説明

パルス圧縮装置および物標探知装置

【課題】ノンリニアFMチャープ送信信号を用いても、サイドローブを抑圧することができるパルス圧縮装置を実現する。
【解決手段】パルス圧縮部15のフーリエ変換部51は、時間軸の受信信号Sr(t)を周波数軸の受信信号Sr(ω)に変換する。マッチドフィルタ52は、受信信号Sr(ω)にパルス状送信信号の複素共役からなるマッチドフィルタ係数Ks(ω)を乗算し、信号Sd(ω)を出力する。平滑処理部53は、信号Sd(ω)にマッチドフィルタ出力の周波数スペクトルを滑らかにする平滑係数Ks(ω)を乗算し、平滑処理後の信号Sds(ω)を出力する。逆フーリエ変換部54は、周波数軸の平滑処理後の信号Sds(ω)を時間軸の平滑処理後の信号Sds(t)に変換し出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、変調を施したパルス状の信号をパルス圧縮するパルス圧縮装置および該パルス圧縮装置を備えた物標探知装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、パルス信号を探知対象領域へ送信して反射信号から物標の探知を行うレーダ装置がある。このようなレーダ装置の中には、特許文献1に示すようなパルス圧縮を利用したレーダ装置がある。
【0003】
パルス圧縮を利用したレーダ装置では、特許文献1に示すように、リニアFMチャープ信号を用いたパルス状の送信信号を送信し、物標に反射して得られる受信信号を、マッチドフィルタからなるパルス圧縮回路でパルス圧縮する。これにより、パルス圧縮処理された信号は、送信信号のパルス幅よりも時間軸上で短く、受信信号のレベルよりも高いピークのメインローブを有するものとなる。これにより、送信電力を抑えながらも距離分解能を向上している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−142507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のようなリニアFMチャープ信号の送信信号を用いてパルス圧縮を行った場合、メインローブとともに必ずレンジ(時間軸)サイドローブが発生してしまう。そこで、特許文献1では、パルス圧縮回路とは別の遅延回路を設けてレンジサイドローブを相殺するようにしているが、レンジサイドローブを相殺するための回路が別途必要になってしまう。
【0006】
また、パルス圧縮後のレンジサイドローブを抑圧する方法として、ガウス窓やハミング窓等の所定の窓関数をかけたパルス状の送信信号を送信する方法もある。
【0007】
ところが、時間領域で、パルス状の送信信号に窓関数をかけると矩形のパルス状の信号を送信する場合に比べて、パルス波形の両端の振幅が小さくなるため、トータルの送信電力が弱くなってしまう。特に、発振素子に半導体を用いた半導体レーダ装置では、マグネトロンのような大電力を得られないため、窓関数を用いることによる探知能力の低下が大きな問題となっている。
【0008】
この問題を解決するため、送信信号の周波数スペクトルに対して窓関数処理するノンリニアFMチャープ信号を送信信号として利用する方法がある。
【0009】
図6(A)はリニアFMチャープ送信信号のパルス幅Tw内での周波数遷移を示す図であり、図6(B)はノンリニアFMチャープ送信信号のパルス幅Tw内での周波数遷移を示す図である。
【0010】
このような図6に示すように、パルス幅Tw内での遷移周波数幅Δfが同じであっても、ノンリニアFMチャープ信号は、上述のリニアFMチャープ信号のように送信信号の一つのパルス波形中における周波数遷移が線形(図6(A))はなく、パルス波形中おける周波数遷移が非線形(図6(B))である。具体的には、ノンリニアFMチャープ信号は、図6(B)に示すように、一つのパルス波形(パルス幅Tw)中に含まれる遷移周波数幅Δfにおける中心周波数(fC)付近の周波数成分の時間比率が高く、両端周波数(fL,fH)付近の周波数成分の時間比率が低い周波数特性を有する。
【0011】
