説明

パターン検査装置およびパターン検査方法

【目的】欠陥の検出および検出される欠陥種別の判定を行うパターン検査装置を提供する。
【構成】光源と、偏光状態の異なる第1の検査光と第2の検査光とを発生する検査光発生部を含み、第1の検査光と第2の検査光とを試料の同一面に照射する反射照明光学系と、試料に照射される第1の検査光と前記第2の検査光とを、それぞれ第1の像と第2の像として結像する結像光学系と、第1の像と第2の像とを拡大する拡大光学系と、拡大光学系で拡大される第1の像と第2の像とを撮像する画像センサと、画像センサで撮像される第1の像の画像である第1の検査画像と、第2の像の画像である第2の検査画像とを記憶する記憶部と、記憶部に記憶される第1の検査画像を第1の基準画像と比較し、第2の検査画像を第2の基準画像と比較して欠陥を検出する検出部と、欠陥の欠陥種別を判定する判定部と、を備えるパターン検査装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン検査装置およびパターン検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LSI等の半導体装置の高集積化に伴い、マスク(フォトマスクまたはレチクル)に形成されるマスクパターンの微細化が進んでいる。そのため、マスクを検査するパターン検査装置にも高性能化が要求される。パターン検査装置は、マスクをCCD等の画像センサで撮像し、撮像した検査画像を基準画像と比較することで、欠陥を検出する。
【0003】
マスクパターンの微細化を進めるために、例えば、露光光を波長13.5nm程度のEUV(Extreame Ultra Violet)光とし、EUV露光に対応するEUVマスクを用いることで、微細なパターンを描く試みがなされている。
【0004】
このようなマスクを検査するパターン検査装置においては、パターンの欠陥の検出だけではなく、検出される欠陥種別の判定が求められるようになってきている。
【0005】
特許文献1には、偏光状態の異なる2種の検査光を用いてマスクを検査するパターン検査装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−222625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情を考慮してなされたものであり、その目的とするところは、欠陥の検出および検出される欠陥種別の判定を行うパターン検査装置およびパターン検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様のパターン検査装置は、光源と、光源から偏光状態の異なる第1の検査光と第2の検査光とを発生する検査光発生部を含み、第1の検査光と第2の検査光とを試料の同一面に照射する反射照明光学系と、試料に照射される第1の検査光と第2の検査光とを、それぞれ第1の像と第2の像として結像する結像光学系と、第1の像と第2の像とを拡大する拡大光学系と、拡大光学系で拡大される第1の像と第2の像とを撮像する画像センサと、画像センサで撮像される第1の像の画像である第1の検査画像と、第2の像の画像である第2の検査画像とを記憶する記憶部と、記憶部に記憶される第1の検査画像を第1の基準画像と比較し、第2の検査画像を第2の基準画像と比較して欠陥を検出する検出部と、欠陥の欠陥種別を判定する判定部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
上記態様のパターン検査装置において、判定部は、検出部において第1の検査画像と第1の基準画像との比較によりこの欠陥が欠陥と検出されたか否かの情報と、第2の検査画像と第2の基準画像との比較によりこの欠陥が欠陥と検出されたか否かの情報とに基づき欠陥の欠陥種別を判定する機構を有することが望ましい。
【0010】
上記態様のパターン検査装置において、判定部は、第1の検査画像と第1の基準画像との階調差の情報と、第2の検査画像と第2の基準画像との階調差の情報との比較によりこの欠陥の欠陥種別を判定する機構を有することが望ましい。
【0011】
