説明

パレタイズ装置

【課題】爪を有するハンド部でワークを把持し移動させてパレット上に整列積載するパレタイズ装置において、ワークの整列時にハンド部を引き抜く動作を不要として高速にパレタイズ可能とする。
【解決手段】本装置は、ワークWを把持するハンド部2と、ハンド部2を移動させ、ワークWを順次搬送してパレット7に整列して積載するアーム部3と、を備え、ハンド部2は、ワークWを把持する長爪21および退避爪22と、退避爪22を退避させる退避機構と、を備えている。アーム部3は、爪21,22によってワークWを把持したハンド部2を移動させてワークWをパレット7上に移動させ、ハンド部2がワークWを整列させる方向x1の前方側にある退避爪22を退避機構によって退避させ、前記方向x1の後方側にある長爪21によってワークWを押してワークWを整列させる。整列時に退避爪22が退避するので、ハンド部2を引き抜く必要がない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークを把持、搬送してパレット上に整列させるパレタイズ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ワークの輸送やハンドリングのためにパレットにワークを積載するパレタイズ装置が生産工場や流通運送業界などで用いられている。このようなパレタイズ装置として、ワークを相互間の隙間がないようにパレットに整列積載するために、先にパレタイズされているワークに向けて、後のワークを押し付けるように移動するようにした装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。このようなパレタイズ装置を、爪を有するハンド部でワークを把持し、ワークをパレット上に移動させてからハンド部の爪でワークを押して移動させる装置に適用するには、ワークを整列させる方向の前方側の爪を逃がす必要がある。そこで、前方側の爪が短く、後方側の爪が長い構成とし、ワーク整列の際に、前方の爪による把持を緩めて、前方側の爪が逃げる状態までハンド部全体を上方や側方に引き抜いて、後方の長い爪で押し動作を行えばよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許2549139号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したようなハンド部全体を引き抜いて前方側の爪を逃がしてワークを整列積載するパレタイズ装置においては、ハンド部を引き抜く動作に時間がかかり、効率的なパレタイズ動作ができず、サイクルタイムを短縮できないという問題がある。
【0005】
本発明は、上記課題を解消するものであって、簡単な構成により、ワークの整列時にハンド部を引き抜く動作が不要で高速にパレタイズできるパレタイズ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を達成するために、請求項1の発明は、ワークを把持するハンド部と、前記ハンド部を移動させ、ワークを順次搬送してパレットに整列して積載するアーム部と、前記各部の動作を制御する制御部と、を備えたパレタイズ装置であって、前記ハンド部は、ワークを把持する複数の爪と、前記爪を退避させる退避機構と、を備え、前記アーム部は、前記爪によってワークを把持したハンド部を移動させてワークをパレット上に移動させ、前記ハンド部がワークを整列させる方向の前方側にある爪を前記退避機構によって退避させ、前記方向の後方側にある爪によってワークを押してワークを整列させるものである。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載のパレタイズ装置において、前記退避機構は、爪を直線移動させる構成を有しているものである。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1に記載のパレタイズ装置において、前記退避機構は、爪を回転移動させる構成を有しているものである。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1に記載のパレタイズ装置において、前記退避機構は、爪を開閉移動させる構成を有しているものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、ワークの整列時に前方側にある爪を退避機構によって退避させるので、ハンド部を引き抜く動作が不要で高速にワークを整列積載してパレタイズすることができサイクルタイムを短縮することができる。
【0011】
請求項2の発明によれば、簡単な構成で退避機構を構成できる。
【0012】
請求項3の発明によれば、簡単な構成で退避機構を構成できる。
