説明

パワートレイン支持装置

【課題】リヤエンジンマウントメンバ等の部品について、高強度化や高剛性化と車両衝突時の破断荷重の低減化とを同時に可能にする。
【解決手段】補強部材23は、リヤエンジンマウントメンバ20において車両衝突時にエンジン2が当たる位置からリヤエンジンマウントメンバ20の固定用孔21aの近傍にかけて配置された部材であり、固定用孔21aの近傍(25)で接合されるとともに、車両衝突時のエンジン2からの入力の方向とは反対側の部位で、かつ固定用孔21a寄りに突起部23eが形成されている。車両衝突時には、突起部23eを支点として、エンジン2からの入力を接合部位25を介して固定用孔21aの近傍に伝えて、固定用孔21aを破断させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワートレインを車体側部材に支持部材を介して支持するパワートレイン支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両衝突時に乗員にかかる加速度を低減する目的として、リヤエンジンマウントメンバー等、車体とパワートレイン(重量物)とをつなぐ部品(特にその部品のボルト固定部位)に切り欠きを設けて、車両衝突時に比較的小さい入力で破断しやすくしている。すなわち、車両衝突時におけるリヤエンジンマウントメンバ等の部品の破断荷重を低減している。
一方、パワートレインを支持するための強度、静粛性を得るために、リヤエンジンマウントメンバー等の部品における車体への取り付け部位を高強度、高剛性にする必要がある。
【0003】
図8は、そのようなリヤエンジンマウントメンバ100の構成の一例を示す。この図8に示すように、リヤエンジンマウントメンバ100は、略長方形状のフレーム形状とされており、内側にはリヤエンジンマウント101が配置されている。また、リヤエンジンマウントメンバ100には、その車幅方向において左右それぞれの部位であり、かつその裏面に補強部材102が取り付けられている。このようなリヤエンジンマウントメンバ100によりエンジンとトランスミッションとからなるパワートレインが支持されている。
【0004】
ここで、図9は、パワートレインを構成するエンジン110とリヤエンジンマウントメンバ100との位置関係を示す平面図である。パワートレインは、図示しないトランスミッション部分が図8に示すリヤエンジンマウント101に支持されており、その一方でこの図9に示すように、エンジン110がリヤエンジンマウントメンバ100に対して車両前方に位置されるようになっている。
【0005】
リヤエンジンマウントメンバ100とエンジン110との位置関係がこのようになることで、車両が前側から物体に衝突すると、エンジン110がリヤエンジンマウントメンバ100に当るようになり、ここで、リヤエンジンマウントメンバ100が車体側に強固に固定されていたとすると、その車両衝突時に乗員にかかる加速度が大きくなる。
このようなことから、図9、さらに詳しくは図10に示すように、補強部材102には、リヤエンジンマウントメンバ100の本体(フレーム)側に設けている車体側へのボルト止め固定用孔100aに対応してボルト止め固定用孔102aを設けるとともに、そのボルト止め固定用孔102aと当該補強部材102の外周の角部とを繋ぐスリット部102bが形成されている。
【0006】
ここで、図11は、車両前後方向からみたリヤエンジンマウントメンバ100の取り付け状態を示す。この図11に示すように、リヤエンジンマウントメンバ100は、補強部材102とともに、ボルト止め固定用孔100a,102aを挿通したボルト121により車体側部材120、例えばフロントサイドフレームに固定されている。
リヤエンジンマウントメンバ100を以上のような形状にすることで、車両が前側から物体に衝突して、エンジン110がリヤエンジンマウントメンバ100に当ったときに比較的小さい入力でボルト止め固定用孔102aを破断しやすくして、破断荷重の低減化を図っている。この結果として、車両衝突時に乗員にかかる加速度を抑制している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、車両衝突時に乗員にかかる加速度のさらなる抑制が望まれており、このことから、破断荷重のさらなる低減化が望まれる。また、そのような破断荷重のさらなる低減化を簡単な構造により実現できることが望ましい。
