説明

パック電池

【課題】通信部の異常に速やかに対処することができ、また通信部がロックした状態のままでの機器本体への装着を回避することのできるパック電池を提供する。
【解決手段】機器本体に着脱自在に装着されて二次電池に蓄積された電力を前記機器本体に供給するパック電池であって、前記二次電池の状態または充放電制御に関する情報を該パック電池が装着された機器本体との間で通信する通信部と、この通信部を介する前記機器本体との間の情報通信が途絶えたとき、またはパック電池が機器本体に装脱された際に前記通信部をリセットするリセット手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機器本体に装着して用いられるパック電池に係り、特に前記機器本体との間で情報通信する通信部の動作を保証し得る機能を備えたパック電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、携帯電話機等の電子機器の機器本体に装着されて二次電池に蓄積した電力を上記機器本体に供給するパック電池に、前記二次電池の残容量を演算し、その残容量を機器本体に通知する機能を設けることが提唱されている。このような機能は、例えばパック電池にマイクロコンピュータを搭載し、前記二次電池の充放電電流に基づいて該二次電池の残容量を求める残容量演算部や、この残容量演算部にて求められた二次電池の残容量を前記機器本体に通知する通信回路等を構築することにより実現される。
【0003】
尚、パック電池には、一般的には前記二次電池の端子電圧および/または充放電電流に応じて該二次電池の充放電を制御する充放電制御部や、この充放電制御部の制御の下で前記二次電池の過充電や過放電を禁止する保護回路等も組み込まれる。また機器本体側において上述したパック電池の通信機能等を監視し、通信異常の検出時に指令を発してパック電池における通信回路をリセット(初期化)することや、通信エラーが生じた通信タスクを再度実行させることが提唱されている(例えば特許文献1,2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−173220号公報
【特許文献2】特開2008−305164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで機器本体とパック電池との間の情報通信は、専ら、IC(Inter-Integrated Circuit)やSMBus(System Management Bus),UART(Universal Asynchronous Receiver Transmitter)等の有線によるシリアル通信により行われる。この為、パック電池における通信端子は外部に露出させて設けられており、通信回路(通信部)は上記通信端子を介して静電気放電(ESD;Electro Static Discharge)等のノイズによる影響を受け易いと言う問題がある。ちなみにノイズの影響を受けて通信回路がロックアップ(ハングアップ)すると、機器本体との間で情報通信ができなくなる。この点、前述した特許文献1,2にそれぞれ開示される技術は、通信回路をリセットしてそのロック状態を解除する上で有用である。
【0006】
しかしながら特許文献1,2にそれぞれ開示される技術では、機器本体側において通信異常を検出してパック電池に指令を与えない限り、通信回路をリセットすることはできない。またパック電池は、機器本体から取り外された状態で、つまり単体のまま放置されることもあり、この場合にも通信回路はその通信端子を介して外部ノイズを受け易い。そして通信回路がロックした状態のまま、そのパック電池を機器本体に装着した場合、通信回路の異常に対処するまでに時間が掛かると言う不具合がある。
【0007】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、その目的は、自ら通信部(通信回路)の異常に速やかに対処することができ、また通信部がロックした状態のままでの機器本体への装着を回避することのできるパック電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成するべく本発明に係るパック電池は、二次電池を備え、機器本体に着脱自在に装着されて前記二次電池に蓄積された電力を前記機器本体に供給するものであって、
