説明

パレットトラック

【課題】種類(幅)の異なるパレットの搬送作業を効率良く行うことができるパレットトラックを提供する。
【解決手段】左右一対のフォーク形の載置部20L・20Rと左右の載置部20L・20Rの後部を支持する後部フレーム13とを有する荷台10と、荷台10の後部に配置して荷台を昇降するジャッキ装置40と、ジャッキ装置40を昇降操作するハンドルユニット50と、ジャッキ装置40の下部に設けられる走行部70と、ジャッキ装置40と載置部20L・20Rの前下部に配置する前輪12とを連結する昇降リンク機構30と、を備えるパレットトラック1であって、後部フレーム13に左右方向に上下支持軸15・16を横架し、上下支持軸15・16に左右の載置部20L・20Rの後部を左右摺動可能に設けるパレットトラック1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パレットを載置部に載置して搬送するパレットトラックの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パレットを載置部に載置して搬送するパレットトラックの技術は公知となっている。
【0003】
例えば、特許文献1においては、上下に昇降可能な前輪を備えるフォーク形の左右一対の載置部の後部に後部フレームを立設した荷台と、前記荷台の後部に配置して前記荷台を昇降するジャッキ装置と、前記ジャッキ装置を昇降操作するハンドルユニットと、前記ジャッキ装置の下部に設けられる後走行部と、を具備するパレットトラックが開示されている。
【0004】
特許文献1におけるパレットトラックにおいては、ハンドルユニットを操作することでジャッキ装置が作動する。そして、ジャッキ装置が作動することで、左右一対の載置部が昇降し、載置部に載置されたパレットを持ち上げたり、降ろしたりすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−254611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のパレットトラックにおいては、左右の載置部が一定の間隔で固定されており、当該間隔を変更することができない。そのため、幅の異なるパレットを搬送するためには、パレットの幅に対応させた個別のパレットトラックを用意する必要があり、パレットの幅が変わるごとに、その幅に対応したパレットトラックに変更しなければならず、種類の異なるパレットが混在している場合の搬送作業を効率良く行えないという問題点があった。
【0007】
そこで、本発明は、種類(幅)の異なるパレットの搬送作業を効率良く行うことができるパレットトラックを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
即ち、第1の発明に係るパレットトラックは、左右一対のフォーク形の載置部と左右の載置部の後部を支持する後部フレームとを有する荷台と、荷台の後部に配置して荷台を昇降するジャッキ装置と、ジャッキ装置を昇降操作するハンドルユニットと、ジャッキ装置の下部に設けられる走行部と、ジャッキ装置と載置部の前下部に配置する前輪とを連結する昇降リンク機構と、を備えるパレットトラックであって、前記後部フレームに左右方向に支持軸を横架し、該支持軸に左右の前記載置部の後部を左右摺動可能に設けるものである。
【0010】
第2の発明に係るパレットトラックは、第1の発明に係るパレットトラックにおいて、前記昇降リンク機構は、前記載置部の後部に設ける摺動支持体に回動自在に支持されて後側をジャッキ装置に連結されるクランク体と、前記載置部の前部に上下回動支持されて前側に前記前輪を支持するアームと、該アームの後側と前記クランク体の前側を連結するロッドと、を備え、前記クランク体は、前記載置部とともに摺動する摺動アームと、ジャッキ装置に連結して前記摺動アームを左右摺動自在に支持するブラケットと、を備えるものである。
【0011】
第3の発明に係るパレットトラックは、第1又は第2の発明に係るパレットトラックにおいて、前記後部フレーム内に幅調整機構が配置され、幅調整機構は、無端体を左右方向に張設し、該無端体に、前記左右の摺動支持体を連結し、前記無端体を回動することにより左右の載置部を狭める方向又は広げる方向に摺動可能としたものである。
【0012】
第4の発明に係るパレットトラックは、第3の発明において、前記無端体は、前記後部フレームの左右に支持される駆動スプロケットと従動スプロケットに巻回され、前記駆動スプロケットは、前記後部フレームに配置した前記幅調整操作具と連結されるものである。
【0013】
