説明

バルーン拡張型ステントおよびその製造法

約20重量パーセント以上のTiと、Zr、TaまたはMoのうちの少なくとも1種とを有する合金を含むほぼチューブ状の本体を含むバルーン拡張型ステント。この合金は、約310.275×10Pa(約45ksi)以上の降伏強度と、約+1以下の磁化率と、約1.9cm/g以上の質量吸収係数とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ステントおよびステントグラフトなどの医療装置、ならびにその製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
身体には、種々の通路、例えば、動脈や他の血管および他の身体内腔がある。これらの通路は、閉塞または脆弱化した状態になることがある。例えば、通路は、腫瘍で閉塞したり、プラークによって狭窄したり、または動脈瘤によって脆弱化したりし得る。そのような場合には、通路を再開放もしくは強化するか、または医療用体内プロテーゼと置き換えたりすることもできる。体内プロテーゼは、典型的には、体腔内に配置されるチューブ状部材である。体内プロテーゼの例としては、ステントや、「ステントグラフト」と称されることもある被覆ステントがある。
【0003】
体内プロテーゼを目的部位に移送する場合、体内プロテーゼを圧縮すなわち大きさを縮小した形態で支持するカテーテルによって体内に送出し得る。目的部位に達したら、例えば内腔壁に接触し得るように体内プロテーゼを拡張する。
【0004】
体内プロテーゼを体内に進めるとき、体内プロテーゼを標的部位に正確に送出できるように、その進行を監視、例えば、トラッキングし得る。体内プロテーゼを標的部位に送出した後、体内プロテーゼを監視して、適切に配置されているか、かつ/または適切に機能しているか否かを見定めることができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
移植時の体内プロテーゼ位置の監視は、通常、X線透視法などの放射線写真法により実施される。金属体内プロテーゼの放射線写真の濃度は骨や組織とは異なっており、医療装置は、X線透視像では、周囲の生体物質に対するコントラストおよびグレイスケールの可視的変化から観察される。X線透視法の不利点は、医師、職員および患者が、高い線量で、あるいは反復して、有害であり得る電離放射線に暴露されることである。
【0006】
医療装置の別の監視法は、磁気共鳴イメージング(MRI)である。MRIは、磁場と電波を使って身体を撮像する。いくつかのMRI手順において、患者を、患者体内の特定の原子、例えば、水素原子と相互作用する磁場に暴露する。次いで、患者に入射電波を当てる。入射電波は、患者体内の原子と相互作用して特徴的な帰還電波(return radio wave)を生成する。帰還電波をスキャナーで検出し、コンピュータで処理して身体画像を作成する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様において、本発明はバルーン拡張型医療用ステントを特徴とする。このステントは、約20重量パーセント以上のTiと、Zr、TaまたはMoのうちの少なくとも1種とを有する合金を含むほぼチューブ状の本体を有する。合金は、約310.275×10Pa(約45ksi)以上の降伏強度と、約+1以下の磁化率と、約1.9cm/g以上の質量吸収係数とを有する。
【0008】
別の態様において、本発明は、身体の内腔内に送出するためのカテーテルを含むシステムを特徴とする。このカテーテルは、拡張可能部材と、拡張可能部材上に配置され得る本明細書に記載のようなステントとを有する。拡張可能部材は約1.55〜約14mmの最
大直径まで拡張可能である。
【0009】
別の態様において、本発明は、約20重量パーセント以上のTiと、Zr、TaまたはMoのうちの少なくとも1種とを有し、降伏強度が約310.275×10Pa(約45ksi)以上、磁化率が約+1以下、質量吸収係数が約1.9cm/以上の合金を含む移植可能な医療装置を特徴とする。この医療装置は、フィルター、ガイドワイヤ、カテーテル、針、生検針、ステイプルまたはカニューレであり得る。
【0010】
別の態様において、本発明は、ステントを形成する方法を特徴とする。この方法は、約20重量パーセント以上のTiと、Zr、TaまたはMoから選択される少なくとも1種の混和材とを含む合金を得る工程を含む。この方法は、TiまたはTi含有合金から選択されるチタン成分と混和材との固体アリコート同士を接触させる工程と、接触工程後に前記アリコートを加熱する工程と、接触工程後に、鋳造、押出、引き抜きまたは圧延により前記アリコートを機械加工する工程と、前記アリコートを溶解させる工程と、インゴットを形成する工程と、合金を含むチューブを形成する工程と、チューブをステントに組み込む工程とを含む。
【0011】
一態様において、本発明は、医療装置を形成する方法を特徴とする。この方法は、約150℃以上の融点差を有する第1成分と第2成分とを含む元素または合金の多成分からなる金属合金を得る工程を含む。第1成分と第2成分との固体アリコート同士を接触させ、加熱かつ/または機械加工し、次いで、加工構成材を溶解させる。合金を医療装置に組み込む。
【0012】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載のような、放射線不透過性、MRI能力、機械的性質、および/または生体適合性特性から選択される1つ以上(例えば、2つ、3つまたは4つ)の特性を任意の組み合せで示す合金を含む医療装置を特徴とする。他の態様において、本発明は、特定の合金およびその製造法を特徴とする。
【0013】
さらに別の態様において、本発明は、ジルコニウム、タンタル、モリブデン、またはニオビウムのうちの少なくとも1種を有するチタン合金を含む医療装置を特徴とする。この合金は、本明細書に記載のような、放射線不透過性、MRI能力、機械的性質、および/または生体適合性特性、ならびにそれらの特性の組み合せを示す。他の態様において、本発明は、特定の合金およびその製造法を特徴とする。
【0014】