上記態様のパターン検査装置において、反射照明光学系は、第1の検査光が試料に対しC偏光(円偏光)入射またはS偏光入射となり、第2の検査光が試料に対しP偏光入射となるよう構成されることが望ましい。
【0012】
本発明の一態様のパターン検査方法は、偏光状態の異なる第1の検査光と第2の検査光とを試料の同一面に照射し、試料に照射される第1の検査光と第2の検査光とを、それぞれ第1の像と第2の像として結像し、第1の像と第2の像とを拡大し、拡大した第1の像と第2の像とを撮像し、撮像した第1の像の画像である第1の検査画像と、第2の像の画像である第2の検査画像とを記憶し、第1の検査画像を第1の基準画像と比較し、第2の検査画像を第2の基準画像と比較して欠陥を検出し、欠陥の欠陥種別を判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、欠陥の検出および検出される欠陥種別の判定を行うパターン検査装置およびパターン検査方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1の実施の形態のパターン検査装置の内部構成を示す概念図である。
【図2】第1の実施の形態の検査光発生部の説明図である。
【図3】第1の実施の形態のパターン検査装置による欠陥種別判定の一例を説明する図である。
【図4】第2の実施の形態のパターン検査装置による欠陥種別判定の一例を説明する図である。
【図5】第3の実施の形態のパターン検査装置の内部構成を示す概念図である。
【図6】第3の実施の形態の検査光発生部の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
発明者らは、マスクのパターン欠陥検出において、欠陥種別(欠陥種類)が異なると、異なる偏光状態の検査光に対し得られる画像の挙動が異なることを見出した。例えば、ある欠陥種別は第1の偏光状態の検査光では検出しやすいが第2の偏光状態では検出しにくく、別の欠陥種別は第1の偏光状態の検査光では検出しにくいが第2の偏光状態では検出しやすいという現象を見出した。
【0016】
本願発明は、発明者らの見出した上記現象に基づき完成されたものである。以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0017】
なお、本明細書中、C偏光(円偏光)は楕円偏光も含む概念として使用する。
【0018】
(第1の実施の形態)
本実施の形態のパターン検査装置は、光源と、光源から偏光状態の異なる第1の検査光と第2の検査光とを発生する検査光発生部を含み、第1の検査光と第2の検査光とを試料の同一面に照射する反射照明光学系と、を備えている。そして、試料に照射される第1の検査光と第2の検査光とを、それぞれ第1の像と第2の像として結像する結像光学系と、第1の像と第2の像とを拡大する拡大光学系と、拡大光学系で拡大される第1の像と第2の像とを撮像する画像センサと、を備えている。さらに、画像センサで撮像される第1の像の画像である第1の検査画像と、第2の像の画像である第2の検査画像とを記憶する記憶部と、記憶部に記憶される第1の検査画像を第1の基準画像と比較し、第2の検査画像を第2の基準画像と比較して欠陥を検出する検出部と、欠陥の欠陥種別を判定する判定部と、を備える。
【0019】
以下、試料がEUVマスクであり、第1の検査光が試料の試料面に対しC偏光(円偏光)入射し、第2の検査光が試料の試料面に対しP偏光入射する場合を例に説明する。また、得られる検査画像を、あらかじめマスクの設計データを変換して準備される参照画像(基準画像)と比較してパターン検査するDB(Die to Database)比較を例に説明する。
【0020】
図1は、本実施の形態のパターン検査装置の内部構成を示す概念図である。
【0021】
パターン検査装置100は、マスク10を検査対象である試料として、マスク10の欠陥を検査する装置である。パターン検査装置100は、検査画像生成部12やデータ処理部14などを備えている。
【0022】