なお、車両衝突時におけるリヤエンジンマウントメンバの破断荷重低減化と、リヤエンジンマウントメンバの高強度化や高剛性化とは、相反する性格である。すなわち、リヤエンジンマウントメンバに取り付ける補強部材を大きくすれば、リヤエンジンマウントメンバの高強度化や高剛性化は可能となるが、そのことが逆にリヤエンジンマウントメンバの破断荷重の低減化を阻害してしまう場合がある。この場合、車両衝突時に乗員にかかる加速度が大きくなってしまう。このようなことから、高強度化や高剛性化と車両衝突時の破断荷重の低減化とを同時に実現することも望まれる。
本発明は、前記問題に鑑みてなされたものであり、リヤエンジンマウントメンバ等の部品について、高強度化や高剛性化と車両衝突時の破断荷重の低減化との両立を従来技術より更に最適に実現可能としたパワートレイン支持装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るパワートレイン支持装置は、パワートレインを支持すると共に、車体側部材に対して固定するために使用される固定用孔を有する支持部材を備えたパワートレイン支持装置である。
このパワートレイン支持装置は、前記支持部材に、車両衝突時に前記パワートレインが移動してきたとき、その移動により前記パワートレインから入力される入力部と、前記入力部への前記入力の一部を前記固定用孔の破断方向に変換する変換部と、を設けている。
これにより、車両衝突時にパワートレインが移動してきたとき、その移動によるパワートレインからの入力の一部で支持部材の固定用孔を破断させて、支持部材を車体側部材から落下させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、支持部材の固定用孔の破断荷重を低減して、車両衝突時に支持部材を外れ落ちやすくしている。これにより、車両衝突時に乗員にかかる加速度を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明を実施するための最良の形態(以下、実施形態という。)を図面を参照しながら詳細に説明する。
本実施形態は、本発明を適用したパワートレイン支持装置である。図1及び図2は、エンジン2とトランスミッション3とからなるパワートレイン1を支持するパワートレイン支持装置10示す。図1は車両後方から見た図であり、図2は平面図である。
パワートレイン支持装置10は支持部材であるリヤエンジンマウントメンバ20とリヤエンジンマウント11とで構成されている。リヤエンジンマウントメンバ20は、車体側部材として車体の左右両側に配置されているフロントサイドフレーム4に対して架け渡されており、ボルト5でそのフロントサイドフレーム4に固定されている。
【0011】
リヤエンジンマウントメンバ20は、図2に示すようにフレーム部21が略長方形状に形成されており、図1に示すようにそのフレーム部21の内側部位22が下方向に膨出形成されて凹形状になっている。すなわち、リヤエンジンマウントメンバ20は、全体として、フレーム部21を枠として略トレイ形状に形成されている。また、フレーム部21の外周部には、下方向(図2において図面奥側の方向)に突出した折り曲げ部が形成されている。このリヤエンジンマウントメンバ20には、固定用孔破断用部材である補強部材(補強板)23が取り付けられており、この補強部材23を含めたリヤエンジンマウントメンバ20については、後でさらに詳述する。
リヤエンジンマウント11はこのリヤエンジンマウントメンバ20に取り付けられている。これにより、パワートレイン1は、トランスミッション3側がリヤエンジンマウント11を介してリヤエンジンマウントメンバ20に取り付けられている。
【0012】
パワートレイン1において、図2に示すようにトランスミッション3が車両後方に位置されており、また、車両前方に位置されたエンジン2の一部が図1に示すように上下方向でトランスミッション3から下側にはみ出している。すなわち、エンジン2の一部が、図3に示すようにリヤエンジンマウントメンバ20と上下方向で同一平面内にあり、かつ当該リヤエンジンマウントメンバ20に対して車両前方に位置されている。このようなパワートレイン1の構造により、後方で突出した部位をなすトランスミッション3がリヤエンジンマウント11を介してリヤエンジンマウントメンバ20に支持されている。