実施形態は以下の利点を1つ以上有し得る。好ましい磁気イメージングのための放射線不透過性、生体適合性および/または機械的特性を有するステントまたは他の医療装置を提供する。例えば、このステントは、磁気共鳴画像を劣化させにくい(例えば、ステンレス鋼の場合より劣化させにくい)。インプラントの移動または加熱を減少させ得る。このステントの合金は、X線透視法でステントを見分けるのに十分な放射線不透過性を有する。この合金の機械的特性は、例えばバルーンカテーテルによって小直径形状で体内に送出され、次いで、治療部位で拡張され得る従来設計のステントを可能にする。このチタン合金は、一般に、低い磁化率を維持しながら、増強された強度、剛性および放射線不透過性を示し得る。
【0015】
さらなる態様、特徴および利点を以下に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1Aおよび図1Bを参照すると、ステント10は、チューブ形状の金属本体12を有する。この金属本体は、半径方向における拡張および側方における柔軟性などのステントの機能を促進するパターンで設けられた複数の開口部14を有する。開口部と開口部の間
には、ストラット部16がある。特に図1Aを参照すると、体内に送出するために、ステント10は、直径Dに対応する比較的小さな直径の状態で装着または保持される。図1Bを参照すると、ステント10は、治療部位に配置されると、内腔壁と接触した状態となるように大きな直径、すなわちDexpに拡張される。このステントは、膨張可能なバルーンなどの機械的な拡張装置によって拡張されてもよいし、自己拡張型であってもよい。ステントの金属本体は、ほぼ連続したシートによって、またはステントを概ね画定するような形状で被覆、ブレード形成、または編成され得る長繊維によって形成され得る。
【0017】
図2A〜図2Cを参照すると、バルーン拡張型ステントの送出が図解されている。ステント300は、カテーテル302上においてバルーン304の上に乗せた状態で運ばれる。治療部位に到達したら、バルーンを膨脹させて、ステントを内腔壁と接触した状態に拡張する。ステントは血管系内(例えば、冠動脈もしくは末梢動脈内)、または他の身体内腔内で用いられ得る。
【0018】
ステント本体は、好ましい磁気共鳴、放射線不透過性、生体適合性、および/または機械的特性を有する金属合金製である。実施形態において、前記合金は、Zr、TaまたはMoのうちの少なくもと1種を含むチタン含有合金である。特定の実施形態において、前記合金は、以下に説明するように、1種以上のZr、Ta、またはMoと合金化された工業用純(commercially pure:CP)チタンまたはTi−6A1−4V
ELIから、機械的合金化工程または拡散合金化工程およびその後の溶解工程を含む方法によって形成される。
【0019】
前記合金は、好ましい特性が得られるように調合される。MRI適合性を得るためには、合金は、合金成分の磁化率および溶解度を調節して、信号ひずみ、電流(例えば、渦電流)の生成、加熱、体内での移動または神経刺激を減少させるように配合する。Ti、Zr、TaおよびMoならびに他の材料の磁化率を表Iに示す。
【0020】
【表1】

実施形態において、前記合金の磁化率はオーステナイト系ステンレス鋼の磁化率より低い、例えば、約+1以下または約3.5×10−3である。合金成分の溶解度は二成分系状態図によって決定することができる。適当な溶解度は一相(アルファアルファもしくはベータ)または二相溶液(アルファおよびベータ)により室温下で示される。適当な状態
図の例は、ASM Handbook、第3巻、ASM International、1992年に示されており、このハンドブックはそのまま本明細書に文献援用される。
【0021】
放射線不透過性を得るためには、合金を所望の質量吸収係数に基いて調合する。ステントは、X線透視法によって容易に視認可能であるが、X線透視画像の細部を変形させるほど明る過ぎて見えないことが好ましい。いくつかの実施形態において、この合金または装置は、ASTM F640(医療用プラスチックの放射線不透過性の標準試験法(Standard Test Methods for Radiopacity of Plastics for Medical Use))による測定で、316Lグレードのステンレス鋼の放射線不透過性の約1.10〜約3.50倍(例えば、約1.1、1.5、2.0、2.5もしくは3.0倍以上;および/または約3.5、3.0、2.5、2.0もしくは1.5倍以下)の放射線不透過性を有する。表IIで、Ti、Ta、ZrおよびMoの質量吸収係数および密度を316Lステンレス鋼と比較する。
【0022】
【表2】

実施形態において、この合金の質量吸収係数は約1.96cm/g(実質的にFeの質量吸収係数に相当)〜約2.61cm/g(Taの質量吸収係数の約半分に相当)である。質量吸収係数は、The Physics of Radiology、エイチ イー ジョンズ(H.E.Johns)、ジェイ アール カニンガム(J.R.Cunningham)、Charls C.Thomas Publisher、1983年、米国イリノイ州スプリングフィールド(Springfield)、p.133−143に記載のように、放射線不透過性試験の結果から計算できる。合金の質量吸収係数の計算は後の実施例に示す。
【0023】
好ましい機械的性質を得るためには、前記合金は、溶解度および相構造に基いて調合される。特定の実施形態において、この合金の特定の機械的性質は、ステンレス鋼の対応値の約±20パーセント以内(例えば、約±10パーセント、約±5パーセント、または約±1パーセント以内)を示す。選択材料の機械的性質を表IIIに示す。
【0024】
【表3】

降伏強度(YS)は、合金を流動させてステントを拡張させるのに必要な作用圧力に関連する。ピーク荷重ひずみ率(パーセント)は、ネッキングが起こる前に材料がどの程度ひずみ得るかを示す。極限引張強さ(UTS)は、ピーク荷重ひずみに対応する応力値である。破壊ひずみ率(パーセント)は、材料が破壊する前にどの程度伸び得るかの測度であり、一様変形+ネックダウン領域での局在変形を含む。この性質は、ステントの過拡張に由来するステントストラットの破壊に関連する。これらのパラメータを測定する適当な試験法は、ASTM E8(金属材料の引張試験の標準試験法(Standard Test Methods for Tension Testing of Metallic Materials))に記載されている。表IIIにおいて、316L SSの性質は、軟ステントチューブから測定した。他の材料の性質は、例えば、American Society for Metals Handbook Desk Edition、エイチ イー ボイヤー(H.E.Boyer)、ティー エル ゴール(T.L.Gall)、1985年などのハンドブックから得た。
