説明

パルスモータの制御装置およびそれを備えた蛍光X線分析装置ならびにパルスモータの制御用プログラム

【課題】パルスモータが通常有している原点センサを利用して簡便に脱調を検出できるパルスモータの制御装置などを提供する。
【解決手段】原点センサ付きのパルスモータ2の制御装置25であって、まず、パルスモータ2の回転位置において現在位置Psから最終目的位置Ptまでの間で原点センサが原点を検出すべき位置のうち最後の位置を中間目標位置Piとし、現在位置Psから中間目標位置Piに到達するだけのパルスをパルスモータ2に与えて実際に到達した位置を脱調検出位置Pdとする。そして、その脱調検出位置Pdで原点センサが原点を検出するか否かを調べ、脱調検出位置Pdで原点センサが原点を検出しない場合には、パルスモータ2が脱調したと判断し、脱調検出位置Pdで原点センサが原点を検出した場合には、中間目標位置Piから最終目的位置Ptに到達するだけのパルスをパルスモータ2に与える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原点センサ付きのパルスモータの制御装置およびそれを備えた蛍光X線分析装置ならびに原点センサ付きのパルスモータの制御用プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、種々の可動機構において駆動源としてパルスモータ(ステッピングモータ)が広く用いられている(例えば、特許文献1、2参照)。パルスモータの回転軸には、通常、1回転中の基準となる位置である原点を検出する原点センサ(ORGセンサ)が実装されており、パルスモータを原点に復帰させる際などに利用される。
【0003】
パルスモータを現在位置Psから最終目的位置Ptまで回転させる場合の従来の制御の一例を図5に示す。下側は、縦軸を回転速度、横軸を回転位置として、パルスモータの回転速度の変化を示している。上側は、縦軸を原点センサによる原点検出電圧、横軸を下側と共通の回転位置として、原点検出信号の有無を示しており、検出電圧ありのONで検出、検出電圧なしのOFFで非検出である。横軸であるパルスモータの回転位置は、1回転でもとに戻る角度位置を直線状に延ばして表示したもので、パルスモータに与えられるパルス数に対応する。パルスモータ1回転は、この例では1000パルスに対応し、横軸方向の長さcで表される。
【0004】
現在位置Psから最終目的位置Ptに到達するのに必要なパルス数は既知であるので、それだけのパルスをパルスモータに与える。図5の下側の回転速度の変化に示したように、等速で駆動する領域の前後に、加速領域と減速領域があり、減速領域の最後で停止して最終目的位置Ptに到達するはずである。
【特許文献1】特開2004−177302号公報
【特許文献2】特開2007−129811号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、加速領域において可動機構の摺動部がなめらかに動作しなかったような場合、パルスを送ってもパルスモータが回転できず、その結果、最終目的位置Ptに到達する前に停止することがある。これがいわゆる脱調(同期外れ、step out)である。パルスモータの回転位置を常時監視しないオープンループ制御では、脱調したことを検出できないため、そのまま可動機構が組み込まれた装置全体の動作が続行されてしまい、様々な弊害を引き起こす。
【0006】
この問題を回避するために、パルスモータにエンコーダを取り付けてパルスモータの回転位置を常時監視すること、すなわちクローズドループ制御を行うことが考えられるが、これでは、装置全体の複雑化、コストアップを招来してしまう。
【0007】
本発明は前記従来の問題に鑑みてなされたもので、パルスモータが通常有している原点センサを利用して簡便に脱調を検出できるパルスモータの制御装置およびそれを備えた蛍光X線分析装置、ならびに同様に簡便に脱調を検出できるパルスモータの制御用プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明の第1構成の制御装置は、原点センサ付きのパルスモータの制御装置であって、まず、前記パルスモータの回転位置において現在位置から最終目的位置までの間で前記原点センサが原点を検出すべき位置のうち最後の位置を中間目標位置とし、前記現在位置から前記中間目標位置に到達するだけのパルスを前記パルスモータに与えて実際に到達した位置を脱調検出位置とする。そして、その脱調検出位置で前記原点センサが原点を検出するか否かを調べる。そしてさらに、前記脱調検出位置で前記原点センサが原点を検出しない場合には、前記パルスモータが脱調したと判断し、前記脱調検出位置で前記原点センサが原点を検出した場合には、前記中間目標位置から前記最終目的位置に到達するだけのパルスを前記パルスモータに与える。