前記二次電池の端子電圧および/または充放電電流に応じて該二次電池の充放電を制御する充放電制御部と、前記二次電池の状態または充放電制御に関する情報を該パック電池が装着された機器本体との間で通信する通信部と、この通信部を介して前記機器本体との間の情報通信が途絶えたときに前記通信部をリセットするリセット手段とを具備したことを特徴としている。
【0009】
ちなみに前記リセット手段は、例えば前記通信部に対する割り込みの発生が予め設定した期間に亘って途絶えたとき、または前記通信部のレジスタに格納された通信データが予め設定した期間に亘って変化しないときに、前記機器本体との間の通信が途絶えたとして検出するものである。好ましくは、前記リセット手段は、前記機器本体との間の通信が途絶えているとき、前記通信部を一定時間毎にリセットする手段を含む。
【0010】
また本発明に係るパック電池は、二次電池を備え、機器本体に着脱自在に装着されて前記二次電池に蓄積された電力を前記機器本体に供給するものであって、
前記二次電池の端子電圧および/または充放電電流に応じて該二次電池の充放電を制御する充放電制御部と、前記二次電池の状態または充放電制御に関する情報を該パック電池が装着された機器本体との間で通信する通信部と、該パック電池の前記機器本体への装脱を検出し、該パック電池が前記機器本体に装着されたとき、および/または該パック電池が前記機器本体から取り外されたときに前記通信部をリセットするリセット手段とを具備したことを特徴とする。
【0011】
好ましくは、前記リセット手段は、例えば該パック電池の前記機器本体への装脱を検出し、該パック電池が前記機器本体から取り外された状態にあるときに前記通信部を一定時間毎にリセットする手段を含む。
【0012】
ちなみに前記パック電池の前記機器本体への装脱の検出は、前記機器本体への非装着時には開放されて所定の電位にプルアップされ、前記機器本体への装着時に短絡されて接地される接続端子の電位を判定する着脱検出部にて検出される。或いは該パック電池の前記機器本体への装着時に機械的に付勢されるスイッチ素子のオン・オフを判定して検出するようにしても良い。
【発明の効果】
【0013】
上記構成のパック電池によれば、通信部に異常が発生し、或いは機器本体から取り外されて前記機器本体との間の通信が途絶えているとき、パック電池自らが上記通信部をリセット(初期化)するので、通信端子からのノイズに起因するロック状態を速やかに解消することができる。しかも機器本体側にてパック電池との間の通信異常を監視することがないので、機器本体側での処理負担を軽減することができ、また機器本体からパック電池に指令を与えて通信部をリセットすると言う煩雑さもなくなる。
【0014】
また本発明に係るパック電池においては、機器本体に装着したとき、或いは機器本体から取り外したとき、その装脱を検出してパック電池自らが上記通信部をリセット(初期化)するので、機器本体への着脱に伴う通信端子からのノイズに起因するロック状態を速やかに解消することができる。
【0015】
従って本発明によれば、通信部がロックしたパック電池をそのまま放置したり、更には通信部がロック状態にあるパック電池をそのまま機器本体に装着するような不具合を未然に防ぐことができ、また機器本体への装脱時に通信部がロックしたとしても、これを速やかに解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係るパック電池の要部概略構成図。
【図2】図1に示すパック電池における着脱検出部の具体的な構成例を示す図。
【図3】図1に示すパック電池における処理動作の概略的な手順を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態に係るパック電池について説明する。
図1はパック電池10の要部概略構成と、このパック電池10が着脱自在に装着される機器本体20の概略構成を示している。機器本体20は、例えば携帯電話機やノート型のパーソナルコンピュータ(PC)等の電子機器であって、基本的には前記パック電池10から電力が供給されて作動する。尚、機器本体20には、その主体部(図示せず)に加えて、商用電源を受けて前記パック電池10の二次電池(BAT)1を充電する電源部21や、パック電池10との間で情報通信して前記電源部21の作動を制御する機器制御部22が組み込まれている。この機器制御部22は、例えばマイクロプロセッサからなる。
