説明

パーキングポールブランク及びその製造方法

【課題】簡素な金型によって、材料歩留まりの高いパーキングポールブランクの製造方法と、該パーキングポールブランクの製造方法によって製造されたパーキングポールブランクを提供する。
【解決手段】パーキングポールブランクの製造方法は、一定厚さT1で一定高さH1の平角長尺材11を形成する引き抜き工程または押し出し工程あるいは圧延工程と、平角長尺材11を一定幅W1に切断して平角短尺材12を形成する切断工程と、平角短尺材12を一定厚さT1および一定幅W1のキャビティ111を具備するダイス110内に配置して、谷状に陥入した上パンチ面121を有する上パンチ120と、山状に突出した下パンチ面131を有する下パンチ130とによって、高さ方向を曲げて挟圧する鍛造工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパーキングポールブランク及びその製造方法、特に、冷間鍛造によって製造されたパーキングポールブランク、およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パーキングポールは、自動車の車輪駆動系に設置されたパーキングギアに嵌合して、自動車の移動を不能にするものであって、パーキングギアに着脱自在に嵌合する嵌合爪と、回動支点となる貫通穴と、回動させるための力が作用する駆動部と、を有している。
そして、貫通穴と駆動部との間に嵌合爪が配置された直線状のもの(以下、「Aタイプ」と称す場合がある)や、貫通穴を挟んで両側に駆動部と嵌合爪とが配置された直線状のもの(以下、「Bタイプ」と称す場合がある)や、貫通穴と駆動部との間に嵌合爪が配置され、へ字状に屈曲したもの(以下、「Cタイプ」と称す場合がある)や、貫通穴と駆動部と嵌合爪とがそれぞれ角部に配置された三角形状のもの(以下、「Dタイプ」と称す場合がある)がある。
【0003】
パーキングギアは保安部品であることから、強度面や精度面において高い信頼性が要求される。このため、従来、素形材を全面切削加工し、多くの加工工数をかけて仕上げる方法や、ファインブランキング機を用いて板材料を所要の輪郭形状に精密に打ち抜いた後、抜きダレを切削除去する方法によって製造されていた。
しかしながら、加工工数が多いこと、生産性が低いこと、あるいは材料歩留まりが低いという問題があった。また、板材料を打ち抜いて製造した場合には、材料組織の繊維線(以下、「メタルフロー」と称す)が切断され、嵌合爪の疲労強度が低下するという問題があった。
そこで、鍛造(熱間、温間、冷間)プレート状素材または鋳造プレート状素材を、成形部が形成された成形ダイスに挿入し、成形部を往復通過させてプレス加工することによって高い寸法精度のパーキングポールブランクの製造方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−322164号公報(第4−6頁、第4図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1には、鍛造プレート状素材または鋳造プレート状素材の製造方法が開示されていない。このため、鍛造プレート状素材を公知の熱間鍛造技術、例えば、丸棒を切断したタブレットを複数回の閉塞鍛造および複数回の焼鈍によって製造したのでは、鍛造バリの発生によって材料歩留が悪化したり、結晶粒が粗大化したり、さらに、ファイバーフローが切断されたりするという問題があった。
また、鍛造プレート状素材を、前記成形ダイスに挿入可能な形状に冷間鍛造または温間鍛造によって得る方法は困難であって、具体的な方法は知られていない。
【0006】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであって、簡素な金型を用いた簡単な工程によって、材料歩留まりの高いパーキングポールブランクの製造方法と、該パーキングポールブランクの製造方法によって製造されたパーキングポールブランクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明に係るパーキングポールブランクの製造方法は、一定厚さおよび一定高さの断面矩形状である平角長尺材を形成する引き抜き工程または押し出し工程あるいは圧延工程と、
前記平角長尺材を一定幅に切断して平角短尺材を形成する切断工程と、
前記平角短尺材を、前記一定厚さおよび前記一定幅のキャビティを具備するダイス内に配置して、端面が幅方向の略中央部においてなめらかに突出している一方のパンチと、端面が幅方向の略中央部においてなめらかに陥入している他方のパンチとによって曲げて挟圧する鍛造工程と、
を有し、
前記一方のパンチの突出量が前記他方のパンチの陥入量よりも小さいことにより、略中央部の高さが前記一定高さよりも増加した、前記一定厚さで前記一定幅を有するパーキングポールブランクを製造することを特徴とする。
【0008】
(2)そして、前記(2)において、前記鍛造工程に続いて、略部分的な変形をさせる部分鍛造工程を有することを特徴とする。
【0009】
(3)また、一定厚さおよび一定高さの断面矩形状である平角長尺材を形成する引き抜き工程または押し出し工程あるいは圧延工程と、
前記平角長尺材を一定幅に切断して平角短尺材を形成する切断工程と、
前記平角短尺材を、前記一定厚さおよび前記一定幅のキャビティを具備するダイス内に配置して、端面が略平面状の一方の第1パンチと、端面が幅方向の略中央部においてなめらかに陥入している他方の第1パンチとによって曲げて挟圧する第1鍛造工程と、
前記第1鍛造工程において挟圧された前記平角短尺材を、前記一定厚さおよび前記一定幅のキャビティを具備するダイス内に配置して、端面が幅方向の略中央部においてなめらかに突出している一方の第2パンチと、端面が幅方向の略中央部においてなめらかに陥入している他方の第2パンチとによって曲げて挟圧する第2鍛造工程と、
を有し、
前記一方の第2パンチの突出量が前記他方の第2パンチの陥入量よりも小さいことにより、略中央部の高さが前記一定高さよりも増加した、前記一定厚さで前記一定幅を有するパーキングポールブランクを製造することを特徴とする。
