説明

パッキン付き製造蓋の製造方法及び製造装置

【課題】容器蓋に設けられた嵌合溝にパッキンを容易に形成できて大量生産に適しているだけでなく、製造設備の省スペース化や省エネルギー化を実現することも可能なパッキン付き容器蓋の製造方法を提供する。
【解決手段】押出機20で加熱溶融された熱可塑性樹脂120をノズル40から線状に押出して容器蓋110の片面に設けられた嵌合溝111に流し込むことにより、嵌合溝111に沿ってパッキンを一体的に形成する。押出機20の内部では、加熱溶融した熱可塑性樹脂120に発泡剤121を添加し、ノズル40から吐出した直後に熱可塑性樹脂120を発泡させる。これにより、容器蓋110の全体を加熱することなく発泡体を嵌合溝111に充填することができるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、嵌合溝に沿ってパッキンが一体的に形成されたパッキン付き容器蓋の製造方法と、それに好適に用いることのできるパッキン付き容器蓋の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ペール缶と呼ばれる金属製の容器は、薬品、塗料又はオイルなどの内容物を保管又は運搬するためなどに広く用いられている。ペール缶の容器本体は、通常、有底の円筒形状となっており、その上方の開口部は、円形の容器蓋によって覆われる。容器蓋の下面の外縁に沿った箇所には、容器本体の開口端を嵌め込むための嵌合溝が円環状に設けられており、該嵌合溝の内部には、容器内部の気密性や液密性を保つことができるようにパッキンが設けられている。
【0003】
このようなパッキン付きの容器蓋は、従来、予め線状に成形した発泡体の両端を接続することによって得た環状のパッキンを容器蓋に設けられた嵌合溝に手作業で嵌め込むことにより製造していた。発泡体の原料としては、通常、熱可塑性樹脂やゴムが採用される。この方法は、容器蓋の嵌合溝に耐溶剤性や耐薬品性に優れたパッキンを形成しやすいという利点はあるものの、パッキンの嵌め込みを手作業で行う必要があるなど、手間がかかるために、製造時間の短縮が困難であった。このため、パッキン付き容器蓋の製造コストを安く抑えるのも困難であった。
【0004】
このような実状に鑑みてか、近年には、発泡剤を添加した溶融状態のゴムや熱硬化性樹脂をノズルから吐出して容器蓋の嵌合溝に流し込んだ後、容器蓋の全体を加熱炉などで加熱することにより、嵌合溝の内部にあるゴムや熱硬化性樹脂を発泡させると同時に架橋させる方法が主流となってきている(例えば特許文献1及び特許文献2)。この方法は、パッキンを嵌め込む手間を要しないために作業性に優れているが、大型の加熱炉が必要となるために、パッキン付き容器蓋の製造設備の省スペース化や省エネルギー化が困難であった。また、この方法は、加熱炉で容器蓋を数分間加熱する必要があるために、製造時間の短縮が困難であった。
【0005】
【特許文献1】特開2005−014214号公報
【特許文献2】特開2003−147111号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、容器蓋に設けられた嵌合溝にパッキンを容易に形成できて製造時間の短縮が可能であるだけでなく、製造設備の省スペース化や省エネルギー化を実現することも可能なパッキン付き容器蓋の製造方法を提供するものである。また、これらのパッキン付き容器蓋の製造方法に好適に用いることのできるパッキン付き容器蓋の製造装置を提供することも本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、押出機で加熱溶融された熱可塑性樹脂をノズルから線状に押出して容器蓋の片面に設けられた嵌合溝に流し込むことにより、該嵌合溝に沿ってパッキンを一体的に形成するパッキン付き容器蓋の製造方法であって、発泡剤を添加した熱可塑性樹脂を押出機の内部で加熱溶融し、加熱溶融された熱可塑性樹脂をノズルから吐出した直後に発泡させて、容器蓋の全体を加熱することなく発泡体を前記嵌合溝に充填することを特徴とするパッキン付き容器蓋の製造方法を提供することによって解決される。