【0013】
請求項4の発明によれば、簡単な構成で退避機構を構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係るパレタイズ装置の斜視図。
【図2】同装置のブロック構成図。
【図3】(a)(b)は同装置のハンド部の爪の退避動作を示す斜視図。
【図4】同装置のハンド部の退避機構の例を示す部分斜視図。
【図5】(a)(b)(c)は同装置による一連のパレタイズ動作を時系列的に示す側面図。
【図6】(a)〜(d)は同装置のワークの整列動作を示す部分斜視図。
【図7】(a)(b)は同装置のハンド部の爪の退避機構の他の例を示す斜視図。
【図8】(a)(b)は同装置のハンド部の爪の退避機構のさらに他の例を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態に係るパレタイズ装置について、図面を参照して説明する。図1、図2に示すように、パレタイズ装置1は、ワークWを把持するハンド部2と、ハンド部2を移動させ、ワークWを順次搬送してパレット7に整列して積載するアーム部3と、アーム部3を走行移動させる搬送部4と、前記各部の動作を制御する制御部10と、を備え、ハンド部2は、ワークWを把持する長爪21および退避爪22と、退避爪22を退避させる退避駆動部2bと、を備えている。アーム部3は、爪21,22によってワークWを把持したハンド部2を移動させてワークWをパレット7上に移動させ、ハンド部2がワークWを整列させる方向の前方側にある退避爪22を退避駆動部2bによって退避させ、前記方向の後方側にある長爪21によってワークWを押してワークWを整列させる。以下、詳細説明する。
【0016】
パレタイズ装置1は、ワークWを供給場所から順次搬送して、予め所定位置に設置された可搬式のパレット7上に隙間なく整列させて積載する装置であり、対象とするワークWは、例えば長尺のダンボール箱であり、コンベア9によって供給され、そのストッパ91によって位置決めされて静止している。パレタイズ装置1は、コンベア9上に位置決めされているワークWの長手方向の両端を把持して搬送する。そのため、パレタイズ装置1はコンベア9に向かって左右に一対の構成とされている。パレット7は、左右一対で構成されたパレタイズ装置1の中央線上の床面に配置されている。ここで、説明の便のために、地上に固定されたxyz直交座標系を設定する。x方向はハンド部2から見てコンベア9に向かう水平方向、y方向はハンド部2から見てパレット7に向かう水平方向、z方向は垂直上方とする。すると、左側のハンド部2については、左手系のxyz座標系となり、右側のハンド部2については、右手系のxyz座標系となる。ハンド部2についても、同様に、左右のXYZ座標系が設定される。また、左右一対のハンド部2は、互いに左右勝手違い関係になっている。
【0017】
ハンド部2は、人の手のひらに相当する平板状のハンドベース部20と、ハンドベース部20から立設するそれぞれ板状の長爪21と、退避爪22と、回転部23と、を備えている。長爪21と退避爪22とは、それぞれ2個ずつが互いに直交して、直方形の対向する隅部をそれぞれ挟む態様で配置されている。すなわち、ハンド部2は、ワークWを把持するための4本の爪を有し、長爪21と退避爪22がそれぞれ2本ずつ隣り合う位置に取り付けられている。2つの長爪21は共にハンドベース部20に固定されている。長爪21の少なくとも一方には、長爪21に作用する外力を測定するための応力センサ1aが設けられている。応力センサ1aは、歪ゲージなどを用いて構成することができる。また、応力センサ1aとして、市販されている6軸力センサやロードセルを使用することができる。応力センサ1aが装備されている長爪21によってワークWを押すことにより、先に積載されている他のワークに接触して発生する負荷を検知して、その負荷の度合いによってワーク間の隙間が無くなったか否かを判断して、整列積載位置とすることができる。
【0018】
2つの退避爪22は、共に可動爪であり、例えばエアシリンダや油圧シリンダから成る開閉駆動部2aによってハンドベース部20に平行に移動することができる。退避爪22を、開閉駆動部2aによって移動させることにより、長爪21と退避爪22間の距離を変えてハンド部2を開閉でき、ワークWを把持したり、解放したりできる。退避爪22の移動距離、すなわちストロークは、把持するワーク寸法の最小から最大までをカバーできるストロークであり、品種により寸法が異なるワークWに対応できるようになっている。本実施形態では、4本の爪のうち、長爪21を固定し退避爪22を可変としたが、4本の爪を全て可動とすることもできる。なお、退避爪22とその退避駆動部2bについては、図3、図4を参照して後述する。
