説明

パイロット形電磁弁

【課題】電磁弁を大型化することなく応答性を向上させること。
【解決手段】スプール弁14には、励磁時位置であれば第9排気路T9を閉鎖する第1弁部14bと、消磁時位置であれば第8供給路T8を閉鎖する第2弁部14cを設ける構成とした。そして、第9排気路におけるピストン室17への連通口と第8供給路におけるパイロット室18への連通口とは、第1弁部と第2弁部との間に形成する構成とした。これにより、消磁時位置においては、パイロット室に圧縮エアが作用しないことになる。そして、コイルへの励磁開始時には、パイロット室に圧縮エアを作用させない状態で、ピストン室に圧縮エアを作用させることになる。一方、励磁時位置及びコイルへの励磁停止時においては、パイロット室に圧縮エアが作用することになる。このため、パイロット形電磁弁10を大型化することなく応答性を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイロット形電磁弁に関する。
【背景技術】
【0002】
パイロット形電磁弁の中でも特にシングルソレノイドタイプのものとしては、例えば、特許文献1に開示のものが挙げられる。そして、特許文献1に記載されるように、シングルソレノイドタイプのパイロット形電磁弁では、主弁切換部内でスプール(主弁)の位置を切り換えることにより、ポート間の連通状態を切り換えられるようにしている。また、主弁切換部内において、スプールの両端には、パイロット形電磁弁に内蔵されるソレノイドが励磁されるとパイロット流体が供給されるピストン室と、パイロット流体が常に供給されるパイロット室とがそれぞれ形成されている。そして、スプールは、パイロット室に供給されるパイロット流体による圧力とパイロット室に収容されるスプリングの付勢力とにより、ピストン室に向けて常に付勢されている。
【0003】
また、ピストン室にパイロット流体が供給されると、該パイロット流体による圧力が、ピストン室に収容されているピストンに作用することで、スプールが駆動されるようになる。なお、パイロット室には、ピストン室に収容されるピストンよりも受圧面積を小さくしたピストンが収容されており、ピストン室及びパイロット室に同じようにパイロット流体が供給されても、ピストン室におけるピストンに対してはスプリングの付勢力を考慮してもパイロット室におけるピストンよりも大きな駆動力を発生できるように構成されている。その結果、スプールが駆動されてポート間の連通状態が切り換えられるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−229209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このようなパイロット形電磁弁にあっては、スプールが駆動されてポート間の連通状態が切り換えられるまでの時間を短縮することで、応答性を向上させることが望まれている。このようなパイロット形電磁弁における応答性には、スプールを切り換える駆動力が大きく寄与している。このため、このような要望に対しては、ピストン室に収容されるピストンを大径化することで受圧面積をさらに大きくしたり、ピストン室へと供給されるパイロット流体の圧力を増加させたりして駆動力を高めることが考えられる。しかしながら、ピストン室に収容されるピストンを大径化したり、供給されるパイロット流体の圧力を増加させたりすると、パイロット形電磁弁自体が大型化してしまう可能性があった。
【0006】
本発明は、こうした従来の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、大型化することなく応答性を向上させることができるパイロット形電磁弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、複数のポートを有するケーシング内にそれらポート間の連通を切り換える主弁を励磁コイルの励消磁に基づいてパイロット供給路から供給されるパイロット流体により消磁時位置と励磁時位置とに移動可能に収容し、前記ケーシングには前記主弁の一端側が収容され、かつ前記コイルの励磁によりパイロット流体を供給可能な第1の作用室が形成される一方、前記ケーシングには前記主弁の他端側が収容され、かつ前記コイルの励磁に関係なくパイロット流体を供給可能な第2の作用室が形成されるパイロット形電磁弁において、前記主弁には、前記主弁が前記消磁時位置であれば前記第1の作用室と前記第2の作用室とを連通させる第1の連通路と、前記主弁が前記励磁時位置であれば前記パイロット供給路と前記第2の作用室とを連通させる第2の連通路とが形成されているとともに、前記主弁には、前記主弁が前記励磁時位置であれば前記第1の連通路を閉鎖する第1の弁機能部と、前記主弁が前記消磁時位置であれば前記第2の連通路を開放する第2の弁機能部とが設けられており、前記第1の連通路における前記第1の作用室との第1の連通口と前記第2の連通路における前記第2の作用室との第2の連通口とは、前記第1の弁機能部と前記第2の弁機能部との間に形成されていることを要旨とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のパイロット形電磁弁において、前記ケーシング内には、前記主弁が収容される主弁収容部が形成されており、前記第1の弁機能部は、前記主弁の前記消磁時位置から前記励磁時位置への移動に伴い、前記主弁収容部と前記第1の作用室との第1の収容連通口を閉鎖することで前記第1の連通路を閉鎖する一方、前記第2の弁機能部は、前記主弁の前記励磁時位置から前記消磁時位置への移動に伴い、前記主弁収容部と前記第2の作用室との第2の収容連通口を閉鎖することで前記第2の連通路を閉鎖し、前記第1の収容連通口と前記第2の収容連通口とは、テーパ状に形成されていることを要旨とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のパイロット形電磁弁において、前記第2の弁機能部は、前記主弁が前記消磁時位置から前記励磁時位置への移動に伴い、ポート間の連通を切り換えた後に前記第2の収容連通口を開放する位置に設けたことを要旨とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は請求項3に記載のパイロット形電磁弁において、前記第1の弁機能部は、前記主弁が前記励磁時位置から前記消磁時位置への移動に伴い、ポート間の連通を切り換えた後に前記第1の収容連通口を開放する位置に設けたことを要旨とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、大型化することなく応答性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(a)は消磁時におけるパイロット形電磁弁を示す断面図、(b)は励磁時におけるパイロット形電磁弁を示す断面図。