第5の発明に係るパレットトラックは、第1から第4までのいずれか1つの発明において、前記載置部は、前記載置部の機体左右方向中心側の下部に爪部を有するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0015】
第1の発明に係るパレットトラックにおいては、搬送するパレットの幅に合わせて、左右の載置部の間隔を調整することができる。そのため、パレットの幅に対応させた個別のパレットトラックを用意する必要がなく、1台のパレットトラックで、様々な幅のパレットを搬送することができる。従って、種類(幅)の異なるパレットの搬送作業を効率良く行うことができる。
また、左右の載置部の間隔を変更する構成であるため、幅の広いパレットを搬送する際には左右の載置部の間隔を広くできる一方で、搬送終了時には左右の載置部の間隔を狭くすることができるため、パレットトラック自体を小型化することができ、移動を容易に行えたり、格納スペースを縮小したりできる。
【0016】
第2の発明に係るパレットトラックにおいては、載置部の間隔の調整を行う時に、ジャッキ装置と前輪とを連結する昇降リンク機構と、載置部とが同時に左右方向へ移動可能となるため、載置部と昇降リンク機構とを別々に操作する必要がなく、載置部の間隔の調整を容易に行うことができる。
【0017】
第3の発明に係るパレットトラックにおいては、左右の載置部が同時に同じ長さで狭める方向又は広げる方向に摺動されるので、左右のバランスが崩れることなく載置部の間隔の調整ができ、安定した状態で昇降や荷物の搬送ができる。
【0018】
第4の発明に係るパレットトラックにおいては、後部フレームに配置した幅調整操作具を操作することにより、容易に載置部を左右方向へ摺動させて載置部の間隔の調整を行うことができる。
【0019】
第5の発明に係るパレットトラックにおいては、パレットのような載置部を差し込む空間を有さないコンテナや家具や什器等の被搬送体を搬送する場合には、左右の載置部の幅を狭めて、当該被搬送体の下部両側から、爪部を当該被搬送体の脚部又は縁部等に引っ掛けて、又は下側に差し込んで、載置部を上昇させることにより、当該被搬送体を容易に持ち上げることができる。また、左右の載置部をさらに狭めて被搬送体を挟んで挟持することにより、安定した状態で搬送することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】パレットトラックの後方斜視図。
【図2】パレットトラックの前方分解斜視図。
【図3】パレットトラックの正面図。
【図4】パレットトラックの平面図。
【図5】後部フレームのカバーを外した場合のパレットトラックの正面図。
【図6】幅調整操作部の背面図。
【図7】パレットトラックによりパレットを搬送する際の後方斜視図。
【図8】被搬送体となるコンテナの下部両側を左右の載置部の爪部で係止する時の状態を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の一実施形態に係るパレットトラック1について説明する。なお、以下の説明においては、図1及び図4における矢印Aの方向をパレットトラック1の前方とする。また、パレットトラック1の正面視で左右方向を定義する。
【0022】
図1に示すように、パレットトラック1は、左右一対のフォーク形の載置部20L・20Rと、左右の載置部20L・20Rの後部を支持する後部フレーム13と、を有する荷台10と、荷台10の後部に配置して荷台10を昇降するジャッキ装置40と、ジャッキ装置40を昇降操作するハンドルユニット50と、ジャッキ装置40の下部に設けられる走行部70と、から構成される。
【0023】
荷台10には、パレット8(図7)を載置できるようにフォーク形に形成された左右一対の載置部20L・20Rが設けられている。また、載置部20L・20Rのそれぞれ前方下端部には、前輪12が設けられている。なお、載置部20L・20Rの詳細については後述する。
【0024】
また、荷台10の後部には、後部フレーム13が設けられている。図2に示すように、後部フレーム13は、略箱状の部材であり、その内部が空洞状となっている。なお、図3に示すように、パレット8の搬送時には、後部フレーム13の正面にはカバー17・18が取付けられ、後部フレーム13の内部がカバー17・18により覆われる。
【0025】
前記後部フレーム13内には載置部20L・20Rの後部を左右摺動自在に支持する上下支持軸15・16が横設されている。即ち、後部フレーム13の左右の側板の前下部には、下支持軸15が横設され、後部フレーム13の左右の側板の後上部には、上支持軸16が横設される。下支持軸15と、上支持軸16とは平行に配設される。