【0019】
アーム部3は、アームベース部30と、上下駆動部3aと、接離駆動部3bと、を備えている。アームベース部30は、床面近くから垂直に設けられた支柱部材31と、支柱部材31から片持ち梁のように張り出した水平部材32と、水平部材32から垂下保持されている垂直部材33とによって構成される。水平部材32は、上下駆動部3aによって、支柱部材31に沿って上下動される。垂直部材33は、接離駆動部3bによって、水平部材32に沿って水平動される。垂直部材33には、回転部23が取り付けられており、回転部23は、垂直部材33に対してハンド部2のハンドベース部20を、矢印R,R1で示すように、y軸(Y軸)回りに回転自在に保持している。また、回転部23は、不図示の回転駆動部によって、ハンド部2を所定の回転角度に保持することができる。
【0020】
搬送部4は、床面に配設された2本のレール41上を搬送駆動部4aによって移動する搬送ベース部40を備えている。搬送ベース部40は、上述の支柱部材31、従って、アーム部3、回転部23、ハンド部2の全体をその上部に保持している。搬送部4がレール41に沿って移動することにより、ハンド部2がレール41に沿って移動する。これらの構成により、ハンド部2は、4軸について移動または回転することができる。これらの軸は、回転部23によるワークWを回転させるためにハンド部2を回転させる軸、アーム部3によるワークWを上下に移動させる軸、ワークWの長さ寸法に対応できるように左右のハンド部2の間隔を変える軸、および、搬送部4によるワークWをコンベア9とパレット7との間で移動する軸の4軸で構成されている。
【0021】
パレット7は、長尺のワークWを多段積みできるように、パレット本体70に、ワーク転倒防止部材71を備えて構成されている。パレット本体70の長さは、ワークWの長さに合わせてあり、パレット本体70の幅は、空き空間を生じることなく複数個のワークWを効率的に整列可能な寸法に合わせてある。また、ワーク転倒防止部材71は、パレット本体70に積載されたワークWの転倒を防止するものであり、折り畳み式のポールなどで構成される。このワーク転倒防止部材71は、必要に応じて設けることができる。
【0022】
退避爪22は、図3(a)(b)に示すように、根本部22aと先端部22bの2つの部分を有し、これらは互いに蝶番によって屈曲自在に結合されており、先端部22bは、退避駆動部2b(不図示)によって駆動されて外方に屈曲することができる。退避爪22は、その先端部22bが屈曲することにより、爪の長さが短く変更される。これにより、ワークを把持したハンド部2が、ワークの整列のために把持しているワークを他のワークに押し付ける際に、退避爪22の先端部22bを退避させて、爪がワーク間に挟まれないようにすることができる。
【0023】
退避駆動部2bは、例えば、図4に示すように、モータ22cと、モータ22cに直結したプーリ22dと、一端をプーリ22dに巻きつけられ他端を先端部22bに締結したワイヤ22eと、先端部22bを屈曲状態からもとの状態に戻すためのバネによる付勢手段(不図示)と、先端部22bによってワークを把持できるように根本部22aに対して先端部22bを固定するロック機構(不図示)と、を備えて構成することができる。先端部22bを退避させるには、ロック機構を解除し、モータ22cを回転してプーリ22dにワイヤ22eを巻きつけることにより、先端部22bを屈曲させる。また、先端部22bをワークを把持できる状態に戻すには、ワイヤ22eを巻き戻してバネによって先端部22bを非屈曲状態として、ロック機構によって先端部22bを根本部22aに対して固定させる。退避爪22は、根本部22aと先端部22bとが一体となって開閉駆動部2a(図2)によって開閉され、ワークを把持解放、または把持する。なお、先端部22bの屈曲動作によっても、ワークの把持解放がなされるが、屈曲動作の前に予め開閉駆動部2aによって、ワークを把持している力を弱めておくことが、退避駆動部2bの機械的保護のために望ましい。
【0024】
次に、図5、図6により、パレタイズ装置1の動作を説明する。図5(a)に示すように、ハンド部2は、既知のコンベア9の傾き角度に合わせて回転部23(図1)によって所定角度回転させた状態でストッパ91で位置決めされたワークWを把持して持ち上げる間に、または持ち上げた後に、ワークWの姿勢を水平にする。その後、ハンド部2は、水平移動してパレット7の所定位置まで移動し、その移動の間に、または水平移動した後に、ワークWの上下方向が所定方向となるように回転する。ハンド部2は、この状態で長爪21と退避爪22とが水平に並んだ状態となるように、予めハンド部2を回転させた状態でコンベア9におけるワークWを把持している。ハンド部2は、その後パレット本体70に向けて下降し、その間に、または下降した位置で、退避爪22の先端部22bを屈曲させて爪を短くして退避させる。その後、ハンド部2は、図5(b)に示すように、水平移動して先に積載されているワークW0にワークWを押し付けて整列させ、図5(c)に示すように、ハンド部2の長爪21を引き抜くことにより、ワークWが自重で下方に移動してパレット7上に載置される。