【図2】(a)〜(d)は消磁時から励磁時への移動過程を示す断面図。
【図3】(a)〜(d)は励磁時から消磁時への移動過程を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の一実施形態を図1〜図3に基づき説明する。
図1(a),(b)に示すように、本実施形態のパイロット形電磁弁10におけるバルブケーシング11には、給気ポートP、第1出力ポートA、第2出力ポートB、第1排気ポートR1、及び第2排気ポートR2が形成されている。なお、バルブケーシング11には、単数の励磁コイルが内蔵されたパイロット弁12が搭載されている。すなわち、本実施形態のパイロット形電磁弁10は、シングルソレノイドタイプの電磁弁である。そして、パイロット弁12に内蔵される励磁コイルに対する給電態様が制御されることで、バルブケーシング11に内蔵されるスプール弁14の位置が切換制御される。以下の説明では、「消磁時」と言えばパイロット弁12における励磁コイルが励磁されていない状態を示すとともに、「励磁時」と言えばパイロット弁12における励磁コイルが励磁されている状態を示している。
【0014】
このため、スプール弁14が消磁時となる消磁時位置に移動することにより、図1(a)に示すように、給気ポートPと第2出力ポートB、及び第1出力ポートAと第1排気ポートR1、が互いに連通されるようになっている。また、スプール弁14が励磁時となる励磁時位置に移動することにより、図1(b)に示すように、給気ポートPと第1出力ポートA、及び第2出力ポートBと第2排気ポートR2が、互いに連通されるようになっている。
【0015】
そして、バルブケーシング11の内部には、バルブケーシング11の長さ方向に延びる主弁収容部としての収容孔13が形成されるとともに、収容孔13内にはパイロット流体としての圧縮エア(圧縮流体)の流路を切り換える主弁としてのスプール弁14が往復移動可能に収容されている。また、収容孔13には、収容孔13から上方に突出する収容通路13aが形成されるとともに、収容通路13aはスプール弁14の位置に関係なく常に給気ポートPと連通するようになっている。
【0016】
また、スプール弁14は、スプール弁14の軸方向において互いに離間して形成された複数の主弁部14aと、スプール弁14の一端側(図1(a)では左端側)に形成された第1弁部14bと、スプール弁14の他端側(図1(a)では右端側)に形成された第2弁部14cとを有する。そして、各弁部14a,14b,14cの直径はスプール弁14の軸径よりも大きく設定されている。そして、各主弁部14aは、収容孔13内を移動する一方、第1弁部14b及び第2弁部14cは、収容孔13内だけでなく収容孔13から離脱して収容孔13外も移動する。
【0017】
また、各主弁部14aには、各主弁部14aの外周面と収容孔13の内周面との間をシールするパッキン15aがそれぞれに装着されている。また、第1弁部14bには、第1弁部14bの外周面が収容孔13の内周面と接する場合に、これらの間をシールする第1弁部パッキン15bが装着されている。また、第2弁部14cには、第2弁部14cの外周面が収容孔13の内周面と接する場合に、これらの間をシールする第2弁部パッキン15cが装着されている。
【0018】
図1(a)の拡大図に示すように、スプール弁14の消磁時位置では、第1弁部パッキン15bが収容孔13の内周面と接し得ない(収容孔13から離脱している)ことから、第1弁部パッキン15bによるシールが行われない。一方、スプール弁14の励磁時位置への移動に伴って第1弁部パッキン15bが収容孔13の内周面と接し得るとともに、図1(b)に示すように、スプール弁14の励磁時位置では、第1弁部パッキン15bが収容孔13の内周面と接することから、第1弁部パッキン15bによるシールが行われる。
【0019】
そして、第1弁部14b(第1弁部パッキン15b)は、スプール弁14の消磁時位置から励磁時位置への移動直後であって、スプール弁14の各主弁部14aによるポート間の連通状態の切り換え前に、第1弁部パッキン15bによるシールを行える位置に形成されている。すなわち、励磁時位置から消磁時位置への移動で言えば、第1弁部14b(第1弁部パッキン15b)は、スプール弁14の各主弁部14aによるポート間の連通状態の切り換え後であって、消磁時位置への到達直前に、収容孔13から離脱する位置に形成されている。
【0020】
また、スプール弁14の消磁時位置への移動に伴って第2弁部パッキン15cが収容孔13の内周面に接し得るとともに、図1(a)に示すように、スプール弁14の消磁時位置では、第2弁部パッキン15cが収容孔13の内周面と接することから、第2弁部パッキン15cによるシールが行われる。一方、図1(b)の拡大図に示すように、スプール弁14の励磁時位置では、第2弁部パッキン15cが収容孔13の内周面と接し得ない(収容孔13から離脱している)ことから、第2弁部パッキン15cによるシールが行われない。
【0021】
そして、第2弁部14c(第1弁部パッキン15c)は、スプール弁14の消磁時位置から励磁時位置への移動において、スプール弁14の各主弁部14aによるポート間の連通状態の切り換え直後に、収容孔13から離脱する位置に形成されている。すなわち、励磁時位置から消磁時位置への移動で言えば、第2弁部14c(第2弁部パッキン15c)は、スプール弁14の各主弁部14aによるポート間の連通状態の切り換え直前に、第2弁部パッキン15cによるシールを行える位置に形成されている。
【0022】
また、スプール弁14には、第2弁部14c側に開口部14dを有するとともに、この開口部14dから第1弁部14b近くまで軸心に沿って延伸するスプール通路14eが形成されている。なお、スプール通路14eは、第1弁部14bと第1弁部14bに最も近接した主弁部14aの間に到達する長さで形成されている。
【0023】
また、スプール弁14の一端には、スプール弁14の各弁部14a,14b,14cの直径よりも大きい直径に設定されたピストン16が装着されている。また、バルブケーシング11の内部には、ピストン16を移動可能に支持する第1の作用室としてのピストン室17が形成されている。また、ピストン16には、ピストン16の外周面とピストン室17の内周面との間をシールするピストンパッキン16aが装着されている。なお、スプール弁14は、ピストン16の移動に伴ってこのピストン16と一体に移動するようになっている。
【0024】
