説明

パワーアンプのスピーカ接続検査方法及び装置

【課題】昇圧電源を備えたパワーアンプの接続検査に際して、パワーアンプの中点電位とスピーカ接続端子電圧とを比較し、スピーカ接続端子電位が中点電位よりも低い時に接地側にショートしていると判別すると、中点電位がバッテリ電圧より高い時には間違った検査を行う問題点を解決する「パワーアンプのスピーカ接続検査方法及び装置」とする。
【解決手段】パワーアンプの昇圧電源に、バッテリ電圧を昇圧する昇圧手段と並列にバッテリ電圧を引き込むバッテリ電圧引込手段とを設けると共に、昇圧電源からパワーアンプICへの供給電圧を前記昇圧手段とバッテリ電圧引込手段とを切り替える切替手段とを設ける。スピーカ接続検査を行う時には、切替手段によりパワーアンプICへの電圧をバッテリ電圧側に切り替え、接続検査時にはバッテリ電圧の中点電位を用いて、その中点電位よりも端子電圧が低い時のみ接地側ショートと判別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載するオーディオ装置用のパワーアンプに対して、スピーカが適切に接続しているか否か等を検出するための、パワーアンプのスピーカ接続検査方法、及びその方法を実施するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のオーディオ装置は車の利用者にとって、車内で快適に過ごすためになくてはならないものとなっており、ほとんどの車両にはオーディオ装置を搭載している。このオーディオ装置を車両に取り付けるには、多くの場合車両の生産ラインにおいて取り付けられており、時には利用者の好みのオーディオ装置を別途購入し、これをカーディーラや車両関連機器販売店で取り付けてもらっている。
【0003】
このようなカーオーディオ装置は、フロントパネル等に取り付けたヘッドユニットに、車内において音響効果のよい場所で、車内の利用者にとって邪魔にならない場所に、強固に固定されたスピーカを接続して使用する。このヘッドユニットには多くの場合ラジオ受信機能を備え、そのほかCDプレーヤ、テレビ受信機、DVDプレーヤ等々の各種機器を適宜選択して内蔵するものも多く、更には、ナビゲーション機能を備えるほか、CDやDVDのディスクチェンジャ等を接続して用いる場合もある。
【0004】
このヘッドユニットは、それらの機器のオーディオ、あるいは音声(以下「音声」と略称する)をスピーカから適切な音量で出力するため、増幅器で音量を増幅して出力している。そのときには、車内においてできる限り音響効果が良いように、例えば4.1サラウンド等の音響効果が発揮できるように、その位置、音質等を調整されているスピーカから出力する。
【0005】
そのため、ヘッドユニット等には最終的に利用者が希望する音量で音声を出力するため、パワーアンプを備えており、車内の各所に設けたそれぞれ特有の音質を出力可能なスピーカは、各々のスピーカと接続している接続コードを、増幅器において各スピーカ毎に設けている接続端子に接続している。それにより各スピーカ毎に適切なバランスで増幅する増幅器からの音声を、車内において全体として利用者の好みの音量で、且つ個々のスピーカ毎に適切な音量バランスで、且つ所定の音質で音声を出力する。
【0006】
このような車内のオーディオ装置において、パワーアンプと車内のスピーカとを適切に接続することは重要であり、その際には各スピーカが予め設定してあるそれぞれの接続端子に適切に接続しなければならず、且つ、接続コート等が車内の導電性物体と直接接触し、或いはバッテリの電源系統と接触してショートしてはならない。
【0007】
そのため、前記のような車両にオーディオ機器を搭載する車両の生産ライン等では、機器を車両に組み込んだ後、適切に接続しているか否かをチェックする検査工程を設けることが多くなっている。また、前記のように利用者の好みのオーディオ装置を別途購入し、これをカーディーラや車両関連機器販売店で取り付けてもらうときにおいても、取付作業者は最終的に適切に取り付けているか検査を行う必要がある。更に車両の使用中に事故等によってスピーカの配線系統が損傷した時の修理等に際しても、パワーアンプとスピーカの接続検査等を行う必要がある。
【0008】