【0025】
合金成分の溶解度および合金の相構造を相状態図で示す。適当な溶解度は、実質的な量のより脆性な相、例えば、アルファプライム、アルファダブルプライムまたはオメガ相を有さないアルファおよび/またはベータ微細構造で示される。溶解後の能動的な急冷を用いて、これらの相の沈殿を減少させることができる。実施形態において、脆性相の存在は、X線回折解析で測定して、約10パーセント未満(例えば、約7パーセント、5パーセントまたは3パーセント未満)である。二相の存在は、〔アレゲニー・テクノロジーズ・オールヴァック(Allegheny Technologies Allvac)社、米国ノースカロライナ州モンロー(Monroe)所在〕またはメタルメン・セールス(Metalmen Sales)社、米国ニューヨーク州ロングアイランド市所在)から入手し得る〕市販のTi−6A1−4V中の量以下であるのが好ましい。TiとTaおよびMoとを合金化すると弾性率が増大する。TiとTa、Moおよび/またはZrとを合金化すると、引張強さが増大する。実施形態において、引張特性は合金を焼きなますことにより調和がとられる。例えば、焼きなまし時間および温度は、降伏強度および粒度に関する最小設計要件を満たしながら最大レベルの延性を得るように選択され得る。あるいはまたはさらに、ステント設計は、好ましくない機械的性質に対応するように変更され得る。例えば、引張伸び(破壊ひずみ率)が低い場合、総ステント変形量を、変形が生じる複
数の領域に少量ずつ分布させるようにステントの変形「ヒンジ」ポイントの数を増やすなどして、拡張時にストラットへのひずみを低下させるようにステントを設計する。
【0026】
ステントの生体適合性は、生体適合性成分を合金化するか、ステントを生体適合性材料でコーティングすることにより得られる。生体適合性は、定性的合格または不合格指標を提供し得る業界標準ISO 10992試験管内および生体内試験法によって試験し得る。実施形態において、本発明のステントは、ISO 10992試験法で測定して、純チタンまたは純タンタルと同様または同等の生体適合性を有する。
【0027】
実施形態において、本発明の合金成分は、発明の開示および実施例に列挙されている組み合せおよび量で用いられる。特定の実施形態において、合金は、Ti−Ta、Ti−Mo、Ti−Zr、Ti−Ta−Mo、Ti−Ta−Zr、Ti−Ta−Zr−Mo,Ti−Zr−MoまたはTi 6A1−4V−Ta−Zr−Ta、Ti 6A1−4V−Mo、Ti 6A1−4V−Zr、Ti 6A1−4V−Ta−Mo、Ti 6A1−4V−Ta−Zr、Ti 6A1−4V−Ta−Zr−Mo、Ti 6A1−4V−Zr−Mo合金である。他の実施形態においては、Ta、Mo、および/またはZrと合金化した、Ti−13Nb−13Zr、Ti−8A1−1MO−1V、Ti−6A1−2Nb−1 Ta−0.8MoおよびTi−7A1−4Mo合金である。特定の実施形態においては、合金を焼きなましする。特定の実施形態において、合金は、CPチタンまたはTi−6A1−3V ELIとTa、Zrおよび/またはMoとを合金化することにより形成される。実施形態において、合金は、CPチタンまたはTi−6A1−4V ELIと共に、40〜70重量パーセントのタンタルまたは25〜50重量パーセントのジルコニウムを含む。実施形態において、MRI適合性を犠牲にすることなく引張強さを加えるために、チタンの一部の代わりに5〜20重量パーセントのモリブデンが添加される。適当な合金としては、以下のものが挙げられる。
【0028】
CPチタンと以下のいずれかとの合金:
43重量%のTa
69重量%のTa
25重量%のTa
49重量%のZr
43重量%のTa+5重量%のMo
69重量%のTa+5重量%のMo
25重量%のZr+5重量%のMo
49重量%のZr+5重量%のMo
43重量%のTa+10重量%のMo
69重量%のTa+10重量%のMo
25重量%のZr+10重量%のMo
49重量%のZr+10重量%のMo
22重量%のTa+13重量%のZr
35重量%のTa+25重量%のZr

Ti−6A1−4V ELIと以下のいずれかとの合金:
43重量%のTa
69重量%のTa
25重量%のTa
49重量%のZr
43重量%のTa+5重量%のMo
69重量%のTa+5重量%のMo
25重量%のZr+5重量%のMo
49重量%のZr+5重量%のMo
43重量%のTa+10重量%のMo
69重量%のTa+10重量%のMo
25重量%のZr+10重量%のMo
49重量%のZr+10重量%のMo
22重量%のTa+13重量%のZr
35重量%のTa+25重量%のZr
製造
図3を参照すると、ステントは、合金を形成し、合金からチューブを形成し、次いで、チューブをステントに形成することによって構成される。
【0029】
図4A〜4Eを参照すると、ステントの構成に適したサイズおよび形状のインゴットまたはビレットを形成するための合金化プロセスが図解されている。
図4Aを参照すると、ベース60と1つ以上の混和材ロッド62を用意する。例えば、ベースロッドは、TiまたはTi含有合金であり、混和材ロッドは、Ti、Ta、Zrおよび/またはMoである。それらのロッドの重量は所望の合金配合物に比例する。
【0030】
図4Bを参照すると、ベースロッドに穿孔して空洞64が設けられる。
図4Cを参照すると、ベースロッド60の空洞64に混和材ロッド62が挿入される。
図4Dを参照すると、このアセンブリは、成分間で拡散合金化するように、加熱および/または機械加工により予備合金化される。
【0031】
図4Eを参照すると、このアセンブリに、ベースロッド60から混和材ロッド62が抜け落ちるのを防ぐためのエンドキャップが設けられている。このアセンブリを、真空アーク再溶解(VAR)炉、EB溶解炉、VIM炉、または浮揚溶解炉中で1回または複数回、溶解および鋳造して、液相合金化させる。
【0032】
図4Fを参照すると、前記合金(例えば、合金ビレット)は、さらなる加工に適している。このビレットは、ステントチューブの製造材料用に、引き抜きによりチューブに形成されたり、または圧延によりシートに形成されたりし得る。例えば、直径が約6.35センチメートル(2.5インチ)で、長さが約10.16センチメートル(4インチ)のインゴットまたはビレットからは、通常、少なくとも約304.8メートル(1000フィート)の冠動脈ステントチューブが製造される。