なお、図3に示すリヤエンジンマウントメンバ20の形状は、図1及び図2に示したリヤエンジンマウントメンバ20を簡略化したものとして示す。
【0013】
次にリヤエンジンマウントメンバ20の構造について詳述する。
リヤエンジンマウントメンバ20は、前述したように略長方形状のフレーム部21によって形成されている。そして、フレーム部21において車幅方向で左右それぞれの部位(以下、フレーム側方部位という。)に、フロントサイドフレーム4へのボルト止め固定用孔21aが車両前後方向に並んで2個ずつ形成されている。
【0014】
また、リヤエンジンマウントメンバ20のフレーム部21でかつその裏面に、車幅方向で右側のフレーム側方部位から車両前方側に位置される部位(以下、フレーム前方部位という。)にかけて補強部材23が取り付けられている。同様に、リヤエンジンマウントメンバ20のフレーム部21でかつその裏面に、車幅方向で左側のフレーム側方部位からフレーム前方部位にかけて補強部材23が取り付けられている。
【0015】
補強部材23は、板部材であり、取り付けられているフレーム部21に沿った形状、すなわちフレーム部21のフレーム側方部位に沿う部位(以下、固定部位という。)23aとフレーム部21のフレーム前方部位に沿う部位(以下、レバー部位という。)23bとで略L字形状をなしている。
固定部位23aには、フレーム部21に形成されているボルト止め固定用孔21aに対応して、同様にボルト止め固定用孔23cが車両前後方向に並んで2個ずつ形成されている。また、補強部材23には、車両前方側の外周の角部を切り欠くようにして、略車両前後方向に沿うように第2切り欠き部としてのスリット部23dが形成されており、車両前方側に位置されているボルト止め固定用孔23cがそのスリット部23dと繋がっている。
【0016】
また、補強部材23にスリット部23dを設けたことに対応して、リヤエンジンマウントメンバ20のフレーム部21には、その外周の角部であり、当該フレーム部21のボルト止め固定用孔21aの近傍に第1切り欠き部としての切り欠き部21bが形成されている。切り欠き部21bは、凹形状、詳しくは円弧形状をなし、その円弧形状の底部がボルト止め固定用孔21aに向くように設けられており、詳しくはその円弧形状の底部がその円弧形状の他の部位よりもボルト止め固定用孔23cに近くになるように形成されている。また、切り欠き部21bは、スリット部23dとの関係では、当該スリット部23dの車両前方側の外周に位置されている。
【0017】
一方、レバー部位23bは、少なくともその端部が、図2及び図3に示すように、車幅方向においてエンジン2の側面部よりも内側に位置されている。このレバー部位23bには、その根元(固定部位23a側)であり、車両後方側の外周面に突起部23eが形成されている。
突起部23eは、レバー部位23bの先端との距離よりも、ボルト止め固定用孔21aとの距離の方が短くなるようにレバー部位23bに設けられている。また、前述したようにリヤエンジンマウントメンバ20のフレーム部21の内側部位22が下方向に膨出形成されて凹形状になっているので、突起部23eの先端は、その凹形状の外周面に接触するように又は当該外周面近傍に位置されるようになっている。
【0018】
このような形状をなす補強部材23は、溶接によりフレーム部21に接合されている。具体的には、図3に示すように、レバー部位23bを車幅方向で2箇所(部位24)、溶接し、さらにスリット部23dを挟むようにして2箇所(部位25)、溶接している。ここで、ボルト止め固定用孔21a、スリット部23d、切り欠き部21b及び突起部23eとの関係では、一の接合部位25は、ボルト止め固定用孔21aに対して車両前方側で、かつ車幅方向にてボルト止め固定用孔21aや切り欠き部21bに対して内側に位置されており、さらに、スリット部23d又は切り欠き部21bと突起部23eとの間に位置されている。ここで、接合部位25との位置とは、図12に斜線部の範囲のことを指し、この範囲であればどこでもよい。
【0019】
また、図4は、車両側方からみたボルト止め固定用孔21aの位置での断面図であり、リヤエンジンマウントメンバ20の取り付け状態を示す。この図4に示すように、リヤエンジンマウントメンバ20は、フレーム部21及び補強部材23に形成したボルト止め固定用孔21a,23cを挿通したボルト5によりフロントサイドフレーム4に固定されている。
