バーニア式位置検出装置
【課題】装置の構造を簡素化することができ、かつ簡単な処理にて位置を検出することができるバーニア式位置検出装置を提供する。
【解決手段】回転板3の内側寄りに、磁極対が4つの内側磁極パターン6bを設け、回転板3の外側寄りに、磁極対が3つの外側磁極パターン7bを設ける。内側磁極パターン6bの対向位置に第1センサ部6aを設け、外側磁極パターン7bの対向位置に第2センサ部7aを設ける。第2センサ部7aは、外側磁極パターン7bに対して回転板3の回転方向に所定量ずらして配置される。このため、第1センサ部6a及び第2センサ部7aの信号組合せと、回転板3の検出角度とが一義的な値をとる。よって、第1センサ部6a及び第2センサ部7aの信号組合せを単に確認するだけで、回転板3の回転角度が検出可能となる。
【解決手段】回転板3の内側寄りに、磁極対が4つの内側磁極パターン6bを設け、回転板3の外側寄りに、磁極対が3つの外側磁極パターン7bを設ける。内側磁極パターン6bの対向位置に第1センサ部6aを設け、外側磁極パターン7bの対向位置に第2センサ部7aを設ける。第2センサ部7aは、外側磁極パターン7bに対して回転板3の回転方向に所定量ずらして配置される。このため、第1センサ部6a及び第2センサ部7aの信号組合せと、回転板3の検出角度とが一義的な値をとる。よって、第1センサ部6a及び第2センサ部7aの信号組合せを単に確認するだけで、回転板3の回転角度が検出可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの検出手段から出力される検出信号の信号組合せにより、被測定物の位置を検出するバーニア式位置検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被測定物の位置を精度よく検出する位置検出装置として、図8に示すようなバーニア式位置検出装置81(例えば特許文献1等)が知られている。バーニア式位置検出装置81には、円板状の回転板82が軸83回りに回転可能に形成されている。回転板82には、N極及びS極の磁極対が軸83回りに沿って複数配列された磁極パターン84,85が、回転板82の径方向の内外に一対形成されている。本例の場合、径方向内側に位置する内側磁極パターン84には、磁極対が4組形成され、径方向外側に位置する外側磁極パターン85には、磁極対が3組形成されている。
【0003】
図9及び図10に示すように、内側磁極パターン84に対向する位置には、内側磁極パターン84から放射される磁界を検出する一対の内側磁気センサ部86,87が設けられている。内側磁気センサ部86,87は、内側磁極パターン84の横において磁極の配列方向に並び配置されている。具体的に言うと、一方の内側磁気センサ部86は、内側磁極パターン84の紙面左端のN極において磁極配列方向の真ん中に配置され、他方の内側磁気センサ部87は、そのN極と隣のS極との境目に配置されている。内側磁気センサ部86は、内側磁極パターン84から検出した磁界を、図11(a)に示すsin波に準じた検出信号Sa1でコントローラ88に出力する。また、内側磁気センサ部87は、内側磁極パターン84から検出した磁界を、図11(a)に示すcos波に準じた検出信号Sa2でコントローラ88に出力する。
【0004】
外側磁極パターン85に対向する位置には、外側磁極パターン85から放射される磁界を検出する一対の外側磁気センサ部89,90が設けられている。外側磁気センサ部89,90は、内側磁気センサ部86,87と同様の位置条件にて配置されるとともに、外側磁気センサ部89から図11(b)に示すsin波に準じた検出信号Sb1がコントローラ88に出力され、外側磁気センサ部90から図11(b)に示すcos波に準じた検出信号Sb2がコントローラ88に出力される。
【0005】
コントローラ88は、内側磁気センサ部86,87から取得したsinθ及びcosθを基にarctanθを求め、sinθ及びcosθと、求めたarctanθとを基に、内側磁極パターン84に準じた回転出力を演算する。コントローラ88は、外側磁気センサ部89,90から取得したsinθ及びcosθを基にarctanθを求め、sinθ及びcosθと、これらから求まるarctanθとを基に、外側磁極パターン85に準じた回転出力を演算する。角度検出においてarctanθを算出するのは、1つのsinθ及びcosθの組合せに対し、角度が2通り存在することから、arctanθを算出して、これら2つの値を仕分けるためである。
【0006】
コントローラ88は、内側磁気センサ部86,87から求まる回転出力と、外側磁気センサ部89,90から求まる回転出力との信号組合せを基に、回転板82の回転角度(回転位置)を算出する。コントローラ88は、例えば分解能「72」で回転板82の回転角度を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−267867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、背景技術で述べた角度演算では、内側に2つのセンサ部86,87を配置し、外側に2つのセンサ部89,90を配置するというように、内外で合計4つのセンサ部品が必要となっていた。このため、センサ部品の個数を減らしたいニーズがあった。また、背景技術の角度演算は、センサ部86,87(89,90)から得たsinθ及びcosθからarctanθを演算し、これら3つのパラメータを使用する計算となっている。このため、演算処理が複雑で、時間を要するという問題もあった。
【0009】
本発明の目的は、装置の構造を簡素化することができ、かつ簡単な処理にて位置を検出することができるバーニア式位置検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記問題点を解決するために、本発明では、被測定物及びその支持物の間に、これら一方に配置された検出部と他方に配置された被検出部との組からなる位置検出部が複数設けられ、第1位置検出部が出力する第1検出信号と、第2位置検出部が出力する第2検出信号との信号組合せにより、前記被測定物の位置を検出するバーニア式位置検出装置において、位置検出の分解能の単位のときに前記第1位置検出部及び前記第2位置検出部が各々出力する検出信号を単位検出値とすると、それぞれの当該単位検出値は、交流波をとる前記検出信号の1波長内において2つの同じ値をとるように設定されていることを要旨とする。