検査画像生成部12は、光源16、ビームエキスパンダ18、光束分岐素子20、初段コリメータレンズ24、ハーフミラー26、対物レンズ28、XYθテーブル30、XYθモータ32、変位計34、初段結像レンズ36、第1のコリメータレンズ38a、第2のコリメータレンズ38b、第1の結像レンズ40a、第2の結像レンズ40b、第1の画像センサ42a、第2の画像センサ42b、第1のセンサ回路44a、第2のセンサ回路44bを備えている。
【0023】
さらに、プリズムまたはハーフミラー等で構成される光束分岐素子20で分岐される2つの光路の一方の光路上であって、光束分岐素子20と初段コリメータレンズ24との間に、偏向板、波長板または偏光プリズム等で構成される偏光素子80と、領域分割型波長板82とを備えている。
【0024】
光源16は、例えば、波長185nm以上265nm以下のC偏光(円偏光)の紫外レーザ光を出射するレーザ光源である。ビームエキスパンダ18、光束分岐素子20、偏光素子80、領域分割型波長板82が、光源16から出射される光から偏光状態の異なる第1の検査光Lと第2の検査光Lとを発生する検査光発生部84に含まれる。
【0025】
そして、検査光発生部84、初段コリメータレンズ24、ハーフミラー26、対物レンズ28が、第1の検査光Lと第2の検査光LをXYθテーブル30に載置されたマスク10に照射する反射照明光学系を構成する。第1の検査光Lと第2の検査光Lはマスク10の同一面の異なる領域に同時に照射される。
【0026】
ここで、第1の検査光Lは、C偏光(円偏光)である。第1の検査光Lは反射照明光学系により、マスク10のマスク面に対してC偏光入射されるよう構成されている。第1の検査光Lがマスク10に対して入射する際、光軸はマスク面に垂直である。
【0027】
また、第2の検査光Lは、直線偏光である。そして、偏光素子80と領域分割型波長板82とにより偏光状態が制御され、マスク10のマスク面に対してP偏光入射するよう偏光方向が制御される。第2の検査光Lがマスク10に対して入射する際、光軸はマスク面に垂直である。
【0028】
図2は、本実施の形態の検査光発生部の説明図である。光束分岐素子20は、光源16から出射される円偏光のレーザ光を2つの円偏光の光に分岐する。
【0029】
光束分岐素子20で分岐された2つの円偏光のうちの一方の光である第2の検査光Lは、偏光素子80によって直線偏光に変換される。そして、4分割型1/2波長板である領域分割型波長板82により、第2の検査光Lの偏光状態が図示するような放射状になる。これにより、マスク10のマスク面に第2の検査光LがP偏光入射されることになる。
【0030】
なお、領域分割型波長板82の分割数は4分割でなくとも8分割、あるいはそれより多い分割数であっても構わない。入射される第2の検査光Lをより完全なP偏光入射とする観点からは、8分割以上であることが望ましい。
【0031】
また、対物レンズ28、初段結像レンズ36が、反射照明光学系でマスク10に照射されマスク面で反射した検査光を、像面46に結像する結像光学系を構成する。結像光学系は、マスク10に照射された第1の検査光L、第2の検査光Lを、第1の像Iおよび第2の像Iとして同一像面46に結像する。
【0032】
そして、第1のコリメータレンズ38aと第1の結像レンズ40aが第1の拡大光学系、第2のコリメータレンズ38bと第2の結像レンズ40bが第2の拡大光学系を構成する。第1の拡大光学系は第1の像Iを拡大する。また、第2の拡大光学系は第2の像Iを拡大する。
【0033】
第1の画像センサ42aは、第1の拡大光学系で拡大された第1の像Iを撮像する。また、第2の画像センサ42bは、第2の拡大光学系で拡大された第2の像Iを撮像する。第1および第2の画像センサは、例えばCCD、フォトダイオードアレイまたはCMOSセンサである。
【0034】
データ処理部14は、制御計算機となるCPU50が、データ転送線路となるバス52を介して、大容量記憶装置54、主記憶装置56、印字装置58、表示装置60、テーブル制御部62、展開部64、参照部66、第1の比較部68a、第2の比較部68b、位置検出部70等に接続されている。
【0035】