このようなパワーアンプにおけるスピーカの接続検査に際しては、従来より種々の手法が用いられているが、例えば図4(a)に従来例1として示すような手法が用いられている。即ち、図1(a)に示すパワーアンプのスピーカ接続検査の態様においては、同図(a−1)に示すような車両のバッテリ電圧をそのまま用いてオーディオ信号を増幅するパワーアンプのスピーカ接続検査の態様を示しており、その時の増幅波形を同図(a−2)に示している。
【0009】
図4(a−2)に示すように、バッテリ電圧をそのまま用いてオーディオ信号を増幅する際には、車両が備えている12Vのバッテリ電圧に対して、その中点電位である6Vを中心とした波形を形成することとなる。なお、この時の実際の波形は、現在は多くの場合デジタル増幅器ではデジタル信号によって全体として図示するような波形を成形することとなる。
【0010】
上記のように作動するパワーアンプにおいては、その検査に際しては図4(a−2)にショート検査の態様として示すように、このパワーアンプが作動中に示すスピーカ接続端子部分の電位を測定し、中点電位の6Vよりも高い電圧を検出した時にはバッテリ電位側にショートしているものと判別すると共に、それよりも低い電圧を検出した時には接地電位側にショートしているものと判別している。
【0011】
なお、この判別に際して、例えば12Vであるか否か、或いは0Vであるか否かの検出によるショートの判別を行うことは理論的には可能であるが、バッテリ電位は必ずしも12Vを維持しておらず、種々の電圧低下が存在し、また、接地電位も必ずしも0Vではない場合があるので、前記のように中点電位よりも大か小かの判別により、いずれの側へのショートであるかを判別している。
【0012】
一方、車両用のオーディオ装置においては、車両走行中に好みの音楽等を聴くため、車両のエンジン音、走行音、風切り音、併走車両音等、大きな騒音の環境下で聴くことが多い。そのため家庭用のオーディオ装置よりも大音量を必要とすることが多く、このような利用者の要求を満たすためには、一般の乗用車が搭載しているバッテリの電圧である12Vでは適切な音質で所望の大容量を出力することは困難である。そのため、車両搭載のオーディオ装置ではパワーアンプの作動のためにバッテリ電源の12Vを、例えば30V、40V等に昇圧して所望のパワーを得るようにしている。
【0013】
なお本発明の先行技術としては、電源電流が上限電流値を超えたことを検出して検出信号をHighレベルで出力すると共に、出力電圧が上限電圧値を超えたことを検出した場合に検出信号を強制的にLowレベルに切り換えることにより、スピーカに大電流が流れたときに電流検出部による検出結果を電圧検出部により無効化してショートの誤検出を防止すると共に、実際のショートの際には電圧検出部が電流検出部による検出結果を有効化して検出信号をHighレベルで出力することにより、アンプにおけるショートの高精度な検出と誤検出の防止とを両立させる技術は特許文献1に開示されている。
【0014】
また、入力パルス信号に基づいて生成され、アンプの出力段へ入力される2つの出力段入力パルス信号の各々の信号レベルと所定の生成閾値に基づいて2つの比較パルス信号を生成し、この比較パルス信号の各々のパルス幅に相当する期間内における、このアンプからの出力パルスの信号レベルと所定の検出閾値とを比較して得られたレベル比較結果に応じてショート検出信号を出力することにより、簡単な回路構成でアンプの出力ショートを正確に検出する技術は特許文献2に開示されている。
【0015】
また、地絡または天絡の状態で、電源が投入されるとき、2つの出力トランジスタの中点電圧により電圧検出回路で地絡または天絡を検出することにより、バイアス回路のバイアスを急速に立ち上がるように制御し、駆動段トランジスタと、地絡及び天絡検出回路とが素早く定常状態にすることにより、電源投入時の天絡または地絡による出力トランジスタの破壊を防止するようにした技術は特許文献3に開示されている。
【0016】
また、スピーカ出力端子に発生した直流電圧を検出する直流電圧検出回路と、直流電圧検出回路から検出信号が出力されたときに保護動作を行う制御回路と、正の電源電圧+Vと負の電源電圧−Vの中点電位のずれを検出する中点電位検出回路とを有し、中点電位検出回路の出力を直流電圧検出回路の入力に接続して、中点電位のずれが検出されたときに直流電圧検出回路から検出信号を出力させるようにして、スピーカ出力の短絡を確実に検出し、かつ電源パンピング現象によるアンプの破壊を防止する技術は特許文献4に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2007−74119号公報