【0026】
図1及び図2に示すように、後部フレーム13の後側上部の左右中央には、ジャッキ装置40を支持するためのジャッキ装置支持部14が後方に突設されている。
【0027】
また、ジャッキ装置40と、載置部20L・20Rの前下部に配置する前輪12・12と、の間には、昇降リンク機構30が設けられている。なお、昇降リンク機構30の詳細については後述する。
【0028】
さらに、後部フレーム13の内部には、載置部20L・20Rを左右方向へ摺動させるための幅調整機構80が設けられている。なお、幅調整機構80の詳細については後述する。
【0029】
図2に示すように、ジャッキ装置40は、後部フレーム13のジャッキ装置支持部14下面と嵌合するラムピストン41と、ラムピストン41を収容するラムシリンダ42と、ラムシリンダ42の上下中間部に略水平に固定される油圧ベース43と、ラムシリンダ42に圧油を送油し油圧ベース43の後部上に設けられるプランジャポンプ44と、ラムシリンダ42を中心部に配置して油圧ベース43の前部上に設けられる油タンク45と、走行部70の後輪71・71を支持する後輪支持部材46と、油圧ベース43下方に設けられ、後輪支持部材46及び昇降リンク機構30の後側を支持するテーブル47と、ハンドルユニット50の連結ハンドルパイプ53に固定してプランジャポンプ44を操作するハンドル基部48等とから構成される。
【0030】
ハンドルユニット50は、グリップ部51と、解除レバー52と、連結ハンドルパイプ53と、から構成される。
【0031】
ハンドルユニット50においては、グリップ部51を握って上下回動(ポンピング動作)することで、ジャッキ装置40のプランジャポンプ44を作動させ、油タンク45の油をラムシリンダ42に送給し、ラムピストン41を上昇させる。
一方、解除レバー52を操作することで、ラムシリンダ42の油を油タンク45に戻し、ラムピストン41を下降させる。
【0032】
ジャッキ装置40及びハンドルユニット50をこのような構成とすることで、ハンドルユニット50をハンドル基部48を中心に上下方向に回動操作することにより、油タンク45からプランジャポンプ44の作動により圧油が油圧ベース43を介してラムシリンダ42に送油されて、ラムピストン41を押し上げる。このラムピストン41の上昇により、ラムピストン41の上端に嵌合した荷台10のジャッキ装置支持部14が上昇する。即ち、後部フレーム13が上昇する。後部フレーム13の上昇に伴い、昇降リンク機構30がテーブル47を中心に上下方向に回動されて、昇降リンク機構30に連設された前輪12を下方に突出させ、荷台10を持ち上げる。
【0033】
一方、ハンドルユニット50の解除レバー52を操作すると、油圧ベース43に設けられたバルブが開き、ラムシリンダ42内の圧油を油タンク45に戻すことにより、ラムピストン41が下降する。このラムピストン41の下降により、荷台10のジャッキ装置支持部14が下降する。即ち、後部フレーム13が下降する。後部フレーム13の下降に伴い、昇降リンク機構30が回動されることで、前輪12を載置部20L・20Rの内部に格納させ、荷台10を下降させる。
【0034】
次に、載置部20L・20Rについて説明する。
【0035】
載置部20L・20Rは、パレット8を搬送する際に、パレット8を載置する部分である。上述のように、左右一対の載置部20L・20Rは、パレット8を載置できるようにフォーク形に形成されている。
図2に示すように、載置部20L・20Rは、載置部材21L・21Rと、摺動支持体22L・22Rとを備える。
摺動支持体22L・22Rは、下摺動部材23L・23Rと、上摺動部材24L・24Rと、左右連結部材26L・26Rと、を備える。
【0036】
載置部材21L・21Rは、前後方向へ延設される角柱状の部材であって、正面断面視で略逆U字状の部材である。即ち、載置部材21L・21Rの内部は空洞状となっている。載置部材21L・21Rは、パレット8を搬送する際に、パレット8が載置される。載置部材21L・21Rの前端下部には、昇降リンク機構30のアーム31を支持する軸を挿通するための軸孔21aが設けられている。
【0037】
また、載置部材21L・21Rの機体左右方向中心側の下部には、爪部21b・21bが設けられている。