そして、ピストン室17における収容孔13との境界には、第1弁部パッキン15b(第1弁部14b)とする弁体を受ける座となる第1弁座17a(第1の収容連通口)が形成されている。なお、第1弁座17aは、弁体の受け側(ピストン室17側)がテーパ状に形成されているとともに、第1弁部パッキン15b(第1弁部14b)がスプール弁14の移動に伴って乗り上げし易い形状に形成されている。
【0025】
また、バルブケーシング11の内部には、スプール弁14の他端が移動可能な第2の作用室としてのパイロット室がバルブケーシング11の内部に形成されている。なお、スプール弁14の他端と、この他端に対応するパイロット室18の内面との間には、スプール弁14をピストン室17側へ付勢するスプリング19が配設されている。
【0026】
そして、パイロット室18における収容孔13との境界には、第2弁部パッキン15c(第2弁部14c)とする弁体を受ける座となる第2弁座18a(第2の収容連通口)が形成されている。なお、第2弁座18aは、弁体の受け側(パイロット室18側)がテーパ状に形成されているとともに、第2弁部パッキン15c(第2弁部15c)がスプール弁14の移動に伴って乗り上げし易い形状に形成されている。また、パイロット室18は、スプール弁14の開口部14dを介してスプール通路14eと連通している。
【0027】
また、バルブケーシング11には、収容孔13の収容通路13aに一端が連通する第1供給路T1が形成されるとともに、第1供給路T1の他端はパイロット弁12に連通している。
【0028】
また、バルブケーシング11には、パイロット弁12に一端が連通する第2供給路T2が形成されるとともに、第2供給路T2の他端はピストン室17に連通している。なお、第2供給路T2におけるピストン室17への連通口は、パイロット弁12側となるピストン16の正面に対向して形成されている。
【0029】
また、バルブケーシング11には、パイロット弁12に一端が連通する第3排気路T3が形成されるとともに、第3排気路T3の他端はバルブケーシング11の外部(大気中)と連通する第4排気路T4に連通している。なお、第4排気路T4は、バルブケーシング11に形成される。
【0030】
また、バルブケーシング11には、第3排気路T3に連通する第5排気路T5が形成されるとともに、第5排気路T5の他端はピストン16の背面側のピストン室17に連通している。なお、第5排気路T5は、第3排気路T3を介して第4排気路T4に連通する。
【0031】
そして、第1供給路T1と第2供給路T2とは、パイロット弁12における励磁時(励磁開始により)、連通される。なお、この場合には、第3排気路T3は、第1供給路T1及び第2供給路T2の何れとも遮断される。また、第2供給路T2と第3排気路T3とは、パイロット弁12における励磁コイルへの消磁時(励磁停止により)、連通される。なお、この場合には、第1供給路T1は、第2供給路T2及び第3排気路T3の何れとも遮断される。
【0032】
このため、第1供給路T1と第2供給路T2とが連通する場合、すなわち、第2供給路T2と第3排気路T3とが遮断される場合、給気ポートPからの圧縮エアが、収容通路13aを通って、第1供給路T1、パイロット弁12、及び第2供給路T2(パイロット供給路)を介してピストン室17へ供給(充填)される。なお、ピストン室17に圧縮エアが供給されると、ピストン室17内の圧力が大気圧よりも高くなる。
【0033】
また、第2供給路T2と第3排気路T3とが連通する場合、すなわち、第2供給路T2と第1供給路T1とが遮断される場合、ピストン室17に供給(充填)された圧縮エアが、第2供給路T2、パイロット弁12、第3排気路T3、及び第4排気路T4を介して外部(大気中)へ排気される。なお、ピストン室17から圧縮エアが排気されると、ピストン室17内の圧力が大気圧と同程度となる。また、ピストン16の背面側におけるピストン室17内は、常に第4排気路T4及び第5排気路T5を介して外部(大気中)と連通していることから、内部の圧力が常に大気圧と同程度となる。
【0034】
また、バルブケーシング11には、収容通路13aに一端が連通する第6供給路T6が形成されるとともに、第6供給路T6の他端は収容孔13と連通する第7供給路T7に連通している。なお、第7供給路T7は、バルブケーシング11に形成される。
【0035】
また、スプール弁14の第2弁部14c(第2弁部パッキン15c)と最も近接する主弁部14a(パッキン15a)との間には、第7供給路T7に一端が連通する第2の連通路としての第8供給路T8が形成されるとともに、第8供給路T8はスプール弁14の移動に伴いの他端はパイロット室18と連通可能になっている。なお、図1(b)に示すように、第8供給路T8は、スプール弁14の励磁時位置において第7供給路T7とパイロット室18とを連通可能な長さに形成されている。
【0036】
また、スプール弁14には、スプール通路14eに一端が連通する第1の連通路としての第9排気路T9が形成されるとともに、第9排気路T9の他端はスプール弁14の外周面に開口している。また、第9排気路T9は、スプール弁14のピストン室17側への移動に伴い、スプール通路14eを介してピストン室17と連通される。なお、第9排気路T9は、スプール弁14の第1弁部14b(第1弁部パッキン15b)と最も近接する主弁部14a(パッキン15a)との間に穿設されている。
【0037】
そして、第6供給路T6と第7供給路T7とは常に連通されるとともに、第7供給路T7と第8供給路T8とは常に連通される。また、第9排気路T9とパイロット室18とは、スプール通路14eを介して常に連通される。
【0038】
また、第8供給路T8とパイロット室18とは、図1(a)に示すように、第2弁部14c(第2弁部パッキン15c)が第2弁座18aに乗り上げて、第2弁部14cの外周面と収容孔13の内周面との間がシールされることで、遮断される。すなわち、第8供給路T8におけるパイロット室18への連通口(第2の連通口)が、第2弁部14c(第2弁部パッキン15c)により閉鎖されることになる。したがって、第2弁部14c及び第2弁部パッキン15cにより第2の弁機能部が構成されている。
【0039】
この場合に、第9排気路T9とピストン室17とは、図1(a)(特に拡大図)に示すように、第1弁部14b(第1弁部パッキン15b)が第1弁座17aから離脱して、第1弁部14bの外周面と収容孔13の内周面との間がシールされないことで、連通される。すなわち、第9排気路T9におけるピストン室17への連通口(第1の連通口)が、第1弁部14b(第1弁部パッキン15b)により開放されることになる。したがって、第9排気路T9におけるピストン室17への連通口は、第1弁部14b(第1弁部パッキン15b)及び第2弁部14c(第2弁部パッキン15c)の間に形成されている。
【0040】