【特許文献2】特開2010−34775号公報
【特許文献3】特開2000−24425号公報
【特許文献4】特開2006−60278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
前記のような昇圧電源を備えたパワーアンプにおいては、例えば図4(b−1)に示すような、前記(a−1)と同様のバッテリ電源を用い、これを図示の例では40Vに昇圧する昇圧電源を用いて、同図(b−2)に示すように昇圧し、それにより前記図4(a)に示すような波形を、図4(b−3)に示すように中点電位を20Vとした波形に増幅して出力することとなる。
【0019】
このような特性のパワーアンプを用いる時、前記のようなスピーカの接続検査を行う際には、例えば図5に示すような機能ブロックからなる装置を用いて検査を行う。図5に示す従来の昇圧電源を用いたパワーアンプのスピーカ接続検査の例においては、パワーアンプ31に対して車両搭載の12Vのバッテリ32から電力を供給する時、昇圧電源33によってこれを図示の例では40Vに昇圧する。パワーアンプIC34ではオーディオ信号を前記図4(b−3)のように、中点電位を20Vとして増幅し、パワーアンプ31のスピーカ接続端子35から、ここに接続した配線によりスピーカ36に対して出力する。
【0020】
上記のようなパワーアンプ31のスピーカ接続検査に際しては、別途スピーカ接続検査処理部を備えた検査装置により、或いはパワーアンプに予め組み込んでいるスピーカ接続検査処理部によって検査を行うこととなる。図5に示す例においては、前記のようなスピーカ接続検査を、パワーアンプ31内に予め設けたスピーカ接続検査処理部37で検査を行う例を示している。
【0021】
図5に示すスピーカ接続検査処理部41の例においては、パワーアンプの電源を入れた状態で、適宜テスト用の信号を入力し、スピーカ接続検査処理部41の双方向通信部42からの中点電位取得部43の指示によって、パワーアンプIC34の中点電位を取得するようにしている。
【0022】
スピーカ接続検査処理部41の接続検査用判別部45では、双方向通信部42を介してパワーアンプIC34における接続端子35部分の電圧を検出し、スピーカが接続されているか、接続しているスピーカがバッテリ電源側にショートしていないか、接地電位側にショートしていないか、本来接続されるべきスピーカが接続されているか、更には、パワーアンプ内での配線ミスはないか等の、必要に応じて種々の接続検査を行う。
【0023】
図示の接続検査用判別部45の例においてはその内、本発明に関連して、バッテリ電源側にショートしていないかをバッテリ側ショート46の判別部で判別し、接地側にショートしていないかを接地側ショート47の判別部で判別して、その検査結果を検査結果出力部44から表示部等に出力する例を示している。
【0024】
この接続検査用判別部45では、前記図4(b)に示す40V昇圧電源を備えたパワーアンプのスピーカ接続検査態様における、同図(b−3)に示すようなショート検査の態様によって行う。即ち、前記図4(a)における昇圧電源を備えていないパワーアンプのスピーカ接続検査における、同図(a−2)のショート検査の態様と同様に、中点電位がバッテリ電位側にショートしているか、或いは接地側にショートしているかの判別を行うこととなる。
【0025】
即ち、図5のスピーカ接続検査処理部41における接続検査用判別部45においては、中点電位取得部43で取得した、現在パワーアンプが出力している信号の中点電位を取り込み、パワーアンプIC34の出力端子部分の電圧を検出し、この部分がバッテリ電位であるか、接地電位であるかによってバッテリ電位側ショートをしているか、接地側ショートをしているかを判別する処理を行う。
【0026】
そのため図4(a)の(a−3)に示すように、接地側にショートしている場合には中点電位の20Vが検出されるべきところ、それよりも低い電位が検出されているので接地側にショートしていると判別することは間違いないものの、バッテリ側にショートしている場合も同様に、中点電位の20Vよりも低い電圧であることを検出するため、接地側にショートしているものと判別してしまう。このことは同図の下部に従来技術の問題点として示すとおりである。
【0027】