図2及び図4に示すように、爪部21b・21bは、載置部材21L・21Rの機体左右方向中心側の下端部から機体左右方向中心側へ突出して設けられている。爪部21bは、被搬送体の両側下部を係止できる程度に機体左右方向中心側へ所定の幅を有して前後方向へ延設される。但し、本実施形態では、爪部21bは板体を折り曲げ形成して載置部材21L・21Rと一体的に形成されているが、溶接等により固定してもよい。また、爪部21bは前後方向に長く形成しているが、長さの短い爪部21bを所定間隔をあけて複数配置してもよい。さらに、爪部21b・21bは、載置部材21L・21Rの機体左右方向中心側の下端部から機体左右方向中心側へ突出して設けられているが、機体左右方向外側へ突出して設けても構わない。また、本発明の爪部21b・21bを用いて搬送可能な被搬送体は、パレット8のように載置部20L・20Rを差し込む空間を有せず、底部に脚部を備えて両側下部に空間を備えたり、又は、下部周囲に縁部等を備えたりするコンテナや家具や什器等である。
【0038】
図2に示すように、摺動支持体22L・22Rは、載置部材21L・21Rの後部に一体的に立設される略箱状の部材である。摺動支持体22L・22Rは、後部フレーム13に左右摺動自在に支持されるとともに、支持軸22aを介して昇降リンク機構30のクランク体33を支持する。
【0039】
摺動支持体22L・22Rの前面の機体左右方向中心側には下摺動部材23L・23Rが固定される。下摺動部材23L・23Rは、筒状に構成され、前記下支持軸15に摺動可能に外嵌して支持される。
摺動支持体22L・22Rの機体左右方向中心側の上面には左右支持柱22La・22Raがそれぞれ立設される。
左右支持柱22La・22Raの上部には、上摺動部材24L・24Rが固定される。
上摺動部材24L・24Rは、筒状に形成され、後部フレーム13の上支持軸16に摺動可能に支持される。
このように下摺動部材23L・23R及び上摺動部材24L・24Rが、下支持軸15と上支持軸16とに支持されることで、載置部20L・20Rは、後部フレーム13に対して上下の二軸で摺動可能に支持される。
【0040】
また、左右支持柱22La・22Raの前面には、左右連結部材26L・26Rが固設される。
左右連結部材26L・26Rは、正面視略U字状の部材であり、幅調整機構80の無端体となるチェーン81の中途部に固定される。詳しくは、図5に示すように、左支持柱22Laに固設される左連結部材26Lは、右支持柱22Raに固設される右連結部材26Rよりも高い位置に配設され、左右方向へループ状に配置されたチェーン81の上側中途部に固定される。また、右連結部材26Rは、チェーン81の下側中途部に固定される。即ち、左右連結部材26L・26Rは、ループ状に配置されたチェーン81の対称位置に固設される。なお、左連結部材26Lを右連結部材26Rよりも低い位置に配設して、チェーン81の下側中途部に固定しても構わない。この場合、右連結部材26Rは、チェーン81の上側中途部に固定される。
【0041】
次に、昇降リンク機構30について説明する。
【0042】
上述のように、昇降リンク機構30は、ジャッキ装置40と、載置部20L・20Rの前下部に配置する前輪12・12と、を連結するものである。図2に示すように、昇降リンク機構30は、アーム31と、ロッド32と、クランク体33と、を備える。
【0043】
アーム31・31は、前輪12を支持して載置部20L・20Rに枢支され、ロッド32と連結する部材である。即ち、アーム31は、一端(前端)に車軸34を介して前輪12を回転自在に支持し、中途部が枢支軸35を介して載置部材21L・21Rの前部に回転自在に支持され、他端(後端)にロッド32の前端が枢支される。
【0044】
ロッド32は、前後方向へ延設される棒状の部材である。ロッド32は、その前端部において、前記アーム31に枢支され、後端部が後述する摺動アーム37の先端に枢支される。また、ロッド32は、載置部20L・20Rの載置部材21L・21Rの内部に配置される。
【0045】
クランク体33は、ブラケット36と、摺動アーム37と、から構成される。
【0046】
ブラケット36は、支持アーム36a・36aと、支持筒部36b・36bと、ベース部36cとを備える。
【0047】
ベース部36cは板状に構成され、ベース部36cの両側後面から後方に支持アーム36a・36aが後方に突設される。
支持アーム36a・36aの後端には連結孔が設けられて、ジャッキ装置40のテーブル47の両側に上下回動自在に支持される。
【0048】
また、ベース部36cの両側前面には、支持筒部36b・36bが固設される。
支持筒部36b・36bは、四角形状の角管で構成され、摺動アーム37の摺動軸部37aを左右摺動自在かつ相対回転不能に挿入する。但し、支持筒部36b及び摺動軸部37aの断面形状は四角形に限定するものではなく五角形や六角形等の多角形又は半円等の形状とすることもできる。
【0049】
