説明

パークロック構造

【課題】簡易な構成でロック部材とギヤ部材との噛み合い部の潤滑性を向上することができるパークロック構造を提供する。
【解決手段】ケーシング3と、このケーシング3に揺動可能に収容支持されたロック部材5と、このロック部材5の揺動によって回転が阻止又は回転の阻止が解除される駆動軸7と、この駆動軸7と一体回転可能に設けられロック部材5と噛み合い部9で噛み合い可能なギヤ部材11とを備えたパークロック構造1において、ケーシング3の噛み合い部9近傍に、ロック部材5と当接してロック部材5の揺動方向と交差する方向への移動を規制する規制リブ13を設け、ロック部材5と規制リブ13との間に、潤滑油を滞留させる油溜まり15を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に適用されるパークロック構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パークロック構造としては、ケーシングと、このケーシングに揺動可能に収容支持されたロック部材としてのパーキングポールと、このパーキングポールの揺動によって回転が阻止又は回転の阻止が解除される駆動軸と、この駆動軸と一体回転可能に設けられパーキングポールと噛み合い部で噛み合い可能なギヤ部材としてのパーキングギヤとを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このパークロック構造では、パーキングポールを揺動操作して噛み合い部でギヤ部材と噛み合わせることによって、駆動軸の回転が阻止され、駆動軸以降の動力伝達機構に駆動力が伝達されることを阻止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−253850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のようなパークロック構造では、ロック部材とギヤ部材との噛み合い部の潤滑がギヤ部材自体の回転や周辺のギヤの回転によって掻き上げられる潤滑油の供給のみであり、噛み合い部の潤滑に関して十分な対策が図られておらず、噛み合い部の潤滑性が低下していた。
【0006】
また、単純に噛み合い部の潤滑性を向上させるために他の部材を追加してしまうと、各部材の配置レイアウトの変更や部品点数の増加などを引き起こしてしまい、潤滑構造が複雑化する可能性があった。
【0007】
そこで、この発明は、簡易な構成でロック部材とギヤ部材との噛み合い部の潤滑性を向上することができるパークロック構造の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ケーシングと、このケーシングに揺動可能に収容支持されたロック部材と、このロック部材の揺動によって回転が阻止又は回転の阻止が解除される駆動軸と、この駆動軸と一体回転可能に設けられ前記ロック部材と噛み合い部で噛み合い可能なギヤ部材とを備えたパークロック構造であって、前記ケーシングの前記噛み合い部近傍には、前記ロック部材と当接して前記ロック部材の揺動方向と交差する方向への移動を規制する規制リブが設けられ、前記ロック部材と前記規制リブとの間には、潤滑油を滞留させる油溜まりが設けられていることを特徴とする。
【0009】
このパークロック構造では、ケーシングの噛み合い部近傍にロック部材と当接してロック部材の揺動方向と交差する方向への移動を規制する規制リブが設けられているので、ロック部材がガタつくことを防止でき、ロック部材の揺動を安定化させることができる。
【0010】
また、ロック部材と規制リブとの間には、潤滑油を滞留させる油溜まりが設けられているので、ロック部材と規制リブとに潤滑油を滞留させる機能を持たせ、潤滑油を滞留させる機能のみの部材を用いる必要がなく、ロック部材とギヤ部材との噛み合い部の潤滑性を向上することができる。
【0011】
従って、このようなパークロック構造では、各部材の配置レイアウトの変更や部品点数の増加などを伴うことがなく、簡易な構成でロック部材とギヤ部材との噛み合い部の潤滑性を向上することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、簡易な構成でロック部材とギヤ部材との噛み合い部の潤滑性を向上することができるパークロック構造を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係るパークロック構造の上面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るパークロック構造の側面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るパークロック構造の下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1〜図3を用いて本発明の実施の形態に係るパークロック構造について説明する。
【0015】
