バルーンカテーテル
【課題】バルーンの過拡張を抑制し、対象物へバルーンによって効率よく力を作用させることが可能なバルーンカテーテルを提供する。
【解決手段】ルーメン141が形成されたチューブ本体11と、前記チューブ本体11の先端部に設けられて折り畳み可能であり、ルーメン141から供給される拡張用流体によって拡張することで筒状となる筒状部131並びに当該筒状部131の先端側および基端側に筒状部131から径が縮径して形成された縮径部132,133が設けられたバルーン13と、折り畳まれた状態の前記縮径部132,133を覆うように設けられ、前記バルーン13と別体の弾性材料からなるストッパー17,18と、を有するバルーンカテーテル10であり、前記ストッパー17,18が、バルーン13の拡張に伴い弾性的に拡開し、かつバルーン13の収縮に伴い弾性的に収縮する。
【解決手段】ルーメン141が形成されたチューブ本体11と、前記チューブ本体11の先端部に設けられて折り畳み可能であり、ルーメン141から供給される拡張用流体によって拡張することで筒状となる筒状部131並びに当該筒状部131の先端側および基端側に筒状部131から径が縮径して形成された縮径部132,133が設けられたバルーン13と、折り畳まれた状態の前記縮径部132,133を覆うように設けられ、前記バルーン13と別体の弾性材料からなるストッパー17,18と、を有するバルーンカテーテル10であり、前記ストッパー17,18が、バルーン13の拡張に伴い弾性的に拡開し、かつバルーン13の収縮に伴い弾性的に収縮する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば血管等の体腔内に生じた狭窄部を治療するために用いるバルーンカテーテルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、血管、胆管、食道、気管、尿道、その他の臓器などの生体管腔または体腔の狭窄部にステントを留置して管腔または体腔空間を確保する生体器官拡張法が行われている。これに使用されるステントとしては、機能および留置方法によって、バルーンエキスパンダブルステントとセルフエキスパンダブルステントとがある。
【0003】
バルーンエキスパンダブルステントは、ステント自身に拡張機能はなく、ステントを目的部位に留置するには、バルーンカテーテルのバルーンに装着されたステントを目的部位まで挿入した後、バルーンを拡張させて、バルーンの拡張力によりステントを拡開(塑性変形)させ目的部位の内面に密着させて固定する。
【0004】
このようなバルーンエキスパンダブルステントを留置するためのバルーンカテーテルにおいて、ステントとバルーンの間の耐ずれ強度(ステント保持力)が重要である。耐ずれ強度は、バルーンの状態、ステントの種類や肉厚、バルーンに対するステントのクランプ条件等により決定される。例えば特許文献1では、ステントのバルーンに対するずれを防止するために、バルーンの前後にストッパーが設けられたバルーンカテーテルが提案されている。このバルーンカテーテルでは、バルーンカテーテルを生体内に挿入する際に、ストッパーによってバルーンに設置されたステントが前後にずれることを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−201853
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、バルーンを拡張する際には、バルーンのステントが配置される部位がステントおよび狭窄部からの反作用により力を受けるのに対し、ステントが配置される部位の前後では外力を受け難く、過拡張しやすい。ステントが配置される部位の前後でバルーンの過拡張が生じると、ステントを効率よく拡開させることが困難となる。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、バルーンの過拡張を抑制し、対象物へバルーンによって効率よく力を作用させることが可能なバルーンカテーテルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する本発明のバルーンカテーテルは、ルーメンが形成されたチューブ本体と、前記チューブ本体の先端部に設けられて折り畳み可能であり、前記ルーメンから供給される拡張用流体によって拡張することで筒状となる筒状部並びに当該筒状部の先端側および基端側の少なくとも一方に前記筒状部から径が縮径して形成された縮径部が設けられたバルーンと、折り畳まれた状態の前記縮径部を覆うように設けられ、前記バルーンと別体の弾性材料からなるストッパーと、を有し、前記ストッパーは、前記バルーンの拡張に伴い弾性的に拡開し、前記バルーンの収縮に伴い弾性的に収縮する、バルーンカテーテルである。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るバルーンカテーテルは、折り畳まれた状態の縮径部を覆うように、バルーンと別体の弾性材料からなるストッパーが設けられ、このストッパーが、バルーンの拡張に伴い弾性的に拡開し、バルーンの収縮に伴い弾性的に収縮するため、バルーンの縮径部の過拡張を抑えて、バルーンにより対象物へ効率的に力を作用させることができる。
【0010】
前記折り畳まれた状態の筒状部を覆うように、拡開する前のステントが配置され、前記バルーンが折り畳まれた状態における前記ストッパーの最大外径が、前記ステントの最大外径よりも小さいようにすれば、バルーンカテーテルを生体内に挿入する際のステントのずれをストッパーにより抑制しつつ、カテーテルの大径化を抑えて、操作性、挿通性の低下を抑えることができる。
【0011】
前記折り畳まれた状態の筒状部を覆うように、拡開する前のステントが配置され、前記バルーンが折り畳まれた状態における前記ストッパーの最大外径が、前記ステントの最小内径よりも大きいようにすれば、ステントのバルーンからの脱落を抑えることができる。
【0012】
前記ストッパーが、螺旋状コイル、C字状リング、網状の筒体、または弾性体からなる筒体を有するようにすれば、バルーンの拡張に追従してストッパーを拡開させることができる。
【0013】
前記ストッパーが、前記チューブ本体に固定されるようにすれば、ストッパーを安定して固定できる。
【0014】
前記ストッパーが、前記バルーンの基端側の縮径部に設けられるようにすれば、バルーンカテーテルを生体内に挿入する際のステントのずれをストッパーにより効果的に抑制し、ステントのバルーンからの脱落をより確実に抑えることができる。また、ステントを拡張せずに生体内から回収する際、ステントが変形していると、回収時にガイディングカテーテルの先端に引っ掛かってしまう虞があるが、ストッパーによって防ぐことができる。また、バルーンの拡張は、基端側から始まるので、基端側の縮径部の拡張を抑えることで、バルーン内の圧力を先端側に逃がし、より均一な拡張を見込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態に係るバルーンカテーテルの側面図である。
【図2】図1に示すバルーンカテーテルの先端部の縦断面図である。
【図3】図2の3−3線に沿う横断面図である。
【図4】バルーンカテーテルの外管と内管の結合部を示す縦断面図である。
【図5】バルーンカテーテルの基端部の縦断面図である。
【図6】バルーンカテーテルのバルーンを膨張させた際を示す縦断面図である。
【図7】バルーンカテーテルのバルーンを収縮させた際を示す縦断面図である。
【図8】比較例に係るバルーンカテーテルのバルーンを膨張させた際を示す側面図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係るバルーンカテーテルを示す縦断面図である。
【図10】本発明の第3実施形態に係るバルーンカテーテルのストッパーを示す斜視図である。
【図11】本発明の第4実施形態に係るバルーンカテーテルのストッパーを示す斜視図である。
【図12】本発明の第5実施形態に係るバルーンカテーテルのストッパーを示す斜視図である。
【図13】本発明の第6実施形態に係るバルーンカテーテルのストッパーを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上、誇張されて実際の比率とは異なる場合がある。
【0017】
<第1実施形態>
本発明の第1の実施形態に係るバルーンカテーテル10は、図1に示すように、ガイドワイヤー9が先端側においてのみ挿通するラピッドエクスチェンジ(Rapid Exchange)構造であり、チューブ本体11と、チューブ本体11の先端部に設けられるバルーン13と、チューブ本体11の基端に固着されたハブ15とを有している。なお、先端とは、使用の際に血管内に挿入される側に位置する端部を示し、基端とは、使用の際にバルーンカテーテル10を操作する術者側に位置する端部を示す。
【0018】
チューブ本体11は、先端および後端が開口した管状体である外管12と、外管12の内部に配置される内管で構成される。外管12は、バルーン13を拡張するための拡張用流体が流通する拡張用ルーメン121が内部に形成されており、内管14には、ガイドワイヤー9が挿通されるガイドワイヤールーメン141が形成されている。拡張用流体は、気体でも液体でもよく、例えば、ヘリウムガス、CO2ガス、O2ガス等の気体や、生理的食塩水、造影剤等液体が挙げられる。
【0019】
内管14は、先端部が、図2に示すように、バルーン13の内部を貫通してバルーン13よりも先端側で開口しており、基端側が、図4に示すように、外管12の側壁を貫通して、外管12に接着剤または熱融着により液密に固着されている。
【0020】