【0018】
さてパック電池10は、二次電池(BAT)1を備え、充電により二次電池1に蓄積した電力を、その負荷である機器本体20に供給(放電)するように構成される。ちなみに二次電池1は、その出力電圧仕様および電流容量仕様に応じて、例えばリチウムイオン電池やニッケル水素電池等の複数の電池セルを直並列に接続したものからなる。具体的には要求された電流容量に応じて複数の電池セルを並列接続した電池セル群を、要求された出力電圧に応じて多段に直列接続して二次電池1が構成される。
【0019】
このような二次電池1の充放電路には、過充電保護用のスイッチ素子(FET)2および過放電保護用のスイッチ素子(FET)3が直列に介挿されている。これらの保護用のスイッチ素子(FET)2,3は、後述する制御演算部4の制御を受けて前記二次電池1の充放電路を遮断し、これによって二次電池1を過充電および過放電から保護する役割を担う。また前記二次電池1の充放電路には、該二次電池1の充放電電流を検出する為の電流検出部5が設けられている。この電流検出部5は、具体的には前記二次電池1の充放電路に直列に介挿されたシャント抵抗と、このシャント抵抗の両端間に生じた電圧降下を前記二次電池1の充放電電流として検出するA/D変換器とからなる。
【0020】
尚、この例では前記保護用のスイッチ素子(FET)2,3は前記二次電池1の正極側ラインに介装されているが、負極側ラインに設けることも可能である。また前記シャント抵抗についても、ここでは前記二次電池1の負極側ラインに介装されているが、正極側ラインに設けることも勿論可能である。
【0021】
さて前述した制御演算部4は、例えばマイクロプロセッサを用いて実現されるものであって、前記二次電池1の充放電を制御する充放電制御部11を備える。この充放電制御部11は、前述した電流検出部5にて検出される二次電池1の充放電電流に加えて、電圧検出部6にて検出される前記二次電池1の端子電圧およびサーミスタ等の温度検出素子7にて検出される前記二次電池1の温度に従って該二次電池1に対する充放電を制御すると共に、前記保護用のスイッチ素子(FET)2,3の作動をそれぞれ制御する役割を担う。
【0022】
前記電圧検出部6は、前記二次電池1の端子電圧Vbatを、より詳しくは直列に接続された複数の電池セルの各セル電圧Vcellを、例えば所定の周期で巡回的に検出するA/D変換器からなる。そして前述した充放電制御部11は、前記電圧検出部6にて検出される二次電池1の端子電圧(セル電圧)に応じて、具体的には充電時における前記二次電池1の端子電圧(セル電圧)の変化に応じて該二次電池1に対する充電条件を変える等して、前記二次電池1を満充電状態まで効率的に充電する。また充放電制御部11は、例えば二次電池1の端子電圧(セル電圧)が上限充電電圧に達した場合には、前記スイッチ素子2を遮断して二次電池1に対する充電を禁止する。
【0023】
また前記充放電制御部11は、前記二次電池1の放電時には該二次電池1の放電電流を監視し、異常電流(過大電流)を検出した場合には前記スイッチ素子3を遮断すること該二次電池1の異常放電や短絡事故を防止する。更に前記充放電制御部11は、二次電池1の端子電圧(セル電圧)が下限放電電圧まで低下した場合には、前記スイッチ素子3を遮断することで該二次電池1が深放電状態に陥ることを防止する。
【0024】
また前記制御演算部(マイクロプロセッサ)4には、二次電池1の充電容量(放電残容量)を算出する残容量演算部12が設けられている。この残容量演算部12は、基本的には二次電池1の充放電電流とその充放電時間との乗算値を積算することで、該二次電池1に充電された容量および二次電池1から放電された容量の累積値を求め、これを二次電池1が有する残容量として求めるものである。具体的にはこの残容量演算部12は、前記充放電制御部11の制御の下で前記二次電池1を満充電まで充電したときの充電容量を求める共に、その後の放電によって機器本体20に供給した電力量を放電容量として求め、これらの差分を二次電池1に残されている残容量として求めるものとなっている。この残容量については、満充電時の容量を100%とする相対残容量として求める場合もある。
【0025】