また、第8供給路T8とパイロット室18とは、図1(b)(特に拡大図)に示すように、第2弁部14c(第2弁部パッキン15c)が第2弁座18aから離脱して、第2弁部14cの外周面と収容孔13の内周面との間がシールされないことで、連通される。すなわち、第8供給路T8におけるパイロット室18への連通口(第2の連通口)が、第2弁部14c(第2弁部パッキン15c)により開放されることになる。したがって、第8供給路T8におけるパイロット室18への連通口は、第1弁部14b(第1弁部パッキン15b)及び第2弁部14c(第2弁部パッキン15c)の間に形成されている。
【0041】
この場合に、第9排気路T9とピストン室17とは、図1(b)に示すように、第1弁部14b(第1弁部パッキン15b)が第1弁座17aに乗り上げて、第1弁部14bの外周面と収容孔13の内周面との間がシールされることで、遮断される。すなわち、第9排気路T9におけるピストン室17への連通口(第1の連通口)が、第1弁部14b(第1弁部パッキン15b)により閉鎖されることになる。したがって、第1弁部14b及び第1弁部パッキン15bにより第1の弁機能部が構成されている。
【0042】
このため、第7供給路T7及び第8供給路T8には、パイロット弁12の給電態様(励磁及び消磁)に関係なく常に圧縮エアが供給されている。すなわち、パイロット室18への圧縮エアの供給は、パイロット弁12の給電態様に関係なく供給可能な一方、供給可能かどうかが第8供給路T8との連通状態に依存することになる。
【0043】
具体的に、第8供給路T8とパイロット室18とが連通する場合、すなわち、第9排気路T9とピストン室17とが遮断される場合、給気ポートPからの圧縮エアが、収容通路13aを通って、第6供給路T6、第7供給路T7、及び第8供給路T8(パイロット供給路)を介してパイロット室18へ供給(充填)される。なお、パイロット室18に圧縮エアが供給されると、パイロット室18内の圧力が大気圧よりも十分に高くなる。
【0044】
また、第9排気路T9とピストン室17とが連通する場合、すなわち、第8供給路T8とパイロット室18とが遮断される場合、パイロット室18に供給(充填)された圧縮エアが、スプール通路14e、第9排気路T9、ピストン室17、第5排気路T5、及び第4排気路T4を介して外部(大気中)へ排気される。なお、パイロット室18から圧縮エアが排気されると、パイロット室18内の圧力が大気圧と同程度となる。
【0045】
次に、スプール弁14の図1(a)に示す消磁時位置から図1(b)に示す励磁時位置への移動過程について説明する。
消磁時位置では、給気ポートPと第2出力ポートB、及び第1出力ポートAと第1排気ポートR1、が互いに連通される。また、消磁時位置では、ピストン室17へ圧縮エアが供給されない状態となる。また、消磁時位置では、パイロット室18が外部(大気)に連通するとともに、パイロット室18に圧縮エアが供給されない状態となる。そして、消磁時位置においてスプール弁14に作用している力は、ピストン室17側へのパイロット室18のスプリング19の付勢力となっている。
【0046】
この状態からパイロット弁12における励磁コイルへの励磁が開始されると(励磁開始)、パイロット室18への圧縮エアが遮断されつつピストン室17へ圧縮エアが供給される。
【0047】
そして、圧縮エアがピストン室17に供給されると、この圧縮エアがピストン16の正面となる受圧面に作用することで、ピストン16を移動させてスプール弁14をパイロット室18側へ移動させるピストン推力(駆動力)が発生する。この場合にスプール弁14に作用している力は、ピストン推力と、このピストン推力に対向して作用するスプリング19の付勢力と各パッキン15a,15cの摺動抵抗力となっている。なお、この場合のピストン推力は、ピストン推力に対向して作用する力よりも十分に大きい力を発生するように構成されている。
【0048】
そして、図2(a)に示すように、第1弁部14b(第1弁部パッキン15b)が第1弁座17aに乗り上げ始める第1弁部乗り上げ位置となる。第1弁部乗り上げ位置では、第9排気路T9(パイロット室18)とピストン室17とが遮断されるとともに、引き続きパイロット室18への圧縮エアが遮断されつつピストン室17へ圧縮エアが供給される。
【0049】
第1弁部乗り上げ位置では、給気ポートPと第2出力ポートB、及び第1出力ポートAと第1排気ポートR1、が互いに連通される。また、第1弁部乗り上げ位置では、ピストン室17内に圧縮エアが充填されている。また、第1弁部乗り上げ位置では、パイロット室18内に大気が充填されている。また、第1弁部乗り上げ位置では、第7供給路T7及び第8供給路T8に圧縮エアが供給されている。そして、第1弁部乗り上げ位置においてスプール弁14に作用している力は、ピストン推力と、このピストン推力に対向して作用するスプリング19の付勢力と各パッキン15a,15b,15cの摺動抵抗力となっている。なお、この場合のピストン推力は、ピストン推力に対向して作用する力よりも十分に大きい力を発生するように構成されている。
【0050】
そして、第1弁部乗り上げ位置では、各主弁部14aによるポート間の連通状態の切り換えが行われておらず、給気ポートPと第2出力ポートB、及び第1出力ポートAと第1排気ポートR1、が互いに連通している。このため、第1弁部乗り上げ位置は、各主弁部14aによるポート間の連通状態の切り換えが行われるよりも前に到来する。
【0051】
続いて、図2(b)に示すように、各主弁部14aによるポート間の連通状態の切り換えが行われるスプール弁切り換え位置(励磁時)となる。スプール弁切り換え位置(励磁時)では、引き続き第9排気路T9(パイロット室18)とピストン室17とが遮断されるとともに、パイロット室18への圧縮エアが遮断されつつピストン室17へ圧縮エアが供給される。
【0052】
スプール弁切り換え位置(励磁時)では、給気ポートPと第1出力ポートA、及び第2出力ポートBと第2排気ポートR2、が互いに連通される直前の状態となる。また、スプール弁切り換え位置(励磁時)では、ピストン室17内に圧縮エアが充填されている。また、スプール弁切り換え位置(励磁時)では、パイロット室18内に大気が充填されている。また、スプール弁切り換え位置(励磁時)では、第7供給路T7及び第8供給路T8に圧縮エアが供給されている。
【0053】
なお、パイロット室18が外部(大気)と遮断されるとともに、パイロット室18に圧縮エアが供給されない状態では、スプール弁14の移動に伴うパイロット室18の容積の減少にしたがって、パイロット室18内の圧力が大気圧よりも高まることになる。この高まった圧力は、スプール弁14の第2弁部14c側の受圧面に作用することになるが、ピストン推力に比べては十分に小さくなるように構成されている。これは、給気ポートPから供給される圧縮エア自体の圧力が大気圧に比して十分に高いこと、さらにはピストン16における受圧面がスプール弁14の第2弁部14c側における受圧面に比して十分に大きいことに起因する。