【0008】
ここで、「ノズルから吐出した直後に発泡させる」とは、ノズル内部で加圧状態にあった溶融樹脂の圧力が解除されることで発泡して体積を増加させることをいう。ノズルから吐出されて新たに気泡が発生する場合のみならず、ノズル内部で発生していた気泡の体積が増大する場合をも含むものとする。
【0009】
これにより、嵌合溝に流し込まれた熱可塑性樹脂(パッキン)を容器蓋ごと加熱するなどの処置を施さなくても、熱可塑性樹脂を発泡させることが可能になる。したがって、パッキンを容器蓋の嵌合溝に嵌め込むなど、煩雑な手作業を施さなくとも、嵌合溝にパッキンを形成することが可能になる。また、加熱炉などを別途設ける必要がないので、パッキン付き容器蓋の製造設備の省スペース化や省エネルギー化を実現することも可能になる。さらに、パッキンと容器蓋が一体化され、密封性に優れたパッキン付き容器蓋を得ることも可能になる。
【0010】
このとき、押出機の内部で加熱溶融された熱可塑性樹脂に対して気体又は液体からなる発泡剤を圧入すると好ましい。気体又は液体の発泡剤は、安価に入手できるだけでなく、発泡性にも優れている。
【0011】
熱可塑性樹脂の発泡倍率は、とくに限定されないが、低くしすぎると、嵌合溝に形成されたパッキンが硬くなりすぎて、容器蓋を容器本体に嵌め込みにくくなるおそれがある。一方、熱可塑性樹脂の発泡倍率を高くしすぎると、密封性や強度が低下するおそれがある。このため、熱可塑性樹脂の発泡倍率は、通常、2〜30倍とされる。
【0012】
パッキンの原料として使用する熱可塑性樹脂も、とくに限定されないが、ポリオレフィンを用いると好ましい。ポリオレフィンは、柔軟性、耐薬品性、成形性などに優れていて低コストであるからである。
【0013】
前記嵌合溝が円環状に設けられた容器蓋を前記嵌合溝の中心軸周りに回転させながら、位置固定されたノズルから熱可塑性樹脂を吐出して前記嵌合溝に流し込むことも好ましい。これにより、パッキン付き容器蓋の製造設備をさらに簡素化することが可能になる。
【0014】
前記嵌合溝に流し込まれた熱可塑性樹脂の始端と終端との重なり部分を加熱して該重なり部分を溶着することも好ましい(溶着工程)。このとき、熱可塑性樹脂を溶融させるための加熱手段として熱板を用いたのでは、熱板が樹脂で汚染されやすく繰り返しの溶融作業が困難になるおそれがある。また、加熱手段として熱輻射を利用したものを用いたのでは、生産速度が低下するおそれがある。このため、溶着工程は、前記重なり部分に熱風を吹き付けることによって行うと好ましい。
【0015】
この後さらに、熱可塑性樹脂の始端と終端との重なり部分を前記嵌合溝の深さ方向に押圧することも好ましい(押圧工程)。これにより、嵌合溝に流し込まれた熱可塑性樹脂(パッキン)の始端と終端の隙間から、内容物が漏れるのを防ぐことができるようになり、パッキンの気密性や液密性をさらに高めることが可能になる。
【0016】
前記嵌合溝に流し込まれた熱可塑性樹脂を前記嵌合溝に沿った型で前記嵌合溝の深さ方向に押圧することによって、パッキンに長手方向に沿った凹部又は平坦部を形成することも好ましい。また、ノズルの吐出口を非円形に形成し、パッキンに長手方向に沿った凹部又は平坦部を形成することも好ましい。これらの方法により、パッキンの断面形状を凹形又は扁平にして容器本体の開口端を嵌合溝に嵌め込みやすくするだけでなく、同時に上記の押圧工程を行うことも可能になる。このような形状のパッキンを効率よく生産できることも本発明のパッキン付き容器蓋の製造方法の利点である。
【0017】