本発明の目的は、このノンリニアFMチャープ信号を用いた場合に、十分なサイドローブの抑圧ができるパルス圧縮装置および当該パルス圧縮装置を備えた物標探知装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明は、所定の窓関数で周波数スペクトルが規定されたノンリニアFMチャープ方式のパルス状送信信号を用いてパルス圧縮を行うパルス圧縮装置に関するものである。そして、この発明のパルス圧縮装置は、検波部、平滑処理部、平滑係数生成部、およびパルス圧縮部を備える。検波部は、パルス状送信信号を自己相関して得られる信号の周波数スペクトルの振幅を求める。平滑処理部は、検波部から出力される検波信号を平滑処理する。平滑係数生成部は、パルス状送信信号を自己相関して得られる信号の周波数スペクトルで平滑処理部の出力を除算して平滑係数を生成する。パルス圧縮部は、送信信号に対する受信信号と、パルス状送信信号に基づくマッチドフィルタ係数と平滑係数とを用いてパルス圧縮を行う。
【0013】
図7は、振幅一定のノンリニアFMチャープ送信信号の周波数スペクトルを示す図である。図7に示すように、ノンリニアFMチャープ信号を用いた振幅一定のパルス状送信信号(以下、ノンリニアFMチャープ送信信号と称する。)を用いる場合、送信信号および受信信号の周波数スペクトルは、滑らかな特性にならず、全帯域において微少な凹凸を有する特性となる。この微少な凹凸は窓関数処理をした振幅一定のパルス状送信信号を生成する際に生じるものと考えられる。そして、このような微少な凹凸が存在するため、送信信号と同じレプリカを用いてパルス圧縮処理を行ったとしても、窓関数処理で期待される十分なレンジサイドローブの抑圧効果が得られない。
【0014】
そこで、本発明は、マッチドフィルタ係数とともに、送信信号に含まれる周波数スペクトルの微少な凹凸を相殺するための平滑係数を用いてパルス圧縮を行う。この平滑係数は、パルス状送信信号を自己相関して得られるスペクトルの振幅を平滑処理し、該平滑処理した信号を、パルス状送信信号を自己相関して得られる周波数スペクトルで除算することで生成する。これにより、上述の微小な凹凸が抑圧され、十分なレンジサイドローブの抑圧効果を実現する。この際、パルス圧縮は純粋なマッチドフィルタではなくなるため、メインローブも若干減衰される。しかしながら、後述の実施形態の図に示すように、レンジサイドローブの抑圧量と比較して、メインローブの減衰量は微少であるので、レンジサイドローブが相対的に大幅に抑圧されたことになる。
【0015】
また、この発明のパルス圧縮装置は、平滑処理を、検波信号すなわちパルス状送信信号の自己相関信号の振幅情報を移動平均処理することで平滑処理する。
【0016】
また、この発明のパルス圧縮装置の平滑処理部は、検波信号を所定の窓関数の周波数スペクトルに近づけるように平滑処理する。
【0017】
これらの構成は、スペクトルの平滑処理の具体例を示すものであり、これらの手法を用いることで、上述に示すような周波数スペクトル上の微小な凹凸は抑圧される。
【0018】
また、この発明のパルス圧縮装置の平滑処理部は、検波信号の一部の周波数領域を対象に平滑処理を行う。
【0019】
この構成では、平滑処理を適用する周波数領域を適宜設定することができ、サイドローブの抑圧量とメインローブの減衰量を最適化することができる。
【0020】
また、この発明の物標探知装置は、上述のパルス圧縮装置を備えるとともに、送信信号を生成する送信部と、送信信号を探知領域内に放射するとともに、物標による送信信号の反射信号を受信して、受信信号を出力するアンテナと、パルス圧縮部からの出力信号に基づいて物標の探知を行う物標探知部と、を備える。
【0021】
この構成では、上述のパルス圧縮装置を備えることで、パルス圧縮処理による検出用信号のレンジサイドローブが抑圧されるので、メインローブが検出し易くなり、物標探知性能が向上する。
【発明の効果】
【0022】
この発明によれば、ノンリニアFMチャープ送信信号を用いてパルス圧縮を行っても、サイドローブを効果的に抑圧することができる。そして、このようなパルス圧縮処理を用いることで、探知能力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】レーダ装置11の主要回路構成を示すブロック図、パルス圧縮部15の主要回路構成を示すブロック図、および平滑係数生成部のブロック図である。
【図2】平滑係数Ks(ω)の設定方法を示すフローチャートである。
【図3】送信信号の自己相関信号の周波数スペクトルSpTLと平滑処理した自己相関信号の周波数スペクトルSpGFとを示す図である。
【図4】平滑処理後の信号Sds(ω)の周波数スペクトルを示す図である。
【図5】本発明のマッチドフィルタ処理と平滑処理を用いた場合のパルス圧縮と従来例のマッチドフィルタ処理のみを用いたパルス圧縮結果とを比較したシミュレーション結果を示す図である。