【0010】
(4)また、一定厚さおよび一定高さの断面矩形状である平角長尺材を形成する引き抜き工程または押し出し工程あるいは圧延工程と、
前記平角長尺材を一定幅に切断して平角短尺材を形成する切断工程と、
前記平角短尺材を、前記一定厚さおよび前記一定幅のキャビティを具備するダイス内に配置して、端面が幅方向の略中央部においてなめらかに突出している一方の第1パンチと、端面が幅方向の略中央部においてなめらかに陥入している他方の第1パンチとによって曲げて挟圧する第1鍛造工程と、
該第1鍛造工程によって挟圧された前記平角短尺材を、前記一定厚さおよび前記一定幅のキャビティを具備するダイス内に配置して、端面が幅方向の略中央部においてなめらかに突出している一方の第2パンチと、端面が幅方向の略中央部においてなめらかに陥入している他方の第2パンチとによって曲げて挟圧する第2鍛造工程と、
を有し、
前記一方の第1パンチの突出量が前記他方の第2パンチの陥入量よりも小さく、前記他方の第2パンチの突出量が前記他方の第2パンチの陥入量よりも小さく、前記一方の第2パンチの突出量が前記一方の第1パンチの突出量よりも大きく、前記他方の第2パンチの陥入量が前記他方の第1パンチの陥入量よりも大きいことにより、
略中央部の高さが前記一定高さよりも増加した、前記一定厚さで前記一定幅を有するパーキングポールブランクを製造することを特徴とする。
【0011】
(5)そして、前記(3)又は(4)において、前記第2鍛造工程に続いて、略部分的な変形をさせる部分鍛造工程を有することを特徴とする。
【0012】
(6)また、一定厚さおよび一定高さの断面矩形状である平角長尺材を形成する引き抜き工程または押し出し工程あるいは圧延工程と、
前記平角長尺材を一定幅に切断して平角短尺材を形成する切断工程と、
前記平角短尺材を、前記一定厚さおよび前記一定幅のキャビティを具備するダイス内に配置して、端面が幅方向の略中央部においてなめらかに陥入している一方のパンチと、端面が幅方向の略中央部においてなめらかに陥入している他方のパンチとによって曲げて挟圧する鍛造工程と、
を有し、
高さが幅方向で不均一で、前記一定厚さおよび前記一定幅を有する略菱形状のパーキングポールブランクを製造することを特徴とする。
【0013】
(7)また、一定厚さおよび一定高さの断面矩形状である平角長尺材を形成する引き抜き工程または押し出し工程あるいは圧延工程と、
前記平角長尺材を一定幅に切断して平角短尺材を形成する切断工程と、
前記平角短尺材を、前記一定厚さおよび前記一定幅のキャビティを具備するダイス内に配置して、端面が幅方向の略中央部においてなめらかに陥入している一方の第1パンチと、端面が幅方向の略中央部においてなめらかに陥入している他方の第1パンチとによって曲げて挟圧する第1鍛造工程と、
該第1鍛造工程によって挟圧された前記平角短尺材を、前記一定厚さおよび前記一定幅のキャビティを具備するダイス内に配置して、端面が幅方向の略中央部においてなめらかに陥入している一方の第2パンチと、端面が幅方向の略中央部においてなめらかに陥入している他方の第2パンチとによって曲げて挟圧する第2鍛造工程と、
を有し、
前記一方の第1パンチの陥入量が前記一方の第2パンチの陥入量よりも小さく、前記他方の第1パンチの陥入量が前記他方の第2パンチの陥入量よりも小さいことにより、
略中央部の高さが前記一定高さよりも増加した、前記一定厚さで前記一定幅を有するパーキングポールブランクを製造することを特徴とする。
【0014】
(8)さらに、最後に、外郭から所定距離離れた範囲を前記一定厚さよりも薄くする平押し鍛造工程を有し、
前記範囲を除く範囲が前記一定厚さであることを特徴とする。
【0015】
(9)一方、本発明に係るパーキングポールブランクは、前記(1)乃至(6)の何れかに記載のパーキングポールブランクの製造方法によって製造されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
(i)本発明に係るパーキングポールブランク(以下、単に「ブランク」と称す場合がある)の製造方法は、一定厚さで一定高さの平角長尺材を形成する引き抜き工程または押し出し工程あるいは圧延工程と、平角長尺材を一定幅に切断して平角短尺材を形成する切断工程と、平角短尺材を一定厚さおよび一定幅のキャビティを具備するダイス内に配置して、高さ方向を曲げて挟圧する鍛造工程と、を有するから、簡素な金型を用いた簡単な工程であるため、容易に高精度のブランクを製造することができる。
すなわち、鍛造工程が、厚さ方向に変形させない「高さ方向と幅方向とを有する面」内の二次元変形であって、曲げ加工と鍛造加工とによって所定のブランクを得るものである。
そうすると、鍛造荷重が低く抑えられ、鍛造工程を実行する鍛造装置(プレス機やフォーマー等)の制約が少なくなるため、既存の設備によって広く当該製造を実行することができる。また、金型の負担が減少するから、金型寿命が延長し、金型コストが抑えられる。
【0017】
また、パンチが鉛直方向に昇降するとした場合、金型を構成するダイスは平面視(水平面に平行な断面に同じ)で矩形状のキャビティを具備するだけであるから、金型を構成するパンチの鍛造面は厚さ方向に一定な側面視(水平面の方向に同じ)で二次元形状となり、製造が容易(例えば、ワイヤカットによって製造可能)なため、金型コストを安価にすることができる。
このとき、平角長尺材の一定厚さを最終製品であるパーキングポールの厚さと同じにしたり、パーキングポールブランクの外郭形状をパーキングポールの外郭形状に近づけたりすることができるから、材料歩留まりが高くなると共に、最終加工(例えば、厚さ精度を保証するための平押し工程や機械加工工程等)が軽度あるいは省略可能になり、製造コストがさらに廉価になる。
特に、鍛造素材を、引き抜き工程または押し出し工程あるいは圧延工程によって形成することによって、高い寸法精度(一定厚さおよび一定高さ)が得られるから、これに伴って、前記効果が助長される。なお、圧延工程における圧延方法は限定するものではなく、例えば、カリバー圧延やユニバーサル圧延等である。
【0018】