ハブ15は、図5に示すように、外管12の拡張用ルーメン121と連通して拡張用流体を流入出させるポートとして機能する基端開口部151を備えており、外管12の基端部が接着剤、熱融着または止具(図示せず)による固定等により液密に固着されている。
【0021】
外管12、内管14の構成材料としては、ある程度の可撓性を有する材料により形成されるのが好ましく、そのような材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、あるいはこれら二種以上の混合物等のポリオレフィンや、軟質ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、ポリウレタン、フッ素樹脂等の熱可塑性樹脂、シリコーンゴム、ラテックスゴム等が使用できる。
【0022】
ハブ15の構成材料としては、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリサルホン、ポリアリレート、メタクリレート−ブチレン−スチレン共重合体等の熱可塑性樹脂が好適に使用できる。
【0023】
バルーン13は、ステントを保持して拡開させるものであり、拡開を容易に行えるように、図1および図2に示すように、略中央部に略円筒状で形成されてほぼ同一径の筒状部131を有している。なお、この筒状部131は、必ずしも円筒状でなくてもよい。バルーン13の筒状部131の先端側には、先端側へ向かって径がテーパ状に縮小して形成される第1の縮径部132が設けられ、基端側には、基端側へ向かって径がテーパ状に縮小して形成される第2の縮径部133が設けられている。
【0024】
第1の縮径部132の先端側は、内管14の外壁面に接着剤または熱融着等により液密に固着されており、第2の縮径部133の基端側は、外管12の先端部の内壁面に接着剤または熱融着等により液密に固着されている。したがって、バルーン13の内部は、外管12に形成される拡張用ルーメン121と連通し、この拡張用ルーメン121を介して、基端側から拡張用流体を流入可能となっている。バルーン13は、拡張させないで折り畳まれた状態では、図3に示すように、内管14の外周に折り畳まれた状態となることができるものであるが、拡張用流体の流入により拡張し、また、流入した拡張用流体を排出することにより折り畳まれた状態となる。
【0025】
バルーン13の材料としては、ある程度の可撓性を有する材料により形成されるのが好ましく、そのような材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、あるいはこれら二種以上の混合物等のポリオレフィンや、軟質ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、ポリウレタン、フッ素樹脂等の熱可塑性樹脂、シリコーンゴム、ラテックスゴム等が使用できる。
【0026】
折り畳まれたバルーン13の筒状部131の外側には、図1,2に示すように、拡開する前のステント16が配置される。ステント16は、バルーンエキスパンダブルステントであり、ステント16自身に拡張機能はなく、バルーン13の拡張力により拡開(塑性変形)させて、目的部位の内面に密着させて固定するものである。ステント16は、例えば金属材料からなる網状の筒体であるが、その形態や材料は特に限定されず、周知のステントを使用できる。
【0027】
折り畳まれたバルーン13の第1の縮径部132の外側には、当該第1の縮径部132を覆うようにして接する第1のストッパー17が設けられ、折り畳まれたバルーン13の第2の縮径部133の外側には、当該第2の縮径部133を覆うようにして接する第2のストッパー18が設けられている。
【0028】
第1のストッパー17は、弾性部材からなる線状の部材が螺旋状に巻回された螺旋状コイルであり、薄く平坦に形成された先端側の平坦部171が、内管14の外側に接着剤または熱融着等により固着される第1固定層142と内管14の間に挟まれて固定されている。第1のストッパー17の固定部を先端側とすることで、内管14へ安定して固定することができる。なお、第1のストッパー17が樹脂等であれば、第1固定層142を設けずに第1のストッパー17を内管14に対して接着剤または熱融着等により直接的に固着させることができる。
【0029】
第1のストッパー17は、平坦部171から基端側へ向かって径が大きくなるように螺旋状に形成されている。第1のストッパー17の最も径が大きくなる第1のストッパー基端部172は、第1の縮径部132の基端部近傍に位置している。第1のストッパー基端部172の最大外径D1は、筒状部131に配置された拡開する前のステント16の最大外径Dmaxよりも小さく、かつ拡開する前のステント16の最小内径Dminよりも大きいことが好ましい。第1のストッパー基端部172の最大外径D1が、筒状部131に配置された拡開する前のステント16の最大外径Dmaxよりも小さければ、カテーテルの大径化を抑えて、操作性、挿通性の低下を抑えることができる。また、第1のストッパー基端部172の最大外径D1が、筒状部131に配置された拡開する前のステント16の最小内径Dminよりも大きければ、ステント16のバルーン先端側からの脱落を抑えることができる。なお、第1のストッパー基端部172の最大外径D1は、かならずしも拡開する前のステント16の最大外径Dmaxよりも小さくなくてもよく、または拡開する前のステント16の最小内径Dminよりも大きくなくてもよい。
【0030】
また、第2のストッパー18も同様に、弾性部材からなる線状の部材が螺旋状に巻回された螺旋状コイルであり、薄く平坦に形成された基端側の平坦部181が、外管12の外側に接着剤または熱融着等により固着される第2固定層122と外管12の間に挟まれて固定されている。第2のストッパー18の固定部を基端側とすることで、外管12へ安定して固定することができる。なお、第2のストッパー18が樹脂等であれば、第2固定層122を設けずに第2のストッパー18を外管12に対して接着剤または熱融着等により直接的に固着させることができる。
【0031】
第2のストッパー18は、平坦部181から先端側へ向かって径が大きくなるように螺旋状に形成されている。第2のストッパー18の最も径が大きくなる第2のストッパー先端部182は、第2の縮径部133の筒状部131近傍に位置している。第2のストッパー先端部182の最大外径D2は、筒状部131に配置された拡開する前のステント16の最大外径Dmaxよりも小さく、かつ拡開する前のステント16の最小内径Dminよりも大きいことが好ましい。第2のストッパー先端部182の最大外径D2が、筒状部131に配置された拡開する前のステント16の最大外径Dmaxよりも小さければ、カテーテルの大径化を抑えて、操作性、挿通性の低下を抑えることができる。また、第2のストッパー先端部182の最大外径D2が、筒状部131に配置された拡開する前のステント16の最小内径Dminよりも大きければ、ステント16のバルーン基端側からの脱落を抑えることができる。なお、第2のストッパー先端部182の最大外径D2は、かならずしも拡開する前のステント16の外径Dmaxよりも小さくなくてもよく、または拡開する前のステント16の最小内径Dminよりも大きくなくてもよい。
【0032】
第1のストッパー17および第2のストッパー18は、上述の通り弾性部材であり、特に、弾性変形能の優れた超弾性部材であることが望ましい。
【0033】
弾性部材としては、本発明に用いられうるバルーン13の伸縮に追随することができるもの(つまり、本発明の所期の効果を奏するもの)であれば特に制限はなく、例えば、チタン合金やNi基合金などの超弾性合金を用いることができる。
【0034】
チタン合金は、チタン(Ti)を主成分として含み、他に、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、酸素(O)、窒素(N)の少なくとも1種が含まれると好ましい。また、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)の少なくとも1種をさらに含んでいてもよい。かようなチタン合金としては、特開2002−285268号や特開2007−113120号に例示されているものなどが好適であり、また、市販品を購入するのであれば、ゴムメタル(商標登録)などが好適である。
【0035】
また、Ni基合金は、ニッケル(Ni)を主成分として含み、また、チタン(Ti)を含み、かつ、クロム(Cr)、鉄(Fe)、バナジウム(V)、コバルト(Co)、銅(Cu)からなる群よりなる1種又は2種以上の元素を含むと好ましい。より具体的には、Ni−Ti−Cu−Cr、Ni−Ti−Fe、Ni−Ti−Crなどが好ましい。かようなNi基合金としては、特開2005−131358に例示されているものなどが好適であり、また、市販品を購入して適用することができる。
【0036】
また、第1のストッパー17および第2のストッパー18は、X線不透過性を備えることが好ましく、例えば、表面にX線不透過材料が鍍金等により設けられる。X線不透過材料としては、白金、金、タングステン、イリジウムまたはそれらの合金であることが好ましく、さらに、白金、金、白金−イリジウム合金であることがより好ましい。このように第1のストッパー17および第2のストッパー18にX線不透過性を付与することにより、X線透視下で鮮明な造影像を得ることができるので、第1のストッパー17および第2のストッパー18およびバルーン13の位置をX線透視下で容易に確認することができる。
【0037】