ノズルを複数組設け、一の組のノズルと他の組のノズルとから熱可塑性樹脂を交互に吐出させ、一の組のノズルの下方にある容器蓋の嵌合溝と他の組のノズルの下方にある容器蓋の嵌合溝とに熱可塑性樹脂を交互に流し込み、複数の容器蓋に対して順次パッキンを形成することができるようにすることも好ましい。複数の容器蓋に対して順次パッキンを形成する場合に、熱可塑性樹脂を流し込む容器蓋が切り替わるたびに押出機での動作を停止させると、停止している間に熱可塑性樹脂の物性が変わってしまい、嵌合溝に形成されるパッキンが不均一になり、パッキンの気密性や液密性や強度が低下するおそれがあるが、このような構成を採用することにより、押出機での動作を連続して行うことができるので、上記のような不具合を解消することが可能になる。
【0018】
また、上記課題は、熱可塑性樹脂をノズルから線状に押出して容器蓋の片面に設けられた嵌合溝に流し込むことにより、該嵌合溝に沿ってパッキンを一体的に形成するパッキン付き容器蓋の製造装置であって、熱可塑性樹脂を投入するための熱可塑性樹脂投入部と、熱可塑性樹脂を加熱溶融するための押出機と、押出機の内部で加熱溶融された熱可塑性樹脂に対して気体又は液体の発泡剤を圧入するための発泡剤圧入部と、押出機の内部で加熱溶融された熱可塑性樹脂を押出機の外部へ吐出するためのノズルと、ノズルの下方に容器蓋を供給するための容器蓋供給手段と、ノズルから押出された熱可塑性樹脂が前記嵌合溝に沿って流れ込むように容器蓋をノズルの下方で移動させるための容器蓋移動手段とを備えたことを特徴とするパッキン付き容器蓋の製造装置を提供することによっても解決される。このパッキン付き容器蓋の製造装置は、上記のパッキン付き容器蓋の製造方法を好適に実行させることができるものとなっている。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明によって、容器蓋に設けられた嵌合溝にパッキンを容易に形成できて生産効率が高いだけでなく、製造設備の省スペース化や省エネルギー化を実現することも可能なパッキン付き容器蓋の製造方法を提供することが可能になる。また、これらのパッキン付き容器蓋の製造方法に好適に用いることのできるパッキン付き容器蓋の製造装置を提供することも可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明のパッキン付き容器蓋の製造方法とパッキン付き容器蓋の製造方法の好適な実施態様について、図面を用いてより具体的に説明する。図1は、本発明のパッキン付き容器蓋の製造方法及び製造装置を用いて、容器蓋110の嵌合溝111に熱可塑性樹脂120を流し込んでいく様子を示した断面図である。図2は、本発明のパッキン付き容器蓋の製造方法及び製造装置を用いて製造したパッキン付き容器蓋100を示した破断斜視図である。
【0021】
本実施態様のパッキン付き容器蓋の製造方法は、図1に示すように、熱可塑性樹脂120をノズル40から線状に押出して容器蓋110の片面に設けられた嵌合溝111に流し込むことにより、嵌合溝111に沿ってパッキンを一体的に形成するものとなっている。熱可塑性樹脂120は、通常、ペレットの状態で熱可塑性樹脂投入部10に投入され、押出機20の内部で加熱溶融される。押出機20の内部で加熱溶融された熱可塑性樹脂120には、気体又は液体の発泡剤121が添加される。発泡剤121の添加は、発泡剤圧入部30から押出機20の内部に発泡剤121を圧入することによって行われる。
【0022】
本発明のパッキン付き容器蓋の製造方法及び製造装置で用いる容器蓋110は、角形のものなどであってもよいが、本実施態様においては、図2に示すように、円形のものを使用している。この容器蓋110の片面には、その外縁に沿って円環状の嵌合溝111が設けられており、有底の円筒形状の容器本体(図示省略)の開口端に嵌め込むことができるようになっている。図2の容器蓋110は、その下面に設けられた嵌合溝111が上方を向くように、上下をひっくり返して描いてある。
【0023】
この形態の容器蓋110は、容器本体の内部に落ち込むおそれがないだけでなく、嵌合溝111にパッキンを均一に形成しやすく、容器本体の気密性や液密性を保つことが比較的容易であるために、薬品、塗料又はオイルなどの内容物を保管又は運搬するためのペール缶の蓋として最も広く用いられている。容器蓋110は、図示省略の容器蓋供給手段によって、所定のタイミングでノズル40の下方に供給される。容器蓋供給手段は、ノズル40の下方に容器蓋110を供給できるものであればとくに限定されないが、本実施態様においては、ベルトコンベアを用いている。
