説明

バルブ装置

【課題】バルブ装置において、バルブ室内の水分を排出し低温環境下におけるシート性の低下を防止する。
【解決手段】排気ガス再循環バルブ10を構成するボディ本体12には、バルブシート16の設けられる装着孔26及び連通室24の内周面に沿って第1及び第2排出溝28、30が形成され、該第1及び第2排出溝28、30が、軸方向に沿ってガス流出口22側まで延在すると共に、前記内周面における鉛直下側となる底面に形成される。そして、装着孔26及び連通室24の内部に浸入した水分が、第1排出溝28へと移動して第2排出溝30を通じてガス流出口22の外部へと排出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の流通する流路をバルブで開閉することにより該流体の流通状態を切り換えるバルブ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、流体の流通する流路に接続され、該流路の連通状態を弁体の回転作用下に切り換えて前記流体の流通状態を制御するバルブ装置が知られている。このようなバルブ装置は、例えば、流路を有した弁箱の内部に、断面U字状の弁体が回転自在に設けられ、該弁体が前記流路に設けられたシートリングの弾性体に当接することによって流路が閉塞され、一方、該弁体が回転して前記弾性体から離間することによって前記流路が開口し、前記弁体との間を通じて流体が流通する。また、シートリングの端部には弾性材料からなる弾性体が装着され、前記シートリングは、流路内に挿入された後、その開口から挿入された筒状のインサートによって固定され保持される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−161505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したようなバルブ装置では、流体内に含まれた水分が流路に付着し、該流路の底部側に溜まることがある。この水分は、例えば、インサート側に向かって若干だけ下方へと傾斜した流路に沿って移動するが、該インサートによって堰き止められ外部に排出されることがない。そのため、例えば、バルブ装置が低温環境下で用いられる場合に、水分が流路内において氷結し、それに伴って、弁体及びシートリングが氷結し、前記弁体の着座時におけるシート性が低下するという問題が生じる。
【0005】
本発明は、前記の課題を考慮してなされたものであり、バルブ室内の水分を排出し、低温環境下におけるシート性の低下を防止することが可能なバルブ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するために、本発明は、少なくとも外周面の一部が球面に形成され回動可能に設けられたバルブと、流体が流通する通路と該流路と連通し前記バルブの配設されるバルブ室とを有するボディと、前記バルブ室に対して可動自在に設けられ前記バルブが着座するシート部材と、前記シート部材を付勢する弾発部材と、前記弾発部材を保持するストッパとを備えるバルブ装置において、
前記バルブ室の底部には、前記流体の流通方向に沿って延在する排出溝が形成されることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、ボディにおいて、バルブ及びシート部材の設けられるバルブ室の底部に、流体の流通方向に沿って排出溝を延在させている。従って、ボディの内部に浸入した水分が、バルブ室内に滞留することが回避され、重力作用下に排出溝へと導かれた後、流体の流通方向に沿って排出される。その結果、バルブ室内に水分が残存し、氷結した場合に懸念されるシート部材の固着が防止され、例えば、低温環境下においてもシート部材をバルブの回動動作に対応させて円滑に可動させることができるため、バルブに対するシート性が好適に維持される。
【0008】
また、バルブ室の底部を、シート部材から離間する方向に向かって下方へと傾斜して形成するとよい。
【0009】
さらに、排出溝を、シート部材の外周側まで延在させるとよい。
【0010】
さらにまた、ストッパを、リング状に形成しバルブ室内に設けられた環状溝に装着すると共に、該環状溝の外周面に対して排出溝を深く形成するとよい。
【0011】
またさらに、ストッパには、外周面から半径内方向に窪んだ凹部を備え、前記凹部を排出溝に臨むように配置するとよい。
【0012】
また、ストッパは、切欠部を有したCリング状に形成され、バルブ室内に設けられた環状溝に装着すると共に、前記切欠部を、排出溝に臨むように配置するとよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0014】
