説明

パターン形成方法、液滴吐出装置及び回路基板

【課題】高精度のパターンを短時間に形成することができるパターン形成方法、液滴吐出
装置及び回路基板を提供する。
【解決手段】ステージ23は、通気性のステージ板23bにグリーンシート4Gを載置す
るとともに、ステージ板23bの下側に設けられるラバーヒータHによってグリーンシー
ト4Gを所定の温度に加熱する。ステージ23は、吸引通路を介してステージ板23bの
下側を減圧することによって、ステージ板23bの内部を減圧させて、同ステージ板23
b上に載置されるグリーンシート4Gの下側の全体を減圧する。グリーンシート4Gに着
弾する液滴Fbは、グリーンシート4Gの内部に向かう蒸発をさらに促進させる。これに
よって、グリーンシート4Gに着弾する金属インクの乾燥時間がさらに短くなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン形成方法、液滴吐出装置及び回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
基板上に所望のパターンを形成する方法としては、機能液を液滴にして吐出させるイン
クジェット方式が有効な手段として注目されている(例えば、特許文献1)。
インクジェット方式は、基板を載置するステージと、機能材料を含む機能液を液滴とし
て基板に吐出する液滴吐出ヘッドと、基板(ステージ)と液滴吐出ヘッドとを2次元的に
相対移動させる機構とを備えている。インクジェット方式は、基板と液滴吐出ヘッドとの
相対移動によって、液滴吐出ヘッドから吐出される液滴を基板表面の任意の位置に配置さ
せる。基板表面に順次配置される各液滴は、液滴の濡れ拡がる範囲が互いに重なるように
配置されることによって、基板表面を隙間無く覆って機能液からなるパターンを形成する

【0003】
基板表面が機能液に対して撥液性を有している場合、基板表面が液滴を引っ張る力は、
互いに接する液滴同士が引き合う力よりも弱い。そのため、基板表面においては、機能液
が局所的に集中してしまう。このような局所的な集中が生じると、基板表面は、機能液に
よって均一に覆われなくなる。さらに、局所的な集中が進行すると、基板表面の一部は、
機能液の欠如によって露出してしまう。
【0004】
インクジェット方式においては、こうした局所的な集中を回避させるため、互いに接す
る液滴同士を重ねる場合、後続する液滴を着弾させる前に、先に着弾する液滴を充分に乾
燥させる必要があり、この結果パターン形成に長い時間を要している。そこで、インクジ
ェット方式においては、基板を予め加熱することによって、着弾する液滴を速やかに乾燥
させる方法が提案されている(例えば、特許文献2、特許文献3)。
【特許文献1】特開2004−347695号 公報
【特許文献2】特開2004−306372号 公報
【特許文献3】特開平11−281985号 公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、基板温度を上げていくと、着弾した液滴が突沸してしまい、パターンが
形成されなくなる。そのため、基板温度を上げる方法は、乾燥速度を高くする点において
限界があり、パターンの形成に要する時間の更なる短縮化に限界がある。
【0006】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、その目的は、高精度のパタ
ーンを短時間に形成することができるパターン形成方法、液滴吐出装置及び回路基板を提
供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のパターン形成方法は、基板にパターンを形成するパターン形成方法であって、
機能材料を含む機能液からなる液滴を加熱される通気性基板の上面に吐出することにより
、前記通気性基板の上面にパターンを形成する。
【0008】
本発明のパターン形成方法によれば、着弾する液滴は、加熱される基板により蒸発が促
進される。基板が通気性基板であるため、液滴の蒸発成分は、基板の内部にも拡散する。
したがって、本発明のパターン形成方法は、液滴の乾燥速度を向上させることができる。
【0009】
このパターン形成方法において、前記液滴を吐出するとき、前記通気性基板の下側を減
圧する。
このパターン形成方法によれば、液滴の蒸発成分は、基板の内部にも拡散する。このと
き、通気性基板の下側が減圧されるため、通気性基板の内部への拡散が促進される。その
結果、このパターン形成方法は、液滴の乾燥速度を、より向上できる。
【0010】
このパターン形成方法において、前記液滴を吐出するとき、通気性を有する多孔質性の
ステージに前記通気性基板を載置して前記ステージに前記通気性基板を吸着させる。
このパターン形成方法によれば、通気性基板が、通気性を有する多孔質のステージに載
置されるため、通気性のステージの下側を減圧するとき、通気性基板の下側の全体が均一
に減圧される。従って、通気性基板に着弾する液滴は、着弾する位置に左右されることな
く、通気性基板と接する側の蒸発を、ムラ無く一様に促進することができる。
【0011】
このパターン形成方法において、前記通気性基板の表面温度を、前記液滴を吐出すると
きの機能液の温度以上であって、かつ、前記機能液に含まれる液体組成の沸点未満にする

【0012】
このパターン形成方法によれば、通気性基板に着弾する液滴は、通気性基板の表面温度
が吐出時の機能液の温度以上であるため直ちに乾燥を開始する。しかも、通気性基板の表
面温度が液体組成の沸点未満であるため、液滴は基板上で突沸することはない。その結果
、このパターン形成方法は、高密度・高精細なパターンを短時間に形成することができる

【0013】
このパターン形成方法において、前記通気性基板は、多孔質性基板であって、セラミッ