さてパック電池10は、上述した制御演算部4に加えて、該パック電池10が装着される前記機器本体20との間で、前記二次電池1の状態に関する情報や充放電制御に関する情報を通信する通信部(通信回路)8を備える。上記二次電池1の状態に関する情報は、例えば前述した如く求められる残容量や二次電池1の端子電圧(セル電圧)、更には二次電池1の充放電電流等からなる。また前記二次電池の充放電制御に関する情報は、二次電池1に対する充電電流の上限値や充電電圧の上限値を可変設定する情報、更には二次電池1の充放電を禁止する情報等からなる。
【0026】
ちなみに前記通信部(通信回路)8は、例えばIC(Inter-Integrated Circuit)の仕様に基づいて前記機器本体20との間で前述した情報をシリアル通信する。具体的には前記通信部8は、例えば2本の信号線を用いてシリアルデータ(SCL)とシリアルクロック(SDA)を出力し、これによって機器本体20に対して前述した残容量の情報や、充電制御に関する情報を通知するものとなっている。尚、1線式のUARTを採用してシリアル通信することも勿論可能である。
【0027】
尚、図1において[V+]はパック電池10および機器本体20の各正極接続端子を示し、[V−]は各負極接続端子を示している。また[SCL]および[SDA]は、シリアル通信用の一対の通信端子を示し、[B/I]は着脱検出端子を示している。これらの各端子は、パック電池10と機器本体20との間で相互に対応付けて設けられており、パック電池10を機器本体20に装着したときには相互に接続され、また機器本体20からパック電池10を取り外したときには、それぞれ離反されることは言うまでもない。
【0028】
さて基本的には上述した如く構成されるパック電池において本発明が特徴とするところは、前述した通信部8を介する前記機器本体20との間の通信が一定期間に亘って途絶えたとき、或いは該パック電池10が前記機器本体20に装脱されたとき、前記通信部8における通信回路をリセットするリセット手段を備えている点にある。ここで上記通信部8における通信回路とは、前述した一対の通信端子[SCL,SDA]に、通信情報を形成する2値の電圧信号を出力するハードウェア(図示せず)を指す。
【0029】
具体的には前記制御演算部4は、前記通信部8を介する前記機器本体20との間の通信の途絶えを監視する通信監視部13と、パック電池10の前記機器本体20への装脱を検出する着脱検出部14とを備える。そして制御演算部4に設けられたリセット手段(図示せず)は、前記通信監視部13により前記機器本体20との間の通信が、予め設定した期間に亘って通信が途絶えことが検出されたとき、前記通信部8をリセットする。更に前記リセット手段は、前記着脱検出部14によりパック電池10が機器本体20に装着されたことが検出されたとき、およびパック電池10が前記機器本体20から取り外されたことが検出されたとき、前記通信部8をリセットするものとなっている。尚、リセット手段は、前記機器本体20との間の通信が長期に亘って途絶えている場合には、前記通信回路を一定時間毎にリセットする。
【0030】
具体的には前記機器本体20との間の通信が途絶えたときに前記通信回路をリセットする機能は、例えば前記通信回路の通信レジスタに格納される通信データを定期的に調べ、予め設定した期間に亘って通信データに変化がないとき、前記通信回路がロック状態に陥っていると判定して前記通信回路をリセット(初期化)する。或いは前記通信部8は、前記機器本体20からの通信を受けると、制御演算部4に対して割り込みを掛けて通信データの処理を促すことから、例えばこの割り込みの発生状況を監視して、具体的に通信が行われる都度、リセットされるタイマカウンタの計数値をモニタして、一定期間以上に亘る通信の途絶えを検出ものであっても良い。
【0031】
即ち、前記通信監視部13は、通信部8を介する前記機器本体20との間の通信が、一定期間以上に亘って途絶えた否かを監視しており、通信の途絶えが検出されたとき、通信部8の通信回路をリセット(初期化)している。この通信の監視は、例えば前記制御演算部4での主たる処理を司るソフトウェアの一部(サブルーチン)として実現される。
【0032】
一方、前記着脱検出部14は、例えば前記機器本体への非装着時には開放されて所定の電位にプルアップされ、前記機器本体への装着時に接地される着脱検出用の接続端子B/Iの電位を判定することで、前記機器本体への装脱状態を検出する。そして着脱検出部14は、パック電池10が機器本体20に装着されたとき、および前記パック電池10が機器本体20から取り外されたとき、前記通信部8を強制的のリセット(初期化)するものとなっている。この着脱検出部14もまた、例えば前記制御演算部4での主たる処理を司るソフトウェアの一部(サブルーチン)として実現される。