【0054】
このため、スプール弁切り換え位置(励磁時)においてスプール弁14に作用している力は、ピストン推力と、このピストン推力に対向して作用するスプリング19の付勢力と各パッキン15a,15b,15cの摺動抵抗力とパイロット室18内の圧力に基づく力となっている。なお、この場合のピストン推力は、ピストン推力に対向して作用する力よりも十分に大きい力を発生するように構成されている。
【0055】
続いて、図2(c)に示すように、各主弁部14aによるポート間の連通状態の切り換えが行われた後であるとともに、第2弁部14c(第2弁部パッキン15c)が第2弁座18aから離脱し始める第2弁部離脱始め位置となる。第2弁部離脱始め位置では、引き続き第9排気路T9(パイロット室18)とピストン室17とが遮断されるとともに、ピストン室17へ圧縮エアを供給しつつパイロット室18にも圧縮エアが供給される。
【0056】
第2弁部離脱始め位置では、給気ポートPと第1出力ポートA、及び第2出力ポートBと第2排気ポートR2、が互いに連通される。また、第2弁部離脱始め位置では、ピストン室17内に圧縮エアが充填されている。また、第2弁部離脱始め位置では、第7供給路T7及び第8供給路T8を介してパイロット室18内に圧縮エアが充填されている。
【0057】
そして、圧縮エアがパイロット室18に供給されると、この圧縮エアがスプール弁14の第2弁部14c側の受圧面に作用することになるが、ピストン推力に比べては十分に小さくなるように構成されている。これは、ピストン16における受圧面がスプール弁14の第2弁部14c側における受圧面に比して十分に大きいことに起因する。
【0058】
このため、第2弁部離脱始め位置においてスプール弁14に作用している力は、ピストン推力と、このピストン推力に対向して作用するスプリング19の付勢力と各パッキン15a,15bの摺動抵抗力とパイロット室18内の圧力に基づく力となっている。なお、この場合のピストン推力は、ピストン推力に対向して作用する力よりも十分に大きい力を発生するように構成されている。
【0059】
そして、第2弁部離脱始め位置では、各主弁部14aによるポート間の連通状態の切り換えが行われた直後である。このため、第2弁部離脱始め位置は、各主弁部14aによるポート間の連通状態の切り換えが行われた直後に到来する。
【0060】
続いて、図2(d)に示すように、各主弁部14aによるポート間の切り換えが行われた後であるとともに、励磁時位置となる。励磁時位置では、引き続き第9排気路T9(パイロット室18)とピストン室17とが遮断されるとともに、ピストン室17へ圧縮エアを供給しつつパイロット室18にも圧縮エアが供給される。
【0061】
励磁時位置では、給気ポートPと第1出力ポートA、及び第2出力ポートBと第2排気ポートR2、が互いに連通される。また、励磁時位置では、ピストン室17内に圧縮エアが充填されている。また、励磁時位置では、第7供給路T7及び第8供給路T8を介してパイロット室18内に圧縮エアが充填されている。また、励磁時位置においてスプール弁14に作用している力は、ピストン推力と、このピストン推力に対向して作用するスプリング19の付勢力とパイロット室18内の圧力に基づく力となっている。なお、この場合のピストン推力は、ピストン推力に対向して作用する力よりも十分に大きい力を発生するように構成されている。
【0062】
次に、スプール弁14の図1(b)又は図2(d)に示す励磁時位置から図1(a)に示す励磁時位置への移動過程について説明する。
そして、図1(b)又は図2(d)に示す状態からパイロット弁12における励磁コイルへの励磁が停止されると(励磁停止)、ピストン室17が外部(大気)に連通するとともに、ピストン室17に圧縮エアが供給されない状態となる。また、この場合には、ピストン室17への圧縮エアが遮断されつつパイロット室18へ圧縮エアが供給される。
【0063】
そして、この場合には、スプリング19の付勢力に加えてパイロット室18の圧縮エアがスプール弁14の第2弁部14c側の受圧面に作用することで、スプール弁14をピストン室17側へ移動させるスプール推力(駆動力)が発生する。この場合にスプール弁14に作用している力は、スプール推力と、これらに対向して作用する各パッキン15a,15bの摺動抵抗力となっている。なお、この場合のスプール推力は、スプール推力に対向して作用する力よりも十分に大きい力を発生するように構成されている。
【0064】
そして、図3(a)に示すように、第2弁部14c(第2弁部パッキン15c)が第2弁座18aに乗り上げ始める第2弁部乗り上げ位置となる。第2弁部乗り上げ位置では、第9排気路T9(パイロット室18)とピストン室17とが遮断されるとともに、第8供給路T8とパイロット室18とが遮断される。そして、第2弁部乗り上げ位置では、ピストン室17への圧縮エアが遮断されつつパイロット室18への圧縮エアが遮断される。なお、第2弁部乗り上げ位置では、パイロット室18への圧縮エアの供給が遮断されるが、第9排気路T9(パイロット室18)とピストン室17とが遮断されていることから、これまで供給された圧縮エアがパイロット室18内に残留している。
【0065】
第2弁部乗り上げ位置では、給気ポートPと第1出力ポートA、及び第2出力ポートBと第2排気ポートR2、が互いに連通される。また、第2弁部乗り上げ位置では、ピストン室17内に大気が充填されている。また、第2弁部乗り上げ位置では、パイロット室18内に圧縮エアが充填(残留)されている。また、第2弁部乗り上げ位置では、第7供給路T7及び第8供給路T8に圧縮エアが供給されている。そして、第2弁部乗り上げ位置においてスプール弁14に作用している力は、スプール推力と、このスプール推力に対向して作用する各パッキン15a,15b,15cの摺動抵抗力となっている。なお、この場合のスプール推力は、スプール推力に対向して作用する力よりも十分に大きい力を発生するように構成されている。
【0066】
そして、第2弁部乗り上げ位置では、各主弁部14aによるポート間の連通状態の切り換えが行われる直前である。このため、第2弁部乗り上げ位置は、各主弁部14aによるポート間の連通状態の切り換えが行われる直前に到来する。
【0067】
続いて、図3(b)に示すように、各主弁部14aによるポート間の連通状態の切り換えが行われるスプール弁切り換え位置(消磁時)となる。スプール弁切り換え位置(消磁時)では、引き続き第9排気路T9(パイロット室18)とピストン室17とが遮断されるとともに、ピストン室17への圧縮エアが遮断されつつパイロット室18への圧縮エアが遮断される。
