説明

バンドクランプ

【課題】この発明は、長尺状の配索物を、ねじれや軸方向の位置ズレが生じないように確実に固定できるバンドクランプを提供することを目的とする。
【解決手段】長尺状のハーネス200をバンド部50で拘束して車両パネル100に固定するバンドクランプ1であって、車両パネル100に装着して本体部10を車両パネル100に固定するアンカー部20と、本体部10から帯状に延出し、ハーネス200を拘束する2本のバンド部50と、バンド部50の挿通を許容するとともに、バンド部50のそれぞれに備えた咬合部51に咬み合う咬合爪42を有する挿入孔41を備え、バンド部50によるハーネス200の拘束状態を保持するロック部40とで構成し、挿入孔41を、2本のバンド部50の同時挿通を許容する構成とし、ロック部40を、挿入孔41に挿通したバンド部50の長手方向への移動を許容する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、車両パネル等の基材に長尺状の配索物を取付けるバンドクランプに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のボディパネル等の基材に長尺状の配索物であるワイヤハーネスを固定する方法として、特許文献1に示すようなバンドクランプが多く用いられている。
このようなバンドクランプは、アンカー部、バンド部及びバックル部(ロック部)が樹脂で一体成形されており、アンカー部をボディパネルに設けた固定孔に挿入して固定し、ワイヤハーネスの外周を巻き回したバンド部をバックル部に挿入することにより、バンド部に設けられた係止凹凸と、バックル部に設けられた逆行防止のロック爪とが嵌合してバンド部が固定される。
【0003】
このようにして、ワイヤハーネスをボディパネルに固定することができる特許文献1に示すようなバンドクランプは、構造がシンプルでコストが低く、ハンドガン等により簡単に固定できるという利点があり、多く用いられている。
【0004】
しかし、ワイヤハーネスの外周を巻き回したバンド部をバックル部に挿入する固定作業時において、ワイヤハーネスのねじれや、軸方向の位置ズレが生じやすく、ワイヤハーネスの所定の角度、所定の位置からずれた状態で固定される場合がある。
【0005】
この場合、車体のパネル穴にアンカーで取り付けるのが困難になったり、取り付けが可能であっても、ワイヤハーネスに過度のねじれや張力が加わってしまうことがあり、ワイヤハーネスの信頼性を低下することとなる。また、ずれた状態で固定された場合、固定位置のズレを修正する手間が必要となるといった問題があった。
【特許文献1】特開平08−149663号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、長尺状の配索物を、ねじれや軸方向の位置ズレが生じないように確実に固定できるバンドクランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、長尺状の配索物をバンド部で拘束して基材に固定するバンドクランプであって、前記基材に装着して本体部を前記基材に固定するアンカー部と、前記本体部から帯状に延出し、前記配索物を拘束する複数本のバンド部と、該バンド部の挿通を許容するとともに、前記バンド部のそれぞれに備えた咬合部に咬み合う咬合爪を有する挿通部を備え、前記バンド部による前記配索物の拘束状態を保持するロック部とで構成し、前記挿通部を、複数本の前記バンド部の同時挿通を許容する構成とし、前記ロック部を、前記挿通部に挿通したバンド部の長手方向への移動を許容する構成としたことを特徴とする。
【0008】
この発明の態様として、前記バンド部の先端付近に、前記バンド部同士が互いに係止する係止手段を備えることができる。
また、この発明の態様として、前記本体部及び前記ロック部のうち少なくとも一方における前記配索物を拘束する拘束側面に、突起を備えることができる。
【0009】