【0033】
ちなみにパック電池10における前記接続端子B/Iは、図2に例示するように抵抗Rを介して所定の電圧Vccにプルアップされたものであり、機器本体20の接続端子B/Iに接続されたとき、該接続端子B/Iを介して接地ライン(負極側ライン)に短絡される。従ってパック電池10の接続端子B/Iは、機器本体20への接続時には接地電位に保たれ、該機器本体20から取り外されたときには前記電圧Vccにプルアップされる。前述した着脱検出部14はこのような接続端子B/Iの電位を、例えばトランジスタ(FET)を介して検出することで機器本体20への装脱状態を、つまり機器本体20に装着されているか、或いは取り外されているかを検出する。
【0034】
尚、着脱検出部14については、例えばパック電池10の前記機器本体20への装着時に機械的に付勢されるスイッチ素子のオン・オフを判定するものであっても良い。このような機械的な着脱検出部14については、パック電池10が前述した接続端子B/Iを備えていない場合に有用である。
【0035】
上述した通信監視部13および着脱検出部14による監視(検出)は、例えば図3にその処理手順を示すように前記制御演算部4における通常処理<ステップS1>のサブルーチンとして組み込まれて所定の周期で定期的に実行される。具体的には先ず、前記着脱検出部14を起動してパック電池10が機器本体20に装着されているか否か、換言すれば機器本体20から取り外されているか否かを判定する<ステップS2>。この判定は、前述した接続端子B/Iの電位を検出することによって行われる。そしてパック電池10が機器本体20に装着されている場合には、第1の制御フラグFaを[1]に設定し、パック電池10が機器本体20から取り外されている場合には、前記第1の制御フラグFaを[0]に設定する。
【0036】
次いで前記第1の制御フラグFaが、このサブルーチンの実行過程において[1]から[0]へと変化したか、或いは[0]から[1]へと変化したかを判定する<ステップS3>。この判定は、前回のサブルーチンの実行過程における第1の制御フラグFaの値と現在の第1の制御フラグFaを比較することによってなされる。そして第1の制御フラグFaの値が変化している場合には、パック電池10が機器本体20に装着された、若しくはパック電池10が機器本体20から取り外されたと判定する。
【0037】
この場合には、パック電池10の機器本体20への装脱時に、その通信端子を介するノイズの混入によって通信部8がロックアップしている可能性があるので、第2の制御フラグFbを[0]に設定した後<ステップS4>、通信部8をリセット(初期化)する<ステップS5>。尚、上記第2の制御フラグFbは、一定時間毎に実行する前記通信部8のリセット(初期化)を管理する為のものである。
【0038】
一方、前記第1の制御フラグFaが変化していない場合には<ステップS3>、次に該第1の制御フラグFaが[0]であるかを判定する<ステップS6>。即ち、パック電池10が機器本体20から取り外された状態であるか否かを判定する。そして第1の制御フラグFaが[1]であり、パック電池10が機器本体20に装着されている状態であることが確認されたならば、最後の通信を行ってから予め定められた一定時間(例えば30秒)が経過したか否かを判定する<ステップS7>。この一定時間については、一般的には5〜40秒程度の時間として設定すれば十分である。そして前記一定時間の経過判定は、前述した通信時の割り込みによってリセットされるタイマカウンタの計数値を調べることによってなされる。
【0039】
具体的には上記一定時間の経過判定は、前述した通信時の割り込みによってリセットされるタイマカウンタの計数値を調べることによってなされる。そして、例えばタイマカウンタがオーバーフローし、上記一定時間に亘って機器本体20との間の通信が途絶えていることが示されたならば、前述したパック電池10の装脱時と同様に、前記通信部8をリセット(初期化)する<ステップS5>。つまりパック電池10が機器本体20に装着された状態であっても、機器本体20との間の通信が途絶えた状態が続く場合には、通信部8に異常(ロックアップ)が生じたとみなして該通信部8をリセットして初期状態に戻す。