摺動アーム37は、摺動軸部37aと、回動アーム部37bと、を備える。
摺動軸部37aは、角杆で構成され、摺動軸部37aの機体左右外側端に回動アーム部37bの上部が固設される。
回動アーム部37bの下端には、前記ロッド32の後端が枢支される。
また、摺動軸部37aの軸心部及び回動アーム部37bの上部には軸孔が開口され、摺動支持体22L・22Rに支持軸22aを介して支持される。つまり、クランク体33が摺動支持体22L・22Rに回動自在に支持される。
【0050】
昇降リンク機構30をこのような構成とすることで、ジャッキ装置40によって、後部フレーム13が上昇すると、支持軸22aを中心に回動アーム部37bが前方に回動され、回動アーム部37bに連結したロッド32が前方へ押されて、アーム31が枢支軸35を中心に下方へ回動される。よって、前輪12が下方に突出されて載置部20L・20Rが持ち上がる。
【0051】
一方、ジャッキ装置40によって、後部フレーム13が下降すると、前記と逆に回動アーム部37bが回動されて、ロッド32を介してアーム31が上方に回動して、前輪12・12は載置部20L・20Rの載置部材21L・21Rの内部に格納され、載置部20L・20Rが下降する。
【0052】
また、載置部材21L・21Rが、左右外方向(幅が広がる方向)又は左右内方向(幅が狭まる方向)に摺動されると、摺動支持体22L・22Rに支持された摺動アーム37・37も支持筒部36b・36bにガイドされて同方向に摺動され、同時に、載置部材21L・21Rに支持されたアーム31・31、前輪12・12、及び、ロッド32・32も同方向に摺動される。
【0053】
次に、幅調整機構80について説明する。
【0054】
上述のように、幅調整機構80は、載置部20L・20Rを左右方向へ摺動させるための機構である。
図2及び図5に示すように、幅調整機構80は、無端体となるチェーン81と、駆動スプロケット82Lと、従動スプロケット82Rと、幅調整操作部83等から構成されている。
【0055】
駆動スプロケット82Lは、後部フレーム13の左部に前後方向に回動自在に支持された駆動軸86Lの前端に固設される。
従動スプロケット82Rは、後部フレーム13の右部に前後方向に回動自在に支持された従動軸86Rの前端に固設される。
駆動スプロケット82L及び従動スプロケット82Rには、チェーン81が巻回される。駆動スプロケット82L、従動スプロケット82R及びチェーン81は、後部フレーム13の内部に収納される。
また、上述のように、チェーン81の中途部には、載置部20L・20Rの左右連結部材26L・26Rが固定される。
なお、幅調整機構80を、駆動スプロケット82Lと、従動スプロケット82Rと、チェーン81と、からなるチェーン式の機構に変えて、タイミングベルト式やワイヤー式等の機構とすることも可能である。
【0056】
幅調整操作部83は、駆動軸86Lを回動操作してチェーン81を回動し、載置部材21L・21Rの幅を調整操作するものである。幅調整操作部83は、後部フレーム13の左側後部に設けられる。なお、幅調整操作部83は、後部フレーム13の左後部に設けたり、後部フレーム13の上部に設けたりする構成であってもよい。
図1、図2、図4及び図6に示すように、幅調整操作部83は、幅調整操作具となる操作レバー85と、ロック装置87と、図示しないラチェットとを備える。
【0057】
操作レバー85は、回動基部85bと、グリップ部85cと、切替レバー85aを備える。
一端の回動基部85b内には、一方向クラッチとしてラチェットが収納される。
操作レバー85は、ラチェットを介して駆動軸86Lの後部に取り付けられる。
該ラチェットには、回動基部85bの外周部に設けた切替レバー85aと連動され、切替レバー85aを操作することにより、駆動軸86Lの回動方向を切り替えられるようにしている。
操作レバー85の他端には、操作者が把持するためのグリップ部85cが設けられる。
また、後部フレーム13の後面には、回動制限部材89・90が設けられており、操作レバー85を必要以上に回動できないように、操作レバー85の回動範囲を制限している。
【0058】
図6に示すように、ロック装置87は、支持台87aと、挟持体87bと、ロックレバー87cと、を備える。
【0059】
支持台87aは、駆動軸86Lの下方位置の後部フレーム13の後面から後方に突設される。支持台87aの後端は、駆動軸86Lの後端位置に合わせて配置される。
挟持体87bは、下面に凹部を形成したプレートで構成され、操作レバー85の後方で駆動軸86Lの後端部上に配置される。挟持体87bの一端には上下方向に軸孔が開口され、ロックレバー87cの一端に設けたネジ部を回動自在に挿入できるようにしている。