したがって本発明は、昇圧電源を備えたパワーアンプの接続検査に際して、パワーアンプの中点電位とスピーカ接続端子電圧とを比較し、スピーカ接続端子電圧が中点電位よりも低い時には常に接地側にショートしていると判別する処理を行うことによって、間違った検査を行う問題点を解決することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明に係るパワーアンプのスピーカ接続検査方法は、前記課題を解決するため、バッテリ電圧を昇圧する昇圧電源と、前記昇圧電源で昇圧した電圧で作動するパワーアンプICと、前記パワーアンプICとスピーカとを接続する接続端子とを備え、前記パワーアンプICの作動電圧の中点電位と、前記接続端子の端子電圧を比較して接続端子の電圧が低い時には接地側にショートしているものと判別するパワーアンプのスピーカ接続検査方法において、前記スピーカの接続検査を行う時には、パワーアンプICへの電圧を昇圧電源からバッテリ電圧に切り替え、前記中点電位としてバッテリ電圧の中点電位を用いて前記判別を行うことを特徴とする。
【0029】
また、本発明に係る他のパワーアンプのスピーカ接続検査方法は、前記パワーアンプのスピーカ接続検査方法において、前記パワーアンプのスピーカ接続検査は、パワーアンプ内に設けたスピーカ接続検査処理手段で行うことを特徴とする。
【0030】
また、本発明に係る他のパワーアンプのスピーカ接続検査方法は、前記パワーアンプのスピーカ接続検査方法において、前記パワーアンプのスピーカ接続検査は、パワーアンプとは別体のスピーカ接続検査装置により行うことを特徴とする。
【0031】
また、本発明に係る他のパワーアンプのスピーカ接続検査方法は、前記パワーアンプのスピーカ接続検査方法において、前記パワーアンプのスピーカ接続検査終了時には、パワーアンプICへの電圧を、バッテリ電圧から昇圧電源側に切り替えることを特徴とする。
【0032】
また、本発明に係る他のパワーアンプのスピーカ接続検査方法は、前記パワーアンプのスピーカ接続検査方法において、前記パワーアンプ内のパワーアンプICを複数のスピーカに対応して複数備え、前記スピーカ接続検査時には、前記パワーアンプICを順に選択して検査を行うことを特徴とする。
【0033】
また、本発明に係る他のパワーアンプのスピーカ接続検査方法は、前記パワーアンプのスピーカ接続検査方法において、前記スピーカ接続検査の結果を記憶し、検査結果を外部に出力する時には前記記憶した検査結果を読み出して出力することを特徴とする。
【0034】
また、本発明に係るパワーアンプのスピーカ接続検査装置は、前記課題を解決するため、バッテリ電圧を昇圧する昇圧電源と、前記昇圧電源で昇圧した電圧で作動するパワーアンプICと、前記パワーアンプICとスピーカとを接続する接続端子とを備え、前記パワーアンプICの作動電圧の中点電位と、前記接続端子の端子電圧を比較して接続端子の電圧が低い時には接地側にショートしているものと判別するスピーカ接続検査処理手段を備えたパワーアンプのスピーカ接続検査装置において、前記昇圧電源にはバッテリ電圧を昇圧する昇圧手段と並列にバッテリ電圧をそのまま引き込むバッテリ電圧引込手段とを設けると共に、昇圧電源からパワーアンプICへの供給電圧を前記昇圧手段とバッテリ電圧引込手段とを切り替える切替手段とを設け、前記スピーカ接続検査処理手段では、スピーカの接続検査を行う時に、前記切替手段によりパワーアンプICへの電圧をバッテリ電圧に切り替え、前記中点電位としてバッテリ電圧の中点電位を用いて前記判別を行うことを特徴とする。
【0035】
また、本発明に係る他のパワーアンプのスピーカ接続検査装置は、前記パワーアンプのスピーカ接続検査装置において、前記スピーカ接続検査処理手段を、パワーアンプ内に設けることを特徴とする。
【0036】
また、本発明に係る他のパワーアンプのスピーカ接続検査装置は、前記パワーアンプのスピーカ接続検査装置において、前記スピーカ接続検査処理手段を、パワーアンプとは別体のスピーカ接続検査装置に設けることを特徴とする。
【0037】
また、本発明に係る他のパワーアンプのスピーカ接続検査装置は、前記パワーアンプのスピーカ接続検査装置において、前記切替手段では、パワーアンプのスピーカ接続検査終了時に、パワーアンプICへの電圧を、バッテリ電圧から昇圧電源側に切り替えることを特徴とする。
【0038】