また、この発明は、長尺状の配索物を基材に固定する配索物の固定方法であって、前記基材に装着して本体部を前記基材に固定するアンカー部と、前記本体部から帯状に延出し、前記配索物を拘束する複数本のバンド部と、該バンド部の挿通を許容するとともに、前記バンド部のそれぞれに備えた咬合部に咬み合う咬合爪を有する挿通部を備え、前記バンド部による前記配索物の拘束状態を保持するロック部とで構成したバンドクランプを用い、前記挿通部に前記配索物を挟む前記複数のバンド部を挿入し、前記挿通部に挿通した前記バンド部に沿って前記ロック部を移動させ、前記本体部、前記複数のバンド部及び前記ロック部によって前記配索物の外周を囲繞するとともに、前記アンカー部を前記基材に装着して前記配索物を前記基材に固定することを特徴とする。
【0010】
この発明の態様として、前記本体部及び前記ロック部のうち少なくとも一方における前記配索物を拘束する拘束側面に、突起を備え、該突起に、前記配索物の外周が接する態様で囲繞することができる。
【0011】
上記配索物は、複数の電線や光ケーブル線等を束ね、鞘管やテーピングによってケーブル状に形成されたワイヤハーネスや、中空のホース等であることを含む。
上記基材は、車両のボディパネルであることを含む。
【0012】
上記係止手段は、2本のバンド部の対向面における一方側に備えた凸部と、他方側に備えた凹部とで構成し、凹部に凸部が嵌合して係止する係止手段、あるいは一方のバンド部に備えて他方のバンド部を係止する係止手段であることを含む。
上記突起は、配索物表面に引っ掛るスパイク等の突起であることを含む。
【0013】
上記複数本の前記バンド部の同時挿通を許容する前記挿通部は、バンド部の本数と同じ数の挿通部を備え、各挿通部に一本ずつのバンド部を挿通する構成、あるいは、バンド部の本数より少ない数の挿通部を備え、各挿通部に複数本ずつのバンド部を挿通する構成であることを含む。
【0014】
長尺状の配索物をバンド部で拘束して基材に固定するバンドクランプを、前記基材に装着して本体部を前記基材に固定するアンカー部と、前記本体部から帯状に延出し、前記配索物を拘束する複数本のバンド部と、該バンド部の挿通を許容するとともに、前記バンド部のそれぞれに備えた咬合部に咬み合う咬合爪を有する挿通部を備え、前記バンド部による前記配索物の拘束状態を保持するロック部とで構成し、前記挿通部を、複数本の前記バンド部の同時挿通を許容する構成とし、前記ロック部を、前記挿通部に挿通したバンド部の長手方向への移動を許容する構成としたことにより、複数本のバンド部で配索物を挟み込むとともに、複数本のバンド部が同時に挿通したロック部を配索物側に移動させることにより、複数本のバンド部とロック部とで配索物の外周の一部を囲繞して、基材に固定された本体部に配索物を固定することができる。したがって、基材の所定位置に配索物を固定することができる。
【0015】
なお、従来のバンドクランプのように、配索物の外周を巻き回したバンド部をバックル部に挿入して配索物を固定せず、ロック部を移動させて配索物を挟み込むバンド部で固定する、すなわち、配索物に接触しているバンド部を移動させずに固定するため、固定された配索物に位置ズレやねじれの生じない固定を実現することができる。したがって、品質及び信頼性の高いワイヤハーネスを提供することができる。
【0016】
また、前記バンド部の先端付近に、前記バンド部同士が互いに係止する係止手段を備えたことにより、配索物を挟み込む複数本のバンド部をロック部が移動する際に、複数本のバンド部にズレが生じ、そのズレによって、固定された配索物に位置ズレやねじれが生じることを防止している。
【0017】
また、前記本体部及び前記ロック部のうち少なくとも一方における前記配索物を拘束する拘束側面に、突起を備えたことにより、バンド部とロック部による配索物の本体部への固定をより確実にすることができる。さらには、突起により配索物に、回転方向の力や位置ズレ方向の力が付与された場合であっても、突起によって位置ズレやねじれが生じることを防止することができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、長尺状の配索物を、ねじれや軸方向の位置ズレが生じないように確実に固定できるバンドクランプを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
【実施例1】
【0020】
車両パネル100にハーネス200を取付けた状態のバンドクランプ1の斜視図を示す図1と、同状態のバンドクランプ1の縦断面図を示す図2と、バンドクランプ1の取り付け方法について説明する説明図を示す図3とともに、バンドクランプ1について説明する。