なお、厳密には、平角短尺材はダイス内に配置されるものであるから、キャビティは平角短尺材の押し込みを容易にするため、上面近くに呼び込みのための面取りやテーパーが設けられたり、平角短尺材の一定厚さおよび一定幅よりも僅かに大きい場合がある。また、パーキングポールブランクは鍛造後にダイスから押し出された際、膨張するから、ダイスのキャビティの各辺は、パーキングポールブランクの厚さおよび幅よりも僅かに小さい場合がある。
なお、鍛造とは、一般的には自由鍛造、型鍛造、据え込み鍛造、鍛伸、特殊鍛造、複合鍛造などに分類されるが、本発明の鍛造工程は、曲げ加工を含む二次元変形の型鍛造をするところに特徴があり、特に断らない限り、鍛造工程はこのような工法を含むものである。
また、説明の便宜上、パンチが鉛直方向に昇降するとしているが、本発明はパンチの移動方向を限定するものではない。例えば、パンチが水平方向に移動してもよい。このとき、ダイスは側面視(水平面の方向に同じ)において矩形状のキャビティを具備し、パンチの鍛造面は平面視(水平面に平行な断面に同じ)において二次元形状を呈することになる。
【0019】
(ii)また、鍛造工程に続いて、略部分的な変形をさせる部分鍛造工程を有するから、鍛造工程における張り出し部を形成するための加工度が押さえられ、鍛造荷重が低くなる。よって、鍛造工程を実行するプレス機の汎用度が高まると共に、金型の寿命が延長され、製造コストが安価になる。また、鍛造工程における表面き裂の発生が押さえられるから、パーキングポールブランクの外郭形状の自由度が増す(様々な形状が可能になる)。
【0020】
(iii)また、第1鍛造工程と第2鍛造工程とを有するから、1工程当たりの加工度が低減し、鍛造荷重が低くなる。よって、それぞれの鍛造工程を実行するプレス機の汎用度が高まると共に、金型の寿命が延長され、製造コストが安価になる。
【0021】
(iv)また、第2鍛造工程に続いて、略部分的な変形をさせる部分鍛造工程を有するから、第2鍛造工程における張り出し部を形成するための加工度が押さえられ、鍛造荷重が低くなる。よって、第2鍛造工程を実行するプレス機の汎用度が高まると共に、金型の寿命が延長され、製造コストが安価になる。また、鍛造工程における表面き裂の発生が押さえられるから、パーキングポールブランクの外郭形状の自由度が増す(様々な形状が可能になる)。
【0022】
(v)さらに、最後に、平押し鍛造工程を有し、平押しされた範囲の材料を周囲に移動させるから、外郭形状の形成が容易になり、その分、平押し鍛造工程前の工程における負担が低減される。よって、製造可能なパーキングポールブランクの外郭形状の自由度が増す(様々な形状が可能になる)と共に、製造コストが安価になる。
【0023】
(vi)さらに、本発明に係るパーキングポールブランクは、前記(i)〜(v)に記載した効果を奏する製造方法によって製造されるものであるから、製造コストが安価になる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態1に係るパーキングポールブランクの製造方法を説明するフローチャート。
【図2】スケジュール1を説明する被鍛造体の形状を模式的に示す斜視図。
【図3】スケジュール1を説明する鍛造工程の一部を模式的に示す断面図。
【図4】スケジュール2を説明する鍛造工程の一部を模式的に示す断面図。
【図5】スケジュール3を説明する被鍛造体の形状を模式的に示す斜視図。
【図6】スケジュール3を説明する鍛造工程の一部を模式的に示す断面図。
【図7】スケジュール4を説明する被鍛造体の形状を模式的に示す斜視図。
【図8】スケジュール9を説明する鍛造工程の一部を模式的に示す断面図。
【図9】スケジュール9を説明する鍛造工程の一部を模式的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[実施の形態1]
図1〜図3は本発明の実施の形態1に係るパーキングポールブランクの製造方法を説明するものであって、図1は製造工程を示すフローチャート、図2〜図9は本発明における製造方法のスケジュールをそれぞれ説明する被鍛造体の形状を模式的に示す斜視図および鍛造工程の一部を模式的に示す断面図である。
【0026】
(製造工程)
図1において、パーキングポールブランクの製造方法(以下、単に「製造方法」と称す)は以下である。なお、各工程を「S」で表示する。
一定厚さおよび一定高さの断面矩形状である平角長尺材1を形成する引き抜き工程(S1の1)または押し出し工程(S1の2)と、
平角長尺材1を一定幅に切断して平角短尺材2を形成する切断工程(S2)と、
平角短尺材2を、一方の辺が一定厚さで、他方の辺が一定幅であるキャビティを具備するダイス内に配置して、高さ方向を曲げて挟圧する鍛造工程(S3)とを有している。
【0027】
なお、切断工程における切断要領は限定するものではなく、例えば、フォーマーによる剪断、あるいは機械的な鋸断等であってもよい。また、切断工程に続く鍛造工程のため、平角短尺材2の外面には公知の潤滑膜が設けられるから、かかる潤滑膜を設ける工程は切断工程(S2)に含まれている。
鍛造工程は、幅方向の一方(一部)を圧下して、幅方向の他方に材料を流すものであって、幅方向の一部に一定高さよりも高い範囲を有する(幅方向の一部に一定高さよりも低い範囲を有するのに同じ)、一定厚さで一定幅のブランク3を製造するものである。
【0028】
さらに、ブランク3の外郭形状をネットシエイプする(最終製品であるパーキングポールの外郭形状に近づける)ため、変形量を増すための第2鍛造工程を要するか否か判断し、必要と判断した場合には、第2鍛造工程を実行する(S4)。このとき、先に実行した鍛造工程を第1鍛造工程と読み替える。そして、第2鍛造工程は、幅方向の一方(一部)をさらに圧下して、幅方向の他方に材料を流すものであって、ブランク3の幅方向の最大高さよりも高い範囲を有する、一定厚さで一定幅のブランク4を製造する。
なお、鍛造工程(S3)を実行する鍛造機械は限定するものではなく、例えば、フォーマー、機械式プレス機、油圧式プレス機あるいはサーボプレス機等の何れであってもよい。
【0029】