【0009】
第1構成のパルスモータの制御装置では、エンコーダなどを新たに用いることなく、パルスモータが通常有している原点センサを利用する。具体的には、原点センサが原点を検出すべき位置であって最終目的位置の直前である中間目標位置を目指してパルスモータを一旦駆動し、実際に到達した脱調検出位置において原点を検出できるか否かによって脱調を検出する。したがって、パルスモータを含む装置全体の複雑化、コストアップを招来することなく、簡便にパルスモータの脱調を検出することができる。
【0010】
第1構成の制御装置において、前記脱調検出位置で前記原点センサが原点を検出しない場合には、前記パルスモータが脱調したと判断し、さらに、前記パルスモータの回転位置を所定の初期位置に戻し、その初期位置を新たな現在位置として、前記脱調検出位置で前記原点センサが原点を検出するか否かを調べるまでの制御動作を繰り返してもよい。
【0011】
本発明の第2構成の蛍光X線分析装置は、原点センサ付きのパルスモータを駆動源とする可動機構と、前記パルスモータを制御するための前記第1構成の制御装置とを備えている。第2構成の蛍光X線分析装置によっても、パルスモータを含む蛍光X線分析装置全体の複雑化、コストアップを招来することなく、簡便にパルスモータの脱調を検出することができる。
【0012】
本発明の第3構成は、原点センサ付きのパルスモータの制御をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、以下の各ステップをコンピュータに実行させる。まず、前記パルスモータの回転位置において現在位置から最終目的位置までの間で前記原点センサが原点を検出すべき位置のうち最後の位置を中間目標位置とし、前記現在位置から前記中間目標位置に到達するだけのパルスを前記パルスモータに与えて実際に到達した位置を脱調検出位置とする第1ステップ。次に、前記脱調検出位置で前記原点センサが原点を検出するか否かを調べる第2ステップ。さらに、前記脱調検出位置で前記原点センサが原点を検出しない場合に、前記パルスモータが脱調したと判断する第3ステップと、前記脱調検出位置で前記原点センサが原点を検出した場合に、前記中間目標位置から前記最終目的位置に到達するだけのパルスを前記パルスモータに与える第4ステップ。第3構成のプログラムによっても第1構成の制御装置と同様の作用効果が得られる。
【0013】
第3構成のプログラムにおいて、前記第3ステップの次に、前記パルスモータの回転位置を所定の初期位置に戻し、その初期位置を新たな現在位置として、前記第1ステップに戻る第5ステップを設けてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の第1実施形態であるパルスモータの制御装置、それを備えた第2実施形態である蛍光X線分析装置、第1実施形態の制御装置が有するコンピュータに制御を実行させるための、第3実施形態であるプログラムについて、図にしたがって説明する。
【0015】
まず、第2実施形態である蛍光X線分析装置について説明する。図3に示すように、この装置は、波長分散型で走査型の蛍光X線分析装置であって、パルスモータ2を駆動源とする可動機構1を複数備え、パルスモータ2の回転を位置制御用IC4で制御することにより、試料14に1次X線13を照射して発生する蛍光X線などの2次X線15の強度を測定する。
【0016】
複数の可動機構1とは、試料交換機構6におけるX移動機構1AおよびY移動機構1B、試料位置決め機構7におけるr位置決め機構1Cおよびθ位置決め機構1D、1次フィルタ交換機構1E、ダイアフラム交換機構1F、発散スリット交換機構1G、ならびに、分光素子と検出器との連動機構8におけるθ軸駆動機構1Hおよび2θ軸駆動機構1Iの9つである。各可動機構1A,1B…の具体的構成については様々に構成できるので、模式的に図示している。各可動機構1A,1B…は、駆動源として1つずつパルスモータ2A,2B…を有している。
【0017】