【0068】
スプール弁切り換え位置(消磁時)では、給気ポートPと第2出力ポートB、及び第1出力ポートAと第1排気ポートR1、が互いに連通される直前の状態である。また、スプール弁切り換え位置(消磁時)では、ピストン室17内に大気が充填されている。また、スプール弁切り換え位置(消磁時)では、パイロット室18内に圧縮エアが充填(残留)されている。また、スプール弁切り換え位置(消磁時)では、第7供給路T7及び第8供給路T8に圧縮エアが供給されている。そして、スプール弁切り換え位置(消磁時)においてスプール弁14に作用している力は、スプール推力と、このスプール推力に対向して作用する各パッキン15a,15b,15cの摺動抵抗力となっている。なお、この場合のスプール推力は、スプール推力に対向して作用する力よりも十分に大きい力を発生するように構成されている。
【0069】
続いて、図3(c)に示すように、各主弁部14aによるポート間の連通状態の切り換えが行われた後のスプール弁切り換え後位置となる。スプール弁切り換え後位置では、引き続き第9排気路T9(パイロット室18)とピストン室17とが遮断されるとともに、ピストン室17への圧縮エアが遮断されつつパイロット室18への圧縮エアが遮断される。
【0070】
スプール弁切り換え後位置では、給気ポートPと第2出力ポートB、及び第1出力ポートAと第1排気ポートR1、が互いに連通される。また、スプール弁切り換え後位置では、ピストン室17内に大気が充填されている。また、スプール弁切り換え後位置では、パイロット室18内に圧縮エアが充填(残留)されている。また、スプール弁切り換え後位置では、第7供給路T7及び第8供給路T8に圧縮エアが供給されている。そして、スプール弁切り換え後位置においてスプール弁14に作用している力は、スプール推力と、このスプール推力に対向して作用する各パッキン15a,15b,15cの摺動抵抗力となっている。なお、この場合のスプール推力は、スプール推力に対向して作用する力よりも十分に大きい力を発生するように構成されている。
【0071】
続いて、図3(d)に示すように、各主弁部14aによるポート間の切り換え後であるとともに、第1弁部14b(第1弁部パッキン15b)が第1弁座17aから離脱し始める第1弁部離脱始め位置となる。第1弁部離脱始め位置では、第9排気路T9(パイロット室18)とピストン室17とが連通されるとともに、引き続きピストン室17へ圧縮エアが遮断されつつパイロット室18へ圧縮エアが遮断される。
【0072】
第1弁部離脱始め位置では、給気ポートPと第2出力ポートB、及び第1出力ポートAと第1排気ポートR1、が互いに連通される。また、第1弁部離脱始め位置では、ピストン室17へ圧縮エアが供給されない状態である。また、第1弁部離脱始め位置では、パイロット室18が外部(大気)に連通するとともに、パイロット室18に圧縮エアが供給されない状態である。そして、第1弁部離脱始め位置においてスプール弁14に作用している力は、ピストン室17側へのパイロット室18のスプリング19の付勢力と、この付勢力に対向して作用する各パッキン15a,15cの摺動抵抗力となっている。なお、この場合のスプリング19の付勢力は、付勢力に対向して作用する力よりも十分に大きい力を発生するように構成されている。
【0073】
そして、第1弁部離脱始め位置では、各主弁部14aによるポート間の連通状態の切り換えが行われた後であって、消磁時位置となる直前(エンドストローク付近)である。このため、第1弁部離脱始め位置は、各主弁部14aによるポート間の連通状態の切り換えが行われた後であって、消磁時位置となる直前に到来する。
【0074】
このような本実施形態によれば、スプール弁14の図1(a)に示す消磁時位置から図1(b)に示す励磁時位置への移動において、スプール弁14における消磁時位置からの移動は、パイロット室18内に圧縮エアが充填されていない状態から開始される。このため、消磁時位置からの移動に際しては、移動に伴うスプール弁14に対するピストン室17側へ作用する力(抵抗力)を低減させる。したがって、消磁時位置からの移動に際しては、スプール弁14を最小減の駆動力で動作開始させることができるとともに、スプール弁14を最大減の駆動力でパイロット室18側へ移動させることができる。
【0075】
続いて、励磁時位置への移動において、各主弁部14aによるポート間の連通状態の切り換えが行われるまでの移動は、パイロット室18内に圧縮エアが充填されていない状態で行われる。このため、各主弁部14aによるポート間の連通状態の切り換えが行われるまでの移動に際しては、移動に伴うスプール弁14に対するピストン室17側へ作用する力(抵抗力)を低減させる。したがって、各主弁部14aによるポート間の連通状態の切り換えが行われるまでの移動に際しては、スプール弁14を最小減の駆動力で動作させることができるとともに、スプール弁14を最大減の駆動力でパイロット室18側へ移動させることができる。そして、このような状態で各主弁部14aによるポート間の連通状態の切り換えが行われることになる。
【0076】
続いて、励磁時位置への移動において、各主弁部14aによるポート間の連通状態の切り換えが行われた直後からの移動は、パイロット室18内に圧縮エアが充填された状態で行われる。このため、各主弁部14aによるポート間の連通状態の切り換えが行われた直後からの移動に際しては、これまでに比して大きい駆動力でスプール弁14を動作させなければいけなくなる反面、励磁時位置から消磁時位置への移動に備えてパイロット室18内に圧縮エアを充填させた状態とすることができる。その結果、励磁時位置への到達時には、パイロット室18内に圧縮エアを充填させた状態に保たれていることになる。
【0077】
また、このような本実施形態によれば、スプール弁14の図1(b)に示す励磁時位置から図1(a)に示す消磁時位置への移動において、スプール弁14における励磁時位置からの移動は、ピストン室17内に圧縮エアが充填されていない且つパイロット室18内に圧縮エアが充填されている状態から開始される。このため、励磁時位置からの移動に際しては、移動に伴うスプール弁14に対するパイロット室18側へ作用する力(抵抗力)を低減させる。したがって、励磁時位置からの移動に際しては、スプール弁14を最小減の駆動力で動作開始させることができるとともに、スプール弁14を最大減の駆動力でピストン室17側へ移動させることができる。
【0078】