また、本発明に係る他のパワーアンプのスピーカ接続検査装置は、前記パワーアンプのスピーカ接続検査装置において、前記パワーアンプICを複数のスピーカに対応して複数設け、前記スピーカ接続検査処理手段に備えた検査チャンネル指示手段により順にスピーカ接続検査を行うパワーアンプICを選択することを特徴とする。
【0039】
また、本発明に係る他のパワーアンプのスピーカ接続検査装置は、前記パワーアンプのスピーカ接続検査装置において、前記スピーカ接続検査処理手段には検査結果を記憶する検査結果記憶手段を備え、検査結果を外部に出力する検査結果出力手段では、前記検査結果記憶手段に記憶している検査結果を読み出して出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0040】
本発明は上記のように構成したので、昇圧電源を備えたパワーアンプの接続検査に際して、パワーアンプの中点電位とスピーカ接続端子電圧とを比較し、スピーカ接続端子電位が中点電位よりも低い時に接地側にショートしていると判別する処理を行うと、昇圧電源の中点電圧がバッテリ電圧よりも高い時には、バッテリ電源側にショートしているにもかかわらず接地側にショートしているとして判別する問題点を解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施例の機能ブロック図である。
【図2】同実施例の作動フロー図である。
【図3】同実施例の作動態様を示す図である。
【図4】従来例の作動態様と共に問題点を示す図である。
【図5】従来例の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0042】
本発明の実施例を図面に沿って説明する。図1は本発明の実施例の機能ブロック図を示している。なお、同図及び他の各図において、各機能を行う機能部は、それぞれ各機能を行う手段ということができる。
【0043】
図1に示す機能ブロック図においては、前記図5に示す従来例との比較を容易にするため、同様の機能を行う機能ブロックについては同様に示し、図中4チャンネルのスピーカシステムを備えたパワーアンプの例を示している。図1に示す例においては、パワーアンプ1には車両の12Vのバッテリ2から電源を取り、これを図示の例では40V昇圧部4を有する昇圧電源3を備えている。
【0044】
本発明においてはこの昇圧電源3に40V昇圧部4と並列にバッテリ電圧引込部5を備え、昇圧電源3からパワーアンプICに供給する電圧を、40V昇圧部4からの昇圧電源と、この40V昇圧部4を通らない、バッテリ電圧引込部5のいずれかの電圧に切り替えるための切替スイッチ6を備えている。この切替スイッチ6は、後述するようにスピーカ接続検査処理部11の昇圧電源切替信号出力部22からの信号によって切り替えるようにしている。なお、このスイッチは電子回路により種々の形態で形成することができる。
【0045】
図1に示す例においてはスピーカを4個備え、それぞれ特有の音声を出力することができるようにした4チャンネルの例を示しており、そのためパワーアンプICとして、第1パワーアンプIC7−1、第2パワーアンプIC7−2、第3パワーアンプIC7−3、第4パワーアンプIC7−4を備えると共に、各接続部8−1、8−2、8−3、8−4を介してそれぞれの配線によってスピーカ9−1、9−2、9−3、9−4を接続した例を示している。
【0046】
スピーカ接続検査処理部11では、前記図5に示す従来例と同様に双方向通信部12を備え、図示の例では第1〜第4の各パワーアンプIC7−1〜7−4と選択的に通信を行うようにしている。中点電位取得部13についても図5の従来例と同様に、各パワーアンプICが作動する中点電位を取得するが、同図の例においては、昇圧電源3において切替スイッチ6により、12Vのバッテリ電位と40Vの昇圧電源とを切り替えるようにしているため、12Vのバッテリ電位の時には取り込む中点電位は6Vであり、40V昇圧部に切り替えた場合には中点電位は20Vとなる。
【0047】
但し、後述するようにスピーカ接続検査処理部11が作動する時には、検査開始検出部23によってこの検査を行う人の指示を検出し、昇圧電源切替信号出力部22からの信号により、昇圧電源3の切替スイッチ6がバッテリ電圧引込部5側に切り替えているので、ここには6Vの中点電位のみが取り込まれる。
【0048】