また、第1のストッパー17、第2のストッパー18およびチューブ本体11の外面には、体腔内への挿入を良好に行えるように、例えば、セルロース系高分子物質(ヒドロキシプロピルセルロース等)、ポリエチレンオキサイド系高分子物質(ポリエチレングリコール)、無水マレイン酸系高分子物質(例えば、メチルビニルエーテル無水マレイン酸共重合体のような無水マレイン酸共重合体)、アクリルアミド系高分子物質(例えば、メチルアクリルアミド−グリシジルメタクリレート共重合体)、水溶性ナイロン(例えば、東レ社製のAQ−ナイロン P−70)等の親水性(または水溶性)高分子物質を被覆してもよい。これにより、血液または生理食塩水等に接触したときに、摩擦係数が減少して潤滑性が付与され、バルーンカテーテル10の摺動性が一段と向上する。
【0038】
次に、本実施形態に係るバルーンカテーテル10の作用を説明する。
【0039】
まず、例えば血管の狭窄部を治療する前に、バルーン13および拡張用ルーメン121内の空気をできる限り抜き取り、バルーン13および拡張用ルーメン121内を拡張用流体に置換しておく。このとき、バルーン13は、折り畳まれた状態となっている(図1〜3参照)。
【0040】
次に、患者の血管に、例えばセルジンガー法によりシースを留置し、ガイドワイヤールーメン141内にガイドワイヤー9を挿通された状態で、ガイドワイヤー9およびバルーンカテーテル10をシースの内腔より血管内へ挿入する。続いて、X線透視下で、マーカーである第1のストッパー17および第2のストッパー18の位置を視認しつつ、バルーンカテーテル10およびガイドワイヤー9の先端の位置を確認しながら、ガイドワイヤー9を先行させてバルーンカテーテル10を進行させ、ステント16が設置されたバルーン13を狭窄部へ到達させる。このように、第1のストッパー17および第2のストッパー18がマーカーとしての機能を備えていることから、別途マーカーを設ける必要がないため、バルーンカテーテル10の断面を細径化することができる。更に、別途マーカーを設ける必要がないことから、硬い狭窄部に対して、マーカーが擦れることがないので、マーカーによるバルーンの傷の発生を防ぐ効果も期待できる。
【0041】
バルーンカテーテル10を生体内に挿通する際には、第1のストッパー17および第2のストッパー18が存在することで、第1のストッパー17および第2のストッパー18が生体に接しやすく、これによりステント16が生体と接し難くなる。これにより、ステント16は生体から外力を受け難くなり、ステント16のバルーン13からのずれや変形を抑制することができる。更に、ステント16が生体に接し難くなるため、ステント16による生体の損傷も抑えることもできる。
【0042】
次に、バルーン13が狭窄部に位置した状態で、ハブ15の基端開口部151より、インデフレーター、シリンジ、ポンプ等を用いて拡張用流体を所定量注入し、拡張用ルーメン121を通じてバルーン13の内部に拡張用流体を送り込み、図6に示すように、折り畳まれたバルーン13を拡張させる。これにより、バルーン13の筒状部131がステント16を押し広げ、ステント16は塑性変形し、狭窄部を押し広げた状態で設置される。このとき、第1のストッパー17および第2のストッパー18は、バルーン13の拡張に追従して弾性的に拡開する。すなわち、先端側が内管14に固定されている第1のストッパー17は、螺旋の径が拡がるようにして第1のストッパー基端部172の径が拡開され、基端側が外管12に固定されている第2のストッパー18は、螺旋の径が拡がるようにして第2のストッパー先端部182の径が拡開される。このとき、第1のストッパー17および第2のストッパー18は、バルーン13の第1の縮径部132および第2の縮径部133を覆いつつ、弾性力により戻ろうとする力によって内側へ適度に加圧しているため、第1の縮径部132および第2の縮径部133の過拡張を抑制できる。
【0043】
すなわち、図8に示す比較例のように第1のストッパーおよび第2のストッパーが存在しない場合、バルーン83の筒状部831はステント16および狭窄部から力を受けるのに対し、第1の縮径部832および第2の縮径部833は外側から力を受けないため、筒状部831よりも拡張しやすくなり、バルーン83の両端が過拡張して効率的にステント16を拡開させることができない。また、第1の縮径部832および第2の縮径部833が過拡張すると、ステント16は軸方向(バルーンカテーテルの延在方向)の両側から挟まれるような力を受け、軸方向に縮んで短くなる。
【0044】
これに対し、本実施形態に係るバルーンカテーテル10では、図6に示すように、第1のストッパー17および第2のストッパー18により第1の縮径部132および第2の縮径部133の過拡張を抑えることができ、効率的にステント16を拡開させ、かつステント16の軸方向の長さを適切に保つことができる。更に、第1のストッパー17および第2のストッパー18がバルーン13と別体で構成されているため、折り畳まなければならないバルーン13を薄く形成しながらも、第1の縮径部132および第2の縮径部133の過拡張を抑えることができる。
【0045】
また、バルーン13の基端側の第2の縮径部133に第2のストッパー18が設けられるため、ステント16を拡張せずに生体内から回収する場合に、ステント16が変形していても、回収時にガイディングカテーテルの先端にステント16が引っ掛かることを防ぐことができる。また、バルーン13の拡張は、基端側から始まるので、基端側の第2の縮径部133の拡張を抑えることで、バルーン13内の圧力を先端側に逃がし、より均一な拡張を見込むことができる。したがって、第1のストッパー17を設けずに、第2のストッパー18のみを設けてもよい。
【0046】
この後、拡張用流体を基端開口部151(図5参照)より吸引して排出し、図7に示すように、バルーン13を収縮させて折り畳まれた状態とする。なお、ステント16は、拡開した状態のまま狭窄部に留置される。
【0047】
バルーン13を収縮させると、第1のストッパー17および第2のストッパー18は、バルーン13の収縮に伴って弾性的により収縮し、元の形状へ戻る。したがって、第1のストッパー17および第2のストッパー18を構成する弾性材料、線材の径、巻数等は、バルーン13の拡張に伴って弾性的に拡開した後、バルーン13の収縮に伴って元の状態へ収縮できるように、バルーン13の寸法等に応じて適宜選択されることが好ましい。なお、第1のストッパー17および第2のストッパー18は、拡開した後にバルーン13の収縮に応じて収縮した際に、かならずしも完全に元の形状に戻らなくてもよく、生体から抜去する際に問題が生じない寸法まで収縮できればよい。
【0048】
この後、シースを介して血管よりチューブ本体11を抜去し、手技が終了する。
【0049】
<第2実施形態>
本発明の第2の実施形態に係るバルーンカテーテル20は、第1のストッパーおよび第2のストッパーの固定方法が、第1の実施形態に係るバルーンカテーテル10と異なる。なお、第1のストッパーおよび第2のストッパーの固定方法以外の構成は、第1実施形態に係るバルーンカテーテル10と同様であるため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0050】
第2実施形態に係るバルーンカテーテル20の第1のストッパー27は、第1実施形態の第1のストッパー17と同様に、弾性部材からなる線状の部材が螺旋状に巻回された螺旋状コイルであるが、基端側でバルーン13に固定される点で、先端側で内管14に固定される第1実施形態の第1のストッパー17と異なる。第1のストッパー27は、薄く平坦に形成された基端側の平坦部271が、第1の縮径部132の外側に接着剤または熱融着等により固着される第1固定層234と第1の縮径部132の間に挟まれて固定されている。
【0051】
また、第2実施形態に係るバルーンカテーテル20の第2のストッパー28も、第1実施形態の第2のストッパー18と同様に、弾性部材からなる線状の部材が螺旋状に巻回された螺旋状コイルであるが、先端側でバルーン13に固定される点で、基端側で外筒に固定される第2実施形態の第2のストッパー18と異なる。第2のストッパー28は、薄く平坦に形成された先端側の平坦部281が、第2の縮径部133の外側に接着剤または熱融着等により固着される第2固定層235と第2の縮径部133の間に挟まれて固定されている。
【0052】
第2実施形態に係るバルーンカテーテル20によれば、第1のストッパー27および第2のストッパー27が、筒状部131に隣接する側でバルーン13に固定されているため、折り畳まれたバルーン13が拡張する際に、第1のストッパー27の基端部が先端側へ逃げず、かつ第2のストッパー28の先端部が基端側へ逃げることがない。このため、バルーン13を拡張する際に、第1のストッパー27および第2のストッパー28が、第1の縮径部132および第2の縮径部133の広い範囲を覆うことができ、第1の縮径部132および第2の縮径部133の過拡張をより確実に抑制することができ、効率的にステント16を拡開させ、かつステント16の軸方向の長さを適切に保つことができる。
【0053】
<第3実施形態>
本発明の第3の実施形態に係るバルーンカテーテル30は、第1のストッパーおよび第2のストッパーの形態が、第1の実施形態に係るバルーンカテーテル10と異なる。なお、第1のストッパーおよび第2のストッパー以外の構成は、第1実施形態に係るバルーンカテーテル10と同様であるため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0054】