続いて、消磁時位置への移動において、各主弁部14aによるポート間の連通状態の切り換えが行われる直前までの移動は、ピストン室17内に圧縮エアが充填されていない且つパイロット室18内に圧縮エアが供給されている状態で行われる。このため、各主弁部14aによるポート間の連通状態の切り換えが行われる直前までの移動に際しては、移動に伴うスプール弁14に対するパイロット室18側へ作用する力(抵抗力)を低減させる。したがって、各主弁部14aによるポート間の連通状態の切り換えが行われる直前までの移動に際しては、スプール弁14を最小減の駆動力で動作させることができるとともに、スプール弁14を最大減の駆動力でピストン室17側へ移動させることができる。そして、このような状態で各主弁部14aによるポート間の連通状態の切り換えが行われることになる。
【0079】
続いて、消磁時位置への移動において、各主弁部14aによるポート間の連通状態の切り換えが行われた後の移動は、ピストン室17内に圧縮エアが充填されていない且つパイロット室18内に圧縮エアが残留されている状態で行われる。このため、各主弁部14aによるポート間の連通状態の切り換えが行われた後の移動に際しては、移動に伴うスプール弁14に対するパイロット室18側へ作用する力(抵抗力)を低減させる。したがって、各主弁部14aによるポート間の連通状態の切り換えが行われた後の移動に際しては、引き続きスプール弁14を最小減の駆動力で動作させることができるとともに、スプール弁14を最大減の駆動力でピストン室17側へ移動させることができる。
【0080】
続いて、消磁時位置への移動において、消磁時位置の直前の移動では、パイロット室18内から圧縮エアを排気させるとともにパイロット室18内に大気を充填させた状態で行われる。このため、消磁時位置の直前の移動に際しては、これまでに比してスプール弁を動作させる駆動力が小さくなる反面、消磁時位置から励磁時位置への移動に備えてパイロット室18内から圧縮エアを排気させるとともにパイロット室18内に大気を充填させた状態とすることができる。その結果、消磁時位置への到達時には、パイロット室18内に大気を充填させた状態に保たれていることになる。
【0081】
以上説明したように本実施形態によれば、以下に示す作用効果を奏することができる。
(1)主弁(スプール弁14)には、主弁(スプール弁14)が励磁時位置であれば第1の連通路(第9排気路T9)を閉鎖する第1の弁機能部(第1弁部14b(第1弁部パッキン15b))が設けられている。また、主弁(スプール弁14)には、主弁(スプール弁14)が消磁時位置であれば第2の連通路(第8供給路T8)を閉鎖する第2の弁機能部(第2弁部14c(第2弁部パッキン15c)が設けられている。そして、第1の連通口(第9排気路T9におけるピストン室17への連通口)と第2の連通口(第8供給路T8におけるパイロット室18への連通口)とは、第1の弁機能部(第1弁部14b(第1弁部パッキン15b))と第2の弁機能部(第2弁部14c(第2弁部パッキン15c))との間に形成する構成とした。これにより、消磁時位置においては、第2の作用室(パイロット室18)にパイロット流体(圧縮エア)が作用しないことになる。そして、コイルへの励磁開始時には、第2の作用室(パイロット室18)にパイロット流体(圧縮エア)を作用させない状態で、第1の作用室(ピストン室17)にパイロット流体(圧縮エア)を作用させることになる。一方、励磁時位置及びコイルへの励磁停止時においては、第2の作用室(パイロット室18)にパイロット流体(圧縮エア)が作用することになる。このため、パイロット形電磁弁を大型化することなく応答性を向上させることができる。
【0082】
(2)第1の収容連通口(第1弁座17a)と第2の収容連通口(第2弁座18a)とは、テーパ状に形成されるようにした。これにより、第1の弁機能部(第1弁部14b(第1弁部パッキン15b))が第1の収容連通口(第1弁座17a)を閉鎖する場合、消磁時位置から励磁時位置への移動に伴う抵抗力(摺動抵抗力)が低減される。また、第2の弁機能部(第2弁部14c(第2弁部パッキン15c))が第2の収容連通口(第2弁座18a)を閉鎖する場合、励磁時位置から消磁時位置への移動に伴う抵抗力(摺動抵抗力)が低減される。このため、新たに第1の弁機能部(第1弁部14b(第1弁部パッキン15b))及び第2の弁機能部(第2弁部14c(第2弁部パッキン15c))を設けたとしても、主弁(スプール弁14)の移動に伴う抵抗力(摺動抵抗力)の増加を抑制することができる。
【0083】
(3)第2の弁機能部(第2弁部14c(第2弁部パッキン15c))は、主弁(スプール弁14)の励磁時位置への移動に伴い、ポート間の連通を切り換えた後に第2の収容連通口(第2弁座18a)を開放する構成とした。これにより、主弁(スプール弁14)の励磁時位置への移動において、ポート間の切り換えが行われるまでは第2の作用室(パイロット室18)へのパイロット流体(圧縮エア)の供給が遮断される。その後、励磁時位置から消磁時位置への移動時、第2の作用室(パイロット室18)にパイロット流体(圧縮エア)が作用することになる。このため、励磁時位置への移動、及び消磁時位置への移動に伴う応答性を向上させることができる。
【0084】
(4)第1の弁機能部(第1弁部14b(第1弁部パッキン15b))は、主弁(スプール弁14)の消磁時位置への移動に伴い、ポート間の連通を切り換えた後に第1の収容連通口(第1弁座17a)を開放する構成とした。これにより、主弁(スプール弁14)の消磁時位置への移動において、ポート間の切り換えが行われるまでは第2の作用室(パイロット室18)にパイロット流体(圧縮エア)を継続して作用させる。このため、励磁時位置から消磁時位置への移動における応答性の低下を防止して、消磁時位置において第2の作用室(パイロット室18)にパイロット流体(圧縮エア)が作用しない状況を実現することができる。
【0085】
(5)電磁弁(パイロット形電磁弁10)としては、単数の励磁コイルを備えたシングルソレノイドタイプとする構成とした。これによれば、特にシングルソレノイドタイプの電磁弁において、大型化することなく応答性を向上させることができる。
【0086】
なお、上述した本実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することもできる。
・本実施形態では、第1弁部14b(第1弁部パッキン15b)を形成する位置を変更してもよい。また、第1弁部14b(第1弁部パッキン15b)が形成される位置としては、スプール弁14の励磁時位置から消磁時位置への移動に伴うポート間の連通状態の切り換えが行われた後、第1弁部14b(第1弁部パッキン15b)が第1弁座17aから離脱する位置が好ましい。
【0087】
・本実施形態では、第2弁部14c(第2弁部パッキン15c)を形成する位置を変更してもよい。また、第2弁部14c(第2弁部パッキン15c)が形成される位置としては、スプール弁14の消磁時位置から励磁時位置への移動に伴うポート間の連通状態の切り換えが行われた後、第2弁部14c(第2弁部パッキン15c)が第2弁座18aから離脱する位置が好ましい。