【0040】
これに対してパック電池10が機器本体20から取り外された状態であることが確認されたならば<ステップS6>、前述したタイマカウンタを起動する。そしてタイマカウンタにより予め定めた一定時間(例えば10秒)の経過が確認されたとき、前述した第2の制御フラグFbを[1]に設定する<ステップS8>。この時間については機器本体20がパック電池10をアクセスする通信間隔に依存するので、一般的には10〜30秒程度として定めれば良い。にこのタイマカウンタの作動中は、前記第2の制御フラグFbが[1]になったか否かを判定しながら<ステップS9>、このサブルーチンを繰り返し実行する。
【0041】
そして前記第2の制御フラグFbが[1]になったときには、該第2の制御フラグFbを[0]に戻した後<ステップS4>、前記通信部8をリセット(初期化)する<ステップS5>。つまりパック電池10が機器本体20から取り外された状態にあるときには、通信部8を定期的に初期化(リセット)する。
【0042】
尚、通信監視部13による通信状態の確認を、例えば通信情報が一時的に格納される通信レジスタ(図示せず)の内容を調べ、通信情報が一定の期間以上に亘って更新されない状態が続いているか否を調べることにより行うことも可能である。そして上記通信レジスタの内容(通信情報)が一定間期間に亘って変化していないとき、この状態を通信部9がロックアップし、その機能が正常に働いていないとして判定すれば良い。
【0043】
即ち、パック電池10から機器本体20への情報通信は、少なくとも前述した残容量演算部4aにて求められた二次電池1の残容量を所定の周期毎に機器本体20に通知することによってなされる。また二次電池1の充電時には、充電に伴って変化する二次電池1の端子電圧の変化に応じて、その充電電圧や充電電流を可変制御する為の制御情報を逐次通知することによってなされる。これにも拘わらず前記通信レジスタに格納されている通信情報が、一定間期間に亘って変化していない状態は、とりもなおさず通信部8がロックアップし、その機能が正常に働いていないことを意味する。尚、UART等においては、通信レジスタに格納したデータが送信されたとき、別のレジスタにて管理される送信完了フラグがセットされるので、この送信完了フラグを調べてデータ通信が正常に完了したか否かを判定することもできる。
【0044】
このような通信部8のロックアップは、前述したように前記一対の通信端子[SCL,SDA]を介して混入したノイズに起因することが多い。そこでこのパック電池10においては、上述したように前記通信監視部13において通信部8のロックアップを検出したとき、および前記着脱検出部14にて機器本体20に対する装脱が検出されたときに通信部8をリセット(初期化)し、これによってその機能を回復するものとなっている。
【0045】
この通信部8における通信機能のリセット(初期化)は、特許文献1に示すリセット処理と同様な意味を持つものである。ちなみに特許文献1においては制御機器(機器本体)側からリセット指令を与えていたのに対し、このパック電池10においては通信部8においてその通信機能を前述したように自己診断すると共に、機器本体20に対する装脱状態に応じて通信部8をリセット(初期化)している。
【0046】
このような通信回路のリセット機能を備えたパック電池10によれば、機器本体20に装着されて使用状態にあり、通信回路がロックアップしたときのみならず、機器本体20への装脱時、更には機器本体20から取り外された状態にあるときにおいても通信部8をリセットするので、ロックアップ状態に陥った通信部8の通信機能を速やかに回復させ、その正常な機能状態を保つことができる。またパック電池10が機器本体20から取り外された状態にあるときには、定期的にその着脱の有無を判定して通信部8をリセット(初期化)することができるので、ノイズを受けて通信部8がロックアップした状態のパック電池10を、そのまま機器本体20に装着してしまうような不具合を効果的に回避することができる。
【0047】