【図6】リニアFMチャープ送信信号のパルス幅Tw内での周波数遷移を示す図、および、ノンリニアFMチャープ送信信号のパルス幅Tw内での周波数遷移を示す図である。
【図7】振幅一定のノンリニアFMチャープ送信信号の周波数スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施形態に係るパルス圧縮装置を備えた物標探知装置について、図を参照して説明する。なお、本実施形態で示す物標探知装置は、例えばレーダ装置11であり、振幅一定のノンリニアFMチャープ送信信号を用いて物標を探知する装置であれば、他の装置であっても良い。
図1(A)はレーダ装置11の主要回路構成を示すブロック図であり、図1(B)はパルス圧縮部15の主要回路構成を示すブロック図である。また、図1(C)は、平滑係数生成部500の主要構成を示すブロック図である。
【0025】
レーダ装置11は、送信部12、DPX(デュプレクサ)13、アンテナ14、パルス圧縮部15、および物標探知部16を備える。
【0026】
送信部12は、半導体やマグネトロンなどの発振素子を有し、所定の送信タイミングで、パルス状の波形を有するノンリニアFMチャープ送信信号を送信する。ここで、ノンリニアFMチャープ送信信号とは、上述の図6(B)にも示したように、一つのパルス波形(パルス幅Tw)中に含まれる遷移周波数幅Δfにおける中心周波数(fC)付近の周波数成分の時間比率が高く、両端周波数(fL,fH)の周波数成分の時間比率が低い周波数特性を有する。このようなノンリニアFMチャープ送信信号は、送信信号の周波数スペクトルに窓関数を掛けることで得ることができる。なお、窓関数としては、例えば、ガウス窓、ハン窓、ハミング窓等がある。
【0027】
送信部12から出力されたノンリニアFMチャープ送信信号は、DPX13へ出力される。
【0028】
DPX13は、送信部12からのノンリニアFMチャープ送信信号をアンテナ14へ伝送する。アンテナ14は、所定の回転速度で定速度回転し続けながら、供給されたノンリニアFMチャープ送信信号を外部へ放射するとともに、ノンリニアFMチャープ送信信号が供給されていない期間は、外部の物標からの反射信号を受信して、受信信号をDPX13へ出力する。DPX13は、アンテナ14からの受信信号をパルス圧縮部15へ出力する。
【0029】
パルス圧縮部15は、図1(B)に示すように、フーリエ変換部51、マッチドフィルタ52、平滑化処理部53、および逆フーリエ変換部54を備える。また、パルス圧縮部15は、平滑係数生成部500を備える。平滑係数生成部500は、自己相関処理部501、検波部502、平滑処理部503、および平滑係数算出部504を備える。なお、平滑係数生成部500は、パルス圧縮部15内にあっても、パルス圧縮部15と別であってもよい。
【0030】
フーリエ変換部51は、DPX13を介してアンテナ14から入力された時間軸上の受信信号Sr(t)を所定サンプリングタイミング毎に順次取得して記憶し、所定サンプリング数毎に順次フーリエ変換し、周波数軸上の受信信号Sr(ω)を生成する。
【0031】
マッチドフィルタ52は、マッチドフィルタ係数Km(ω)を受信信号Sr(ω)に乗算することで、周波数軸上でパルス圧縮処理を行う。ここで、マッチドフィルタ係数Km(ω)は、ノンリニアFMチャープ送信信号の複素共役信号によって予め設定されているものであり、受信信号Sr(ω)の各周波数成分の時間軸上での位相を一致させる係数である。マッチドフィルタ係数Km(ω)が乗算された受信信号Sr(ω)である信号Sd(ω)は平滑処理部53に出力される。
【0032】
平滑処理部53は、マッチドフィルタ52からの出力信号Sd(ω)に対して、上述の振幅一定に規制されたノンリニアFMチャープ送信信号とガウス関数とを用いて予め設定された平滑係数Ks(ω)を乗算することで、信号Sd(ω)を平滑処理する。平滑処理部53は、平滑係数Ks(ω)が乗算された平滑処理後の信号Sds(ω)をIFFT処理部54へ出力する。
【0033】
平滑係数Ks(ω)は、平滑係数生成部500で次の方法により設定される。なお、この平滑係数Kw(ω)の生成処理は、オフラインで予め行っておいても、リアルタイム処理で行っても良い。
図2は平滑係数Ks(ω)の設定方法を示すフローチャートである。図3は平滑係数Ks(ω)の設定概念を説明するための図であり、送信信号の自己相関信号の周波数スペクトルSpTLと平滑処理後の自己相関信号の周波数スペクトルSpGFとを示す図である。
【0034】