また、支持台87a後部の一端にも前記軸孔の位置に合わせてネジ孔が設けられ、ロックレバー87cのネジ部を螺装可能としている。
【0060】
こうして、挟持体87bの凹部を駆動軸86Lに嵌合し、軸孔を介してロックレバー87cのネジ部をネジ孔に螺装して、ロックレバー87cを回動して締め付けることにより、駆動軸86Lを回動不能に固定できるようにしている。
なお、ロック装置87の構成は、前記構成に限定するものではなく、駆動軸86Lを回動不能に固定できる構成であればよい。例えば、ナットを締め付ける構成や、挟持体87bと駆動軸86Lの両者にロックピンを挿入する構成等である。
【0061】
また、幅調整操作部83の構成も、前記構成に限定するものではなく、駆動軸86Lにウォームホイールを固定し、操作レバー85にウォームを固定して、操作レバー85を回動することにより駆動軸86Lを回動する構成とすることもできる。この場合、ロック装置87は不要となる。また、駆動軸86Lにモータ等のアクチュエーターを連結して、アクチュエーターを作動させることにより載置部20L・20Rの幅を調整できるように構成することもできる。
【0062】
次に、図7に示すように、パレット8に形成される空間8a・8aに合わせて載置部20L・20Rを左右方向へ摺動する場合について説明する。
【0063】
まず、載置部20L・20Rの間隔を広げる場合について説明する。
上述のように、幅調整操作部83のロック装置87のロックレバー87cを解除方向に回動して、挟持体87bの支持台87aに対する押し付けを緩めると、駆動軸86Lは回動可能な状態になる。次に、操作レバー85を正面視反時計回り(矢印B方向)に回動すると、駆動スプロケット82Lが正面視反時計回りに回動する。このとき、操作レバー85に設ける切替レバー85aを操作してラチェットを駆動軸86Lが正面視反時計回りにのみ回動するように設定しておく。
【0064】
駆動スプロケット82Lが正面視反時計回りに回動すると、チェーン81が正面視反時計回りに回動し、チェーン81に固定された左側の載置部20Lは左方向へ移動し、右側の載置部20Rは右方向へ移動する。
さらに、上述のように、摺動支持体22L・22Rに支持された摺動アーム37・37も支持筒部36b・36bにガイドされて同方向に摺動される。そして、同時に、載置部材21L・21Rに支持されたアーム31・31、前輪12・12、及び、ロッド32・32も同方向に摺動される。
【0065】
そして、操作レバー85を左右に往復回動して、載置部20L・20Rを所望の位置まで移動させ、載置部20L・20Rの間隔を所望の間隔とする。この状態で、ロック装置87のロックレバー87cを前記と逆方向に回動して駆動軸86Lをロックすることで載置部20L・20Rが左右移動しないようにする。そして、載置部20L・20Rをパレット8に挿入し、ハンドルユニット50を操作してパレット8を持ち上げて搬送する。
【0066】
次に、載置部20L・20Rの間隔を狭める場合について説明する。
上述のように、幅調整操作部83のロック装置87を解除した状態とし、切替レバー85aを操作してラチェットを駆動軸86Lが正面視時計回りにのみ回動するように設定しておいた状態において、操作レバー85を時計回り(図5矢印C方向)に回動すると、駆動スプロケット82Lが正面視時計回りに回動する。
【0067】
駆動スプロケット82Lが正面視時計回りに回動すると、チェーン81が正面視時計回りに回動し、左連結部材26Lは右方向へ移動し、右連結部材26Rは左方向へ移動する。それに伴って、載置部20Lが右方向へ摺動し、載置部20Rが左方向へ摺動することで、載置部20L・20Rの間隔が狭くなる。
【0068】
次に、載置部20L・20Rの爪部21b・21bを用いて被搬送体を搬送する場合について説明する。
【0069】
図7に示すように、パレット8は、上下の板材の間に空間8a・8aが形成される。そして、パレット8は、その空間8a・8a内に載置部20L・20Rを挿入することで搬送される。しかし、底部に脚部を備えて両側下部に空間を備えたり、又は、下部周囲に縁部等を備えたりするコンテナや家具や什器等の被搬送体は、載置部20L・20Rを挿入して搬送することができないため、爪部21b・21bを用いて搬送する。
【0070】