すなわち、バルブ及びシート部材の設けられるバルブ室の底部に、流体の流通方向に沿って排出溝を延在させることにより、ボディ内に浸入した水分が、バルブ室内に滞留することが回避され、排出溝を通じて流体の流通方向に沿って排出される。その結果、バルブ室内に水分が残存し、氷結した場合に懸念されるシート部材の固着が防止され、例えば、低温環境下においてもシート部材をバルブの回動動作に対応させて円滑に可動させることができるため、バルブに対するシート性が好適に維持される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態に係るバルブ装置として用いられる排気ガス再循環バルブの全体断面斜視図である。
【図2】図1のII−II線に沿った断面図である。
【図3】図1におけるストッパ近傍を示す断面図である。
【図4】変形例に係る排気ガス再循環バルブのバルブ近傍を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係るバルブ装置について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
【0017】
図1において、参照符号10は、本発明の実施の形態に係るバルブ装置として用いられる排気ガス再循環バルブを示す。
【0018】
この排気ガス再循環バルブ10は、図1及び図2に示されるように、ボディ本体12と、該ボディ本体12の内部に回動自在に設けられるバルブ14と、前記バルブ14の外周面に当接するバルブシート(シート部材)16と、前記ボディ本体12の側部に設けられ、前記バルブ14に対して回転駆動力を付与する駆動力伝達機構18とを含む。
【0019】
このボディ本体12は、例えば、金属製材料から形成され、その略中央部には、排気ガスの供給されるガス流入口20と、その反対側に設けられ、前記排気ガスを導出して内燃機関(図示せず)へと循環させるガス流出口22が設けられている。また、ガス流入口20とガス流出口22との間には連通室(バルブ室)24が形成され、この連通室24の内部に円盤状のバルブ14が回動自在に配設されると共に、前記連通室24とガス流入口20との間には、該ガス流入口20に対して拡径した装着孔26が形成される。
【0020】
連通室24は、ガス流出口22と略同一の内周径で形成されると共に、該ガス流出口22側(矢印A1方向)に向かって徐々に拡径したテーパ状に形成される。
【0021】
また、装着孔26及び連通室24には、それぞれの内周面において鉛直下方向(矢印B方向)となる位置に、軸方向(矢印A1、A2方向)に沿って延在する第1及び第2排出溝28、30が形成される。この第1及び第2排出溝28、30は、装着孔26及び連通室24の内周面に対してそれぞれ断面矩形状で所定深さだけ窪んで形成される。また、第1及び第2排出溝28、30は、その長手方向(矢印A1方向)に沿って略同一深さで形成され、該第2排出溝30は、ガス流出口22の端部まで貫通している。なお、排気ガス再循環バルブ10は、第1及び第2排出溝28、30が鉛直下側(矢印B方向)となるように配置され使用される。
【0022】
また、装着孔26には、バルブ14の外周面に摺接するバルブシート16が設けられると共に、前記装着孔26と前記連通室24との間には、後述するストッパ38の装着されるストッパ収容溝32が形成される。
【0023】
なお、上述した第1排出溝28は、図3に示されるように、ストッパ収容溝32の深さより深く形成される。換言すれば、第1排出溝28は、ストッパ収容溝32の外周径より外側となる深さで形成されている。なお、図3は、図2におけるストッパ38を係止している連通室24側の突部の断面において、ガス流入口20側を見た図である。
【0024】
バルブシート16は、例えば、金属製材料から形成され、装着孔26において連通室24側(矢印A1方向)にバルブ14に当接するシート部34を有する。シート部34の中央には、連通孔36が軸方向(矢印A1、A2方向)に貫通し、ガス流入口20と連通している。
【0025】
また、バルブシート16は、装着孔26において軸方向(矢印A1、A2方向)及び径方向に移動可能に設けられ、ストッパ収容溝32に設けられたリング状のストッパ38との間にスプリング(弾発部材)40が介装され、該スプリング40によって前記バルブシート16がガス流入口20側(矢印A2方向)へと付勢されている。ストッパ38は、図3に示されるように、切欠部42を介して半径方向へ縮径自在なC字状に形成される。
【0026】
シート部34は、徐々に拡径するテーパ状のシート面を有し、前記シート面に対してバルブ14が当接することによってガス流入口20と連通室24との連通が遮断された弁閉状態となる。
【0027】