試料交換機構6におけるX移動機構1AおよびY移動機構1Bは、例えば、縦横(Y方向およびX方向)に多数配置された試料(図示せず)のうち、所望の1つを1次X線13が照射される分析位置(図3の試料14の位置)へ搬送するために、試料(または試料を保持する試料ホルダ)を把持するチャックを所望の試料の直上までパルスモータ2B,2Aの回転により移動させる縦移動台および横移動台である。試料位置決め機構7におけるr位置決め機構1Cおよびθ位置決め機構1Dは、試料14における所望の部位が測定されるように試料14をパルスモータ2C,2Dの回転により位置決めするもので、例えば、rθテーブルにおけるr方向の駆動手段およびθ方向(後述する分光素子18への入射角θとは無関係である)の駆動手段である。
【0018】
1次フィルタ交換機構1Eは、例えば、材質または厚みが相異なる複数の1次フィルタを周方向に配置した円板をパルスモータ2Eで回転させて、X線管11と試料14との間のX線光路に位置する1次フィルタ12を選択するものである。これに限らず、複数の1次フィルタを直線状に配置した長板をボールねじやベルトを介してパルスモータ2Eで長手方向に進退させて、1次フィルタ12を選択してもよい。ダイアフラム交換機構1Fは、例えば、孔径が相異なる複数の視野制限用ダイアフラム(試料表面において検出器が見込む面積を決めるもの)を周方向に配置した円板をパルスモータ2Fで回転させて、試料14と発散スリット17との間のX線光路に位置するダイアフラム16を選択するものである。発散スリット交換機構1Gは、例えば、分解能が相異なる複数の発散スリットを周方向に配置した円板をパルスモータ2Gで回転させて、ダイアフラム16と分光素子18との間のX線光路に位置する発散スリット17を選択するものである。
【0019】
分光素子と検出器との連動機構8は、検出器21(前部に受光スリット20を有している)に入射する2次X線19の波長が変化するように分光素子18と検出器21とを連動させる、いわゆるゴニオメータである。すなわち、2次X線15がある入射角θで分光素子18へ入射すると、その2次X線15の延長線22と分光素子18で分光(回折)された2次X線19は入射角θの2倍の分光角2θをなすが、連動機構8は、分光角2θを変化させて分光される2次X線19の波長を変化させつつ、その分光された2次X線19が検出器21に入射し続けるように、分光素子18を、その受光面の中心を通る紙面に垂直な軸心Oを中心に回転させ、その回転角の2倍だけ、検出器21を、軸心Oを中心に円23に沿って回転させる。
【0020】
より具体的には、軸心Oが分光素子18の受光面を通るように分光素子18が取り付けられるθ軸を、連動機構8のθ軸駆動機構1Hで回転させ、θ軸と軸心Oが共通で検出器21が取り付けられる2θ軸を、θ軸の回転角の2倍だけ連動機構8の2θ軸駆動機構1Iで回転させる。θ軸駆動機構1H、2θ軸駆動機構1Iは、それぞれパルスモータ2H,2Iで駆動する。
【0021】
以上の可動機構1A,1B…のパルスモータ2A,2B…の回転を、ドライバ基板9に実装された各パルスモータ専用のドライバ3A,3B…を経由して、位置制御用IC4で制御することにより、所望の試料14を選択し、その試料14の所望の部位を位置決めし、X線管11から発生したX線を適切な1次フィルタ12に通過させて1次X線13とし、その1次X線13を試料14に照射して発生する2次X線15を適切なダイアフラム16および発散スリット17に通過させ、2次X線15の波長を分光素子18で走査して強度を検出器21で測定する。その部位の測定が終了すれば、他の所望の部位を測定し、その試料14の測定が終了すれば、他の所望の試料に交換し、以上の作業を繰り返す。
【0022】
ここで、位置制御用IC4は、各パルスモータ2A,2B…専用に、パルスモータ2と同じ数だけ、つまり9つ設けてもよいが、この第2実施形態の蛍光X線分析装置のように、位置制御用ICをパルスモータに動的に割り当てる制御手段を備えることにより、位置制御用ICの数をパルスモータの数よりも少なくしてもよい。つまり、試料14の交換からその試料14の測定終了までの1工程において、すべてのパルスモータ2が動作(回転)し続けるわけではないので、同時に動作するパルスモータ2の最大数と同じ数だけ位置制御用IC4を備え、各位置制御用IC4A,4B…が制御するパルスモータ2を固定せずに、動作すべきパルスモータ2に対して、そのとき使用されていない位置制御用IC4を制御手段5で適宜割り当てて制御することができる。制御手段5は、回路素子であるMPU(Micro Processing Unit )およびそれを機能させるソフト(プログラム)で構成される。