【0024】
熱可塑性樹脂投入部10に投入する熱可塑性樹脂120(パッキンの原料として使用する熱可塑性樹脂)の種類はとくに限定されず、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエステル、ポリアミドなどが例示される。熱可塑性エラストマーも使用することができ、ポリウレタン系、ポリオレフィン系、ポリスチレン系、ポリエステル系、ポリアミド系などの各種の熱可塑性エラストマーを用いることができる。なかでも、ポリオレフィンを用いると好ましい。ポリオレフィンは、一般に柔軟性、耐薬品性及び成形性に優れ、低コストであり、廃棄に際して焼却する場合にも有害ガスを発生しないので好ましい。ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどが用いられるが、とくにポリエチレンが好ましい。ポリエチレンとしては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、LLDPEなどが用いられるが、柔軟性、成形性、発泡性の点からは、低密度ポリエチレンが好適である。ポリエチレン、ポリプロピレンは、他のモノマーが共重合された共重合体であってもよい。本実施態様においては、これらの樹脂の中でも、低密度ポリエチレンを採用している。熱可塑性樹脂120は、溶融成形性が阻害されない範囲で架橋されていてもよい。また、熱可塑性樹脂120には、架橋ゴム粒子や無機フィラーなどを配合してもよい。
【0025】
熱可塑性樹脂120に添加する発泡剤121の種類はとくに限定されない。粉末状のものを使用してもよく、アゾジカルボン酸アミドのような有機系化学発泡剤や、重炭酸塩のような無機系化学発泡剤を用いることができる。また、発泡成分を内包したマイクロカプセルを用いることもできる。このような粉末状の発泡剤は、粉体のままで、あるいはマスターバッチペレットとして、熱可塑性樹脂ペレットと同時に熱可塑性樹脂投入部10へ投入される。
【0026】
一方、入手コストや発泡性を考慮すると、気体又は液体の発泡剤を、押出機20の内部で加熱溶融された熱可塑性樹脂120に対して圧入すると好ましい。なかでも、炭素数3〜6の炭化水素化合物は沸点が低く、大気圧でも容易に発泡させることができるので好ましい。炭素数3〜6の炭化水素化合物としては、プロパン(炭素数3)、ブタン(炭素数4)、ペンタン(炭素数5)、ヘキサン(炭素数6)が例示される。とくに、ブタンは、単独気泡を形成しやすく、パッキンを気密性や液密性に優れたものとすることができるので好ましい。
【0027】
熱可塑性樹脂120の発泡倍率もとくに限定されないが、低くしすぎると、嵌合溝111に形成されたパッキンが硬くなりすぎて、容器蓋110を容器本体に嵌め込みにくくなるおそれがある。このため、熱可塑性樹脂120の発泡倍率は、通常、2倍以上とされる。熱可塑性樹脂120の発泡倍率は、5倍以上であると好ましく、10倍以上であるとより好ましい。一方、熱可塑性樹脂120の発泡倍率を高くしすぎると、パッキンに連通気泡が形成されやすくなり、容器の気密性や液密性を保てなくなるおそれがある。また、パッキンの強度が低下するおそれもある。このため、熱可塑性樹脂120の発泡倍率は、通常、30倍以下とされる。熱可塑性樹脂120の発泡倍率は、20倍以下であると好ましく、15倍以下であるとより好ましい。
【0028】