第3実施形態に係るバルーンカテーテル30の第1のストッパー37は、図10に示すように、螺旋状コイルではなく、切れ目部374を有する弾性部材からなるC字状リング371a、371b、371c(以下、371a、371b、371cを総じて371と称する。)が、軸方向(カテーテルの延在方向)へ延びる連結部材372によって複数連結されて構成されている。C字状リング371の径は、基端側のC字状リング371aが最も大きく、先端側のC字状リング371cが最も小さい。なお、最も先端側のリングは、脱落防止のために、C字状リングではなくO字状リング373で形成されている。O字状リング373は、内管14の外側に、内管14に対して接着剤または熱融着等により固着される他の層によって覆われて固定されている。なお、第2のストッパー(不図示)の形態は、第1のストッパー37の先端側と基端側が逆となる以外は同様であるため、説明を省略する。
【0055】
第3実施形態に係るバルーンカテーテル30によっても、バルーンカテーテル30を挿通する際のステント16のずれや変形を抑制しつつ、更にバルーン13を拡張する際の第1の縮径部132および第2の縮径部133における過拡張を抑制できるため、効率的にステント16を拡開させ、かつステント16の軸方向の長さを適切に保つことができる。また、C字状リング371同士が軸方向へ直線的に延びる連結部材372によって連結されているため、折り畳まれたバルーン13が拡張する際に、第1のストッパー37が先端側へ逃げず、かつ第2のストッパーが基端側へ逃げない。このため、第1の縮径部132および第2の縮径部133における過拡張をより確実に抑制することができる。
【0056】
なお、図10に示す第3実施形態に係るバルーンカテーテル30は、複数のC字状リング371の切れ目部374が周方向に一致しているが、切れ目部374の周方向位置を異ならせることで、ストッパーの脱落をより確実に抑制することもできる。
【0057】
<第4実施形態>
本発明の第4の実施形態に係るバルーンカテーテル40は、第1のストッパーおよび第2のストッパーの形態が、第1の実施形態に係るバルーンカテーテル10と異なる。なお、第1のストッパーおよび第2のストッパー以外の構成は、第1実施形態に係るバルーンカテーテル10と同様であるため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0058】
第4実施形態に係るバルーンカテーテル40の第1のストッパー47は、図11に示すように、螺旋状コイルと同様に一本の弾性部材からなる線材により形成されており、複数のC字状リング471a、471b、471c、471dが、各々の切れ目部474を周方向に異ならせて並ぶように巻回して構成されている。なお、第2のストッパー(不図示)の形態は、第1のストッパー47の先端側と基端側が逆となる以外は同様であるため、説明を省略する。
【0059】
第4実施形態に係るバルーンカテーテル40によっても、バルーンカテーテル40を挿通する際のステント16のずれや変形を抑制しつつ、更にバルーン13を拡張する際の第1の縮径部132および第2の縮径部133における過拡張を抑制することで、効率的にステント16を拡開させ、かつステント16の軸方向の長さを適切に保つことができる。また、複数のC字状リング471a、471b、471c、471dの切れ目部474が周方向に異なって形成されるため、ストッパーの脱落を抑制することができる。
【0060】
<第5実施形態>
本発明の第5の実施形態に係るバルーンカテーテル50は、第1のストッパーおよび第2のストッパーの形態が、第1の実施形態に係るバルーンカテーテル10と異なる。なお、第1のストッパーおよび第2のストッパー以外の構成は、第1実施形態に係るバルーンカテーテル10と同様であるため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0061】
第5実施形態に係るバルーンカテーテル50の第1のストッパー57は、図12に示すように、螺旋状コイルではなく、軸方向に長い1つのC字状リング571で形成されている。C字状リング571は、基端側から先端側へ向かってテーパ状に縮径して形成される。C字状リング571の先端部は、内管14に固定されている。なお、第2のストッパー(不図示)の形態は、第1のストッパー57の先端側と基端側が逆となる以外は同様であるため、説明を省略する。
【0062】
第5実施形態に係るバルーンカテーテル50によっても、バルーンカテーテル50を挿通する際のステント16のずれや変形を抑制しつつ、更にバルーン13を拡張する際の第1の縮径部132および第2の縮径部133における過拡張を抑制することで、効率的にステント16を拡開させ、かつステント16の軸方向の長さを適切に保つことができる。また、第1のストッパー57および第2のストッパーが1つのC字状リング571で形成されているため、折り畳まれたバルーン13が拡張する際に、第1のストッパー57が先端側へ逃げず、かつ第2のストッパー(不図示)が基端側へ逃げない。このため、第1の縮径部132および第2の縮径部133における過拡張をより確実に抑制することができる。
【0063】
<第6実施形態>
本発明の第6の実施形態に係るバルーンカテーテル60は、第1のストッパーおよび第2のストッパーの形態が、第1の実施形態に係るバルーンカテーテル10と異なる。なお、第1のストッパーおよび第2のストッパー以外の構成は、第1実施形態に係るバルーンカテーテル10と同様であるため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0064】
第6実施形態に係るバルーンカテーテル60の第1のストッパー67は、図13に示すように、螺旋状コイルではなく、弾性部材からなる網状の筒体で形成されている。第1のストッパー67は、基端側から先端側へ向かってテーパ状に縮径して形成される。第1のストッパー67の先端部は、内管14に固定されている。なお、第2のストッパー(不図示)の形態は、第1のストッパー67の先端側と基端側が逆となる以外は同様であるため、説明を省略する。
【0065】
第6実施形態に係るバルーンカテーテル60によっても、バルーンカテーテル60を挿通する際のステント16のずれや変形を抑制しつつ、更にバルーン13を拡張する際の第1の縮径部132および第2の縮径部133における過拡張を抑制することで、効率的にステント16を拡開させ、かつステント16の軸方向の長さを適切に保つことができる。また、第1のストッパー67および第2のストッパーが網状の筒体で形成されているため、折り畳まれたバルーン13が拡張する際に、第1のストッパー67が先端側へ逃げ難く、かつ第2のストッパーが基端側へ逃げ難い。このため、第1の縮径部132および第2の縮径部133における過拡張をより確実に抑制することができる。
【0066】
なお、第1のストッパー67および第2のストッパー(不図示)の弾性材料をエラストマー等の弾性体とすれば、網状とすることなしに、筒状に形成することもできる。
【0067】
本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内で種々改変することができる。例えば、バルーンカテーテルがラピッドエクスチェンジ構造ではなく、ガイドワイヤーが手元から先端まで挿通するOTW(over the wire)構造であってもよい。また、バルーンカテーテルにステントが設けられなくてもよい。
【0068】
また、第1のストッパーおよび第2のストッパーは、いずれか一方のみが設けられてもよい。
【0069】
また、バルーンの第1の縮径部および第2の縮径部は、拡張した際に縮径している部位を意味するものであり、折り畳んだ際に縮径した形状となっていなくてもよい。すなわち、拡開する前の第1のストッパーおよび第2のストッパーも、折り畳んだ状態の第1の縮径部および第2の縮径部の形状に対応して構成されればよく、縮径する形状でなくてもよい。
【符号の説明】
【0070】
10,20,30,40,50,60 バルーンカテーテル、
11 チューブ本体、
13 バルーン、
16 ステント、
17,27,37,47,57,67 第1のストッパー、
28 第2のストッパー、
121 拡張用ルーメン、
131 筒状部、
132 第1の縮径部、
133 第2の縮径部、
172 ストッパー基端部、
182 ストッパー先端部、
371、471、571 C字状リング、
D1 第1のストッパーの最大外径、
D2 第2のストッパーの最大外径、
Dmax ステントの最大外径、
Dmin ステントの最小内径。
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば血管等の体腔内に生じた狭窄部を治療するために用いるバルーンカテーテルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、血管、胆管、食道、気管、尿道、その他の臓器などの生体管腔または体腔の狭窄部にステントを留置して管腔または体腔空間を確保する生体器官拡張法が行われている。これに使用されるステントとしては、機能および留置方法によって、バルーンエキスパンダブルステントとセルフエキスパンダブルステントとがある。
【0003】
バルーンエキスパンダブルステントは、ステント自身に拡張機能はなく、ステントを目的部位に留置するには、バルーンカテーテルのバルーンに装着されたステントを目的部位まで挿入した後、バルーンを拡張させて、バルーンの拡張力によりステントを拡開(塑性変形)させ目的部位の内面に密着させて固定する。
【0004】