【0033】
この合金化プロセスは、大きな溶解温度差を有する成分を合金化するのに特に有利である。表IVに、Ti、Ta、Zr、およびMoの溶解温度を示す。
【0034】
【表4】

TiとZrおよびTaとMoの溶解温度差は500℃を超える。TiとZrの差は150℃を超える。図4A等の方法では、合金成分のアリコート同士を密着させて、機械的および/または拡散合金化し、次いで、溶解・鋳造してインゴットにする。アリコートの拡散合金化または機械的合金化により、溶解・鋳造炉での全体的な混合は必要とされない。
【0035】
予備合金化工程では、不活性ガスまたは真空下で加熱を行うか、ビレットの外面を後で化学溶解させ得る鉄などの保護金属で被覆または缶詰にし得る。ビレットは、ドリルで穴を開けて充填した後または拡散熱処理した後、押出、引き抜き、または圧延して、さらにアセンブリを強化することも可能である。熱処理または熱加工は、溶解時に混和材をビレット内の適所に保持するのに役立つ。また、高融点成分は、例えばチタン内に実質的に封入され、鋳造炉中の残留空気への暴露を最小限にし得る。拡散加熱の場合、アセンブリを最低溶解温度成分の溶解温度および/またはベースロッド材料の溶解温度近くで加熱し得る。例えば、Tiベースロッドの場合、溶解温度は約1600℃以下である。
【0036】
実施形態において、基材への混和材の添加は、複数の溶解およびインゴット鋳造操作のそれぞれにおいて、段階的に実施される。例えば、Ti6A1−4Vを43重量パーセントのタンタルと合金化するためには、第1溶解操作で、Ti−6A1−4V棒穴に22重量パーセントのタンタルを充填し得る。第1インゴットを鋳造した後、再び穴を穿孔して別の22重量パーセントのタンタルを充填し、溶解を繰り返す。43重量パーセントのTaを含む最終合金に達するまで、他の順序および量でのTaの添加が行われる。この方法は、Taを複数の溶解およびインゴット鋳造工程で少しずつ添加する場合には、インゴット中のTa元素分離である。さらに、溶解物間の均質化熱処理は、必要とされる元素拡散量を減少させ得る。この方法により、Ta−Nb、Nb−Zr、Ti−Nb、およびFe−Pt合金系などの他の難溶融性合金を形成し得る。他の実施形態において、混和材は、ソリッドワイヤまたはロッドではなく、粉末またはチップ形態で提供され得る。溶解・インゴット鋳造プロセス中に生じる合金化は、溶解操作間にインゴットに均質化(元素拡散)熱処理を加えてさらに改良することができる。機械的合金化溶解、鋳造、および熱処理操作は、ピッツバーグ・マテリアルズ・テクノロジー社(Pittsburgh Materials Technology Inc.)(米国ペンシルベニア州ピッツバーグ所在)、アップルゲイト・グループ(Applegate Group)〔米国ニュージャージー州ウッドクリフ・レイク(Woodcliff Lake)所在〕またはアルバニー・リサーチ・センター(Albany Research Center)〔米国オレゴン州オルバニー(Albany)所在〕などの商業的供給源において実施され得る。
【0037】
合金チューブをステントに成形する。例えば、バンドやストラットを規定するために選択した部分を除去し得る。選択部分は、例えば、米国特許第5,780,807号に記載されているようなレーザー切断により除去できる。特定の実施形態において、レーザー切断時、チューブに、溶媒、ガスまたは油などの液体担体を流す。液体担体は、一部分上に形成された液滴が別の部分上に再堆積するのを防止したり、かつ/またはチューブ部材上に改鋳物が形成されるのを減少させ得る。チューブ部材を部分的に除去する他の方法としては、機械加工(例えば、マイクロマシニング)、放電加工(EDM)、フォトエッチング(例えば、酸フォトエッチング)、および/またはケミカルエッチングがある。
【0038】
ステントは、従来法に従って、さらなる仕上げ、例えば、滑らかな仕上がりに電解研磨され得る。いくつかの実施形態において、内面および/または外面からケミカルミリングおよび/または電解研磨により約0.000254センチメートル(約0.0001インチ)の材料を除去することができる。ステントを焼きなまししてステントの機械的および物理的性質を改良してもよい。
【0039】
使用時に、ステントは、カテーテルを用いて使用、例えば、送出および拡張することができる。適当なカテーテルシステムは、例えば、ワング(Wang)の米国特許第5,195,969号およびハムリン(Hamlim)の米国特許第5,270,086号に記載されている。適当なステントおよびステントデリバリーは、ボストン・サイエンティフック・シムド(Boston Scientific Scimed)社〔米国ミネソタ
州メイプルグローブ(Maple Grove)所在〕から入手し得るExpress、Radius(登録商標)またはSymbio(登録商標)によっても例示される。
【0040】
ステントは任意の所望形状およびサイズを有するもの(例えば、冠動脈ステント、大動脈ステント、末梢血管ステント、消化管ステント、泌尿器ステント、および神経ステント)であり得る。ステントは、用途に応じて、例えば、1〜46ミリメートルの直径を有し得る。特定の実施形態において、冠動脈ステントは、約2〜約6ミリメートルの拡張直径を有し得る。いくつかの実施形態において、末梢ステントは約5〜約24メリメートルの拡張直径を有し得る。特定の実施形態において、消化管および/または泌尿器ステントは、約6〜約30ミリメートルの拡張直径を有し得る。いくつかの実施形態において、神経ステントは、約1〜約12ミリメートルの拡張直径を有し得る。腹部大動脈瘤(AAA)ステントおよび胸部大動脈瘤(TAA)ステントは、約20〜約46ミリメートルの直径を有し得る。ステント100は、バルーン拡張型、自己拡張型、またはそれらの組み合せ型(例えば、米国特許第5,366,504号)であり得る。
【0041】
本発明のステントは、ステントグラフトの一部であってもよい。他の実施形態において、前記ステントは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、発泡PTFE、ポリエチレン、ウレタン、またはポリプロピレン製の生体適合性で無孔性または半多孔性ポリマーマトリックスを含むか、かつ/またはそのようなマトリックスに取り付けられる。体内プロテーゼは、例えば、米国特許第5,674,242号、2001年7月2日出願の米国特許出願第09/895,415号、2002年8月30日出願の米国特許出願第10/232,265号に記載のような、放出可能な治療薬剤、薬物、または医薬上有効な化合物を含有し得る、治療薬剤、薬物、または医薬上有効な化合物としては、例えば、抗血栓剤、酸化防止剤、抗炎症剤、麻酔剤、抗凝血剤、および抗生物質が挙げられる。