【0021】
図2に示すように、車両パネル100は、車体の一部を構成する適宜の肉厚のパネルであり、ハーネス200の配索ルートに応じた所定箇所にバンドクランプ1を取付ける取付孔101を備えている。ハーネス200は車体内部に配索する電装系のケーブルであり、複数の被覆電線を束ねた円形断面の長尺体で形成している。
【0022】
本実施例のバンドクランプ1は、長尺状のハーネス200をバンド部50で拘束して車両パネル100に固定するワイヤハーネスの取付治具であり、本体部10と、本体部10を車両パネル100に固定するアンカー部20と、ハーネス200を拘束する2本のバンド部50(50a,50b)と、バンド部50によるハーネス200の拘束状態を保持するロック部40とで構成している。
【0023】
アンカー部20は車両パネル100に備えた取付孔101に挿入して本体部10を車両パネル100に固定する。
バンド部50は、本体部10の上面10aから上方向に向かって帯状に延出している。
【0024】
ロック部40は、バンド部50の挿通を許容するとともに、バンド部50のそれぞれに備えた咬合部51に咬み合う咬合爪42を有する2つの挿通部41を備えている。なお、挿入孔41毎に各バンド部50を挿通するため、ロック部40には2本のバンド部50が同時に挿通することができる。さらには、ロック部40は挿入孔41に挿通した前記バンド部50に沿って移動することができる。
【0025】
バンドクランプ1の構成について詳述すると、バンドクランプ1は、平面視長方形の本体部10と、本体部10の上面10aから上方向に延出する2本のバンド部50と、2本のバンド部50の挿通を許容するロック部40と、本体部10の底面側に備えたアンカー部20とで構成され、これらは適宜の弾性を有する樹脂で一体形成されている。なお、図1においてバンド部50の先端部52は、バンド部50によるハーネス200の固定完了後に切断されるため、切断前の先端部52の付近を点線で示している。
【0026】
アンカー部20は、カサ部21と挿着部30とで構成している。カサ部21は、底面視円形状であり、適宜の肉厚で、本体部10の底面から下方に向かって外側に広がる底面開放の逆すり鉢形状に形成している。
挿着部30は、図2において詳細に示すように、本体部10の左右方向中央の底面から下方に突き出すように配置され、適宜の厚みを有する支柱部31と、該支柱部31の下端の左右両側から上方外向きに配した脚部32とで構成され、支柱部31と脚部32とで正面視いかり形状を形成している。
【0027】
各脚部32の上端外側には、上記取付孔101の下端の角部が係止する係止フック32aを3段備えている。なお、各脚部32を幅方向内側に押圧することによって、外側方向の付勢力を得ることができる。また、3段の係止フック32aは、取付ける車両パネル100の肉厚や取付孔101の径に適した係止フック32aが係止する構成である。
【0028】
バンド部50は、本体部10の上面10aにおいて左右方向(図2において左右方向)に適宜の間隔を隔てた位置から上向きに延出する帯状であり、内面側、すなわち2本のバンド部50の対向面には、図2のa部拡大図に示すように、帯状の長さ方向に連続する凹凸で形成された咬合部51を備えている。また、バンド部50の先端部52は、幅をわずかに狭めて形成するとともに、拘束するハーネス200の径に応じた長さに形成している。
【0029】
ロック部40は、平面視奥行き方向(図2の紙面の表裏方向)に長い略直方体形状であり、左右方向に所定間隔を隔てて備え、ロック部40を上下方向に貫通する奥行き方向に長いスリット状の2つの挿入孔41を備えている。なお、挿入孔41の内部における左右方向中央側には、バンド部50の咬合部51と係止し、バンド部50の抜け出し、すなわちバンド部50の挿入方向と反対方向の逆行を阻止する咬合爪42を備えている。また、ロック部40は、挿入孔41に挿入されたバンド部50を本体部10側方向へ移動することができる。
【0030】
上述したような構成のバンドクランプ1を、ハーネス200に装着し、車両パネル100に取付ける取付け方法について、図3とともに説明する。