ク粒子と樹脂とから構成される低温焼成用シートであり、前記機能液は、機能材料として
の金属粒子を分散させた液体である。
【0014】
このパターン形成方法によれば、金属膜からなるパターンを多孔質性基板上に綺麗にし
かも短時間に形成することができる。
本発明の液滴吐出装置は、基板を載置するステージと、機能材料を含む機能液を液滴と
して吐出する液滴吐出ヘッドとを有し、前記ステージと前記液滴吐出ヘッドとを相対移動
させるとともに、前記ステージに載置する基体の上面に前記液滴吐出ヘッドから前記液滴
を吐出することにより、前記基板の上面にパターンを形成する液滴吐出装置であって、前
記基板は、通気性基板であり、前記ステージは、前記基板を加熱する加熱手段を有する。
【0015】
本発明の液滴吐出装置によれば、着弾する液滴は、加熱される基板により蒸発が促進さ
れる。基板が通気性基板であるため、液滴の蒸発成分は、基板の内部にも拡散する。した
がって、本発明のパターン形成方法は、液滴の乾燥速度を向上させることができる。
【0016】
この液滴吐出装置において、前記ステージは、通気性を有して前記基板を載置する載置
部と、前記載置部を介して前記載置部に載置される前記基板の下側を減圧する減圧手段と
を有する。
【0017】
この液滴吐出装置によれば、例えば、通気性基板を通気性のステージに載置したとき、
通気性のステージの下側を減圧手段によって減圧すると、通気性基板の下側が減圧される
。従って、着弾する液滴の蒸発成分は、通気性基板の内部にも蒸発して行く。このとき、
通気性基板の下側が減圧されるため、通気性基板の内部への拡散が促進される。その結果
、液滴吐出装置は、より乾燥速度が向上する。
【0018】
本発明の回路基板は、回路素子を実装するとともに前記回路素子に対して電気的に接続
される配線を有する回路基板であって、前記配線は、上記のパターン形成方法によって形
成される。
【0019】
本発明の回路基板は、より生産性を上げることのできる回路基板となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
(第一実施形態)
以下、本発明を、LTCC多層基板(LTCC:Low Temperature Co-fired Ceramics
多層基板)に半導体チップを実装してなる回路モジュールであって、LTCC多層基板を
構成する複数の低温焼成基板(グリーンシート)に配線パターンを形成する方法に具体化
した第一実施形態を図1〜図8に従って説明する。
【0021】
まず、LTCC多層基板に半導体チップを実装してなる回路モジュールについて説明す
る。図1は、回路モジュール1の断面図を示す。回路モジュール1は、板状に形成される
LTCC多層基板2と、そのLTCC多層基板2の上側に、ワイヤーボンディング接続さ
れる半導体チップ3とを有している。
【0022】
LTCC多層基板2は、シート状に形成される複数の低温焼成基板4の積層体である。
各低温焼成基板4は、それぞれガラスセラミック系材料(例えば、ホウケイ酸アルカリ酸
化物などのガラス成分とアルミナなどのセラミック成分の混合物)の焼結体、すなわち多
孔質性基板であって、その厚みが数百μmで形成されている。
【0023】
低温焼成基板4は、その焼結前のものをグリーンシート4G(図2,4,7参照)とい
う。グリーンシート4Gは、ガラスセラミック系材料の粉末と分散媒をバインダー、整泡
剤などとともに混合してスラリーを作成し、このスラリーを板状にした後に乾燥したもの
であって、通気性を有している。即ち、グリーンシート4Gは、通気性基板である。
【0024】
各低温焼成基板4は、抵抗素子、容量素子、コイル素子などの各種の回路素子5と、各
回路素子5を電気的に接続する内部配線6と、スタックビア構造、サーマルビア構造を呈
する所定の孔径(例えば、20μm)を有した複数のビアホール7と、各ビアホール7に
充填される複数のビア配線8とを有する。
【0025】
各低温焼成基板4上の各内部配線6は、それぞれ銀や銀合金などの金属微粒子の焼結体
であって、図2に示す液滴吐出装置20を利用する配線パターン形成方法によって形成さ
れる。
【0026】
図2は、液滴吐出装置20を説明する全体斜視図である。
図2において、液滴吐出装置20は、直方体形状に形成される基台21を有している。
基台21の上面には、その長手方向(以下単に、Y矢印方向という。)に沿って延びる一
対の案内溝22が形成されている。案内溝22の上方には、案内溝22に沿ってY矢印方
向及び反Y矢印方向に移動するステージ23が備えられている。
【0027】
ステージ23の上面には、載置部24が形成されて、焼成前の低温焼成基板4、即ち通
気性のグリーンシート4Gを載置する。載置部24は、載置される状態のグリーンシート
4Gをステージ23に対して位置決め固定して、グリーンシート4GをY矢印方向及び反
Y矢印方向に搬送する。ステージ23の上面には、ラバーヒータHが配設されている。載
置部24に載置されるグリーンシート4Gは、ラバーヒータHに加熱されることによって
、自身の上面全体を所定の温度に昇温する。
【0028】
基台21には、Y矢印方向と直交する方向(以下単に、X矢印方向という。)に跨ぐ門
型のガイド部材25が架設されている。ガイド部材25の上側には、X矢印方向に延びる
インクタンク26が配設されている。インクタンク26は、機能液としての金属インクF
を貯留するとともに、貯留する金属インクFを液滴吐出ヘッド(以下単に、吐出ヘッドと
いう。)30に所定の圧力で供給する。吐出ヘッド30に供給される金属インクFは、液
滴Fb(図4参照)として吐出ヘッド30からグリーンシート4Gに向かって吐出される

【0029】
金属インクFは、機能材料としての金属微粒子、例えば粒径が数nm〜数十nmの金属
