説明

パターン計測方法及びそのための装置

【課題】マスク製造工程の際に、マスクパターンを配置する空間においてコンタミネーションを防止することができる、マスクパターン等のパターンを計測するための計測方法及びそのための装置を提供する。
【解決手段】 基板1、クロム膜2上に形成されたレジストパターン3を荷電粒子ビームによって計測する際に、HF,ClF3,NF3,SiF4,WF6,XeF2等のフッ素ガスを試料室内部に注入して、パターン3の表面に導電性のフッ素化合物膜4を成膜し、荷電粒子ビームによって、フッ素化合物膜4が成膜されたパターン3を計測する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン計測方法及びそのための装置、例えば、半導体基板の表面に微細なパターンが形成されたマスクパターンやウェハパターン等のパターンの線幅などを走査型電子顕微鏡などの荷電粒子ビーム装置を用いて計測するためのパターン計測方法及びそのための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば特許文献1の第1頁右欄第3行〜同文献同頁同欄第16行に記載されているように、半導体基板上に生成されたシリコン酸化膜上に、さらにパターニングされたポリシリコンの微細パターンの形状を観察したり、このパターン寸法を測定するとき、この微細な被観測パターンが電気的に絶縁物であったり、あるいは上述したシリコン酸化膜のような絶縁膜上にさらに被観測パターンが形成されている場合に、被観測面にたとえば金などからなるごく薄い導電膜を形成し、試料の電子線による電荷の蓄積を防止する方法が知られている。
【0003】
また、例えば特許文献2の特許請求の範囲や第2頁右上欄第9行〜同頁右下欄第6行の記載から、ガラス基板上に約800Åの炭素を含有するクロムパターン(パターン幅5μm)を設けたフォトマスクを用意し、次に、フォトマスクのパターンと、このクロムパターンを設けているガラス基板表面の露出している表面とを真空蒸着法により約80Åの導電性膜であるアルミニウム膜で被覆し、パターン評価用のフォトマスクを形成し、電子顕微鏡によってパターンを評価する方法が知られている。とくに、導電性膜はアルミニウム膜以外に、クロム金属膜を除くイオン化傾向が水素に比して大きい導電成膜、例えば、亜鉛、鉄、ニッケル、錫等でもよい旨記載されている。
【0004】
また、例えば特許文献3の特許請求の範囲や第3頁右上欄第7行〜第4頁左上欄第10行に示すように、フォトマスク等の製造に使う市販のレジスト材を溶剤によって薄めるとともにそこに金属(たとえば、アルミニウム)の微粒子を混入させて、導電性のレジスト液を作り、それをスピンコート法等によって試料の表面(パターンの表面及びパターンが形成されている基板の露出されている表面の双方)に薄く塗布し、走査型電子顕微鏡から照射された電子線による基板の帯電を防止し、電子顕微鏡の電子線の加速電圧を下げずとも歪みのない正確な像を観察する方法が知られている。とくに、レジスト剤等に混入する導電性微粒子としては、Au、Fe、Ag、Ni、Cr等の金属の微粒子や炭素の微粒子が用いられる旨記載されている。
【0005】
また、例えば特許文献4の特許請求の範囲、第2頁左欄第22行〜同頁同欄第29行に示すように、石英ガラス基板の上にクロム膜によるパターンが形成されたフォトマスクの表面全域にポリスチレンスルホン酸アンモニウム膜の導電性高分子膜を厚さが0.3μmになるように回転塗布し、この後、フォトマスクを100℃の温度で30分間の熱処理を施す。続いて、この導電性高分子膜を塗布したフォトマスク上を電子線を走査させ、反射電子を検出することにより、フォトマスクのパターンの検査を行う技術が知られている。とくに、特許文献4の第2頁右欄第40行〜同頁右欄第42行には、導電性高分子膜としてポリスチレンスルホン酸アンモニウムやポリスチレンスルホン酸ナトリウムを用いたがポリスチレンスルホン酸塩であればよい旨記載されている。
【0006】
さらに、例えば特許文献5の特許請求の範囲、第4頁左欄第37行〜同頁同欄第47行には、かかる基板の表面に形成されたレジストパターンに重金属を固定したのちに、観察する方法が記載されている。ここで、重金属としては、例えばオスミウム、ルテニウム、マンガンなどが挙げられる。
【0007】
