事項の高いプラズマプロセスのような真空プロセスにおいて、ガス流および/またはポンプ出力を調節するために特別に重要である。
【0030】
このバルブ構造はアングル弁での用途にも特別に良く適しており、その様子は図5に模式的かつ一例として断面図で示されている。特に大型のアングル弁について、たとえば2
50から630ISO−Kの公称幅DNについて、前述したバルブ構造を格別に有利に採用することができる。流れに対する弁体の縦方向位置によって、バルブの大きな導通率を実現することができる。たとえば真空回転ブッシング38を介してシャフト13が外方に導出された、単純な空気圧式の回転駆動装置39も可能である。このバルブ構造の対角線は導通断面の公称直径よりも√2だけ大きいので、広い開口部20,21を弁座プレート17で実現することができ、それによって大きな導通率を達成可能である。
【符号の説明】
【0031】
1,11 ハウジング部分、2,12,12’ 弁体、5,15,16 シール材、17 弁座

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプ配管または容器のためのバルブ構造において、分断平面を含む導通断面を取り囲む環状のハウジング部分(1,11)を備えており、前記ハウジング部分(1,11)の内部には弁体(2,12,12’)が配置されており、該弁体は前記ハウジング部分に対して横向きに位置する回転軸(10)を中心として開いた位置と閉じた位置との間で回転・旋回可能なように両側で少なくとも1つのシャフト部分(3)により前記ハウジング部分(1,11)に支承されており、前記ハウジング部分(1,11)には弁座(17)が配置されており、前記弁座(17)と前記弁体の間にはシール材(5,15,16)が設けられており、前記弁体(2,12,12’)は閉じた位置のとき前記シール材(5,15,16)へ封止をするように当接する、そのようなバルブ構造において、前記弁座(17)はプレート状に構成されており、前記ハウジング部分(11)の内部でこれに対して横向きに封止をするように配置されるとともに前記分断平面を包摂しており、前記弁座プレート(17)は隣接する2つの開口部(20,21)とこれらの間に構成されたウェブ(17’)を有しており、前記回転軸(10)は前記ウェブと平行に配置されており、前記弁体(12,12’)は2部分で構成されており、これら両方の弁体(12,12’)は相並んでそれぞれの平面で相互に平行に、かつこれに対する垂直方向ではオフセットされて配置されており、一方の弁体(12)は結合手段(14)によって前記開口部(20,21)のうちの一方を通って延びるように他方の弁体(12’)と固定的に結合されており、それにより、閉じた位置のとき前記第1の弁体(12)が前記弁座プレート(17)の一方の側で位置決めされるとともに前記第2の弁体(12’)が前記弁座プレート(17)の他方の側で位置決めされるようになっており、両方の前記弁体(12,12’)は両方の前記開口部(20,21)のそれぞれ一方の上でこれを覆うように付属しており、それぞれの前記開口部(20,21)の間にはその輪郭および両方の前記弁体(12,12’)に沿って前記弁座プレート(17)の両側にそれぞれ1つのシール材(15,16)が配置されており、付属の前記弁体(12,12’)が閉じた位置のときに該シール材へ封止をするように当接することを特徴とするバルブ構造。
【請求項2】
前記シール材(15,16)は前記弁体(12,12’)のいずれかに配置されており、または前記弁座プレート(17)に配置されており、好ましくは両方の前記シール材(15,16)は前記弁座プレート(17)の向かい合う側に配置されていることを特徴とする、請求項1に記載のバルブ構造。
【請求項3】
両方の前記シール材(15,16)は前記弁座プレート(17)に配置されていることを特徴とする、請求項2に記載のバルブ構造。
【請求項4】
前記弁座プレート(17)および/または前記弁体(12,12’)の一方または両方にはシール材(15,16)が中に挿入された溝が刻設されており、前記溝は付属の前記開口部(20,21)の輪郭に追随しており、付属の前記弁体(12,12’)は閉じた位置のとき付属の前記シール材(15,16)へ封止をするように当接することを特徴とする、先行請求項のうちいずれか1項に記載のバルブ構造。
【請求項5】
前記シール材(15、16)はOリングのシール材のようなエラストマーシール材であることを特徴とする、先行請求項のうちいずれか1項に記載のバルブ構造。
【請求項6】
両方の前記開口部(20,21)のうちの一方は他方よりも大きい断面積を有していることを特徴とする、先行請求項のうちいずれか1項に記載のバルブ構造。
【請求項7】
両方の前記開口部(20,21)の開口断面積は導通断面積の少なくとも45%、好ましくは60%であることを特徴とする、先行請求項のうちいずれか1項に記載のバルブ構
造。
【請求項8】
前記開口部(20,21)の形状は外側領域で前記ハウジング部分(11)の円形の輪郭に追随しており、その間の領域に直線状のウェブを形成していることを特徴とする、先行請求項のうちいずれか1項に記載のバルブ構造。
【請求項9】
前記バルブ構造は真空バルブであることを特徴とする、先行請求項のうちいずれか1項に記載のバルブ構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−139073(P2010−139073A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−281342(P2009−281342)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【出願人】(502079409)インフィコン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (18)
【Fターム(参考)】