押出機20の内部で加熱溶融されて発泡剤121が添加された熱可塑性樹脂120は、ノズル40から吐出され、容器蓋110の片面に設けられた円環状の嵌合溝111に流し込まれる。熱可塑性樹脂120の溶融温度は、通常、150〜300℃である。このとき、ノズル40から吐出された直後に熱可塑性樹脂120に添加された発泡剤121が発泡するために、熱可塑性樹脂120は発泡体となって嵌合溝111に充填された状態となりパッキンを形成する。本実施態様において、嵌合溝111への熱可塑性樹脂120の流し込みは、容器蓋移動手段60によって、容器蓋110を嵌合溝111の中心軸(図1の軸L)周りに回転させながら行うようになっている。このため、位置固定されたノズル40から吐出された熱可塑性樹脂120を嵌合溝111に沿って綺麗に流し込むことができるようになっている。この際、ノズル40の先端が容器蓋110から離れていると、熱可塑性樹脂120を嵌合溝111に流し込みにくくなるために、ノズル40の先端を容器蓋110の近くに配しておくとよい。これにより、嵌合溝111の内部に大きな隙間を形成することなく、熱可塑性樹脂120を発泡させながら嵌合溝111に充填することも可能になる。
【0029】
本実施態様においては、容器蓋110の嵌合溝111に熱可塑性樹脂120が流し込まれると、図示省略の加熱手段(熱風吹付手段)によって、嵌合溝111に流し込まれた熱可塑性樹脂120の始端と終端との重なり部分に熱風が吹き付けられ、該重なり部分が溶着されるようになっている(溶着工程)。この溶着工程は、前記重なり部がノズル40の下方にあるときに行ってもよいが、ノズル40が邪魔になるおそれがある。このような場合には、熱可塑性樹脂120の流し込みを終えた後に容器蓋移動手段60によって容器蓋110を所定角度回転させ、前記重なり部をノズル40の下方からずらして行うとよい。
【0030】
また、本実施態様においては、上記の溶着工程を終えると、嵌合溝111に流し込まれた熱可塑性樹脂120の始端と終端との重なり部分は、図示省略の押圧手段によって嵌合溝111の深さ方向に押圧されるようになっている(押圧工程)。このため、嵌合溝111に流し込まれた熱可塑性樹脂120の始端と終端をさらに密着させることが可能になり、熱可塑性樹脂120の始端と終端の隙間から、容器の内容物が漏れるのを防ぐことができるようになっている。この押圧工程は、熱風吹付工程と同様に、前記重なり部がノズル40の下方にあるときに行ってもよいが、ノズル40が邪魔になるおそれもあるので、容器蓋移動手段60によって容器蓋110を所定角度回転させて前記重なり部をノズル40の下方からずらして行うとよい。
【0031】
熱風吹付工程と押圧工程とを終えた容器蓋110は、図示省略の容器蓋排出手段によってノズル40の下方から取り除かれる。これにより、図2に示すようなパッキン付き容器蓋100を得ることができる。ノズル40の下方から容器蓋110(パッキン付き容器蓋100)が取り除かれると、容器蓋供給手段によって、次の容器蓋110がノズル40の下方へ供給される。
【0032】
続いて、本発明のパッキン付き容器蓋の製造方法及び製造装置の他の実施態様について説明する。図3は、他の実施態様のパッキン付き容器蓋の製造装置を用いて、容器蓋110の嵌合溝111に熱可塑性樹脂120を流し込んでいく様子を示した平面図である。図4は、他の実施態様のパッキン付き容器蓋の製造装置を用いて、容器蓋110の嵌合溝111に熱可塑性樹脂120を流し込んでいく様子を示した正面図である。図5は、図4におけるノズル40の周辺に設けたシャッター板80を一端側(図5における左端側)の限界点(A位置)まで移動させた状態を示した断面図である。図6は、図4におけるノズル40の周辺に設けたシャッター板80を中間位置に移動させた状態を示した断面図である。図7は、図4におけるノズル40の周辺に設けたシャッター板80を他端側(図5における右端側)の限界点(B位置)まで移動させた状態を示した断面図である。
【0033】