【0011】
この構成によれば、第1位置検出部から出力される第1検出信号と、第2位置検出部から出力される第2検出信号との信号組合せが、被測定物を分解能の単位で位置検出するときの各位置において一義的に決まる。よって、被測定物の位置を2つの位置検出部により検出することが可能となるので、装置の構造を簡素化することが可能となり、さらに簡素な処理にて位置を検出することも可能となる。
【0012】
本発明では、前記信号組合せと角度とが一義的に決まらない場合、前記第1位置検出部及び第2位置検出部の一方において、前記検出部及び前記被検出部の位置関係を調整することを要旨とする。
【0013】
この構成によれば、信号組合せと角度とが一義的に決まらない場合であっても、部品の位置を調整することにより、信号組合せと角度とを、一義的な関係を満足するような値に設定することが可能となる。
【0014】
本発明では、前記第1位置検出部及び前記第2位置検出部は、(a)前記検出信号の1波長を等分割するときの数を分割数とすると、前記第1位置検出部の分割数と、前記第2位置検出部の分割数とが、ともに偶数であること、(b)前記分割数が4以上の数値で割り切れること、(c)位置検出の分解能が、前記第1位置検出部の分割数と前記第2位置検出部の分割数との最小公倍数により設定されること、(d)交流波の前記検出信号が、1波長内において前記単位検出値が2つの同じ値をとるように設定されることの以上の(a)〜(d)の条件が設定されていることを要旨とする。
この構成によれば、所望の信号組合せを、より確実に得ることが可能となる。
【0015】
本発明では、前記第1位置検出部及び前記第2位置検出部の一方が検出信号として正弦波を出力し、他方が検出信号として余弦波を出力するときに、前記第1位置検出部及び前記第2位置検出部がとる位置を基準位置とすると、前記第1位置検出部及び前記第2位置検出部の一方において、前記検出部及び前記被検出部の一方を他方に対して移動方向にずらし配置することにより、前記単位検出値が2つの同じ値をとるように設定されていることを要旨とする。
【0016】
この構成によれば、例えば被検出部を従来から位置や形状等を変更することなく、そのまま使用することが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、装置の構造を簡素化することができ、かつ簡単な処理にて位置を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】一実施形態のバーニア式位置検出装置の斜視図。
【図2】回転板の平面図。
【図3】回転板に形成された磁極パターンの構成図。
【図4】位置検出センサから出力される検出信号の波形図。
【図5】信号組合せと角度との関係を示す割り付け表。
【図6】バーニア式位置検出装置のブロック図。
【図7】本願の発明の思想を説明する例示図。
【図8】従来のバーニア式位置検出装置の構成図。
【図9】回転板に形成された磁極パターンの構成図。
【図10】バーニア式位置検出装置のブロック図。
【図11】(a),(b)は内外の各センサ部が出力する検出信号の波形図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を具体化したバーニア式位置検出装置の一実施形態を図1〜図7に従って説明する。
図1に示すように、バーニア式位置検出装置1のケース2には、略円板状の回転板3が中心の軸4回りに回転可能に枢支されている。回転板3は、位置検出する物品の動きに同期して軸4回りに回転する。なお、ケース2が支持物に相当し、回転板3が被測定物に相当する。
【0020】
ケース2と回転板3との間には、回転板3の回転角度(回転位置)を検出する位置検出センサ5が複数(本例は2つ)設けられている。2つの位置検出センサ5は、回転板3の径方向に並び配置されるとともに、例えば磁気センサが使用される。本例の場合、図1の径方向内側を第1位置検出センサ6とし、図1の径方向外側を第2位置検出センサ7とする。なお、位置検出センサ5〜7が位置検出部を構成し、第1位置検出センサ6が第1位置検出部に相当し、第2位置検出センサ7が第2位置検出部に相当する。
【0021】
ケース2の内壁面8において径方向内側寄りの位置には、第1位置検出センサ6のセンシング部品として第1センサ部6aが設けられている。また、ケース2の内壁面8において径方向外側寄りの位置には、第2位置検出センサ7のセンシング部品として第2センサ部7aが設けられている。第1センサ部6a及び第2センサ部7aは、例えばMRE(磁気抵抗素子)やホール素子等が使用されている。第1センサ部6a及び第2センサ部7aは、検出した磁界に応じた検出信号を出力する。なお、第1センサ部6a及び第2センサ部7aが検出部を構成する。
【0022】
図2に示すように、回転板3には、径方向内側寄りの位置に、軸4回りにN極及びS極の磁極対が円環状に複数並んだ内側磁極パターン6bが形成されている。内側磁極パターン6bは、4つの磁極対からなる。また、回転板3には、径方向外側寄りの位置に、軸4回りにN極及びS極の磁極対が円環状に複数並んだ外側磁極パターン7bが形成されている。外側磁極パターン7bは、3つの磁極対からなる。なお、内側磁極パターン6b及び外側磁極パターン7bが被検出部を構成する。
【0023】
本例の第1位置検出センサ6及び第2位置検出センサ7は、以下の4つの条件を満たすように設定されている。なお、本例の場合は、第1位置検出センサ6及び第2位置検出センサ7の交流波の各出力において、その1波長(1つの磁極対)を等分割するときの数を分割数と言うことにする。
【0024】
[条件]
・第1位置検出センサ6の分割数をn1とし、第2位置検出センサ7の分割数をn2とすると、分割数n1,n2がともに偶数に設定されること。
・分割数n1,n2が、ともに4以上の数値で割り切れること。
・位置検出の分解能が、分割数n1,n2の最小公倍数により設定されること。
・分解能の単位で第1位置検出センサ6及び第2位置検出センサ7が各々出力するセンサ出力が、1つの磁極対内(センサ出力の1波長内)において2つの同じ角度をとること。
【0025】
これら条件を満たすことで第1位置検出センサ6及び第2位置検出センサ7がとる構造を以下に説明する。本例の場合、第1位置検出センサ6の分割数n1が「18」、第2位置検出センサ7の分割数n2が「24」であることから、本例のバーニア式位置検出装置1の分解能は、「18」と「24」の最小公倍数である「72」となっている。よって、本例のバーニア式位置検出装置1は、回転板3の回転角度を5度間隔で検出することが可能である。