このようにフレーム部21の裏面に補強部材23が取り付けられることで、リヤエンジンマウントメンバ20は、補強されて高強度、高剛性になっている。
【0020】
次に車両が前側から物体に衝突したときのリヤエンジンマウントメンバ20の変形過程を図5及び図6を用いて説明する。
図5は、特にボルト止め固定用孔付近の形状に関し、車両が物体に衝突する前のリヤエンジンマウントメンバ20の形状を示し、図6は、車両が物体に衝突した際の、変形後のリヤエンジンマウントメンバ20の形状を示す。
【0021】
車両が前側から物体に衝突すると、その衝突によりパワートレイン1が車両後方に移動するので、これにより、パワートレイン1、特にエンジン2が上下方向で同じ高さにあるリヤエンジンマウントメンバ20における車両前方側の外周面の所定部位21cに当たる。ここで、所定部位21cは、車両衝突時にパワートレイン1が移動してきたとき、その移動により1パワートレイン1から入力される入力部を構成している。すなわち、所定部位21cは、パワートレイン1の一部と上下方向高さ、及び車幅方向にて左右方向位置で一致している。
【0022】
これにより、フレーム部21において所定部位21cに対応してレバー部位23b(特にその端部)の端部が位置されていることから、図5中の矢印Aとして示すように、当該レバー部位23bが車両後方に押される。
このとき、補強部材23の突起部23eが当該リヤエンジンマウントメンバ20の前記凹形状の外周面に接触することで、その接触点を中心にして、レバー部位23bの車両後方への入力に起因するモーメントが発生する。
【0023】
この結果、フレーム部21と補強部材23とが前記一の接合部位25で接合されているから、パワートレイン1からの入力の一部としてレバー部位23bに入力された力が補強部材23に設けたスリット部23dを押し広げる力として作用するようになる。
これにより、レバー部位23bへの入力がある大きさになると、図6に示すように、スリット部23dが広がり、これによりそのスリット部23dを境界にして補強部材23のレバー部位23bが車両後方に折れ曲がる。ここで、補強部材23にスリット部23dを設けていることで、車両衝突時のレバー部位23bへの入力が比較的小さい場合でも、補強部材23のレバー部位23bが容易に折れ曲がる。
【0024】
これにより、フレーム部21が、そのフレーム前方部位においてレバー部位23bと溶接されて接合されていることから、このような補強部材23の変形に伴って変形する。特にスリット部23dが広がること、さらにそのスリット部23dの近傍とフレーム部21のボルト止め固定用孔21aの近傍、具体的には突起部23eとボルト止め固定用孔21aとの間が接合されていること、またさらに切り欠き部21bが設けられていることで、切り欠き部21bとフレーム部21のボルト止め固定用孔21aとの間の部位が大きく破断する。これにより、リヤエンジンマウントメンバ20がリヤエンジンマウントメンバ20とともにフロントサイドフレーム4から外れ落ちる。
ここで、切り欠き部21bは、応力集中により、前記破断を促進する効果を奏するものであるが、くさび形等の応力集中係数が高い形状とすると、通常走行時の振動入力で破断する可能性があるため、通常走行時に破断しない応力集中係数を設定できる円形形状とした。
【0025】
次に本実施形態における効果を説明する。
前述したように、リヤエンジンマウントメンバ20に補強部材23を設けつつも、その補強部材23にレバー部位23b及びスリット部23dを設けたことで、車両衝突時に比較的小さい入力でも、フレーム部21のボルト止め固定用孔21aが破断しやすくなり、これによりリヤエンジンマウントメンバ20がフロントサイドフレーム4から外れ落ちやすくなる。この結果、車両衝突時の乗員にかかる加速度を低減することができる。
また、レバー部位23bを設けることで補強部材23全体が大きくなるので、リヤエンジンマウントメンバ20の強度や剛性を高めつつも、リヤエンジンマウントメンバ20をフロントサイドフレーム4から外れ落ちやすくすることができる。
【0026】