主記憶装置56は、第1の画像センサ42aで撮像された第1の像Iを、第1のセンサ回路44aでデータ処理した画像である第1の検査画像と、第2の画像センサ42bで撮像された第2の像Iを、第2のセンサ回路44bでデータ処理した画像である第2の検査画像を記憶する記憶部である。
【0036】
第1の検出部68aでは、記憶部に記憶された第1の検査画像と、やはり記憶部に記憶された第1の基準画像とを比較してマスク10の欠陥を検出する。また、第2の検出部68bでは、記憶部に記憶された第2の検査画像と、やはり記憶部に記憶された第2の基準画像とを比較してマスク10の欠陥を検出する。
【0037】
ここで、第1および第2の基準画像は、マスクの設計データを用いて展開部64や参照部66で生成される参照画像である。第1の基準画像は、C偏光入射によって得られる画像用に最適化され、第2の基準画像は、P偏光入射によって得られる画像用に最適化される。第1の基準画像および第2の基準画像は、例えば、あらかじめ生成され主記憶装置56に記憶される構成となっている。
【0038】
さらに、パターン検査装置100は、第1の検出部68aまたは第2の検出部68bで検出された欠陥の欠陥種別を判定する判定部88を備えている。判定部88は、偏光状態の異なる第1の検査光Lと第2の検査光Lとで得られる第1の検査画像と第2の検査画像の差異に基づき欠陥種別を判定する機構を備えている。
【0039】
具体的には、第1および第2の検出部68a、68bにおいて第1の検査画像と第1の基準画像との比較によりこの欠陥が欠陥と検出されたか否かの情報と、第2の検査画像と第2の基準画像との比較によりこの欠陥が欠陥と検出されたか否かの情報とに基づき欠陥の欠陥種別を判定する機構を備えている。
【0040】
例えば、判定部88は、第1の検出部68aでは検出されたが、第2の検出部68bでは検出されなかった欠陥を特定の欠陥種別であると判定する。この判定部88を設けることにより、パターン検査装置100は、マスク10の欠陥の検出のみならず、検出される欠陥の欠陥種別をも判定することが可能となる。
【0041】
図3は、本実施のパターン検査装置による欠陥種別判定の一例を説明する図である。
実験に用いた、EUVマスクは、反射層としてモリブデン(Mo)/シリコン(Si)の多層構造を備え、吸収層としてクロムナイトライド(CrN)/タンタルボロンナイトライド(TaBN)/タンタルボロンオキサイド(TaBO)の積層構造を備えるマスクである。また、マスクパターンのハーフピッチは128nmである。なお、EUVマスクは、4倍体のマスクである。
【0042】
検査光として波長199nmのDUV(Deep Ultra Violet)光を用いている。図3は、凸欠陥、すなわち吸収層が出っ張るタイプの欠陥と、凹欠陥、すなわち吸収層が欠けるタイプの欠陥との検出限界欠陥サイズの偏光状態依存性を示している。
【0043】
凸欠陥についてはP偏光入射の方が検出感度が高く、凹欠陥についてはC偏光入射の方が検出感度が高いことが分かる。P偏光は、入射面(入射光と反射光を含む平面)に平行に振動する。言い換えれば、マスク面に垂直に振動する。
【0044】
このため、マスク10に対してP偏光入射の検査光で検査する場合は、パターンのスペース部分に検査光が入り込みやすい。したがって、スペース部分(反射層部分)の信号強度が大きくなる。このため、スペース部分のサイズが変化する凸欠陥の検出感度が高くなると考えられる。
【0045】
一方、マスク10に対してC偏光入射の検査光で検査する場合は、マスク面に平行に振動する成分があるため、パターンのスペースに検査光が入り込みにくい。このため、スペース部分(反射層部分)の信号強度は小さい。凹欠陥の場合、多くはパターン部(吸収層部分)の上部が欠けるだけ、すなわち、パターン部が下まで無くなる欠陥ではない。
【0046】
このため、凹欠陥の検出にはスペース部分(反射層部分)の信号強度が小さくても構わない。逆に、スペース部分の信号強度が小さいほうが、パターン部の欠けによるコントラストが見えやすくなり、凹欠陥の検出感度が高くなると考えられる。
【0047】
したがって、判定部88において、P偏光入射のみで検出される欠陥、すなわち第2の検出部68bのみで検出される欠陥は凸欠陥、C偏光入射のみで検出される欠陥、すなわち第1の検出部68aのみで検出される欠陥は凹欠陥と判定することが可能である。