【0023】
制御手段5は、位置制御用ICの動的割り当てのために以下のような処理を行う。まず、位置制御用IC4を資源として扱って排他処理を行い、割り当てた位置制御用IC4を解放するまで他に割り当てられないようにする。次に、割り当てた位置制御用IC4に、制御すべきパルスモータ2の初期パラメータ(そのパルスモータ2を有する可動機構1に応じた自起動速度、加減速条件、最高速度など)を設定する。そして、その初期パラメータにしたがって、可動機構1が所定の状態(位置)まで駆動するように、パルスモータ2を制御して動作させる。個々の制御を終了する際には、その制御での割り当て関係を解消し、使用していた位置制御用IC4を次回の割り当ての候補として解放する。その際、制御していたパルスモータ2の回転位置(パルスモータ2で駆動した結果の可動機構1の状態、位置)は記憶しておくので、パルスモータ2に位置制御用IC4を割り当てるたびに、そのパルスモータ2を有する可動機構1を初期化する(所定の機械的な初期状態に戻す)必要はない。
【0024】
この実施形態の装置では、同時に動作するパルスモータ2の最大数は、試料14のある部位を測定中の、1次フィルタ交換機構1Eのパルスモータ2E、ダイアフラム交換機構1Fのパルスモータ2F、θ軸駆動機構1Hのパルスモータ2H、2θ軸駆動機構1Iのパルスモータ2Iの5つであるが、前述したように連動機構8におけるθ軸と2θ軸は回転角が1:2の関係であるので、パルスモータ2Hとパルスモータ2Iは、共通する入力パルスで連動させることができ、つまり、単一の位置制御用IC4で制御できる。したがって、位置制御用IC4をさらに1つ減らして、4つの位置制御用IC4A〜4DをIOボード(基板)10に実装すれば足りる。なお、共通する入力パルスで連動するのであれば、3つ以上のパルスモータに対しても、単一の位置制御用ICを割り当てることができる。
【0025】
ところで、第2実施形態の蛍光X線分析装置のパルスモータ2は、いずれも原点センサ付きであり、上述の制御手段5、位置制御用IC4およびドライバ3が、これらのパルスモータ2を制御するための制御装置25を構成しており、原点センサからの原点検出信号(原点検出電圧)は、制御装置25に届くように構成されている。この原点センサ付きのパルスモータの制御装置25は、それ自体が本発明の第1実施形態であり、図5と同様に描いた図1にしたがって説明すると、まず、パルスモータ2の回転位置において現在位置Psから最終目的位置Ptまでの間で原点センサが原点を検出すべき位置のうち最後の位置を中間目標位置Piとし、現在位置Psから中間目標位置Piに到達するだけのパルスをパルスモータ2に与えて実際に到達した位置を脱調検出位置Pdとする。
【0026】
そして、その脱調検出位置Pdで原点センサが原点を検出するか否かを調べる。そしてさらに、脱調検出位置Pdが例えば図1中Pd1で示す位置で原点センサが原点を検出しない場合には、パルスモータ2が脱調したと判断し、脱調検出位置Pdが図1中Pd2で示す位置、すなわち中間目標位置Piに一致する位置で原点センサが原点を検出した場合には、中間目標位置Piから最終目的位置Ptに到達するだけのパルスをパルスモータ2に与える。より詳細な動作については、プログラムの説明として次述する。
【0027】
この制御装置25に含まれる制御手段5は、前述したように、回路素子であるMPUすなわちコンピュータと、そのコンピュータに原点センサ付きのパルスモータ2の制御を実行させるためのプログラムで構成されるが、このプログラムは、それ自体が本発明の第3実施形態であり、図2のフローチャートに示すように、以下のステップS1〜S4をコンピュータに実行させる。
【0028】
まず、第1ステップS1で、中間目標位置Piを目指してパルスモータ2を駆動する。具体的には、図1に示すように、パルスモータ2の回転位置において現在位置Psから最終目的位置Ptまでの間で原点センサが原点を検出すべき位置のうち最後の位置を中間目標位置Piとし、現在位置Psから中間目標位置Piに到達するだけのパルスをパルスモータ2に与えて実際に到達した位置を脱調検出位置Pdとする。
【0029】