【0026】
図3に示すように、第1センサ部6aは、内側磁極パターン6bの紙面左端に位置するN極において、磁極配列方向の真ん中に配置されている。第1センサ部6aは、図4に示すような検出磁界とセンサ出力との関係がsin波(正弦波)をとる第1検出信号Saを出力する。また、第1検出信号Saは、内側磁極パターン6bが第1センサ部6aに対して1磁極対移動するときに、1波長をとる波形となっている。
【0027】
図3に示すように、第2センサ部7aは、外側磁極パターン7bの紙面左端に位置するN極において、磁極配列方向の真ん中から磁極配列方向に所定量ずれた位置に配置されている。即ち、仮に第1位置検出センサ6が角度に応じた信号波形として正弦波を出力し、第2位置検出センサ7が角度に応じた信号波形として余弦波を出力するときの第1位置検出センサ6及び第2位置検出センサ7がとる位置を基準位置とすると、本例の第2センサ部7aは、この基準位置から磁極配列方向(回転板3の回転方向)に所定量ずらして配置されている。よって、第2センサ部7aは、図4に示すような横軸方向にオフセットした第2検出信号Sbを出力する。また、第2検出信号Sbは、外側磁極パターン7bが第2センサ部7aに対して1磁極移動するときに、1波長をとる波形となっている。
【0028】
本例の第1位置検出センサ6及び第2位置検出センサ7では、角度検出の分解能の単位で出力する検出値をそれぞれ単位検出値D1,D2とすると、これら単位検出値D1,D2は、1つの磁極対内において各々2つの角度(分解能単位の角度)を持つように設定されている。つまり、第1位置検出センサ6が所定の単位検出値D1をとるときや、第2位置検出センサ7が所定の単位検出値D2をとるとき、各々が2つの角度(同じ値)を持つように設定されている。このため、単位検出値D1のプロット点を繋いだ波形と、単位検出値D2のプロット点を繋いだ波形とは、それぞれ見かけ上、略台形の形状をとる。
【0029】
また、第1位置検出センサ6及び第2位置検出センサ7を、上記した条件に配置すると、第1位置検出センサ6の第1検出信号Saと、第2位置検出センサ7の第2検出信号Sbとの信号組合せは、図5の割り付け表9に示す関係をとる。つまり、第1検出信号Saの出力値と、第2検出信号Sbの出力値との組合せは、角度検出の各分解能でそれぞれ異なる値をとる。よって、第1検出信号Sa及び第2検出信号Sbの信号組合せから、回転板3の回転角度が一義的に決まる。
【0030】
図6に示すように、バーニア式位置検出装置1には、回転板3の回転角度をバーニア方式により演算するコントローラ10が設けられている。コントローラ10には、第1位置検出センサ6及び第2位置検出センサ7が接続されている。コントローラ10は、第1位置検出センサ6から出力される第1検出信号Saと、第2位置検出センサ7から出力される第2検出信号Sbとの信号組合せを基に、回転板3の回転角度を演算し、その演算回転角度を他のECUに出力する。
【0031】
次に、本例のバーニア式位置検出装置1の動作を、図2〜図7を用いて説明する。
図3に示す位置状態を回転開始の初期位置(つまり、回転角度「0」)とする。このとき、図5の割り付け表9に示すように、第1位置検出センサ6の出力値は、「0.000」をとり、第2位置検出センサ7の出力値は、「−0.131」をとる。従って、コントローラ10は、回転板3の回転角度を0度と検出する。
【0032】
初期位置から回転板3が例えば図2の反時計回りに回転したとする。このとき、図5に示すように、回転板3が5度回転すると、第1位置検出センサ6の出力値は、「0.342」をとり、第2位置検出センサ7の出力値は、「0.131」をとる。従って、コントローラ10は、回転板3の回転角度を5度と検出する。
【0033】
そして、回転板3が更に反時計回り方向に回転されると、その回転に応じて第1検出信号Sa及び第2検出信号Sbの出力が切り換わっていく。このとき、コントローラ10は、第1検出信号Sa及び第2検出信号Sbの信号組合せを逐次割り出し、この信号組合せを基に回転板3の回転角度を逐次演算し、演算回転角度をその他のECUに出力する。
【0034】
ところで、図5の割り付け表9を見ても分かるように、第1検出信号Sa及び第2検出信号Sbの信号組合せは、分解能の各角度において1つしか存在しない。つまり、第1検出信号Sa及び第2検出信号Sbの信号組合せと分解能の角度とが、一義的に決まる。よって、第1位置検出センサ6からの出力と第2位置検出センサ7からの出力との組合せを単に見るだけで、回転板3の回転位置を検出できることが分かる。
【0035】
ところで、場合によっては、第1検出信号Sa及び第2検出信号Sbの信号組合せと、求めたい角度とが、一義的に決まらないこともある。このときは、2つの磁極パターン6b,7bのうち、例えば一方を他方に対して回転方向に所定量ずらすことによって対処する。こうすれば、信号組合せと角度とが一義的な関係をとるので、位置検出センサ6,7の出力から直に問題なく角度検出することが可能となる。
【0036】
以上により、本例においては、上記条件を満足するように、第1位置検出センサ6及び第2位置検出センサ7を配置した。よって、図7に示すように、第1検出信号Sa及び第2検出信号Sbは、1つの磁極対内において各々単位検出値D1,D2をとるとき、2つの同じ角度をとる波形となる。つまり、第2センサ部7aを外側磁極パターン7bに対して基準位置から所定量だけずらし配置することにより、第1検出信号Sa及び第2検出信号Sbを、両方とも1つの磁極対内で同じ角度を持つ波形にする。
【0037】
このため、図5に示すように、第1位置検出センサ6の出力と第2位置検出センサ7の出力との組合せが、角度検出の分解能のそれぞれで一義的に決まる値をとる。よって、第1位置検出センサ6及び第2位置検出センサ7の各信号の値を単に見るだけで、回転板3の角度を検出することが可能となる。従って、少ないセンサ個数で角度検出が可能となり、ひいては簡素な演算にて角度位置を検出することも可能となる。
【0038】