【0048】
以上、本実施の形態のパターン検査装置100によれば、マスクの欠陥の検出のみならず、検出された欠陥の欠陥種別を判定することも可能となる。また、パターン検査装置100は2つの検査光を同時にマスクに照射し、同時に2つの検査画像を取得し、同時に2つの検査画像について欠陥検出が可能な構成となっている。したがって、マスク10の欠陥検出および欠陥種別判定を高いスループットで行うことが可能となる。
【0049】
次に、本実施の形態のパターン検査方法について説明する。
【0050】
本実施の形態のパターン検査方法は、偏光状態の異なる第1の検査光と第2の検査光とを試料の同一面に照射し、試料に照射される第1の検査光と第2の検査光とを、それぞれ第1の像と第2の像として結像し、第1の像と第2の像とを拡大し、拡大した第1の像と第2の像とを撮像し、撮像した第1の像の画像である第1の検査画像と、第2の像の画像である第2の検査画像とを記憶し、第1の検査画像を第1の基準画像と比較し、第2の検査画像を第2の基準画像と比較して欠陥を検出し、この欠陥の欠陥種別を判定する。
【0051】
本実施の形態のパターン検査方法は、例えば、上記パターン検査装置100を用いて行われる。まず、光源16と検査光発生部84で、偏光状態の異なる第1の検査光Lと第2の検査光Lとを発生する。
【0052】
次に、反射照明光学系により、第1の検査光Lと第2の検査光Lをマスク10の同一面の異なる領域に同時に照射する。ここで、第1の検査光Lは、C偏光(円偏光)である。第1の検査光Lは反射照明光学系により、マスク10のマスク面に対しC偏光入射される。また、第2の検査光Lは、直線偏光である。そして、偏光素子80と領域分割型波長板82とにより偏光状態が制御され、マスク10のマスク面に対してP偏光入射される。
【0053】
そして、結像光学系により、マスク10に照射され反射した第1の検査光L、第2の検査光Lを、第1の像Iおよび第2の像Iとして同一像面46に結像する。そして、第1の拡大光学系により第1の像Iを拡大する。また、第2の拡大光学系により第2の像Iを拡大する。
【0054】
次に、第1の画像センサ42aで、第1の拡大光学系で拡大された第1の像Iを撮像する。また、第2の画像センサ42bで、第2の拡大光学系で拡大された第2の像Iを撮像する。
【0055】
次に、例えば、主記憶装置56に、第1の画像センサ42aで撮像された第1の像Iを、第1のセンサ回路44aでデータ処理した画像である第1の検査画像と、第2の画像センサ42bで撮像された第2の像Iを、第2のセンサ回路44bでデータ処理した画像である第2の検査画像を記憶する。
【0056】
次に、第1の検出部68aで、第1の検査画像と第1の基準画像とを比較してマスク10の欠陥を検出する。また、第2の検出部68bで、第2の検査画像と第2の基準画像とを比較してマスク10の欠陥を検出する。第1および第2の基準画像は、マスクの設計データを用いてあらかじめ準備する。
【0057】
次に、第1の検出部68aまたは第2の検出部68bで検出された欠陥の欠陥種別を判定部88で判定する。判定部88では、例えば、第1および第2の検出部68a、68bにおいて第1の検査画像と第1の基準画像との比較によりこの欠陥が欠陥と検出されたか否かの情報と、第2の検査画像と第2の基準画像との比較によりこの欠陥が欠陥と検出されたか否かの情報とに基づき欠陥の欠陥種別を判定する。
【0058】
以上、本実施の形態のパターン検査装方法によれば、マスクの欠陥の検出のみならず、検出された欠陥の欠陥種別を判定することも可能となる。また、本実施の形態のパターン検査装方法では2つの検査光を同時にマスクに照射し、同時に2つの検査画像を取得し、同時に2つの検査画像について欠陥検出する。したがって、マスク10の欠陥検出および欠陥種別判定を高いスループットで行うことが可能となる。
【0059】
そして、上述のように、本実施の形態は、P偏光がパターンのスペースに入り込みやすい特性を利用している。したがって、特にDUV露光用のマスクに比較して、スペース部分のアスペクト比が高くなる傾向のあるEUVマスクの検査用として好適である。