また、従来でも、車両衝突時にボルトが抜けやすくなるように、ボルト止め固定用孔にスリット部を設けたものはある。これに対して、本発明では、衝突時にリヤエンジンマウントメンバ20においてパワートレイン1のエンジン2が当る部位にレバー部位23bを設けてその入力をスリット部23dを広げる力として有効に利用できるようにしているので、比較的小さい入力でスリット部23dを広げることを可能にしている。言い換えれば、リヤエンジンマウントメンバ20をフロントサイドフレーム4から容易に外れ落ちるようにすることを、スリット部23dの幅を従来のスリット部の幅よりも狭くしても実現することができる。よって、スリット部23dの幅を狭くすることができるとすると、補強部材23の面積をその分広くすることができ、これにより、リヤエンジンマウントメンバ20の強度や剛性を高くすることができる。また、スリット部23dの幅を狭くすることで、フロントサイドフレーム4へのボルト固定時のボルト止め固定用孔の強度も確保できる。
【0027】
また、前述したように、突起部23eをレバー部位23bの先端との距離よりも、ボルト止め固定用孔21aとの距離の方が短くなるようにレバー部位23bに設けている。これにより、パワートレイン1からの入力の一部としてレバー部位23bに入力された力を補強部材23に設けたスリット部23dを押し広げる力としてより効率よく作用させることができる。
【0028】
また、前述したように、スリット部23dの車両前方側の外周に位置されるようにフレーム部21に切り欠き部21bを設けている。これにより、車両が前側から物体に衝突したときには、切り欠き部21bとフレーム部21のボルト止め固定用孔21aとの間が破断し、その破断した部位をボルト5が通過できるようになるので、リヤエンジンマウントメンバ20をフロントサイドフレーム4からより外れ落ちやすくすることができる。
【0029】
以上、本発明の実施形態を説明した。しかし、本発明は、前述の実施形態として実現されることに限定されるものではない。
すなわち、前述の実施形態では、リヤエンジンマウントメンバ20及び補強部材23の形状を具体的に説明した。しかし、これに限定されるものではない。
例えば、図3に示すように、補強部材23をリヤエンジンマウントメンバ20の左右いずれか一方に設けるようにしてもよい。
【0030】
また、例えば、リヤエンジンマウントメンバ20の形状を図7に示すようにすることができる。前述の実施形態では、補強部材23が固定部位23aとレバー部位23bとから構成されている場合を説明した。しかし、この図7に示すように、補強部材23をレバー部位23bのみによって構成してもよい。この場合、補強部材23(レバー部位23b)は、フレーム部21のフレーム前方部位に、車幅方向で偏倚して配置されており、車幅方向で2箇所(部位24)、溶接される。この2箇所の溶接点のうちの1箇所の溶接点は、フレーム部21のボルト止め固定用孔21aの近傍に位置されている。そして、補強部材23には、前述の実施形態と同様に突起部23eが形成されている。また、前述の実施形態と同様に、リヤエンジンマウントメンバ20のフレーム部21の外周の角部に切り欠き部21bが形成されている。
【0031】
リヤエンジンマウントメンバ20をこのような形状にすることで、車両衝突時には、リヤエンジンマウントメンバ20が前述の実施形態のリヤエンジンマウントメンバ20と同様な変形をすることで、車両衝突時に比較的小さい入力でリヤエンジンマウントメンバ20がフロントサイドフレーム4から外れ落ちるようになり、車両衝突時の乗員にかかる加速度を低減することができる。
【0032】
また、前述の実施形態では、本発明をリヤエンジンマウントメンバに適用した場合を説明した。しかし、これに限定されるものではない。すなわち、車両の他の構成部位、例えばクロスメンバにも本発明を適用できる。
なお、前述の実施形態の説明において、補強部材23、補強部材23に設けた突起部23e及びフレーム部21と補強部材23との前記一の接合部位25は、前記入力部へのパワートレイン1からの入力の一部をボルト止め固定用孔21aの破断方向に変換する変換部を構成している。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施形態のパワートレイン支持装置を示す正面図である。
【図2】前記パワートレイン支持装置を示す平面図である。
【図3】エンジンと前記パワートレイン支持装置のリヤエンジンマウントメンバとの位置関係の説明に使用した図である。
【図4】車両側方からみたリヤエンジンマウントメンバの取り付け状態を示す図である。
【図5】車両衝突時のリヤエンジンマウントメンバの変形過程の説明に使用した図であり、車両衝突前のリヤエンジンマウントメンバの状態を示す図である。