本実施形態の構成によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)第1位置検出センサ6及び第2位置検出センサ7を、信号組合せが図5の割り付け表9をとるような配置としたので、回転板3の回転位置を第1位置検出センサ6及び第2位置検出センサ7の2つのセンサにて検出することが可能となる。このため、使用するセンサの個数が少なく済むので、バーニア式位置検出装置1の構成を簡素化することができる。また、第1検出信号Sa及び第2検出信号Sbの信号組合せを単に確認するだけで角度を割り出すことが可能となるので、簡素な処理にて回転板3の回転角度を検出することができる。
【0039】
(2)信号組合せと角度とが一義的に決まらない場合は、一対の磁極パターン6b,6bの一方を他方に対して所定量ずらし配置して調整する。よって、仮に信号組合せと角度とを一義的な関係を満たさない状況となっても、これに対処することができる。
【0040】
(3)第1位置検出センサ6及び第2位置検出センサ7の位置を、実施形態で述べた4つの条件に設定した。よって、第1検出信号Sa及び第2検出信号Sbの信号組合せを、1つの角度を一義的に持つような組合せへ、より確実に設定することができる。
【0041】
(4)第2センサ部7aを外側磁極パターン7bに対して基準位置から回転方向に所定角度ずらし配置することで、第1検出信号Sa及び第2検出信号Sbの信号組合せが一義的な角度をとる組合せとなるように設定した。よって、第1位置検出センサ6(第1センサ部6a、内側磁極パターン6b)や外側磁極パターン7bに変更を加える必要がないので、これらは従来のものをそのまま使用することができる。
【0042】
なお、実施形態はこれまでに述べた構成に限らず、以下の態様に変更してもよい。
・第1位置検出センサ6及び第2位置検出センサ7の分割数は適宜変更可能である。
・例えば回転板3が固定側で、センサ部6a,7aが回転側となっていてもよい。
【0043】
・位置検出センサ5は、磁気センサに限定されず、例えば光学センサ等の他の種類を採用してもよい。
・位置検出部は、無接点式の位置検出センサ5に限定されず、例えばスイッチ等の有接点式でもよい。
【0044】
・回転板3は、円板に限定されず、他の形状を用いてもよい。
・位置検出センサ5は、回転板3の径方向に並び配置されることに限定されず、例えば回転板3の厚さ方向に並び配置されてもよい。
【0045】
・第1検出信号Sa及び第2検出信号Sbの信号組合せが一義的な角度を有するように設定する場合、第2センサ部7aの位置を外側磁極パターン7bに対してずらし配置することに限定されない。例えば、第2センサ部7aの位置は従来と同じとし、外側磁極パターン7bを回転方向にずらし配置してもよい。
【0046】
・第1位置検出センサ6及び第2位置検出センサ7は、実施形態で述べた4つの条件を満たすことに限定されない。例えば、1つの磁極対内でセンサ出力が異なる2つの角度を有するだけの条件を持つものでもよい。
【0047】
・位置検出センサ5のパターン分割数は、2で割り切れない数値を採用してもよい。
・第1検出信号Sa及び第2検出信号Sbの信号組合せと、求めたい角度とが、一義的に決まらないときの調整は、磁極パターン側をずらすことに限定されず、例えばセンサ部側をずらし配置してもよい。
【0048】
・位置検出センサ5の個数は、2つに限らず、3つ以上設けてもよい。
・バーニア式位置検出装置1は、回転角度を検出する回転型に限定されず、直線移動する被測定物を検出するリニア型としてもよい。
【0049】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
(イ)請求項1〜4のいずれかにおいて、前記バーニア式位置検出装置は、回転動作する前記被測定物の回転角度を検出する。この構成によれば、回転する被測定物の回転角度を精度よく検出することが可能となる。
【0050】
(ロ)請求項1〜4、前記技術的思想(イ)のいずれかにおいて、前記位置検出部は、無接点式である。この構成によれば、接点部において部品接触等による劣化がないので、装置の耐久性を確保することが可能となる。
【符号の説明】
【0051】
1…バーニア式位置検出装置、2…支持物としてのケース、3…被測定物としての回転板、5…位置検出部を構成する位置検出センサ、6…位置検出部(第1位置検出部)を構成する第1位置検出センサ、6a…検出部を構成する第1センサ部、6b…被検出部を構成する内側磁極パターン、7…位置検出部(第2位置検出部)を構成する第2位置検出センサ、7a…検出部を構成する第2センサ部、7b…被検出部を構成する外側磁極パターン、Sa…検出信号を構成する第1検出信号、Sb…検出信号を構成する第2検出信号、D1,D2…単位検出値、n1,n2…分割数。
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの検出手段から出力される検出信号の信号組合せにより、被測定物の位置を検出するバーニア式位置検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被測定物の位置を精度よく検出する位置検出装置として、図8に示すようなバーニア式位置検出装置81(例えば特許文献1等)が知られている。バーニア式位置検出装置81には、円板状の回転板82が軸83回りに回転可能に形成されている。回転板82には、N極及びS極の磁極対が軸83回りに沿って複数配列された磁極パターン84,85が、回転板82の径方向の内外に一対形成されている。本例の場合、径方向内側に位置する内側磁極パターン84には、磁極対が4組形成され、径方向外側に位置する外側磁極パターン85には、磁極対が3組形成されている。
【0003】
図9及び図10に示すように、内側磁極パターン84に対向する位置には、内側磁極パターン84から放射される磁界を検出する一対の内側磁気センサ部86,87が設けられている。内側磁気センサ部86,87は、内側磁極パターン84の横において磁極の配列方向に並び配置されている。具体的に言うと、一方の内側磁気センサ部86は、内側磁極パターン84の紙面左端のN極において磁極配列方向の真ん中に配置され、他方の内側磁気センサ部87は、そのN極と隣のS極との境目に配置されている。内側磁気センサ部86は、内側磁極パターン84から検出した磁界を、図11(a)に示すsin波に準じた検出信号Sa1でコントローラ88に出力する。また、内側磁気センサ部87は、内側磁極パターン84から検出した磁界を、図11(a)に示すcos波に準じた検出信号Sa2でコントローラ88に出力する。
【0004】