微粒子を溶媒に分散させた液体としての分散系金属インクを用いることができる。
金属インクFに使用する金属微粒子としては、例えば、金(Au)、銀(Ag)、銅(
Cu)、アルミニウム(Al)、パラジウム(Pd)、マンガン(Mn)、チタン(Ti
)、タンタル(Ta)、及びニッケル(Ni)などの材料の他、これらの酸化物、並びに
超電導体の微粒子などが用いられる。金属微粒子の粒径は1nm以上、0.1μm以下で
あることが好ましい。金属微粒子の粒径は、0.1μmより大きいと吐出ヘッド30のノ
ズルNに目詰まりを生じるおそれがある。また、金属微粒子の粒径は、1nmより小さい
と金属微粒子に対する分散剤の体積比が大きくなり、得られる膜中の有機物の割合が過多
となる。
【0030】
分散媒としては、上記の金属微粒子を分散できるもので凝集を起こさないものであれば
特に限定されない。例えば水系溶媒のほか、メタノール、エタノール、プロパノール、ブ
タノールなどのアルコール類、n−ヘプタン、n−オクタン、デカン、ドデカン、テトラ
デカン、トルエン、キシレン、シメン、デュレン、インデン、ジペンテン、テトラヒドロ
ナフタレン、デカヒドロナフタレン、シクロヘキシルベンゼンなどの炭化水素系化合物、
またエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン
、1,3−プロパンジオールなどのポリオール類、ポリエチレングリコール、エチレング
リコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコール
メチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコール
ジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、1,2−ジメトキシエ
タン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、p−ジオキサンなどのエーテル系化合物、
さらにプロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、ジ
メチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、シクロヘキサノン、乳酸エチルなどの極性
化合物を例示できる。これらのうち、微粒子の分散性と分散液の安定性、また液滴吐出法
への適用の容易さの点で、水、アルコール類、炭化水素系化合物、エーテル系化合物が好
ましく、より好ましい分散媒としては、水、炭化水素系化合物を挙げることができる。
【0031】
グリーンシート4Gに着弾する金属インクFは、自身の表面から溶媒あるいは分散媒の
一部を蒸発させる。このとき、グリーンシート4Gが加熱されているため、金属インクF
に含まれる溶媒あるいは分散媒の蒸発が促進される。さらに、グリーンシート4Gが通気
性基板であるため、図6に示すように、グリーンシート4Gに着弾する金属インクFは、
グリーンシート4Gと接する側においても、溶媒あるいは分散媒の一部を、グリーンシー
ト4Gを通して蒸発させる。従って、グリーンシート4Gに着弾する金属インクFは、自
身の乾燥に要する時間を、さらに短くする。尚、本実施形態では、グリーンシート4G(
通気性基板)に着弾する金属インクFの接触角、グリーンシート4Gの気孔率等が所定範
囲に設定されることによって、グリーンシート4Gに着弾する液滴Fbがグリーンシート
4G内に浸透しない。
【0032】
グリーンシート4Gに着弾する金属インクFは、乾燥にともなって、自身の表面を外縁
から増粘させる。つまり、グリーンシート4Gに着弾する金属インクFにおいては、金属
インクFの外周部における固形分(粒子)濃度が、中央部に比べて速く飽和濃度に達する
ため、金属インクFは、自身の表面を外縁から増粘させる。増粘する金属インクFの外縁
は、グリーンシート4Gの面方向に沿う自身の濡れ広がりを停止する、すなわちピニング
される。ピニングされる状態の金属インクFは、グリーンシート4Gに固定される。ピニ
ングされる状態の金属インクFは、自身の上に他の金属インクFが重ねられるとき、グリ
ーンシート4Gに固定される状態にあるため、次の液滴Fbに引き寄せられることはない

【0033】
ガイド部材25には、そのX矢印方向略全幅にわたって、X矢印方向に延びる上下一対
のガイドレール28が形成されている。上下一対のガイドレール28には、キャリッジ2
9が取り付けられている。キャリッジ29は、ガイドレール28に案内されてX矢印方向
及び反X矢印方向に移動する。キャリッジ29には、液滴吐出ヘッド30が搭載されてい
る。
【0034】
図3は吐出ヘッド30をグリーンシート4G側から見た下面図を示し、図4は吐出ヘッ
ドの要部断面図を示す。吐出ヘッド30の下側には、ノズルプレート31が備えられてい
る。ノズルプレート31は、その下面がグリーンシート4Gの上面と略平行に形成されて
いる。以下単に、ノズルプレート31の下面をノズル形成面31aとし、グリーンシート
4Gの上面を吐出面4Gaという。ノズルプレート31は、グリーンシート4Gが吐出ヘ
ッド30の直下に位置するとき、ノズル形成面31aと吐出面4Gaとの間の距離(以下
単に、プラテンギャップという。)を所定の距離(例えば、600μm)に保持する。
【0035】
図3において、ノズル形成面31aには、Y矢印方向に沿って配列される複数のノズル
Nからなる一対のノズル列NLが形成されている。一対のノズル列NLは、それぞれ1イ
ンチ当たりに180個のノズルNを有する。なお、図3では、説明の都合上、一列当たり
に10個のノズルNのみを記載している。
【0036】
一対のノズル列NLにおいては、X矢印方向から見て、一方のノズル列NLの各ノズル