【0060】
(第2の実施の形態)
本実施の形態のパターン検査装置は、判定部が、第1の検査画像と第1の基準画像との階調差の情報と、第2の検査画像と第2の基準画像との階調差の情報との比較により欠陥の欠陥種別を判定する機構を有する点で、第1の実施の形態のパターン検査装置と異なっている。また、第1および第2の基準画像を、同一マスクの別の領域の同一パターンを撮像して得た画像とする構成、いわゆるDD(Die to Die)比較する構成である点で異なっている。上記2点以外は、基本的に第1の実施の形態と同様であるため、重複する内容については記載を省略する。
【0061】
本実施の形態のパターン検査装置は、判定部88(図1参照)が、第1の検査画像と第1の基準画像との階調差の情報と、第2の検査画像と第2の基準画像との階調差の情報との比較により欠陥の欠陥種別を判定する機構を有する。
【0062】
検査画像、基準画像において、画像を構成する各画素はある階調値を備えている。検査画像と基準画像との対応する箇所の階調値の差を階調差と称することにする。用いる階調差は、例えば、欠陥と特定された箇所の中心の一画素の階調値の差であっても、複数の画素の階調値の差の平均であっても、かまわない。用いる階調差は、階調値の差分を用いる方法の中から適当な方法で算出する値を選択すればよい。
【0063】
例えば、この機構は、第1の検出部68aおよび第2の検出部68bの双方で検出された欠陥について、第1の検査画像と第1の基準画像との階調差と、第2の検査画像と第2の基準画像との階調差とを比較し、第1の検査画像と第1の基準画像との階調差の方が大きければ、特定の欠陥種別であると判定する。
【0064】
判定部88は、第1の実施の形態のように、第1および第2の検出部68a、68bにおいて第1の検査画像と第1の基準画像との比較によりこの欠陥が欠陥と検出されたか否かの情報と、第2の検査画像と第2の基準画像との比較によりこの欠陥が欠陥と検出されたか否かの情報とに基づき欠陥の欠陥種別を判定する機構を備えていても構わない。
【0065】
また、あらかじめ第1の検査画像、第2の検査画像を取得する検査領域に対し、同一マスクの別の領域の同一パターンを、第1および第2の検査画像とそれぞれ同一の偏光状態の検査光で撮像して得た画像を第1および第2の基準画像として、例えば、あらかじめ主記憶装置56に記憶する構成となっている。
【0066】
図4は、本実施の形態のパターン検査装置による欠陥種別判定の一例を説明する図である。図4(a)は凸欠陥の階調差の偏光状態依存性を示す図、図4(b)は凹欠陥の階調差の偏光状態依存性を示す図である。
【0067】
実験には、第1の実施の形態で説明したと同様の膜構造を備え、マスクパターンのハーフピッチが108nmのEUVマスクを用いている。
【0068】
図4(a)に示すように、凸欠陥の場合は、P偏光入射の場合の階調差がC偏光入射の場合と比較して大きくなる。一方、図4(b)に示すように、凹欠陥の場合は、C偏光入射の場合の階調差がP偏光入射の場合と比較して大きくなる。
【0069】
この理由は、第1の実施の形態で記載した、凸欠陥についてはP偏光入射の方が検出感度が高く、凹欠陥についてはC偏光入射の方が検出感度が高いことの理由と同じであると考えられる。
【0070】
したがって、検出された欠陥のうち、判定部88において、P偏光入射の場合の階調差がC偏光入射の場合と比較して大きくなる欠陥は凸欠陥、C偏光入射の場合の階調差がP偏光入射の場合と比較して大きくなる欠陥は凹欠陥、と判定することが可能である。
【0071】
また、本実施の形態のパターン検査方法は、第1の検査画像と第1の基準画像との階調差の情報と、第2の検査画像と第2の基準画像との階調差の情報との比較により欠陥の欠陥種別を判定する点、および、DD(Die to Die)比較を行う点以外は第1の実施の形態のパターン検査方法と同様である。
【0072】
本実施の形態のパターン検査装置および検査方法によれば、第1の検査光、第2の検査光いずれを用いた検査においても欠陥と判定される欠陥であっても、その欠陥種別を判定することが可能となる。
【0073】