外側磁極パターン85に対向する位置には、外側磁極パターン85から放射される磁界を検出する一対の外側磁気センサ部89,90が設けられている。外側磁気センサ部89,90は、内側磁気センサ部86,87と同様の位置条件にて配置されるとともに、外側磁気センサ部89から図11(b)に示すsin波に準じた検出信号Sb1がコントローラ88に出力され、外側磁気センサ部90から図11(b)に示すcos波に準じた検出信号Sb2がコントローラ88に出力される。
【0005】
コントローラ88は、内側磁気センサ部86,87から取得したsinθ及びcosθを基にarctanθを求め、sinθ及びcosθと、求めたarctanθとを基に、内側磁極パターン84に準じた回転出力を演算する。コントローラ88は、外側磁気センサ部89,90から取得したsinθ及びcosθを基にarctanθを求め、sinθ及びcosθと、これらから求まるarctanθとを基に、外側磁極パターン85に準じた回転出力を演算する。角度検出においてarctanθを算出するのは、1つのsinθ及びcosθの組合せに対し、角度が2通り存在することから、arctanθを算出して、これら2つの値を仕分けるためである。
【0006】
コントローラ88は、内側磁気センサ部86,87から求まる回転出力と、外側磁気センサ部89,90から求まる回転出力との信号組合せを基に、回転板82の回転角度(回転位置)を算出する。コントローラ88は、例えば分解能「72」で回転板82の回転角度を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−267867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、背景技術で述べた角度演算では、内側に2つのセンサ部86,87を配置し、外側に2つのセンサ部89,90を配置するというように、内外で合計4つのセンサ部品が必要となっていた。このため、センサ部品の個数を減らしたいニーズがあった。また、背景技術の角度演算は、センサ部86,87(89,90)から得たsinθ及びcosθからarctanθを演算し、これら3つのパラメータを使用する計算となっている。このため、演算処理が複雑で、時間を要するという問題もあった。
【0009】
本発明の目的は、装置の構造を簡素化することができ、かつ簡単な処理にて位置を検出することができるバーニア式位置検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記問題点を解決するために、本発明では、被測定物及びその支持物の間に、これら一方に配置された検出部と他方に配置された被検出部との組からなる位置検出部が複数設けられ、第1位置検出部が出力する第1検出信号と、第2位置検出部が出力する第2検出信号との信号組合せにより、前記被測定物の位置を検出するバーニア式位置検出装置において、位置検出の分解能の単位のときに前記第1位置検出部及び前記第2位置検出部が各々出力する検出信号を単位検出値とすると、それぞれの当該単位検出値は、交流波をとる前記検出信号の1波長内において2つの同じ値をとるように設定されていることを要旨とする。
【0011】
この構成によれば、第1位置検出部から出力される第1検出信号と、第2位置検出部から出力される第2検出信号との信号組合せが、被測定物を分解能の単位で位置検出するときの各位置において一義的に決まる。よって、被測定物の位置を2つの位置検出部により検出することが可能となるので、装置の構造を簡素化することが可能となり、さらに簡素な処理にて位置を検出することも可能となる。
【0012】
本発明では、前記信号組合せと角度とが一義的に決まらない場合、前記第1位置検出部及び第2位置検出部の一方において、前記検出部及び前記被検出部の位置関係を調整することを要旨とする。
【0013】
この構成によれば、信号組合せと角度とが一義的に決まらない場合であっても、部品の位置を調整することにより、信号組合せと角度とを、一義的な関係を満足するような値に設定することが可能となる。
【0014】
本発明では、前記第1位置検出部及び前記第2位置検出部は、(a)前記検出信号の1波長を等分割するときの数を分割数とすると、前記第1位置検出部の分割数と、前記第2位置検出部の分割数とが、ともに偶数であること、(b)前記分割数が4以上の数値で割り切れること、(c)位置検出の分解能が、前記第1位置検出部の分割数と前記第2位置検出部の分割数との最小公倍数により設定されること、(d)交流波の前記検出信号が、1波長内において前記単位検出値が2つの同じ値をとるように設定されることの以上の(a)〜(d)の条件が設定されていることを要旨とする。
この構成によれば、所望の信号組合せを、より確実に得ることが可能となる。
【0015】
本発明では、前記第1位置検出部及び前記第2位置検出部の一方が検出信号として正弦波を出力し、他方が検出信号として余弦波を出力するときに、前記第1位置検出部及び前記第2位置検出部がとる位置を基準位置とすると、前記第1位置検出部及び前記第2位置検出部の一方において、前記検出部及び前記被検出部の一方を他方に対して移動方向にずらし配置することにより、前記単位検出値が2つの同じ値をとるように設定されていることを要旨とする。
【0016】
この構成によれば、例えば被検出部を従来から位置や形状等を変更することなく、そのまま使用することが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、装置の構造を簡素化することができ、かつ簡単な処理にて位置を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】一実施形態のバーニア式位置検出装置の斜視図。
【図2】回転板の平面図。
【図3】回転板に形成された磁極パターンの構成図。
【図4】位置検出センサから出力される検出信号の波形図。
【図5】信号組合せと角度との関係を示す割り付け表。
【図6】バーニア式位置検出装置のブロック図。
【図7】本願の発明の思想を説明する例示図。
【図8】従来のバーニア式位置検出装置の構成図。
【図9】回転板に形成された磁極パターンの構成図。
【図10】バーニア式位置検出装置のブロック図。
【図11】(a),(b)は内外の各センサ部が出力する検出信号の波形図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を具体化したバーニア式位置検出装置の一実施形態を図1〜図7に従って説明する。