Nが、他方のノズル列NLの各ノズルNの間を補間する。すなわち、吐出ヘッド30は、
Y矢印方向に沿って、1インチ当たりに180個×2=360個のノズルNを有する、す
なわちY方向の最大解像度を360dpiにする。
【0037】
図4において、吐出ヘッド30の上側には、流路としての供給チューブ30Tが連結さ
れている。供給チューブ30Tは、Z矢印方向に延びるように配設されて、インクタンク
26からの金属インクFを吐出ヘッド30に供給する。
【0038】
各ノズルNの上側には、供給チューブ30Tに連通するキャビティ32が形成されてい
る。キャビティ32は、供給チューブ30Tからの金属インクFを収容するとともに、収
容する金属インクFの一部を連通するノズルNに供給する。キャビティ32の上側には、
Z矢印方向に沿って振動することによりキャビティ32内の容積を拡大及び縮小する振動
板33が貼り付けられている。振動板33の上側には、圧電素子PZがノズルNごとに配
設されている。圧電素子PZは、Z矢印方向に沿って伸張して収縮することにより、振動
板33をZ矢印方向に沿って振動させる。Z矢印方向に沿って振動する振動板33は、金
属インクFを所定サイズの液滴FbにしてノズルNから吐出させる。吐出される液滴Fb
は、ノズルNの反Z矢印方向に飛行し、その後、グリーンシート4Gの吐出面4Gaに着
弾する。
【0039】
次に、上記のように構成した液滴吐出装置20の電気的構成を図5に従って説明する。
図5において、制御装置50は、CPU50A、ROM50B、RAM50Cなどを有
している。制御装置50は、格納する各種データ及び各種制御プログラムに従って、ステ
ージ23の搬送処理、キャリッジ29の搬送処理、吐出ヘッド30の液滴吐出処理、ラバ
ーヒータHの加熱処理などを実行する。
【0040】
制御装置50には、各種操作スイッチとディスプレイを有する入出力装置51が接続さ
れている。入出力装置51は、液滴吐出装置20によって実行される各種処理の処理状況
を表示する。入出力装置51は、内部配線6を形成するためのビットマップデータBDを
生成するとともに、ビットマップデータBDを制御装置50に入力する。
【0041】
ビットマップデータBDは、各ビットの値(0あるいは1)に応じて各圧電素子PZの
オンあるいはオフを規定するデータである。ビットマップデータBDは、吐出ヘッド30
すなわち、各ノズルNが通過する描画平面(吐出面4Ga)上の各位置に、配線用の液滴
Fbを吐出するか否かを規定するデータである。すなわち、ビットマップデータBDは、
吐出面4Gaに規定される内部配線6の目標形成位置に、配線用の液滴Fbを吐出させる
ためのデータである。
【0042】
制御装置50には、X軸モータ駆動回路52が接続されている。制御装置50は、駆動
制御信号をX軸モータ駆動回路52に出力する。X軸モータ駆動回路52は、制御装置5
0からの駆動制御信号に応答して、キャリッジ29を移動させるためのX軸モータMXを
正転又は逆転させる。制御装置50には、Y軸モータ駆動回路53が接続されている。制
御装置50は、駆動制御信号をY軸モータ駆動回路53に出力する。Y軸モータ駆動回路
53は、制御装置50からの駆動制御信号に応答して、ステージ23を移動させるための
Y軸モータMYを正転又は逆転させる。
【0043】
制御装置50には、ヘッド駆動回路54が接続されている。制御装置50は、所定の吐
出周波数に同期させて吐出タイミング信号LTを生成し、吐出タイミング信号LTをヘッ
ド駆動回路54に出力する。制御装置50は、各圧電素子PZを駆動するための駆動電圧
COMを吐出周波数に同期させてヘッド駆動回路54に出力する。
【0044】
制御装置50は、ビットマップデータBDを利用して所定の周波数に同期させてパター
ン形成用制御信号SIを生成し、パターン形成用制御信号SIをヘッド駆動回路54にシ
リアル転送する。ヘッド駆動回路54は、制御装置50からのパターン形成用制御信号S
Iを各圧電素子PZに対応させて順次シリアル/パラレル変換する。ヘッド駆動回路54
は、制御装置50からの吐出タイミング信号LTを受けるたびに、シリアル/パラレル変
換したパターン形成用制御信号SIをラッチし、このパターン形成用制御信号SIによっ
て選択される圧電素子PZに駆動電圧COMを供給する。
【0045】
制御装置50には、ラバーヒータ駆動回路55が接続されている。制御装置50は、駆
動制御信号をラバーヒータ駆動回路55に出力する。ラバーヒータ駆動回路55は、制御
装置50からの駆動制御信号に応答してラバーヒータHを駆動し、これによってステージ
23に載置するグリーンシート4Gの温度を予め定めた温度に制御する。本実施形態では
、予め定めたグリーンシート4Gの温度、すなわち吐出面4Gaの温度は、吐出ヘッド3
0から吐出される時の金属インクFの温度以上であって、かつ、金属インクFに含まれる
液体組成の沸点未満の温度である。ここで、液体組成の沸点とは、金属インクFに含まれ
る液体組成の中で最も沸点の低い組成の沸点である。
【0046】
つまり、制御装置50は、グリーンシート4Gの温度を、吐出ヘッド30から吐出され
る時の金属インクFの温度以上に制御する。これによって、金属インクFは、吐出される
時に吐出ヘッド30で乾燥せず、かつ、液滴Fbとして着弾する時に、速やかに加熱され
て乾燥する。また、制御装置50は、グリーンシート4Gの温度を、液体組成の沸点未満
に制御する。これによって、金属インクFは、液滴Fbとして着弾する時に、液滴Fbの
沸点未満に加熱されるため、グリーンシート4G上で突沸しない。
【0047】
次に、上記液滴吐出装置20を利用して形成するグリーンシート4Gの配線パターンの
形成方法について説明する。