【0042】
上述の方法および実施形態は、ステントおよびステントグラフト以外の医療装置の形成にも用いられ得る。例えば、これらの方法および実施形態は、キムら(Kim et al)の米国特許第6,146,404号に記載の取り外し可能な血栓フィルター;ダニエルら(Daniel et al)の米国特許第6,171,327号に記載のものなどの血管内フィルター;およびスーンら(Soon et al)の米国特許第6,342,062号に記載のものなどの大静脈フィルターなどのフィルターの形成に用いられ得る。これらの方法および材料は、ガイドワイヤ、例えば、Meierの操縦可能ガイドワイヤの形成に用い得る。これらの方法および材料は、例えば、バシリら(Bashiri et al)の米国特許第6,468,266号およびウォーレスら(Wallace et al)の米国特許第6,280,457号に記載のような血管内動脈瘤治療に用いる血管閉塞装置、例えば、コイルの形成に用いられ得る。これらの方法および材料は、カテーテル強化ブレードを作成するワイヤの形成に用いられ得る。さらに、これらの方法および材料は、ピンセット、針、クランプ、およびメスなどの外科手術器具にも用いられ得る。
【0043】
さらなる実施形態を以下の実施例で示す。
【実施例】
【0044】
(実施例1)
少なくとも1.96cm/g(鉄)から2.86cm/g(タンタルの半分)までの高さの質量吸収係数を有するチタン−タンタル合金を以下のように配合する。チタンの原子質量係数(atomic mass coefficient)は1.21、タンタルの原子質量係数は5.72である。
【0045】
以下の式を用いて所望の放射線不透過性を得る。
[Tiの原子パーセント(atomic % Ti)×1.21]+[Taの原子パーセント(atomic % Ta)×5.72]=1.96〜2.86cm/g。
xの値を求めると:
(x)(1.21)+(1−x)(5.72)=1.96cm/gまたは2.86cm/g
x=0.85(85原子パーセントのTi)もしくは0.63(63原子パーセントのTi)、または逆に17原子パーセントのTaもしくは37原子パーセントのTa。
【0046】
17Ta−83Ti合金の原子パーセントから重量パーセントへの換算は以下の通りである:
Ti−Ta合金の1023原子中には、0.17×1023原子のTaと、0.83×1023原子のTiが存在する。
【0047】
0.17×1023原子のTa/6.02×1023原子/モル=0.028モルのTa
0.83×1023原子のTi/6.02×1023原子/モル=0.138モルのTi
(0.028モルのTa)(180.95グラム/モル原子量)=5.07グラムのTa
(0.138モルのTi)(47.88グラム/モル原子量)=6.61グラムのTi
5.07グラムのTa+6.61グラムのTi=11.68グラムの合金
6.61gのTi/11.68g=合金中57重量パーセントのTi
5.07gのTa/11.68g=合金中43重量パーセントのTa。
【0048】
83原子パーセントのTiと17原子パーセントのTa(57重量パーセントのTiと43重量パーセントのTa)の合金は、鉄と同等の予測質量吸収係数と、316Lステンレス鋼と同様な放射線不透過性とを有する。63原子パーセントのTiと37原子パーセントのTa(31重量パーセントのTiと69重量パーセントのTa)の合金は、タンタルの半分と同等の予測質量吸収係数を有する。これらの合金成分は、3.5×10−3未満の磁化率を有し、互いに溶け合う。タンタル−チタン二成分系状態図(ASM Handbook,第3巻、Alloy Phase Diagrams、ASM International、1992年、p.2374)は、43〜69重量パーセントのタンタルが室温下に固溶体二成分系(アルファおよびベータ)材料としてチタンに溶けることを示している。さらに、タンタル−チタン二成分系状態図は、43〜69パーセントのタンタル濃度を有する合金がアルファおよびベータ相微細構造を有することを示唆している。この相状態図に脆性相は見えない。
【0049】
(実施例2)
少なくとも1.96cm/g(鉄)から2.86cm/g(タンタルの半分)までの高さの質量吸収係数を有するチタン−モリブデン合金は以下のように配合する。
【0050】
以下の方程式を用いて所望の放射線不透過性を決定する。
[原子%のTi×1.21]+[原子%のMo×7.04]=1.96〜2.86cm/g。
【0051】
(x)(1.21)+(1−x)(7.04)=1.96cm/gまたは2.86cm/g
x=0.87(87原子パーセントのTi)もしくは0.72(72原子パーセントのTi)または逆に13原子パーセントのMoもしくは28原子パーセントのMo。
【0052】
13Mo−87Ti合金の原子パーセントから重量パーセントへの換算は以下の通り。
1023原子のTi−Mo合金中には、0.13×1023原子のMoと、0.87×1023原子のTiが存在する。
【0053】
0.13×1023原子のMo/6.02×1023原子/モル=0.022モルのMo
0.87×1023原子のTi/6.02×1023原子/モル=0.145モルのTi
(0.022モルのMo)(95.94グラム/モル原子量)=2.11グラムのMo
(0.145モルのTi)(47.88グラム/モル原子量)=6.94グラムのTi
2.11グラムのMo+6.94グラムのTi=9.05グラムの合金
6.96gのTi/9.05g=合金中77重量パーセントのTi
2.11gのMo/9.05g=合金中23重量パーセントのMo。
【0054】