図1に示すように、バーニア式位置検出装置1のケース2には、略円板状の回転板3が中心の軸4回りに回転可能に枢支されている。回転板3は、位置検出する物品の動きに同期して軸4回りに回転する。なお、ケース2が支持物に相当し、回転板3が被測定物に相当する。
【0020】
ケース2と回転板3との間には、回転板3の回転角度(回転位置)を検出する位置検出センサ5が複数(本例は2つ)設けられている。2つの位置検出センサ5は、回転板3の径方向に並び配置されるとともに、例えば磁気センサが使用される。本例の場合、図1の径方向内側を第1位置検出センサ6とし、図1の径方向外側を第2位置検出センサ7とする。なお、位置検出センサ5〜7が位置検出部を構成し、第1位置検出センサ6が第1位置検出部に相当し、第2位置検出センサ7が第2位置検出部に相当する。
【0021】
ケース2の内壁面8において径方向内側寄りの位置には、第1位置検出センサ6のセンシング部品として第1センサ部6aが設けられている。また、ケース2の内壁面8において径方向外側寄りの位置には、第2位置検出センサ7のセンシング部品として第2センサ部7aが設けられている。第1センサ部6a及び第2センサ部7aは、例えばMRE(磁気抵抗素子)やホール素子等が使用されている。第1センサ部6a及び第2センサ部7aは、検出した磁界に応じた検出信号を出力する。なお、第1センサ部6a及び第2センサ部7aが検出部を構成する。
【0022】
図2に示すように、回転板3には、径方向内側寄りの位置に、軸4回りにN極及びS極の磁極対が円環状に複数並んだ内側磁極パターン6bが形成されている。内側磁極パターン6bは、4つの磁極対からなる。また、回転板3には、径方向外側寄りの位置に、軸4回りにN極及びS極の磁極対が円環状に複数並んだ外側磁極パターン7bが形成されている。外側磁極パターン7bは、3つの磁極対からなる。なお、内側磁極パターン6b及び外側磁極パターン7bが被検出部を構成する。
【0023】
本例の第1位置検出センサ6及び第2位置検出センサ7は、以下の4つの条件を満たすように設定されている。なお、本例の場合は、第1位置検出センサ6及び第2位置検出センサ7の交流波の各出力において、その1波長(1つの磁極対)を等分割するときの数を分割数と言うことにする。
【0024】
[条件]
・第1位置検出センサ6の分割数をn1とし、第2位置検出センサ7の分割数をn2とすると、分割数n1,n2がともに偶数に設定されること。
・分割数n1,n2が、ともに4以上の数値で割り切れること。
・位置検出の分解能が、分割数n1,n2の最小公倍数により設定されること。
・分解能の単位で第1位置検出センサ6及び第2位置検出センサ7が各々出力するセンサ出力が、1つの磁極対内(センサ出力の1波長内)において2つの同じ角度をとること。
【0025】
これら条件を満たすことで第1位置検出センサ6及び第2位置検出センサ7がとる構造を以下に説明する。本例の場合、第1位置検出センサ6の分割数n1が「18」、第2位置検出センサ7の分割数n2が「24」であることから、本例のバーニア式位置検出装置1の分解能は、「18」と「24」の最小公倍数である「72」となっている。よって、本例のバーニア式位置検出装置1は、回転板3の回転角度を5度間隔で検出することが可能である。
【0026】
図3に示すように、第1センサ部6aは、内側磁極パターン6bの紙面左端に位置するN極において、磁極配列方向の真ん中に配置されている。第1センサ部6aは、図4に示すような検出磁界とセンサ出力との関係がsin波(正弦波)をとる第1検出信号Saを出力する。また、第1検出信号Saは、内側磁極パターン6bが第1センサ部6aに対して1磁極対移動するときに、1波長をとる波形となっている。
【0027】
図3に示すように、第2センサ部7aは、外側磁極パターン7bの紙面左端に位置するN極において、磁極配列方向の真ん中から磁極配列方向に所定量ずれた位置に配置されている。即ち、仮に第1位置検出センサ6が角度に応じた信号波形として正弦波を出力し、第2位置検出センサ7が角度に応じた信号波形として余弦波を出力するときの第1位置検出センサ6及び第2位置検出センサ7がとる位置を基準位置とすると、本例の第2センサ部7aは、この基準位置から磁極配列方向(回転板3の回転方向)に所定量ずらして配置されている。よって、第2センサ部7aは、図4に示すような横軸方向にオフセットした第2検出信号Sbを出力する。また、第2検出信号Sbは、外側磁極パターン7bが第2センサ部7aに対して1磁極移動するときに、1波長をとる波形となっている。
【0028】
本例の第1位置検出センサ6及び第2位置検出センサ7では、角度検出の分解能の単位で出力する検出値をそれぞれ単位検出値D1,D2とすると、これら単位検出値D1,D2は、1つの磁極対内において各々2つの角度(分解能単位の角度)を持つように設定されている。つまり、第1位置検出センサ6が所定の単位検出値D1をとるときや、第2位置検出センサ7が所定の単位検出値D2をとるとき、各々が2つの角度(同じ値)を持つように設定されている。このため、単位検出値D1のプロット点を繋いだ波形と、単位検出値D2のプロット点を繋いだ波形とは、それぞれ見かけ上、略台形の形状をとる。
【0029】
また、第1位置検出センサ6及び第2位置検出センサ7を、上記した条件に配置すると、第1位置検出センサ6の第1検出信号Saと、第2位置検出センサ7の第2検出信号Sbとの信号組合せは、図5の割り付け表9に示す関係をとる。つまり、第1検出信号Saの出力値と、第2検出信号Sbの出力値との組合せは、角度検出の各分解能でそれぞれ異なる値をとる。よって、第1検出信号Sa及び第2検出信号Sbの信号組合せから、回転板3の回転角度が一義的に決まる。
【0030】
図6に示すように、バーニア式位置検出装置1には、回転板3の回転角度をバーニア方式により演算するコントローラ10が設けられている。コントローラ10には、第1位置検出センサ6及び第2位置検出センサ7が接続されている。コントローラ10は、第1位置検出センサ6から出力される第1検出信号Saと、第2位置検出センサ7から出力される第2検出信号Sbとの信号組合せを基に、回転板3の回転角度を演算し、その演算回転角度を他のECUに出力する。
【0031】
次に、本例のバーニア式位置検出装置1の動作を、図2〜図7を用いて説明する。