かかる重金属をレジストパターンに固定するには、例えば表面に形成されたレジストパターンに重金属酸化物の蒸気を接触させてもよいし、表面にレジストパターンが形成された基板を重金属酸化物の溶液に浸漬してもよい。特許文献5の第4頁左欄第48行〜同頁右欄第2行に記載されているように、重金属としてオスミウム、ルテニウムなどを用いる場合には、レジストパターンに重金属酸化物の蒸気を接触させる方法が好適である。重金属酸化物としては、例えば四酸化オスミウム、四酸化ルテニウムなどが用いられる特許文献5の第4頁右欄第20行〜同頁同欄第35行に記載されているように、重金属としてオスミウム、マンガンなどを用いる場合には、表面にレジストパターンが形成された基板を重金属酸化物の溶液に浸漬する方法が好適である。重金属酸化物の溶液としては、例えば四酸化オスミウムの水溶液、過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウムなどの過マンガン酸化物の水溶液が用いられる。重金属のメタルをレジストパターンの上に堆積させる方法としては、例えば蒸発法、プラズマコーティング法などが挙げられる。
【特許文献1】特公昭57−39514号公報
【特許文献2】特開昭61−59731号公報
【特許文献3】特開平1−221637号公報
【特許文献4】特公平7−119592号公報
【特許文献5】特開2002−158164号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、マスク製造工程の際に、マスクパターンを配置する空間においてコンタミネーションを防止することができる、マスクパターン等のパターンを計測するための計測方法及びそのための装置を提供することを目的とする。
【0009】
本発明の別の目的は、製造工程中、パターン形状を崩さずに薄膜コートを形成し、チャージングを防止して、走査型電子顕微鏡等の荷電粒子ビーム装置によるマスクパターンの観察・検査を行い、その後のエッチング工程により薄膜を除去することができる、マスクパターン等のパターンを計測するための計測方法及びそのための装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は、特許請求の範囲の各請求項に記載した事項を特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
一般にフッ素化合物系ガスでの反応はゆるやかであり、しかも、生成したフッ素またはフッ素ラジカル(F)(遊離基)は確実に反応するため、炭化水素系の除去の効率が高い。
【0012】
また、不揮発性潤滑材が、真空装置の内部に残存していた場合にも、活性酸素に比べて、効率の良い除去が可能である。
【0013】
また、活性酸素に比べ、真空装置内部にある部材に対するダメージが比較的少ない。さらに、非常に希薄なフッ素化合物系ガスによるパージを複数回行うことから、複雑に入り組んだ細かな構造体においても効率良くまたダメージ無く除去することができる。
【0014】
よって、装置内部へのダメージも少なく、従来の炭化水素系ガスよりも、効率よくコンタミネーションを除去することができる。
【0015】
本発明によれば、マスク製造工程において、マスクパターンを配置する空間でコンタミネーションを防止できる。
【0016】
また、本発明によれば、製造工程中にパターン形状を崩さずに薄膜を形成し、チャージング(帯電)を防止して、走査型電子顕微鏡等の荷電粒子ビーム装置によるマスクパターンの観察・検査を行い、その後のエッチング工程により薄膜を除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図面に基づいて本発明の実施例を説明する。
【0018】
一般に、図1に示すように、マスク製造工程では、半導体基板1にクロム膜2を蒸着により形成し、その上にレジスト3を塗布し、所定のパターンを電子ビーム等の荷電粒子ビームで描画し、エッチングを行い、レジスト3を除去し、マスクを製造している。
【0019】
本発明においては、荷電粒子ビーム描画工程後に、たとえばWF等のフッ素化合物系ガスの雰囲気中に描画工程後の基板1を配置することで、レジスト2の表面にWF等の導電性膜4を形成して、レジスト2を被覆する。
【0020】
このようにレジスト2の表面をWF等の導電性膜4で被覆すると、基板1が配置された雰囲気中で荷電粒子ビーム装置の内部の鏡筒の内側、絞り装置、基板を配置するステージ等にコンタミネーションが発生することを防ぐことができる。
【0021】
その上、パターン形状を崩さずに導電性膜4を形成することができ、基板1上にチャージング(帯電)することがなくなる。例えば、走査型電子顕微鏡等の荷電粒子ビーム装置でマスクの観察・検査を行うことができる。この場合、マスク上の線幅等の検査を高精度に行うことができる。