例えば、図8に示すように、コンテナ95を搬送する場合には、まず、載置部20L・20Rを最も下げた状態とする。そして、ロック装置87を解除した状態で、操作レバー85を左右に往復回動して、載置部20L・20Rの間隔を、コンテナ95の幅よりも若干広い間隔とする。そして、載置部20L・20Rをコンテナ95の下部の両側縁部95a・95aの下側に沿って、パレットトラック1を前進させて、載置部20L・20Rの長手方向幅内にコンテナ95を位置させる。この状態で、操作レバー85を左右に往復回動して、載置部20L・20Rの幅を狭めて、爪部21b・21bが両側縁部95a・95aの下方に位置するまで狭める。そして、ハンドルユニット50を操作し載置部20L・20Rを上昇させることでコンテナ95を持ち上げて搬送する。
また、爪部21b・21bを両側縁部95a・95aの下方に十分差し込める余裕空間がある場合には、載置部20L・20R(載置部材21L・21R)の機体左右方向内側面を両側縁部95a・95aの外面に押し付けるように載置部20L・20Rの幅を狭めることで、載置部20L・20Rがコンテナ95(被搬送体)を挟持する。従って、移動時の振動等で被搬送体が振動することがなく、また、旋回時等で位置がズレることもなく安定した状態で、被搬送体を搬送することが可能となる。なお、この場合、載置部材21L・21Rの機体左右方向内側面と爪部21b・21bの上面にゴム等の弾性体を貼設することで、被搬送体を傷つけないように挟持することができ、振動等を緩和することもできる。
【0071】
以上のように、パレットトラック1は、左右一対のフォーク形の載置部20L・20Rと左右の載置部20L・20Rの後部を支持する後部フレーム13とを有する荷台10と、荷台10の後部に配置して荷台を昇降するジャッキ装置40と、ジャッキ装置40を昇降操作するハンドルユニット50と、ジャッキ装置40の下部に設けられる走行部70と、ジャッキ装置40と載置部20L・20Rの前下部に配置する前輪12とを連結する昇降リンク機構30と、を備えるパレットトラック1であって、後部フレーム13に左右方向に上下支持軸15・16を横架し、上下支持軸15・16に左右の載置部20L・20Rの後部を左右摺動可能に設けるものである。
【0072】
このようにパレットトラック1を構成することにより、搬送するパレット8の幅に合わせて、左右の載置部20L・20Rの間隔を調整することができる。そのため、パレット8の幅に対応させた個別のパレットトラックを用意する必要がなく、1台のパレットトラックで、様々な幅のパレット8を搬送することができる。従って、種類(幅)の異なるパレット8の搬送作業を効率良く行うことができる。
【0073】
また、左右の載置部20L・20Rの間隔を変更する構成であるため、幅の広いパレット8を搬送する際には左右の載置部20L・20Rの間隔を広くできる一方で、搬送終了時には左右の載置部20L・20Rの間隔を狭くすることができるため、パレットトラック1自体を小型化することができ、移動を容易に行えたり、格納スペースを縮小したりできる。
【0074】
また、パレットトラック1は、昇降リンク機構30は、載置部20L・20Rの後部に設ける摺動支持体22L・22Rに回動自在に支持されて後側をジャッキ装置40に連結されるクランク体33と、載置部20L・20Rの前部に上下回動支持されて前側に前輪12を支持するアーム31と、アーム31の後側とクランク体33の前側を連結するロッド32と、を備え、クランク体33は、載置部20L・20Rとともに摺動する摺動アーム37と、ジャッキ装置40に連結して摺動アーム37を左右摺動自在に支持するブラケット36と、を備えるものである。
【0075】
このようにパレットトラック1を構成することにより、載置部20L・20Rの間隔の調整を行う時に、ジャッキ装置40と前輪12とを連結する昇降リンク機構30と、載置部20L・20Rとが同時に左右方向へ移動可能となるため、載置部20L・20Rと昇降リンク機構30とを別々に操作する必要がなく、載置部20L・20Rの間隔の調整を容易に行うことができる。
【0076】
さらに、パレットトラック1は、後部フレーム13内に幅調整機構80が配置され、幅調整機構80は、チェーン81(無端体)を左右方向に張設し、チェーン81(無端体)に、左右の摺動支持体22L・22Rを連結し、チェーン81(無端体)を回動することにより左右の載置部20L・20Rを狭める方向又は広げる方向に摺動可能としたものである。
【0077】
このようにパレットトラック1を構成することにより、左右の載置部20L・20Rが同時に同じ長さで狭める方向又は広げる方向に摺動されるので、左右のバランスが崩れることなく載置部20L・20Rの間隔の調整ができ、安定した状態で昇降や荷物の搬送ができる。
【0078】