図2に示すように、液滴吐出装置20は、グリーンシート4Gをステージ23に載置し
て、グリーンシート4Gの吐出面4Gaを上側に配置する。このとき、ステージ23は、
グリーンシート4Gをキャリッジ29の反Y矢印方向に配置する。このグリーンシート4
Gは、ビアホール7と、ビア配線8とを有するものであって、液滴吐出装置20によって
、吐出面4Gaに配線パターンとしての内部配線6を形成されるものである。
【0048】
この状態から、内部配線6を形成するためのビットマップデータBDが入出力装置51
から制御装置50に入力される。制御装置50は、入出力装置51から入力されるビット
マップデータBDを格納する。このとき、制御装置50は、ラバーヒータ駆動回路55を
介してラバーヒータHを駆動することによって、グリーンシート4Gの全体を一様に前記
所定の温度に加熱する。即ち、グリーンシート4Gの吐出面4Gaは、吐出ヘッド30か
ら吐出される時の金属インクFの温度以上であって、かつ、金属インクFに含まれる液体
組成の沸点未満(液体組成中の最も沸点の低い温度未満)の温度に制御される。
【0049】
次いで、制御装置50は、Y軸モータ駆動回路53を介してY軸モータMYを駆動する
ことによってステージ23を搬送し、これによって、吐出ヘッド30が目標形成位置の直
上を通過できるようにする。そして、制御装置50は、X軸モータ駆動回路52を介して
X軸モータMXを駆動することによって吐出ヘッド30の走査(往動)を開始させる。
【0050】
制御装置50は、吐出ヘッド30の走査(往動)を開始させると、ビットマップデータ
BDに基づいてパターン形成用制御信号SIを生成して、パターン形成用制御信号SIと
駆動電圧COMをヘッド駆動回路54に出力する。すなわち、制御装置50は、ヘッド駆
動回路54を介して各圧電素子PZを駆動し、内部配線6を形成するための位置上に吐出
ヘッド30が位置するたびに、選択されるノズルNから液滴Fbを吐出させる。このグリ
ーンシート4Gに着弾する液滴Fbは、グリーンシート4Gが吐出時の液滴Fbの温度以
上に加熱されているため、速やかに乾燥されていく。しかも、グリーンシート4Gが通気
性基板であるため、図6に示すように、液滴Fbは、グリーンシート4G内に向かって蒸
発し、乾燥がさらに促進される。
【0051】
本実施形態では、図7及び図8(a)〜(d)に示すように、吐出される各液滴Fbは
、それぞれ内部配線6を形成するための各位置に順次着弾する。詳述すると、本実施形態
では、パターン形成のために先に着弾する液滴Fbは、自身の一部の乾燥によって、グリ
ーンシート4Gに定着する(ピニングされる)、すなわち自身の濡れ広がりを停止する。
グリーンシート4Gに着弾する次の液滴Fbは、先の液滴Fbと自身の一部とが重なるよ
うに、図7及び図8(a)に1点鎖線で示す位置に吐出される。
【0052】
つまり、吐出ヘッド30が液滴Fbを吐出するタイミングは、液滴Fbが吐出ヘッド3
0から吐出される時からグリーンシート4Gに固定(ピニング)されるまでに要する時間
や、吐出ヘッド30が先の液滴Fbを吐出する位置から次の液滴Fbを吐出する位置に到
達するまでに要する移動時間等に基づいて決定される。従って、液滴吐出装置20は、グ
リーンシート4Gの加熱温度、吐出ヘッド30の移動速度等から予め、実験等で吐出タイ
ミング、すなわち吐出間隔時間を設定されている。
【0053】
従って、液滴吐出装置20は、吐出ヘッド30をX矢印方向に往動しながら液滴Fbを
上記吐出間隔時間で吐出するとき、先にグリーンシート4Gに着弾する液滴Fbを速やか
に乾燥する。
【0054】
そして、図8(b)に示すように、先の液滴Fbがグリーンシート4Gに対して固定さ
れる状態になると、次の液滴Fbは、固定状態にある先の液滴Fbに対して、自身の一部
が重なるように、図8(c)の1点鎖線で示す位置に着弾する。このとき、固定状態にあ
る先の液滴Fbは、グリーンシート4Gにピニングされるため、次の液滴Fbに引き寄せ
られることがない。また、先の液滴Fbに重なる次の液滴Fbは、自身の重ならない部分
がグリーンシート4Gに加熱されているため、直ちに乾燥を開始して速やかに乾燥され固
定状態になる。従って、先の液滴Fbに、次の液滴Fbが引き寄せられることはない。
【0055】
その結果、内部配線6を形成するための各位置に順次着弾する液滴Fbは、それぞれ着
弾する位置から偏移することなく乾燥される。そのため、液滴吐出装置20は、図8(d
)に示すように、内部配線6のための配線用パターンPを形成できる。しかも、液滴吐出
装置20は、グリーンシート4Gを加熱するとともに通気性基板のグリーンシート4Gを
使用するため、着弾する液滴Fbを速やかに乾燥させてグリーンシート4Gに固定する。
この結果、液滴吐出装置20は、液滴Fbの吐出間隔時間を短くすることができるため、
内部配線6のための配線用パターンPを短時間で形成することができる。さらに、液滴吐
出装置20は、グリーンシート4Gの温度を、液滴Fbの沸点未満の温度に制御するため
、着弾する液滴Fbの突沸を回避させることができ、配線用パターンPを確実に形成する
ことができる。
【0056】
制御装置50は、吐出ヘッド30をX矢印方向に走査(往動)させて、1回目の液滴F
bの動作を完了する。次いで、制御装置50は、内部配線6を形成するためのグリーンシ
ート4G上の新たな位置に液滴Fbを吐出させるべく、Y軸モータ駆動回路53を介して
Y軸モータMYを駆動することによってステージ23をY方向に所定の量だけ搬送させた
後、吐出ヘッド30を反X矢印方向に走査(復動)させる。
【0057】
吐出ヘッド30の走査(復動)を開始させると、制御装置50は、前記と同様にビット
マップデータBDに基づいてヘッド駆動回路54を介して各圧電素子PZを駆動する。そ