このようなバルーンエキスパンダブルステントを留置するためのバルーンカテーテルにおいて、ステントとバルーンの間の耐ずれ強度(ステント保持力)が重要である。耐ずれ強度は、バルーンの状態、ステントの種類や肉厚、バルーンに対するステントのクランプ条件等により決定される。例えば特許文献1では、ステントのバルーンに対するずれを防止するために、バルーンの前後にストッパーが設けられたバルーンカテーテルが提案されている。このバルーンカテーテルでは、バルーンカテーテルを生体内に挿入する際に、ストッパーによってバルーンに設置されたステントが前後にずれることを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−201853
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、バルーンを拡張する際には、バルーンのステントが配置される部位がステントおよび狭窄部からの反作用により力を受けるのに対し、ステントが配置される部位の前後では外力を受け難く、過拡張しやすい。ステントが配置される部位の前後でバルーンの過拡張が生じると、ステントを効率よく拡開させることが困難となる。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、バルーンの過拡張を抑制し、対象物へバルーンによって効率よく力を作用させることが可能なバルーンカテーテルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する本発明のバルーンカテーテルは、ルーメンが形成されたチューブ本体と、前記チューブ本体の先端部に設けられて折り畳み可能であり、前記ルーメンから供給される拡張用流体によって拡張することで筒状となる筒状部並びに当該筒状部の先端側および基端側の少なくとも一方に前記筒状部から径が縮径して形成された縮径部が設けられたバルーンと、折り畳まれた状態の前記縮径部を覆うように設けられ、前記バルーンと別体の弾性材料からなるストッパーと、を有し、前記ストッパーは、前記バルーンの拡張に伴い弾性的に拡開し、前記バルーンの収縮に伴い弾性的に収縮する、バルーンカテーテルである。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るバルーンカテーテルは、折り畳まれた状態の縮径部を覆うように、バルーンと別体の弾性材料からなるストッパーが設けられ、このストッパーが、バルーンの拡張に伴い弾性的に拡開し、バルーンの収縮に伴い弾性的に収縮するため、バルーンの縮径部の過拡張を抑えて、バルーンにより対象物へ効率的に力を作用させることができる。
【0010】
前記折り畳まれた状態の筒状部を覆うように、拡開する前のステントが配置され、前記バルーンが折り畳まれた状態における前記ストッパーの最大外径が、前記ステントの最大外径よりも小さいようにすれば、バルーンカテーテルを生体内に挿入する際のステントのずれをストッパーにより抑制しつつ、カテーテルの大径化を抑えて、操作性、挿通性の低下を抑えることができる。
【0011】
前記折り畳まれた状態の筒状部を覆うように、拡開する前のステントが配置され、前記バルーンが折り畳まれた状態における前記ストッパーの最大外径が、前記ステントの最小内径よりも大きいようにすれば、ステントのバルーンからの脱落を抑えることができる。
【0012】
前記ストッパーが、螺旋状コイル、C字状リング、網状の筒体、または弾性体からなる筒体を有するようにすれば、バルーンの拡張に追従してストッパーを拡開させることができる。
【0013】
前記ストッパーが、前記チューブ本体に固定されるようにすれば、ストッパーを安定して固定できる。
【0014】
前記ストッパーが、前記バルーンの基端側の縮径部に設けられるようにすれば、バルーンカテーテルを生体内に挿入する際のステントのずれをストッパーにより効果的に抑制し、ステントのバルーンからの脱落をより確実に抑えることができる。また、ステントを拡張せずに生体内から回収する際、ステントが変形していると、回収時にガイディングカテーテルの先端に引っ掛かってしまう虞があるが、ストッパーによって防ぐことができる。また、バルーンの拡張は、基端側から始まるので、基端側の縮径部の拡張を抑えることで、バルーン内の圧力を先端側に逃がし、より均一な拡張を見込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態に係るバルーンカテーテルの側面図である。
【図2】図1に示すバルーンカテーテルの先端部の縦断面図である。
【図3】図2の3−3線に沿う横断面図である。
【図4】バルーンカテーテルの外管と内管の結合部を示す縦断面図である。
【図5】バルーンカテーテルの基端部の縦断面図である。
【図6】バルーンカテーテルのバルーンを膨張させた際を示す縦断面図である。
【図7】バルーンカテーテルのバルーンを収縮させた際を示す縦断面図である。
【図8】比較例に係るバルーンカテーテルのバルーンを膨張させた際を示す側面図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係るバルーンカテーテルを示す縦断面図である。
【図10】本発明の第3実施形態に係るバルーンカテーテルのストッパーを示す斜視図である。
【図11】本発明の第4実施形態に係るバルーンカテーテルのストッパーを示す斜視図である。
【図12】本発明の第5実施形態に係るバルーンカテーテルのストッパーを示す斜視図である。
【図13】本発明の第6実施形態に係るバルーンカテーテルのストッパーを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上、誇張されて実際の比率とは異なる場合がある。
【0017】
<第1実施形態>
本発明の第1の実施形態に係るバルーンカテーテル10は、図1に示すように、ガイドワイヤー9が先端側においてのみ挿通するラピッドエクスチェンジ(Rapid Exchange)構造であり、チューブ本体11と、チューブ本体11の先端部に設けられるバルーン13と、チューブ本体11の基端に固着されたハブ15とを有している。なお、先端とは、使用の際に血管内に挿入される側に位置する端部を示し、基端とは、使用の際にバルーンカテーテル10を操作する術者側に位置する端部を示す。
【0018】
チューブ本体11は、先端および後端が開口した管状体である外管12と、外管12の内部に配置される内管で構成される。外管12は、バルーン13を拡張するための拡張用流体が流通する拡張用ルーメン121が内部に形成されており、内管14には、ガイドワイヤー9が挿通されるガイドワイヤールーメン141が形成されている。拡張用流体は、気体でも液体でもよく、例えば、ヘリウムガス、CO2ガス、O2ガス等の気体や、生理的食塩水、造影剤等液体が挙げられる。
【0019】
内管14は、先端部が、図2に示すように、バルーン13の内部を貫通してバルーン13よりも先端側で開口しており、基端側が、図4に示すように、外管12の側壁を貫通して、外管12に接着剤または熱融着により液密に固着されている。
【0020】
ハブ15は、図5に示すように、外管12の拡張用ルーメン121と連通して拡張用流体を流入出させるポートとして機能する基端開口部151を備えており、外管12の基端部が接着剤、熱融着または止具(図示せず)による固定等により液密に固着されている。
【0021】
外管12、内管14の構成材料としては、ある程度の可撓性を有する材料により形成されるのが好ましく、そのような材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、あるいはこれら二種以上の混合物等のポリオレフィンや、軟質ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、ポリウレタン、フッ素樹脂等の熱可塑性樹脂、シリコーンゴム、ラテックスゴム等が使用できる。
【0022】
ハブ15の構成材料としては、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリサルホン、ポリアリレート、メタクリレート−ブチレン−スチレン共重合体等の熱可塑性樹脂が好適に使用できる。
【0023】
バルーン13は、ステントを保持して拡開させるものであり、拡開を容易に行えるように、図1および図2に示すように、略中央部に略円筒状で形成されてほぼ同一径の筒状部131を有している。なお、この筒状部131は、必ずしも円筒状でなくてもよい。バルーン13の筒状部131の先端側には、先端側へ向かって径がテーパ状に縮小して形成される第1の縮径部132が設けられ、基端側には、基端側へ向かって径がテーパ状に縮小して形成される第2の縮径部133が設けられている。
【0024】
第1の縮径部132の先端側は、内管14の外壁面に接着剤または熱融着等により液密に固着されており、第2の縮径部133の基端側は、外管12の先端部の内壁面に接着剤または熱融着等により液密に固着されている。したがって、バルーン13の内部は、外管12に形成される拡張用ルーメン121と連通し、この拡張用ルーメン121を介して、基端側から拡張用流体を流入可能となっている。バルーン13は、拡張させないで折り畳まれた状態では、図3に示すように、内管14の外周に折り畳まれた状態となることができるものであるが、拡張用流体の流入により拡張し、また、流入した拡張用流体を排出することにより折り畳まれた状態となる。
【0025】
バルーン13の材料としては、ある程度の可撓性を有する材料により形成されるのが好ましく、そのような材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、あるいはこれら二種以上の混合物等のポリオレフィンや、軟質ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、ポリウレタン、フッ素樹脂等の熱可塑性樹脂、シリコーンゴム、ラテックスゴム等が使用できる。
【0026】