【0022】
なお、図2に示すように、まずSiFを荷電粒子ビーム装置(とくに、その試料室)の内部に注入し、レジスト3上にSi等のバッファー層5を設け、そのバッファー層5の上にWF等の導電性膜4を形成することもできる。
【0023】
図1〜2の実施例では、マスク製造工程において本発明の方法を適用したが、本発明は、これに限定されず、ウェハ製造工程においても適用することができる。
【0024】
また、前述の実施例では、フッ素化合物系ガスのうちWFを用いたが、本発明は、これに限定されず、HF、ClF、NF、SiF、XeFのいずれのフッ素化合物系ガスであってもよい。
【0025】
また、フッ素化合物系ガスを導入する際に、複数回パージする。例えば、2〜3回フッ素化合物系ガスパージを行う。
【0026】
これは、試料上にコンタミネーションがわずかに発生した場合、非常に希薄なフッ素化合物系ガスによるコンタミネーション除去を複数回繰り返すことにより、過剰なパージガスを装置へ導入することが無いため、装置へのダメージを極力無くすと共に、より効果的にコンタミネーションを軽減することができる。
【0027】
なお、それぞれのフッ素化合物系ガスの分子量、沸点、融点、その他特性に応じて取り扱い等を留意することが望ましい。
【0028】
また、上記実施例では、電子ビームを用いているが、本発明は、これに限定されず、中性子線、α線、β線、γ線等の荷電粒子ビームであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】レジスト表面にWF等の導電性膜で形成した状態を概略的に示す。
【図2】レジスト上にSi等のバッファー層を設け、その上にWF等の導電性膜を形成した状態を概略的に示す。
【符号の説明】
【0030】
1 基板
2 クロム膜
3 レジスト
4 導電性膜
5 バッファー層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に形成されたパターンを計測する際に、パターンの表面にフッ素化合物膜を成膜し、荷電粒子ビームによってパターンを計測することを特徴とするパターン計測方法。
【請求項2】
請求項1に記載のパターン計測方法において、
フッ素化合物膜は、HF、ClF、NF、SiF、WF、又はXeFのフッ素化合物ガスにより成膜されたものであることを特徴とするパターン計測方法。
【請求項3】
パターンを配置する試料室内にフッ素化合物系のガスを注入しパターンの表面にフッ素化合物膜を成膜し、荷電粒子ビームによってパターンを計測することを特徴とするパターン計測方法。
【請求項4】
請求項3に記載のパターン計測方法において、
フッ素化合物系のガスは、HF、ClF、NF、SiF、WF、又はXeFであることを特徴とするパターン計測方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のパターン計測方法において、
フッ素化合物系のガスで複数回パージしてコンタミネーションを除去することを特徴とするパターン計測方法。
【請求項6】
パターンを配置する試料室と、試料室の内部にフッ素化合物系のガスを注入するガス注入手段と、試料室の内部でパターンを計測するための荷電粒子ビームを形成する荷電粒子ビーム装置を備え、ガス注入手段により試料室の内部にフッ素化合物系のガスを注入して、パターンの表面にフッ素化合物膜を成膜して、フッ素化合物膜を成膜したパターンを計測することを特徴とするパターン計測装置。
【請求項7】
請求項6に記載のパターン計測装置において、
フッ素化合物系のガスは、HF、ClF、NF、SiF、WF、又はXeFであることを特徴とするパターン計測装置。
【請求項8】
請求項6又は7のいずれか1項に記載のパターン計測装置において、
試料室の内部をフッ素化合物系のガスで複数回パージしてコンタミネーションを除去することを特徴とするパターン計測装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−90162(P2008−90162A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−273032(P2006−273032)
【出願日】平成18年10月4日(2006.10.4)
【出願人】(000220343)株式会社トプコン (904)
【出願人】(301014904)株式会社ナノジオメトリ研究所 (15)
【Fターム(参考)】