一方、ボディ本体12の略中央部には、図1に示されるように、連通室24から側方に向かって貫通したシャフト孔44が形成され、後述する駆動力伝達機構18のシャフト45が挿通される。
【0028】
バルブ14は、半球面状に形成された着座面50を有した円盤状の本体部46と、該本体部46の略中央から軸方向(矢印A1方向)に突出した軸部48とを備え、前記軸部48がシャフト45に対して連結されることにより、バルブ14がシャフト45と共に回転する。
【0029】
着座面50は、本体部46の外周面において半球面状に形成され、球面の頂部から一端面46aに向かって徐々に拡径するように球面状に形成される。そして、着座面50がバルブシート16のシート部34に当接(着座)することによって弁閉状態となる。
【0030】
駆動力伝達機構18は、バルブ14の連結されるシャフト45と、前記シャフト45の端部に連結されるバルブギア54と、ボディ本体12の側部に連結され、前記バルブギア54を介して前記シャフト45を回転駆動させる駆動源56とを含む。
【0031】
シャフト45は、ボディ本体12の外側に突出した一端部がバルブギア54の略中央部に挿通されてナット58を締め付けることによって固定されると共に、ボディ本体12においてバルブ14の側方にそれぞれ装着された軸受52a、52bによって回転自在に支持されている。
【0032】
駆動源56は、例えば、通電作用下に回転駆動するステッピングモータやロータリーアクチュエータからなり、その回転駆動力がバルブギア54を介してシャフト45へと伝達されることにより、シャフト45に連結されたバルブ14が軸線を中心として回動動作する。
【0033】
本発明の実施の形態に係るバルブ装置として用いられる排気ガス再循環バルブ10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次にその動作並びに作用効果について説明する。なお、ここでは、図1及び図2に示されるように、バルブ14がバルブシート16のシート部34に着座し、ガス流入口20とガス流出口22との間の流路が前記バルブ14によって遮断された弁閉状態を初期位置として説明する。
【0034】
図2に示すように、上述した初期位置では、バルブ14の着座面50がバルブシート16のシート部34に当接しているため、ガス流入口20に供給されているガスの連通室24側(矢印A1方向)への流通が遮断されている。
【0035】
次に、このような弁閉状態から、図1に示す駆動源56が駆動すると、該駆動源56の回転駆動力がバルブギア54を介してシャフト45へと伝達され、前記シャフト45に連結されたバルブ14が所定角度だけ回転する。このように、バルブ14が回転することにより、前記バルブ14がバルブシート16から離間する方向に変位する。
【0036】
そして、バルブ14の着座面50が、シート部34から離間することによって、弁開状態となり該着座面50と前記シート部34との間の間隙を通じてガス流入口20に供給されたガスが連通室24内へと導入される。
【0037】
そして、駆動源56の駆動作用下にさらにバルブ14を回転させることにより、該バルブ14がバルブシート16から徐々に離間し、前記バルブ14が初期位置から、例えば、約90°回転した状態で完全な弁開状態となる。このような弁開状態において、ガス流入口20に供給されたガスが、バルブシート16の連通孔36、連通室24を通じてガス流出口22へと流通し、図示しない内燃機関へと供給される。
【0038】
次に、上述した排気ガス再循環バルブ10のガス流入口20、連通室24及びガス流出口22の内部にガス中に含まれた水分が付着した場合について説明する。
【0039】
例えば、ガス中に含まれた水分が、ガス流入口20、連通室24及びガス流出口22の内周面に付着し、その重力作用下に前記内周面に沿って底面側(矢印B方向)へと移動する。そして、水分は、ガス流入口20及び連通室24の内周面に沿って下方へと移動し、該内周面に対して窪んだ第1排出溝28の内部へと移動した後、ガス流出口22側(矢印A1方向)に向かって下り勾配となるように傾斜した前記第1及び第2排出溝28、30に沿って流通する。
【0040】
最後に、第2排出溝30の端部となるガス流出口22側(矢印A1方向)から図示しない配管を介して内燃機関側へと水分が好適に排出される。この際、水分は、第1排出溝28の深さがストッパ収容溝32の外径より深く形成されているため、該ストッパ収容溝32に装着されたストッパ38によって流通が妨げられることがない。
【0041】