接続検査用判別部14では図5の従来例と同様の手法によって、バッテリ側ショート15と接地側ショート16を判別するものであるが、図1に示す例においては前記のようにパワーアンプICを4個備えることにより、検査チャンネル指示部17において指示したチャンネルについて順に同様の接続用判別の処理を行うこととなる。
【0049】
したがって、接続検査用判別部14では、検査チャンネル指示部17で順に指示したチャンネルについて、中点電位取得部13で取得した前記のようなバッテリ電圧の中点電位である6Vと、双方向通信部12で取り込んだ指定のチャンネルの接続端子部分の電位と比較する処理を行う。
【0050】
その際には、図4(a)の従来例1における同図(a−2)のショート検査の態様と同様に、また、後述する図3(b)のパワーアンプのスピーカ接続検査時の作動として示すように、バッテリ電位側へのショートは中点電位6Vよりも電位が高いことによって検出し、接地側へのショートは中点電位よりも低いことによって検出する。この判別結果は図示の例においては後述するように、検査結果記憶部26に各チャンネル毎に記憶している。
【0051】
なお、前記のように、この判別に際して、例えば12Vであるか否か、或いは0Vであるか否かの検出によるショートの判別を行うことは理論的には可能であるが、バッテリ電位は必ずしも12Vを維持しておらず、電圧低下が存在し、また、接地電位も必ずしも0Vではない場合があるので、中点電位よりも大か小かの判別によりいずれの側へのショートであるかを判別している。
【0052】
検査チャンネル指示部17においては、図示するような4チャンネルのスピーカシステムにおいて、各チャンネルのパワーアンプICに対するスピーカの接続検査を行うため、最初は検査を行う人の指示を入力する検査開始検出部23の信号により、例えば最初に第1チャンネル18を選択し、双方向通信部12から第1パワーアンプIC7−1に対して接続端子電圧の出力を指示し、それにより第1パワーアンプIC7−1は電圧検出信号を出力する。
【0053】
その電圧検出信号は双方向通信部12から取り込んで、接続検査用判別部14においてこの電圧が中点電位取得部13で別途取り込んだ中点電位と比較して、前記のように判別を行い、判別結果を検査結果記憶部26に記憶する。その処理が終了すると、検査チャンネル指示部17では第2チャンネル19を選択し、同様の処理を行い、以降は第3チャンネル20、第4チャンネル21を順に選択し、その検査結果は特に接続異常を検出した時に、チャンネル毎に検査結果記憶部26に記憶する。
【0054】
スピーカ接続検査処理部11の昇圧電源切替信号出力部22では、検査を行う人による検査開始信号の入力を検査開始検出部23で検出した時、昇圧電源3の切替スイッチ6に対して、スイッチをバッテリ電圧引込部5側に切り替える指示信号を出力する。それによりパワーアンプの接続検査時には、各パワーアンプICに対して12Vのバッテリ電圧を供給する。
【0055】
また、その後検査を行う人による検査終了指示信号の入力により、或いは検査チャンネル指示部17で全てのチャンネルの指示を行い、検査が終了したことを検出した時に自動的に、検査終了検出部24はこれを検出し、検査の終了信号を昇圧電源切替信号出力部22に対して出力する。その時には昇圧電源切替信号出力部22では、昇圧電源3の切替スイッチ6を40V昇圧部4側に切り替える指示を行う。それによりパワーアンプの接続検査終了時には、各パワーアンプICに対して、通常作動時用の40V昇圧電源の利用が可能となる。
【0056】
検査結果出力部25では、作業者の指示等により、前記のように接続検査用判別部14で判別した結果をチャンネル毎に記憶している検査結果記憶部26から検査結果を読み出し、モニタに出力して表示する。作業者等はその表示により、特に異常はないこと、或いは特定のチャンネルでのショートの態様等を知ることができ、スピーカの接続等を修正し、再び適正な接続が行われたかの確認作業、等を行うこととなる。
【0057】
前記のような機能ブロックからなる本発明においては、例えば図2に示す作動フローに従い順に作動させて実施することができる。即ち図2に示すパワーアンプ接続検査処理の例においては、最初接続検査開始信号の入力から行っている(ステップS1)。この検査開始信号の入力は、図1のスピーカ検査処理部11における、検査開始検出部23で行っている。
【0058】