まず、2本のバンド部50のうち一方のバンド部50aの先端部52の付近にロック部40を装着したバンドクランプ1のアンカー部20を車両パネル100の取付孔101に装着する(図3(a)参照)。詳しくは、アンカー部20の挿着部30を取付孔101に挿入し、カサ部21で車両パネル100の上面を押圧するまで、取付孔101に挿着部30を挿入して、バンドクランプ1を車両パネル100の上面側から取付ける。
【0031】
ここで、脚部32は取付孔101の側面によって内側に押圧され、最下段の係止フック32aが取付孔101の下端角部に係止する。このとき、係止フック32aで取付孔101の下端角部に係止するとともに、取付孔101の側面を外側に付勢する脚部32によって車両パネル100の下面側に固定したバンドクランプ1は、車両パネル100の上面を変形したカサ部21で押圧する。
【0032】
すなわち、車両パネル100の下面側に係止フック32aで固定した脚部32と、車両パネル100の上面を押圧するカサ部21とで車両パネル100を上下方向から挟み込んでバンドクランプ1を車両パネル100に取付ける。
この状態で、図3(b)に示すように、本体部10の上面10aにおいて、一方のバンド部50aと他方のバンド部50bとの間にハーネス200を配策し、ロック部40が装着された一方のバンド部50aと他方のバンド部50bとをハーネス200の中央上方で合わせ、バンド部50bの先端部52をロック部40の他方側の挿入孔41に下方から挿入する(図3(c)参照)。
【0033】
そして、ロック部40を本体部10側方向に移動させ、本体部10の上面10aとバンド部50とでハーネス200の外周を締め付けるように囲繞し、ロック部40の上面付近の切断ラインCLでバンド部50の先端部52を切断して(図3(d)参照)、バンドクランプ1によるハーネス200の車両パネル100への固定を完了する。
【0034】
このように、バンドクランプ1により、長尺状のハーネス200をバンド部50で拘束して車両パネル100に固定することができる。また、2本のバンド部50でハーネス200を挟み込むとともに、2本のバンド部50が同時に挿通されたロック部40を本体部10側方向に移動させることにより、2本のバンド部50とロック部40とでハーネス200の外周の一部を囲繞して、車両パネル100に固定された本体部10にハーネス200を固定することができる。
【0035】
このとき、バンド部50の咬合部51とロック部40の挿入孔41内部に備えた咬合爪42とが係止するため、一旦ハーネス200側に移動させたロック部40の先端部52側方向への移動は防止され、バンド部50とロック部40とによるハーネス200の固定が不用意に緩むことを防止している。
【0036】
なお、従来のバンドクランプのように、ハーネス200の外周を巻き回したバンド部をバックル部に挿入してハーネス200を固定せず、ハーネス200を挟み込むバンド部50に沿ってロック部40を移動させて固定する、すなわち、ハーネス200に接触しているバンド部50を移動させずに固定するため、ハーネス200に対して左右対称に力がかかり、固定されたハーネス200に位置ズレやねじれの生じない固定構造を実現することができる。したがって、品質及び信頼性の高いワイヤハーネスの固定方法を提供することができる。
【0037】
また、上記構成により、固定されたハーネス200に位置ズレやねじれの生じない固定構造を実現することができるため、締め付け開始時に、ハーネス200を所定の角度に合わせておけば、その後、ロック部40を移動して締め付けを行なっても、そのままの角度で固定され、ハーネス200がねじれて固定されることがない。
【0038】
したがって、最初にセットした角度のままでハーネス200締め付けられるので、ねじれや位置ズレを見込んでハーネス200を配索する必要がなく、配索作業が容易となり、作業ミスの発生を抑制することができる
また、ロック部40をバンド部50上でハーネス200側に移動させてハーネス200を締め付けて固定しているため、径の異なるハーネス200であってもロック部40の移動量を調整することで確実に締め付けて固定することができ、各種径に合わせたバンドクランプを用意せずともバンドクランプ1で対応することができ、部品種類の削減ができる。
【0039】
なお、上記1においてはロック部40に2つの挿入孔41を備え、各挿入孔41にそれぞれ1本ずつのバンド部50を挿通する構成であったが、1つのロック部40に対して1つの挿入孔41を備え、1つの挿入孔41に2本のバンド部50を同時に挿通する構成であってもよい。