平滑係数Ks(ω)を設定する場合、まず、振幅一定に規制されたノンリニアFMチャープ送信信号を、フーリエ変換を用いて周波数軸上の信号に変換する(図2:S101)。なお、本実施形態では、送信信号を用いた場合を示すが、予め所定位置に設定した物標に対してノンリニアFMチャープ送信信号を送信して得られる受信信号を用いてもよい。
【0035】
次に、自己相関処理部501は、周波数軸上の送信信号に、当該送信信号の複素共役から得られるマッチドフィルタ係数Km(ω)を乗算し、送信信号の自己相関信号の周波数スペクトルSpTLを取得する(図2:S102)。ここで、上述のように送信信号は振幅一定に規制されているので、図3に示すように、自己相関信号の周波数スペクトルSpTLは、微少な凹凸を有する波形となる。
【0036】
次に、検波部502は、自己相関信号の周波数スペクトルSpTLの各スペクトル成分の振幅情報のみを取得する。具体的には、各スペクトル成分の実数部の二乗と虚数部の二乗の和を平方根処理することで、振幅情報を取得する。すなわち、次式により、各スペクトル成分の振幅Am(ω)を算出する。ここで、自己相関信号の実数部をRe(ω)、虚数部をIm(ω)とする。
【0037】
【数1】

【0038】
平滑処理部503は、このように得られた送信信号の自己相関関数の各スペクトル成分の振幅情報を平滑処理する(図2:S103)。なお、平滑処理としては、所定の窓関数へのフィッティング処理や移動平均処理を用いればよい。
【0039】
次に、平滑係数算出部504は、このように得られた平滑処理後の自己相関信号の周波数スペクトルSpGFを、自己相関信号で除算することにより、スペクトル成分毎の平滑係数Ks(ω)を算出する。
【0040】
なお、送信信号の周波数スペクトルSpTLの最低周波数(fL)から下限閾値周波数fTHLまでの低域周波数区間と、最高周波数fHから上限閾値周波数fTHHまでの高域周波数区間とについては、平滑処理を行わない。つまり、自己相関信号の所定の周波数区間FPのみを対象に平滑処理を行う。これは、発明者がシミュレーションおよび実験的に得たものであり、当該低域周波数区間および高域周波数区間を変化させたとしても、サイドローブの抑圧量は殆ど変化しないのに対し、メインローブの減衰量が大きくなることに基づいている。
【0041】
このように、当該低域周波数区間および高域周波数区間を適宜設定すれば、サイドローブの抑圧量とメインローブの減衰量を最適化することができる。
【0042】
また、上述の説明では、送信信号の自己相関信号の周波数スペクトルSpTLの下限閾値周波数fTHLから上限閾値周波数fTHHまでのスペクトル成分に対して振幅レベルに関係なく平滑化処理を行うようにしたが、所定の振幅レベル以上のスペクトル成分に対してのみ平滑処理を行うようにしてもよい。
【0043】
このように算出された平滑係数Ks(ω)を用いることで、平滑処理後の信号Sds(ω)は、図4に示すような周波数スペクトルSpDとなる。図4は平滑処理後の信号Sds(ω)の周波数スペクトルSpDを示す図である。
【0044】
図4に示すように、平滑処理後の信号Sds(ω)は、全周波数帯域の両端の所定周波数範囲を除くフィッティング区間FPにおいて、微少な凹凸の無い滑らかな周波数スペクトルとなる。
【0045】
逆フーリエ変換部54は、周波数軸上の平滑処理後の信号Sds(ω)を逆フーリエ変換し、時間軸上の平滑処理後の信号Sds(t)を生成する。
【0046】
パルス圧縮部15は、このように、受信信号に対してマッチドフィルタ52でマッチドフィルタ係数Km(ω)を乗算することに加えて、平滑処理部53で平滑係数Ks(ω)を乗算する。これにより、パルス圧縮部15での処理はマッチドフィルタではなくなり、パルス圧縮部15からの出力される信号のメインローブは減衰する。しかしながら、平滑係数Ks(ω)を乗算することによるロスは微小であり、これと引き換えに、本来の所定の窓関数で周波数スペクトルを窓処理したサイドローブレベルの低減を実現できる。
【0047】
図5は、時間軸での平滑処理後の信号Sds(t)すなわち受信信号Sr(t)をパルス圧縮処理および平滑処理した信号の時間軸波形と、従来のパルス圧縮のみを行い平滑処理を行っていない信号Sds’(t)の時間軸波形とを示す。ここで、図5(B)は図5(A)における時間(−1.0≦t[μs]≦+1.0)の部分拡大図である。
【0048】
図5に示すように、本実施形態のようにパルス圧縮と平滑処理とを行うことにより、メインローブの減衰量を極小さくし、レンジサイドローブを大幅に抑圧することができる。
【0049】