(第3の実施の形態)
本実施の形態のパターン検査装置は、第1の検査光がマスクのマスク面に対しC偏光(円偏光)入射ではなく、S偏光入射となる構成であること以外は第1の実施の形態と同様である。したがって、第1の実施の形態と重複する内容については記載を省略する。
【0074】
図5は、本実施の形態のパターン検査装置の内部構成を示す概念図である。
【0075】
パターン検査装置200は、検査光発生部84の光束分岐素子20が、光源16から出射される円偏光のレーザ光を、直交する偏光方向を備える2つの直線偏光に分岐する機能を備える。例えば、偏光プリズムである。
【0076】
そして、光束分岐素子20で分岐される2つの光路上であって、光束分岐素子20と初段コリメータレンズ24との間に、領域分割型波長板82とを備えている。
【0077】
図6は、本実施の形態の検査光発生部の説明図である。図6(a)は第1の検査光を示す図、図6(b)は第2の検査光を示す図である。
【0078】
光束分岐素子20は、光源16から出射される円偏光のレーザ光を2つの直交する直線偏光の第1の検査光Lと第2の検査光Lに変換、分岐する。そして、4分割型1/2波長板である領域分割型波長板82により、第1の検査光Lの偏光状態が図示するような円周状になる。これにより、第1の検査光Lがマスク面に平行な振動となり、マスク10のマスク面に対しS偏光入射されることになる。
【0079】
他方、第2の検査光Lの偏光状態が図示するような放射状になる。これにより、第2の検査光Lがマスク面に垂直な振動となり、マスク10のマスク面に対しP偏光入射されることになる。
【0080】
また、本実施の形態のパターン検査方法は、第1の検査光がマスクに対しC偏光(円偏光)入射ではなく、S偏光入射させること以外は第1の実施の形態のパターン検査方法と同様である。
【0081】
本実施の形態のパターン検査装置および検査方法によれば、第1の検査光が、P偏光成分のないS偏光入射となるため、検出限界欠陥サイズの偏光状態依存性がより強調される。したがって、欠陥種別の判定精度を一層向上させることが可能となる。
【0082】
以上の実施の形態の説明において、「〜部」、「〜回路」、「〜機構」と記載したものは、コンピュータで動作可能なプログラムによって構成することができる。あるいは、ソフトウェアであるプログラムだけではなく、ソフトウェアとハードウェアの組み合わせにより実施させてもかまわない。あるいはファームウェアとの組み合わせであってもかまわない。または、これらの組み合わせによって実現してもかまわない。また、プログラムにより構成される場合、プログラムは、磁気ディスク装置、磁気テープ装置、FD、あるいは、ROM等の記録媒体に記憶される。
【0083】
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。
【0084】
例えば、第1の検査光と第2の検査光を同時に照射する構成を例に説明した。検査のスループットの向上のためにはこの構成が望ましい。しかし、別個に照射する構成、すなわち、光源からの光束を分岐させずに単に偏光状態を切り替え、拡大光学系、画像センサ、検出部等を第1の検査光による検査と、第2の検査光による検査で共用する構成であってもかまわない。あるいは、同時と別個を切り替える構成であってもかまわない。
【0085】
また、実施の形態においては、試料がマスクである場合を例に説明したが、例えば、試料がパターンの形成された半導体ウェハであってもかまわない。
【0086】
また、例えば、反射照明光学系に加えて、試料に検査光を透過させる透過照明光学系を備えていてもかまわない。
【0087】
また、判定部において、欠陥と検出されたか否かの情報、階調差の情報以外にも、例えば、偏光状態によって見え方の異なる、欠陥部の画像パターンの情報等を用いる構成であってもかまわない。
【0088】
また、各実施の形態の構成要素を、個別に組み合わせた構成としてもかまわない。
【0089】