さらにまた、パレットトラック1は、チェーン81(無端体)は、後部フレーム13の左右に支持される駆動スプロケット82Lと従動スプロケット82Rに巻回され、駆動スプロケット82Lは、後部フレーム13に配置した操作レバー85(幅調整操作具)と連結されるものである。
【0079】
このようにパレットトラック1を構成することにより、後部フレーム13に配置した操作レバー85(幅調整操作具)を操作することにより、容易に載置部を左右方向へ摺動させて載置部20L・20Rの間隔の調整を行うことができる。
【0080】
さらに、パレットトラック1は、載置部20L・20Rは、載置部20L・20Rの機体左右方向中心側の下部に爪部21bを有するものである。
【0081】
このようにパレットトラック1を構成することにより、パレット8のような載置部20L・20Rを差し込む空間を有さないコンテナや家具や什器等の被搬送体を搬送する場合には、左右の載置部20L・20Rの幅を狭めて、当該被搬送体の下部両側から、爪部を当該被搬送体の脚部又は縁部等に引っ掛けて、又は下側に差し込んで、載置部20L・20Rを上昇させることにより、当該被搬送体を容易に持ち上げることができる。また、左右の載置部20L・20Rをさらに狭めて被搬送体を挟んで挟持することにより、安定した状態で被搬送体を搬送することができる。
【符号の説明】
【0082】
1 パレットトラック
10 荷台
12 前輪
13 後部フレーム
15 下支持軸
16 上支持軸
20L 載置部
20R 載置部
21b 爪部
22L 摺動支持体
22R 摺動支持体
30 昇降リンク機構
31 アーム
32 ロッド
33 クランク体
36 ブラケット
37 摺動アーム
40 ジャッキ装置
50 ハンドルユニット
70 走行部
80 幅調整機構
81 チェーン(無端体)
82L 駆動スプロケット
82R 従動スプロケット
85 操作レバー(幅調整操作具)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対のフォーク形の載置部と左右の載置部の後部を支持する後部フレームとを有する荷台と、荷台の後部に配置して荷台を昇降するジャッキ装置と、ジャッキ装置を昇降操作するハンドルユニットと、ジャッキ装置の下部に設けられる走行部と、ジャッキ装置と載置部の前下部に配置する前輪とを連結する昇降リンク機構と、を備えるパレットトラックであって、
前記後部フレームに左右方向に支持軸を横架し、該支持軸に左右の前記載置部の後部を左右摺動可能に設けることを特徴とするパレットトラック。
【請求項2】
前記昇降リンク機構は、
前記載置部の後部に設ける摺動支持体に回動自在に支持されて後側をジャッキ装置に連結されるクランク体と、
前記載置部の前部に上下回動支持されて前側に前記前輪を支持するアームと、
該アームの後側と前記クランク体の前側を連結するロッドと、
を備え、
前記クランク体は、
前記載置部とともに摺動する摺動アームと、
ジャッキ装置に連結して前記摺動アームを左右摺動自在に支持するブラケットと、
を備えることを特徴とする請求項1に記載のパレットトラック。
【請求項3】
前記後部フレーム内に幅調整機構が配置され、
幅調整機構は、無端体を左右方向に張設し、該無端体に、前記左右の摺動支持体を連結し、前記無端体を回動することにより左右の前記載置部を狭める方向又は広げる方向に摺動可能としたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のパレットトラック。
【請求項4】
前記無端体は、前記後部フレームの左右に支持される駆動スプロケットと従動スプロケットに巻回され、
前記駆動スプロケットは、前記後部フレームに配置した前記幅調整操作具と連結される、
ことを特徴とする請求項3に記載のパレットトラック。
【請求項5】
前記載置部は、前記載置部の機体左右方向中心側の下部に爪部を有することを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のパレットトラック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−178223(P2011−178223A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−42696(P2010−42696)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【特許番号】特許第4570689号(P4570689)
【特許公報発行日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(000126182)株式会社をくだ屋技研 (15)
【Fターム(参考)】