その後昇圧電源電圧をバッテリ電圧に切り替える(ステップS2)。この作動はスピーカ接続検査処理部11の昇圧電源切替信号出力部22で、前記のような検査開始信号検出部23からの信号を入力した時、昇圧電源3の切替スイッチ6に対して、バッテリ電圧引込部5側に切り替える信号を出力することによって行っている。
【0059】
次いで検査チャンネルの選択を行う(ステップS4)。この処理は図1のスピーカ接続検査処理部11の検査チャンネル指示部17で、検査開始信号検出部23による検査開始信号を検出した時、例えば第1チャンネルを指示することにより行っている。この時指示するチャンネルは、第1チャンネルに限らず、任意のチャンネルを指示することができるが、以降のチャンネルの指示は、未だ検査のために選択していないチャンネルを選択することとなる。
【0060】
その後選択したチャンネルの接続検査を行う(ステップS5)。この処理は図1のスピーカ接続検査処理部11の接続検査用判別部14で行うものであるが、この判別処理については図1の説明で詳細に述べたので、ここでの詳細な説明は省略するが、この検査に際しては、ステップS3の中点電位の取得において、12Vのバッテリ電圧の中点電位を取得しているので、6Vの中点電位より検出電圧が高いか低いかによってショートの検査を行うことができ、従来技術の問題点を解決することができる。
【0061】
ここでの接続検査に際しては、前記のようなバッテリ電位側へのショート、及び接地側へのショートを検査する以外に、スピーカ接続コード同士のショート、各パワーアンプICで増幅する信号に対応した特性のスピーカが接続されているかの検査等、必要に応じて従来から行われている各種検査、更には従来から提案されている種々の接続検査を行うことができる。
【0062】
その後図2に示す例においては接続不良を検出したか否かを判別し(ステップS6)、接続不良を検出した時にはステップS7に進んで、検査チャンネルの接続不良を記憶する。この作動は図1の検査結果記憶部26において、接続検査用判別部14での判別結果を記憶することにより行っている。
【0063】
その後、及び前記ステップS6で接続不良を検出しなかった時と共にステップS8に進み、全てのチャンネルを検査したか否かを判別する。その判別の結果、未だ検査していないチャンネルが存在すると判別した時には、ステップS4に戻って、未だ検査を行っていない検査チャンネルの選択を行い、以降は前記作動を繰り返す。
【0064】
ステップS8において、全てのチャンネルの検査行ったと判別した時には、ステップS9に進んで、利用者による検査終了信号を入力し、その信号入力により昇圧電源電圧を、前記のようにステップS2で切り替えたバッテリ電圧側から、昇圧電源側に切り替え、この一連の処理を終了する(ステップS10)。
【0065】
これらの作動は図1の検査終了検出部24で前記のように検査終了を検出した時、昇圧電源切替信号出力部22で昇圧電源3の切替スイッチ6に対して、前記のような切替信号を出力することにより行っている。それにより、以降は各パワーアンプICにおいて、40Vの昇圧電源により、高出力で音声を出力することが可能となる。
【0066】
本発明においては前記のような作動を行うことにより、例えば図3(a)に示すように、通常時のパワーアンプの作動に際しては12Vのバッテリ電圧を40Vに昇圧して、同図に示すように高出力の音声を出力できるパワーアンプにおいて、そのパワーアンプに対するスピーカの接続検査に際しては、同図(b)に示すように昇圧電源を非作動状態にし、その中点電位をバッテリ電位の中点電位とすることにより、前記図4の従来例1と同様に、確実なショートの検出を行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0067】
1 パワーアンプ
2 バッテリ
3 昇圧電源
4 40V昇圧部
5 バッテリ電圧引込部
6 切替スイッチ
7−1〜7−4 パワーアンプIC
8−1〜8−4 接続部
9−1〜9−4 スピーカ
11 スピーカ接続検査処理部
12 双方向通信部
13 中点電位取得部
14 接続検査用判別部
15 バッテリ電圧側ショート
16 接地側ショート
17 検査チャンネル指示部
18 第1チャンネル
19 第2チャンネル
20 第3チャンネル
21 第4チャンネル
22 昇圧電源切替信号出力部
23 検査開始検出部
24 検査終了検出部
25 検査結果出力部