尚、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。例えば機器本体20への着脱状態の判定時に通信レジスタの内容を判定する例を挙げたが、これらの処理を互いに独立した周期で個別に実行することも可能である。例えばパック電池10が機器本体20に装着されているときには、一般的には機器本体20が定期的に二次電池1をアクセスして残容量の通知を促すので、その通信周期を調べて通信部8が正常に機能しているか否かを判定するようにしても良い。また一定の周期毎に通信レジスタの内容を調べ、予め設定した回数に亘って前記通信レジスタの内容に変化がないとき、これをロックアップとして検出するようにしても良い。
【0048】
更には図1に機能ブロックとして概略的に示した前記制御演算部4および通信部8を、1チップの集積回路(マイクロプロセッサユニット)として構築することも勿論可能である。具体的にはシャント抵抗を除く電流検出部5および電圧検出部6を、膜色プロセッサユニットに一体に組み込むことも可能である。また機器本体20との間の通信状態の監視の手法も種々変形可能である。その他、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 二次電池
2 過充電保護用のスイッチ素子(FET)
3 過放電保護用のスイッチ素子(FET)
4 制御演算部(マイクロプロセッサ)
5 電流検出部
6 電圧検出部
8 通信部
10 パック電池
11 充放電制御部
12 残容量演算部
13 通信監視部
14 着脱検出部
20 機器本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池を備え、機器本体に着脱自在に装着されて前記二次電池に蓄積された電力を前記機器本体に供給するパック電池であって、
前記二次電池の端子電圧および/または充放電電流に応じて該二次電池の充放電を制御する充放電制御部と、前記二次電池の状態または充放電制御に関する情報を該パック電池が装着された機器本体との間で通信する通信部と、この通信部を介する前記機器本体との間の情報通信が途絶えたときに前記通信部をリセットするリセット手段とを具備したことを特徴とするパック電池。
【請求項2】
前記リセット手段は、前記機器本体との通信による前記通信部に対する割り込みの発生が、予め設定した期間に亘って途絶えたとき、または前記通信部のレジスタに格納された通信データが予め設定した期間に亘って変化しないときに、前記機器本体との間の通信が途絶えたとして検出するものである請求項1に記載のパック電池。
【請求項3】
前記リセット手段は、前記機器本体との間の通信が途絶えているとき、前記通信部を一定時間毎にリセットする手段を含む請求項2に記載のパック電池。
【請求項4】
二次電池を備え、機器本体に着脱自在に装着されて前記二次電池に蓄積された電力を前記機器本体に供給するパック電池であって、
前記二次電池の端子電圧および/または充放電電流に応じて該二次電池の充放電を制御する充放電制御部と、前記二次電池の状態または充放電制御に関する情報を該パック電池が装着された機器本体との間で通信する通信部と、該パック電池の前記機器本体への装脱を検出し、該パック電池が前記機器本体に装着されたとき、および/または該パック電池が前記機器本体から取り外されたときに前記通信部をリセットするリセット手段とを具備したことを特徴とするパック電池。
【請求項5】
前記リセット手段は、該パック電池の前記機器本体への装脱を検出し、該パック電池が前記機器本体から取り外された状態にあるときに前記通信部を一定時間毎にリセットする手段を含む請求項4に記載のパック電池。
【請求項6】
前記パック電池の前記機器本体への装脱の検出は、前記機器本体への非装着時には開放されて所定の電位にプルアップされ、前記機器本体への装着時に短絡されて接地される接続端子の電位を判定する着脱検出部にて検出される請求項4または5に記載のパック電池。
【請求項7】
前記パック電池の前記機器本体への装着の有無は、該パック電池の前記機器本体への装着時に機械的に付勢されるスイッチ素子のオン・オフを判定して検出されるものである請求項4または5に記載のパック電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−108439(P2011−108439A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−260777(P2009−260777)
【出願日】平成21年11月16日(2009.11.16)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】