そして、第2鍛造工程が不要であると判断した場合、あるいは第2鍛造工程を実行した後、形状を整える(矯正する)ための部分鍛造工程を要するか否か判断し、必要と判断した場合には、部分鍛造工程を実行する(S5)。部分鍛造工程は、特に、局部的に変形させるものであって、部分鍛造工程を実行することによって、鍛造工程あるいは第2鍛造工程における局部の変形量を減少させるものである。したがって、例えば、局部的な尖った突出部を有するブランク5を製造することができる。
【0030】
そして、部分鍛造工程が不要であると判断した場合、あるいは部分鍛造工程を実行した後、さらに平押し鍛造工程を要するか否か判断し、必要と判断した場合には、平押し鍛造工程を実行する(S6)。平押し鍛造工程は、外郭から所定距離離れた範囲を一定厚さよりも薄くするものであって、薄くなった範囲の材料をその周囲に移動して、外郭をさらに外側に張り出させるものである。したがって、例えば、全体は一定厚さであって、外郭から離れた部分に凹みが形成されたブランク6を製造することができる。
なお、本発明はそれぞれの鍛造工程を密閉鍛造(完全閉塞鍛造)に限定するものではなく、被鍛造材の一部が上パンチまたは下パンチの一部に当接しなくてもよい。このとき、当接しないことによって鍛造荷重の急激な上昇が防止される。
【0031】
したがって、本発明における製造方法100は、以下のスケジュ−ルを有している。
スケジュール1:S1+S2+S3
スケジュール2:S1+S2+S3+S4
スケジュール3:S1+S2+S3+S5
スケジュール4:S1+S2+S3+S6
スケジュール5:S1+S2+S3+S4+S5
スケジュール6:S1+S2+S3+S4+S6
スケジュール7:S1+S2+S3+S5+S6
スケジュール8:S1+S2+S3+S4+S5+S6
なお、以下の説明の便宜上、スケジュールj(j=1〜8)によって形成された平角長尺材1、平角短尺材2およびブランクk(k=3〜6)については、部材の符号の十の位を「j(j=1〜8)」として、スケジュールj(j=1〜8)に使用する金型類(ダイス、ダイスサポート等)については、部材の符号の百の位を「j(j=1〜8)」として、それぞれ共通する内容については一部の説明を省略する。
【0032】
(スケジュール1)
図2および図3は本発明における製造方法のスケジュール1を説明するものであって、図2は被鍛造体の形状を模式的に示す斜視図、図3は鍛造工程の一部を模式的に示す断面図である。
図2の(c)は、スケジュール1の鍛造工程(S3)において製造されるブランク13(Cタイプ)の斜視図であって、ブランク13は、一定の厚さT1で幅W1を有し、側面13Aと側面13Bとは平行で、斜面13Uが上方に突出した山状を呈している。また、底面13Lは中央部が上方に陥入した谷状で、幅方向の左側が略円弧状に下方に突出している。
そして、斜面13Uの突出して頂点13Cと、底面13Lの陥入した最奥点(底)13Dとの、側面13Aに平行な距離を、中央高さH13とする。
図2の(a)において、引き抜き工程(S1の1)において形成された平角長尺材11は断面矩形状であって、ブランク13と同じ厚さT1で、ブランク13の中央高さH13よりも小さい高さの高さH1である。
図2の(b)は、平角長尺材11がブランク13と同じ幅W1に切断され、直方体である平角短尺材12が形成されている。なお、後記するダイスへの設置(押し込み)を容易にするため、角部に面取りを施してもよい。また、切断工程(2)において、平角短尺材12の外面には公知の潤滑膜が設けられる。
【0033】
図3の(a)において、スケジュール1に使用するダイス110は、幅W1および奥行きT1の平面視で矩形のキャビティ111を有し、ダイスサポート112に支持されると共に、図示しないダイスホルダーよって図示しないプレス機の下ラム(固定部と同じ)に固定されている。なお、キャビティ111は平角短尺材12の押し込みを容易にするため、上面近くに呼び込みのための面取りやテーパーが設けられたり(図示しない)、平角短尺材12よりも僅かに大きくなったりしている。
【0034】
上パンチ120は、上パンチホルダー124によって保持され、上パンチベース125を介してプレス機の上ラム(昇降部と同じ)に固定されている。そして、幅W1および厚さT1の平面視矩形状であって、上パンチ面121は上方に陥入した谷状を呈している。
このとき、上パンチ面121の左端を左端点121A、上パンチ面121の右端を右端点121Bとし、左端点121Aと右端点121Bとを結ぶ直線を基準線122とする。また、上パンチ面121の陥入した最も深い位置を最奥点121Cとする。そして、最奥点121Cと基準線122との距離を陥入量123とする。
【0035】
下パンチ130は、ダイス110に挿入され、下パンチベース135を介してプレス機の下ラム(固定部と同じ)に固定されている。そして、幅W1および厚さT1の平面視矩形状であって、下パンチ面131に上方に突出した山状を呈している。
このとき、下パンチ面131の左端を左端点131A、下パンチ面131の右端を右端点131Bとし、左端点131Aと右端点131Bとを結ぶ直線を基準線132とする。また、下パンチ面131の突出した先端を頂点とする。そして、頂点と基準線132との距離を突出量133とする。
そして、上パンチ120の陥入量123の方が、下パンチの突出量133よりも大きくなっている。
【0036】
図3の(b)において、平角短尺材12がキャビティ111内で、上パンチ120と下パンチ130とによって挟圧され、ブランク13が形成されている。そして、図示しないノックアウト手段によって、ブランク13をキャビティ111から押し出すことができる。
すなわち、鍛造初期は、平角短尺材12が上パンチ120の左端点121A近傍および右端点121B近傍と、下パンチの頂点近傍との3点において、3点曲げに相当する状態で曲げられながら塑性変形が進行する。そして、除々に、平角短尺材12と上パンチ面121との接触範囲が陥入部に向かって拡がり、平角短尺材12と下パンチ面131との接触範囲が端部131A,131Bに向かって拡がり、やがて、平角短尺材12は、上パンチ面121の全面と下パンチ面131の全面とによって挟圧される。
【0037】