本実施の形態に係るパークロック構造1は、ケーシング3と、このケーシング3に揺動可能に収容支持されたロック部材5と、このロック部材5の揺動によって回転が阻止又は回転の阻止が解除される駆動軸7と、この駆動軸7と一体回転可能に設けられロック部材5と噛み合い部9で噛み合い可能なギヤ部材11とを備えている。
【0016】
また、ケーシング3の噛み合い部9近傍には、ロック部材5と当接してロック部材5の揺動方向と交差する方向への移動を規制する規制リブ13が設けられている。
【0017】
そして、ロック部材5と規制リブ13との間には、潤滑油を滞留させる油溜まり15が設けられている。
【0018】
図1〜図3に示すように、パークロック構造1は、操作機構17と、ケーシング3と、ロック部材5と、駆動軸7と、ギヤ部材11とを備えている。
【0019】
操作機構17は、移動部材19と、操作部材21とを備えている。移動部材19は、長尺状のロッドからなり、一端側がドライバなどのユーザがシフトレンジを切り替えることによって作動されるアクチュエータ(不図示)に接続され、アクチュエータの作動によって軸方向移動される。この移動部材19の他端側には、操作部材21が挿通され、端部を溶接によって形成される溶接部23によって操作部材21の移動部材19に対する軸方向位置が位置決めされる。
【0020】
操作部材21は、ケーシング3にノックピン25によって位置決めされると共にボルト27によって固定されたスリーブ29の内部に軸方向移動可能に保持されている。また、操作部材21には、スリーブ29の内部から外部に露出し、ロック部材5と当接してロック部材5を操作するカム面31が形成されている。また、操作部材21には、移動部材19に挿通され、ロック部材5が駆動軸7の回転を阻止する際に、ロック部材5の待ち機構となる待ちバネ33が当接されている。この操作部材21は、移動部材19の軸方向移動により、カム面31がロック部材5と当接する、もしくは当接を解除することによってロック部材5を操作する。
【0021】
このような操作機構17は、ロック部材5やギヤ部材11などと共にケーシング3内に収容され、ロック部材5の揺動を操作して駆動軸7の回転を阻止する、もしくは駆動軸7の回転阻止を解除する。
【0022】
ケーシング3は、内部に操作機構17とロック部材5と駆動軸7とギヤ部材11などを収容している。このケーシング3の開口面35には、カバー部材(不図示)が組み付けられ、ケーシング3の内部に各部材を収容した後、カバー部材によって閉塞される。
【0023】
ロック部材5は、ケーシング3の開口面35よりも内部側に設けられた溝状の組付部37に組み付けられ、当接部39とロック部41とを備えている。当接部39は、ロック部材5の一端側に設けられ、ロック部材5のロック解除位置ではスリーブ29の内部に配置されており、ロック部材5のロック位置では操作部材21のカム面31が当接されてロック部材5が駆動軸7の回転を阻止する方向に回動される。
【0024】
ロック部41は、ロック部材5の他端側に設けられ、ロック部材5が駆動軸7の回転を阻止する方向に回動されたときに、駆動軸7と一体回転可能に設けられたギヤ部材11のギヤ部43と噛み合い部9で噛み合い、駆動軸7の回転を阻止する。このロック部材5は、軸支部材45に揺動可能に軸支されている。
【0025】
軸支部材45は、ケーシング3の組付部37とロック部材5とを挿通し、一端側がケーシング3に固定されている。この軸支部材45により、ロック部材5が揺動可能に支持される。このような軸支部材45の他端側には、リターンスプリング47が挿通されている。
【0026】
リターンスプリング47は、巻きバネからなり、一端がケーシング3に係合され、他端側がロック部材5に当接されている。このリターンスプリング47は、ロック部材5を噛み合い部9の噛み合い解除方向に付勢してロック部材5の初期位置を規定している。なお、このリターンスプリング47の付勢力は、操作機構17に設けられた待ちバネ33よりも弱く設定されている。
【0027】
駆動軸7は、ベアリング49を介してケーシング3に回転可能に支持され、駆動源から車輪までの動力伝達経路上に設けられた変速機構(不図示)の出力軸又は入力軸となっている。また、駆動軸7には、入出力ギヤである大径ギヤ51と小径ギヤ53とが一体回転可能に設けられている。この駆動軸7には、一体回転可能にギヤ部材11が設けられている。
【0028】
ギヤ部材11は、内径側が駆動軸7と一体回転可能に固定され、外径側が複数の歯からなるギヤ部43となっている。このギヤ部材11のギヤ部43は、ロック部材5のロック部41と噛み合い可能となっている。このギヤ部43とロック部41とが噛み合うと、ギヤ部材11と一体回転可能に設けられた駆動軸7の回転が阻止され、駆動源から車輪への駆動力の伝達が阻止される。また、ギヤ部43とロック部41との噛み合いが解除されると、駆動軸7の回転の阻止が解除され、駆動源から車輪への駆動力の伝達が可能となる。
【0029】