して、制御装置50は、内部配線6を形成するための各位置に吐出ヘッド30が位置する
たびに、選択されるノズルNから液滴Fbを吐出させる。この場合においても、前記と同
様に、先にグリーンシート4Gに着弾する液滴Fbは、直ちに乾燥を開始して速やかに乾
燥する。そして、液滴Fbがグリーンシート4Gに対して固定される状態になると、制御
装置50は、固定状態にある液滴Fbに対して、自身の一部が重なるように、次の液滴F
bを着弾させる。
【0058】
以後、制御装置50は、吐出ヘッド30をX矢印方向及び反X矢印方向に往復動させる
とともに、ステージ23をY矢印方向に搬送させる。そして、制御装置50は、吐出ヘッ
ド30の往復動中に液滴FbをビットマップデータBDに基づくタイミングで吐出させる
動作を繰り返す。これによって、液滴吐出装置20は、グリーンシート4G上に、液滴F
bによる内部配線6の配線用パターンPを形成する。
【0059】
次に、上記のように構成した第一実施形態の効果を以下に記載する。
(1)上記実施形態によれば、グリーンシート4Gの温度が、吐出時の液滴Fbの温度
以上に加熱されるため、着弾する液滴Fbが速やかに乾燥する。そのため、液滴吐出装置
20は、液滴Fbの吐出間隔時間を短くすることができ、配線用パターンPを短時間で形
成することができる。
【0060】
(2)上記実施形態によれば、グリーンシート4Gが通気性基板であるため、液滴Fb
は、グリーンシート4G内を通して蒸発することができ、これによって乾燥をさらに促進
させる。従って、液滴吐出装置20は、液滴Fbの吐出間隔時間をさらに短くすることが
でき、配線用パターンPをより短時間で形成することができる。
【0061】
(3)上記実施形態によれば、グリーンシート4Gの加熱温度は、液滴Fbの沸点未満
の温度に制御されているので、着弾する液滴Fbが突沸しない。従って、液滴吐出装置2
0は、高密度・高精細な配線用パターンPを形成することができる。
【0062】
(4)上記実施形態によれば、液滴吐出装置20は、先に着弾する液滴Fbが固定状態
にある時、その一部と重なるように、次の液滴Fbを着弾させる。従って、固定状態にあ
る先の液滴Fbは、自身の一部が重なるように着弾する次の液滴Fbに引き寄せられるこ
とがない。よって、液滴吐出装置20は、高密度・高精細な配線用パターンPを形成でき
る。
【0063】
(5)上記実施形態によれば、液滴吐出装置20は、ラバーヒータHによって、グリー
ンシート4Gの上面全体を一様に加熱する。従って、グリーンシート4Gに着弾する液滴
Fbは、自身の外周部から蒸発して、外周部における固形分(粒子)濃度を中央部に比べ
て速く飽和濃度に到達させる。この結果、着弾する液滴Fbは、グリーンシート4Gの面
方向に沿う自身の濡れ広がりを停止する。つまり、着弾する液滴Fbは、外周部から固定
状態になるため、着弾時の外形形状を維持する。その結果、液滴吐出装置20は、高密度
・高精細なパターンを形成することができる。
【0064】
(6)上記実施形態によれば、液滴吐出装置20は、着弾する液滴Fbが固定するまで
の時間を用いて吐出間隔時間を設定するため、先の液滴が確実に固定状態になった後に、
次の液滴を吐出させることができる。
【0065】
(第二実施形態)
以下、本発明を具体化した第二実施形態を図9〜図11に従って説明する。第二実施形
態は、第一実施形態のステージ23を変更したものである。そのため、以下においては、
その変更点について詳しく説明する。
【0066】
図9において、ステージ23は、ステージ本体23aと、ステージ本体23aの上面に
配設されるラバーヒータHと、ラバーヒータHの上面に配置されて載置部を構成するステ
ージ板23bとを有している。ステージ本体23aは、基台21の上面に配設されて、Y
軸モータMYの駆動力を受けることによってY矢印方向及び反Y矢印方向に移動する。ラ
バーヒータHは、ステージ本体23aとステージ板23bとの間に配設されて、ステージ
板23bの上面に載置されるグリーンシート4Gを所定の温度に加熱する。ステージ板2
3bは、セラミック基板であって通気性を有する多孔質基板であり、その上面にグリーン
シート4Gを載置する。ステージ板23bに載置されるグリーンシート4Gは、ステージ
板23bを通してラバーヒータHからの熱量を受けることによって、自身の上面全体を所
定の温度に昇温する。
【0067】
ステージ23は、図9に破線で示すように、ステージ本体23aの内部からラバーヒー
タHの上面に延びる吸引通路23cを有する。吸引通路23cは、その一端開口部がステ
ージ板23bの下面であって、載置されるグリーンシート4Gと相対向する位置に配設さ
れる。吸引通路23cは、その他端開口部がステージ本体23aの側面に連結される図示
しない吸引チューブに連結されている。吸引チューブは、吸引ポンプVP(図11参照)
と接続されることによって、吸引チューブ及び吸引通路23cを介してステージ板23b
の下側を減圧する。この時、ステージ板23bが通気性を有する多孔質基板であるため、
吸引ポンプVPの吸引力は、ステージ板23b内を通してグリーンシート4Gの下面の全
体に到達する。グリーンシート4Gの下面に及ぶ吸引力は、グリーンシート4Gをステー
ジ板23bに吸着させる。
【0068】
図10において、グリーンシート4Gに着弾する金属インクF(液滴Fb)は、自身の
表面から溶媒あるいは分散媒の一部を蒸発させる。このとき、グリーンシート4Gが加熱
されているため、液滴Fbに含まれる溶媒あるいは分散媒の蒸発が促進される。さらに、
グリーンシート4Gが通気性基板であるため、図10に示すように、グリーンシート4G
に着弾する液滴Fbは、グリーンシート4Gと接する側においても、溶媒あるいは分散媒
の一部を、グリーンシート4Gを通して蒸発させる。従って、グリーンシート4Gに着弾