すなわち、下パンチ130の頂点に向かう突出部に押し込まれた範囲の材料は、左端点131Aおよび側面13Bの方向に流れながら、上パンチ面121の陥入部(最奥点121Cの近傍)や、下パンチ面131の左端点131A寄りに形成された円弧状の凹部131Dに充填される。
そして、上パンチ120の陥入量123の方が、下パンチ130の突出量133よりも大きくなっていることから、ブランク13には、平角短尺材12の高さH1よりも高い、中央高さH13の部位が形成される(図2の(c)参照)。
【0038】
以上のように、スケジュール1は、引き抜き工程によって形成された平角長尺材11を素材として、厚さT1および幅W1を変更しないで、高さの分布を不均一にする(高さが増す範囲と高さが減る範囲とを形成する)鍛造をするから、簡素な金型を用いた簡単な工程であり、しかも、素材が安価で、材料歩留まりが高いことから、ブランク13を安価に製造することができる。
また、ブランク13の外郭形状を最終製品であるパーキングポールの外郭形状に近づけることができるから、最終加工が軽度になり、パーキングポールの製造コストが廉価になる。
なお、上パンチ120を固定側(下ラム)に配置し、下パンチ130を移動側(上ラム)に設置してもよい。
以上、スケジュール1によってCタイプのブランク13を製造する場合を説明しているが、本発明はこれに限定するものではなく、BタイプまたはDタイプをスケジュール1によって製造することができる。
【0039】
(スケジュール2)
図4は本発明における製造方法のスケジュール2を説明するものであって、鍛造工程の一部を模式的に示す断面図である。スケジュール2は、ブランク24(Dタイプ)と同じ厚さT2および高さH2に形成された平角長尺材21(図示しない)を、ブランク24と同じ幅W2に切断して形成された平角長尺材22(図示しない)を、2回に渡って鍛造するものである。
図4の(a)において、スケジュール2の第1鍛造工程(S3)に使用するダイス210は、幅W2および奥行きT2の平面視で矩形のキャビティ211を有している。上パンチ220は、平面である上パンチ面221を有している。下パンチ230の下パンチ面231は、幅方向の中央範囲が下方に陥入したた谷状を呈している。
したがって、平坦な上パンチ面221と谷状の下パンチ面231とによって、一方の面(上面)が平坦で、他方の面(下面)が山状のブランク(第1ブランク)23が形成されている。このとき、基準線232に対して、最奥点231Cは陥入量233だけ陥入している。
【0040】
図4の(b)において、スケジュール2の第2鍛造工程(S4)に使用するダイス210は、第1鍛造工程(S3)に使用したダイス210と同じである。
上パンチ240の上パンチ面241は、中央範囲が下方に突出した山状を呈している、(スケジュール1に使用した下パンチ130参照)。このとき、基準線242に対して、頂点241Dは突出量243だけ突出している。
下パンチ250は、第1鍛造工程(S3)に使用した下パンチ230の陥入量233よりも大きな陥入量253を有する、谷状を呈している。
そして、上パンチ面241の突出量243は下パンチ面251の陥入量253よりも小さいから、側面視で、略三角形のブランク24が形成されている。
【0041】
すなわち、スケジュール2は、鍛造工程を2回に分けているから、それぞれの工程における加工度が小さくなっている。このため、それぞれの工程における鍛造荷重が低くなるから、それぞれの鍛造工程を実行する鍛造機械(フォーマーやプレス機)の汎用度が高まると共に、金型の寿命が延長され、製造コストが安価になる。
なお、以上は、第1鍛造工程(S3)に使用した上パンチ220の上パンチ面221を平坦にしたものを示しているが、本発明はこれに限定するものではなく、下方に突出した断面円弧状や山状(下パンチ230の陥入量233よりも小さい突出量を有する)にしてもよい。さらに、第1鍛造工程において上パンチ220に替えて、第2鍛造工程(S4)に使用する上パンチ240を使用してもよい(下パンチ230を使用)。このとき、突出量243は、陥入量233よりも小さくする。
さらに、図4の(a)における上パンチ210と下パンチ230、および図4の(b)における上パンチ240と下パンチ250は、それぞれ上下を反対にして使用してもよい。
以上、スケジュール2によってDタイプのブランク24を製造する場合を説明しているが、本発明はこれに限定するものではなく、BタイプまたはCタイプをスケジュール2によって製造することができる。
【0042】
(スケジュール3)
図5および図6は本発明における製造方法のスケジュール3を説明するものであって、図5は被鍛造体の形状を模式的に示す斜視図、図6は鍛造工程の一部を模式的に示す断面図である。スケジュール3は、スケジュ−ル2と同様に2回の鍛造工程を有するものであるが、スケジュ−ル2の第2鍛造工程(S4)が広い範囲を大きく変形させるのに対し、スケジュ−ル3の部分鍛造工程(S5)は、比較的狭い範囲を大きく変形させるものである。
図5の(c)において、第2鍛造工程(S5)によって製造されるブランク35(Dタイプ)は、側面視で略三角形状で、頂点35Cが尖っていて(頂点の曲率半径が小さい)、頂点35Cと底面35Uの凹み部の最奥点35Dとの高さH35である。
図5の(b)において、第1鍛造工程(S3)によって製造されるブランク33は、側面視で略三角形状であるが、斜面33Lの頂点33Cが斜面35Lの頂点35Cよりも幅が広く、曲率半径が大きい。また、底面33Uの凹みはなだらかで広い範囲に及び、頂点33Cと底面35Uの凹み部の最奥点33Dとの高さH33である。
図5の(a)において、切断工程(S2)によって製造される平角短尺材32は、ブランク35と同じ厚さT3かつ同じ幅W3で、高さはH35よりも小さい高さH3の断面矩形状である。
【0043】
そして、ブランク35の高さH35はブランク33の高さH33よりも小さくなっている。すなわち、部分鍛造工程(S5)においては、特に、頂点35Cの周囲を局部的により大きく圧縮して、この範囲を細く(外郭の尖りを鋭く)している。そして、この範囲の減肉に相当する材料が、側面35B方向に流れ込み側面35Bの高さを高くすると共に、底面35Uの凹み部の周囲に流れ込み、結果として底面35Uに比較的狭い範囲の凹みを形成する。