図3と図4に示すパッキン付き容器蓋の製造装置は、ノズル40が複数組設けられており、一の組のノズル41,42と他の組のノズル43,44とから熱可塑性樹脂120を交互に吐出させ、一の組のノズル41,42の下方にある容器蓋110の嵌合溝111と他の組のノズル43,44の下方にある容器蓋110の嵌合溝111とに熱可塑性樹脂120を交互に流し込むことができるようになっている。したがって、一度に複数のパッキン付き容器蓋を順次製造することのできる構造となっている。この場合、容器蓋供給手段50(図3)は、一の組のノズル41,42の下方に容器蓋110を供給するラインと、他の組のノズル43,44の下方に容器蓋110を供給するラインとを独立して駆動させることができるものを使用する。ここでは、各組2本ずつ計4本のノズル41〜44が設けられている例を示したが、ノズル40の本数はこれに限定されず、適宜変更することができる。
【0034】
ノズル41〜44は、図4と図5〜図7に示すように、水平方向に配されたパイプ状のノズル基部70の下面に長手方向に沿って所定間隔で設けられている。このため、押出機20から押出された熱可塑性樹脂120は、ノズル基部70の中央からノズル基部70の内部に入って左右に分かれた後、ノズル41〜44から下向きに吐出されるようになっている。ノズル基部70の水平方向に亘る長さや、ノズル41〜44を配する間隔は、とくに限定されないが、長くしすぎると、熱可塑性樹脂120の歩留まりが低下したり、ノズル41〜44から吐出される熱可塑性樹脂120の物性に大きな差が生ずるなどの不具合が生じるおそれがあるために、できるだけ短く設定しておくことが好ましい。
【0035】
熱可塑性樹脂120を吐出させるノズル40を切り替える仕組みは、とくに限定されず、ノズル41〜44のそれぞれに独立した弁などを設けてもよい。図5〜図7の例では、所定間隔で孔81〜84が設けられたシャッター板80を水平方向にスライドさせることにより、熱可塑性樹脂120を吐出させるノズル40を切り替えることができるものとなっている。このような構成を採用することによって、ノズル40の切替えをより簡素な構造で実現することが可能になる。
【0036】
すなわち、図5に示すように、シャッター板80をA位置に移動させたときには、ノズル41,42から熱可塑性樹脂120が吐出可能な状態となり、図6に示すように、シャッター板80を中間位置に移動させたときには、ノズル41〜44のいずれからも熱可塑性樹脂120が吐出されない状態となり、図7に示すように、シャッター板80をB位置に移動させたときには、ノズル43,44から熱可塑性樹脂120が吐出可能な状態となるようになっている。
【0037】
また、このパッキン付き容器蓋の製造方法において、一の組のノズル41,42の下方で嵌合溝111に熱可塑性樹脂120が充填された容器蓋110は、他の組のノズル43,44から熱可塑性樹脂120が吐出されている間に、熱風吹付工程と押圧工程とを済ませ、容器蓋排出手段90によってノズル41,42の下方から取り除かれる。ノズル41,42の下方から容器蓋110が取り除かれると、容器蓋供給手段50によって、次の容器蓋110がノズル43,44の下方に供給される。このため、熱可塑性樹脂120を滞らせることなく、複数の容器蓋110に対して順次パッキンを形成することができるようになっており、パッキン付き容器蓋100の製造を効率的に行うことができるようになっている。
【0038】
ところで、図5〜図7で示した例では、一の組のノズル41,42がノズル基部70の一端側(左端側)に配され、他の組のノズル43,44がノズル基部70の他端側(右端側)に配されているが、ノズル41〜44の配置はこれに限定されない。例えば、図8〜図10に示すように、ノズル基部70の一端(左端)から他端(右端)に向かって、ノズル41、ノズル43、ノズル42、ノズル44の順に配することも好ましい。このように、一の組のノズル41,42と他の組のノズル43,44を交互に配することによって、一の組のノズル41,42が熱可塑性樹脂120を吐出しているときと、他の組のノズル43,44が熱可塑性樹脂120を吐出しているときのいずれにおいても、ノズル基部70の一端側と他端側に熱可塑性樹脂120を流すことができるようになる。したがって、ノズル41〜44から吐出される熱可塑性樹脂120の物性のバラツキをさらに小さくおさえることも可能になる。
【0039】