【実施例2】
【0040】
次に、車両パネル100にハーネス200を取付けた状態であり、先端部52の付近を切断する前の第2の実施形態のバンドクランプ1’の斜視図を示す図4と、同状態のバンドクランプ1’の縦断面図を示す図5と、バンドクランプ1’の取り付け方法について説明する説明図を示す図6とともに、バンドクランプ1’について説明する。
【0041】
バンドクランプ1’は、バンド部50’の先端部52の付近に、バンド部50同士が互いに係止する係止手段60を備えるとともに、本体部10及びロック部40’それぞれにおける前記配索物を拘束する拘束側面、すなわち本体部10における上面10a及びロック部40’における底面40aに、スパイク70を備えている。
【0042】
なお、バンドクランプ1’における本体部10及びアンカー部20、並びにバンドクランプ1’を取り付ける取付孔101を備えた車両パネル100は上述の第1の実施形態と同様であり、説明を省略する。
【0043】
バンドクランプ1’は、樹脂で一体成形された本体部10とアンカー部20とバンド部50’(50a’,50b’)、及びバンド部50’の挿通を許容する挿入孔41’を備えたロック部40’とで構成している。
【0044】
バンド部50’は、第1の実施形態のバンド部50と同様の形状で形成され、バンド部50’の外面側に咬合部51を備えるとともに、先端部52の付近の内面側に係止手段60を備えている。
【0045】
係止手段60は、図4に示すように、2本のバンド部50’のうち一方側のバンド部50a’の先端部52の付近に備えた嵌合凸部61と、他方側のバンド部50b’の先端部52の付近に配置し、バンド部50a’の嵌合凸部61の挿入嵌合を許容する嵌合凹部62とで構成している。
本体部10の上面10aにおけるバンド部50a’とバンド部50b’の基部の間には、奥行き方向に長く、倒位の三角柱形状のスパイク70aを備えている。
【0046】
ロック部40’は、第1の実施形態のロック部40と同様に平面視奥行き方向(図2の紙面の表裏方向)に長い略直方体形状で形成され、ロック部40’を上下方向に貫通する奥行き方向に長いスリット状の2つの挿入孔41’を備えている。
【0047】
なお、挿入孔41’の左右方向外側面には、バンド部50’の外面側に備えた咬合部51と係止し、バンド部50の抜け出し、すなわちバンド部50の挿入方向と反対方向の逆行を阻止する咬合爪42’を備えている。
さらには、ロック部40’の底面40aには、スパイク70aと同様の倒位の三角柱形状のスパイク70bを備えている。
【0048】
なお、バンド部50における先端部52の付近の内側、すなわち対向面側に係止手段60を備えたことにより、嵌合凸部61が挿入孔41’の通過の支障となる惧れがあるため、咬合爪42’を挿入孔41’の左右外側面に備えるとともに、バンド部50の外側面に咬合部51を備えている。
【0049】
また、上記スパイク70a及びスパイク70bは、図5に示すように、バンド部50’とロック部40’とでハーネス200の外周を締め付けて固定した際に、ハーネス200の外表面に食い込むこととなり、本体部10やロック部40’とハーネス200の摩擦力が向上することとなり、例えばバンド部50’とロック部40’とで締め付けて固定した際にハーネス200に回転力や位置ズレが生じるような負荷がかかった場合であっても、スパイク70(70a,70b)の食い込み効果によって、固定されたハーネス200にねじれや位置ズレが生じることを防止している。
【0050】
上述したような構成のバンドクランプ1’に、ハーネス200を装着し、車両パネル100に取付ける取付け方法について、図6とともに説明する。
第1の実施形態における取付孔101へのバンドクランプ1の取り付け、及び取り付けられたバンドクランプ1へのハーネス200の配策と同様に、図6(a)に示すように、取付孔101に挿着部30を挿入してバンドクランプ1’を車両パネル100に取り付け、そのバンドクランプ1’にハーネス200を配策する。このとき、図6(a)に示すように、スパイク70a上にハーネス200が載置されることとなる。
【0051】
この状態で、図6(b)に示すように、ロック部40’が装着された一方のバンド部50a’と他方のバンド部50b’とをハーネス200の中央上方で合わせ、バンド部50b’の先端部52をロック部40’の他方側の挿入孔41’に下方から挿入する。