折り畳まれたバルーン13の筒状部131の外側には、図1,2に示すように、拡開する前のステント16が配置される。ステント16は、バルーンエキスパンダブルステントであり、ステント16自身に拡張機能はなく、バルーン13の拡張力により拡開(塑性変形)させて、目的部位の内面に密着させて固定するものである。ステント16は、例えば金属材料からなる網状の筒体であるが、その形態や材料は特に限定されず、周知のステントを使用できる。
【0027】
折り畳まれたバルーン13の第1の縮径部132の外側には、当該第1の縮径部132を覆うようにして接する第1のストッパー17が設けられ、折り畳まれたバルーン13の第2の縮径部133の外側には、当該第2の縮径部133を覆うようにして接する第2のストッパー18が設けられている。
【0028】
第1のストッパー17は、弾性部材からなる線状の部材が螺旋状に巻回された螺旋状コイルであり、薄く平坦に形成された先端側の平坦部171が、内管14の外側に接着剤または熱融着等により固着される第1固定層142と内管14の間に挟まれて固定されている。第1のストッパー17の固定部を先端側とすることで、内管14へ安定して固定することができる。なお、第1のストッパー17が樹脂等であれば、第1固定層142を設けずに第1のストッパー17を内管14に対して接着剤または熱融着等により直接的に固着させることができる。
【0029】
第1のストッパー17は、平坦部171から基端側へ向かって径が大きくなるように螺旋状に形成されている。第1のストッパー17の最も径が大きくなる第1のストッパー基端部172は、第1の縮径部132の基端部近傍に位置している。第1のストッパー基端部172の最大外径D1は、筒状部131に配置された拡開する前のステント16の最大外径Dmaxよりも小さく、かつ拡開する前のステント16の最小内径Dminよりも大きいことが好ましい。第1のストッパー基端部172の最大外径D1が、筒状部131に配置された拡開する前のステント16の最大外径Dmaxよりも小さければ、カテーテルの大径化を抑えて、操作性、挿通性の低下を抑えることができる。また、第1のストッパー基端部172の最大外径D1が、筒状部131に配置された拡開する前のステント16の最小内径Dminよりも大きければ、ステント16のバルーン先端側からの脱落を抑えることができる。なお、第1のストッパー基端部172の最大外径D1は、かならずしも拡開する前のステント16の最大外径Dmaxよりも小さくなくてもよく、または拡開する前のステント16の最小内径Dminよりも大きくなくてもよい。
【0030】
また、第2のストッパー18も同様に、弾性部材からなる線状の部材が螺旋状に巻回された螺旋状コイルであり、薄く平坦に形成された基端側の平坦部181が、外管12の外側に接着剤または熱融着等により固着される第2固定層122と外管12の間に挟まれて固定されている。第2のストッパー18の固定部を基端側とすることで、外管12へ安定して固定することができる。なお、第2のストッパー18が樹脂等であれば、第2固定層122を設けずに第2のストッパー18を外管12に対して接着剤または熱融着等により直接的に固着させることができる。
【0031】
第2のストッパー18は、平坦部181から先端側へ向かって径が大きくなるように螺旋状に形成されている。第2のストッパー18の最も径が大きくなる第2のストッパー先端部182は、第2の縮径部133の筒状部131近傍に位置している。第2のストッパー先端部182の最大外径D2は、筒状部131に配置された拡開する前のステント16の最大外径Dmaxよりも小さく、かつ拡開する前のステント16の最小内径Dminよりも大きいことが好ましい。第2のストッパー先端部182の最大外径D2が、筒状部131に配置された拡開する前のステント16の最大外径Dmaxよりも小さければ、カテーテルの大径化を抑えて、操作性、挿通性の低下を抑えることができる。また、第2のストッパー先端部182の最大外径D2が、筒状部131に配置された拡開する前のステント16の最小内径Dminよりも大きければ、ステント16のバルーン基端側からの脱落を抑えることができる。なお、第2のストッパー先端部182の最大外径D2は、かならずしも拡開する前のステント16の外径Dmaxよりも小さくなくてもよく、または拡開する前のステント16の最小内径Dminよりも大きくなくてもよい。
【0032】
第1のストッパー17および第2のストッパー18は、上述の通り弾性部材であり、特に、弾性変形能の優れた超弾性部材であることが望ましい。
【0033】
弾性部材としては、本発明に用いられうるバルーン13の伸縮に追随することができるもの(つまり、本発明の所期の効果を奏するもの)であれば特に制限はなく、例えば、チタン合金やNi基合金などの超弾性合金を用いることができる。
【0034】
チタン合金は、チタン(Ti)を主成分として含み、他に、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、酸素(O)、窒素(N)の少なくとも1種が含まれると好ましい。また、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)の少なくとも1種をさらに含んでいてもよい。かようなチタン合金としては、特開2002−285268号や特開2007−113120号に例示されているものなどが好適であり、また、市販品を購入するのであれば、ゴムメタル(商標登録)などが好適である。
【0035】
また、Ni基合金は、ニッケル(Ni)を主成分として含み、また、チタン(Ti)を含み、かつ、クロム(Cr)、鉄(Fe)、バナジウム(V)、コバルト(Co)、銅(Cu)からなる群よりなる1種又は2種以上の元素を含むと好ましい。より具体的には、Ni−Ti−Cu−Cr、Ni−Ti−Fe、Ni−Ti−Crなどが好ましい。かようなNi基合金としては、特開2005−131358に例示されているものなどが好適であり、また、市販品を購入して適用することができる。
【0036】
また、第1のストッパー17および第2のストッパー18は、X線不透過性を備えることが好ましく、例えば、表面にX線不透過材料が鍍金等により設けられる。X線不透過材料としては、白金、金、タングステン、イリジウムまたはそれらの合金であることが好ましく、さらに、白金、金、白金−イリジウム合金であることがより好ましい。このように第1のストッパー17および第2のストッパー18にX線不透過性を付与することにより、X線透視下で鮮明な造影像を得ることができるので、第1のストッパー17および第2のストッパー18およびバルーン13の位置をX線透視下で容易に確認することができる。
【0037】
また、第1のストッパー17、第2のストッパー18およびチューブ本体11の外面には、体腔内への挿入を良好に行えるように、例えば、セルロース系高分子物質(ヒドロキシプロピルセルロース等)、ポリエチレンオキサイド系高分子物質(ポリエチレングリコール)、無水マレイン酸系高分子物質(例えば、メチルビニルエーテル無水マレイン酸共重合体のような無水マレイン酸共重合体)、アクリルアミド系高分子物質(例えば、メチルアクリルアミド−グリシジルメタクリレート共重合体)、水溶性ナイロン(例えば、東レ社製のAQ−ナイロン P−70)等の親水性(または水溶性)高分子物質を被覆してもよい。これにより、血液または生理食塩水等に接触したときに、摩擦係数が減少して潤滑性が付与され、バルーンカテーテル10の摺動性が一段と向上する。
【0038】
次に、本実施形態に係るバルーンカテーテル10の作用を説明する。
【0039】
まず、例えば血管の狭窄部を治療する前に、バルーン13および拡張用ルーメン121内の空気をできる限り抜き取り、バルーン13および拡張用ルーメン121内を拡張用流体に置換しておく。このとき、バルーン13は、折り畳まれた状態となっている(図1〜3参照)。
【0040】
次に、患者の血管に、例えばセルジンガー法によりシースを留置し、ガイドワイヤールーメン141内にガイドワイヤー9を挿通された状態で、ガイドワイヤー9およびバルーンカテーテル10をシースの内腔より血管内へ挿入する。続いて、X線透視下で、マーカーである第1のストッパー17および第2のストッパー18の位置を視認しつつ、バルーンカテーテル10およびガイドワイヤー9の先端の位置を確認しながら、ガイドワイヤー9を先行させてバルーンカテーテル10を進行させ、ステント16が設置されたバルーン13を狭窄部へ到達させる。このように、第1のストッパー17および第2のストッパー18がマーカーとしての機能を備えていることから、別途マーカーを設ける必要がないため、バルーンカテーテル10の断面を細径化することができる。更に、別途マーカーを設ける必要がないことから、硬い狭窄部に対して、マーカーが擦れることがないので、マーカーによるバルーンの傷の発生を防ぐ効果も期待できる。
【0041】
バルーンカテーテル10を生体内に挿通する際には、第1のストッパー17および第2のストッパー18が存在することで、第1のストッパー17および第2のストッパー18が生体に接しやすく、これによりステント16が生体と接し難くなる。これにより、ステント16は生体から外力を受け難くなり、ステント16のバルーン13からのずれや変形を抑制することができる。更に、ステント16が生体に接し難くなるため、ステント16による生体の損傷も抑えることもできる。
【0042】