なお、これに用いる平角長尺材31(図示しない)は、ブランク34と同じ厚さT3および高さH3に引き抜かれ、ブランク34と同じ幅W3に切断されている(何れも、図示しない)。
【0044】
図6の(a)において、スケジュール3の鍛造工程(S3)に使用するダイス310は、幅W3および奥行きT3の平面視で矩形のキャビティ311を有している。上パンチ320は、なだらかな山状に突出した上パンチ面321を有している。下パンチ330の下パンチ面331は、幅方向の中央範囲が下方に陥入したた谷状を呈し、谷底は比較的広い幅であって、大きな曲率半径を有している。
したがって、上パンチ面321と下パンチ面331とによって、なめらかに陥入した底面と、頂点が比較的尖っていない断面略三角形状(略三角柱と同じ)のブランク(第1ブランク)33が形成されている。
【0045】
図5の(b)において、スケジュール3の部分鍛造工程(S5)に使用するダイス210は、鍛造工程(S3)に使用したダイス310と同じである。
部分鍛造工程の上パンチ340の上パンチ面341は、鍛造工程で使用した上パンチ320の上パンチ面321と同様に、中央範囲が下方に突出した山状であるが、上パンチ面321よりも、裾野部の傾斜が大きくなり、側面341B側の裾野には、断面円弧状の凹部が形成されている。
下パンチ350の下パンチ面351は、鍛造工程(S3)に使用した下パンチ330の下パンチ面351と同様に、中央範囲が下方に陥入した谷状であるが、鍛造工程(S3)の下パンチ面331よりも、谷底に向かう傾斜が大きくなり、谷の幅が狭くなると共に、谷底の曲率半径が小さくなっている。
【0046】
そして、鍛造工程と部分鍛造工程とにおいて、前者の上パンチ面321の突出量323と後者の上パンチ面341の突出量343とは略同じで、前者の下パンチ面331の突出量333と後者の下パンチ面351の突出量353とは略同じになっている。
したがって、部分鍛造工程(S5)では、ブランク33の斜面35Lにおける比較的幅の広い張り出し部(頂点を頂点33Cとする略三角形範囲を張り出し部と称している)が圧縮され、比較的幅が狭く、曲率半径の小さい「尖った」頂点35Cを有する張り出し部が形成されている。そして、かかる圧縮によって、上パンチ面341の裾野部や側面341B側の凹部に向かう材料流れが形成されている。
【0047】
したがって、鍛造工程において先端が尖った張り出し部を形成するための加工度が抑えられる。よって、鍛造荷重が低くなるから、鍛造工程を実行する鍛造機械の汎用度が高まると共に、金型の寿命が延長され、製造コストが安価になる。また、鍛造工程における表面き裂の発生が押さえられるから、ブランクの外郭形状の自由度が増し(様々な形状が可能になる)、最終製品であるパーキングポールの外郭形状に近いブランクを製造することが可能になり、材料歩留まりの向上によって、さらに製造コストが安価になる。
以上、スケジュール3によってDタイプのブランク35を製造する場合を説明しているが、本発明はこれに限定するものではなく、BタイプまたはCタイプをスケジュール3によって製造することができる。
【0048】
(スケジュール4)
図7は本発明における製造方法のスケジュール4を説明するものであって、被鍛造体の形状を模式的に示す斜視図である。スケジュール4は、スケジュ−ル1に平押し鍛造工程(S6)を追加したものである。
図7の(a)において、平角短尺材42が形成されている(S2、図3の(a)参照)。このとき、平角短尺材42は平押し鍛造工程(S6)後のブランク46(Cタイプ)の厚さと同じT4、高さはブランク46の中央高さH46よりも小さな高さH4、幅はブランク46の幅W4よりも僅かに少ない幅「W4−ΔW4」の直方体である。
図7の(b)において、ブランク43が鍛造工程(S3、図3の(b)参照)において形成され、幅方向の中央の高さがH43に増加し、側面視略く字状を呈している。
【0049】
図7の(c)において、ブランク43は平面視で、ブランク46の外郭と同じ断面をキャビティとするダイス(図示しない)において、ブランク43の側面43A寄りが、平面に円盤状の突起(高さΔT4)が形成された上パンチと下パンチ(何れも図示しない)によって挟圧され、両面にそれぞれ凹み46P(深さΔT4)が形成されている。そして、凹み46Pの周囲に材料が流れ、円弧状の側面46Aが形成されている。また、僅かであるが、中央高さH46は、鍛造工程における中央高さH43よりも大きくなり、上面46Uの頂点46Cは突出し、また、側面46Bは上面46U側が側方に突出している。
【0050】
したがって、最後に、平押し鍛造工程(S6)を有し、平押しされた範囲の材料を周囲に移動させるから、外郭形状の形成が容易になり、その分、平押し鍛造工程前の工程における負担が低減される。よって、製造可能なパーキングポールブランクの外郭形状の自由度が増す(様々な形状が可能になる)と共に、歩留まりがさらに向上するから、製造コストが安価になる。
【0051】
(スケジュール5〜8)
スケジュール5〜8は、スケジュール1を基準にして、スケジュール2〜4を適宜組み合わせたものであるから、組み合わせたスケジュールが奏する効果を重疂的に奏することになる。なお、スケジュール2においては、第2鍛造工程(S4)を1回だけ実行しているが、これを複数回実行してもよい。同様に、スケジュール3においては、部分鍛造工程(S5)を1回だけ実行しているが、これを、部分を変えてあるいは同じ部分を複数回に渡って鍛造してもよい。
以上、スケジュール4によってCタイプのブランク46を製造する場合を説明しているが、本発明はこれに限定するものではなく、BタイプまたはDタイプをスケジュール4によって製造することができる。
【0052】
(スケジュール1のその他の例)
図8および図9は本発明における製造方法のスケジュール1のその他の例を説明するものであって、図8は被鍛造体の形状を模式的に示す斜視図、図9は鍛造工程の一部を模式的に示す断面図である。スケジュール1のその他の例(以下、説明の便宜上「スケジュール9」と称す)は、1回の鍛造工程によって、側面視で略菱形のブランク93(Bタイプ)を製造するものである。