図3に示す位置状態を回転開始の初期位置(つまり、回転角度「0」)とする。このとき、図5の割り付け表9に示すように、第1位置検出センサ6の出力値は、「0.000」をとり、第2位置検出センサ7の出力値は、「−0.131」をとる。従って、コントローラ10は、回転板3の回転角度を0度と検出する。
【0032】
初期位置から回転板3が例えば図2の反時計回りに回転したとする。このとき、図5に示すように、回転板3が5度回転すると、第1位置検出センサ6の出力値は、「0.342」をとり、第2位置検出センサ7の出力値は、「0.131」をとる。従って、コントローラ10は、回転板3の回転角度を5度と検出する。
【0033】
そして、回転板3が更に反時計回り方向に回転されると、その回転に応じて第1検出信号Sa及び第2検出信号Sbの出力が切り換わっていく。このとき、コントローラ10は、第1検出信号Sa及び第2検出信号Sbの信号組合せを逐次割り出し、この信号組合せを基に回転板3の回転角度を逐次演算し、演算回転角度をその他のECUに出力する。
【0034】
ところで、図5の割り付け表9を見ても分かるように、第1検出信号Sa及び第2検出信号Sbの信号組合せは、分解能の各角度において1つしか存在しない。つまり、第1検出信号Sa及び第2検出信号Sbの信号組合せと分解能の角度とが、一義的に決まる。よって、第1位置検出センサ6からの出力と第2位置検出センサ7からの出力との組合せを単に見るだけで、回転板3の回転位置を検出できることが分かる。
【0035】
ところで、場合によっては、第1検出信号Sa及び第2検出信号Sbの信号組合せと、求めたい角度とが、一義的に決まらないこともある。このときは、2つの磁極パターン6b,7bのうち、例えば一方を他方に対して回転方向に所定量ずらすことによって対処する。こうすれば、信号組合せと角度とが一義的な関係をとるので、位置検出センサ6,7の出力から直に問題なく角度検出することが可能となる。
【0036】
以上により、本例においては、上記条件を満足するように、第1位置検出センサ6及び第2位置検出センサ7を配置した。よって、図7に示すように、第1検出信号Sa及び第2検出信号Sbは、1つの磁極対内において各々単位検出値D1,D2をとるとき、2つの同じ角度をとる波形となる。つまり、第2センサ部7aを外側磁極パターン7bに対して基準位置から所定量だけずらし配置することにより、第1検出信号Sa及び第2検出信号Sbを、両方とも1つの磁極対内で同じ角度を持つ波形にする。
【0037】
このため、図5に示すように、第1位置検出センサ6の出力と第2位置検出センサ7の出力との組合せが、角度検出の分解能のそれぞれで一義的に決まる値をとる。よって、第1位置検出センサ6及び第2位置検出センサ7の各信号の値を単に見るだけで、回転板3の角度を検出することが可能となる。従って、少ないセンサ個数で角度検出が可能となり、ひいては簡素な演算にて角度位置を検出することも可能となる。
【0038】
本実施形態の構成によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)第1位置検出センサ6及び第2位置検出センサ7を、信号組合せが図5の割り付け表9をとるような配置としたので、回転板3の回転位置を第1位置検出センサ6及び第2位置検出センサ7の2つのセンサにて検出することが可能となる。このため、使用するセンサの個数が少なく済むので、バーニア式位置検出装置1の構成を簡素化することができる。また、第1検出信号Sa及び第2検出信号Sbの信号組合せを単に確認するだけで角度を割り出すことが可能となるので、簡素な処理にて回転板3の回転角度を検出することができる。
【0039】
(2)信号組合せと角度とが一義的に決まらない場合は、一対の磁極パターン6b,6bの一方を他方に対して所定量ずらし配置して調整する。よって、仮に信号組合せと角度とを一義的な関係を満たさない状況となっても、これに対処することができる。
【0040】
(3)第1位置検出センサ6及び第2位置検出センサ7の位置を、実施形態で述べた4つの条件に設定した。よって、第1検出信号Sa及び第2検出信号Sbの信号組合せを、1つの角度を一義的に持つような組合せへ、より確実に設定することができる。
【0041】
(4)第2センサ部7aを外側磁極パターン7bに対して基準位置から回転方向に所定角度ずらし配置することで、第1検出信号Sa及び第2検出信号Sbの信号組合せが一義的な角度をとる組合せとなるように設定した。よって、第1位置検出センサ6(第1センサ部6a、内側磁極パターン6b)や外側磁極パターン7bに変更を加える必要がないので、これらは従来のものをそのまま使用することができる。
【0042】
なお、実施形態はこれまでに述べた構成に限らず、以下の態様に変更してもよい。
・第1位置検出センサ6及び第2位置検出センサ7の分割数は適宜変更可能である。
・例えば回転板3が固定側で、センサ部6a,7aが回転側となっていてもよい。
【0043】
・位置検出センサ5は、磁気センサに限定されず、例えば光学センサ等の他の種類を採用してもよい。
・位置検出部は、無接点式の位置検出センサ5に限定されず、例えばスイッチ等の有接点式でもよい。
【0044】
・回転板3は、円板に限定されず、他の形状を用いてもよい。
・位置検出センサ5は、回転板3の径方向に並び配置されることに限定されず、例えば回転板3の厚さ方向に並び配置されてもよい。
【0045】
・第1検出信号Sa及び第2検出信号Sbの信号組合せが一義的な角度を有するように設定する場合、第2センサ部7aの位置を外側磁極パターン7bに対してずらし配置することに限定されない。例えば、第2センサ部7aの位置は従来と同じとし、外側磁極パターン7bを回転方向にずらし配置してもよい。
【0046】
・第1位置検出センサ6及び第2位置検出センサ7は、実施形態で述べた4つの条件を満たすことに限定されない。例えば、1つの磁極対内でセンサ出力が異なる2つの角度を有するだけの条件を持つものでもよい。
【0047】
・位置検出センサ5のパターン分割数は、2で割り切れない数値を採用してもよい。
・第1検出信号Sa及び第2検出信号Sbの信号組合せと、求めたい角度とが、一義的に決まらないときの調整は、磁極パターン側をずらすことに限定されず、例えばセンサ部側をずらし配置してもよい。
【0048】
・位置検出センサ5の個数は、2つに限らず、3つ以上設けてもよい。
・バーニア式位置検出装置1は、回転角度を検出する回転型に限定されず、直線移動する被測定物を検出するリニア型としてもよい。