【0088】
・本実施形態において、第1弁座17aは、テーパ状でなくてもよく、第1弁部14b(第1弁部パッキン15b)が乗り上げ可能に構成されていればよい。
・本実施形態において、第2弁座18aは、テーパ状でなくてもよく、第2弁部14c(第2弁部パッキン15c)が乗り上げ可能に構成されていればよい。
【0089】
・本実施形態において、第9排気路T9とピストン室17とは、バルブケーシング11に形成される他の通路を介して連通されるようにしてもよい。そして、本実施形態で第9排気路T9におけるピストン室17への連通口を閉鎖する場合に、第9排気路T9における上記他の通路への連通口を第1弁部14b(第1弁部パッキン15b)が閉鎖するようにすればよい。
【0090】
・本実施形態において、第8供給路T8とパイロット室18とは、バルブケーシング11に形成される他の通路を介して連通されるようにしてもよい。そして、本実施形態で第8供給路T8におけるパイロット室18への連通口を閉鎖する場合には、第8供給路T8における上記他の通路への連通口を第2弁部14c(第2弁部パッキン15c)が閉鎖するようにすればよい。
【0091】
・本実施形態において、スプール弁14のスプール通路14eは、第2弁部14cから第1弁部14bへ貫通する貫通孔とすることもできる。この場合には、パイロット室18へ圧縮エアを供給すべき場面で上記貫通孔におけるピストン室17への連通口を第1弁部14b(第1弁部パッキン15b)が閉鎖可能に構成されていればよい。
【0092】
・本実施形態において、第9排気路T9は、スプール弁14の消磁時位置でパイロット室18からピストン室17を介して圧縮エアを排気可能であればよく、形成手法などを変更してもよい。
【0093】
・本実施形態において、第7供給路T7は、スプール弁14のスプール通路14eに連通する構成とすることもできる。この場合には、パイロット室18へ圧縮エアを供給すべき場面で第7供給路T7におけるスプール通路14eへの連通口や、スプール通路14eにおけるパイロット室18への連通口を、第2弁部14c(第2弁部パッキン15c)が閉鎖可能に構成されていればよい。
【0094】
・本実施形態において、第8供給路T8は、スプール弁14の励磁時位置でパイロット室18に圧縮エアを供給可能であればよく、形成手法などを変更して実現することもできる。
【0095】
・本実施形態は、第1の作用室及び第2作用室を備え、コイルの励磁に関係なくパイロット流体を第2の作用室へ供給可能な電磁弁であれば適用することができる。
・本実施形態において、パイロット流体としては、エアに限らず、圧縮された流体であれば他の流体でもよい。
【0096】
次に、上記実施形態及び別例(変形例)から把握できる技術的思想について以下に追記する。
(イ)単数の前記励磁コイルを備えたシングルソレノイドタイプである請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載のパイロット形電磁弁。
【符号の説明】
【0097】
A,B…出力ポート、P…給気ポート、R1,R2…排気ポート、T1,T2,T6,T7,T8…供給路、T3,T4,T5,T9…排気路、10…パイロット形電磁弁、11…バルブケーシング、12…パイロット弁、13…収容孔、13a…収容通路、14…スプール弁、14a…主弁部、14b…第1弁部、14c…第2弁部、14d…開口部、14e…スプール通路、15a…パッキン、15b…第1弁部パッキン、15c…第2弁部パッキン、16…ピストン、17…ピストン室、17a…第1弁座、18…パイロット室、18a…第2弁座。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のポートを有するケーシング内にそれらポート間の連通を切り換える主弁を励磁コイルの励消磁に基づいてパイロット供給路から供給されるパイロット流体により消磁時位置と励磁時位置とに移動可能に収容し、前記ケーシングには前記主弁の一端側が収容され、かつ前記コイルの励磁によりパイロット流体を供給可能な第1の作用室が形成される一方、前記ケーシングには前記主弁の他端側が収容され、かつ前記コイルの励磁に関係なくパイロット流体を供給可能な第2の作用室が形成されるパイロット形電磁弁において、
前記主弁には、前記主弁が前記消磁時位置であれば前記第1の作用室と前記第2の作用室とを連通させる第1の連通路と、前記主弁が前記励磁時位置であれば前記パイロット供給路と前記第2の作用室とを連通させる第2の連通路とが形成されているとともに、前記主弁には、前記主弁が前記励磁時位置であれば前記第1の連通路を閉鎖する第1の弁機能部と、前記主弁が前記消磁時位置であれば前記第2の連通路を開放する第2の弁機能部とが設けられており、
前記第1の連通路における前記第1の作用室との第1の連通口と前記第2の連通路における前記第2の作用室との第2の連通口とは、前記第1の弁機能部と前記第2の弁機能部との間に形成されていることを特徴とするパイロット形電磁弁。
【請求項2】
前記ケーシング内には、前記主弁が収容される主弁収容部が形成されており、
前記第1の弁機能部は、前記主弁の前記消磁時位置から前記励磁時位置への移動に伴い、前記主弁収容部と前記第1の作用室との第1の収容連通口を閉鎖することで前記第1の連通路を閉鎖する一方、前記第2の弁機能部は、前記主弁の前記励磁時位置から前記消磁時位置への移動に伴い、前記主弁収容部と前記第2の作用室との第2の収容連通口を閉鎖することで前記第2の連通路を閉鎖し、
前記第1の収容連通口と前記第2の収容連通口とは、テーパ状に形成されている請求項1に記載のパイロット形電磁弁。
【請求項3】
前記第2の弁機能部は、前記主弁が前記消磁時位置から前記励磁時位置への移動に伴い、ポート間の連通を切り換えた後に前記第2の収容連通口を開放する位置に設けた請求項2に記載のパイロット形電磁弁。
【請求項4】
前記第1の弁機能部は、前記主弁が前記励磁時位置から前記消磁時位置への移動に伴い、ポート間の連通を切り換えた後に前記第1の収容連通口を開放する位置に設けた請求項2又は請求項3に記載のパイロット形電磁弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−219861(P2012−219861A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−83907(P2011−83907)
【出願日】平成23年4月5日(2011.4.5)
【出願人】(000106760)CKD株式会社 (627)
【Fターム(参考)】