87原子パーセントのTiと13原子パーセントのMo(77重量パーセントのTiと23重量パーセントのMo)の合金は、鉄と同等の予測質量吸収係数と、316Lステンレス鋼と同様な放射線不透過性とを有する。72原子パーセントのTiと28原子パーセントのMo(56重量パーセントのTiと44重量パーセントのMo)の合金は、タンタルの半分と同等の予測質量吸収係数を有し、したがって、タンタルの放射線不透過性の半分を有する。これらの合金成分は、3.5×10−3未満の磁化率を有し、互いに溶け合う。モリブデン−チタン二成分系状態図(ASM Handbook、第3巻、Alloy Phase Diagrams、ASM International、1992年、p.2,296)は、23〜44重量パーセントのモリブデンが室温下で固溶体一成分系(ベータ)または二成分系(アルファおよびベータ)材料としてチタンに溶けることを示している。さらに、モリブデン−チタン二成分系状態図は、23〜44パーセントのモリブデン濃度を有する合金が、Ti−6A1−4Vなどの市販の工業的チタン合金に共通のベータまたはベータ+アルファ相微細構造を有するであろうことを示唆している。約850〜695℃の温度範囲での(例えば、アルゴンガス、空冷、または液体急冷剤による)冷却を迅速に実施して、実質量のアルファプライム、アルファダブルプライム、またはオメガ相の沈殿を防止することができる。
【0055】
(実施例3)
Ti−6A1−4V ELIと43重量パーセントのTaとの合金を製造する方法は以下の通りである。
【0056】
直径約7.62センチメートル(3″)のTi−6A1−4V ELIの丸棒〔例えば、米国ニュージャージー州モリスタウン(Morristown)所在のチタニウム・インダストリーズ社(Titanium Industries,Inc.)由来〕を入手し、約13.97センチメートル(5.5インチ)の長さに切断する。直径約1.27センチメートル(0.5インチ)のタンタルロッド〔例えば、米国ニューヨーク州ドブスフェリー(Dobbs Ferry)所在のレンバー(Rembar)社由来〕を入手し、約8.255センチメートル(3.25インチ)の長さに切断する。チタン棒にドリルで直径約1.397/1.524センチメートル(0.55/0.6″)、深さ約11.43センチメートル(4.5″)の8個の穴を穿孔する。これらの穴に、長さ約8.255センチメートル(3.25″)、直径約1.27センチメートル(0.5″)の8本のタンタルロッドを挿入する。このアセンブリを、真空炉中1400℃で8時間加熱し、真空冷却する。そのアセンブリを真空アーク再溶解(VAR)電極ホルダーまでのホールエンドとガスタングステンアーク溶接(GTAWまたはGT)する。アセンブリを真空アークで再溶解し、インゴットを鋳造する。インゴットを真空炉中1400℃で8時間加熱し、真空冷却する。VARおよび熱処理を1回以上繰り返す。インゴットを直径約6.35セ
ンチメートル(2.5″)、長さ約10.16センチメートル(4″)のビレットに機械加工する。ビレットを軟シームレスステントチューブに改造する。
【0057】
(実施例4)
アーク溶解Ti−Ta合金ボタンインゴットを作成した。Ti−6A1−4Vロッドとタンタルロッドの50/50混合物(重量)から2つのインゴットを溶製した。純チタンロッドとタンタルロッドの50/50混合物(重量)から1つのインゴットを溶製した。それらのインゴットを冷間圧延および焼きなましして機械的および物理的特性試験用のストリップを形成した。
【0058】
これらのインゴットは、米国ペンシルベニア州バーウィン(Berwyn)所在のグッドフェロー社(Goodfellow Corporation)から入手した以下のロッドおよび充填材料から製造した。
【0059】
【表5】

【0060】
【表6】

ロッドを約2.54〜5.08センチメートル(1〜2″)の長さに切断し、アセトンで清浄し、デジタルスケールで秤量した。ロッドを重量別に2つの溶解群に分けた。原料をアーク溶解炉〔MRF ABJ−900モデル、米国ニューハンプシャー州サンクック(Suncook)所在のマテリアルズ・リサーチ・ファーネシス社(Materials Research Furnaces,Inc.)〕中で溶解させた。アーク溶解炉は350〜400ampで運転した。各合金に関して3回の溶解サイクルを実施した。
【0061】
図5を参照すると、拡大写真がアーク溶解後の3つのインゴットを示している。左側のインゴットはTi−50Ta合金である。他の2つのインゴットは50(Ti−6A1−4V)−50Ta合金である。溶解後、各インゴットをハンマーで10回叩いて、クラックを生じたり破砕したりしないかを観察した。3つのインゴットはいずれもクラックを生じたり破砕したりすることなくハンマー試験に耐えたが、ハンマーで叩くと変形した。この試験は材料の成形性評価として実施した。クラックの発生は、合金が冷間圧延するには脆すぎることを示唆し得る。
【0062】
厚さ約0.508〜0.635センチメートル(0.20〜0.25″)の棒材を冷間圧延用の出発材料として用いた。圧延ブランクの機械加工寸法を以下の表に列挙する。
【0063】
【表7】

機械加工した棒材を全体の厚さが50%減少するまで冷間圧延した。冷間圧延後の寸法を以下の表に列挙する。
【0064】
【表8】

冷間圧延したストリップを、真空熱処理炉中1200℃で60分間真空下に焼きなました後、真空冷却した。この熱処理の目的は、合金を均質化し続け、冷間加工した微細構造を再結晶させ、材料を軟化させて、さらなる冷間圧延を可能にすることであった。図6を参照すると、ストリップの表面上に細い亀裂が観察された。ストリップ#3は、長さに沿って小さいエッジクラックを有していた。これらの欠陥はいずれもさらなる冷間圧延に差し支えないほどであると判断された。
【0065】
3つのストリップを厚さが全体的に50%減少するまで冷間圧延した。圧延後のストリップ寸法を表IXに列挙する。
【0066】
【表9】

図7を参照すると、ストリップの表面およびエッジは拡大せずに調べた。ストリップ#1は細かいエッジクラックを有していた。ストリップ#2はクラックを有さなかった。ストリップ#3はエッジクラックを有していた。
【0067】
冷間圧延したストリップを真空熱処理炉中1000℃で30分間真空下に焼きなました。この熱処理の目的は、冷間加工した微細構造を再結晶させ、材料を軟化させてさらなる冷間圧延を可能にすることであった。ストリップを約0.0635センチメートル(0.025″)の厚さに冷間圧延した。その寸法を表Xに示す。
【0068】
【表10】

図8を参照すると、ストリップ#1および#3は多数の小さいエッジクラックを有した。ストリップ#2はエッジクラックを有さなかった。
【0069】