また、本発明の説明に直接必要としない部分等については記載を省略したが、必要とされる構成等を適宜選択して用いることができる。その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全てのパターン検査装置およびパターン検査方法は、本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0090】
10 マスク
16 光源
18 ビームエキスパンダ
20 光束分岐素子
24 初段コリメータレンズ
28 対物レンズ
36 初段結像レンズ
38a 第1のコリメータレンズ
38b 第2のコリメータレンズ
40a 第1の結像レンズ
40b 第2の結像レンズ
42a 第1の画像センサ
42b 第2の画像センサ
56 主記憶装置
68a 第1の検出部
68b 第2の検出部
80 偏光素子
82 分割型波長板
84 検査光発生部
88 判定部
100 パターン検査装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源から偏光状態の異なる第1の検査光と第2の検査光とを発生する検査光発生部を含み、前記第1の検査光と前記第2の検査光とを試料の同一面に照射する反射照明光学系と、
前記試料に照射される前記第1の検査光と前記第2の検査光とを、それぞれ第1の像と第2の像として結像する結像光学系と、
前記第1の像と前記第2の像とを拡大する拡大光学系と、
前記拡大光学系で拡大される前記第1の像と前記第2の像とを撮像する画像センサと、
前記画像センサで撮像される前記第1の像の画像である第1の検査画像と、前記第2の像の画像である第2の検査画像とを記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶される前記第1の検査画像を第1の基準画像と比較し、前記第2の検査画像を第2の基準画像と比較して欠陥を検出する検出部と、
前記欠陥の欠陥種別を判定する判定部と、
を備えることを特徴とするパターン検査装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記検出部において前記第1の検査画像と前記第1の基準画像との比較により前記欠陥が欠陥と検出されたか否かの情報と、前記第2の検査画像と前記第2の基準画像との比較により前記欠陥が欠陥と検出されたか否かの情報とに基づき前記欠陥の欠陥種別を判定する機構を有することを特徴とする請求項1記載のパターン検査装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記第1の検査画像と前記第1の基準画像との階調差の情報と、前記第2の検査画像と前記第2の基準画像との階調差の情報との比較により前記欠陥の欠陥種別を判定する機構を有することを特徴とする請求項1または請求項2記載のパターン検査装置。
【請求項4】
前記反射照明光学系は、前記第1の検査光が前記試料に対しC偏光(円偏光)入射またはS偏光入射となり、前記第2の検査光が前記試料に対しP偏光入射となるよう構成されることを特徴とする請求項1ないし請求項3いずれか一項記載のパターン検査装置。
【請求項5】
偏光状態の異なる第1の検査光と第2の検査光とを試料の同一面に照射し、
前記試料に照射される前記第1の検査光と前記第2の検査光とを、それぞれ第1の像と第2の像として結像し、
前記第1の像と前記第2の像とを拡大し、
拡大した前記第1の像と前記第2の像とを撮像し、
撮像した前記第1の像の画像である第1の検査画像と、前記第2の像の画像である第2の検査画像とを記憶し、
前記第1の検査画像を第1の基準画像と比較し、前記第2の検査画像を第2の基準画像と比較して欠陥を検出し、
前記欠陥の欠陥種別を判定すること、を特徴とするパターン検査方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−127856(P2012−127856A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−280584(P2010−280584)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(504162958)株式会社ニューフレアテクノロジー (669)
【Fターム(参考)】