次に、バルーン13が狭窄部に位置した状態で、ハブ15の基端開口部151より、インデフレーター、シリンジ、ポンプ等を用いて拡張用流体を所定量注入し、拡張用ルーメン121を通じてバルーン13の内部に拡張用流体を送り込み、図6に示すように、折り畳まれたバルーン13を拡張させる。これにより、バルーン13の筒状部131がステント16を押し広げ、ステント16は塑性変形し、狭窄部を押し広げた状態で設置される。このとき、第1のストッパー17および第2のストッパー18は、バルーン13の拡張に追従して弾性的に拡開する。すなわち、先端側が内管14に固定されている第1のストッパー17は、螺旋の径が拡がるようにして第1のストッパー基端部172の径が拡開され、基端側が外管12に固定されている第2のストッパー18は、螺旋の径が拡がるようにして第2のストッパー先端部182の径が拡開される。このとき、第1のストッパー17および第2のストッパー18は、バルーン13の第1の縮径部132および第2の縮径部133を覆いつつ、弾性力により戻ろうとする力によって内側へ適度に加圧しているため、第1の縮径部132および第2の縮径部133の過拡張を抑制できる。
【0043】
すなわち、図8に示す比較例のように第1のストッパーおよび第2のストッパーが存在しない場合、バルーン83の筒状部831はステント16および狭窄部から力を受けるのに対し、第1の縮径部832および第2の縮径部833は外側から力を受けないため、筒状部831よりも拡張しやすくなり、バルーン83の両端が過拡張して効率的にステント16を拡開させることができない。また、第1の縮径部832および第2の縮径部833が過拡張すると、ステント16は軸方向(バルーンカテーテルの延在方向)の両側から挟まれるような力を受け、軸方向に縮んで短くなる。
【0044】
これに対し、本実施形態に係るバルーンカテーテル10では、図6に示すように、第1のストッパー17および第2のストッパー18により第1の縮径部132および第2の縮径部133の過拡張を抑えることができ、効率的にステント16を拡開させ、かつステント16の軸方向の長さを適切に保つことができる。更に、第1のストッパー17および第2のストッパー18がバルーン13と別体で構成されているため、折り畳まなければならないバルーン13を薄く形成しながらも、第1の縮径部132および第2の縮径部133の過拡張を抑えることができる。
【0045】
また、バルーン13の基端側の第2の縮径部133に第2のストッパー18が設けられるため、ステント16を拡張せずに生体内から回収する場合に、ステント16が変形していても、回収時にガイディングカテーテルの先端にステント16が引っ掛かることを防ぐことができる。また、バルーン13の拡張は、基端側から始まるので、基端側の第2の縮径部133の拡張を抑えることで、バルーン13内の圧力を先端側に逃がし、より均一な拡張を見込むことができる。したがって、第1のストッパー17を設けずに、第2のストッパー18のみを設けてもよい。
【0046】
この後、拡張用流体を基端開口部151(図5参照)より吸引して排出し、図7に示すように、バルーン13を収縮させて折り畳まれた状態とする。なお、ステント16は、拡開した状態のまま狭窄部に留置される。
【0047】
バルーン13を収縮させると、第1のストッパー17および第2のストッパー18は、バルーン13の収縮に伴って弾性的により収縮し、元の形状へ戻る。したがって、第1のストッパー17および第2のストッパー18を構成する弾性材料、線材の径、巻数等は、バルーン13の拡張に伴って弾性的に拡開した後、バルーン13の収縮に伴って元の状態へ収縮できるように、バルーン13の寸法等に応じて適宜選択されることが好ましい。なお、第1のストッパー17および第2のストッパー18は、拡開した後にバルーン13の収縮に応じて収縮した際に、かならずしも完全に元の形状に戻らなくてもよく、生体から抜去する際に問題が生じない寸法まで収縮できればよい。
【0048】
この後、シースを介して血管よりチューブ本体11を抜去し、手技が終了する。
【0049】
<第2実施形態>
本発明の第2の実施形態に係るバルーンカテーテル20は、第1のストッパーおよび第2のストッパーの固定方法が、第1の実施形態に係るバルーンカテーテル10と異なる。なお、第1のストッパーおよび第2のストッパーの固定方法以外の構成は、第1実施形態に係るバルーンカテーテル10と同様であるため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0050】
第2実施形態に係るバルーンカテーテル20の第1のストッパー27は、第1実施形態の第1のストッパー17と同様に、弾性部材からなる線状の部材が螺旋状に巻回された螺旋状コイルであるが、基端側でバルーン13に固定される点で、先端側で内管14に固定される第1実施形態の第1のストッパー17と異なる。第1のストッパー27は、薄く平坦に形成された基端側の平坦部271が、第1の縮径部132の外側に接着剤または熱融着等により固着される第1固定層234と第1の縮径部132の間に挟まれて固定されている。
【0051】
また、第2実施形態に係るバルーンカテーテル20の第2のストッパー28も、第1実施形態の第2のストッパー18と同様に、弾性部材からなる線状の部材が螺旋状に巻回された螺旋状コイルであるが、先端側でバルーン13に固定される点で、基端側で外筒に固定される第2実施形態の第2のストッパー18と異なる。第2のストッパー28は、薄く平坦に形成された先端側の平坦部281が、第2の縮径部133の外側に接着剤または熱融着等により固着される第2固定層235と第2の縮径部133の間に挟まれて固定されている。
【0052】
第2実施形態に係るバルーンカテーテル20によれば、第1のストッパー27および第2のストッパー27が、筒状部131に隣接する側でバルーン13に固定されているため、折り畳まれたバルーン13が拡張する際に、第1のストッパー27の基端部が先端側へ逃げず、かつ第2のストッパー28の先端部が基端側へ逃げることがない。このため、バルーン13を拡張する際に、第1のストッパー27および第2のストッパー28が、第1の縮径部132および第2の縮径部133の広い範囲を覆うことができ、第1の縮径部132および第2の縮径部133の過拡張をより確実に抑制することができ、効率的にステント16を拡開させ、かつステント16の軸方向の長さを適切に保つことができる。
【0053】
<第3実施形態>
本発明の第3の実施形態に係るバルーンカテーテル30は、第1のストッパーおよび第2のストッパーの形態が、第1の実施形態に係るバルーンカテーテル10と異なる。なお、第1のストッパーおよび第2のストッパー以外の構成は、第1実施形態に係るバルーンカテーテル10と同様であるため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0054】
第3実施形態に係るバルーンカテーテル30の第1のストッパー37は、図10に示すように、螺旋状コイルではなく、切れ目部374を有する弾性部材からなるC字状リング371a、371b、371c(以下、371a、371b、371cを総じて371と称する。)が、軸方向(カテーテルの延在方向)へ延びる連結部材372によって複数連結されて構成されている。C字状リング371の径は、基端側のC字状リング371aが最も大きく、先端側のC字状リング371cが最も小さい。なお、最も先端側のリングは、脱落防止のために、C字状リングではなくO字状リング373で形成されている。O字状リング373は、内管14の外側に、内管14に対して接着剤または熱融着等により固着される他の層によって覆われて固定されている。なお、第2のストッパー(不図示)の形態は、第1のストッパー37の先端側と基端側が逆となる以外は同様であるため、説明を省略する。
【0055】
第3実施形態に係るバルーンカテーテル30によっても、バルーンカテーテル30を挿通する際のステント16のずれや変形を抑制しつつ、更にバルーン13を拡張する際の第1の縮径部132および第2の縮径部133における過拡張を抑制できるため、効率的にステント16を拡開させ、かつステント16の軸方向の長さを適切に保つことができる。また、C字状リング371同士が軸方向へ直線的に延びる連結部材372によって連結されているため、折り畳まれたバルーン13が拡張する際に、第1のストッパー37が先端側へ逃げず、かつ第2のストッパーが基端側へ逃げない。このため、第1の縮径部132および第2の縮径部133における過拡張をより確実に抑制することができる。
【0056】
なお、図10に示す第3実施形態に係るバルーンカテーテル30は、複数のC字状リング371の切れ目部374が周方向に一致しているが、切れ目部374の周方向位置を異ならせることで、ストッパーの脱落をより確実に抑制することもできる。
【0057】
<第4実施形態>
本発明の第4の実施形態に係るバルーンカテーテル40は、第1のストッパーおよび第2のストッパーの形態が、第1の実施形態に係るバルーンカテーテル10と異なる。なお、第1のストッパーおよび第2のストッパー以外の構成は、第1実施形態に係るバルーンカテーテル10と同様であるため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0058】
第4実施形態に係るバルーンカテーテル40の第1のストッパー47は、図11に示すように、螺旋状コイルと同様に一本の弾性部材からなる線材により形成されており、複数のC字状リング471a、471b、471c、471dが、各々の切れ目部474を周方向に異ならせて並ぶように巻回して構成されている。なお、第2のストッパー(不図示)の形態は、第1のストッパー47の先端側と基端側が逆となる以外は同様であるため、説明を省略する。
【0059】