【図6】車両衝突時のリヤエンジンマウントメンバの変形過程の説明に使用した図であり、車両衝突後のリヤエンジンマウントメンバの状態を示す図である。
【図7】他の形状のリヤエンジンマウントメンバを示す平面図である。
【図8】従来のパワートレイン支持装置の構成を示す斜視図である。
【図9】従来のパワートレイン支持装置のリヤエンジンマウントメンバとエンジンとの位置関係の説明に使用した図である。
【図10】従来のリヤエンジンマウントメンバの要部を示す平面図である。
【図11】車両前後方向からみた従来のリヤエンジンマウントメンバの取り付け状態を示す図である。
【図12】フレーム部と補強部材23(レバー部位23b)との接合部位の位置の説明に使用した図である。
【符号の説明】
【0034】
1 パワートレイン
2 エンジン
3 トランスミッション
4 フロントサイドフレーム(車体側部材)
5 ボルト
10 パワートレイン支持装置
11 リヤエンジンマウント
20 リヤエンジンマウントメンバ
21 フレーム部
21a ボルト止め固定用孔
21b 切り欠き部(第1切り欠き部)
23 補強部材
23a 固定部位
23b レバー部位
23c ボルト止め固定用孔
23d スリット部(第2切り欠き部)
23e 突起部
24,25 溶接部位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワートレインを支持すると共に、車体側部材に対して固定するために使用される固定用孔を有する支持部材を備えたパワートレイン支持装置において、
前記支持部材に、車両衝突時に前記パワートレインが移動してきたとき、その移動により前記パワートレインから入力される入力部と、前記入力部への前記入力の一部を前記固定用孔の破断方向に変換する変換部と、を設けたことを特徴とするパワートレイン支持装置。
【請求項2】
前記入力部は、前記パワートレインの一部と上下方向高さ、及び車幅方向にて左右方向位置で一致していることを特徴とする請求項1記載のパワートレイン支持装置。
【請求項3】
前記変換部は、前記入力部から前記固定用孔にかけて配置された固定用孔破断用部材を備え、前記固定用孔破断用部材は、前記固定用孔破断部材の車両後方側の外周部に、車両衝突時に前記支持部材に接触する突起部を設けるとともに、前記固定用孔に対して車両前方側で、かつ車幅方向にて前記固定用孔に対して内側の部位が前記支持部材に接合されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のパワートレイン支持装置。
【請求項4】
前記固定用孔破断用部材は、前記支持部材の強度を補強する補強部材であることを特徴とする請求項3記載のパワートレイン支持装置。
【請求項5】
前記突起部は、車両衝突時に前記パワートレインの一部が当たる位置との距離よりも、前記固定用孔との距離の方が短くなるように前記固定用孔破断用部材に設けられていることを特徴とする請求項3又は4に記載のパワートレイン支持装置。
【請求項6】
前記支持部材の外周面には、前記固定用孔に対して車両前方側で、かつ車幅方向にて前記固定用孔破断用部材と前記支持部材との接合部位に対して外側に位置されるように第1切り欠き部が形成されていることを特徴とする請求項3乃至5のいずれか一に記載のパワートレイン支持装置。
【請求項7】
前記固定用孔破断用部材は、前記支持部材側の固定用孔とともに前記車体側部材に固定されるための固定用孔と、当該固定用孔と車両前方側の外周面とを繋ぐ第2切り欠き部とが形成されていることを特徴とする請求項3乃至6のいずれか一に記載のパワートレイン支持装置。
【請求項8】
前記第2切り欠き部は、車両前後方向に沿うように形成されていること特徴とする請求項7記載のパワートレイン支持装置。
【請求項9】
前記第1切り欠き部は、前記第2切り欠き部の車両前方側で外周の位置に配置されていることを特徴とする請求項7又は8に記載のパワートレイン支持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−51877(P2006−51877A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−234307(P2004−234307)
【出願日】平成16年8月11日(2004.8.11)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】