ストリップを真空熱処理炉中850℃で30分間ベータ溶液処理し、真空冷却した。これらのストリップを金属組織解析に供した。これらのストリップについて引張試験片加工試験〔メトカット・リサーチ・アソシエイツ社(Metcut Research Associates,Inc.)(米国オハイオ州シンシナティ(Sincinnati)所在)を実施した。引張結果は、約586.075×10〜792.925×10Pa(85〜115ksi)UTS、65〜105YS、および5〜25%の伸びであった。
【0070】
Ti−6A1−4V、純チタン、およびタンタル材料を粉末金属形態で溶解した。これらのインゴットは、最終的に厚さを50%減少させるまで冷間圧延し得るような成形性を有さないことがあった。微紛金属の大きな表面積は有意な汚染をインゴットに持ち越す可能性があり、そのために、合金の延性を低下させ得る。この実験では、炉充填用の粉末金属の代わりに固体ロッドを用いた。ロッドの(粉末に比べて)小さい表面積は、良好なインゴット延性をもたらすものと思われる。
【0071】
本明細書に言及されているすべての刊行物、特許出願、参考文献、特許はそのまま本明細書に文献援用される。
他の実施形態は特許請求の範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1A】それぞれ圧縮および拡張状態のステントの斜視図。
【図1B】それぞれ圧縮および拡張状態のステントの斜視図。
【図2A】バルーン拡張型ステントの送出を示す図。
【図2B】バルーン拡張型ステントの送出を示す図。
【図2C】バルーン拡張型ステントの送出を示す図。
【図3】ステント製造プロセスの流れ図。
【図4A】医療装置の製造プロセスを示す図。
【図4B】医療装置の製造プロセスを示す図。
【図4C】医療装置の製造プロセスを示す図。
【図4D】医療装置の製造プロセスを示す図。
【図4E】医療装置の製造プロセスを示す図。
【図4F】医療装置の製造プロセスを示す図。
【図5】顕微鏡写真。
【図6】顕微鏡写真。
【図7】顕微鏡写真。
【図8】顕微鏡写真。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルーン拡張型医療用ステントであって、
約20重量%以上のTiと、Zr、TaまたはMoのうちの少なくとも1種とを有する合金を含むほぼチューブ状の本体を備え、前記合金は約310.275×10Pa(約45ksi)以上の降伏強度と、約+1以下の磁化率と、約1.9cm/g以上の質量吸収係数とを有する、ステント。
【請求項2】
前記合金が、約620.55×10Pa(約90ksi)以上のUTSと約40以上の引張伸び率(パーセント)とを有する、請求項1に記載のステント。
【請求項3】
降伏強度が約344.75×10Pa(約50ksi)以上、ピーク荷重強度(パーセント)が約30以上、UTSが約620.55×10Pa(約90ksi)以上、破壊強度パーセントが約40以上である、請求項1に記載のステント。
【請求項4】
磁化率が約3.5×10−3以下である、請求項1に記載のステント。
【請求項5】
質量吸収係数が約2.9cm/g以下である、請求項1に記載のステント。
【請求項6】
前記合金が約50重量パーセント以上のTiを含む、請求項1に記載のステント。
【請求項7】
前記合金が20重量パーセント以上のZr、TaおよびMoのいずれか、またはそれらの組み合せを含む、請求項1に記載のステント。
【請求項8】
前記合金が80重量パーセント以下のZr、TaおよびMoのいずれか、またはそれらの組み合せを含む、請求項1に記載のステント。
【請求項9】
合金が10重量パーセント以上のZrを含む、請求項1に記載のステント。
【請求項10】
前記合金が約50重量パーセントのZrを含む、請求項1に記載のステント。
【請求項11】
前記合金が約40重量パーセント以上のTaを含む、請求項1に記載のステント。
【請求項12】
前記合金が約75重量パーセント以下のTaを含む、請求項1に記載のステント。
【請求項13】
前記合金が約3重量パーセント以上のMoを含む、請求項1に記載のステント。
【請求項14】
前記合金が約20重量パーセント以下のMoを含む、請求項1に記載のステント。
【請求項15】
前記合金が、Ti−Ta、Ti−Mo、Ti−Zr、Ti−Ta−Mo、Ti−Ta−Zr、Ti−Ta−Zr−Mo,Ti−Zr−Mo、Ti6A1−4V−Ta、Ti6A1−4V−Mo、Ti6A1−4V−Zr、Ti6A1−4V−Ta−Mo、Ti6A1−4V−Ta−Zr、Ti6A1−4V−Ta−Zr−Mo、Ti6A1−4V−Zr−Mo、Ti−13Nb−13Zr、Ti−13Nb−13Zr−Mo、Ti−13Nb−13Zr−Ta、Ti−8A1−1Mo−1V、Ti−8A1−1Mo−1V−Zr、Ti−8A1−1Mo−1V−Ta、Ti−6A1−2Nb−1Ta−0.8Mo、およびTi−6A1−2Nb−0.8Mo−Zrのいずれかである、請求項1に記載のステント。
【請求項16】
前記合金が、40〜70重量パーセントのTaまたは25〜50重量パーセントのZr
と合金化された、CPチタン、Ti−6A1−4V、およびTi−6A1−4V ELIのいずれかの合金である、請求項1に記載のステント。
【請求項17】
前記合金が5〜20重量パーセントのMoを含む、請求項16に記載のステント。
【請求項18】
前記合金が、
43重量%のTa、
69重量%のTa、
25重量%のTa、
49重量%のZr、
43重量%のTa+5重量%のMo、
69重量%のTa+5重量%のMo、
25重量%のZr+5重量%のMo、
49重量%のZr+5重量%のMo、
43重量%のTa+10重量%のMo、
69重量%のTa+10重量%のMo、
25重量%のZr+10重量%のMo、
49重量%のZr+10重量%のMo、
22重量%のTa+13重量%のZr、
35重量%のTa+25重量%のZr
のいずれかと合金化されたCPチタンと、
43重量%のTa、
69重量%のTa、
25重量%のTa、
49重量%のZr、
43重量%のTa+5重量%のMo、
69重量%のTa+5重量%のMo、
25重量%のZr+5重量%のMo、
49重量%のZr+5重量%のMo、
43重量%のTa+10重量%のMo、
69重量%のTa+10重量%のMo、
25重量%のZr+10重量%のMo、
49重量%のZr+10重量%のMo、
22重量%のTa+13重量%のZr、
35重量%のTa+25重量%のZr、
のいずれかと合金化されたTi−6A1−4V ELIとのうちから選択される、請求項1に記載のステント。