容器蓋110の嵌合溝111に形成するパッキンの断面形状は、図11に示すような円形に限定されず、各種形状(非円形形)を選択することができる。例えば、半円形(図12)、三日月形(図13)、ひょうたん形、円弧形、折れ線形などとすることができる。これにより、パッキンに長手方向に沿った凹部又は平坦部を形成することが可能になり、嵌合溝111に容器本体の開口端を嵌め込みやすくすることができる。パッキンの断面形状は、ノズル40の吐出口の形状を変えることによって設定することができる。例えば、パッキンの断面形状を半円形としたい場合には、ノズル40の吐出口を半円形とすればよい。また、1つのノズル40に設ける吐出口の数は、1つに限定されず、複数であってもよい。例えば、接近して配した2つの吐出口から嵌合溝111に熱可塑性樹脂を流し込むと、断面ひょうたん形のパッキンを形成することができる。
【0040】
また、パッキンの長手方向に沿った凹部は、容器蓋110の嵌合溝111に熱可塑性樹脂120を流し込んだ後、嵌合溝111に流し込まれた熱可塑性樹脂120を嵌合溝111に沿った型で嵌合溝111の深さ方向に押圧することによっても形成することができる。これにより、パッキンに凹部を形成するだけでなく、上記の押圧工程を同時に行うことも可能になる。このとき使用する型は、それ専用のものを用意してもよいが、容器蓋110を型として利用すると好ましい。すなわち、図14に示すように、嵌合溝111に熱可塑性樹脂120が流し込まれた複数枚の容器蓋110を重ねて、熱可塑性樹脂120が高温状態にあるうちに下側の容器蓋110の嵌合溝111に流し込まれた熱可塑性樹脂120をその上側の容器蓋110の上面(図14では下面)で押圧することによって、パッキンに長手方向に沿った凹部を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明のパッキン付き容器蓋の製造方法及び製造装置を用いて、容器蓋の嵌合溝に熱可塑性樹脂を流し込んでいく様子を示した断面図である。
【図2】本発明のパッキン付き容器蓋の製造方法及び製造装置を用いて製造したパッキン付き容器蓋を示した破断斜視図である。
【図3】他の実施態様のパッキン付き容器蓋の製造装置を用いて、容器蓋の嵌合溝に熱可塑性樹脂を流し込んでいく様子を示した平面図である。
【図4】他の実施態様のパッキン付き容器蓋の製造装置を用いて、容器蓋の嵌合溝に熱可塑性樹脂を流し込んでいく様子を示した正面図である。
【図5】図4におけるノズルの周辺に設けたシャッター板を一端側(左端側)の限界点(A位置)まで移動させた状態を示した断面図である。
【図6】図4におけるノズルの周辺に設けたシャッター板を中間位置に移動させた状態を示した断面図である。
【図7】図4におけるノズルの周辺に設けたシャッター板を他端側(右端側)の限界点(B位置)まで移動させた状態を示した断面図である。
【図8】さらに別の例のパッキン付き容器蓋の製造装置におけるノズルの周辺に設けたシャッター板を一端側(左端側)の限界点(A位置)まで移動させた状態を示した断面図である。
【図9】図8におけるノズルの周辺に設けたシャッター板を中間位置に移動させた状態を示した断面図である。
【図10】図8におけるノズルの周辺に設けたシャッター板を他端側(右端側)の限界点(B位置)まで移動させた状態を示した断面図である。
【図11】断面円形のパッキンを形成した容器蓋の嵌合溝周辺を拡大した断面図である。
【図12】断面半円形のパッキンを形成した容器蓋の嵌合溝周辺を拡大した断面図である。
【図13】断面凹形のパッキンを形成した容器蓋の嵌合溝周辺を拡大した断面図である。
【図14】複数枚の容器蓋を重ねて断面凹形のパッキンを形成する様子を示した断面図である。
【符号の説明】
【0042】
10 熱可塑性樹脂投入部
20 押出機
30 発泡剤圧入部
40〜44 ノズル
50 容器蓋供給手段
60 容器蓋移動手段
70 ノズル基部
80 シャッター板
81〜84 孔
90 容器蓋排出手段
100 パッキン付き容器蓋
110 容器蓋