パルス圧縮部15のIFFT処理部54から出力された平滑処理後の信号Sds(t)は、パルス圧縮部15からの出力信号として物標探知部16へ入力される。
【0050】
物標探知部16は、パルス圧縮部15からの出力信号を予め設定した所定の閾値と比較し、予め設定した閾値以上であれば、物標からの反射信号が有ると検知する。この際、パルス圧縮部15からの出力信号は、パルス圧縮されていても、図5に示すようにメインローブが殆ど減衰することなくレンジサイドローブが抑圧されているので、SN損失を抑え、確実且つ高精度に物標検知を行うことができる。
【0051】
なお、上述の説明では、マッチドフィルタ係数Km(ω)の乗算後に平滑係数Ks(ω)を乗算する行う例を示したが、平滑係数Ks(ω)の乗算後にマッチドフィルタ係数Km(ω)を乗算するようにしてもよい。
さらには、平滑係数Ks(ω)とマッチドフィルタ係数Km(ω)とを予め乗算した係数を予め記憶しておき、この係数をマッチドフィルタで乗算するようにしてもよい。このような平滑係数Ks(ω)とマッチドフィルタ係数Km(ω)とを予め乗算した係数を用いれば受信信号に対するリアルタイムな乗算処理を一回で済ませることができので、演算処理負荷を低減することができる。
【0052】
また、上述の説明では、周波数軸上で相関処理や平滑処理を行う例を示したが、時間軸上において、相関処理や平滑処理を行うようにしてもよい。
【0053】
また、上述の説明では、フーリエ変換を例に説明したが、フーリエ変換の手法は、DFTやFFT等いずれの手法であってもよく、さらには、時間軸の信号を周波数軸の信号へ変換可能な手法であれば、例えばウェーブレット変換等の他の変換手法を用いてもよい。
【0054】
また、上述の説明では、レーダ装置を例に説明したが、魚群探知機やソナーなど、ノンリニアチャープ方式のパルス状送信信号を送信する機器であれば、上述の構成をおよび処理を適用することができる。
【符号の説明】
【0055】
11−レーダ装置、12−送信部、13−DPX、14−アンテナ、15−パルス圧縮部、16−物標探知部、51−フーリエ変換部、52−マッチドフィルタ、53−平滑処理部、54−逆フーリエ変換部、500−平滑係数生成部、501−自己相関処理部、502−検波部、503−平滑処理部、504−平滑係数算出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の窓関数で周波数スペクトルが規定されたノンリニアFMチャープ方式のパルス状送信信号を用いてパルス圧縮を行うパルス圧縮装置であって、
前記パルス状送信信号を自己相関して得られる信号の周波数スペクトルの振幅を求める検波部と、
前記検波部から出力される検波信号を平滑処理する平滑処理部と、
前記平滑処理部の出力を、前記パルス状送信信号を自己相関して得られる信号の周波数スペクトルで除算して平滑係数を生成する平滑係数生成部と、
前記送信信号に対する受信信号と、前記パルス状送信信号に基づくマッチドフィルタ係数と、前記平滑係数と、を用いて前記パルス圧縮を行うパルス圧縮部、
を備えたパルス圧縮装置。
【請求項2】
前記平滑処理は、前記検波信号を移動平均することで平滑処理する、請求項1に記載のパルス圧縮装置。
【請求項3】
前記平滑処理部は、前記検波信号を前記所定の窓関数の周波数スペクトルに近づけるよう、平滑処理する、請求項1又は2に記載のパルス圧縮装置。
【請求項4】
前記平滑処理部は、前記検波信号の一部の周波数領域を対象に平滑処理を行う、請求項1から3の何れかに記載のパルス圧縮装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載のパルス圧縮装置を備えるとともに、
前記送信信号を生成する送信部と、
前記送信信号を探知領域内に放射するとともに、物標による前記送信信号の反射信号を受信して、前記受信信号を出力するアンテナと、
前記パルス圧縮部からの出力信号に基づいて前記物標の探知を行う物標探知部と、
を備えた物標探知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−243295(P2010−243295A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−91385(P2009−91385)
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【出願人】(000166247)古野電気株式会社 (441)
【Fターム(参考)】