【請求項19】
チューブ状本体が、約0.00381〜約0.0381センチメートル(約0.0015〜約0.0150インチ)の厚さを有する壁部分を含む、請求項1に記載のステント。
【請求項20】
チューブ状本体が治療薬剤を含有する、請求項1に記載のステント。
【請求項21】
身体の内腔内送出用カテーテルを含むシステムであって、カテーテルが、拡張可能部材と、拡張可能部材上に配置可能な請求項1に記載のステントとを有し、拡張可能部材が約1.5〜約14mmの最大直径まで拡張可能であるシステム。
【請求項22】
移植可能な医療装置であって、
約20重量パーセント以上のTiと、Zr、TaまたはMoのうちの少なくとも1種とを有する合金を含み、前記合金は約310.275×10Pa(約45ksi)以上の
降伏強度と、約+1以下の磁化率と、約1.9cm/g以上の質量吸収係数とを有し、該医療装置はフィルター、ガイドワイヤ、カテーテル、針、生検針、ステイプルまたはカニューレから選択される、医療装置。
【請求項23】
ステントを形成する方法であって、
約20重量パーセント以上のTiと、Zr、TaおよびMoのうちから選択される少なくとも1種の混和材とを含む合金を得る工程と、
TiおよびTi含有合金から選択されるチタン成分および混和材の固体アリコート同士を接触させる工程と、
前記接触工程の後に、前記アリコートを加熱する工程と、
前記接触工程の後に、前記アリコートを、鋳造、押出、引き抜きまたは圧延により機械加工する工程と、
前記アリコートを溶解させる工程と、
第1素材を形成する工程と、
前記合金を含むチューブを形成する工程と、
前記チューブをステントに組み込む工程と
を含む方法。
【請求項24】
前記接触工程が、チタン成分または混和材からなり、空洞を有する本体を提供する工程と、前記空洞に混和材またはチタン成分を挿入する工程とを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記本体がロッドであり、前記空洞がロッド内の管腔である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記管腔がほぼロッドの軸線に沿って配置された長尺状の管腔である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記本体がチタン成分から形成されている、請求項24および26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記混和材が微粒子またはソリッドワイヤの形態にある、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記加熱工程がチタン成分と混和材との間に拡散を起こす工程を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項30】
チタン成分の融点の±10%内の温度に加熱する工程を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記機械加工工程の後に加熱する工程を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項32】
第1素材形成工程の後に、第1素材をさらなる混和材と接触させる工程と、第1素材をさらなるアリコートと接触した状態で溶解させる工程と、さらに多くの量の混和材を有する第2素材を形成する工程とを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項33】
溶解工程の前に、第1素材をさらなるアリコートと接触した状態で機械加工または加熱する工程を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
真空アーク再溶解、電子ビーム、プラズマまたは真空誘導溶解により溶解させる工程を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項35】
約106.5立方センチメートル(6.5立方インチ)以下の体積を有する第1素材を形成する工程を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項36】
第1素材が円柱形の形状を有する、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記チューブ形成工程が、引き抜きまたはシート圧延により第1素材からチューブを形成する工程を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項38】
前記チューブをステントに組み込む工程が、チューブを機械加工してチューブの壁に開口部を設ける工程を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項39】
前記ステントがバルーン拡張型血管ステントである、請求項に記載の方法。
【請求項40】
医療装置を形成する方法であって、
約150℃以上の融点差を有する第1成分および第2成分の固体アリコート同士を接触させて、第1成分と第2成分とを含む、元素または合金の多成分からなる金属合金を得る工程と、
前記接触工程の後に、前記アリコートに対して加熱および機械加工の少なくともいずれかを実施して第1素材を形成する工程と、
第1素材を溶解させる工程と、
第1素材から第2素材を形成する工程と、
合金を医療装置に組み込む工程と
を含む方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図4F】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−517536(P2007−517536A)
【公表日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−528084(P2006−528084)
【出願日】平成16年9月20日(2004.9.20)
【国際出願番号】PCT/US2004/030645
【国際公開番号】WO2005/030095
【国際公開日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(500332814)ボストン サイエンティフィック リミテッド (627)
【Fターム(参考)】