【0049】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
(イ)請求項1〜4のいずれかにおいて、前記バーニア式位置検出装置は、回転動作する前記被測定物の回転角度を検出する。この構成によれば、回転する被測定物の回転角度を精度よく検出することが可能となる。
【0050】
(ロ)請求項1〜4、前記技術的思想(イ)のいずれかにおいて、前記位置検出部は、無接点式である。この構成によれば、接点部において部品接触等による劣化がないので、装置の耐久性を確保することが可能となる。
【符号の説明】
【0051】
1…バーニア式位置検出装置、2…支持物としてのケース、3…被測定物としての回転板、5…位置検出部を構成する位置検出センサ、6…位置検出部(第1位置検出部)を構成する第1位置検出センサ、6a…検出部を構成する第1センサ部、6b…被検出部を構成する内側磁極パターン、7…位置検出部(第2位置検出部)を構成する第2位置検出センサ、7a…検出部を構成する第2センサ部、7b…被検出部を構成する外側磁極パターン、Sa…検出信号を構成する第1検出信号、Sb…検出信号を構成する第2検出信号、D1,D2…単位検出値、n1,n2…分割数。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物及びその支持物の間に、これら一方に配置された検出部と他方に配置された被検出部との組からなる位置検出部が複数設けられ、第1位置検出部が出力する第1検出信号と、第2位置検出部が出力する第2検出信号との信号組合せにより、前記被測定物の位置を検出するバーニア式位置検出装置において、
位置検出の分解能の単位のときに前記第1位置検出部及び前記第2位置検出部が各々出力する検出信号を単位検出値とすると、それぞれの当該単位検出値は、交流波をとる前記検出信号の1波長内において2つの同じ値をとるように設定されている
ことを特徴とするバーニア式位置検出装置。
【請求項2】
前記信号組合せと角度とが一義的に決まらない場合、前記第1位置検出部及び第2位置検出部の一方において、前記検出部及び前記被検出部の位置関係を調整する
ことを特徴とする請求項1に記載のバーニア式位置検出装置。
【請求項3】
前記第1位置検出部及び前記第2位置検出部は、
(a)前記検出信号の1波長を等分割するときの数を分割数とすると、前記第1位置検出部の分割数と、前記第2位置検出部の分割数とが、ともに偶数であること
(b)前記分割数が4以上の数値で割り切れること
(c)位置検出の分解能が、前記第1位置検出部の分割数と前記第2位置検出部の分割数との最小公倍数により設定されること
(d)交流波の前記検出信号が、1波長内において前記単位検出値が2つの同じ値をとるように設定されること
という以上の(a)〜(d)の条件が設定されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のバーニア式位置検出装置。
【請求項4】
前記第1位置検出部及び前記第2位置検出部の一方が検出信号として正弦波を出力し、他方が検出信号として余弦波を出力するときに、前記第1位置検出部及び前記第2位置検出部がとる位置を基準位置とすると、
前記第1位置検出部及び前記第2位置検出部の一方において、前記検出部及び前記被検出部の一方を他方に対して移動方向にずらし配置することにより、前記単位検出値が2つの同じ値をとるように設定されている
ことを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか一項に記載のバーニア式位置検出装置。
【請求項1】
被測定物及びその支持物の間に、これら一方に配置された検出部と他方に配置された被検出部との組からなる位置検出部が複数設けられ、第1位置検出部が出力する第1検出信号と、第2位置検出部が出力する第2検出信号との信号組合せにより、前記被測定物の位置を検出するバーニア式位置検出装置において、
位置検出の分解能の単位のときに前記第1位置検出部及び前記第2位置検出部が各々出力する検出信号を単位検出値とすると、それぞれの当該単位検出値は、交流波をとる前記検出信号の1波長内において2つの同じ値をとるように設定されている
ことを特徴とするバーニア式位置検出装置。
【請求項2】
前記信号組合せと角度とが一義的に決まらない場合、前記第1位置検出部及び第2位置検出部の一方において、前記検出部及び前記被検出部の位置関係を調整する
ことを特徴とする請求項1に記載のバーニア式位置検出装置。
【請求項3】
前記第1位置検出部及び前記第2位置検出部は、
(a)前記検出信号の1波長を等分割するときの数を分割数とすると、前記第1位置検出部の分割数と、前記第2位置検出部の分割数とが、ともに偶数であること
(b)前記分割数が4以上の数値で割り切れること
(c)位置検出の分解能が、前記第1位置検出部の分割数と前記第2位置検出部の分割数との最小公倍数により設定されること
(d)交流波の前記検出信号が、1波長内において前記単位検出値が2つの同じ値をとるように設定されること
という以上の(a)〜(d)の条件が設定されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のバーニア式位置検出装置。
【請求項4】
前記第1位置検出部及び前記第2位置検出部の一方が検出信号として正弦波を出力し、他方が検出信号として余弦波を出力するときに、前記第1位置検出部及び前記第2位置検出部がとる位置を基準位置とすると、
前記第1位置検出部及び前記第2位置検出部の一方において、前記検出部及び前記被検出部の一方を他方に対して移動方向にずらし配置することにより、前記単位検出値が2つの同じ値をとるように設定されている
ことを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか一項に記載のバーニア式位置検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−98166(P2012−98166A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−246347(P2010−246347)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】
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