第4実施形態に係るバルーンカテーテル40によっても、バルーンカテーテル40を挿通する際のステント16のずれや変形を抑制しつつ、更にバルーン13を拡張する際の第1の縮径部132および第2の縮径部133における過拡張を抑制することで、効率的にステント16を拡開させ、かつステント16の軸方向の長さを適切に保つことができる。また、複数のC字状リング471a、471b、471c、471dの切れ目部474が周方向に異なって形成されるため、ストッパーの脱落を抑制することができる。
【0060】
<第5実施形態>
本発明の第5の実施形態に係るバルーンカテーテル50は、第1のストッパーおよび第2のストッパーの形態が、第1の実施形態に係るバルーンカテーテル10と異なる。なお、第1のストッパーおよび第2のストッパー以外の構成は、第1実施形態に係るバルーンカテーテル10と同様であるため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0061】
第5実施形態に係るバルーンカテーテル50の第1のストッパー57は、図12に示すように、螺旋状コイルではなく、軸方向に長い1つのC字状リング571で形成されている。C字状リング571は、基端側から先端側へ向かってテーパ状に縮径して形成される。C字状リング571の先端部は、内管14に固定されている。なお、第2のストッパー(不図示)の形態は、第1のストッパー57の先端側と基端側が逆となる以外は同様であるため、説明を省略する。
【0062】
第5実施形態に係るバルーンカテーテル50によっても、バルーンカテーテル50を挿通する際のステント16のずれや変形を抑制しつつ、更にバルーン13を拡張する際の第1の縮径部132および第2の縮径部133における過拡張を抑制することで、効率的にステント16を拡開させ、かつステント16の軸方向の長さを適切に保つことができる。また、第1のストッパー57および第2のストッパーが1つのC字状リング571で形成されているため、折り畳まれたバルーン13が拡張する際に、第1のストッパー57が先端側へ逃げず、かつ第2のストッパー(不図示)が基端側へ逃げない。このため、第1の縮径部132および第2の縮径部133における過拡張をより確実に抑制することができる。
【0063】
<第6実施形態>
本発明の第6の実施形態に係るバルーンカテーテル60は、第1のストッパーおよび第2のストッパーの形態が、第1の実施形態に係るバルーンカテーテル10と異なる。なお、第1のストッパーおよび第2のストッパー以外の構成は、第1実施形態に係るバルーンカテーテル10と同様であるため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0064】
第6実施形態に係るバルーンカテーテル60の第1のストッパー67は、図13に示すように、螺旋状コイルではなく、弾性部材からなる網状の筒体で形成されている。第1のストッパー67は、基端側から先端側へ向かってテーパ状に縮径して形成される。第1のストッパー67の先端部は、内管14に固定されている。なお、第2のストッパー(不図示)の形態は、第1のストッパー67の先端側と基端側が逆となる以外は同様であるため、説明を省略する。
【0065】
第6実施形態に係るバルーンカテーテル60によっても、バルーンカテーテル60を挿通する際のステント16のずれや変形を抑制しつつ、更にバルーン13を拡張する際の第1の縮径部132および第2の縮径部133における過拡張を抑制することで、効率的にステント16を拡開させ、かつステント16の軸方向の長さを適切に保つことができる。また、第1のストッパー67および第2のストッパーが網状の筒体で形成されているため、折り畳まれたバルーン13が拡張する際に、第1のストッパー67が先端側へ逃げ難く、かつ第2のストッパーが基端側へ逃げ難い。このため、第1の縮径部132および第2の縮径部133における過拡張をより確実に抑制することができる。
【0066】
なお、第1のストッパー67および第2のストッパー(不図示)の弾性材料をエラストマー等の弾性体とすれば、網状とすることなしに、筒状に形成することもできる。
【0067】
本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内で種々改変することができる。例えば、バルーンカテーテルがラピッドエクスチェンジ構造ではなく、ガイドワイヤーが手元から先端まで挿通するOTW(over the wire)構造であってもよい。また、バルーンカテーテルにステントが設けられなくてもよい。
【0068】
また、第1のストッパーおよび第2のストッパーは、いずれか一方のみが設けられてもよい。
【0069】
また、バルーンの第1の縮径部および第2の縮径部は、拡張した際に縮径している部位を意味するものであり、折り畳んだ際に縮径した形状となっていなくてもよい。すなわち、拡開する前の第1のストッパーおよび第2のストッパーも、折り畳んだ状態の第1の縮径部および第2の縮径部の形状に対応して構成されればよく、縮径する形状でなくてもよい。
【符号の説明】
【0070】
10,20,30,40,50,60 バルーンカテーテル、
11 チューブ本体、
13 バルーン、
16 ステント、
17,27,37,47,57,67 第1のストッパー、
28 第2のストッパー、
121 拡張用ルーメン、
131 筒状部、
132 第1の縮径部、
133 第2の縮径部、
172 ストッパー基端部、
182 ストッパー先端部、
371、471、571 C字状リング、
D1 第1のストッパーの最大外径、
D2 第2のストッパーの最大外径、
Dmax ステントの最大外径、
Dmin ステントの最小内径。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルーメンが形成されたチューブ本体と、
前記チューブ本体の先端部に設けられて折り畳み可能であり、前記ルーメンから供給される拡張用流体によって拡張することで筒状となる筒状部並びに当該筒状部の先端側および基端側の少なくとも一方に前記筒状部から径が縮径して形成された縮径部が設けられたバルーンと、
折り畳まれた状態の前記縮径部を覆うように設けられ、前記バルーンと別体の弾性材料からなるストッパーと、を有し、
前記ストッパーは、前記バルーンの拡張に伴い弾性的に拡開し、前記バルーンの収縮に伴い弾性的に収縮する、バルーンカテーテル。
【請求項2】
前記折り畳まれた状態の筒状部を覆うように、拡開する前のステントが配置され、前記バルーンが折り畳まれた状態における前記ストッパーの最大外径が、前記ステントの最大外径よりも小さい、請求項1に記載のバルーンカテーテル。
【請求項3】
前記折り畳まれた状態の筒状部を覆うように、拡開する前のステントが配置され、前記バルーンが折り畳まれた状態における前記ストッパーの最大外径が、前記ステントの最小内径よりも大きい、請求項1又は2に記載のバルーンカテーテル。
【請求項4】
前記ストッパーは、螺旋状コイル、C字状リング、網状の筒体、または弾性体からなる筒体を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項5】
前記ストッパーは、前記チューブ本体に固定された、請求項1〜4のいずれか1項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項6】
前記ストッパーは、前記バルーンの基端側の縮径部に設けられた、請求項1〜5のいずれか1項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項1】
ルーメンが形成されたチューブ本体と、
前記チューブ本体の先端部に設けられて折り畳み可能であり、前記ルーメンから供給される拡張用流体によって拡張することで筒状となる筒状部並びに当該筒状部の先端側および基端側の少なくとも一方に前記筒状部から径が縮径して形成された縮径部が設けられたバルーンと、
折り畳まれた状態の前記縮径部を覆うように設けられ、前記バルーンと別体の弾性材料からなるストッパーと、を有し、
前記ストッパーは、前記バルーンの拡張に伴い弾性的に拡開し、前記バルーンの収縮に伴い弾性的に収縮する、バルーンカテーテル。
【請求項2】
前記折り畳まれた状態の筒状部を覆うように、拡開する前のステントが配置され、前記バルーンが折り畳まれた状態における前記ストッパーの最大外径が、前記ステントの最大外径よりも小さい、請求項1に記載のバルーンカテーテル。
【請求項3】
前記折り畳まれた状態の筒状部を覆うように、拡開する前のステントが配置され、前記バルーンが折り畳まれた状態における前記ストッパーの最大外径が、前記ステントの最小内径よりも大きい、請求項1又は2に記載のバルーンカテーテル。
【請求項4】
前記ストッパーは、螺旋状コイル、C字状リング、網状の筒体、または弾性体からなる筒体を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項5】
前記ストッパーは、前記チューブ本体に固定された、請求項1〜4のいずれか1項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項6】
前記ストッパーは、前記バルーンの基端側の縮径部に設けられた、請求項1〜5のいずれか1項に記載のバルーンカテーテル。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−206124(P2011−206124A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−74562(P2010−74562)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】
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