【0052】
そして、ロック部40’の上方でバンド部50a’の嵌合凸部61とバンド部50b’の嵌合凹部62とを嵌合させ、嵌合した係止手段60によってバンド部50a’とバンド部50b’とが長さ方向にズレない状態においてロック部40’を本体部10側方向に移動させ、本体部10上面とバンド部50’とでハーネス200の外周を締め付けるように囲繞する。
【0053】
そして、第1の実施形態における図3(d)に示すようなロック部40’の上面付近の切断ラインCLでバンド部50’の先端部52を切断して、バンドクランプ1’によるハーネス200の車両パネル100への固定を完了する。
なお、先端部52は切断しなくてもよい。
【0054】
このように、ロック部40’をハーネス200側に移動させて、バンド部50’とロック部40’とでハーネス200の外周を締め付けて固定するため、ロック部40’の底面40aのスパイク70b及び本体部10の上面10aのスパイク70aがハーネス200の外周面に食い込むような態様で固定されることとなる。
【0055】
したがって、本体部10やロック部40’とハーネス200の摩擦力が向上することとなり、例えばバンド部50’とロック部40’とで締め付けて固定した際にハーネス200に回転力や位置ズレが生じるような負荷がかかった場合であっても、スパイク70(70a,70b)の食い込み効果によって、固定されたハーネス200にねじれや位置ズレが生じることを防止している。
【0056】
また、バンド部50’の先端部52の付近に互いに嵌合する係止手段60を備え、嵌合した係止手段60によってバンド部50a’とバンド部50b’とが長さ方向にズレない状態においてロック部40’を本体部10側方向に両バンド部50’に対して同時に引っ張って移動させることにより、例えばバンド部50a’とバンド部50b’とがロック部40’の移動の際に長さ方向にズレることにより、バンド部50’によって固定されるハーネス200に回転方向の負荷がかかる惧れを防止している。したがって負荷が少なく、確実で信頼性のあるハーネス200の固定構造を実現することができる。
【0057】
なお、図7に示すように、先端部52の付近に係止手段60を備えたバンド部50’のバンド状部分の内側に、長さ方向に長い第2係止手段80を備えてもよい。
【0058】
詳しくは、第2係止手段80は、嵌合凸部61を備えたバンド部50a’において嵌合凸部61から基部に向かって配設した長さ方向の凹状レール81と、嵌合凹部62を備えたバンド部50b’において嵌合凹部62から基部に向かって配設した長さ方向の凸状レール82とで構成している。
【0059】
なお、凸状レール82は、バンド部50b’の表面から突出方向に向かって幅をわずかに広げて構成され、凸状レール82の突出方向への幅の広がりに対応して、凹状レール81も、バンド部50a’表面から内面に向かって幅をわずかに広げて構成されている。
【0060】
このような構成の凹状レール81と凸状レール82とは、それぞれの弾性変形によって嵌合するとともに、凸状レール82の凹状レール81からの抜け出し抵抗を増大している。
【0061】
また、ロック部40’は、第2係止手段80で長さ方向に渡って嵌合させた状態のバンド部50’の挿通を許容する挿入孔41’に中央に備え、ロック部40’の底面側における挿入孔41’の長さ方向両側にスパイク70b’を備えている。
【0062】
これにより、上記係止手段60による、固定されるハーネス200への負荷を防止するとともに、バンド部50a’とバンド部50b’とがバラけることを防止している。したがって、ハーネス200の固定後にロック部40’から上方のバンド部50’を切断しなくとも、バンド部50a’とバンド部50b’とが他の部位に支障する惧れを低減することができる。よって、切断工程を低減することもできる。
【0063】
さらに、ロック部40’の底面における挿入孔41’の長さ方向両側にスパイク70b’を備えているため、バンド部50’とロック部40’とで締め付けて固定した際にスパイク70b’の食い込み効果によって、固定されたハーネス200にねじれや位置ズレが生じることを防止することができる。
なお、凹状レール81と凸状レール82とは、バンド部50a’およびバンド部50b’のどちらに配置されてもよい。