する液滴Fbは、自身の乾燥に要する時間を、さらに短くする。
【0069】
しかも、グリーンシート4Gは、通気性のステージ板23bに載置されるため、ステー
ジ板23bを介する吸引ポンプVPの吸引力によって、自身の下面を吸引される。グリー
ンシート4Gに着弾する液滴Fbは、吸引ポンプVPの吸引力を受けるため、溶媒あるい
は分散媒をグリーンシート4G内に向けてさらに拡散させる。その結果、グリーンシート
4Gに着弾する液滴Fbは、乾燥時間をさらに短くする。
【0070】
尚、本実施形態では、グリーンシート4G(通気性基板)に着弾する液滴Fbの接触角
、グリーンシート4Gの気孔率、及びグリーンシート4Gの下面に及ぶ吸引力等が所定範
囲に設定されることによって、グリーンシート4Gに着弾する液滴Fbがグリーンシート
4G内に浸透しない。
【0071】
次に、上記のように構成した液滴吐出装置20の電気的構成を図11に従って説明する

図11において、制御装置50は、格納する各種データ及び各種制御プログラムに従っ
て、ステージ23の搬送処理、キャリッジ29の搬送処理、吐出ヘッド30の液滴吐出処
理、ラバーヒータHの加熱処理、グリーンシート4Gの下側の減圧処理などを実行する。
【0072】
制御装置50には、吸引ポンプ駆動回路56が接続されている。制御装置50は、駆動
制御信号を吸引ポンプ駆動回路56に出力する。吸引ポンプ駆動回路56は、制御装置5
0からの駆動制御信号に応答して吸引ポンプVPを駆動し、これによってステージ板23
bに載置するグリーンシート4Gを所定の減圧状態で載置固定する。
【0073】
配線パターンを形成するとき、制御装置50は、ステージ本体23aに設けたラバーヒ
ータHを駆動することによって、ステージ板23bに載置されるグリーンシート4Gの全
体を一様に前記所定の温度に加熱する。即ち、グリーンシート4Gの吐出面4Gaは、吐
出ヘッド30から吐出される時の金属インクFの温度以上であって、かつ、金属インクF
に含まれる液体組成の沸点未満(液体組成中の最も沸点の低い温度未満)の温度に制御さ
れる。さらに、制御装置50は、吸引ポンプ駆動回路56を介して吸引ポンプVPを駆動
し、ステージ板23bに載置されるグリーンシート4Gの下側を減圧する。従って、グリ
ーンシート4Gの下側が減圧状態であるため、グリーンシート4G内に向かう液滴Fbの
蒸気の拡散がさらに促進され、これによって液滴Fbの乾燥時間がさらに短縮される。
【0074】
次に、上記のように構成した第二実施形態の効果を以下に記載する。
(7)上記実施形態によれば、グリーンシート4Gの下側が減圧状態であるため、グリ
ーンシート4Gに着弾する金属インクFは、グリーンシート4G内に向かう蒸気の拡散を
さらに促進させる。その結果、グリーンシート4Gに着弾する金属インクFは、乾燥時間
をさらに短くできる。
【0075】
(8)しかも、グリーンシート4Gは、通気性を有する多孔質性のステージ板23bに
載置される。従って、グリーンシート4Gの下側が多孔質のステージ板23bを介して減
圧されるため、グリーンシート4Gの下側の全体が均一に減圧される。この結果、グリー
ンシート4Gに着弾する液滴Fbは、着弾する位置に左右されることなく、グリーンシー
ト4Gと接する面側の蒸発を、ムラ無く一様に拡散させることができる。
【0076】
(9)さらに、液滴Fbから蒸発する蒸気が吸引通路23cを介して吸引ポンプVPに
集約されるため、液滴吐出装置20は、蒸気による汚染を低減することができる。
尚、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
【0077】
・上記第二実施形態では、ステージ板23bが、通気性の多孔質セラミック基板である
。ステージ板23bは、これに限定されるものではなく、通気性のあるものであればよく
、例えば通気性を有する焼結金属でもよい。
【0078】
・上記実施形態では、ステージ23が、ステージ本体23aに、ラバーヒータHと、通
気性の多孔質セラミック基板よりなるステージ板23bとを積層する。これを、例えば、
ステージ本体23aの上面が凹部を有し、その凹部の底部にラバーヒータHが配設されて
、そのラバーヒータHの上部に、ステージ板23bが配設される構成でもよい。
【0079】
また、ステージ23の全体が、通気性を有する多孔質性のセラミックであってもよく、
通気性の多孔質焼結金属であってもよい。
・上記実施形態では、先の液滴Fbに対して、一部重ねて次の液滴Fbを着弾させる際
、液滴吐出装置20は、先の液滴Fbがグリーンシート4Gに固定状態になった後に、次
の液滴を着弾させる。これに限らず、液滴吐出装置20は、先の液滴Fbがグリーンシー
ト4Gに固定状態になる前に、次の液滴Fbを着弾させるようにしてもよい。
【0080】
・上記実施形態では、先の液滴Fbに対して、自身の一部重なるように次の液滴Fbが
着弾する。これに限らず、次の液滴Fbの一部が、先の液滴Fbと重ならないように着弾
する構成でもよい。
【0081】
・上記実施形態では、先の液滴Fbと次の液滴Fbとが、着弾径の半分のピッチで重ね
るようにしたが、その重なり具合は適宜変更して実施してもよい。
・上記実施形態では、複数の液滴Fbが吐出の順番に従って重なることにより、配線用
パターンPが形成される。これに限らず、例えば、複数の液滴Fbが、図12(a)〜(
f)に示す順番で吐出されることにより、配線用パターンPが形成されてもよい。
【0082】
すなわち、図12(a)に示すように、パターン形成のために先の液滴Fbが、所定に
位置に着弾すると、着弾した液滴Fbから離間する1点鎖線で示す着弾位置A1に、次の
液滴Fbが着弾する。着弾位置A1に液滴Fbが着弾すると、次の液滴Fbは、最初に着