図8の(c)は、スケジュール9の鍛造工程(S3)において製造されるブランク93の斜視図であって、ブランク93は、一定の厚さT9で幅W9を有し、側面93Aと側面93Bとは平行で、斜面93Uが上方に突出した山状を呈し、斜面93Lが下方に突出した山状を呈し、全体が略菱形を呈している。
そして、斜面93Uの突出した頂点93Cと、底面13Lの突出した頂点93Dとの、側面93Aに平行な距離を、中央高さH93とする。
図8の(a)において、引き抜き工程(S1の1)において形成された平角長尺材91は断面矩形状であって、ブランク93と同じ厚さT9で、ブランク93の中央高さH93よりも小さい高さの高さH9である。
図8の(b)は、平角長尺材91がブランク93と同じ幅W9に切断され、直方体である平角短尺材92が形成されている。なお、後記するダイスへの設置(押し込み)を容易にするため、角部に面取りを施してもよい。また、切断工程(2)において、平角短尺材92の外面には公知の潤滑膜が設けられる。
【0053】
図9の(a)において、スケジュール9に使用するダイス910は、幅W9および奥行きT9の平面視で矩形のキャビティ911を有し、ダイスサポート912に支持されると共に、図示しないダイスホルダーよって図示しないプレス機の下ラム(固定部と同じ)に固定されている。なお、キャビティ911は平角短尺材92の押し込みを容易にするため、上面近くに呼び込みのための面取りやテーパーが設けられたり(図示しない)、平角短尺材92よりも僅かに大きくなったりしている。
【0054】
上パンチ920は、上パンチホルダー924によって保持され、上パンチベース925を介してプレス機の上ラム(昇降部と同じ)に固定されている。そして、幅W9および厚さT9の平面視矩形状であって、上パンチ面921は上方に陥入した谷状を呈している。
下パンチ930は、ダイス910に挿入され、下パンチベース935を介してプレス機の下ラム(固定部と同じ)に固定されている。そして、幅W9および厚さT9の平面視矩形状であって、下パンチ面931に下方に陥入した谷状を呈している。
【0055】
図9の(b)において、平角短尺材92がキャビティ911内で、上パンチ920と下パンチ930とによって挟圧され、ブランク93が形成されている。そして、図示しないノックアウト手段によって、ブランク93をキャビティ911から押し出すことができる。すなわち、上パンチ920および下パンチ930は、まず、両方の側面の近くにおいて平角短尺材92に当接し、除々に両端部を挟圧しながら両端部の材料を中央に向かって流している。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は以上であるから、簡素な金型を使用して、高い材料歩留まりでパーキングポールブランクを製造することができるから、各種形状のパーキングポールを製造するためのパーキングブランクの製造方法として広く利用することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 平角長尺材
2 平角短尺材
3 ブランク(S3)
4 ブランク(S4)
5 ブランク(S5)
6 ブランク(S6)
11 平角長尺材
12 平角短尺材
13 ブランク
13A 側面
13B 側面
13C 頂点
13D 最奥点
13L 底面
13U 斜面
21 平角長尺材
22 平角長尺材
24 ブランク
31 平角長尺材
32 平角短尺材
33 ブランク
33A 側面
33B 側面
33C 頂点
33D 最奥点
33L 斜面
33U 底面
34 ブランク
35 ブランク
35A 側面
35B 側面
35C 頂点
35D 最奥点
35L 斜面
35U 底面
42 平角短尺材
43 ブランク
43A 側面
43B 側面
43L 斜面
43U 底面
46 ブランク
46A 側面
46B 側面
46C 頂点
46D 最奥点
46L 下面
46P 凹み
46U 上面
91 平角長尺材
92 平角短尺材
93 ブランク
93A 側面
93B 側面
93L 斜面
93U 斜面
110 ダイス
111 キャビティ
112 ダイスサポート
120 上パンチ
121 上パンチ面
121A 左端点
121B 右端点
121C 最奥点
122 基準線
123 陥入量
124 上パンチホルダー
125 上パンチベース
130 下パンチ
131 下パンチ面
131A 左端点
131B 右端点
131D 凹部
132 基準線
133 突出量
135 下パンチベース
210 ダイス
211 キャビティ
220 上パンチ
221 上パンチ面
230 下パンチ
231 下パンチ面
231C 最奥点
232 基準線
233 陥入量
240 上パンチ
241 上パンチ面
241D 頂点
242 基準線
243 突出量
250 下パンチ
251 下パンチ面
253 陥入量
310 ダイス
311 キャビティ
320 上パンチ
321 上パンチ面
323 突出量
330 下パンチ
331 下パンチ面
333 突出量
340 上パンチ
341 上パンチ面
343 突出量
350 下パンチ
351 下パンチ面
353 突出量
910 ダイス
911 キャビティ
912 ダイスサポート
920 上パンチ
921 上パンチ面
924 上パンチホルダー
925 上パンチベース
930 下パンチ
931 下パンチ面
935 下パンチベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定厚さおよび一定高さの断面矩形状である平角長尺材を形成する引き抜き工程または押し出し工程あるいは圧延工程と、
前記平角長尺材を一定幅に切断して平角短尺材を形成する切断工程と、
前記平角短尺材を、前記一定厚さおよび前記一定幅のキャビティを具備するダイス内に配置して、端面が幅方向の略中央部においてなめらかに突出している一方のパンチと、端面が幅方向の略中央部においてなめらかに陥入している他方のパンチとによって曲げて挟圧する鍛造工程と、
を有し、