【0025】
図6は、上述の図5に示した動作と同様の動作を示すものである。ハンド部2は、図6(a)に示すように、ワークWをパレット7上の高さΔz、ワークW0との距離Δxの位置まで搬送した後、図6(b)に示すように、ワークW0側の退避爪22の先端部22bを屈曲させて退避させ、ワークW0方向(矢印x1方向)にワークWを移動させ、図6(c)に示すように、ワークWをワークW0に押し当てた状態とする。次に、ハンド部2は、図6(d)に示すように、上側の退避爪22の先端部22bを屈曲させて、ハンド部2によるワークW0の把持を解除し、長爪21をハンド部2と共に外側方向(矢印y1方向)に引き抜くことにより、ワークWがパレット7上に整列載置される。
【0026】
次に、図7、図8により、退避爪22を退避させる退避機構の他の例を説明する。図7(a)(b)に示すハンド部2の退避爪22は、その先端部22bが爪の方向に沿って前後移動する機構を備えており、退避時に、先端部22bが根本部22aの方向に平行移動して根本部22aに重なるように収納される。また、図8(a)(b)に示すハンド部2の退避爪22は、その先端部22bが根本部22aとの境界位置に、爪に垂直な方向の回転軸を有し、その回転軸回りに回転移動する機構を備えており、退避時に、先端部22bが回転軸周りに回転して根本部22aに重なるように収納される。これらの平行移動や回転移動による退避動作は、図2に示した退避駆動部2bの駆動力によって行われる。ここで示したハンド部2は、それぞれ退避爪22を2つ有し、その一方のみが先端部22bを退避させる構成となっているが、2つの退避爪22に退避機構を備えてもよい。
【0027】
本発明によれば、ワークの整列時に前方側にある爪を退避機構(退避駆動部)によって退避させるので、ハンド部2を引き抜く動作が不要で高速にワークを整列積載してパレタイズすることができサイクルタイムを短縮することができる。なお、本発明は、上記構成に限られることなく種々の変形が可能であり、上述した各構成を互いに組み合わせた構成とすることができる。また、長爪21は2つでなく1つでもよく、退避爪22は2つでなく1つでも、3つでもよい。また、退避爪22を根本部22aと先端部22bとで構成した実施形態を示したが、根本部22aのない構成でもよい。また、退避機構や退避駆動部は、上述したもの以外にリンク機構や梃子機構を用いるものなど、任意のものを用いることができる。また、ハンド部2を左右一対として、ワークの両端を把持する実施形態をしめしたが、ハンド部2は片側だけでもよく、また、ワークを側方からではなく上方から把持するものでもよい。
【符号の説明】
【0028】
1 パレタイズ装置
2 ハンド部
21,22 爪
2b 退避駆動部(退避機構)
3 アーム部
7 パレット
W,W0 ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを把持するハンド部と、前記ハンド部を移動させ、ワークを順次搬送してパレットに整列して積載するアーム部と、前記各部の動作を制御する制御部と、を備えたパレタイズ装置であって、
前記ハンド部は、ワークを把持する複数の爪と、前記爪を退避させる退避機構と、を備え、
前記アーム部は、前記爪によってワークを把持したハンド部を移動させてワークをパレット上に移動させ、前記ハンド部がワークを整列させる方向の前方側にある爪を前記退避機構によって退避させ、前記方向の後方側にある爪によってワークを押してワークを整列させることを特徴とするパレタイズ装置。
【請求項2】
前記退避機構は、爪を直線移動させる構成を有していることを特徴とする請求項1に記載のパレタイズ装置。
【請求項3】
前記退避機構は、爪を回転移動させる構成を有していることを特徴とする請求項1に記載のパレタイズ装置。
【請求項4】
前記退避機構は、爪を開閉移動させる構成を有していることを特徴とする請求項1に記載のパレタイズ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−111255(P2011−111255A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−267654(P2009−267654)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】