以上のように、本実施の形態では、ボディ本体12において、装着孔26から連通室24及びガス流出口22の底面側に軸方向に沿って延在する第1及び第2排出溝28、30を設け、前記第1及び第2排出溝28、30を前記ガス流出口22側(矢印A1方向)に向かって延在させることにより、前記装着孔26、連通室24内に付着した水分が前記第1及び第2排出溝28、30を通じて確実にガス流出口22から外部へと排出される。その結果、装着孔26内に水分が残存し、氷結した場合に懸念されるバルブシート16の固着が防止され、例えば、低温環境下においてもバルブシート16をバルブ14の回動動作に対応させて円滑に可動させることが可能となる。
【0042】
また、第1及び第2排出溝28、30は、バルブシート16から離間する方向、すなわち、ガス流出口22側に向かって下方へと傾斜しているため、前記第1及び第2排出溝28、30内に水分が滞留してしまうことがなく、前記ガス流出口22側に向かって確実且つ好適に流すことができる。
【0043】
さらに、第1排出溝28は、ストッパ38の装着されるストッパ収容溝32の外周径より半径外方向に深く形成されているため、水分が装着孔26から連通室24へと第1排出溝28を通じて流通する際に前記ストッパ38によって堰き止められることがなく、確実に下流側へと流通させ排出することが可能となる。
【0044】
一方、図4に示されるストッパ70のように、該ストッパ70においてストッパ収容溝32に臨む外周部に半径内方向に窪んだ凹部72を設けることにより、第1排出溝28に加えて凹部72内に水分を流通させることができるため、より大流量で迅速にボディ本体12の内部から水分を排気ガス再循環バルブ10の外部へと排出することが可能となる。また、上述した凹部72を設ける代わりに、ストッパ38の切欠部42を第1排出溝28に臨むように配置することにより、該切欠部42を通じて水分を流通させることができるため、前記凹部72と同様の効果が得られる。
【0045】
なお、本発明に係るバルブ装置は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0046】
10…排気ガス再循環バルブ 12…ボディ本体
14…バルブ 16…バルブシート
18…駆動力伝達機構 20…ガス流入口
22…ガス流出口 24…連通室
26…装着孔 28…第1排出溝
30…第2排出溝 32…ストッパ収容溝
38、70…ストッパ 45…シャフト
56…駆動源 72…凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも外周面の一部が球面に形成され回動可能に設けられたバルブと、流体が流通する通路と該流路と連通し前記バルブの配設されるバルブ室とを有するボディと、前記バルブ室に対して可動自在に設けられ前記バルブが着座するシート部材と、前記シート部材を付勢する弾発部材と、前記弾発部材を保持するストッパとを備えるバルブ装置において、
前記バルブ室の底部には、前記流体の流通方向に沿って延在する排出溝が形成されることを特徴とするバルブ装置。
【請求項2】
請求項1記載のバルブ装置において、
前記バルブ室の底部は、前記シート部材から離間する方向に向かって下方へと傾斜して形成されることを特徴とするバルブ装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載のバルブ装置において、
前記排出溝は、前記シート部材の外周側まで延在することを特徴とするバルブ装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のバルブ装置において、
前記ストッパは、リング状に形成され前記バルブ室内に設けられた環状溝に装着されると共に、該環状溝の外周面に対して前記排出溝が深く形成されることを特徴とするバルブ装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のバルブ装置において、
前記ストッパには、外周面から半径内方向に窪んだ凹部を備え、前記凹部が前記排出溝に臨むように配置されることを特徴とするバルブ装置。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のバルブ装置において、
前記ストッパは、切欠部を有したCリング状に形成され、前記バルブ室内に設けられた環状溝に装着されると共に、前記切欠部が、前記排出溝に臨むように配置されることを特徴とするバルブ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−207672(P2012−207672A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71262(P2011−71262)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000141901)株式会社ケーヒン (1,140)
【Fターム(参考)】