このように構成されたパークロック構造1は、アクチュエータの作動により移動部材19がロック部材5側に移動され、操作部材21がロック部材5の当接部39と当接する。このとき、操作部材21のカム面31がロック部材5の当接部39を押圧してロック部材5の当接部39側をリターンスプリング47の付勢力に抗して押下する。これにより、ロック部材5のロック部41が軸支部材45を支点として押し上げられて噛み合い部9でギヤ部材11のギヤ部43と噛み合い、駆動軸7の回転が阻止される。なお、ロック部41がギヤ部43の歯面に位置してギヤ部43と噛み合っていない場合には、待ち機構としての待ちバネ33によってロック部41がギヤ部43の歯底に向けて付勢されており、ロック部41がギヤ部43との噛み合い位置に位置したときにギヤ部43と噛み合う。
【0030】
このロック部材5のロック状態、すなわち噛み合い部9におけるロック部41とギヤ部43との噛み合い状態の解除は、アクチュエータの作動により移動部材19がロック部材5と反対側に移動され、操作部材21のカム面31とロック部材5の当接部39との当接が解除される。このとき、リターンスプリング47の付勢力によってロック部材5の当接部39が上昇してスリーブ29の内部に収容される。これにより、ロック部材5のロック部41が軸支部材45を支点として下降されてギヤ部材11のギヤ部43との噛み合いが解除され、駆動軸7の回転の阻止が解除される。
【0031】
このようなパークロック構造1において、ケーシング3のロック部材5とギヤ部材11との噛み合い部9近傍には、規制リブ13が設けられている。規制リブ13は、ケーシング3の壁面からロック部材5の側面に向けて突設され、上面が開口された袋状に形成されている。この規制リブ13の先端面は、ロック部材5がロック位置とロック解除位置との間を揺動するとき、常時ロック部材5の側面と対向するように位置されている。このため、ロック部材5の揺動の際に、ロック部材5が揺動方向と交差する方向、すなわち厚さ方向に移動しようとしても、ロック部材5の側面と規制リブ13とが当接され、ロック部材5が厚さ方向に移動することができない。この規制リブ13により、ロック部材5の揺動を安定化させることができる。このような規制リブ13とロック部材5との間には、油溜まり15が設けられている。
【0032】
油溜まり15は、規制リブ13の袋状の内部とロック部材5の側面とで形成された空間となっている。この油溜まり15は、上面が開口されており、上方に位置するギヤ部材11や大径ギヤ51及び小径ギヤ53などの回転によって掻き上げられる潤滑油が流入されて滞留される。この油溜まり15に滞留された潤滑油によって、ロック部材5とギヤ部材11との噛み合い部9に十分に潤滑油を供給することができる。
【0033】
このようなパークロック構造1では、ケーシング3の噛み合い部9近傍にロック部材5と当接してロック部材5の揺動方向と交差する方向への移動を規制する規制リブ13が設けられているので、ロック部材5がガタつくことを防止でき、ロック部材5の揺動を安定化させることができる。
【0034】
また、ロック部材5と規制リブ13との間には、潤滑油を滞留させる油溜まり15が設けられているので、ロック部材5と規制リブ13とに潤滑油を滞留させる機能を持たせ、潤滑油を滞留させる機能のみの部材を用いる必要がなく、ロック部材5とギヤ部材11との噛み合い部9の潤滑性を向上することができる。
【0035】
従って、このようなパークロック構造1では、各部材の配置レイアウトの変更や部品点数の増加などを伴うことがなく、簡易な構成でロック部材5とギヤ部材11との噛み合い部9の潤滑性を向上することができる。
【0036】
なお、本発明の実施の形態に係るパークロック構造では、規制リブの先端面をロック部材の側面に対向させて油溜まりを形成しているが、規制リブと対向するロック部材の側面に凹部を形成するなど、潤滑油を滞留できる構成であれば、規制リブとロック部材の形状はどのような形態であってもよい。
【符号の説明】
【0037】
1…パークロック構造
3…ケーシング
5…ロック部材
7…駆動軸
9…噛み合い部
11…ギヤ部材
13…規制リブ
15…油溜まり

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングと、このケーシングに揺動可能に収容支持されたロック部材と、このロック部材の揺動によって回転が阻止又は回転の阻止が解除される駆動軸と、この駆動軸と一体回転可能に設けられ前記ロック部材と噛み合い部で噛み合い可能なギヤ部材とを備えたパークロック構造であって、
前記ケーシングの前記噛み合い部近傍には、前記ロック部材と当接して前記ロック部材の揺動方向と交差する方向への移動を規制する規制リブが設けられ、前記ロック部材と前記規制リブとの間には、潤滑油を滞留させる油溜まりが設けられていることを特徴とするパークロック構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−255530(P2012−255530A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130319(P2011−130319)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(000225050)GKNドライブラインジャパン株式会社 (409)
【Fターム(参考)】