弾した液滴Fbに自身の一部を重ねるように、図12(b)に1点鎖線で示す着弾位置A
2に着弾する。
【0083】
着弾位置A2に液滴Fbが着弾すると、次の液滴Fbは、着弾位置A1に着弾する液滴
Fbに自身の一部を重ねるように、図12(c)に1点鎖線で示す着弾位置A3に着弾す
る。以後、同様に、図12(d)、(e)に示す順によって、着弾位置A4,A5に液滴
Fbが着弾配置する。これによって、図12(f)に示すような、配線用パターンPが形
成される構成であってもよい。
【0084】
・上記実施形態では、ラバーヒータHがグリーンシート4Gを加熱するが、その他の加
熱手段がグリーンシート4Gを加熱するようにしてもよい。
・上記実施形態では、機能液が、金属インクFとして具体化される。これに限らず、例
えば、機能液は、液晶材料を含有した機能液に具体化されてもよい。つまり、機能液は、
パターンを形成するために吐出させる液であればよい。
【0085】
・上記実施形態では、基体が、グリーンシート4Gに具体化される。これに限らず、基
板は、通気性基板であって直ちに液滴を浸透させない基板であるならばどんな基板でもよ
い。
【0086】
・上記実施形態では、液滴吐出手段が、圧電素子駆動方式の液滴吐出ヘッド30に具体
化される。これに限らず、液滴吐出ヘッドは、抵抗加熱方式や静電駆動方式の吐出ヘッド
に具体化されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】回路モジュールの側断面図。
【図2】液滴吐出装置の全体斜視図。
【図3】液滴吐出ヘッドをグリーンシート側から見た下面図。
【図4】液滴吐出ヘッドの要部側断面図。
【図5】液滴吐出装置の電気的構成を説明するための電気ブロック回路図。
【図6】グリーンシートを説明するための断面構造の模式図。
【図7】パターン形成の作用を説明するための説明図。
【図8】(a)〜(d)はパターン形成の液滴の吐出順序を示す図。
【図9】ステージの構成を説明するための説明図。
【図10】グリーンシートを説明するための断面構造の模式図。
【図11】液滴吐出装置の電気的構成を説明するための電気ブロック回路図。
【図12】(a)〜(f)はその他の順序でパターンの形成を示す図。
【符号の説明】
【0088】
1…回路モジュール、2…LTCC多層基板、4…低温焼成基板、4G…基体としての
グリーンシート、6…内部配線、20…液滴吐出装置、23…ステージ、23a…ステー
ジ本体、23b…ステージ板、30…液滴吐出ヘッド、50…制御装置、F…機能液とし
ての金属インク、Fb…液滴、PZ…圧電素子、P…パターン、H…ラバーヒータ、VP
…吸引ポンプ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板にパターンを形成するパターン形成方法であって、
機能材料を含む機能液からなる液滴を加熱される通気性基板の上面に吐出することによ
り、前記通気性基板の上面に前記パターンを形成することを特徴とするパターン形成方法

【請求項2】
請求項1に記載のパターン形成方法であって、
前記液滴を吐出するとき、前記通気性基板の下側を減圧することを特徴とするパターン
形成方法。
【請求項3】
請求項2に記載のパターン形成方法であって、
前記液滴を吐出するとき、通気性を有する多孔質性のステージに前記通気性基板を載置
して前記ステージに前記通気性基板を吸着させることを特徴とするパターン形成方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一つに記載のパターン形成方法であって、
前記液滴を吐出するとき、前記通気性基板の表面温度を、前記液滴を吐出するときの前
記機能液の温度以上であって、かつ、前記機能液に含まれる液体組成の沸点未満にするこ
とを特徴とするパターン形成方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1に記載のパターン形成方法において、
前記通気性基板は、多孔質性基板であって、セラミック粒子と樹脂とから構成される低
温焼成用シートであり、
前記機能液は、機能材料としての金属粒子を分散させた液体であることを特徴とするパ
ターン形成方法。
【請求項6】
基板を載置するステージと、
機能材料を含む機能液を液滴として吐出する液滴吐出ヘッドとを有し、
前記ステージと前記液滴吐出ヘッドとを相対移動させるとともに、前記ステージに載置
する前記基板の上面に前記液滴吐出へッドから前記液滴を吐出することにより、前記基板
の上面にパターンを形成する液滴吐出装置であって、
前記基板は、通気性基板であり、
前記ステージは、前記基板を加熱する加熱手段を有することを特徴とする液滴吐出装置

【請求項7】
請求項6に記載の液滴吐出装置であって、
前記ステージは、
通気性を有して前記基板を載置する載置部と、
前記載置部を介して前記載置部に載置される前記基板の下側を減圧する減圧手段とを有
することを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項8】
回路素子を実装するとともに前記回路素子に対して電気的に接続される配線を有する回
路基板であって、
前記配線は、請求項1〜5のいずれか1に記載のパターン形成方法によって形成される
ことを特徴とする回路基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−155196(P2008−155196A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−189151(P2007−189151)
【出願日】平成19年7月20日(2007.7.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】