26 検査結果記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリ電圧を昇圧する昇圧電源と、前記昇圧電源で昇圧した電圧で作動するパワーアンプICと、前記パワーアンプICとスピーカとを接続する接続端子とを備え、前記パワーアンプICの作動電圧の中点電位と、前記接続端子の端子電圧を比較して接続端子の電圧が低い時には接地側にショートしているものと判別するパワーアンプのスピーカ接続検査方法において、
前記スピーカの接続検査を行う時には、パワーアンプICへの電圧を昇圧電源からバッテリ電圧に切り替え、前記中点電位としてバッテリ電圧の中点電位を用いて前記判別を行うことを特徴とするパワーアンプのスピーカ接続検査方法。
【請求項2】
前記パワーアンプのスピーカ接続検査は、パワーアンプ内に設けたスピーカ接続検査処理手段で行うことを特徴とする請求項1記載のパワーアンプのスピーカ接続検査方法。
【請求項3】
前記パワーアンプのスピーカ接続検査は、パワーアンプとは別体のスピーカ接続検査装置により行うことを特徴とする請求項1記載のパワーアンプのスピーカ接続検査方法。
【請求項4】
前記パワーアンプのスピーカ接続検査終了時には、パワーアンプICへの電圧を、バッテリ電圧から昇圧電源側に切り替えることを特徴とする請求項1記載のパワーアンプのスピーカ接続検査方法。
【請求項5】
前記パワーアンプ内のパワーアンプICを複数のスピーカに対応して複数備え、
前記スピーカ接続検査時には、前記パワーアンプICを順に選択して検査を行うことを特徴とする請求項1記載のパワーアンプのスピーカ接続検査方法。
【請求項6】
前記スピーカ接続検査の結果を記憶し、
検査結果を外部に出力する時には前記記憶した検査結果を読み出して出力することを特徴とする請求項1記載のパワーアンプのスピーカ接続検査方法。
【請求項7】
バッテリ電圧を昇圧する昇圧電源と、前記昇圧電源で昇圧した電圧で作動するパワーアンプICと、前記パワーアンプICとスピーカとを接続する接続端子とを備え、前記パワーアンプICの作動電圧の中点電位と、前記接続端子の端子電圧を比較して接続端子の電圧が低い時には接地側にショートしているものと判別するスピーカ接続検査処理手段を備えたパワーアンプのスピーカ接続検査装置において、
前記昇圧電源にはバッテリ電圧を昇圧する昇圧手段と並列にバッテリ電圧をそのまま引き込むバッテリ電圧引込手段とを設けると共に、昇圧電源からパワーアンプICへの供給電圧を前記昇圧手段とバッテリ電圧引込手段とを切り替える切替手段とを設け、
前記スピーカ接続検査処理手段では、スピーカの接続検査を行う時に、前記切替手段によりパワーアンプICへの電圧をバッテリ電圧に切り替え、前記中点電位としてバッテリ電圧の中点電位を用いて前記判別を行うことを特徴とするパワーアンプのスピーカ接続検査装置。
【請求項8】
前記スピーカ接続検査処理手段を、パワーアンプ内に設けることを特徴とする請求項7記載のパワーアンプのスピーカ接続検査装置。
【請求項9】
前記スピーカ接続検査処理手段を、パワーアンプとは別体のスピーカ接続検査装置に設けることを特徴とする請求項7記載のパワーアンプのスピーカ接続検査装置。
【請求項10】
前記切替手段では、パワーアンプのスピーカ接続検査終了時に、パワーアンプICへの電圧を、バッテリ電圧から昇圧電源側に切り替えることを特徴とする請求項7記載のパワーアンプのスピーカ接続検査装置。
【請求項11】
前記パワーアンプICを複数のスピーカに対応して複数設け、
前記スピーカ接続検査処理手段に備えた検査チャンネル指示手段により順にスピーカ接続検査を行うパワーアンプICを選択することを特徴とする請求項7記載のパワーアンプのスピーカ接続検査装置。
【請求項12】
前記スピーカ接続検査処理手段には検査結果を記憶する検査結果記憶手段を備え、
検査結果を外部に出力する検査結果出力手段では、前記検査結果記憶手段に記憶している検査結果を読み出して出力することを特徴とする請求項7記載のパワーアンプのスピーカ接続検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−235399(P2012−235399A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−103926(P2011−103926)
【出願日】平成23年5月9日(2011.5.9)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】