前記一方のパンチの突出量が前記他方のパンチの陥入量よりも小さいことにより、略中央部の高さが前記一定高さよりも増加した、前記一定厚さで前記一定幅を有するパーキングポールブランクを製造することを特徴とするパーキングポールブランクの製造方法。
【請求項2】
前記鍛造工程に続いて、略部分的な変形をさせる部分鍛造工程を有することを特徴とする請求項1記載のパーキングポールブランクの製造方法。
【請求項3】
一定厚さおよび一定高さの断面矩形状である平角長尺材を形成する引き抜き工程または押し出し工程あるいは圧延工程と、
前記平角長尺材を一定幅に切断して平角短尺材を形成する切断工程と、
前記平角短尺材を、前記一定厚さおよび前記一定幅のキャビティを具備するダイス内に配置して、端面が略平面状の一方の第1パンチと、端面が幅方向の略中央部においてなめらかに陥入している他方の第1パンチとによって曲げて挟圧する第1鍛造工程と、
前記第1鍛造工程において挟圧された前記平角短尺材を、前記一定厚さおよび前記一定幅のキャビティを具備するダイス内に配置して、端面が幅方向の略中央部においてなめらかに突出している一方の第2パンチと、端面が幅方向の略中央部においてなめらかに陥入している他方の第2パンチとによって曲げて挟圧する第2鍛造工程と、
を有し、
前記一方の第2パンチの突出量が前記他方の第2パンチの陥入量よりも小さいことにより、略中央部の高さが前記一定高さよりも増加した、前記一定厚さで前記一定幅を有するパーキングポールブランクを製造することを特徴とするパーキングポールブランクの製造方法。
【請求項4】
一定厚さおよび一定高さの断面矩形状である平角長尺材を形成する引き抜き工程または押し出し工程あるいは圧延工程と、
前記平角長尺材を一定幅に切断して平角短尺材を形成する切断工程と、
前記平角短尺材を、前記一定厚さおよび前記一定幅のキャビティを具備するダイス内に配置して、端面が幅方向の略中央部においてなめらかに突出している一方の第1パンチと、端面が幅方向の略中央部においてなめらかに陥入している他方の第1パンチとによって曲げて挟圧する第1鍛造工程と、
該第1鍛造工程によって挟圧された前記平角短尺材を、前記一定厚さおよび前記一定幅のキャビティを具備するダイス内に配置して、端面が幅方向の略中央部においてなめらかに突出している一方の第2パンチと、端面が幅方向の略中央部においてなめらかに陥入している他方の第2パンチとによって曲げて挟圧する第2鍛造工程と、
を有し、
前記一方の第1パンチの突出量が前記他方の第2パンチの陥入量よりも小さく、前記他方の第2パンチの突出量が前記他方の第2パンチの陥入量よりも小さく、前記一方の第2パンチの突出量が前記一方の第1パンチの突出量よりも大きく、前記他方の第2パンチの陥入量が前記他方の第1パンチの陥入量よりも大きいことにより、
略中央部の高さが前記一定高さよりも増加した、前記一定厚さで前記一定幅を有するパーキングポールブランクを製造することを特徴とするパーキングポールブランクの製造方法。
【請求項5】
前記第2鍛造工程に続いて、略部分的な変形をさせる部分鍛造工程を有することを特徴とする請求項3又は4記載のパーキングポールブランクの製造方法。
【請求項6】
一定厚さおよび一定高さの断面矩形状である平角長尺材を形成する引き抜き工程または押し出し工程あるいは圧延工程と、
前記平角長尺材を一定幅に切断して平角短尺材を形成する切断工程と、
前記平角短尺材を、前記一定厚さおよび前記一定幅のキャビティを具備するダイス内に配置して、端面が幅方向の略中央部においてなめらかに陥入している一方のパンチと、端面が幅方向の略中央部においてなめらかに陥入している他方のパンチとによって曲げて挟圧する鍛造工程と、
を有し、
高さが幅方向で不均一で、前記一定厚さおよび前記一定幅を有する略菱形状のパーキングポールブランクを製造することを特徴とするパーキングポールブランクの製造方法。
【請求項7】
一定厚さおよび一定高さの断面矩形状である平角長尺材を形成する引き抜き工程または押し出し工程あるいは圧延工程と、
前記平角長尺材を一定幅に切断して平角短尺材を形成する切断工程と、
前記平角短尺材を、前記一定厚さおよび前記一定幅のキャビティを具備するダイス内に配置して、端面が幅方向の略中央部においてなめらかに陥入している一方の第1パンチと、端面が幅方向の略中央部においてなめらかに陥入している他方の第1パンチとによって曲げて挟圧する第1鍛造工程と、
該第1鍛造工程によって挟圧された前記平角短尺材を、前記一定厚さおよび前記一定幅のキャビティを具備するダイス内に配置して、端面が幅方向の略中央部においてなめらかに陥入している一方の第2パンチと、端面が幅方向の略中央部においてなめらかに陥入している他方の第2パンチとによって曲げて挟圧する第2鍛造工程と、
を有し、
前記一方の第1パンチの陥入量が前記一方の第2パンチの陥入量よりも小さく、前記他方の第1パンチの陥入量が前記他方の第2パンチの陥入量よりも小さいことにより、
略中央部の高さが前記一定高さよりも増加した、前記一定厚さで前記一定幅を有するパーキングポールブランクを製造することを特徴とするパーキングポールブランクの製造方法。
【請求項8】
最後に、外郭から所定距離離れた範囲を前記一定厚さよりも薄くする平押し鍛造工程を有し、
前記範囲を除く範囲が前記一定厚さであることを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載のパーキングポールブランクの製造方法。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れかに記載のパーキングポールブランクの製造方法によって製造されたことを特徴とするパーキングポールブランク。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−183449(P2011−183449A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−54280(P2010−54280)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(592044732)株式会社オーハシテクニカ (32)
【Fターム(参考)】