【0064】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の配索物は、ハーネス200に対応し、
以下同様に、
基材は、車両パネル100に対応し、
挿通部は、挿入孔41,41’に対応し、
バンド部の先端は、先端部52に対応し、
本体部における拘束側面は、上面10aに対応し、
ロック部における拘束側面は、底面40aに対応し、
突起は、スパイク70に対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】車両パネルにハーネスを取付けた状態のバンドクランプの斜視図。
【図2】車両パネルにハーネスを取付けた状態のバンドクランプの縦断面図。
【図3】バンドクランプの取り付け方法について説明する説明図。
【図4】車両パネルにハーネスを取付けた状態であり先端部付近を切断する前の第2の実施形態のバンドクランプの斜視図。
【図5】車両パネルにハーネスを取付けた状態であり先端部付近を切断する前の第2の実施形態のバンドクランプの縦断面図。
【図6】第2の実施形態のバンドクランプの取り付け方法について説明する説明図。
【図7】車両パネルにハーネスを取付けた状態の第3の実施形態のバンドクランプの斜視図。
【符号の説明】
【0066】
1,1’…バンドクランプ
10…本体部
10a…上面
20…アンカー部
40,40’…ロック部
40a…底面
41,41’…挿入孔
42…咬合爪
50,50’…バンド部
51…咬合部
52…先端部
60…係止手段
70…スパイク
100…車両パネル
200…ハーネス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状の配索物をバンド部で拘束して基材に固定するバンドクランプであって、
前記基材に装着して本体部を前記基材に固定するアンカー部と、
前記本体部から帯状に延出し、前記配索物を拘束する複数本のバンド部と、
該バンド部の挿通を許容するとともに、前記バンド部のそれぞれに備えた咬合部に咬み合う咬合爪を有する挿通部を備え、前記バンド部による前記配索物の拘束状態を保持するロック部とで構成し、
前記挿通部を、
複数本の前記バンド部の同時挿通を許容する構成とし、
前記ロック部を、
前記挿通部に挿通したバンド部の長手方向への移動を許容する構成とした
バンドクランプ。
【請求項2】
前記バンド部の先端付近に、
前記バンド部同士が互いに係止する係止手段を備えた
請求項1に記載のバンドクランプ。
【請求項3】
前記本体部及び前記ロック部のうち少なくとも一方における前記配索物を拘束する拘束側面に、突起を備えた
請求項1または2に記載のバンドクランプ。
【請求項4】
長尺状の配索物を基材に固定する配索物の固定方法であって、
前記基材に装着して本体部を前記基材に固定するアンカー部と、前記本体部から帯状に延出し、前記配索物を拘束する複数本のバンド部と、該バンド部の挿通を許容するとともに、前記バンド部のそれぞれに備えた咬合部に咬み合う咬合爪を有する挿通部を備え、前記バンド部による前記配索物の拘束状態を保持するロック部とで構成したバンドクランプを用い、
前記挿通部に、前記配索物を挟む前記複数のバンド部を挿入し、
前記挿通部に挿通した前記バンド部に沿って前記ロック部を移動させ、前記本体部、前記複数のバンド部及び前記ロック部によって前記配索物の外周を囲繞するとともに、前記アンカー部を前記基材に装着して前記配索物を前記基材に固定する
配索物の固定方法。
【請求項5】
前記本体部及び前記ロック部のうち少なくとも一方における前記配索物を拘束する拘束側面に、突起を備え、
該突起に、前記配索物の外周が接する態様で囲繞することを特徴とする
請求項4に記載の配索物の固定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−213232(P2009−213232A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−52780(P2008−52780)
【出願日】平成20年3月4日(2008.3.4)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河AS株式会社 (571)
【Fターム(参考)】