111 嵌合溝
120 熱可塑性樹脂(パッキン)
121 発泡剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出機で加熱溶融された熱可塑性樹脂をノズルから線状に押出して容器蓋の片面に設けられた嵌合溝に流し込むことにより、該嵌合溝に沿ってパッキンを一体的に形成するパッキン付き容器蓋の製造方法であって、発泡剤を添加した熱可塑性樹脂を押出機の内部で加熱溶融し、加熱溶融された熱可塑性樹脂をノズルから吐出した直後に発泡させて、容器蓋の全体を加熱することなく発泡体を前記嵌合溝に充填することを特徴とするパッキン付き容器蓋の製造方法。
【請求項2】
押出機の内部で加熱溶融された熱可塑性樹脂に対して気体又は液体からなる発泡剤を圧入する請求項1記載のパッキン付き容器蓋の製造方法。
【請求項3】
熱可塑性樹脂の発泡倍率が2〜30倍である請求項1又は2記載のパッキン付き容器蓋の製造方法。
【請求項4】
熱可塑性樹脂がポリオレフィンであることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載のパッキン付き容器蓋の製造方法。
【請求項5】
前記嵌合溝が円環状に設けられた容器蓋を前記嵌合溝の中心軸周りに回転させながら、位置固定されたノズルから熱可塑性樹脂を吐出して前記嵌合溝に流し込む請求項1〜4いずれか記載のパッキン付き容器蓋の製造方法。
【請求項6】
前記嵌合溝に流し込まれた熱可塑性樹脂の始端と終端との重なり部分に熱風を吹き付けて該重なり部分を溶着する請求項1〜5いずれか記載のパッキン付き容器蓋の製造方法。
【請求項7】
前記嵌合溝に流し込まれた熱可塑性樹脂の始端と終端との重なり部分に熱風を吹き付けて該重なり部分を溶着した後、該重なり部分を前記嵌合溝の深さ方向に押圧する請求項6記載のパッキン付き容器蓋の製造方法。
【請求項8】
前記嵌合溝に流し込まれた熱可塑性樹脂を前記嵌合溝に沿った型で前記嵌合溝の深さ方向に押圧することによって、パッキンに長手方向に沿った凹部又は平坦部を形成する請求項1〜7いずれか記載のパッキン付き容器蓋の製造方法。
【請求項9】
ノズルの吐出口を非円形に形成し、パッキンに長手方向に沿った凹部又は平坦部を形成する請求項1〜7いずれか記載のパッキン付き容器蓋の製造方法。
【請求項10】
ノズルを複数組設け、一の組のノズルと他の組のノズルとから熱可塑性樹脂を交互に吐出させ、一の組のノズルの下方にある容器蓋の嵌合溝と他の組のノズルの下方にある容器蓋の嵌合溝とに熱可塑性樹脂を交互に流し込み、複数の容器蓋に対して順次パッキンを形成することができるようにした請求項1〜9いずれか記載のパッキン付き容器蓋の製造装置。
【請求項11】
熱可塑性樹脂をノズルから線状に押出して容器蓋の片面に設けられた嵌合溝に流し込むことにより、該嵌合溝に沿ってパッキンを一体的に形成するパッキン付き容器蓋の製造装置であって、熱可塑性樹脂を投入するための熱可塑性樹脂投入部と、熱可塑性樹脂を加熱溶融するための押出機と、押出機の内部で加熱溶融された熱可塑性樹脂に対して気体又は液体の発泡剤を圧入するための発泡剤圧入部と、押出機の内部で加熱溶融された熱可塑性樹脂を押出機の外部へ吐出するためのノズルと、ノズルの下方に容器蓋を供給するための容器蓋供給手段と、ノズルから押出された熱可塑性樹脂が前記嵌合溝に沿って流れ込むように容器蓋をノズルの下方で移動させるための容器蓋移動手段とを備えたことを特徴とするパッキン付き容器蓋の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−100452(P2008−100452A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−285794(P2006−285794)
【出願日】平成18年10月20日(2006.10.20)
【出願人】(506354043)
【出願人】(502267970)株式会社グリーンベスト (3)
【Fターム(参考)】