前述したように現在位置Psから最終目的位置Ptに到達するのに必要なパルス数は既知であり、現在位置Psと原点センサが原点を検出すべき位置との位置関係も既知であるので、現在位置Psから中間目標位置Piに到達するのに必要なパルス数も既知となり、後述する第4ステップS4での中間目標位置Piから最終目的位置Ptに到達するのに必要なパルス数も既知となる。なお、原点センサが原点を検出すべき位置は、図1の上側において検出電圧ありのONの部分が横向きの短い線分で表されるように、わずかながら幅をもっている。また、現在位置Psから最終目的位置Ptまでの間に原点センサが原点を検出すべき位置が1つも存在しない場合には、本発明は適用できないことになるが、そのような粗い制御が設定されることは実際にはほとんどない。
【0030】
図2における次の第2ステップS2では、脱調検出位置Pdで原点センサが原点を検出するか否かを調べる。第2ステップS2で原点センサが原点を検出しない場合には、つまり脱調検出位置Pdが例えば図1中Pd1で示す位置で原点センサが原点を検出しない場合には、図2の第3ステップS3へ進み、パルスモータ2が脱調したと判断して、その旨を表示手段(図示せず)に表示させる。このようなエラー表示に代えてまたはエラー表示と併せて音声による警報などを発してもよい。第3ステップS3よりも後の処置は、操作者に委ねられる。
【0031】
一方、第2ステップS2で原点センサが原点を検出した場合には、つまり脱調検出位置Pdが図1中Pd2で示す位置、すなわち中間目標位置Piに一致する位置で原点センサが原点を検出した場合には、図2の第4ステップS4へ進み、最終目的位置Ptを目指してパルスモータ2を駆動する。具体的には、図1に示す中間目標位置Piから最終目的位置Ptに到達するだけのパルスをパルスモータ2に与える。第4ステップS4での駆動は、第1ステップS1での駆動で脱調が起こらなかった場合の直後の駆動であるので、第4ステップS4での駆動で脱調が起こることはほとんどなく、ほぼ確実に最終目的位置Ptに到達する。
【0032】
以上のように図2のフローチャートを用いて第3実施形態のプログラムを説明したが、その変形例として、図4のフローチャートに示すように、以下のステップS1〜S5をコンピュータに実行させるプログラムも考えられる。
【0033】
この変形例のプログラムについては、第3ステップS3の次に第5ステップS5を設けた点以外は、図2で示したプログラムと同じであるので、異なる点のみを説明する。図2で示したプログラムでは、第3ステップS3よりも後の処置は、操作者に委ねられたところ、図4に示す変形例のプログラムでは、第5ステップS5に進み、パルスモータ2を初期化駆動する。具体的には、パルスモータ2の回転位置を所定の初期位置に戻し、その初期位置を新たな現在位置Psとする。そして、第1ステップS1に戻る。つまり、第3ステップS3の後、第5ステップS5を経て、再度、第1ステップS1、第2ステップS2をコンピュータに実行させる。ここで、パルスモータ2の所定の初期位置とは、前述したようにパルスモータ2を有する可動機構1が初期化されて所定の機械的な初期状態に戻る回転位置であり、リミットセンサなどを用いて検出される。なお、無限ループに陥ることを回避するために、第1ステップS1および第2ステップS2の繰り返し回数をあらかじめ設定しておき、所定回数繰り返したら、第3ステップS3の後に制御を停止して、その後の処置を操作者に委ねるようにしてもよい。また、第3ステップS3で脱調したと判断した場合のその旨の表示や警報は、その後第4ステップS4に進んだ場合には、解除される。
【0034】
以上のように、第3実施形態のプログラム、そのプログラムを含む第1実施形態の制御装置、その制御装置を備えた第2実施形態の蛍光X線分析装置では、エンコーダなどを新たに用いることなく、パルスモータ2が通常有している原点センサを利用する。具体的には、原点センサが原点を検出すべき位置であって最終目的位置Ptの直前である中間目標位置Piを目指してパルスモータ2を一旦駆動し、実際に到達した脱調検出位置Pdにおいて原点を検出できるか否かによって脱調を検出する。したがって、パルスモータ2を含む装置全体、例えば第2実施形態の蛍光X線分析装置全体の複雑化、コストアップを招来することなく、簡便にパルスモータ2の脱調を検出することができる。
【0035】
なお、第2実施形態の蛍光X線分析装置において、第3実施形態のプログラムによって制御されるパルスモータ2は、いずれの可動機構1が有するパルスモータ2でもよく、複数のパルスモータ2の一部でも全部でもよい。駆動源としてパルスモータを有する可動機構についても、第2実施形態の蛍光X線分析装置では可動機構1A〜1Iを例示したが、本発明の蛍光X線分析装置ではこれらに限定されない。また、第2実施形態の蛍光X線分析装置として、波長分散型で走査型の蛍光X線分析装置であって、試料14に下方から1次X線13を照射する下面照射型の装置を例示したが、本発明の蛍光X線分析装置はこれに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】パルスモータを現在位置から最終目的位置まで回転させる場合の本発明による制御の一例を示す図である。
【図2】本発明によるプログラムのフローチャートの一例である。
【図3】本発明の第2実施形態である蛍光X線分析装置を示す概略図である。
【図4】本発明によるプログラムのフローチャートの別の例である。
【図5】パルスモータを現在位置から最終目的位置まで回転させる場合の従来の制御の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0037】
1 可動機構
2 原点センサ付きのパルスモータ
25 制御装置
Pd 脱調検出位置
Pi 中間目標位置
Ps 現在位置
Pt 最終目的位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原点センサ付きのパルスモータの制御装置であって、
前記パルスモータの回転位置において現在位置から最終目的位置までの間で前記原点センサが原点を検出すべき位置のうち最後の位置を中間目標位置とし、前記現在位置から前記中間目標位置に到達するだけのパルスを前記パルスモータに与えて実際に到達した位置を脱調検出位置とし、
その脱調検出位置で前記原点センサが原点を検出するか否かを調べ、
前記脱調検出位置で前記原点センサが原点を検出しない場合には、前記パルスモータが脱調したと判断し、
前記脱調検出位置で前記原点センサが原点を検出した場合には、前記中間目標位置から前記最終目的位置に到達するだけのパルスを前記パルスモータに与える制御装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記脱調検出位置で前記原点センサが原点を検出しない場合には、前記パルスモータが脱調したと判断し、さらに、前記パルスモータの回転位置を所定の初期位置に戻し、その初期位置を新たな現在位置として、前記脱調検出位置で前記原点センサが原点を検出するか否かを調べるまでの制御動作を繰り返す制御装置。
【請求項3】
原点センサ付きのパルスモータを駆動源とする可動機構と、
前記パルスモータを制御するための請求項1または2に記載の制御装置とを備えた蛍光X線分析装置。
【請求項4】
原点センサ付きのパルスモータの制御をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記パルスモータの回転位置において現在位置から最終目的位置までの間で前記原点センサが原点を検出すべき位置のうち最後の位置を中間目標位置とし、前記現在位置から前記中間目標位置に到達するだけのパルスを前記パルスモータに与えて実際に到達した位置を脱調検出位置とする第1ステップと、
前記脱調検出位置で前記原点センサが原点を検出するか否かを調べる第2ステップと、
前記脱調検出位置で前記原点センサが原点を検出しない場合に、前記パルスモータが脱調したと判断する第3ステップと、
前記脱調検出位置で前記原点センサが原点を検出した場合に、前記中間目標位置から前記最終目的位置に到達するだけのパルスを前記パルスモータに与える第4ステップとをコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項5】
請求項4において、
前記第3ステップの次に、前記パルスモータの回転位置を所定の初期位置に戻し、その初期位置を新たな現在位置として、前記第1ステップに戻る第5ステップを設けたプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−33822(P2009−33822A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−193210(P2007−193210)
【出願日】平成19年7月25日(2007.7.25)
【出願人】(000250351)理学電機工業株式会社 (44)
【Fターム(参考)】